死刑関連ニュース(2007)
*以下、作成中のファイルです。
◆韓国政府、元財閥会長らの特赦決定 死刑囚6人も減刑
2007.12.31 20:53 産経ニュース
韓国政府は31日の閣議で、巨額粉飾決算事件で懲役刑などが確定した元財閥、大宇グループの金宇中元会長ら計75人の特別赦免や復権を決めた。経済人や
元政府高官のほか、死刑囚6人の無期懲役への減刑も含まれ、1月1日に実施する。
盧武鉉大統領の任期中、最後の特赦。韓国では金大中政権以来、死刑執行が中断されているが、現政権下での死刑囚への特別減刑は初めて。
青瓦台(大統領官邸)報道官は、金元会長ら経済人の赦免について、1997年の通貨危機から10年の節目を迎えたことを指摘、「国家発展に参与する機会
を与える」と説明した。
一方、野党ハンナラ党は盧大統領の元側近らも対象となったことを「赦免権の乱用」と非難した。(共同)
◆フセイン元大統領処刑から1年、イラクで消えぬ宗派対立
【カイロ=宮明敬】イラクのフセイン元大統領が判決確定後わずか4日で絞首刑に処せられてから、30日で1年が過ぎた。
死刑執行人がイスラム教スンニ派の元大統領をののしり、シーア派指導者を礼賛する映像がネットで流され、死刑は宗派対立をさらにあおる結果になったが、
シーア派主導のマリキ政権は1年後の今も、その傷を癒やし、国民和解を実現する政治的措置を講じられないでいる。
テロと宗派対立に揺れる「フセイン後のイラク」で、国民和解を進める施策として注目された「非バース化」緩和法案は今年11月、国民議会に提出された
が、成立の見通しは立っていない。フセイン政権を担ったために公職追放された旧バース党員(スンニ派が主流)を、再び公職に復帰させる法案だが、シーア派
強硬派指導者ムクタダ・サドル師の影響下にある議員らが強く反発しているからだ。
仮に成立しても、国民和解の特効薬になるかどうかも不透明だ。過去の経歴を隠して生活する旧バース党員は本紙バグダッド通信員に、「宗派間の憎悪が消え
ない中で、(公務員になるために)名乗り出るのは自殺行為に等しい」と語った。
産油都市が南部と北部に集中するイラクで、石油収入の公平な分配を目指す石油法案も、宙に浮いたままになっている。今年2月に閣議で了承されたが、外国
企業との採掘契約締結を単独で進めるクルド自治政府などとの利害対立が続いているからだ。北部産油都市キルクークのクルド自治区編入の是非を問う住民投票
も、憲法が定めた年内実施ができず、半年延期された。
ブッシュ米政権がイラク民主化進展の一里塚として期待した地方選挙の制度整備と実施も実現していない。マリキ首相は今年7月、年末までに実施すると表明
したが、空手形に終わった。
イラク治安部隊は30日、フセイン元大統領が眠る故郷のオウジャ村や支持者が今も多い近郊のティクリートで、騒乱にそなえて厳戒態勢をとった。大きな混
乱はなかったが、ティクリートでは、家の外壁にペンキで書かれたばかりのスローガンが目についたという。「我々はフセイン大統領の仇(かたき)をとる」
スンニ派が多いバグダッドのアザミヤ地区でも、元大統領のポスターが何枚かはられた。イラクは宗派間の怨念(おんねん)をそのままに、国民和解のための
政治課題を積み残したまま、2008年を迎える。
(2007年12月30日21時23分 読売新聞)
◆韓国が「死刑廃止国」に 中断10年で人権団体認定
2007.12.30 19:21 産経ニュース
30日、ソウルの国会議事堂前で開かれた死刑執行停止10年を記念する式典(共同)
1997年を最後に死刑を行っていない韓国が30日、執行中断10年を迎え、国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(本部ロンドン)が定める
「事実上の死刑廃止国」になった。死刑廃止を求める宗教者や市民団体は国会前で記念式典を開き、李明博・次期政権が死刑制度自体を廃止するよう求めた。
韓国では97年12月30日に金泳三政権が23人の死刑を執行したが、翌年大統領に就任した金大中氏は、自身が民主化運動の中で死刑宣告を受けた経験と
カトリック信者としての信念から死刑を許さず、盧武鉉政権も執行中断を続けた。
式典には75年に政権転覆容疑が当局にでっち上げられた「人民革命党事件」で処刑され、今年再審で無罪が確定した民主化運動家の妻、李英嬌さん(70)
も参加。「名誉が回復されても夫は戻らない。二度と繰り返さないために死刑制度はなくしてほしい」と訴えた。
韓国国会では過去に2回、死刑廃止法案が廃案になり、2004年に新たに法案が提出されたが審議は進まず廃案になる見通しが強まっている。李明博氏は犯
罪予防のため死刑制度維持は必要との見解を表明している。
式典で参加者らは、韓国が「人権先進国」になったと宣言、現在64人の確定死刑囚の助命を求め同じ数のハトを放った。廃止運動に取り組む李相赫弁護士は
「10年の執行中断が実現した以上、次期政権の執行再開は難しくなったが、完全な廃止のため法整備の努力が必要だ」と話した。(共同)
◆’07記者メモ帳から:「死」の重さ 向き合う姿勢感じられぬ /秋田
「あなたの言う『死にたい』は軽いんじゃないか」と検察官が迫る。母は「現実から逃げている」と嘆き、弟は「楽な道を選んでいるとしか思えない」と責め
る。しかし彼女は最後も結局、「死」という言葉を口にした。「死刑に処される方がいい」。静まる法廷でむなしさを感じた。
藤里町の連続児童殺害事件で、殺人罪などに問われた畠山鈴香被告(34)の秋田地裁公判は21日、証拠調べを終えた。傍聴席から見る被告は振る舞いがど
こか人ごとで、口にする「死」に重みが感じられない。留置場で自殺を試みたと遺族あての手紙に書き、法廷では、それを疑う検察官に「本気で何度も自殺しよ
うとした」とむきになって反論。揚げ句は「死刑にしてほしい」。悩み、反省したことを示したいのだろうが、「死」を軽々に口にする姿から、長女彩香ちゃん
(当時9歳)と米山豪憲君(当時7歳)の死をも軽くみている印象を受けた。
「簡単に死刑になって、それで終わっていいのかなとも思う」とも述べた畠山被告。自分の命が裁きの天秤(てんびん)にかけられているのに、死刑を「簡
単」と表現した被告が、子供2人の死の意味を自分に問いかけているとは思えない。
豪憲君の父米山勝弘さん(41)は証言台で、被告が日記に「今すぐ家族の元に帰れなければ死を選ぶ」と書いたことに触れ、「彼女の言う死はその程度。死
刑でも決して足りるものではない」と怒りに声を震わせた。かけがえない息子を失った米山さんの言う「死」は重い。
傍聴席で打ちひしがれながら姉を見つめ、証言台では「人殺しの家族と周りに言われる。自分と同じ思いをさせたくないから、結婚はしない」と述べた弟の言
葉にもまた、違う重みがあった。「下された刑以上に罪を償ってほしい。たとえ死刑だとしても」
判決は3月19日。我が身に「死」が突きつけられるまでその重さに気付けないのだとしたら、悲しい。【百武信幸】=おわり
毎日新聞 2007年12月30日
◆岩手この1年:/中 事件・事故 /岩手
◆勝訴の男性、判決前自殺
◇42年ぶりの死刑判決と強殺事件の発生
洋野町で06年、母娘2人を殺害し現金を盗んだ青森県の男に4月、盛岡地裁で42年ぶりの死刑判決。6月には一関市東山町の寺で強盗殺人事件が発生。同
町内の女が逮捕、同罪で起訴された。
◇遺族の願い、無念
学生無年金障害者訴訟控訴審で仙台高裁は2月26日、国に支払いを命令。勝訴の男性は県内の川で遺体で見つかった。判決前に自殺したとみられる。
また仙台高裁は翌27日、パトカー追跡巻き添え死訴訟で、警察官による事故結果の予見可能性と救護義務違反は認めたが、立証が不十分として損害賠償請求
を退けた。
◇無理心中相次ぐ
花巻市の女が1月、息子2人を刃物で刺して殺害。8月にも一関市大東町の男が将来を悲観し妻と弟、母を殺害。ガス自殺した。
◇男児、行方不明に
盛岡市の北上川近くで県立みたけ養護学校小学部の滝村隆規君(当時7歳)が行方不明に。両親、学校関係者、県警が捜索するが現在も見つからず。
◇記録的な暖冬
盛岡は、観測史上初めて前年12月から3カ月間真冬日がなかった。雪不足でスキー場は開店休場状態に。【山口圭一】
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1・14 花巻市内のアパートで兄弟の男児2人が殺害される。8日後、無理心中を図ったとしてパートの母親を殺人容疑で逮捕
2・ 5 盛岡市前九年の北上川近くで雪遊びをしていた県立みたけ養護学校小学部の滝村隆規君(当時7歳)が行方不明に
2・15 八幡平市の東北道弘前線田山トンネル付近で吹雪による視界不良で、大型トラックとトラック、乗用車など計8台が絡む玉突き事故が発生
2・26 学生時代に統合失調症と診断された県内男性が、国民年金の未加入を理由に年金を受けられないのは違憲だとして支給を求めた控訴審で、仙台高裁
は盛岡地裁の判決を支持、国に支払いを命じた。国が上告した
2・27 盛岡市の国道交差点で94年、パトカー追跡の車に追突され男女が死亡した事故で、仙台高裁は警察官の事故結果の予見可能性や救護義務違反を認
めたが、立証が不十分として損害賠償請求を退けた。遺族側が控訴した
2・28 エルニーニョ現象の影響で記録的暖冬。盛岡では、1924年の観測開始以来初めて前年12月から3カ月続けて真冬日がなかった
4・24 洋野町の母娘2人を殺害、現金などを盗んだとして強盗殺人罪などに問われた青森県八戸市の男に盛岡地裁が求刑通り死刑判決。同地裁での死刑判
決は42年ぶり。男は量刑不当として控訴
5・ 2 岩手山に入山した岡山県玉野市の夫婦が行方不明に。凍死した2人は山頂付近で見つかる
6・ 4 認知症だった盛岡市の女性(当時85歳)の預金口座から預金を引き出し、だまし取ったとして準詐欺と窃盗の罪に問われた花巻市の元ホームヘル
パーの女に対し、盛岡地裁は懲役7年の判決。女は事実誤認として控訴
6・ 5 雫石町議選に絡み、有権者に現金を渡した同町議を公選法違反容疑で逮捕。7月までに同法違反の罪で町内の有権者42人が書類送検され、元町議
ら8人が起訴された
6・14 一関市東山町田河津の遠応寺で、住職の鈴木秀良さん(59)と母ウメ子さん(81)が腹部などを刺され、遺体で発見された。県警は物色した跡
があったことなどから強盗殺人事件とみて捜査。12月5日、同容疑で同市東山町長坂の女(45)を逮捕。同26日に同罪で起訴
7・17 花巻市で8月、兄の農業男性宅に放火し、家族4人にけがを負わせたとして、現住建造物等放火と殺人未遂などの罪に問われた同市の弟に盛岡地裁
が懲役16年の判決
7・27 北上市の和賀中央農協(当時)の不正融資問題に絡み、農協が元組合長と元理事に損害賠償を求めた訴訟で、盛岡地裁は「担保を過大評価し不適切
だった」として計約8億4680万円を支払うよう命じる
8・29 一関市大東町で大工の男性(56)宅で男性とフィリピン人の妻(41)、弟(47)、母(78)の4人の遺体が見つかる。男性の無理心中とみ
て11月に殺人容疑で書類送検。12月26日に被疑者死亡のため不起訴
9・17 秋雨前線の影響で北東北で20日まで記録的大雨。北上川沿岸で床上浸水など相次ぐ。同じ月の台風9号と合わせ、被害は計約122億円に
9・27 大槌町発注の土木工事の指名競争入札で、談合したとして同町内の土木業者2人を逮捕。町内にある他の全12業者も談合容疑で書類送検。町が町
内全業者を指名停止とする事態に
11・20 同居の男性(23)を殴るけるなどして死亡させたとして、花巻市の大学生ら2人を傷害致死容疑で逮捕
11・30 東北大医学部などに総額2900万円を返還させる請求をするよう釜石市に求めた市民病院寄付金返還訴訟で、盛岡地裁は住民請求を棄却
毎日新聞 2007年12月30日
◆福岡・今年の重大ニュース:政治経済 北九州市長に北橋氏/博多井筒屋が閉店 /福岡
◇北九州市長に北橋氏
「事件」では1位の得票率が74%だったのに対し、今回の「政治・経済」では1位でも26%と、得票率の低さが目立つ。参院選での自民惨敗や安倍前首相
退陣、福田新内閣発足など国政は激動の1年だったが、県内では参院選が事実上の無風区だったことなどの事情からか、政治や経済のニュースは強いインパクト
に欠けたようだ。
その中で、5期20年で引退した末吉興一・前北九州市長の後を受け、民主党衆院議員だった北橋健治氏の同市長初当選が1位に推された。それまでの自民と
民主の相乗り構図が崩れ、国政と同じく「自民・公明」対「民主・社民」の激しい選挙戦となったことが関心を集めたとみられる。市長選の投票率も過去最低
だった前回(38・32%)を大幅に上回る56・57%だった。
民主は統一地方選での躍進が5位にランクされたほか、参院選で公認候補の岩本司氏が福岡選挙区で100万票を超えてトップ当選したニュースも次点(11
位)となっており、全体的な得票率が低調な中でも、国政と同じような傾向を示した。
一方、自民の話題はやはり地元選出議員の言動。麻生太郎氏の総裁選での善戦のほか、8月に安倍改造内閣で法相に就任した鳩山邦夫氏の「死刑発言」「テロ
リスト発言」が相次いで10位以内にランクイン。法相発言の是非をめぐる意見は寄せられなかったが、いずれも物議をかもしたのは間違いない。
◇博多井筒屋が閉店
経済ニュースでは、41年間にわたり福岡の玄関口の百貨店として親しまれてきた「博多井筒屋」が駅ビル建て替えに伴い閉店されたことが関心を呼んだ。福
岡銀行などの「ふくおかフィナンシャルグループ」の発足やベスト電器の資本・業務提携、タクシー運賃値上げなどは、生活に直結したり、その延長線上のこと
として興味を集めたとみられる。「小倉伊勢丹」の撤退表明は年末ぎりぎりだったため、ランキングに間に合わなかった。
10位以下は▽福岡市の人工島整備事業を見直し(9月)▽航空自衛隊築城基地で在日米軍再編後初の日米共同訓練実施(3月)▽福岡空港の将来像を拡充か
海上移転かに絞る(9月)▽JR九州が導入するICカードは「SUGOCA」(10月)、西鉄は「nimoca」(7月)に▽ドレッシングメーカーでレス
トラン経営のピエトロ(福岡市)が食用油最大手の日清オイリオグループと資本・業務提携(9月)▽九州新幹線で最長の筑紫トンネルが貫通(12月)−−な
どだった。
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【福岡この1年・政治経済10大ニュース】(%は得票率)
(1)北九州市長選で北橋健治氏が初当選(2月)26%
(2)博多駅の井筒屋が41年の歴史に幕(3月)23%
(3)福岡市のベスト電器が東京のビックカメラと資本・業務提携で合意(9月)18%
(4)自民党総裁選に麻生太郎氏が出馬し善戦(9月)16%
(5)九州電力の新社長に14人抜きで眞部利應氏が昇格(4月)13%
(5)ふくおかフィナンシャルグループが発足。のちに親和銀行の買収を発表、国内最大の地銀グループに(4、5月)13%
(5)統一選の県議選で民主躍進(4月)13%
(5)タクシーの初乗り運賃を値上げ(11月)13%
(5)鳩山邦夫法相が「死刑執行は自動的に」と発言し波紋(9月)13%
(10)鳩山邦夫法相が「日本にテロリストがいる」と発言(11月)7%
〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2007年12月30日
◆死刑判決:07年は47人…80年以降最多 厳罰化傾向
全国の裁判所で今年死刑を言い渡された被告が47人に上り、最高裁にデータがある80年以降最多だったことが毎日新聞の調べで分かった。拘置所に収容さ
れている死刑確定者も107人に上り、年末としては戦後最多となった。被害者感情を重視し、厳罰化傾向が進んでいることが背景にあるとみられる。
47人の内訳は▽1審で15人▽2審で14人▽上告審の最高裁で18人。死刑判決を受けた被告数は80年以降、年間5〜23人だったが、01年に30人
に達してからは▽02年24人▽03年30人▽04年42人▽05年38人▽06年44人−−と増え続けている。
主な死刑判決は▽仮釈放中に再び殺人事件を起こした西山省三死刑囚(54)=4月10日、最高裁▽地下鉄サリン事件の散布役では初めて死刑が確定した元
オウム真理教幹部、横山真人死刑囚(44)=7月20日、同▽前橋スナック乱射事件の矢野治被告(59)=12月10日、東京地裁−−など。
今年死刑が確定したのは、自ら控訴を取り下げた5人と、最高裁が上告を棄却した18人の計23人。今年は9人に死刑が執行されたが、年末の収容数は昨年
の94人から更に増えた。【高倉友彰】
▽渥美東洋・京都産業大法科大学院教授(刑事法)の話 メディアの犯罪報道などによって社会に厳罰主義の流れが進み、司法判断も影響を受けていること
が、死刑判決増加の背景にある。刑法犯の認知件数は減ってきているのに、全く落ち度がない子供が被害者になるような残忍な犯罪が増えていることも理由の一
つだ。幼少期のうちから、集団の構成員となるために必要な価値や規範を身に着けられるような福祉的活動や行政サービスを充実させ、死刑に相当する残忍な事
件を減らしていく社会全体の努力が必要になっている。
毎日新聞 2007年12月29日 2時30分
◆オフタイム:年末ワイド版 早過ぎた死=田中英雄 /福島
◇死刑執行に同僚思う
今夏、いわき市出身の男性を暴行し、車のトランク内に監禁して熱中症で死亡させた上、遺体を造成地に埋める事件があり、かかわった男4人のうち3人に今
月、懲役13〜9年の判決が確定した。このうち1人は殺人罪で服役出所した2カ月後に事件に関与していた。裁判長が糾弾した「規範意識の鈍磨」という言葉
が、傍聴した私にも重く聞こえた。
判決3日後の新聞紙上で、懐かしい名前を見つけた。と言っても友人・知人の名前ではない。四半世紀前に取材した殺人事件を起こした死刑囚だ。5人を刺殺
したとして死刑が執行され、戦後初めて氏名が公表された。「まだ生きていたのか」と、これまで死刑になっていなかったことが意外に感じられた。
同時に、10年以上も前に亡くなった同僚の顔が浮かんだ。薄暗い仕事場で、彼とこの事件の情報を交換した。彼は若くしてがんを患い、最後は病院を抜け出
し、やつれ果てた姿で別れを告げに来た。近くで見ると、背広の上から骨格が分かるほどだった。「病院にいなくていいのか」と詰問すると、「退屈でな」。彼
の目は柔和になごみ、「病気などどこ吹く風」という気概があった。来年定年を迎える私と同い年だったが、その日が彼との別れになった。
「天道、是か非か」とは、司馬遷が書いた重い言葉だが、死刑執行の記事を見ながら、同僚の早過ぎた死を思い、また、死刑囚に家族を殺された遺族は、元気
なうちにこの記事を読めただろうかと考えた。年が明けたら、同僚の墓前を掃苔(そうたい)して来ようと決めた。
毎日新聞 2007年12月29日
◆大逆事件:刑死者を名誉市民に…人権擁護の先駆者 新宮
大逆事件で処刑された医師、大石誠之助(1867〜1911)を人権擁護の先駆者として名誉市民にしようとする動きが、出身地の和歌山県新宮市で広がっ
ている。刑死者を名誉市民とするのは極めて異例だが、市や市議会も前向きだ。
大石は現在の新宮市仲之町で医院を開業。貧しい人を無料で診察し、反戦・反差別などの主張で知られ、文学者でもあった。近年の研究で、天皇暗殺計画とは
無関係の冤罪(えんざい)だったことが明らかになっている。
01年8月、当時新宮市立図書館長だった二河通夫さん(77)らが「『大逆事件』の犠牲者を顕彰する会」を結成し、「大石らは軍国主義下での自由・社会
主義者弾圧事件の犠牲者だ」と市に訴えた。市議会は翌月、名誉回復宣言を決議した。
更に「自由・平等・人権の先覚者として功績を表彰すべきだ」などと声が上がり、2011年の刑死100年を機に名誉市民にしようと、勉強会や市議会への
要請活動などに向けた準備が始まった。
名誉市民は、顕著な功労があった地元出身者の栄誉をたたえる制度。多くの自治体は条例で「禁固以上の刑に処せられたときは資格を失う」と定めているが、
新宮市にはこの規定がない。佐藤春陽市長は「大石の行動や思想は名誉市民にふさわしいと思う」と話している。【奥村隆、神門稔】
▽大逆事件 1910年に幸徳秋水らが明治天皇暗殺を企てたとして逮捕され、社会主義者ら24人が死刑判決を受けた言論弾圧事件。大石誠之助も共同謀議
の罪で翌年処刑された。
毎日新聞 2007年12月28日 20時13分
◆後藤被告の内心見えず 上申書事件 死刑囚の告白に翻弄
2007年12月28日 東京新聞
死刑判決を受け上告中(当時)の元暴力団幹部後藤良次被告(49)が、県警に提出した上申書で発覚した殺人事件。死刑囚が未発覚の殺人事件を告白すると
いう全国でも例がない事件の展開に振り回され、翻弄(ほんろう)された一年だった。
県警は一月、阿見町のカーテン販売会社社長栗山裕さん=当時(67)=を保険金目的で殺害したとして、殺人容疑で後藤被告ほか事件の首謀者とされる元不
動産ブローカー三上静男被告(58)や栗山さんの家族ら計八人を逮捕した。家族三人はそれぞれ懲役十五−十三年の有罪判決を受け、すでに服役している。
一家の公判では、「善良な市民」だった三人が、犯罪者に落ちていく姿が明らかにされた。身内を手にかけてまで得た約一億円もの保険金の大部分は、三上被
告らの手に渡った。三人が借金を返した後に残った保険金はわずかだったという。
栗山さんが遺体で見つかった際、司法解剖をしていれば全容解明がここまで遅れることはなかったかもしれない。県警のミスを指摘するのは簡単だが、検視・
司法解剖のシステムが他の先進国に比べ大きく劣っている事実も分かった。死因究明に向けての制度改善が急がれている。
県警は栗山さんとは別の残る二件の事件を解決するため、北茨城市内の空き地に男性を埋めたとされる事件で、四月に現地で大規模な捜索を行ったが、発見に
は至らず立件は厳しい情勢となっている。
栗山さん殺害事件では、後藤、三上両被告は現在、公判前整理手続きの最中で初公判の見通しが立っていない。事件当初から否認を続ける三上被告の事情はま
だ理解できるとしても、自ら上申書を提出したにもかかわらず、一部否認に転じる構えを見せている後藤被告は一体、何を考えているのだろうか。自分への刑の
執行を遅らせる展開となったことで、内心ほくそ笑んでいるのだろうか。
十二月、後藤被告が栃木県内で新たな殺人事件に関与したとする上申書を茨城県警に提出。栃木県警が捜査を始めるという新たな展開を迎えた。 (沢田佳
孝)=おわり
水戸、宇都宮両市で5人を殺傷した罪などに問われ、拘置中だった後藤被告が2005年10月、県警に3件の殺人、死体遺棄事件にかかわったとする上申書
を提出。栗山さん事件のほか、1999年に(1)金銭トラブルで絞殺された60歳前後の男性の遺体の処理を頼まれ、石岡市内の会社で焼却(2)70歳代の
資産家の男性を山中に生き埋めにして殺害したなどと、これまで未発覚の事件への関与を上申書で告白した。
◆前橋のスナック4人射殺:矢野被告が控訴 /群馬
前橋市のスナックで市民ら4人が射殺された事件などの指揮役として殺人罪に問われ、1審の東京地裁で死刑を言い渡された指定暴力団住吉会系矢野睦会会
長、矢野治被告(59)が27日までに、判決を不服として東京高裁に控訴した。東京地裁は判決で、矢野被告を一連の事件の首謀者と認め「全事件で指示があ
り、刑事責任は実行犯を上回る」とした。矢野被告は一貫して関与を否認していた。
毎日新聞 2007年12月28日
◆『何となく流されていった』 名古屋女性拉致殺害 川岸被告、本紙に手紙
2007年12月26日 東京新聞夕刊
名古屋市の会社員磯谷利恵さん=当時(31)=が八月、男三人に拉致、殺害された事件で、共犯者二人とともに強盗殺人などの罪に問われた無職川岸健治被
告(41)が、本紙に数回にわたり手紙を寄せた。携帯電話の闇サイトで仲間を募った理由を「多人数なら一人よりもやれることが広がり、互いに名前や身分を
明かす必要もない」「犯罪が発覚する恐れも少ない」と書いた。「(犯罪は)ばれなきゃやる」と過去に三度、闇サイトを使って詐欺などの犯罪行為をしたこと
も明かした。
川岸被告は八月中旬、携帯電話のサイト「闇の職業安定所」に「何かやりませんか」と書き込んだ。応じてきた三人と相談し、同月二十四日夜、そのうちの二
人とともに帰宅途中の磯谷さんを拉致しキャッシュカードなどを奪って殺害した。
川岸被告は手紙で「何となく書き込んだら人が集まり、何となく流されていった」と犯行に及んだ経緯を説明。当初は金庫破りなども計画したが、過去に殺人
や拉致を経験したことをほのめかした共犯者が、女性を拉致して金を引き出すことを提案したという。「その意見に従い、(殺人という)一線を越えてしまっ
た。三人の罪は一列と思う」とつづった。
犯行の動機は金目的とした上で、「集まってきた人物は自分と同類項だった」とし、そのうち一人が非常に金に困っていたため、すぐに犯罪で金を得る行動に
走ったという。自分は中学時代にいじめられたのをきっかけに「三十年近く虚勢を張ってきた」と振り返り、共犯者との虚勢の張り合いで、自制心が働かなかっ
たことを示唆した。
犯行後、愛知県警に電話して自首したことについては「死刑が怖かったわけではない。善と悪の心の葛藤(かっとう)があった。この時は善の部分が出た」と
説明。「責任は取る」と判決を受け入れる心境も語った。
被害者の磯谷さんについては、「常に毅然(きぜん)としていて、泣き叫んだり取り乱したりはしなかった」と記す。一方で、「遺族は言いたいこともあるだ
ろう。しかし私は口先だけの反省や謝罪をするつもりはない」とも語っている。
◆光母子殺人差し戻し控訴審結審<記者座談会>
弁護側新主張どう判断、「永山基準」枠広がるか
光市の会社員本村洋さん(31)方で、妻の弥生さん(当時23歳)と長女の夕夏ちゃん(同11か月)が殺害された事件で、殺人や強姦(ごうかん)致死な
どの罪に問われた元会社員(26)の差し戻し控訴審は、来年4月22日に判決が言い渡される。座談会2回目は、一連の公判の与える影響について話し合っ
た。
安田 最高裁が1、2審で認定された事実に誤りはないとしたため、差し戻し控訴審では事実関係については審理されないことも考えられた。
白岩 しかし、弁護側が事実誤認を主張した。結果としては、事実関係を審理したことは正解だった。1、2審の事実認定の一部に誤りがあるようにも思える
からだ。
竹田 公判中、光市の事件現場を訪ねてみた。本村さん方と元会社員の自宅との距離は、ほんのわずか。近所であるばかりか、同じ企業の社宅でもあり、周囲
の人間関係は濃密だったはず。犯行が計画的だったのかは、疑問に思った。
仁井 私も現場で同じ印象を受けた。しかも、本村さん方のベランダは敷地外の道路から見える場所で、玄関からは向かいの団地のベランダが見える。顔見知
りがいるであろう場所で、日中、計画性を持って侵入するということがあり得るのか。1、2審で認定された事実に、首をかしげる部分があるのは確かだ。
網本 弥生さんや夕夏ちゃんの遺体の外傷についても同じことが言える。本当に1、2審で認定された行為でついた傷なのか。
仁井 1、2審では、弁護側が事実関係を争うことはしなかった。「少年事件だから死刑判決はない」として取った戦術で、理解はできる。しかし、結果的に
事件の真相が明らかにならず、裁判を長引かせてしまった感は否めない。
網本 その意味で、結審後に弁護側が「実質的に今回が1審」とした言葉にはうなずける面もある。
安田 とは言え、事件からすでに8年半以上がたつ。では、今までの期間に司法は何をしていたのか。今回の判決の内容次第では、国民からの司法への批判は
免れないだろう。
白岩 〈死刑の基準〉という観点からも注目が集まる。被害者の人数、犯行時の年齢などを示し、死刑判決の目安となる「永山基準」では、元会社員は死刑に
なる可能性は低かった。永山基準の枠が広がるのかにも注目したい。
仁井 刑事裁判に一般国民が参加する裁判員制度の開始を約1年半後に控え、「もし自分が裁判員だったらどう判断するだろう」と関心を寄せる人も増えてい
るはずだ。判決次第では、司法への信頼が揺らぐことにもなりかねず、裁判所がどのような判断を下すのかをよく見届けたい。
白岩 全12回の公判で、双方が主張を全面的にぶつけ合い、審理は尽くされたと感じた。最高裁の判決に拘束される部分はあるのだろうが、証拠に基づき、
弁護側の新しい主張を裁判所がどのように判断するか、注目したい。
(2007年12月26日 読売新聞)
◆トランク遺体懲役23年求刑
八戸市の線路上で昨年7月、乗用車が焼かれてトランクから飲食業木村直美さん(当時33歳)(三沢市東町)が遺体で見つかった事件で、殺人などの罪に問
われた木村さんの元夫で元米兵のウィリアム・スコット・オマリ・マカリスター被告(26)の論告求刑公判が25日、青森地裁(渡辺英敬裁判長)であった。
検察側は「殺意は明らか」として懲役23年を求刑した。判決は来年2月1日。
検察側は論告の中で、同被告について「初めは一切の供述調書の作成を拒み、いまだにうそをついているなど、反省の色は見られない」と述べた。一方、弁護
側は「突発的犯行で殺意もなく、十分に反省している」として傷害致死罪の適用を主張。マカリスター被告は最終弁論で「許されることなら、木村さんの家族を
経済的に援助したい」と謝罪した。
この日は、論告に先立って木村さんの母親が意見を述べ、「娘の遺影をじっと見つめる孫がかわいそうでならない。できることなら被告人を死刑にしてほし
い」と涙ながらに訴えた。
(2007年12月26日 読売新聞)
◆メモ帳から・ワイド:死刑制度の是非 /山口
◇もっと知らされねば
9月29日、8年前に起きたJR下関駅通り魔事件で亡くなった男性(当時79歳)の次女夫婦に事件現場で再会した。
夫婦は花束をホームに供え、手を合わせた。父の無念を思い、涙を浮かべた次女は帰り際、取材のたびに口にする言葉をまた残した。「被告には極刑以外あり
得ないと思っています」
事件で15人が死傷した。被害者らがJR西日本にも求めた損害賠償訴訟は今年1月、被害者側の事実上の敗訴が確定。一方、刑事裁判は被告が1、2審の死
刑判決を不服として上告中。発生から8年余り。厳罰を望む遺族が最高裁判決を待つ今、死刑制度を取り巻く状況は変化している。
今月18日、国連総会が死刑執行の一時停止を求める決議を賛成多数で採択した。賛成はEUなど104カ国、反対は日米など54カ国、棄権が29カ国だっ
た。今後、死刑制度を持つ国への目は厳しくなりそうだ。
一方、内閣府の世論調査では存続を認める声が8割を超える。法務省は7日、今までの方針を変えて刑を執行した死刑囚の名前などを公表した。だが、これま
で名前すら明かさなかった中で8割が賛成していたと考えると恐ろしさも感じた。今後の存廃を含めた議論の中では、私たちは自国の制度をもっと知らされなく
てはいけないし、知ろうとしなくてはいけないはずだ。【福島祥】
〔下関版〕
毎日新聞 2007年12月26日
◆福岡・大牟田の4人殺害:「人命軽視甚だしい」 妻、次男の死刑支持−−高裁
福岡県大牟田市で04年に起きた4人連続殺害事件で強盗殺人罪などに問われた元暴力団幹部、北村実雄被告(63)一家4被告のうち妻真美(48)、次男
孝紘(23)両被告の控訴審で、福岡高裁は25日、いずれも死刑の1審・福岡地裁久留米支部判決(06年10月)を支持し、控訴を棄却した。正木勝彦裁判
長は「利欲的で人命軽視も甚だしく刑事責任は極めて重大。死刑はやむを得ない」と述べた。両被告の弁護人は上告する方針。
正木裁判長は真美被告について「日ごろから小夜子さんへの憤まんを漏らすなど、言動が一連の事件の契機となった。重要な役割を積極的に果たした」と指摘
した。孝紘被告については「4人をわずか2日間のうちに殺害した実行犯で、刑事責任は特に重い。顕著な人命軽視と極端な暴力肯定の態度が明白に認められ
る」と述べた。
◇判決の認定事実
(1)04年9月16日、孝紘、長男孝(27)両被告が共謀し、高見小夜子さん(当時58歳)の次男穣吏さん(同15歳)を首を絞めるなどして殺害し貴
金属を強奪=強盗殺人罪(2)同18日、4被告が共謀し▽小夜子さん▽長男の龍幸さん(同18歳)▽龍幸さんの友人の原純一さん(同17歳)を拳銃で射殺
するなどして現金を奪った=強盗殺人罪、殺人罪(3)4被告が共謀し拳銃を所持し発砲=銃刀法違反罪(4)4被告で共謀し、遺体を川に遺棄=死体遺棄罪。
◇孝紘被告「メリークリスマス!」
北村真美被告はワイン色の上着にベージュのズボン姿、孝紘被告は黒のスーツに白地に黒のヒョウ柄コートを羽織ってそれぞれ入廷した。孝紘被告は青のサン
グラスをかけ、長髪をうしろに束ね、一つ息を吐き着席した。
「本件各控訴を棄却する」。主文が読み上げられると、真美被告は身動きせず判決理由に聴き入った。対照的に孝紘被告は、落ち着かないように母を見たり、
傍聴席に視線を送ったり。閉廷後は、弁護人に「先生、メリークリスマス!」と声を掛けて法廷を後にした。
傍聴した高見さんの遺族は「犯人が死刑になっても、遺族の心が休まるわけではない。孝紘被告は最初から一つも変わらず反省がない。一家には人間社会から
退場してほしい」と声を震わせた。【石川淳一】
毎日新聞 2007年12月26日 西部朝刊
◆死刑を不服とし矢野被告が控訴 前橋のスナック 4人射殺事件
2007年12月26日 東京新聞
前橋市のスナックで二〇〇三年一月、市民ら四人が射殺された拳銃乱射事件で、首謀者として殺人罪などに問われた指定暴力団住吉会系矢野睦会会長矢野治被
告(59)の弁護側は二十五日、求刑通り死刑を言い渡した十日の東京地裁判決を不服として、東京高裁に控訴した。
判決では「具体的に犯行の指示をしており、刑事責任は実行犯を上回る」と指摘。「公判で供述を拒み、謝罪の態度も示さないなど、反社会的な人格は誠に根
深い。極刑をもって臨むほかない」としていた。
弁護側は「実行役とされる組幹部らの供述は虚偽で、事件は身に覚えがない」などと無罪を主張していた。
◆大牟田4人連続殺害:妻と次男に控訴審も死刑判決 福岡
福岡県大牟田市で04年に起きた4人連続殺害事件で、強盗殺人罪などに問われた元暴力団幹部、北村実雄被告(63)一家4被告のうち妻真美(48)、次
男孝紘(23)両被告の控訴審で、福岡高裁は25日、いずれも死刑の1審・福岡地裁久留米支部判決(06年10月)を支持し、控訴を棄却した。正木勝彦裁
判長は「利欲的で人命軽視も甚だしく刑事責任は極めて重大。死刑はやむを得ない」と述べた。両被告の弁護人は上告する方針。
判決によると(1)04年9月16日、孝紘被告が長男孝被告(27)と共謀し、高見小夜子さん(当時58歳)の次男穣吏さん(同15歳)を首を絞めるな
どして殺害し貴金属を強奪=強盗殺人罪(2)同18日、一家4被告が共謀し▽小夜子さん▽長男龍幸さん(同18歳)▽龍幸さんの友人の原純一さん(同17
歳)を拳銃で射殺するなどし現金を奪った=強盗殺人罪、殺人罪。銃刀法違反と死体遺棄の両罪も認定された。
正木裁判長は真美被告について「日ごろから小夜子さんへの憤まんを漏らすなど、言動が一連の事件の契機となった。重要な役割を積極的に果たした」と指
摘。孝紘被告については「4人をわずか2日間のうちに殺害した実行犯で、刑事責任は特に重い。顕著な人命軽視と極端な暴力肯定の態度が明白に認められる」
と述べた。
ともに1審で死刑の実雄、孝両被告=分離公判中=の控訴審判決は来年3月27日に言い渡される。実雄被告は控訴審で起訴事実をほぼ認めたが、孝被告は無
罪主張を続けている。【石川淳一】
毎日新聞 2007年12月25日 19時00分 (最終更新時間 12月25日 19時20分)
◆福岡・大牟田の4人殺害:妻と次男、2審も死刑−−高裁判決
福岡県大牟田市で04年に起きた4人連続殺害事件で、強盗殺人などの罪に問われた元暴力団幹部、北村実雄被告(63)一家4被告のうち、妻真美
(48)、次男孝紘(23)両被告の控訴審で、福岡高裁(正木勝彦裁判長)は25日、いずれも死刑とした1審・福岡地裁久留米支部判決(06年10月)を
支持し、両被告の控訴を棄却した。
1審判決によると、(1)04年9月16日、孝紘被告が長男孝被告(27)と共謀し、高見小夜子さん(当時58歳)の次男穣吏さん(同15歳)を殺害し
貴金属を強奪=強盗殺人罪(2)同18日、真美被告と孝紘被告が実雄被告、孝被告と共謀し▽小夜子さん▽長男の龍幸さん(同18歳)▽龍幸さんの友人の原
純一さん(同17歳)を殺害し現金を奪った=強盗殺人罪、殺人罪。ほかに銃刀法違反と死体遺棄罪も認定された。
控訴審で2被告の弁護人はいずれも「事件の従属的立場にあった」などと述べ、死刑回避を主張。真美被告側は「事件の全容を正直に話し、解明に貢献し
た」、孝紘被告側は「一家の手足として行動した」と主張した。1審は真美被告を「動機面の中心的存在」、孝紘被告を「4人全員の殺害を実行した」として
「冷酷非道、極めて凶悪」と指摘した。
4被告のうち、ともに1審で死刑の元暴力団幹部、実雄と孝の2被告の控訴審判決は来年3月27日に言い渡される。実雄被告は起訴事実を控訴審で一転して
認めたが、孝被告は無罪主張を続けている。【石川淳一】
毎日新聞 2007年12月25日 西部夕刊
◆母と二男に2審も死刑判決 福岡・大牟田の4人殺害で高裁
2007.12.25 14:02 産経ニュース
福岡県大牟田市で平成16年、母子ら4人が殺害された事件で、強盗殺人罪などに問われた一家4人のうち、母親、北村真美(48)、二男、孝紘(23)両
被告の控訴審判決が25日、福岡高裁であり、正木勝彦裁判長は求刑通り死刑を言い渡した1審・福岡地裁久留米支部判決を支持、被告側の控訴を棄却した。
両被告は1審から起訴事実を認めているが「役割は従属的だった」として量刑不当を主張、死刑回避を求めていた。
ともに1審で死刑判決を受けた父親の元暴力団幹部、実雄(63)、長男、孝(27)両被告の控訴審も既に結審し、来年3月に判決の予定。実雄被告は強盗
目的を否認、孝被告は犯行への関与自体を否定し無罪を主張している。
1審判決によると、4被告は共謀し、16年9月18日、知人の高見小夜子さん=当時(58)=に睡眠薬入りの弁当を食べさせて絞殺。長男、龍幸さん=同
(18)=と友人の原純一さん=同(17)=を拳銃で撃つなどして殺し、3人の遺体を車ごと川に沈めた。孝、孝紘両被告は同月16日、高見さんの二男、穣
吏さん=同(15)=を絞殺し、遺体を川に遺棄した。
4人の公判は途中で分離された。18年10月の判決は真美被告を「事件の中心的存在」、孝紘被告を「すべての殺害の実行行為者」と認定、「人命軽視の冷
酷で残虐な犯行。極刑しかない」と判断していた。
◆光母子殺人差し戻し控訴審結審…記者座談会(上)
光市の会社員本村洋さん(31)方で、妻の弥生さん(当時23歳)と長女の夕夏ちゃん(同11か月)が殺害された事件で、殺人や強姦(ごうかん)致死な
どの罪に問われた元会社員(26)の差し戻し控訴審は、4日の弁護側の最終弁論で結審した。審理は1、2審と異なり、検察側は「死刑を回避すべき特別な事
情を一切見いだすことはできない」、弁護側は「精神的に極めて幼い少年が起こした偶発的な事件」として、双方の主張が鋭く対立した。取材した記者が「死刑
回避の特別な事情」と「公判の与える影響」の二つのテーマで振り返る。
仁井 元会社員の情状面については、9月18〜20日の3日間に行われた被告人質問、遺族の本村さんらの意見陳述などの中で審理された。元会社員の反省
の度合い、更生の可能性が見えてきただろうか。
安田 元会社員は、本村さんが「君の犯した罪は、万死に値する」と語りかけた意見陳述の後に行われた被告人質問の中で、涙ぐみながら「生きたい。生きて
償いたい」と話した。
竹田 弁護団の一人が「元会社員の中に初めて『生きたい』という思いが生まれた」としたが、1、2審の弁護人も事実関係を争わなかったのは「死刑回避」
が大きな理由だったはず。であれば元会社員には当初から生きたいという気持ちがあったと思われ、弁護側の説明は説得力に欠ける。
網本 反省の度合いを考える上では、最後となった9月20日の被告人質問の終わりに、厳しい質問をした検察官に対する「なめないでいただきたい」という
発言に集約される。心から反省し更生を誓うのなら、遺族の前であのような発言ができるだろうか。
安田 本村さんはその発言の直前に、意見陳述で「君が裁判で発言できる機会は残り少ない。よく考えて発言してほしい」と語りかけていた。「本村さんに
会って謝りたい」と元会社員は述べたが、本当に本村さんが法廷で話した言葉を聞いていたのか疑問だ。
白岩 弁護側によると、閉廷後すぐに接見した際、元会社員は冷静になっていて、遺族や裁判所に謝罪の言葉を口にしたという。弁護側は「自分の過ち、至ら
なさを率直に認めて謝罪する成長ぶりを、理解してもらいたい」と最終弁論で訴えた。裁判官は、これをどのように受け止めるだろう。
仁井 捜査段階で自分の主張を受け入れてもらえず、検察官への不信感はあったというが、5〜12月の公判全体を通じて、検察官の質問に対して反発する姿
が目立った。
網本 弁護団が言うように教誨(きょうかい)を受けるなどして更生の兆しはあるかもしれないが、反省しているとはどうしても思えなかった。
竹田 最後の被告人質問で、元会社員が「モンスターのような僕ではなく、本当の僕を見てほしい」と、か細い声で訴えた。下手だが丁寧な言葉で話そうとす
る姿が印象的だった。
安田 公判で見た元会社員は「モンスター」ではなく、父親からの暴力に悩んだ「人間」だった。しかし、犯罪の結果が重すぎる。検察側は、不合理な弁解を
するなど、自分のしたことに向き合わないまま示す反省は、真の反省ではないと批判した。
仁井 虐待など様々な事情はあっただろうが、それが果たして死刑を回避するほどのものか、ということが、法廷で取材し続けた印象だ。裁判所がどのように
判断するかに注目したい。
座談会には広島総局 仁井慎治、竹田直人、安田栄一、福山支局三原通信部 白岩秀基、周南支局 網本健二郎が参加しました。
(2007年12月25日 読売新聞)
◆公判の与える影響 記者座談会(下)
光母子殺人差し戻し控訴審結審
山口県光市の会社員本村洋さん(31)方で、妻の弥生さん(当時23歳)と長女の夕夏ちゃん(同11か月)が殺害された事件で、殺人や強姦(ごうかん)
致死などの罪に問われた元会社員(26)の差し戻し控訴審は、来年4月22日に判決が言い渡される。座談会2回目は、一連の公判の与える影響について話し
合った。
安田 最高裁が1、2審で認定された事実に誤りはないとしたため、差し戻し控訴審では事実関係については審理されないことも考えられた。
白岩 しかし弁護側が事実誤認を主張した。結果としては、事実関係を審理したことは正解だった。1、2審の事実認定の一部に誤りがあるようにも思えるか
らだ。
竹田 公判中、光市の事件現場を訪れてみた。本村さん方と元会社員の自宅との距離は、ほんのわずか。近所であるばかりか、同じ企業の社宅でもあり、周囲
の人間関係は濃密だったはず。犯行が計画的だったのかは、疑問に思った。
仁井 私も現場で同じ印象を受けた。しかも、本村さん方のベランダは敷地外の道路から見える場所で、玄関からは向かいの団地のベランダが見える。顔見知
りがいるであろう場所で、日中、計画性を持って侵入するということがあり得るのか。1、2審で認定された事実に、首をかしげる部分があるのは確かだ。
網本 弥生さんや夕夏ちゃんの遺体の外傷についても同じことが言える。本当に1、2審で認定された行為でついた傷なのか。
仁井 1、2審では、弁護側が事実関係を争うことはしなかった。「少年事件だから死刑判決はない」として取った戦術で、理解はできる。しかし、結果的に
事件の真相が明らかにならず、裁判を長引かせてしまった感は否めない。
網本 その意味で、結審後に弁護側が「実質的に今回が1審」とした言葉にはうなずける面もある。
安田 とは言え、事件からすでに8年半以上がたつ。では、今までの期間に司法は何をしていたのか。今回の判決の内容次第では、国民からの司法への批判は
免れないだろう。
白岩 〈死刑の基準〉という観点からも注目が集まる。被害者の人数、犯行時の年齢などを示し、死刑判決の目安となる「永山基準」では、元会社員は死刑に
なる可能性は低かった。永山基準の枠が広がるのかにも注目したい。
仁井 刑事裁判に一般国民が参加する裁判員制度の開始を約1年半後に控え、「もし自分が裁判員だったらどう判断するだろう」と関心を寄せる人も増えてい
るはずだ。判決次第では、司法への信頼が揺らぐことにもなりかねず、裁判所がどのような判断を下すのかをよく見届けたい。
白岩 全12回の公判で、双方が主張を全面的にぶつけ合い、審理は尽くされたと感じた。最高裁の判決に拘束される部分はあるのだろうが、証拠に基づき、
弁護側の新しい主張を裁判所がどのように判断するか、注目したい。
◇
座談会には広島総局 仁井慎治、竹田直人、安田栄一、福山支局三原通信部 白岩秀基、周南支局 網本健二郎が参加しました。
(2007年12月25日 読売新聞)
◆増える死刑確定者 今年は23人に (1/2ページ)
2007.12.24 18:04 産経ニュース
今年1年の死刑確定者数が、「永山基準」といわれる死刑の判断基準ができた昭和58年以降で最も多い23人に上ることが24日、分かった。最高裁のまと
めによると、下級審の死刑判決も高い水準で推移しており、来年以降も年間確定者が急減することはないとみられる。死刑判決増加は、凶悪事件の増加や、量刑
判断基準の変化が影響しているとの指摘もある。
産経新聞のまとめでは、今年の死刑確定者は23人(24日現在)。法務省がまとめている検察統計年報によると、昭和58年以降の死刑確定は、63年に2
ケタの12人になったほかは、平成15年までは1ケタ台で推移していた。ところが、16年に14人と急増。昨年は21人と20人台に乗り、今年は昨年を超
えた。
今年の死刑確定者の内訳をみると、自ら控訴を取り下げた被告が5人。上告棄却は18人で、最高裁まで争われる場合が多いことが見て取れる。
一方、下級審の死刑判決を最高裁が「量刑不当」と判断したのはごく少数にとどまる。このため、下級審の死刑判決数が今後の死刑確定者数を左右することに
なる。
最高裁のまとめでは、昭和58年以降、控訴審で死刑判決を受けた被告は、平成12年までは1ケタだったが、13年に16人になり、以後は14年を除いて
は2ケタ台で推移。今年も9月末現在ですでに10人に達している。
このため、来年以降も死刑確定が急減することはないとみられる。
元最高検検事で白鴎大学法科大学院院長の土本武司氏は、死刑確定が増加している原因として(1)悪質な凶悪犯罪の増加(2)裁判所の量刑判断の変化−の
2点を挙げる。
(2)については、「殺害された被害者が1人なら懲役、2人はボーダーライン、3人なら死刑」との見方が法曹界では一般的だった。しかし、土本氏は「国
民世論が死刑を容認している中、被害者の数をとくに重視する傾向にあった裁判所の量刑判断が変化している」と指摘する。
例えば、静岡県三島市で女子短大生に生きたまま火をつけて殺害したとして、殺人などの罪で起訴され、今月17日に最高裁で弁論が開かれた服部純也被告
(35)のケースでは、被害者は1人で、1審判決は無期懲役だったが、2審は死刑を言い渡している。
一方、「究極の刑罰の死刑はバランスを考えて判断しており、基準はブレていないと思う」(あるベテラン裁判官)と、裁判所の変化を否定する声もある。
■永山基準 昭和58年7月、最高裁が連続4人射殺事件の永山則夫元死刑囚の判決で示した死刑適用の判断基準。犯行の動機や殺害方法の残虐性▽被害者の
数▽遺族の被害感情▽前科−など9項目を死刑適用の判断材料として挙げている。
◆光母子殺人差し戻し控訴審結審 記者座談会 (上)
率直に謝罪し成長 弁護側 真の反省見られず 検察側
山口県光市の会社員本村洋さん(31)方で、妻の弥生さん(当時23歳)と長女の夕夏ちゃん(同11か月)が殺害された事件で、殺人や強姦(ごうかん)
致死などの罪に問われた元会社員(26)の差し戻し控訴審は、4日の弁護側の最終弁論で結審した。審理は1、2審と異なり、検察側は「死刑を回避すべき特
別な事情を一切見いだすことはできない」、弁護側は「精神的に極めて幼い少年が起こした偶発的な事件」として、双方の主張が鋭く対立した。取材した記者が
「死刑回避の特別な事情」と「公判の与える影響」の二つのテーマで振り返る。
仁井 元会社員の情状面については、9月18〜20日の3日間に行われた被告人質問、遺族の本村さんらの意見陳述などの中で審理された。元会社員の反省
の度合い、更生の可能性が見えてきただろうか。
安田 元会社員は、本村さんが「君の犯した罪は、万死に値する」と語りかけた意見陳述の後に行われた被告人質問の中で、涙ぐみながら「生きたい。生きて
償いたい」と話した。
竹田 弁護団の一人が「元会社員の中に初めて『生きたい』という思いが生まれた」としたが、1、2審の弁護人も事実関係を争わなかったのは「死刑回避」
が大きな理由だったはず。であれば元会社員には当初から生きたいという気持ちがあったと思われ、弁護側の説明は説得力に欠ける。
網本 反省度合いを考える上では、最後となった9月20日の被告人質問の終わりに、厳しい質問をした検察官に対して行った「なめないでいただきたい」と
いう発言に集約される。心から反省し更生を誓うなら、遺族の前であのような発言ができるだろうか。
安田 本村さんはその発言の直前に、意見陳述で「君が裁判で発言できる機会は残り少ない。よく考えて発言してほしい」と語りかけていた。「本村さんに
会って謝りたい」と元会社員は述べたが、本当に本村さんが法廷で話した言葉を聞いていたのか疑問だ。
白岩 弁護側によると、閉廷後すぐに接見した際、元会社員は冷静になっていて、遺族や裁判所に謝罪の言葉を口にしたという。弁護側は「自分の過ち、至ら
なさを率直に認めて謝罪する成長ぶりを、理解してもらいたい」と最終弁論で訴えた。裁判官は、これをどのように受け止めるだろう。
仁井 捜査段階で自分の主張を受け入れてもらえず、検察官への不信感はあったというが、5〜12月の公判全体を通じて、検察官の質問に対して反発する姿
が目立った。
網本 弁護団が言うように教誨(きょうかい)を受けるなどして更生の兆しはあるかもしれないが、反省しているとはどうしても思えなかった。
竹田 最後の被告人質問で、元会社員が「モンスターのような僕ではなく、本当の僕を見てほしい」と、か細い声で訴えた。下手だが丁寧な言葉で話そうとす
る姿が印象的だった。
安田 公判で見た元会社員は「モンスター」ではなく、父親からの暴力に悩んだ「人間」だった。しかし、犯罪の結果が重すぎる。検察側は、不合理な弁解を
するなど、自分のしたことに向き合わないまま示す反省は、真の反省ではないと批判した。
仁井 虐待など様々な事情はあっただろうが、それが果たして死刑を回避するほどのものか、ということが、法廷で取材し続けた印象だ。裁判所がどのように
判断するかに注目したい。
座談会には広島総局 仁井慎治、竹田直人、安田栄一、福山支局三原通信部 白岩秀基、周南支局 網本健二郎が参加しました。
(2007年12月24日 読売新聞)
◆死刑制度:「存続すべき」9割 ネット調査
毎日新聞がNTTレゾナントの協力を得て行ったインターネット調査で、死刑制度について質問したところ、「存続すべきだ」が90%に上り、「廃止すべき
だ」は10%にとどまった。国連総会は死刑執行の一時停止を求める決議案を採択したが、国内では死刑制度の存続を求める声は根強いようだ。
「存続すべきだ」と答えた人に理由を尋ねると「命で償うべきだ」が48%で最多。次いで「凶悪犯罪の抑止になる」24%、「再犯の可能性がある」
15%、「被害者の遺族感情がおさまらない」13%。
「廃止すべきだ」と回答した人の理由は(1)「死刑にせずに罪を償わせるべきだ」42%(2)「国家が人を殺すことになる」22%(3)「裁判に誤りが
あると取り返しがつかない」21%(4)「凶悪犯罪の抑止にならない」15%−−の順だった。
また、09年春にスタートする裁判員制度で、無作為に選ばれる市民が死刑などが定められた重大事件を裁くことに対しては、「負担に思う」が73%で、
「負担に思わない」が27%だった。【中山裕司】
<調査の方法>14〜15日、gooリサーチのモニターから無作為で選んだ20歳以上を対象にインターネットで調べ、1092人から回答を得た。
毎日新聞 2007年12月22日 18時03分 http://mainichi.jp/select/today/news/20071223k0000m040021000c.html
(最終更新時間 12月22日 18時38分)
◆公安庁:北朝鮮の核で曲折予想 08年版「内外情勢の回顧と展望」で
公安調査庁は国内外の治安情勢をまとめた08年版「内外情勢の回顧と展望」を公表した。無能力化に向けた作業が始まった北朝鮮の核問題について、
「『核問題進展』をアピールし、最大限の実利獲得をめざすとみられるが、完全放棄実現には多くの問題が残されており、曲折が予想される」と分析している。
国内では、オウム真理教(アーレフに改称)について、上祐史浩元代表を支持する信者が主流派から分かれ、新団体を設立した動きに言及。主流派は松
本智津夫(麻原彰晃)死刑囚への絶対的帰依を強めており、上祐派も教材の分析などから依然として同死刑囚の影響下にある、と指摘している。
毎日新聞 2007年12月22日 東京朝刊 http://mainichi.jp/select/wadai/news/20071222ddm012010070000c.html
◆秋田・藤里町の2児殺害:来年3月19日判決 鈴香被告「娘殺害認定なら控訴」
◇公判
秋田県藤里町で昨年4、5月に起きた連続児童殺害事件で、殺人と死体遺棄の罪に問われた畠山鈴香被告(34)の秋田地裁(藤井俊郎裁判長)公判は21日
の第12回で証拠調べが終了した。来年1月25日に論告求刑が行われ、判決は3月19日に言い渡される。
被告人質問で畠山被告は殺害した米山豪憲君(当時7歳)の両親の思いに触れ「米山さんが死刑を望むのは当然で、死刑に処される方がいいと思うが、
家族を思うと簡単に死刑になっていいのか二つの心を持っている」と表明した。一方で長女彩香ちゃん(当時9歳)の橋からの転落を事故だと主張していること
から「(判決で)娘を殺したと認定されたら、たぶん控訴する」と述べた。
この日の公判では被告の精神鑑定をした青森市の精神科医、西脇巽医師の証人尋問が行われた。
西脇医師は彩香ちゃんの転落について「心中未遂とみている。自分が殺意を持ったことを忘れたいと思い、即時健忘に等しい状態になった」と述べた。
米山豪憲君の殺害・死体遺棄当時の責任能力は「あまり減弱していない」とし、殺害は「衝動的。無差別的なものではなく、娘の遊び相手を与えるためと考える
と整合性がある」と説明した。また被告に人格障害があると指摘し「社会に対し閉じこもりがちで、身内に過敏」と述べた。【百武信幸、岡田悟】
毎日新聞 2007年12月22日 東京朝刊 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071222ddm012040073000c.html
◆売春強要の元女性教師死刑判決
2007年12月22日 朝刊 東京新聞 http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007122202074156.html
新華社電によると、中国貴州省の畢節地区中級人民法院(地裁)は今月十四日、女子小中学生ら二十五人に売春を強要した小学校の元女性教師、趙慶梅被告
(28)に死刑判決を言い渡した。
判決によると、趙被告は中学校教師の夫(執行猶予付き死刑判決)らと共謀し、十一−十七歳の女子児童、生徒らを「農作業を手伝って」などとだまし
て旅館に連れ込み売春をさせた。「言うことを聞かないと家に帰さない」などと脅したほか、客に乱暴をさせた事例もあった。犯行後も「家族に話したら殺す」
と口封じをしていた。 (北京・鈴木孝昌)
◆秋田連続児童殺害:証拠調べ終了、3月19日に判決
秋田県藤里町で昨年4、5月に起きた連続児童殺害事件で、殺人と死体遺棄の罪に問われた畠山鈴香被告(34)の秋田地裁(藤井俊郎裁判長)公判は21日
の第12回で証拠調べが終了した。来年1月25日に論告求刑が行われ、判決は3月19日に言い渡される。
被告人質問で畠山被告は殺害した米山豪憲君(当時7歳)の両親の思いに触れ「米山さんが死刑を望むのは当然で、死刑に処される方がいいと思うが、
家族を思うと簡単に死刑になっていいのか二つの心を持っている」と表明した。一方で長女彩香ちゃん(当時9歳)の橋からの転落を事故だと主張していること
から「(判決で)娘を殺したと認定されたら、たぶん控訴する」と述べた。
この日の公判では被告の精神鑑定をした青森市の精神科医、西脇巽医師の証人尋問が行われた。
西脇医師は彩香ちゃんの転落について「心中未遂とみている。自分が殺意を持ったことを忘れたいと思い、即時健忘に等しい状態になった」と述べた。
米山豪憲君の殺害・死体遺棄当時の責任能力については「あまり減弱していない」と判断し、殺害は「計画的ではなく衝動的。無差別的なものではなく、娘の遊
び相手を与えるためと考えると整合性がある」と説明した。また被告に人格障害があると指摘し「社会に対しては閉じこもりがちで、身内には過敏」などと述べ
た。【百武信幸、岡田悟】
毎日新聞 2007年12月21日 21時15分 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071222k0000m040102000c.html
◆生徒に売春強要の教師死刑 中国の貧困山村
2007.12.21 13:50 産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/world/china/071221/chn0712211351000-n1.htm
21日付の中国紙、京華時報によると、中国貴州省畢節の中級法院(地裁)は14日、貧困山村の生徒や児童23人に売春をさせ、強制売春の罪に問われた元
小学校教師の女(28)に死刑判決を言い渡した。
女は少数民族が住む貧困地区で2006年3月から同6月までの間、中学校教師の夫や学校の元同僚らと結託し、11−17歳の教え子を地方都市に連れて行
き、売春をさせて約32000元(約50万円)を稼いだ。
夫は執行猶予付きの死刑判決を受けたほか、強制売春に関与した女の元同僚や友人ら16人が無期懲役などの有罪判決を受けた。(共同)
◆父と長男に来年3月判決 4人殺害、控訴審結審
2007.12.20 17:15 産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071220/trl0712201715030-n1.htm
福岡県大牟田市で金目当てに知人ら4人を殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われ、1審福岡地裁久留米支部で死刑
判決を受けた一家4人のうち、父親の元暴力団幹部、北村実雄(63)、長男、孝(27)両被告の控訴審が20日、福岡高裁(正木勝彦裁判長)で結審した。
判決は来年3月27日。
この日の公判で、孝被告の弁護側は「共犯者の供述は信用できるとは言い難く、犯行時にアリバイもある」とあらためて無罪を訴えた。
実雄被告は、一審では自身の単独犯行としていたが、控訴審では妻の真美被告(48)らとの共謀を認めた上で「金品を奪うつもりはなかった」と主張を変更
している。
起訴事実を認めている真美、二男の孝紘(23)両被告の控訴審は既に結審しており、今月25日に判決が言い渡される。
1審判決によると、4被告は共謀し、平成16年9月18日、知人女性=当時(58)=を絞殺。その長男=同(18)=と友人=同(17)=を拳銃(けん
じゅう)で撃つなどして殺害し、3人の遺体を車ごと川に沈めた。孝、孝紘両被告は同月16日、女性の二男=同(15)=を殺害し、遺体を川に遺棄した。
◆【セレブ妻バラバラ初公判(9)完】地獄の結婚生活「私 VS だんな側の人間」(12:00〜12:25)
2007.12.20 13:48 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071220/trl0712201348025-n2.htm
《正午を回ったが、弁護側による証拠の読み上げが続いた。次々に明かされていくのは、事件前の結婚生活で、三橋歌織
被告が書いたとみられる手帳、メモ類の内容だ。暴力をふるっていたとされる夫の祐輔さんに対し、殺意につながる鬱憤を蓄積していくまでの過程が列挙されて
いく》
弁護側「『まさに地獄の生活に身を置くだけ。もう決心しよう』『夜、おなかがすいたとうるさいので、みそ汁を作った』……」
《弁護側によるメモ類の読み上げは続く。歌織被告が、夫婦間のトラブルが、自分の思う通りに周囲に伝わっていないことに、孤立感を深めていた印象を与え
る記述もあった》
弁護側「(祐輔さんが)勝手に知人に連絡し、一方的に都合のいい言い分を、事実と違う形で伝えていた」
「一見優しいが、信じられないくらい二重人格」
「以前は『私 VS だんな』だったが、今は『私 VS だんな側の人間』で包囲されるような状況。いかに有利に別れられるか、必死に自己防衛してい
る」
《泥沼の夫婦生活を書いた、自身のものとみられるメモ類が読み上げられている間、歌織被告は、目をつぶって下を向いていた》
その後、河本雅也裁判長が協議のため休廷することを告げると、歌織被告は顔に手を当て、髪をかき上げたりして落ち着かない。
裁判長らが退席すると、右隣の女性刑務官に何かを尋ね、刑務官が答えると、目を閉じて再開を待った。
裁判長「再開します」
数分後に再び現れた裁判長は、検察側と弁護側を近くに呼んだ。
歌織被告はその様子をしばらく見ていたが、再び目を閉じたまま待った。
相談が終わると、裁判長は証人尋問の際に、必要に応じて証人を匿名にしたり、目隠しして見えなくなるようにする措置を取ることを決めた。
さらに、公判前整理手続きで弁護側、検察側双方から請求があった精神鑑定の実施を認めたことを告げた。
《午後0時25分、12月25日の次回公判のスケジュールを説明して審理は終わった》
《たびたび泣いていた被告の目は赤く、遠目からでも腫れぼったくなっていた。手錠と腰縄をつけられ退席しようとする歌織被告は、傍聴席にいた祐輔さんの
両親と目を合わせようとはしなかったが、父が遺影を突きつけるようにすると、一瞬気づいたように振り返った》
◆【セレブ妻バラバラ初公判(8)】母「歌織は悪魔だ」(11:45〜12:00)
2007.12.20 13:34 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071220/trl0712201334022-n1.htm
《検察側は、さらに祐輔さんの母親の供述調書を読み続けた》
検察側「刑事から『バラバラの遺体が、事前に私から採取したDNAと50%ほど一致した』といわれた。『本当の所はどうなんですか? (完全に)一致し
たのか?』と訪ねると、刑
事は『まあ、個人的な感想では8割方は息子さんと一致したと思う。しかし、父親のDNAも採取して確認するからまだはっきりとはいえない』といわれた。刑
事は気を使っているな、という印象だった」
「夫は、刑事からの電話を横で聞いていて、突然、『うおぉー』と泣き叫んで2階に駆け上がって
いった。私も希望の糸が断ち切れ、頭は真っ白。祐輔との日々が走馬燈のように浮かんだ。『祐輔は何をしたの? 歌織はなんてひどいことをしてくれたの?
』と同じことを何度も心の中で叫んだ。その後、歌織が警察に逮捕され、祐輔を殺したことを認めたと知った。大事な祐輔がこんなことになったという悔しさ
と、祐輔がこの世にいない悲しさ。なぜバラバラにされなければいけなかったのか」
《歌織被告は、またハンカチで鼻を押さえ、うつむいた》
検察側「歌織が祐輔の頭を切断し、町田市の公園に運んだと報道で知った。町田市に祐輔の頭を運ぶ歌織を想像し、憎しみで体がはじけそうになった。そんなこ
とを普通の感覚でできるのか? 歌織は悪魔なのか? こんなに人のことを憎めるのかと言うくらい、歌織が憎かった。テレビでは『祐輔が暴力夫で、歌織はや
むを得ず犯行に及んだ』みたいな感じで報道されていたが、うちの祐輔は暴力夫ではない。そういった報道が真実のように流されていたので傷ついた」
《祐輔さんの母親の供述調書は、改めて息子への思いにも触れている》
検察側「祐輔が結婚したことで、やっと一人前になったと、親の最低限の責任を果たしたとひと安心していた。私の友人には孫の話をする人もいるが、これか
らは聞いているだけでなく、その会話に入れるのではないかと。祐輔に子供ができることを楽しみにしていた」
「私は祐輔が東京で暮らし、好きな仕事をして好きな人と暮らし、たまに孫を見せに北九州に帰ってきてくれればいいと思っていた。どこの家にもある幸せを味
わいたかった。どうして殺されたのが祐輔じゃないといけないのか。被害者がよその人ならばいいわけではないが、納得できない」
「歌織は夫
を殺してバラバラにして捨てた。とても普通の人にはできない。歌織は悪魔だ。そんな人は社会で暮らす権利はない。死刑にしてほしいが、それでは一瞬の苦し
みでおしまいだ。そんなものではなく、一生苦しみ続けてほしい。私たちは祐輔を一生背負っていかなければならない。歌織を死ぬまで刑務所に閉じこめて、罪
を償わせてほしい。刑務所から戻り、祐輔のことを忘れ、自分の人生を歩むことなど許さない」
《祐輔さんの母親の訴えを、歌織被告はうなだれながら聞いていた》
=(9)へ続く
◆【セレブ妻バラバラ初公判(6)】ノコギリ見せられ「私のものです」 スクリーンにかつてのわが家…(11時15分〜11時30分)
2007.12.20 13:07 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071220/trl0712201307020-n1.htm
《続いて検察側は、解剖の報告書や遺体の鑑定書を証拠として示し、夫だった祐輔さんの頭部に10カ所の傷があり、死
因は脳挫傷の可能性がもっとも高いことを明らかにした。犯行当時のことを思いだしたのか、歌織被告は鼻に手をやったり、ハンカチを鼻に当てたりして落ち着
かない。体を震わせることもあった。検察側は犯行後に実家に送ったブルーシートや祐輔さんが寝ていたマットレスを証拠として示し、凄惨な犯行現場の様子を
表現した》
検察側「(マットレスは)赤黒く変色していた」
《マットレスの説明が続く間、歌
織被告はしばらく目を閉じた。1、2分後に目を開けると、再びうつろな表情で前を見つめた。その後、検察側が証拠品として示したのは、歌織被告が祐輔さん
の遺体を切断する際に使用したノコギリ。法廷中央に移動する歌織被告。ノコギリを手にした検察側とのやり取りが始まった》
検察側「見えますか」
被告「はい」
検察側「このノコギリで切断したのか」
被告「はい」
検察側「これは誰のもの」
被告「私です」
検察側「あなたが買ったものですね」
《消え入りそうな細い声で歌織被告は答え、元の席に戻った。続いて証拠として示されたのは祐輔さんと被告が暮らしていたマンションの検証調書。スクリーン
にマンションの外観や内部の写真が映し出された。かつてのわが家の様子を、歌織被告はじっと表情も変えず見つめた。その後検察側は犯行後の隠蔽(いんぺ
い)工作の証拠として、クローゼットなどを回収した業者や床の張り替え作業をした業者の供述調書を示した》
=(7)に続く
◆【セレブ妻バラバラ初公判(4)】「暴行と謝罪で逃げられず」食い違う弁護側冒陳「検察は被告を『汚い奴』」(10:45〜11:00)
2007.12.20 12:37 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071220/trl0712201238016-n1.htm
《弁護側の冒頭陳述が続く。弁護人は夫、祐輔さんの歌織被告に対する振る舞いは「DVの典型」と主張した》
弁護側「祐輔さんは酒を飲んだりして帰宅も遅く、歌織被告は風呂にも入れなかった。また、化粧をしていると、外出して浮気をしているのではないかと疑い、
歌織被告は化粧をすることもできなかった。祐輔さんは浮気をしていないか疑い、追及し、歌織被告の外出先でも領収書を取っておくように命令。携帯の履歴を
確認したりして疑った。暴力も振るわれて常に恐れ、緊張した状態だった」
《ここで弁護士は一呼吸おいて、語気を強めて語り出す》
弁護側「『逃げればいいのでは』と考える人はDVに無理解だ。祐輔さんはDVをしないときは全くの別人で、歌織被告に謝罪した。歌織被告が出ていこうと
すると追いかけて連れ戻し、謝罪する。だから歌織被告も信じようと思った、そしてまた暴力。これは、DVの典型だ」
《歌織被告と父親の関係についても言及する》
弁護側「歌織被告は父親と確執があり、実家にだけは戻れないと考えていた。しかし平成16年、祐輔さんの暴力に耐えきれず、一度、実家に。しかし父親と衝
突して『実家にも逃げることができない』とまた家に戻った。平成17年6月27日深夜に、歌織被告は祐輔さんから顔面を殴られ、『てめぇ、逃げられると
思っているのか、今日こそ、ぶっ殺してやる』といわれ、裸足で隣の病院に逃げた。鼻骨骨折して警察に保護され、シェルターに避難した」
《祐輔さんとの結婚生活を振り返る弁護士の冒頭陳述を聞きながら当時を思いだしたのか、歌織被告はハンカチで顔を抑え、何度も嗚咽(おえつ)を漏らし
た》
弁護側「シェルターから戻ると、さらに祐輔さんの束縛が強くなった。離婚にも応じてくれず、歌織被告は祐輔さんから名前を呼ばれただけで恐怖を感じるよ
うになっていった。歌織は暴力に使われそうなものを隠し、いつでも逃げられるように携帯を持って生活していた」
「その後、歌織被告は、離婚するために、自宅にICレコーダーを置いて、祐輔さんが浮気相手と会話する決定的な会話を録音。証拠をつかんだと思い、その
日は『早く帰宅して』と祐輔さんに電話した。しかし、同時に殺されるのではと怖くなった」
「結局、祐輔さんは午前4時ごろに帰宅。寝ている祐輔さんを見て、殺されるのではと緊張し、もう逃げられないと思い、自分の行動をコントロールできず、ワ
インの瓶で祐輔さんの頭を殴打した。周囲は血で染まり、動かない祐輔さんを見ても、まだ怖くて、早く祐輔さんを消し去りたいと考え、運搬を計画。しかし、
運ぶことができず、損壊した。これが事件の真相だ」
《弁護士は、警察、検察批判も行う》
弁
護側「われわれの主張が、検察の冒頭陳述となぜ異なるか。それは、取り調べに問題があったから。本来、真実を解明するのは検察の義務。しかし、警察、検察
は、本件がなぜ起こったか、耳を傾けることがなかった。検察官の1人は歌織被告を『汚い奴が、囲い者が』と侮辱。歌織被告の話に耳を傾けず、真実知る努力
を放棄した」
=(5)へ続く
◆【セレブ妻バラバラ初公判(3)】弁護側はDV主張「夫、被告の匂いかぎ監視」(10:30〜10:45)
2007.12.20 12:15 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071220/trl0712201215014-n1.htm
《検察側の冒頭陳述が引き続き行われ、三橋歌織被告の犯行後に行った証拠隠滅について説明した》
検察側「平成18年12月13日ころ、被害者の無断欠勤を心配した被害者の上司から、捜索願を出すように言われたが、すでに捜索願を出したと嘘を言った。
実際に出していないことがばれ、15日に警察署に捜索願を提出した際、被害者の左胸上に手術痕があるなどと嘘をついた」
《検察側はさらに、被害者が生きているように偽装するため、被害者の携帯電話からメールを送ったことなどを明らかにしていく。歌織被告は動揺した様子は
みせず、正面にあるスクリーンを見つめる》
検察側「弁護人は『被害者の被告人への一方的、継続的な暴力や監視、束縛によって、PTSDになり、被告人は心神喪失か心神耗弱の状態にあった』と主張し
ているため、被告人の責任能力が争点になる。しかし、検察官は、これまで述べた事実と証拠により、弁護人の主張するようなDVはなく、犯行当時もPTSD
になっておらず、完全責任能力があったことを明らかにします」
《続いて、弁護側の冒頭陳述が始まった。歌織被告の後ろで、座っていた弁護人が立ち上がる》
弁護側「歌織さんと祐輔さんは夫婦であり、妻が夫を殺害するという痛ましい事件。2人の間に何があったのか。結論から言えば、結婚から暴力があった。肉体
的暴力、束縛、監視というDVがあった。歌織さんは暴力から逃れたい一心で、事件を起こした。2人には事件に至るまでの歴史があった」
《DVはなかったという検察側と、真っ向から対立する主張で始まった冒頭陳述。弁護側はDVの詳しい内容について語り続ける》
弁護側「2人は15年3月に結婚した。歌織さんへのDVは結婚前からあり、結婚してからエスカレートした。たとえば、結婚当初、歌織さんが知人で電話し
ていたとき、電話をとりあげられ、平手で顔をぶたれたことがあった」
《それまで正面を見据えていた歌織被告はやや顔を伏せ、弁護側の冒頭陳述を聞き続ける》
弁護側「品川区のマンショ
ンに引っ越したときには、2日で水道が開設できていないことを理由に殴られ、倒され、首を絞められ、引きずられた。15年10月ごろから日常的に暴行を受
けるようになり、歌織さんは逃げたいと思うようになった。祐輔さんはベルトやガムテープで手首を縛ったり、口をふさいだりした」
《祐輔さんが行ったという肉体的暴力について詳しく述べた弁護側は、精神的暴力についても言及していく》
弁護側「祐輔さんは歌織さんのキャッシュカードを折り、ライターで溶かした。服を切り裂くこともあった。外出先から歌織さんにメールや電話で『何をしてい
るのか』を執拗に追及した。買い物をしていると言っても信じようとせず、周囲を写真撮影させ、メールに添付させることもあった。帰宅した歌織さんの体のに
おいを確認することもあった」
=(4)へ続く
◆【セレブ妻バラバラ初公判(2)】DVやんでいた 「有利な離婚」焦る歌織被告、凶器はワインボトル(10時15分〜10時30分)
2007.12.20 11:44 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071220/trl0712201144010-n1.htm
《検察側の冒頭陳述が続く。祐輔さんの暴力がなくなった状況を説明し、歌織被告が暴力以外での離婚理由を探そうとしている状況を明らかにした》
検察側「被告人名義でマンションを購入させ、離婚後に自分のものにしようと考えていた」
《冒頭陳述は祐輔さんの事件前の状況に移る。祐輔さんは11月中旬に被告以外の女性と交際を始め、離婚を考え出した。一方、自分に有利な条件をつかもうと
していた歌織被告は12月9日ごろ、自宅にボイスレコーダーをしかけ外出。その後確認すると祐輔さんと交際女性との会話が録音されていた。歌織被告は相変
わらず、じっと検察官のほうを見据えたままだ》
検察側「それを突きつければ、有利に話を進められると考えた」
《12月11日、歌織被告は自宅に友人を呼び、録音内容を確認してもらう。友人は「いざ離婚となってもマンションを取り上げるのは難しい」と話したと、
冒頭陳述で明らかにした》
検察側「(被告は)有利な条件で離婚できないと分かり、落胆した」
《いよいよ冒頭陳述は犯行日の12月12日に移る。離婚の話をしようとしていた日、帰宅した祐輔さんは布団マットで眠った。それを見た歌織被告は自分の
思い通りに離婚話が進まない腹立ち、自分のプライドを傷つけられた悔しさから殺害を決意した》
検察側「台所にあった中身入りのワインボトルで、祐輔さんの頭を力一杯殴った」
《続いて冒頭陳述は、詳細な犯行状況を描写した》
検察側「被害者が頭を抱えるように上体を起こしたことから、さらに数発力一杯殴った」
《祐輔さんを殺害した歌織被告。冒頭陳述は死体損壊、死体遺棄の状況に移る。検察官はプロジェクターを使って、歌織被告がどのように遺体を切断したかを
説明した。》
検察側「自宅でノコギリを使って、まず頭部を切断した」
《この頃から歌織被告の様子に変化が現れた。それまでじっと検察官を見据えていたが、髪をかき上げたり、鼻に手をやったり、唇をなめるなど時折落ち着かな
い様子が見られた。冒頭陳述は、12月14日、歌織被告が切断した上半身を入れたゴミ袋が入ったキャリーケースに入れ、タクシーで新宿駅付近に運び、植え
込みにゴミ袋を捨てた状況に移った》
=(3)へ続く
◆【セレブ妻バラバラ初公判(1)】歌織被告に「愛人」 結婚前から継続(9:58〜10:15)
2007.12.20 11:21 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071220/trl0712201121008-n2.htm
《東京地裁104号法廷。傍聴席から向かって左側には、2メートル四方程度のスクリーンがはられている。冒頭陳述の
内容を傍聴人に分かりやすく説明するための補足資料などを映し出すためだ。事件の遺族らとみられる関係者らが着席すると、9時57分、三橋歌織被告が法廷
に入ってきた》
《傍聴席からの視線を集中して受ける歌織被告は、無地の水色の素っ気無いトレーナーに、灰色のスウェットパンツ姿。肩の下までまっすぐに下ろした髪の毛
が印象的だ》
河本雅也裁判長「2分前ですが、開廷してよろしいですか?」
《午前9時58分、予定の10時より2分早く開廷が告げられた》
被告「三橋歌織です…」
《冒頭手続きのため裁判長の前に立つよう指示された歌織被告は、一歩ずつ踏みしめるようにゆっくりと移動した。小さい声で名前や住所などの質問に答えて
いく。検察側が起訴状を読み上げる》
裁判長「言いたいことはありますか」
被告「…ありません」
《歌織被告が起訴事実を認めた一方、弁護側は注文をつけた》
弁護側「事実関係は争わないが、犯行時に心神喪失か耗弱の状態にあった」
裁判長「もう少し詳しく」
弁護側「えー、長期のDV(配偶者間暴力)でPTSDの状態となり、犯行時に出現したと…」
《続けて検察側の冒頭陳述に移る。スクリーンに映像が映されたほか、紙にプリントされている歌織被告に関する「年表」が大きく掲示された》
検察官「検察側が証拠により解明しようとする事実は以下の通りです」
《片手に棒を持った女性検察官が、ゆっくりと説明していく。裁判員制度を意識した『ですます調』の説明だ》
検察官「ケンカが絶えず、憎しみを深めていき、離婚を考えるようになった。離婚するにしても、自分だけがみじめな生活を送るのは嫌だと考え…経済的に有
利な条件で離婚したいという思いを強く抱いていました」
《事案の概要の説明が始まると、歌織被告が鼻をすすり上げる音が天井の高い法廷に響いた。歌織被告の生い立ちから犯行に至るまでを説明していくと、ハン
カチを目に当てる場面がたびたびみられるようになってきた》
《続いて人物関係図がプロジェクターに映し出される。歌織被告の不適切な男性関係が明かされる》
検察官「被告には、結婚前から愛人関係にあったA男さんという男性がいます」
《ひとしきり泣いて落ち着いたのか、歌織被告はぼんやりと聞いている》
=(2)へ続く
◆国連の死刑停止決議祝ってコロッセオをライトアップ
2007.12.20 10:16 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/america/071220/amr0712201016015-n1.htm
AP通信によると、国連総会が死刑の一時停止(モラトリアム)を求める決議案を採択したことや、米ニュージャージー州が死刑廃止法案を成立させたことを祝
い19日、ローマ市内の古代遺跡コロッセオがライトアップされた。
古代ローマ時代、残忍な闘技などが行われ多くの奴隷らが死亡したコロッセオは現在、イタリアの死刑反対運動のシンボルとなっており、世界で死刑囚の減刑
や死刑制度廃止などが決まった際にライトアップされることになっている。
カトリックの総本山、バチカンを抱えるイタリアは国連などの場で死刑廃止を強く主張しており、決議案採択はイタリアの外交努力の成果と国内でも大きく報
じられた。(共同)
◆死刑停止決議が成立 国連本会議日米中反対 賛成100カ国上回る
2007年12月19日 東京新聞 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2007121902073426.html
【ニューヨーク=共同】国連総会本会議は十八日、死刑の一時停止(モラトリアム)を求める決議案を賛成一〇四、反対五四、棄権二九で採択、決議が成立し
た。決議案作成は欧州連合(EU)が主導。
日米中やシンガポール、中東諸国などが反対に回った。
死刑執行停止を求める決議が、百九十二の全加盟国が参加する本会議で採択されるのは極めて異例で、潘基文(バン・キムン)事務総長は歓迎の声明を
出した。賛成国数は、決議案を上程した第三委員会(人権)での九十九カ国より増えた。決議に法的拘束力はないが、死刑制度の是非をめぐる論議に一石を投じ
そうだ。
決議は、死刑が「(犯罪)抑止に結び付くという確実な証拠はなく、死刑の誤判は取り返しがつかない」とした上で、死刑制度を定めている国に「死刑廃止を
視野に死刑執行のモラトリアムの確立」を求めた。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、死刑制度を廃止したり、十年以上執行していない国は百三十カ国以上に上る。
昨年は二十五カ国で少なくとも計千五百九十一人が死刑となり、うち中国だけで千十人を占めた。
◆孤立深める日本 「死刑停止」の国連決議で
2007年12月19日12時28分 asahi.com
http://www.asahi.com/national/update/1219/TKY200712190141.html
国連が18日、死刑の執行停止を求める総会決議を初めて採択した。「世論の高い支持」を理由に死刑制度を存続している日本は、今年は年間で77年以降最
多となる9人の死刑を執行するなど、世界の潮流とは逆行。国際的な孤立を深めている。
「世論には死刑制度や死刑執行にかなりの支持がある。国連の決議があっても我が国の死刑制度を拘束するものでは、まったくない」。決議を前にした18日
の閣議後の記者会見で、鳩山法相は語気を強めた。「死刑を存続するかしないかは内政の問題だ」という政府の立場を改めて強調するものだ。
凶悪犯罪に対して厳罰を求める声を背景に、このところ日本では死刑執行のペースが上がる傾向にある。鳩山法相は今月7日、3人の死刑を執行した。前任の
長勢法相の執行人数も在任10カ月余の間に10人を数えた。鳩山法相の「死刑自動化」発言をきっかけに法務省内に執行のあり方を検討する勉強会ができた
り、執行対象者の氏名を公表したりする動きはあるが、執行停止や制度廃止に至る論議は低調だ。
死刑廃止を訴えてきた団体は、国連決議をきっかけに停滞する状況を変化させたい考えだ。再審で無罪となった元死刑囚の免田栄さん(82)は10月に国連
本部に赴き、討論会で「拘置所で別れの握手を交わした死刑囚は覚えているだけで56人。冤罪だという人も何人もいた」といったエピソードを通じて死刑廃止
の必要性を訴えた。死刑廃止議員連盟も、03年以来凍結されている死刑停止法案を来年の通常国会に提出する考えを示している。
国連総会の決議に法的拘束力がないことについて、神奈川大法科大学院の阿部浩己教授(国際法)は「法的拘束力がないことだけで議論を進めれば、国際社会
の営みは限りなく意味がなくなる」と指摘する。
日本は総会に「北朝鮮の人権状況を非難する決議」などを積極的に提案している。阿部教授は「自国に有利な決議は最大限利用し、不利なら『意味がない』で
は説得力がない。日本は決議に反対することによってどんな社会を実現したいのかを主体的に示すべきだ」と話す。
◆国連総会、死刑執行停止求め決議 大差で採択
2007年12月19日11時36分 asahi.com
http://www.asahi.com/international/update/1219/TKY200712190060.html
国連総会は18日、死刑執行の停止を求める決議案を賛成多数で採択した。日本を含む死刑制度の存続国に対し国際世論の多数派が「深刻な懸念」を示した形
だ。決議に法的拘束力はないが、存続国には死刑制度の状況を国連に報告するよう求めており、制度の見直しへ向けた国際圧力が高まるのは確実だ。
国連加盟国192カ国のうち、欧州連合(EU)のほか、南米、アフリカ、アジア各地域の87カ国が決議の共同提案国になった。採決は、賛成104、反対
54、棄権29。死刑制度を続けている日本、米国、中国、シンガポール、イランなどは反対した。
決議は、人権尊重の意義や、死刑が犯罪を抑止する確証がないこと、誤審の場合は取り返しがつかないことなどを指摘。存続国に対し、執行の現状や死刑囚の
権利保護を国連事務総長に報告▽死刑を適用する罪名の段階的な削減▽死刑制度の廃止を視野にした執行停止――などを求めている。
採択後、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は「世界の多様な地域から支持されて心強い。死刑廃止へ向けた潮流の証しだ」と歓迎の声明を出した。
国連総会は71年と77年にも死刑に関する決議を採択した。当時は制度の乱用が問題視され、死刑の対象となる罪名の規制に力点を置き、廃止については
「望ましい」との表現にとどまっていた。今回は廃止を視野に入れ、その前段階として存続国に執行の停止を求めたのが特徴だ。
死刑廃止の動きはEUの主導で広がっている。国連総会での死刑廃止要求決議案は90年代に2回提案されて採択に至らなかったが、今回は「予想を超える大
差の賛成数」(EU代表)になった。
決議の内容を死刑の即時廃止ではなく、執行停止に緩めたことで中間派が賛成に回った事情もある。だが最大の主因は、廃止・停止に動く国々の急速な広がり
だ。
国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると、77年当時、死刑を廃止した国は16だったが、現在は90。制度は残っていても執行を長期
停止した韓国やロシアなどの停止国を加えると133カ国に達する(今年11月現在)。この10年間だけでも約30カ国が廃止・停止した。
一方、存続国は中国、イラン、サウジアラビア、米国など64カ国。そのうち昨年中に執行した国は25カ国。死刑制度を維持し、実際に執行も続ける国は日
本を含め世界の少数派になった。
◆「99年にも殺人」供述 死刑囚の元組員が上申書
2007年12月19日11時30分 asahi.com
http://www.asahi.com/national/update/1219/TKY200712190107.html
宇都宮市で00年、覚せい剤を注射するなどして4人を死傷させ、水戸市で別の男性を水死させたとして強盗致死や殺人などの罪に問われ、死刑が確定した元
暴力団組長の後藤良次死刑囚(49)が、栃木県警の調べに対し宇都宮市で99年に男性を殺害したと供述していることが19日、わかった。同県警は事実関係
の確認を含め、慎重に捜査を進めている。
調べでは、後藤死刑囚は、当時40代だった知人の自営業男性を99年春に殺害したことを自供し、共犯の存在も明らかにしたという。県警
は当時、この男性を検視し、遺体の状況などから事件性はないと判断。司法解剖はしなかったという。後藤死刑囚が茨城県警にこの事件を自供し、同県警から栃
木県警に連絡があった。
後藤死刑囚は上告中だった05年10月、茨城県内で3件の殺人事件に関与したとする上申書を茨城県警に提出。うち、同県阿見町の男性
(当時67)が00年に殺害され、保険金約9800万円がだまし取られた事件で今年1月に殺人容疑で逮捕、その後起訴され、現在は水戸地裁で公判前整理手
続きが進められている。
◆死刑停止決議が成立 国連、日米中などは反対
2007年12月19日 10時14分 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007121990101455.html
【ニューヨーク18日共同】国連総会本会議は18日、死刑の一時停止(モラトリアム)を求める決議案を賛成104、反対54、棄権29で採択、決議が成
立した。決議案作成は欧州連合(EU)が主導。日米中やシンガポール、中東諸国などが反対に回った。
死刑執行停止を求める決議が、192の全加盟国が参加する本会議で採択されるのは極めて異例で、潘基文事務総長は歓迎の声明を出した。賛成国数は、決議
案を上程した第3委員会(人権)での99カ国より増えた。決議に法的拘束力はないが、死刑制度の是非をめぐる論議に一石を投じそうだ。
決議は、死刑が「(犯罪)抑止に結び付くという確実な証拠はなく、死刑の誤判は取り返しがつかない」とした上で、死刑制度を定めている国に「死刑廃止を
視野に死刑執行のモラトリアムの確立」を求めた。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルによると、死刑制度を廃止したり、10年以上執行していない国は130カ国以上に上る。
(共同)
◆米ニュージャージー、死刑廃止 他州波及は限定的
2007年12月19日(水)03:10 産経ニュース
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/m20071219004.html?C=S
【ニューヨーク=長戸雅子】米東部ニュージャージー州のコーザイン知事は17日、死刑制度を廃止する州法案に署名、同法案は法律として成立した。連邦最
高裁が死刑復活を認めた1976年以降、廃止を決めた州は初めてで、「歴史的決定」と歓迎する死刑反対派は他州への波及を期待する。しかし、死刑制度の是
非をめぐる世論調査では支持派が多数。同州の決定の影響は、同様の法案が提出されたモンタナ州など限定的なものにとどまるとの見方が強い。
コーザイン知事は法案への署名に先立ち、州内の8人の死刑囚を仮釈放なしの終身刑に減刑した。8人の中には、当局が性犯罪の前歴者の名前や住所を近隣住
民に公表する「メーガン法」のきっかけとなった女児殺害事件の犯人もおり、女児の遺族は「死刑囚への減刑は彼らの被害者に対する侮辱」と法案に強く反対し
ていた。
米調査機関ピュー・リサーチ・センターが1月に行った世論調査では62%が殺人犯への死刑に賛成、反対は32%で、死刑維持派が多数を占めている。
その一方、この10年間にDNA鑑定によって有罪判決を受けた後に無実が証明されたケースも相次いで報告されている。イリノイ州が2000年に死刑執行
停止を宣言するなど、死刑制度をめぐる議論に変化が起きているのも事実だ。
ニュージャージー州の決定の影響についてシカゴ・トリビューン紙は、「(テキサスやバージニアなど)死刑囚も執行数も多い州がニュージャージー州に続く
動きを見せるとは考えがたい」とする専門家の見方を紹介。モンタナ州など同様の法案が提出された州や死刑囚の少ない州、執行停止中の州には影響を与える可
能性があるとし、「廃止に向けた発端というのではなく、各州議会での再考を促すきっかけになるかもしれない」と指摘した。
◆米ニュージャージー州で死刑廃止法成立、制度維持36州に
【ニューヨーク=白川義和】米東部ニュージャージー州のコーザイン知事は17日、州議会が先に可決した死刑廃止法案に署名し、同法が成立した。
米国で死刑を廃止する州が出たのは1965年以来。これで、死刑制度を維持しているのは50州中、36州となった。同州の死刑囚8人は、仮釈放なしの終
身刑に減刑された。
同州は1963年以来、死刑の執行はなく死刑廃止法は現状追認の要素が大きい。死刑が宣告されても執行されないまま、控訴審で減刑されることが多
いためだ。同州の特別委員会は裁判長期化に伴う費用や遺族感情も、死刑廃止を求める理由に挙げていた。実際、娘を殺された同州のある遺族が「死刑は(裁判
が早期決着せず)遺族の痛みを募らせる有害な政策」との立場から、被告に終身刑を求刑するよう検察に求めた例もある。
もちろん、異論も多い。今回の措置で終身刑に減刑された8人には、性犯罪前歴者の名前や住所を公開する「ミーガン法」制定のきっかけとなった女児殺害事
件の犯人も含まれている。女児の父親は死刑廃止の決定に「犠牲者を改めて侮辱するものだ」と語った。
同州の共和党は、捜査当局者に対する殺人や子供へのレイプ・殺人、テロ犯には死刑制度を維持すべきだと主張。同州の最新世論調査でも、凶悪犯罪者には死
刑適用の選択肢を残しておくべきだとの回答が78%に達している。
ニュージャージー州の決定がどこまで他州に波及するかは未知数だ。連邦最高裁は今年9月、致死薬注射による死刑執行が残酷な刑罰を禁じた憲法に違
反するかどうかを審査することを決め、死刑制度を維持している州も現在執行を停止している。この違憲審査の結果も死刑存廃論議に影響を与えるとみられてい
る。
(2007年12月19日1時30分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20071218i412.htm)
◆死刑廃止法案が成立 米ニュージャージー州で
2007年12月18日(火)12:05
共同通信 http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/world/CO2007121801000169.html?C
=S
【ニューヨーク17日共同】米東部ニュージャージー州のコーザイン知事は17日、死刑制度を廃止する法案に署名、同法案が成立した。76年に連邦最高裁
の判断を受けて米国で死刑制度が復活して以降、死刑を廃止する州は初めて。死刑制度を研究する米国の非営利団体「死刑情報センター」によると、死刑廃止州
は計14州になった。うち76年以前から死刑を廃止していたのは12州。
◆米ニュージャージー州で死刑廃止法が成立
2007年12月18日(火)11:41
時事通信 http://news.goo.ne.jp/article/jiji/world/jiji-AFP015617.html?C=S
【ニューヨーク17日AFP=時事】米ニュージャージー州のコーザイン知事≪写真≫は17日、死刑を廃止する州法案に署名した。同知事はこれに先立ち、
16日に死刑囚8人を仮釈放なしの終身刑に減刑した。
同知事は署名に当たり、「きょうは、我々と我が国および世界中の死刑を拒否する何百万という人々にとって、前進の日だ」と述べた。民主党が多数を占める
同州議会は先週、賛成多数で死刑廃止法案を可決していた。
米国では1976年に連邦最高裁が死刑復活を認め、ニュージャージー州でも死刑が復活したが、同州は2005年以来、他の二十数州とともに、死刑の執行
を凍結していた。米国の州が死刑を廃止するのはここ約40年で初めて。アイオワ、ウェストバージニア両州が1965年に廃止して以来、死刑を廃止した州は
なかった。現在、37州で死刑が認められている。〔AFP=時事〕
◆ニュージャージー州が死刑廃止 8死刑囚は終身刑に
2007.12.18 10:16 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/america/071218/amr0712181016004-n1.htm
米東部ニュージャージー州のコーザイン知事(民主党)は17日、死刑制度を廃止する法案に署名、同法案が成立した。1976年に連邦最高裁の判断を受け
て米国で死刑制度が復活して以降、死刑を廃止する州は初めて。
死刑制度を研究する米国の非営利団体「死刑情報センター」によると、76年以前から死刑を廃止していた13州を含め、死刑廃止州は計14州になった。知事
は「たとえ凶悪な殺人であっても死刑に反対する全米や世界の多くの人々にとって大きな前進の日だ」と述べた。死刑廃止を検討する他州や各国の議論にも影響
を与えそうだ。
ニュージャージー州には8人の死刑囚がいたが、知事は16日、仮釈放のない終身刑に減刑した。再犯性の高い性犯罪者の情報を地域住民に公表する「ミーガ
ン法」成立のきっかけとなった7歳女児に対する殺人犯も含まれ、遺族から強い反発の声が上がっている。
同センターによると、全米の死刑執行数は77年の1人から徐々に増えたが、99年の98人を境に漸減傾向で昨年は53人。AP通信によると、ニュー
ジャージー州は82年に死刑制度を復活したが、63年以降は執行されていない。(共同)
◆山口・光の母子殺害:懲戒請求発言 342人が橋下弁護士への懲戒請求
大阪府知事選への立候補を表明している橋下徹弁護士が、山口県光市で起きた母子殺害事件の被告弁護団に懲戒請求するようテレビ番組で呼び掛けた問題で、
大学教授ら342人が17日、処分を求め、所属先の大阪弁護士会に懲戒請求した。
毎日新聞 2007年12月18日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071218ddm041040152000c.html
◆橋下弁護士の懲戒処分を請求へ 母子殺害事件巡り市民ら
2007年12月16日 asahi.com
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200712150101.html
大阪府知事選への立候補を表明した橋下徹(はしもと・とおる)弁護士(38)が、99年に山口県光市で起きた母子殺害事件の被告弁護団の懲戒請求をテレ
ビ番組で視聴者に呼びかけたことをめぐり、全国各地の市民ら約350人が17日、橋下氏の懲戒処分を所属先の大阪弁護士会に請求する。「刑事弁護の正当性
をおとしめたことは、弁護士の品位を失うべき非行だ」と訴える。発言に対しては、被告弁護団のメンバーが1人300万円の損害賠償訴訟も広島地裁に起こし
ている。
懲戒請求するのは京阪神を中心とした11都府県の会社員や主婦、大学教授ら350人余り。刑事裁判で無罪が確定した冤罪被害者もいる。
橋下氏は、5月27日に大阪の読売テレビが放送した「たかじんのそこまで言って委員会」で、広島高裁の差し戻し控訴審で殺人などの罪に問
われている元少年(26)の弁護団の主張が一、二審から変遷し、殺意や強姦(ごうかん)目的を否認したことを批判。「許せないって思うんだったら、弁護士
会に懲戒請求をかけてもらいたい」などと発言した。
17日に提出される懲戒請求書によると、元少年の主張を弁護団が擁護することは「刑事弁護人として当然の行為」と指摘。発言は弁護士法で定める懲戒理由
の「品位を失うべき非行」にあたるとしている。
弁護士への懲戒請求は、弁護士法で「何人もできる」と定められている。請求を受けた弁護士会が「懲戒相当」と判断すれば、業務停止や除名などの処分を出
す。
橋下氏は、元少年の弁護団のうち4人が9月に起こした損害賠償訴訟での答弁書で「発言に違法性はない。懲戒請求は市民の自発的意思だ」と
反論した。15日、朝日新聞の取材に法律事務所を通じて「(懲戒請求されれば)弁護士会の判断ですので、手続きに従います」とコメントした。
◆鳩山法相のアルカイダ発言「面白い」 福田首相が擁護
2007年12月15日00時20分 asahi.com
http://www.asahi.com/politics/update/1214/TKY200712140357.html
福田首相は14日夜、TBSの報道番組の収録で、「友人の友人がアルカイダ」と発言した鳩山法相について、「面白い方ですよね。面白い方。発言の中身も
面白い」と語った。鳩山氏の発言には、現職の法相が国際テロ組織とかかわりがあるかのような印象を与えたとして町村官房長官が口頭で注意したほか、野党が
「軽率だ」などと批判している。首相が鳩山氏擁護ともとれる発言をしたことで、野党から国会審議で真意を追及される場面が出てきそうだ。
鳩山氏は10月の日本外国特派員協会での講演で「私の友人の友人がアルカイダ。バリ島中心部の爆破事件にからんでおり、私は近づかない
ようにというアドバイスを受けていた」などと発言。事前にテロを知っていたかのような説明だったが、その後の記者会見で「話を聞いたのは事件の3、4カ月
後」と訂正。さらに「舌足らずで誤解を生む部分があった」と釈明していた。
収録で首相は「アルカイダ発言はいただけない」という司会者の問いに、「あの1回だけじゃ駄目ですね。連続して聞くと味がある」と感想
を述べた。さらに鳩山氏が「(テロ組織が)しょっちゅう日本に平気で入って来られるというのは安全上好ましくない」と発言したことを念頭に、「そういう人
がいる可能性があるってことを正直に言っている。ほんとのことを、ほんとと言った」とも語った。
鳩山氏が当初、事前にテロ情報を知っていたととれる発言をしたことについては「言い間違えですね。それはありえません」と強調した。
鳩山氏は死刑執行に関して「法相が絡まなくても自動的に進む方法はないか」と述べるなど発言の軽率さが指摘されている。
◆死刑制度 ニュージャージー州が廃止
2007年12月15日(土)04:23 産経ニュース
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/m20071215009.html?C=S
米東部ニュージャージー州の州下院は13日、死刑制度を廃止する法案を可決した。これにより、同州は1976年に連邦最高裁が死刑復活を認めてから初め
て死刑制度を廃止する州となる。
同州は63年以来、執行を停止しているものの、現在8人の死刑囚がいる。死刑囚は知事の署名後、終身刑に減刑される。米国では、50州のうち、ニュー
ジャージーを含む37州が死刑制度を維持しており、76年以降1000件以上が執行されている。(ニューヨーク 長戸雅子)
◆米東部で死刑廃止へ ニュージャージー州が復活後初
2007年12月14日(金)16:32 産経ニュース
http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/e20071214012.html?C=S
【ニューヨーク=長戸雅子】米東部ニュージャージー州の州下院は13日、死刑制度を廃止する法案を可決した。これにより、同州は1976年に連邦最高裁
が死刑復活を認めてから、廃止に踏み切る初めての州となる。
州下院の広報担当によると、法案は44対36票で可決された。同案はすでに上院を通過しており、同州のジョン・コーザイン知事の署名で法律として成立す
る。知事は来週中にも署名する予定。
同州は63年以来、執行を停止しているものの、現在8人の死刑囚がいる。死刑囚は知事の署名後、終身刑に減刑される。この中には、性犯罪の前歴者の名前
や住所を公表する「メーガン法」制定の契機となった女児メーガンさん殺害事件の犯人も含まれている。
メーガンさんの父、カンカ・メーガンさんは「私の娘は無残な方法で殺害された。(死刑廃止は)侮辱以外の何ものでもない」と廃止を見直すよう訴えてい
た。
◆米ニュージャージー州、死刑廃止法案可決 76年以降初
2007年12月14日10時25分 asahi.com
http://www.asahi.com/international/update/1214/TKY200712140054.html?ref=goo
米東部のニュージャージー州議会で13日、死刑を廃止する法案が可決された。米連邦最高裁が死刑を合憲と認めた76年以降で初めて死刑廃止を決定する州
となる。今後米国内で死刑存廃の議論が高まりそうだ。
死刑の代わりに仮釈放なしの終身刑を適用する。州知事の署名により年内に施行される見通し。民主党議員らが廃止論議をリードし、州の特別委員会は「死刑
は終身刑より経費がかかり、殺人の抑止効果もない」との報告書を出していた。
同州には現在、8人の死刑囚がいるが、同法によって終身刑に減刑される。その中には、性犯罪歴の公表を定めた「メーガン法」制定のきっかけとなった女児
殺害犯も含まれている。
米国では戦後の一時期、違憲の疑いにより死刑執行が停止されていたが、76年の連邦最高裁の判断で復活した。州ごとに死刑をめぐる状況は異なり、テキサ
ス州など執行の多い州がある半面、アラスカ州など死刑を廃止している州もある。事実上執行を停止している州も含め、死刑制度を維持しているのはニュー
ジャージー州を含め37州とされる。
◆米東部州が死刑廃止=76年の復活後初、全国に波及も
2007年12月14日(金)08:20 時事通信社]
http://news.goo.ne.jp/article/jiji/world/jiji-14X747.html?C=S
【ニューヨーク13日時事】米東部ニュージャージー州の下院は13日、死刑制度を廃止する州法案を賛成44、反対36で可決した。同案は既に上院を通
過。下院の可決により、同州の死刑廃止が事実上決まった。1976年に連邦最高裁が死刑復活を認めてから、廃止に踏み切る州は初めて。同様の動きが他州に
広まる可能性もある。
同州のコーザイン知事(民主)は死刑廃止論者。今年1月に州特別委員会が「死刑は終身刑より公費負担が重く、殺人の抑止効果もない」とする報告書を公表
したことを受け、民主党議員が廃止法案を提出していた。
◆『謝罪もないままとは…』 前橋スナック乱射事件 首謀の被告に死刑判決
2007年12月11日 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20071211/CK2007121102071231.html
「謝罪の言葉もないままとは…」。前橋市のスナックで二〇〇三年一月、市民ら四人が射殺された拳銃乱射事件から約五年。東京地裁は十日、事件の首
謀者とされ、殺人罪などに問われた指定暴力団住吉会系矢野睦会会長の矢野治被告(58)に死刑を言い渡した。否認のまま一審判決を受けた矢野被告に対し、
遺族は「謝ってすむことではないが、少しでも罪を逃れようとする態度は許せない」と憤りを隠さなかった。
朝山芳史裁判長は判決で「身に覚えがないと供述するなど、責任を回避する卑劣な言動に終始し、反省の態度はいささかも見いだせない」などと厳しい
言葉で非難。判決後にも「供述を拒んでいるが、社会的、常識的にみて甚だ遺憾。せめて謝罪の言葉を述べてほしい。控訴をした場合は控訴審で知っていること
を話してほしい」などと説諭した。
判決を聞いた遺族の男性(33)は「死刑は一番望んでいた判決」としつつ、「これが最高刑だから仕方がない。でも納得しているわけではない」と複雑な心
境を口にした。
事件から四年十一カ月。「長すぎる。これで控訴すればまた長くなるのか」とため息をついた。最後に「(事件で死亡した)父と一緒に飲みたかった。親孝行
する機会もないまま逝ってしまった」と、あらためて悲しみをかみしめていた。
別の遺族は「当然の結果だ」とした上で、「たとえ控訴してでも報復活動のすべてを包み隠さず話し、謝罪してほしい」と語った。「(犠牲となった父に)判
決まで五年もかかった。最高裁まで続くと思うけれど、頑張る」と伝えるという。
平然としたそぶり
「大きい声で言ってくれませんか」−。朝山裁判長が「主文は後で言いますので、座って聞いていてください」と極刑を予想させる言葉で促すと、矢野被告は
こう切り返した。
矢野被告は法廷に入ると、まず一般傍聴席の暴力団関係者らに「ご苦労さまです」と一礼。続いて弁護人に「お願いします」と言い、席に。特別傍聴席で遺影
を持つ遺族らには礼をすることも、目を向けることもなかった。
判決言い渡しは約一時間半に及んだ。「首謀者としての刑事責任は、実行犯を上回る」などと厳しい言葉が続いたが、矢野被告は腕組みをしていすにもたれる
など平然としたそぶりで、時折、一般傍聴席に向け、笑みを浮かべたり、声を出さずに口を動かしたりした。
主文の言い渡しが終わると、暴力団関係者らに頭を下げ、表情を変えずに法廷を去った。その姿からは、自らの指示で奪ったとされる被害者の命の重みを感じ
ている様子は、全く感じられなかった。
◆前橋のスナック4人射殺:組会長に死刑 「実行犯上回る責任」 /群馬
12月11日13時1分配信 毎日新聞
◇スナック乱射など、5人殺害2事件指示
前橋市のスナックで市民ら4人が射殺された事件などの指揮役として殺人罪などに問われた指定暴力団住吉会系矢野睦会会長、矢野治被告(58)に、東京地
裁は10日、求刑通り死刑を言い渡した。朝山芳史裁判長は「全事件で指示があった。刑事責任は実行犯を上回る」と述べ、一貫して関与を否認した主張を退け
た。
入廷した矢野被告は暴力団抗争の巻き添えになった客の遺族ら6人を無視するかのように、傍聴席に居並ぶ暴力団関係者に一礼。最後まで遺族に謝罪の態度を
示さず、時折薄笑いを浮かべた。
判決によると、矢野被告は指定暴力団稲川会系元組長殺害を配下組員に指示。実行役の矢野睦会幹部、小日向将人(38)=1、2審死刑、上告中=と同、山
田健一郎(41)=死刑求刑=両被告が03年1月25日深夜、前橋市三俣町のスナックで拳銃を乱射し、客の男女3人と警護役の組員(当時31歳)を射殺、
元組長ら2人に重傷を負わせた。
これに先立つ02年10月には白沢村(現沼田市)でこの元組長を銃撃。同年2、3月には稲川会系の元総長宅に火炎瓶を投げるなどの襲撃を指揮した。
また、襲撃に失敗した仲間の組長(当時54歳)を口封じのため、入院先の日本医科大付属病院で射殺。
判決はいずれも矢野被告を首謀者と認め「5人もの人命を奪った。スナックの客は何の落ち度もなく、絶望のふちに沈められた遺族や被害者に謝罪の言葉すら
述べられていない」とした。
◇すべて話し謝罪を
遺族の一人は「死刑は当然の結果で一安心した。すべてを包み隠さず話し、謝罪してほしい。墓前には『高裁、最高裁と続くが頑張る』と報告する」とコメン
トした。
(2007.12.11 朝刊 毎日新聞 最終更新:12月11日13時1分 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071211-00000129-mailo-l10)
◆5人射殺の組長に死刑 東京地裁判決「責任、実行犯上回る」
12月11日8時3分配信 産経新聞
前橋市のスナック銃乱射事件や日本医科大付属病院(東京都)での暴力団組長射殺事件で計5人を殺害したなどとして、殺人や銃刀法違反などの罪に問われた
指定暴力団住吉会系組会長、矢野治被告(58)の判決公判が10日、東京地裁で開かれた。朝山芳史裁判長は、矢野被告を一連の事件の首謀者と認め「責任は
実行犯を上回る」とし、求刑通り死刑を言い渡した。矢野被告は無罪を主張していた。
朝山裁判長は、前橋事件について「残虐な犯行で一種の無差別テロ。一般人3人はたまたま居合わせて犠牲となり、その無念は察するに余りある」と述べた。
日医大事件も「安全が確保されるべき病院内の犯行で悪質極まりない。口封じ目的で酌量の余地はない」と断じた。
犯行動機は、対立していた指定暴力団稲川会系の元組長への報復だったと認定。その上で「暴力団特有の論理に基づく反社会的犯行」と指摘し、死刑の選択も
やむを得ないと判断した。
判決によると、矢野被告は稲川会系元組長殺害を計画。部下に指示し、平成15年1月25日深夜、前橋市内のスナックで拳銃を乱射し、客の男女3人ら計4
人を射殺、元組長ら2人に重傷を負わせた。14年2月25日には、東京都文京区の日医大病院に入院していた配下の住吉会系組長=当時(54)=を射殺し
た。
前橋の事件では、実行役の組幹部、小日向将人被告(38)が1、2審で死刑判決を受け上告中。日医大事件は実行役2人に無期懲役などの判決が確定してい
る。
(2007.12.11 産経新聞 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071211-00000069-san-soci)
◆<オウム>教団分裂で信者150人減少 警察庁が治安分析
12月11日5時1分配信 毎日新聞
警察庁は10日、今年の治安情勢と今後の動向を分析した07年版「治安の回顧と展望」をまとめた。
オウム真理教について、信者数は11月20日現在で約1500人で、従来発表していた数字に比べ約150人減少していることを明らかにした。背景とし
て、今年5月に上祐史浩元代表を支持する信者が主流派から分かれ、新団体「ひかりの輪」を設立。教団が分裂する中で、運営方針に不満を抱いたり、前途を悲
観したため脱会が相次いだと分析している。
しかし、依然として全国29カ所に拠点施設が確認されており、特に主流派は、元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚に対する絶対的帰依を求め、拠点施設
内で松本死刑囚が唱えるマントラ(呪文)を流すことなどが確認された。
分裂した上祐派は、形式上は松本死刑囚との決別を強調しているが、95年の地下鉄サリン事件以前からの信者が多数を占め、松本死刑囚の教えが含まれた教
材を使用するなど依然として影響下にあるとみている。
一方、来年7月の北海道洞爺湖サミットについては、国際テロのターゲットになる可能性や、反グローバリズムを掲げるデモに伴う違法行為の発生が懸念され
るとして、全国警察が一体となった警備体制の確立を求めている。【遠山和彦】
(2007.12.11 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071211-00000010-mai-soci)
◆日本の死刑執行に懸念=国連人権弁務官
12月10日21時0分配信 時事通信
【ジュネーブ10日時事】国連は10日、アルブール人権高等弁務官の声明を発表し、日本政府が7日公表した死刑執行に懸念を表明した。同弁務官は、死刑
囚やその家族に事前に通告することなく突然、死刑が執行されたようだとし、「こうした手続きは国際法上、問題をはらんでおり、日本に再考するよう求める」
と訴えた。
(2007.12.10 時事通信 最終更新:12月10日21時0分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071210-00000144-jij-int)
◆東京地裁 5人殺害 組会長死刑 スナック銃乱射など「実行犯上回る責任」
12月10日17時2分配信 産経新聞
前橋市のスナック銃乱射事件や日本医科大付属病院(東京都)での暴力団組長の射殺事件で、市民を含む計5人を殺害したなどとして、殺人や銃刀法違反など
の罪に問われた指定暴力団住吉会系組会長、矢野治被告(58)の判決公判が10日、東京地裁で開かれた。朝山芳史裁判長は、矢野被告が一連の事件の首謀者
だったことを認めた上で「責任は実行犯を上回る」として、求刑通り死刑判決を言い渡した。矢野被告は無罪を主張していた。
朝山裁判長は、前橋事件について「残虐な犯行で一種の無差別テロ。一般人3人はたまたま居合わせたばかりに巻き添えを食って凶行の犠牲となり、その無念
は察するに余りある」と述べた。
日医大事件も「安全が確保されるべき病院内の犯行で悪質極まりない。口封じ目的で酌量の余地はない」と、矢野被告を断じた。
朝山裁判長は、犯行動機は対立していた指定暴力団稲川会系の元組長に対する報復だったと認定。その上で「暴力団特有の論理に基づく反社会的犯行。矢野被
告の反社会的人格は根深い」と指摘し、死刑の選択もやむを得ないと判断した。
(2007.12.10 産経新聞 最終更新:12月10日17時56分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071210-00000000-san-soci)
◆前橋銃乱射:会長に死刑言い渡し 事件の首謀と認定
前橋市のスナックで03年に市民ら4人が射殺された事件や、日本医科大付属病院(東京都文京区)で02年に入院中の暴力団組長が射殺された事件
で、殺人罪などに問われた指定暴力団住吉会系矢野睦会会長、矢野治被告(58)に対し、東京地裁は10日、求刑通り死刑を言い渡した。朝山芳史裁判長は
「5人もの尊い人命を奪い、首謀者である被告の刑事責任はこの上なく重い」と述べた。
弁護側は「被告の関与を認めた実行役の証言は虚偽だ」と無罪を主張したが、判決は、実行役の証言の信用性を認めた。その上でスナック乱射事件について
「店でいきなり拳銃十数発を乱射した一種の無差別テロ。巻き添えになった市民の無念は察するに余りある」と指摘した。
判決によると、矢野被告は対立していた暴力団元組長の殺害を実行役の小日向将人被告(38)=1、2審死刑、上告中=に指示。03年1月25日深
夜、小日向被告らが前橋市のスナック店で拳銃を乱射して、客の男女3人や警護役の元組員を射殺し、元組長ら2人に重傷を負わせた。また住吉会系組長
(58)=無期懲役が確定=らと共謀し、02年2月25日、同病院集中治療室にいた同会系の組長(当時54歳)を射殺した。【銭場裕司、鈴木敦子】
毎日新聞 2007年12月10日 11時46分
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071210k0000e040040000c.html
(最終更新
時間 12月10日 12時52分)
◆日韓共同シンポ:韓国人BC級戦犯問題の初のシンポ−−千代田 /東京
戦時中、日本軍の捕虜監視業務などをさせられ、戦後、連合国側の軍事裁判で処罰された韓国人BC級戦犯問題の初の日韓共同シンポジウム(内海愛子・実行
委員長)が8日、千代田区内で開かれた。韓国から来日した遺族らが改めて日本政府に謝罪と補償を訴えた。
今年2月、ソウルで結成された韓国BC級戦犯者遺族会の姜道元(カンドウォン)さん(67)、鄭昌洙(チョンチャンス)さん(44)ら7人が出
席。日本側からは、在日の元BC級戦犯者らでつくる同進会の李鶴来(イハンネ)さん(82)らが参加した。鄭さんは、「私の父はジャワで捕虜監視員をさせ
られ、5年の刑を受けた」と言い、「日本のみなさんは韓国に帰った元戦犯のその後の生活はご存じないと思うが、多くが職場も確保されず、『対日協力者』と
して差別や誤解を受けた」と発言した。
当時、朝鮮半島から3000人以上が各地の捕虜収容所などに派遣され、戦犯に問われたのは148人。うち23人に死刑が執行された。韓国政府は昨年、処
罰された人々を「強制動員の犠牲者」と認定し、名誉回復の措置が取られた。【明珍美紀】
毎日新聞 2007年12月9日
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20071209ddlk13040147000c.html
◆クローズアップ2007:死刑執行・氏名公表 にじむ「意義アピール」
法務省は7日、3人の死刑を執行し、氏名と犯罪事実、執行場所を初めて公式に発表、鳩山邦夫法相が国会で氏名を読み上げるなど大きな変化をみせ
た。閉鎖性に大きな風穴が開いた形だが、「死刑の存在価値をアピールするための恣意(しい)的な開示だ」との疑問の声も上がる。【坂本高志、森本英彦、木
戸哲】
7日午前9時過ぎ。鳩山氏は閣議後、福田康夫首相に3人の執行と従来の方針を転換することを報告した。福田首相は「分かりました。被害者の遺族の立場を
重視するということでもありますからね」と応じた。
8月に就任した鳩山氏は歴代法相と違い死刑制度について積極的に発言してきたが、公表は当初否定的だった。「(死刑囚の)遺族感情や他の死刑囚の
心情がある」と従来の見解を強調した。だが、10月上旬に始まった省内の勉強会で議論するうち「ブラックボックスではないか」と思うようになったという。
最終的に一定の開示は、被害者をはじめ国民に執行が適切に実施されていることを理解してもらうのに役立つと判断した。省内に強烈な反対論はなかったが、
「過去」との整合性には配慮すべきだという声はあった。
同日午後、省内で会見した鳩山氏は「これまでが誤りだったわけではないのだから、遡及(そきゅう)はしない」と述べ、以前執行された死刑囚は公表しない
ことを明らかにした。
だが、氏名公表の理由として唐突に「犯罪被害者」の存在が挙げられたことに疑問の声も上がる。弟を殺されながら加害者の死刑囚と面会し、01年の
執行に反対した原田正治さん(60)は「死刑を肯定するための一つの言い訳に過ぎない。すべての被害者遺族の声に耳を傾けていないのに」と語った。諸沢英
道・常磐大大学院教授(被害者学)も「メディアに公表するのは、犯罪の予防的側面の方が濃いのではないか」と語る。
◇決め方、順番…依然闇の中
「もっと安らかな方法がないのかなという率直な思いはある」。10月24日の衆院法務委員会。鳩山氏は刑法で定める「絞首刑」について、見直しの余地が
あるとの見解を示した。
省内の勉強会は非公開だが、副大臣や刑事、矯正などの各局長らが参加。死刑反対の関係者から「死刑の執行を停止し、終身刑を導入すべきだ」などの
意見も聞いた。執行方法の他、刑の確定から執行まで平均約7年半以上を要している状況などが検討されているとみられる。ただ、いずれも氏名公表と異なって
法改正が壁となっており、鳩山氏も「在任中に(検討の)成果が出るかは分からない」と言葉を濁す。
情報公開の是非に限っても、検討課題はまだある。ここ数十年、法相や一部国会議員ら以外に死刑場が公開されたことはない。法務・検察が執行のタイ
ミングや順番をどう決めているのかや死刑囚の心身の状況など、「完全にブラックボックス」(死刑廃止団体のメンバー)な部分もある。
今回の公表について、同省幹部は「これが最大限(の公開)」と強調した。しかし、98年に人数だけの公表を始めた時も「限界」と語る幹部が多数だった。
死刑廃止の立場で鳩山氏と面会した菊田幸一・明治大名誉教授は「死刑の密行主義には反対だが、氏名と犯罪事実に限って公表するのはごまかし。死刑囚の残
酷さは公開するが、国家が人を殺す残酷さは隠されたままだ」と述べ、公開範囲の拡大を求める。
◇制度存続、先進国は日米のみ
7日に3人の死刑が執行され、未執行の死刑囚は全国で104人。死刑確定者は89年以降1けただったが、04年以降は10人を超え、今年は既に
20人。厳罰化傾向のうえ、実際の執行に7年半以上を要するため、死刑囚が増える流れにある。長勢甚遠前法相の命令分とあわせ、今年は計9人に死刑が執行
された。76年(12人)以後で最多だ。
世界の状況は大きく異なる。「死刑廃止の潮流に、日本は逆行し続けている」。人権団体「アムネスティ・インターナショナル日本」は7日、死刑執行
に抗議する声明を出した。アムネスティによると、今年10月現在、10年以上執行がない32カ国も含めると133カ国が死刑廃止国だ。先進諸国で死刑を残
しているのは日本と米国だけだが、米国では死刑判決数や執行数は減少傾向にあるという。
先月15日、国連総会第3委員会(人道問題)で、死刑執行の一時停止を求める決議案が採択された。一方、日本では、内閣府の世論調査結果で死刑存続を認
める意見が初めて8割を超えた。
◇さらなる公開、日弁連が要請
日本弁護士連合会の平山正剛会長は7日、「死刑囚の氏名だけではなく、制度全般に関する情報を更に広く公開することも政府に要請する」と声明を出
した。日弁連は制度の存廃について、議論を尽くすまで執行を一時停止すべきだという立場だ。また、民主党「次の内閣」法務担当、細川律夫衆院議員は「衆院
法務委員会の開催中に執行したことはあまりに軽率だ」と談話を出した。
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▼死刑に関する鳩山法相の主な発言▲
「法相が絡まなくても、半年以内に執行することが自動的、客観的に進む方法がないか。(確定の)順番通りなのか、乱数表なのか分からないが」(9月25
日、内閣総辞職後の会見)
「この大臣は死刑をバンバンやった、この大臣はしないと分かれるのはおかしい」(同日、福田内閣での再任会見)
「日本人は命を奪うという行為に対する憤りが強い民族。死刑廃止は非常にドライな発想と思う」(10月17日、毎日新聞のインタビューに)
毎日新聞 2007年12月8日 大阪朝刊
http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/archive/news/20071208ddn003010026000c.html
◆クローズアップ2007:死刑執行・氏名を公表 法務省、突然の変更
◇開示は恣意的との声も
法務省は7日、3人の死刑を執行し、死刑囚の氏名と犯罪事実、執行場所を初めて公式に発表した。過去10年近く、死刑執行の事実と人数だけの発表
が続けられてきたが、この日、鳩山邦夫法相が国会で氏名を読み上げるなど大きな変化をみせた。閉鎖性に大きな風穴が開いた形だが、「死刑の存在価値をア
ピールするための恣意(しい)的な開示だ」との疑問の声も上がる。【坂本高志、森本英彦、木戸哲】
7日午前9時過ぎ。鳩山氏は閣議後、福田康夫首相に3人の執行と従来の方針を転換することを報告した。「私の判断で名前を公表します。よろしいです
か」。福田首相は「分かりました。被害者の遺族の立場を重視するということでもありますからね」と応じた。
8月に就任した鳩山氏は歴代法相と違い死刑制度について積極的に発言してきたが、公表は当初否定的だった。「(死刑囚の)遺族感情や他の死刑囚の
心情がある」と従来の見解を強調した。だが、10月上旬に始まった省内の勉強会で執行のあり方を議論するうち「ブラックボックスではないか」と思うように
なったという。
執行のサインをした数日前の時点でも「(氏名公表は)見合わせようかと迷った」。最終的に一定の開示は、被害者をはじめ国民に執行が適切に実施さ
れていることを理解してもらうのに役立つと判断した。省内に強烈な反対論はなかったが、「過去」との整合性には配慮すべきだという声はあった。
同日午後、省内で会見した鳩山氏は「これまでが誤りだったわけではないのだから、遡及(そきゅう)はしない」と述べ、以前執行された死刑囚は公表しない
ことを明らかにした。
だが、氏名公表の理由として唐突に「犯罪被害者」の存在が挙げられたことに疑問の声も上がる。弟を殺されながら加害者の死刑囚と面会し、01年の
執行に反対した原田正治さん(60)は「死刑を肯定するための一つの言い訳に過ぎない。すべての被害者遺族の声に耳を傾けていないのに」と語った。
諸沢英道・常磐大大学院教授(被害者学)も「メディアに公表するのは、被害者のためというより犯罪の予防的側面の方が濃いのではないか」と語る。
◇勉強会で検討重ね
「もっと安らかな方法がないのかなという率直な思いはある」。10月24日の衆院法務委員会。鳩山氏は刑法で定める「絞首刑」について、見直しの余地が
あるとの見解を示した。
省内の勉強会は非公開だが、副大臣や刑事、矯正などの各局長らが参加。死刑反対の関係者から「死刑の執行を停止し、終身刑を導入すべきだ」などの
意見も聞いた。執行方法の他、刑の確定から執行まで平均約7年半以上を要している状況などが検討されているとみられる。ただ、いずれも氏名公表と異なって
法改正が壁となっており、鳩山氏も「在任中に(検討の)成果が出るかは分からない」と言葉を濁す。
情報公開の是非に限っても、検討課題はある。ここ数十年、法相や一部国会議員ら以外に死刑場が公開されたことはない。また、法務・検察が執行のタ
イミングや順番をどう決めているのかや死刑囚の心身の状況など、「完全にブラックボックス」(死刑廃止団体のメンバー)な部分もある。
死刑廃止の立場で鳩山氏と面会した菊田幸一・明治大名誉教授は「密行主義には反対だが、氏名と犯罪事実に限って公表するのはごまかし。死刑囚の残酷さは
公開するが国が人を殺す残酷さは隠されたまま」と述べ、公開範囲の拡大を求める。
◇厳罰化で未執行増加
7日に3人の死刑が執行され、未執行の死刑囚は全国で104人。死刑確定者は89年以降1ケタだったが、04年以降は10人を超え、今年は既に20人。
厳罰化傾向のうえ、実際の執行に7年半以上を要するため、死刑囚が増える流れにある。
長勢甚遠前法相の命令分とあわせ、今年は計9人に死刑が執行された。76年(12人)以後で最多だが、ある法務省幹部は「執行が追いつかない状況が続く
と、死刑制度に対する不信が出てくる」と危惧(きぐ)する。
一方、死刑をめぐる世界の状況は大きく異なる。「世界の死刑廃止の潮流は政治や宗教、文化の差異を超えて広がっているのに、日本はこの流れに逆行し続け
ている」。人権団体「アムネスティ・インターナショナル日本」は7日、死刑執行に抗議する声明を出した。
アムネスティによると、今年10月現在、90の国・地域が死刑を廃止し、11カ国が戦時犯罪などを除いて死刑を廃止している。10年以上執行がな
い32カ国も含めると133カ国が死刑廃止国だ。死刑を存続させているのは64の国・地域だが、昨年死刑を執行した国は、日本を含めて25カ国しかない。
先進諸国で死刑を残しているのは日本と米国だけだが、米国では死刑判決数や執行数は減少傾向にあるという。
先月15日、国連総会第3委員会(人道問題)で、死刑執行の一時停止を求める決議案が採択され、国際社会で死刑反対の動きは一層強まっている。
一方、日本では世論調査を行うと存続論が多い。内閣府の世論調査結果では死刑存続を認める意見が初めて8割を超えた。
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◆死刑執行を巡る歴代法相の発言◆
後藤田正晴氏「個人的な思想信条で執行を命令しなければ、初めから法相就任が間違い。法秩序、国家の基本が揺らぐ」(93年3月、3年4カ月ぶりの死刑
執行を受け)
中村正三郎氏「死刑の執行は裁判所の判決に基づいて行う行政行為だから、きちんと国民に知ってもらう必要がある」(98年11月、死刑執行の公表を指
示)
保岡興治氏「凶悪事件では死刑もやむを得ないという一般世論がある。現行制度は刑事政策として適切だ」(00年12月、死刑執行後)
森山真弓氏「裁判所が決めたことを執行するのが法務省の仕事。法相がその結論を勝手に曲げるのは許されない」(03年9月、死刑執行後)
南野知恵子氏「人の命を絶つ極めて重大な刑罰なので、慎重な態度で臨んでいるが、確定した裁判の執行は厳正にしなければならない」(05年9月、死刑執
行後)
杉浦正健氏「(死刑執行命令書に)私はサインしません。私の心の問題。宗教観というか哲学の問題です」(05年10月、就任会見で。直後に撤回)
長勢甚遠氏「これまでの法相の判断はあったかもしれないが、自分は法にのっとり慎重に検討して判断した」(07年4月、異例の国会会期中の死刑執行後)
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■死刑に関する鳩山法相の主な発言■
「法相が絡まなくても、半年以内に執行することが自動的、客観的に進む方法がないか。(確定の)順番通りなのか、乱数表なのか分からないが」(9月25
日、内閣総辞職後の会見)
「この大臣は死刑をバンバンやった、この大臣はしないタイプと分かれるのはおかしい」(同日、福田内閣での再任会見)
「日本人は命を奪うという行為に対する憤りが強い民族。死刑廃止は非常にドライな発想と思う」(10月17日、毎日新聞のインタビューに)
毎日新聞 2007年12月8日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071208ddm003010058000c.html
◆死刑執行:鳩山法相「世論を大事に」
鳩山邦夫法相は7日、3人の死刑執行が行われた後、法務省内で会見し「(執行を命令した)この数日間、非常に心の晴れない日々を過ごした。楽な判断では
なかったが、法相の責務と思った」と語った。執行のあり方に関する省内勉強会が進められている最中に執行した是非も問われたが「議論しているから少し執行
しないでいいという意見もあるが、死刑はやむを得ないという世論が八十数%もある。この世論は大事にしなくてはならない」と強調した。
一方、日本弁護士連合会の平山正剛会長は「死刑囚の氏名だけではなく、制度全般に関する情報を更に広く公開することも政府に要請する」と声明を出した。
日弁連は制度の存廃について、議論を尽くすまで執行を一時停止すべきだという立場だ。また、民主党「次の内閣」法務担当、細川律夫衆院議員は「衆院法務委
員会の開催中に執行したことはあまりに軽率だ」と談話を出した。【坂本高志、高倉友彰】
(毎日新聞 2007年12月8日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071208ddm012010087000c.html)
◆(社説)死刑氏名公表 国民の論議深める機に(12月8日)
法務省が三人の死刑を執行し、初めて氏名と執行場所、犯罪事実を公表した。
これまでは執行した事実と人数のみ公表していた。秘密のベールで包んできた死刑制度の実態に風穴を開けたという意味があるだろう。
執行命令書に法相が署名しなくても執行が進む「死刑の自動化」を提案、批判された鳩山邦夫法相がサインした初めての死刑執行である。
今回の氏名公表をきっかけに、死刑制度をめぐる論議を国民全体のものにできないだろうか。そのためにも、執行の実態をもっと明らかにしたうえで、死刑の
存廃についても国会で論議を深めてほしい。
法務省は長年、矯正統計年報に前年の執行件数を掲載するだけだった。
「秘密主義」との批判を浴びて九年前から執行日に、執行の事実と人数の発表を始めた。だが、氏名などは、死刑囚の遺族の感情や、ほかの死刑確定者の心情
の安定を損なうという理由で公表しなかった。
方針転換した理由は「死刑が適正に執行されていることについて国民の理解を得るために、情報公開を進めることが重要と考えた」からだという。ただ、これ
で十分だろうか。
先月、東京拘置所で死刑執行の刑場を視察した国会議員は、所長が「死刑執行」を言い渡し、執行するまでの時間は「数分間」という説明を受けた。
こうした実態すら、国民に知らされているとは言えない。執行前のわずかな時間に死刑囚は最期の言葉を残せるのだろうか。
死刑制度については、国民の賛否の意見が分かれているが、まずは、何がどう行われているかという事実を基に議論することがスタート台になる。
法務省が国民の理解を得ようとした背景には、死刑の確定者が増え、今春から百人を超えている現状がある。
今年の執行数は長勢甚遠法相時代と合わせて九人となり、過去三十年間で最も多い年間執行数になった。このところ年平均三、四人だっただけに、急増ぶりが
目立つ。ただ、粛々と執行すればいいわけではあるまい。
世界の動向も参考にするべきだ。国連総会第三委員会が先月、死刑制度がある加盟国に対し、死刑の一時停止を求める決議案を採択した。決議案に反対した米
国など死刑存続国でも執行の方法はさまざまである。
鳩山法相は刑場の視察をふまえ、現行の絞首刑以外に「何かもっと安らかな方法がないのか」とも述べている。
一年半後には裁判員制度が始まり、国民が死刑もありうる事件の審理に加わる。その前に、執行方法や終身刑の創設、死刑制度の是非などきちんと議論すべき
テーマは多い。国会議員や専門家による「死刑臨時調査会」のような組織を設けてはどうだろうか。
(2007.12.8 北海道新聞
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/64768.html)
◆死刑囚の氏名公開で賛否 死刑廃止派に懸念も
2007年12月08日03時00分
法務省は7日午前に執行した死刑について、初めて対象者の氏名や執行場所を公表した。執行のあり方について省内に勉強会を設けた鳩山法相の意向もあり、
「秘密主義」と批判されてきた死刑執行の情報公開が一歩進んだ形だ。一方で「死刑を進める布石」にしたい法務省側の思惑に対し、死刑廃止を訴える人たちの
間には懸念が募っている。
「(公開は)私の判断です。勉強会でもスパッと結論が出ることではなかったが、決断をしようと思った」。鳩山法相はこの日午後の記者会見で強調した。
法務省はもともと、死刑を執行した事実も公表していなかった。98年からは執行したことと、対象となった人数だけ明らかにしてきたが、氏名の公表にはか
たくなな態度を崩さなかった。
死刑囚の遺族が受ける精神的な苦痛や、他の死刑囚の心情に与える影響といった理由のほか、執行の順番などへの興味をあおったり、死刑そのものの是非につ
いての論議が高まったりしかねない、との懸念があった。
しかし、国民の8割が死刑制度を支持し、廃止を求める論議が下火になっていることが方針転換につながった。鳩山法相は「人数(の公表)だ
けではブラックボックスという感じ。法にのっとり執行していることを明らかにした方が、国民の理解を得られる」と説明した。対象者の犯罪事実を公開したこ
とについても「どんな罪を犯した人なのかを公表すれば、死刑執行は当然という理解が広まるはず」と法務省幹部は言う。
一方、死刑廃止議員連盟の保坂展人衆院議員は「執行の残虐性は隠して正当性だけをアピールするのは情報操作。死刑をめぐる議論が活発に
なってきた時に、一方的に議論の扉を閉ざす行為だ」と批判する。明治大の菊田幸一名誉教授も「国連などが求めているのは死刑囚の生活態度や心情面の公開。
これでは情報公開の名を借りた法務省のアピールだ」と憤る。
勉強会で執行のあり方を検討している最中での執行を批判する声もあるが、鳩山法相は「勉強は勉強。その間は執行しないでおけばいいとの議論があるが、世
論に反することになる」と強調した。
(2007.12.8 asahi.com
http://www.asahi.com/national/update/1207/TKY200712070344.html)
◆死刑氏名公表 「秘密主義」の転換は自然な流れ(12月8日付・読売社説)
これまでの「秘密主義」からの転換である。
法務省は死刑を執行した3人の氏名を初めて明らかにした。死刑制度を有する国として、法に基づいて執行した具体的な事実の公表を躊躇(ちゅうちょ)する
ことはあるまい。
氏名公表について、鳩山法相は、「極刑が適正に粛々と行われているかどうか、被害者あるいは国民が知り、理解する必要がある」と述べた。
犯罪被害者の立場や、情報公開の流れを意識しての判断だろう。
法務省は以前は、死刑執行の事実もすぐには公表せず、年1回の年報に人数などを掲載するだけだった。死刑囚の家族や、他の死刑確定者の心理的動揺などへ
の配慮を理由にしていた。
1998年からは、執行後に人数だけをようやく発表するようになった。報道機関は、独自の取材により、執行された死刑囚の氏名を報じてきた。
読売新聞の昨年12月の世論調査では、死刑制度を「存続すべき」「どちらかといえば存続すべき」と答えた人が、8割に上った。死刑制度が、凶悪犯罪に対
する一定の抑止力となっている。多くの人が、そう感じているからだろう。
制度が社会に受け入れられている以上、死刑の執行について、その事実を公にするのは、自然なことだ。米国で死刑制度のある一部の州では、ホームページな
どで、執行された死刑囚の氏名が公表されている。
2009年春から、裁判員制度が始まる。重大事件が対象となるため、一般市民が裁判官とともに、死刑を適用すべきかどうかの判断を迫られる局面も少なく
なかろう。
市民が死刑という量刑決定にかかわる一方で、確定した刑の執行の情報が、公開されないのでは、裁判員制度のあり方にも疑問が生じかねない。法務省にもそ
うした懸念があったのではないか。
死刑の執行は、法務大臣の命令による――。刑事訴訟法は、そう定めている。鳩山法相は「法相が絡まなくても、自動的に執行が進むような方法があればと思
うことがある」と語ったことがある。
死刑は、究極の刑である。だからこそ、法務行政の最高責任者である法相の執行命令は当然のことだ。法相の発言は、適切さを欠いている。
刑訴法は、死刑確定から6か月以内に法相が執行を命令するよう定めている。だが、現状は、執行までに平均で7年以上かかっている。死刑確定者が増加し、
現在、104人を数える。
氏名公表を、死刑制度のあり方についての議論を深める契機にしたい。
(2007年12月8日1時35分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20071207ig91.htm)
◆『逃れられない責務』 3人死刑、氏名公表 鳩山法相 背景に被害者尊重論
2007年12月7日 東京新聞 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007120702070474.html
死刑を執行した三人の死刑囚の氏名などが七日、初めて公表された。法務省はこれまで死刑囚の家族らへの配慮などを理由に死刑執行直後に氏名は明ら
かにしなかった。犯罪被害者の立場を尊重すべきだとの声に押される形で方針転換に踏み切った。一方、冤罪(えんざい)事件も相次ぐ中、氏名公表は死刑制度
の是非をめぐる議論にも一石を投じそうだ。
この日朝、鳩山邦夫法相は衆院法務委員会で、三人の死刑執行を行ったことについて、「私の命令による逃げることのできない仕事、責務と思って執行しまし
た」と明言。氏名公表について「慎重な検討を重ねた」と述べた。
法務省はかつて、死刑囚の遺族らに精神的苦痛をもたらす恐れがある上、刑の執行を待つ死刑囚にも心理的動揺を与えかねないとして、執行の事実も公表を避
けてきた。
執行の事実と人数だけを公表するようになったのは小渕内閣時代の一九九八年十一月からだ。今回、同省が氏名の公表を決めた背景には「死刑制度への国民の
理解を得るためには可能な限りの情報公開が必要だ」との判断がある。
刑事訴訟法によると、死刑執行は法相が「死刑執行命令書」に署名押印してから五日以内に行われ、死刑判決の確定から六カ月以内と定められている。
しかし、一九九七年から二〇〇六年の十年間で、死刑確定から執行までの期間が平均七年十一カ月を要し、現在、死刑執行を待つ死刑囚は百四人いる。
規定通りに執行されない理由として、法務省は、再審請求や恩赦の出願があることや、生命を絶つ重大な刑罰の執行に慎重を期しているとしてきた。
また、法相が「思想信条」を理由に命令書への署名を拒否するケースもあった。
鳩山法相は九月の内閣総辞職後の会見で「自動的に客観的に進むような方法を考えたらどうか」と発言。死刑制度のあり方を検討する勉強会を省内に設置し議
論を始めていた。
氏名公表遺族ら『当然』『情報公開を』
法務省が死刑を執行した死刑囚の氏名を初めて公表したことについて、「地下鉄サリン事件被害者の会」代表世話人の高橋シズヱさんは「裁判という公開の場
で出された判決が、正しく執行されているかどうか。個々の遺族には知る権利がある」と訴える。
死刑囚ら関係者を相手取り民事訴訟を起こしているケースにも言及し、「死刑執行が訴訟に与える影響は大きい。裁判の節目ごとに通知があるように、矯正関
係の情報も一般公表とは別に、遺族に知らせるべきだ」と指摘した。
元検事で、死刑制度存続の立場をとる大沢孝征弁護士は「氏名公表は当然で、被害者や遺族に最終的な刑の執行が伝えられる。今は、死刑に関する情報
は世の中に知らせなくていいという時代ではない。情報を出さなければ『事件性に問題があるのでは』などと余計な詮索(せんさく)を招きかねず、死刑制度の
信用性を維持するためにも情報公開が大切だ」と話す。
一方、死刑制度廃止を求める弁護士の菊田幸一明治大名誉教授は「死刑囚という個人が、国家に殺された事実を公表するのは理屈抜きに当然だ。さらに
執行を事前に関係者に伝えることで、第三者的な立場の医師の立ち会いで執行直前の精神状態を確認すべきだし、家族などに最後の面会をさせる配慮も必要だ」
としている。
大臣交代後も
氏名公表続ける
法務省会見
法務省では午前十一時十五分すぎから、林真琴刑事局総務課長らが記者会見した。氏名や犯罪事実、執行場所の公表に踏み切ったことについて、「公表による
不利益がある一方で、国民の理解を得るための情報公開の必要性を勘案して、この範囲が公表の限度と考えた」と説明した。
今後の対応についても「新たに重要な検討はあるかもしれないが、大臣が変わったとしてもこの方式で公表していく」と名前の公表は続けていく考えを表明し
た。
三人のうち、藤間静波被告は、最高裁が一九九五年に「判決の衝撃で自分の権利を守る能力(訴訟能力)を著しく欠いた状態に陥っていた」と被告自身
による一審死刑判決の控訴取り下げを無効とする判断を示すなど、訴訟能力が争われたが、法務省は「受刑能力については問題なかった」との見解を示した。
◆死刑執行、初の氏名公表 法務省が東京、大阪で3人 2007年12月7日 夕刊
法務省は7日、確定死刑囚3人の死刑を執行したと発表した。執行されたのは藤間静波(47)、府川博樹(42)=東京拘置所、池本登(74)=大阪拘置
所=の3死刑囚。鳩山邦夫法相の執行命令は初めてで、福田内閣での執行も初めて。法務省は、これまで執行した人数のみを公表してきたが、被害者感情を重
視、執行された死刑囚の名前と執行場所を初めて公表した。3人が執行された前回の8月以来、3カ月半での執行になった。
鳩山法相は同日の衆院法務委員会で「死刑が適正に行われているかを被害者、(死刑囚の)親族、国民が知り、理解する必要があると考え、一定限度の公表を
しようと私が決断した」と説明した。
同省は長年、死刑囚の家族や他の死刑確定者に精神的苦痛を与えるとして公表してこなかった。1998年11月からは執行のたびに事実と人数だけを公表し
てきた。
確定判決によると、藤間死刑囚は82年5月、神奈川県藤沢市の女子高生=当時(16)=に交際を断られたことを逆恨みし、女子高生と妹=同(13)、母
親=同(45)=の3人を刺殺。口封じのため、共犯の少年=同(19)=も逃亡先の兵庫県尼崎市で刺殺。その前年10月にも、神奈川県鎌倉市で、金銭をめ
ぐるトラブルから知人の男性=同(20)=を刺殺した。
藤間死刑囚は東京高裁で審理中の91年に控訴取り下げ書を提出。効力をめぐって公判が中断したが、最高裁が無効と判断し、7年後に公判が再開。異例の長
期裁判となっていた。
府川死刑囚は99年4月19日、新聞の購読契約などで顔見知りだった女性=当時(65)=に借金を断られたことから逆上し刺殺。女性の母親=同(91)
も殺害した。2003年1月、最高裁への上告を本人が取り下げ、死刑が確定した。
池本死刑囚は1985年、徳島県日和佐町(現美波町)で、隣人ら3人を猟銃で射殺、一審は無期懲役だったが、二審で死刑を言い渡され、最高裁で死刑が確
定した。刑確定からは藤間死刑囚が約3年5カ月、池本死刑囚は約11年8カ月、府川死刑囚は約4年10カ月だった。
死刑執行は法相の執行命令が出なかったことによる約3年4カ月の中断を経て、後藤田正晴法相当時の1993年に再開。再開後の執行は今回で60人。今回
の執行後の死刑確定者は104人。
(2007.12.7 中日新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007120702070486.html)
◆「適正な執行、世に示す」 死刑執行者公表で鳩山法相(12/07 17:41)
鳩山邦夫法相は7日午後、法務省で記者会見し、同日死刑が執行された3人の氏名を公表した理由を「法と正義に基づいて適正に執行していることを世に示
し、国民の理解を得るために決断した」と述べた。
絞首刑に関し「もっと安らかな方法がないのかという思いがある」と述べた10月の国会答弁との関連を問われると「最善かどうかは今後議論すればいい。方
法を変えるには刑法改正が必要だが、今回はそういう段階になかった」と説明した。
議論を尽くすまで執行を停止するよう求める意見が多いことについては「死刑はやむを得ないという世論は大事にしないといけない」と反論。執行対象者を選
ぶ基準などの公開は「厳粛なもので、国民の知る権利になじまない。これ以上(公開事項が)広がることは想定しにくい」と否定的な見解を示した。
(2007.12.7 北海道新聞 http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/64676.html)
◆「適正な執行、世に示す」 死刑執行者公表で法相
2007年12月7日 17時10分
鳩山邦夫法相は7日午後、法務省で記者会見し、同日死刑が執行された3人の氏名を公表した理由を「法と正義に基づいて適正に執行していることを世に示
し、国民の理解を得るために決断した」と述べた。
絞首刑に関し「もっと安らかな方法がないのかという思いがある」と述べた10月の国会答弁との関連を問われると「最善かどうかは今後議論すればいい。方
法を変えるには刑法改正が必要だが、今回はそういう段階になかった」と説明した。
議論を尽くすまで執行を停止するよう求める意見が多いことについては「死刑はやむを得ないという世論は大事にしないといけない」と反論。執行対象者を選ぶ
基準などの公開は「厳粛なもので、国民の知る権利になじまない。これ以上(公開事項が)広がることは想定しにくい」と否定的な見解を示した。
(共同)
(2007.12.7 東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007120701000369.html)
◆「斎戒沐浴してサイン」 死刑執行で鳩山法相
2007年12月07日16時29分
鳩山法相は7日昼、衆院法務委員会で、委員からの質問に答える形で死刑を執行したことを明らかにした。そのうえで「国家権力によって人の命を絶つわけ
で、斎戒沐浴(さいかいもくよく)して(執行命令書に)サインをさせていただいた。大きな心の痛みを感じるが、法に基づいて粛々と実行しなければいけない
ということで、逃げることのできない責務と思って執行させていただいた」と話した。
(2007.12.7 asahi.com
http://www.asahi.com/politics/update/1207/TKY200712070244.html)
◆東京、大阪で3人死刑執行 法務省が初の氏名公表 「国民の理解得るため」(12/07 13:43)
法務省は7日、1981−82年に神奈川県などで女子高生ら計5人を殺害した藤間静波死刑囚(47)=東京拘置所=ら3人の死刑を執行し、初めて
氏名と執行場所を公表した。鳩山邦夫法相は同日の衆院法務委員会で公表理由について「適正に執行されていることを、被害者遺族や国民に理解してもらう必要
がある」と答弁した。
死刑執行は前回8月の3人執行からわずか3カ月半。国会開会中の執行は、長勢甚遠前法相当時の4月27日以来。
鳩山法相の執行命令は初めてで、福田内閣での執行も初。死刑確定者は7日現在107人で、今回の執行で104人となった。年間の執行者数は9人となり、
1976年以来最多となった。
藤間死刑囚のほかに執行されたのは、池本登(74)=大阪拘置所、府川博樹(42)=東京拘置所=の両死刑囚。
(2007.12.7 北海道新聞 http://www.hokkaido-np.co.jp/news/society/64643.html)
◆藤間静波死刑囚ら3人死刑執行、初の氏名公表
法務省は7日、東京、大阪両拘置所で同日午前、殺人罪などで死刑が確定した藤間静波死刑囚(47)など3人の刑を執行したと発表した。
同省は、これまで死刑執行の事実と人数だけしか発表してこなかったが、犯罪被害者などから死刑執行に関する情報を公開すべきなどの声が高まっていたこと
を受け、死刑囚の氏名や犯罪事実の概要、執行場所の公表に初めて踏み切った。死刑執行は今年8月23日に3人が執行されて以来で、鳩山法相が就任して初め
て。国会会期中の執行は極めて異例。
死刑が執行されたのは、藤間死刑囚(東京拘置所)のほか、府川博樹(42)(同)と池本登(74)(大阪拘置所)の2死刑囚。
藤間死刑囚は神奈川県藤沢市などで1981年〜82年、女子高生とその母親、妹を含む5人を殺害するなどした。府川死刑囚は99年、東京都江戸川区のア
パートで無職の女性とその母を刺殺するなどした。池本死刑囚は85年6月、徳島県日和佐町(現美波町)で、隣人ら3人を猟銃で射殺するなどした。
死刑執行を巡っては、鳩山法相が今年9月、死刑執行を法相の署名なしに自動的に進める考えを提案。省内に勉強会を設け、制度の見直しに意欲を示してい
た。鳩山法相は7日の衆院法務委員会で「死刑という非常に重い極刑が法に基づいて適正に粛々と行われているかどうかは、被害者あるいは国民が知り、理解す
る必要がある」と、公表に踏み切った理由を述べた。
同省によると、死刑確定者は6日現在で107人いたが、この日の執行で104人となった。
(2007年12月7日13時26分 読売新聞)
◆死刑執行:氏名公表…神奈川5人殺害など
「法相が代わっても続ける」。法務省は7日、3人の死刑執行を明らかにしたうえで戦後初めて、死刑囚の氏名を公式に発表した。鳩山邦夫法相もこの日、衆
院法務委員会の質疑で公表にいたった経過を説明した。
執行されたのは藤間静波(ふじませいは)(47)、府川博樹(42)、池本登(74)の各死刑囚。現在収容中の死刑囚は11月末現在、104人になっ
た。同省は氏名公表の理由について「被害者をはじめとする国民から、さらに情報公開すべきだとの要請は(執行の人数のみが公表されるようになった)98年
11月以降も高まっており、国民の理解を得るために慎重な検討を踏まえ、法相が判断した」と異例のコメントを出した。
公表された犯罪事実によると、藤間死刑囚は(1)81年10月、窃盗仲間の知人男性(当時20歳)(2)82年5月、神奈川県藤沢市の女子高校生(同
16歳)に交際を嫌がられたことを逆恨みし、この高校生と母親(同45歳)、妹(同13歳)の3人(3)翌月、母親殺害の際の見張り役だった少年(同19
歳)−−の計5人を刺殺した。
府川死刑囚は99年4月、無職女性(当時65歳)に借金を申し込んだが断られ、この女性とその母親(同91歳)を刺殺するなどした。
池本死刑囚は85年6月、隣人で遠縁の男性(当時46歳)とトラブルになり、男性とその妻(同54歳)を散弾銃で射殺。さらに日ごろから恨みに思ってい
た近所の男性(同71歳)が通りかかったのを見つけて射殺した。
【坂本高志】
(2007年12月7日 12時37分 〔最終更新時間 12月7日 13時20分〕毎日新聞 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071207k0000e040048000c.html)
◆死刑、初の氏名公表 法務省、3人執行と発表
2007年12月07日12時09分
法務省は7日、3人の死刑を執行した、と発表した。法相が執行命令書に署名しなくても執行が進む「死刑の自動化」を提案した鳩山法相の下での初めての執
行となった。発表にあたり、同省は初めて、対象となった死刑囚の氏名と犯罪事実、執行場所を公表。「情報公開することで死刑制度に対する国民の理解を得ら
れる」との狙いから、実施の事実だけを伝えて氏名などは一切公表しない従来の方針を転換した。
07年中の執行は、長勢法相時代の6人とあわせて計9人で、年間の執行者数としては77年以降で最多となる。刑事事件の厳罰化の流れのなかで、死刑確定
者は増え続けており、この日の執行後の生存死刑囚は104人となった。
発表によると、執行の対象になったのは藤間静波(せいは)死刑囚(47)と府川博樹死刑囚(42)、池本登死刑囚(74)の3人。藤間、府川両死刑囚は
東京拘置所で、池本死刑囚は大阪拘置所でそれぞれ執行された。
発表された犯罪事実やそれぞれの確定判決などによると、藤間死刑囚は81〜82年、横浜市で盗み仲間の男性(当時20)を刃物で刺殺したほか、神奈川県
藤沢市の女性(同16)ら一家3人を刺殺。一緒に逃亡していた元店員の少年(同19)も兵庫県尼崎市で刺殺した。
府川死刑囚は99年、女性との交際費に困って東京都江戸川区の無職女性(同65)に借金を申し込んだが断られ、女性とその母親(同91)を刺殺した。
池本死刑囚は85年、隣人から自分の畑にごみを捨てられるなどの嫌がらせを受けたなどと思い込み、徳島県内の自宅にあった散弾銃で近所に住む3人を射殺
し、1人に重傷を負わせた。
(2007.12.7 asahi.com
http://www.asahi.com/national/update/1207/TKY200712070128.html)
◆死刑執行:氏名公表…遅すぎた「公開」 解説
死刑執行を巡り、死刑囚の氏名や執行場所などが公式に明らかになることは、日本の死刑システムの特徴として内外から批判されてきた極端な閉鎖性か
ら一歩脱却したことを意味する。究極の刑罰ではあるが、同時に行政が法律に従って実施する行為でもある。公開の流れは遅すぎたくらいだろう。
方針転換の直接のきっかけは、今年8月下旬の鳩山法相の就任だ。鳩山氏は死刑は必要と強調しつつ、「法相が絡まず執行が自動的に進む方法はないか」、
「死刑囚の名前すら公表していない現状を続けるのか」などの発言で波紋を呼んできた。
「友人の友人はアルカイダ」をはじめ、同氏の発言は誤解を生みがちな面もあり、死刑に対する言及も疑問視する反応が少なくなかった。だが、「『自
動化』はともかく、氏名公表には法改正するハードルがない」と前向きに考える法務省幹部もおり、今回の流れが形成されていったとみられる。
死刑に反対する立場からは「一部の情報公開で制度の安定化を進めるつもりではないか」と揶揄(やゆ)する向きもある。今のところ、執行の順番な
ど、核心部分が開示される可能性は低い。だが、09年に始まる裁判員制度では、市民が死刑の可否を判断しなければならない事態が生じる。そう考えれば、制
度の存廃を含めた幅広い議論のため、秘密主義のさらなる見直しが求められる。【坂本高志】
(毎日新聞 2007年12月7日 11時51分〔最終更新時間 12月7日 12時38分〕http:
//mainichi.jp/select/seiji/news/20071207k0000e040037000c.html?inb=yt)
◆<死刑執行>氏名を公表…東京・大阪で3人 法務省方針転換
12月7日11時49分配信 毎日新聞
法務省は7日、東京、大阪両拘置所で計3人の死刑を執行し、執行された死刑囚の氏名や犯罪事実を公表した。法改正の必要はないが、これまでは死刑囚の家
族や、ほかの死刑囚への配慮を理由に実施しておらず、大きな方針転換となる。執行が適切に行われていることを国民に周知することで、死刑制度への理解を進
める狙いもあるとみられる。
死刑が執行されたのは、▽藤間静波(ふじませいは)(47)=東京拘置所収容▽府川博樹(42)=同▽池本登(74)=大阪拘置所収容=の各死刑囚。死
刑は8月23日以来で、鳩山邦夫法相の下では初の執行命令。
法務省は長い間、「死刑確定者の心情の安定、被害者の遺族感情などへの配慮」を理由に、執行の事実すら公表せず、問い合わせにも答えることはなく、報道
機関の独自取材や市民団体の調査によって明らかになるケースも少なくなかった。
90年代に入り、「聞かれれば執行の事実と人数は答える」とする法相が続き、中村正三郎法相当時の98年11月以降、「本日、死刑確定者○名に対し死刑
を執行した」という形で公表されるようになった。
しかし、「誰が、どこで執行されたのかを明らかにしないのはおかしい」との批判は強く、情報公開の是非は常に議論されてきた。今年8月就任した鳩山法相
は省内の勉強会を設置し、死刑廃止団体の意見を聞く機会を設けるなど、制度改善にも前向きな姿勢をみせていた。今回の氏名公表も、勉強会で大きなテーマと
して検討を進め、方針変更を決断した。【坂本高志】
(2007.12.7 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071207-00000039-mai-soci)
◆ひと:バド・ウェルチさん=死刑廃止訴え来日したテロ被害者遺族
◇復讐心がある限り、人は決して癒やされない
168人が犠牲になった米オクラホマシティー連邦政府ビル爆破事件で、23歳の長女ジュリーさんを亡くした。95年4月19日のことだ。「自分の手で犯
人を殺したい」。怒りと憎しみに取りつかれ、アルコールにおぼれる夜が続いた。
事件を首謀したとして逮捕・起訴された男は元米陸軍兵士。「自分を湾岸戦争に送り込んだ連邦政府への恨み」が動機だとも報道された。自分と同じ復讐(ふ
くしゅう)心が、事件を引き起こしたのではないか。10カ月後にそう気付いた。
「死刑は子供たちに憎むことを教えるだけよ」。生前の娘の言葉を思い出し、死刑反対を訴え始めた。男の死刑は01年6月に執行されたが、何の安らぎも得
られなかったという。
復讐の連鎖を断ち切ろうと考えた時、テレビで見た男の父親の姿を思い出した。悲しみに包まれた表情が、鏡に映る自分にそっくりだった。「息子が犯した罪
であなたを憎んではいない」。3年半後に面会を果たし、そう伝えた。今も続く父親同士の交流が、大きな癒やしになっている。
自身の体験に基づき、全米で「死刑廃止」と「被害者家族と加害者家族の対話」を訴えてきた。10月下旬から11月初めに初来日、犯罪被害者家族との交流
も深めた。海外訪問は日本で12カ国目。講演回数が1000回を超えた年もある。「死刑廃止に向け、日本はアジアでリーダーシップを発揮してほしい」。離
日に当たっての願いだ。<文・木戸哲/写真・塩入正夫>
==============
■人物略歴
◇Bud Welch
元ガソリンスタンド経営。来日時は全国8カ所で講演した。「人権を求める殺人被害者家族の会」理事長。米オクラホマ州在住。68歳。
毎日新聞 2007年12月7日
http://mainichi.jp/select/opinion/hito/archive/news/2007/12/20071207ddm003070070000c.html
東京朝刊
◆3人の死刑執行、徳島で85年発生の近所3人射殺など
2007年12月07日
法務省は7日、3人の死刑を執行した、と発表した。法相が執行命令書に署名しなくても執行が進む「死刑の自動化」を提案した鳩山法相の下での初めての執
行となった。発表にあたり、同省は初めて、対象となった死刑囚の氏名と犯罪事実、執行場所を公表。「情報公開することで死刑制度に対する国民の理解を得ら
れる」との狙いから、実施の事実だけを伝えて氏名などは一切公表しない従来の方針を転換した。
07年中の執行は、長勢法相時代の6人とあわせて計9人で、年間の執行者数としては77年以降で最多となる。刑事事件の厳罰化の流れのなかで、死刑確定
者は増え続けており、この日の執行後の生存死刑囚は104人となった。
発表によると、執行の対象になったのは藤間静波(せいは)死刑囚(47)と府川博樹死刑囚(42)、池本登死刑囚(74)の3人。藤間、府川両死刑囚は
東京拘置所で、池本死刑囚は大阪拘置所でそれぞれ執行された。
発表された犯罪事実やそれぞれの確定判決などによると、藤間死刑囚は81〜82年、横浜市で盗み仲間の男性(当時20)を刃物で刺殺したほか、神奈川県
藤沢市の女性(同16)ら一家3人を刺殺。一緒に逃亡していた元店員の少年(同19)も兵庫県尼崎市で刺殺した。
府川死刑囚は99年、女性との交際費に困って東京都江戸川区の無職女性(同65)に借金を申し込んだが断られ、女性とその母親(同91)を刺殺した。
池本死刑囚は85年、隣人から自分の畑にごみを捨てられるなどの嫌がらせを受けたなどと思い込み、徳島県内の自宅にあった散弾銃で近所に住む3人を射殺
し、1人に重傷を負わせた。
(2007.12.7 asahi.com
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200712070030.html)
◆映画:「ライファーズ 終身刑を超えて」あすまで公開 坂上香監督が対談 /京都
◇「歳月で人は変われる」
米国の刑務所に服役中の終身刑受刑者らの姿を追ったドキュメンタリー映画「ライファーズ 終身刑を超えて」が、下京区・京都シネマ(075・353・
4723)で公開中だ。2日には坂上香監督と京都大大学院の岡真理准教授による対談が行われた。
「ライファーズ」は終身刑か無期刑受刑者の意味。映画はテレビ取材で坂上監督が出会った、民間団体「アミティ(ラテン語で、友愛、友情の意)」の取り組
みなどを紹介。団体のサポートを受け仮釈放を目指す受刑者や、活動に参加する元受刑者の姿も記録した。 イスラエルやパレスチナ問題に詳しい岡准教授は、
受刑者について「社会的に貧困層が多く、自分が大切にされていないため、他人の幸せを破壊することで代用している」と指摘した上で、「パレスチナの自爆テ
ロの原因にもつながるものだ」と分析。坂上監督も「性的被害を受けた受刑者もいるが、彼らは加害者以外への殺害・傷害行為に及んでしまう。今の我々はその
事を見ようとしていないが、しっかり考えないといけない」と応えていた。
また、岡准教授は「映画から『歳月によって人は変われる』という可変性を見た。死刑を容認する人は犯罪者は変わらないと主張するが、殺人はいけないの
に、なぜ死刑を認めるのか」と持論を展開した。
映画は7日まで、同シネマで公開。いずれも午前10時から。【小川信】
毎日新聞 2007年12月6日
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20071206ddlk26200734000c.html
◆京都・神奈川連続殺人:3人目殺すつもりだった 被告に破滅願望も−−公判 /京都
◇第6回公判
今年1月に伯母の岩井順子さん(当時57歳)=長岡京市=と、大叔父の加藤順一さん(同72歳)=神奈川県相模原市=をそれぞれの自宅で殺害し金
品を奪ったとして強盗殺人罪に問われた住所不定、無職、松村恭造被告(26)の第6回公判が5日、京都地裁(増田耕児裁判長)であった。初の被告人質問
で、松村被告は「3人目を殺すつもりだった」と述べた。
弁護側の質問で、松村被告は恨みも反感もなかった加藤さん殺害について「(自殺か死刑で)自分の死に引き合うだけの悪いことをしてやろうと思った。毒を
食らうなら皿までもとの気持ちだった」と説明。3人目の相手は「頭の中にはありました」と述べた。
殺害前にゴム手袋やバール、ナイフなどを準備していたなどと計画性を自ら明らかにする一方、「殺すことで頭がいっぱいだった。金品を持ち出したのは罪を
重くするため」と、強盗目的を改めて否定した。
父親への反発や親族への悪感情を募らせ、仕事でも失敗を重ねた経過も詳述。「自分の人生を終わりにする。社会に恩恵を受けていないなら仕返ししてもい
い」などと破滅願望も強調した。
次回は12月26日、検察側の被告人質問がある。【太田裕之】
毎日新聞 2007年12月6日
◆延岡の高校生殺傷:被害者の遺族「極刑にして」−−公判 /宮崎
昨年8月、延岡市で高校生の男女2人が殺傷された事件で、殺人と殺人未遂の罪に問われた同市昭和町1、無職、原田優被告(21)の公判が5日、宮崎地裁
延岡支部(宮武康裁判長)であった。刺殺された森重和之さん(当時16歳)の両親は「極刑にしてほしい」と証言した。
証人尋問で父親は「自分の子は死んで(もう)いないのに、被告人は太って言葉だけの陳謝しかしない。極刑にしてほしい」と絞り出すように訴えた。母親も
「友は就職するというのにわが子はいない。全部奪った被告人には最初から死刑を望んでいます」と述べた。
被告人質問で、検察官から「謝罪の気持ちはあるか」と問われ、原田被告は「ある」と短い言葉で答えていた。
毎日新聞 2007年12月6日
http://mainichi.jp/area/miyazaki/news/20071206ddlk45040674000c.html
◆山口・光の母子殺害:差し戻し審結審 元少年と検察の主張に隔たり /広島
◇来春の判決に注目
山口県光市で母子を殺害したとして殺人罪などに問われた当時18歳の元少年(26)の差し戻し審は4日、広島高裁で半年余りの審理を終えて結審し
た。これまで認めていた起訴事実を全面否認した元少年と、死刑を求める検察側の主張は大きく隔たり、4月22日の判決が注目される。
差し戻し控訴審は、5月の初公判以降、計12回の審理が行われた。10月の検察側最終弁論までは毎回3日間で3度の集中審理で迅速化が図られた。起訴事
実から一変し、元少年が述べた「新供述」の信用性の判断が焦点の一つとなる。
アパートを戸別訪問し本村洋さん方に侵入した経緯について元少年は弁護側被告人質問で「友人と遊ぶ時間までの暇つぶしで人恋しさを紛らわすゲー
ム。家に上がり込んだのは想定外だった」と供述。弥生さんに背後から抱きつくまでの心境は「優しく対応されて自殺した実母を思い出し甘えたくなった」と最
高裁で認定された強姦(ごうかん)目的を否認。逮捕後の取り調べで「検察官から『否認すると死刑の公算が強くなる。生きて償いなさい』と言われ調書にサイ
ンした。1審で死刑を求刑され裏切られたと思った」と話した。
絞殺については「反撃を受けそうになり押し倒したら動かなくなった。右手が首を押さえていた」と供述。その後、姦淫(かんいん)したのは「生き返
ると小説に書いてあった」などとした。弥生さんの体を触った行為に「性的感情は全くなかった」と述べたが、弁護側の心理鑑定人は「後付けの可能性がある」
と疑問を呈した。夕夏ちゃんの絞殺は「覚えていない」と話した。
供述が変わった理由を裁判官が直接問う場面もあった。「1審判決後にどうして弁護士に真実を告げ反論しなかったのか」と聞かれ、「投げやりな気持ちだっ
た」「話ができる権利を知らず、弁護士に不信感があった」などと答えた。
毎日新聞 2007年12月5日
http://mainichi.jp/area/hiroshima/news/20071205ddlk34040553000c.html
◆山口・光の母子殺害:未熟考慮し減軽を 弁護側最終弁論で結審 判決は来年4月22日
山口県光市で99年に母子を殺害したとして、殺人や強姦(ごうかん)致死罪などに問われた当時18歳の元少年(26)の差し戻し控訴審は4日、広
島高裁(楢崎康英裁判長)で弁護側の最終弁論があり、結審した。弁護側は殺意や強姦目的はなく、傷害致死罪にあたると主張。また「未熟な少年による事件で
あることを考慮し量刑を決めるべきだ」と訴えた。判決は来年4月22日、言い渡される。
1、2審判決によると、元少年は99年4月14日、光市の会社員、本村洋さん(31)方のアパートに排水検査を装って上がり、妻弥生さん(当時23歳)
の首を強姦目的で絞めて殺害。長女夕夏ちゃん(同11カ月)も床にたたきつけたうえで絞殺した。
弁護側は「少年特有の未成熟さから、捜査官により事実をねじ曲げた調書が作られ、1・2審と最高裁の判決は問題点の検証を怠って正義に反する事実
誤認をした」と主張。実母に甘えたいような感情を持ち、弥生さんに抱きつき、反撃されたために無我夢中で押さえつけ、誤って窒息死させてしまったとして殺
意を否定。夕夏ちゃんについても殺意を否定した。
そのうえで、元少年は、幼いころから父親の暴力を受けて育ち、実母は中学1年時に自殺しており、「命の大切さを教わる場面がなかった」とし、精神的未発
達にあったことを考慮すべきだとして減軽を主張した。
一方、検察側は10月の最終弁論で「被告の弁解は言い逃れで、反省どころか被害者を冒〓(ぼうとく)している」などと指摘し、改めて死刑を求めている。
【大沢瑞季、安部拓輝】
毎日新聞 2007年12月5日 西部朝刊
http://mainichi.jp/seibu/shakai/news/20071205ddp001040002000c.html
◆光市母子殺害:差し戻し審が結審 弁護側は死刑回避求める
山口県光市で99年に母子を殺害したとして、殺人や強姦(ごうかん)致死罪などに問われた当時18歳の元少年(26)の差し戻し控訴審は4日、広
島高裁(楢崎康英裁判長)で弁護側の最終弁論があり、結審した。弁護側は「少年特有の未成熟さから、捜査官により事実をねじ曲げた調書が作られ、1、2審
と最高裁の判決は問題点の検証を怠って正義に反する事実誤認をした」と主張。殺意や強姦目的はなく、傷害致死罪にあたるとした。また「未熟な少年による事
件であることを考慮し量刑を決めるべきだ」と訴えた。判決は08年4月22日午前10時、言い渡される。
1、2審判決によると、元少年は99年4月14日、光市の会社員、本村洋さん(31)方で妻弥生さん(当時23歳)の首を強姦目的で絞めて殺害。長女夕
夏ちゃん(同11カ月)も床にたたきつけたうえで絞殺した。
殺意については、弥生さんに反撃されたために無我夢中で押さえつけ、誤って窒息死させてしまったと否定。夕夏ちゃんも、泣きやませようとあやしたがうま
くいかず、困惑して首にひもを緩く巻いたら結果的に死なせてしまったとした。
殺意の有無は弁護側が依頼した法医鑑定の結果でも明白と指摘。弥生さんの首の痕跡は、検察側がいう両手で絞めたものではなく、右手の逆手で押さえつけた
ものと一致。夕夏ちゃんの頭の傷も重大なものではなく、首にもひもで強く絞めた跡がないとした。
元少年は、幼いころから父親の暴力を受けて育った。同様に被害を受けていた実母に一体感を抱いていたが、実母が中学1年時に自殺した。安田好弘主
任弁護人は「事件を正面から受け止め、反省の中で生きようとしている。生きる道しるべを示す判決を」と求めた。【安部拓輝、大沢瑞季】
毎日新聞 2007年12月4日 21時21分 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071205k0000m040103000c.html(最
終更新時
間 12月4日 21時55分)
◆中津川の5人殺害:1000人署名、死刑回避嘆願 知人が提出、採用−−公判 /岐阜
◇「償う機会与えて」
中津川市で05年2月に起きた一家5人殺害事件で、殺人罪などに問われた同市坂下、元同市職員、原平被告(60)の公判が3日、岐阜地裁(田辺三保子裁
判長)であった。検察側が求めていた再度の精神鑑定を実施していたため、昨年10月以来約1年ぶりの公判再開となった。
弁護側の証人尋問で原被告の知人の男性が出廷した。男性は原被告の死刑回避を求める約1000人分の署名を集めた嘆願書を提出し「償う機会を与えてほし
い」と訴えた。地裁は「関連性がある」として証拠採用を決めた。
公判は原被告の責任能力が争点になっている。弁護側の精神鑑定は「心神耗弱の状態だった」と指摘。一方、検察側の精神鑑定では「完全責任能力があった」
と異なる結果が出ている。次回公判は来年2月15日。【稲垣衆史】
毎日新聞 2007年12月4日
http://mainichi.jp/area/gifu/news/20071204ddlk21040134000c.html
◆防長評論:原点 /山口
一つの裁判を巡って、かかわる者の職業倫理、志した原点を見つめ直す機会が与えられている。
広島高裁で差し戻し審理中の光母子殺害事件。8年前、光市の社宅で会社員、本村洋さん(31)の妻、弥生さん(当時23)と長女の夕夏ちゃん(同
11カ月)が当時18歳の少年に殺害された。元少年は殺人、強姦(ごうかん)致死容疑などで逮捕され、1、2審では事実関係を認めていたが、差し戻し審に
なって「殺意はなく母親に甘えるように抱きつこうとするなかで起きた」と全く主張を変えてきた。
母親の自殺など不幸な過去から、優しそうな女性への母胎回帰の心境から起きたと約20人の弁護団も専門家の知見などを基に振り出しに戻し争っている。
最初から主張しなかった点に関し、元少年は「認めないと検察側に『死刑の公算が大きくなる。生きて償え』といわれ、当時の弁護士と事実関係を争わないこ
とに十分な打ち合わせもなかった」などと公判で語った。
検察、現在の弁護側が真っ向から対立し、裁判は複雑な色合いを帯びてきた。さらに著名な弁護士がテレビ番組で、弁護士団への懲戒請求を呼びかけたところ
数千件の請求が集まった。弁護団は逆に業務妨害で提訴する一方、メディアへの批判を強めている。
広島市であった同事件を考えるシンポジウムを聴いた。弁護団の1人が「被告人の利益を第一に考えるのが使命。被害者に寄り添い公益を守るのは検
察」と訴え、被害者寄りの報道も批判した。松本サリン事件で報道被害を受けた河野義行さんは講演で「事件報道はリーク情報が多く公平、中立と思えない」と
批判したが、謙虚に受け止めねばならない。
罪を追及する者、弁護する者、伝える者。真実の追及と事件の教訓の社会還元という点で目的は同じである。どこかに、誰かに偽りはないか。裁判員制度の導
入を前に、原点に返って自問が必要だ。4日の弁護側最終弁論に注目したい。<周南支局長・前田敏郎>
〔山口東版〕
毎日新聞 2007年12月3日
http://mainichi.jp/area/yamaguchi/news/20071203ddlk35070244000c.html
◆見守るというそのことの難しさ
☆印は秀逸(仲畑貴志選)
☆見守るというそのことの難しさ 神奈川 荒川淳
感動をムリヤリさがすテレビ局 さいたま 影無
婦長来て若い主治医の笑顔消え 北九州 高橋鈍牛
宝くじ当ててしたいな親孝行 蕨 あげあし鳥
感謝から恨みに変わる借りた金 久喜 宮本佳則
ウケねらいとしか思えぬ競馬名 柏原 柏原のミミ
地方でも寅さん居るよな祭り減り 富士 富士のマク
自慢らしおニューの入れ歯よく笑う 高知 しばてん
国会も悪いヤツほどよく眠り 東京 恋し川
死刑などいらぬと言えぬ記事ばかり 千葉 姫野泰之
友の数わしより多い孫5歳 福岡 只乃愚痴
いつまでもあってほしいな色と金 山口 世古玲子
舛添氏だけ張り切っている布陣 さいたま 模名理座
可愛さは二の次でいいアナウンサー 東京 木村美智子
ワイドショーニュースじゃなくてショーなのね 佐伯 イリコ
親方はあんなものかと見るテレビ 下松 まつかぜ
シンプルがベスト米びつ洗い知る 守山 みきをくん
万柳を詠んで怒りを鎮めおり 横浜 銀蠅
毎日新聞 2007年12月3日 東京朝刊
http://mainichi.jp/enta/art/senryu/news/20071203ddm003070119000c.html
◆仮釈放中殺人:被告の死刑確定へ 最高裁が上告棄却
無期懲役刑で服役し、仮釈放中に知人女性を殺害したとして、殺人罪などに問われた元清掃員、宇井〓次(りょうじ)被告(68)に対し、最高裁第2
小法廷(今井功裁判長)は30日、上告棄却の判決を言い渡した。1、2審の死刑判決が確定する。小法廷は「20年近く服役したにもかかわらず類似事件を繰
り返しており、刑事責任は極めて重大だ」と指摘した。
2審・広島高裁岡山支部判決(04年2月)によると、宇井被告は80年3月、出身地の愛知県で知人女性2人を殺害し遺体を捨てたとして無期懲役判
決を受け服役。99年11月に仮釈放されたが、01年8月、金銭トラブルから岡山市の無職女性(当時57歳)の首を絞めて殺害した。【高倉友彰】
毎日新聞 2007年12月1日 中部朝刊
http://mainichi.jp/chubu/newsarchive/news/20071201ddq041040011000c.html
◆袴田事件:袴田死刑囚の支援訴え、東京で来年1月にチャリティーボクシング /静岡
66年に清水市(現静岡市清水区)でみそ製造会社専務一家4人が殺害された「袴田事件」で、無実を訴え再審請求中の元プロボクサー、袴田巌死刑囚
の支援を訴えるチャリティーボクシング「FREE HAKAMADA NOW(今すぐ、袴田さんを自由に)」が来年1月24日、東京都文京区の後楽園ホー
ルで開催される。
日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会の大橋秀行委員長ら現・元世界王者が入った2人1組の数チームがリング上でスパーリングを披露。さらに日本ボク
シングコミッションから袴田死刑囚への「名誉ライセンス」贈呈式を行う。子ども向けのボクシング教室も予定している。
午後5時半開場、午後6時開始。入場料などの問い合わせは袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会(054・366・2468)。【望月和美】
毎日新聞 2007年12月1日
http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20071201ddlk22040180000c.html
◆加藤紘一氏、死刑廃止議連に加盟
2007年11月30日06時42分
鳩山法相の「死刑執行が自動的に進む方法はないか」との発言をきっかけに、自民党元幹事長の加藤紘一衆院議員が29日、死刑廃止議員連盟(亀井静香会
長)に加盟した。野党議員が中心の議連に自民党議員が新たに加わるのは異例。
加藤氏は「鳩山発言は軽はずみだが、(死刑執行の命令書に)『署名したくない』という気持ちを感じた。冤罪の可能性もあり、自分も法相だったら執行した
くないなと考えた」と話し、「単なる勇気のなさから来る発言なのか、何らかの問題提起なのかを確かめるためにも、議連で勉強をし、鳩山氏とも議論したい」
と意欲を見せた。
(2007.11.30 asahi.com
http://www.asahi.com/politics/update/1130/TKY200711290379.html)
◆殺人:仮釈放中に再び女性殺害 宇井被告の死刑確定へ
無期懲役刑で服役し、仮釈放中に知人女性を殺害したとして、殺人罪などに問われた元清掃員、宇井りょう次被告(68)に対し、最高裁第2小法廷
(今井功裁判長)は30日、上告棄却の判決を言い渡した。1、2審の死刑判決が確定する。小法廷は「20年近く服役したにもかかわらず類似事件を繰り返し
ており、刑事責任は極めて重大だ」と指摘した。
2審・広島高裁岡山支部判決(04年2月)によると、宇井被告は80年3月、出身地の愛知県で知人女性2人を殺害し遺体を捨てたとして無期懲役判
決を受け服役。99年11月に仮釈放されたが、01年8月、金銭トラブルから岡山市の無職女性(当時57歳)の首を絞めて殺害し、遺体を市内の竹やぶに捨
てた。【高倉友彰
毎日新聞 2007年11月30日 19時54分 (最終更新時間 12月1日 0時55分)
◆青山でサウンドデモ、音楽に合わせ反戦
2007年11月30日
デモといってもシュプレヒコールだけじゃない。12月1日、東京・青山の通りをDJの音楽に合わせて練り歩く反戦サウンドデモが行われる。戦争のほか、
格差や貧困などがテーマ。飛び入りも自由だ。(アサヒ・コム編集部)
サウンドデモは、同日開催の「反戦と抵抗のフェスタ」というイベントの一部。フェスタは時事問題をめぐる報告会や討論会が中心で、自衛隊の海外派遣に反
対する市民グループや、フリーターでつくる労働組合の有志らが実行委を組織し、2004年から毎年開いている。デモは昨年初めて実施し、約200人が参加
した。
今回は、日雇い派遣労働など「ワーキングプア」の問題も取り上げる。実行委は「貧困が戦争につながる危険について考えてほしい」と説明する。テーマを広
げたことで、労働組合からも賛同の声が集まるなど、参加者の幅が広がったという。
当日はまず、主会場となる東京・千駄ケ谷の千駄ケ谷区民会館で、「農と食」「死刑」「原発」など、今年1年で話題に上った出来事について、専門家らが報
告する。
その後、トラックにDJを乗せ音楽をかけながらのデモ。テクノを中心に幅広い曲を流すという。もちろん、昔ながらのシュプレヒコールも健在だ。「それぞ
れのやり方で、自由に訴えてほしい」と実行委。
デモ終了後、再び千駄ケ谷区民会館で、日雇い派遣の現場が抱える問題点を派遣ユニオンの関根秀一郎書記長らが報告。さらに、戦争と貧困についての討論会
を行う。
司会を務める作家の雨宮処凛(あまみや・かりん)さんは「フリーター労組が結成されるなど、着実に前進している」と評価する一方、フリー
ターへの偏見は根強いと感じている。「正規雇用の道がないに等しい。このままでは、東京にスラム街ができ、社会が不安定になる」と懸念する。
フェスタのブログには、今までデモとは縁のなかった若者からも、賛同のメッセージが届いている。実行委は「労働問題など切実なテーマに反応したのでは」
とみている。
当日のスケジュールは、報告会が午後1時から。サウンドデモは午後4時15分に千駄ケ谷区民会館を出発し、明治通りから青山通り、表参道、原宿駅を通
り、同会館に戻る。討論会は午後7時から。問い合わせは070―5587―3802まで。
(2007.11.30 asahi.com
http://www.asahi.com/komimi/TKY200711280281.html)
◆静岡・茶畑殺人:被告人質問で妻、殺害動機を否定−−東京高裁、控訴審公判 /静岡
◇東京高裁、殺人罪控訴審第2回公判
妻と会社の同僚を殺して殺人罪などに問われ、今年2月に静岡地裁で死刑判決を受けた元生協職員、大倉修被告(38)の控訴審第2回公判が29日、
東京高裁(安広文夫裁判長)であった。被告人質問で大倉被告は、1審で認定された「不倫相手との関係を維持するため」という妻の殺害動機を否定。「妻に離
婚届を書かされたことで絶望的になり、2人で死のうと思い殺した」などと供述した。
安広裁判長は、弁護側が求めた被告の精神鑑定は行わない意向を示した。来年1月24日の次回公判で結審する見通し。【浜中慎哉】
毎日新聞 2007年11月30日
http://mainichi.jp/area/shizuoka/news/20071130ddlk22040426000c.html
◆九十九島:黒崎さん国連総会を報告 /長崎
米ニューヨーク市の国連本部で開かれている国連総会に10月7日〜今月22日、政府代表団の顧問として出席した医師、黒崎伸子さん(50)=長崎市=が
27日、田上富久市長を表敬訪問した。
黒崎さんは小児外科医として長崎大学に勤務した後、01年に「国境なき医師団」に加わり、イラクミッションの後方支援やスリランカ、インドネシア
のアチェ州など紛争地帯で医療活動に従事。女性の地位向上を目指すNGO「日本BPW連合会」(事務局・東京都新宿区)の会長も務め、NGO側の推薦で政
府代表団に加わった。
国連総会では、人道問題を協議する第3委員会に出席。北朝鮮の人権侵害非難決議、死刑執行の一時停止(モラトリアム)を求める決議などを審議し
た。黒崎さんは「米国などの大国も発展途上国も1票は同じ1票。しかも日本は常に従軍慰安婦の問題を突かれるので、どこで議論を落ち着かせるかが大変だっ
た」と話した。【錦織祐一】
〔佐世保版〕
毎日新聞 2007年11月29日
http://mainichi.jp/area/nagasaki/archive/news/2007/11/29/20071129ddlk42040548000c.html
◆母と娘2人を殺害したとされた事件、被告に無罪判決
2007年11月28日
広島市西区の母親宅を保険金目的で放火し、母親と自分の娘2人を殺害したなどとして殺人、現住建造物等放火、詐欺などの罪に問われ、死刑を求刑されてい
た元会社員中村国治(くにはる)被告(37)=広島県東広島市=に対する判決公判が28日、広島地裁であった。細田啓介裁判長は「被告が現場にいた証拠は
ない。自白には不自然な変遷があり、信用性がない」として無罪を言い渡した。広島地検は控訴した。
最高裁によると、1978年以降、一審の死刑求刑に対して無罪判決が出たのは3件目。細田裁判長は判決読み上げ後、「非常に疑わしい点
があり、シロではなく灰色かもと思うが、クロと断言はできなかった。無罪とするのは、冤罪を防ぐための『疑わしきは被告人の利益に』という原則を厳格に適
用したためだ」と異例の付言をした。
中村被告は、01年1月17日午前3時過ぎ、母親で広島市西区己斐大迫1丁目の飲食店経営中村小夜子さん(当時53)の自宅で、小夜子
さんの首を絞めて殺害。さらに、同3時半ごろ、屋内に灯油をまいて放火して全焼させ、2階で寝ていた中村被告の長女彩華さん(当時8)と次女ありすちゃん
(当時6)を焼死させたうえ、3人の保険金をだまし取ったなどとして起訴された。
中村被告は06年5月22日、別の詐欺事件で逮捕され、その後の勾留(こうりゅう)理由開示の法廷で、3人の殺害について「極刑を覚悟
して自白した」と供述。公判では一転して殺人や現住建造物等放火などの罪状を否認したため、捜査段階の自白調書の任意性と信用性が主な争点になった。
判決は、自白の任意性を認めた上で、犯行動機や犯行状況などについて詳細に検討。検察側が「母親らの死亡保険金を入手する目的だった」
と主張した動機について、「借金苦などによる自殺願望から死刑志願を経て一転して保険金を得るという利欲的なものになるのは極めて不自然。保険の契約内容
を事前に把握していた証拠もない」と述べ、自白調書で述べる放火状況を裏づける証拠がないことと併せ、「真実を語っているとは思えない」とした。
さらに、詳細な供述内容は捜査官と共同で作成された疑いを排除できない▽捜査段階の自白には犯人しか知ることができず、捜査機関に知ら
れていない事実について語った「秘密の暴露」がない――などの問題点を指摘。自白以外のすべての証拠を総合しても被告を犯人と認めることはできないと結論
づけた。
検察側は、中村被告が毎日のように弁護人と接見してアドバイスを受けながらも一貫して自白を維持しており、内容も詳細で自白の信用性は高いと主張してい
た。
(2007.11.28 asahi.com
http://www.asahi.com/kansai/kouiki/OSK200711280032.html)
◆「自白に秘密の暴露ない」 広島の保険金殺人無罪判決
2007年11月28日
母親と娘2人を保険金目的で殺害したとして死刑を求刑されていた広島県東広島市の元会社員中村国治被告(37)に、広島地裁で無罪が言い渡された。逮捕
されたのは、放火とされた火災から5年後。別の事件で勾留(こうりゅう)中に犯行を認めた供述調書が決め手だった。しかし、公判後は「威圧的な取り調べで
自白した」と否認していた。判決は自白偏重の捜査に疑問を示し、無罪を導き出した。
火災は01年1月17日午前3時半ごろ、中村被告の母親で飲食店経営の中村小夜子さん(当時53)方で起きた。小夜子さんのほか、中村被告の長女と次女
が死亡した。
県警は、小夜子さんの遺体を司法解剖した結果、気道にすすが入っていないことなどから、殺害後に放火された疑いがあるとみて捜査。しか
し、目撃証言など犯人に結びつく有力な証拠はなかった。3人の死亡保険金や死亡共済金を受け取っていた中村被告から約1カ月にわたり任意で事情聴取をした
が、容疑者特定に至らなかった。
事件が急転したのは06年5月。中村被告は、元妻(42)=詐欺罪で懲役2年執行猶予4年判決が確定=と共謀し、児童扶養手当をだましとった詐欺容疑で
広島県警に逮捕され、小夜子さんの殺害と放火などへの関与を供述した。
同容疑の勾留理由の開示を求めた法廷で中村被告は、取調官から、ポリグラフを受けてくれ、改心するためにすべて話してくれと説得されたと
説明。「心境の変化がおこるようになって、いつかその日が来たら言わねばならないと思うようになった」と述べた。しかし、公判の最終弁論では、「全く疑わ
れることなく笑って過ごしている真犯人がいる」と訴えていた。
判決は、捜査段階での自白に信用性をうかがわせる要素があるとしながらも、自白に秘密の暴露がないなどとして慎重に判断、無罪とした。
主任弁護人の二國則昭弁護士は「『疑わしきは被告人の利益に』という原則に従った判決。極めて妥当な判決と受け止めている」と述べた。
(2007.11.28 asahi.com
http://www.asahi.com/kansai/kouiki/OSK200711280059.html)
◆広島の放火殺人:死刑求刑被告に無罪 自白調書「信用性低い」−−地裁判決
広島市西区で01年1月、実母と実の娘2人が殺害された放火殺人事件で、殺人や現住建造物等放火などの罪に問われた元会社員、中村国治被告
(37)=東広島市西条町寺家=の判決が28日、広島地裁であった。細田啓介裁判長は「被告が犯行を行ったと認定するには合理的な疑いが残り、犯人と認め
るに足りない」などと、自白調書の信用性の低さを指摘し無罪(求刑死刑)を言い渡した。
自白調書しか有力な証拠がない放火殺人事件で、その信用性が争点となっていた。検察側は控訴する方針。
中村被告は01年1月17日午前3時ごろ、母で飲食店経営の中村小夜子さん(当時53歳)方1階で、小夜子さんの首を絞めて殺害。さらに火をつ
け、2階で寝ていた中村被告の長女の彩華ちゃん(同8歳)と次女ありすちゃん(同6歳)を焼死させ、3人の死亡保険金など計約7300万円をだまし取った
とされていた。
中村被告は、06年6月、児童扶養手当を不正に受け取っていたとして詐欺罪で起訴された。その際、小夜子さんを絞殺したうえ灯油をまいて放火し、
娘2人も焼死させたとする上申書を警察に提出。その後、中村被告は自白し、裁判所は自白調書を証拠採用したが、公判で起訴事実を否認。弁護側は「証拠は自
白調書のみで証拠価値はない」と無罪を主張し、調書の信用性が争点となっていた。
判決では、犯行状況の具体的な供述が不自然、不合理▽放火の犯行状況も燃焼実験などの証拠や立証がない−−などと自白調書をことごとく否定した。【井上
梢】
毎日新聞 2007年11月28日 東京夕刊
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071128dde001040040000c.html
◆神戸・テレクラ放火殺人事件:元経営者の女に無期 積極的殺意認めず−−地裁判決
神戸市中央区のテレホンクラブ「リンリンハウス」で起きた連続放火殺人事件で、殺人、現住建造物等放火罪などに問われているライバル店元経営者、
中井嘉代子被告(66)に対し、神戸地裁は28日、無期懲役(求刑・死刑)を言い渡した。岡田信裁判長は「商売敵への私えんを晴らすため犯行を依頼した。
首謀者の一人として責任は重大」としたが、「積極的に被害者の死亡を容認していたとは認められず、殺意の程度が高いとはいえない」と判断した。弁護側は控
訴する方針。
判決によると、中井被告は坂本明浩被告(47)=殺人罪などで公判中=らと共謀。00年3月2日早朝、リンリンハウス神戸駅前、元町両店に火炎瓶
を投げ込み、客4人を死亡させ、店員ら4人に重軽傷を負わせた。公判で弁護側は「証拠は共犯者の供述しかないが、信用性を欠く」と無罪を主張。しかし岡田
裁判長は「信用性は高い」とし、「死傷者が出ることは認識でき、未必の殺意がある」と認定した。【酒井雅浩】
毎日新聞 2007年11月28日 東京夕刊
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071128dde041040067000c.html
◆クローズアップ2007:凶悪化する親族犯罪(11月28日朝刊)
香川県坂出市の祖母と孫娘の3人が行方不明になっていた事件は、親族の男が3人の殺害を供述するなどして、死体遺棄容疑で逮捕される最悪の結末に
なった。殺人事件の件数は横ばい傾向にあるが、社会の注目を集める凶悪犯罪は増えているとされる。中でも家族や親族による凶悪犯罪がこの10年ほどで目立
つようになった。小さな子どもが巻き添え被害に遭うケースも多い。
◇恨み、たまりやすく
警察白書(07年版)によると、殺人や強盗、放火など重要犯罪の認知件数は99年以降、強盗と強制わいせつを中心に急増したが、04年から減少に転じて
いる。ただ、殺人の件数は過去10年間、ほとんど変化がなく、最少が99年の1265件、最多が03年の1452件。
さらに白書では、06年は「社会の注目を集める凶悪な事件が続発した」と指摘。事例として、無職の男が小学生をマンションから投げ落として殺害した、神
奈川県の事件を紹介している。
今回の事件では、被害者の義弟が3人の殺害を認めた。事件の全容解明はこれからだが、親族間のトラブルが結果的に「殺害」という取り返しのつかない結末
になった。
家族が一度トラブルになった時の難しさを説くのは、山田昌弘・東京学芸大教授(家族社会学)だ。山田教授は「家族間ではトラブルの合理的な解決が
図られにくい。他人であれば割り切れるし、嫌になったら離れられるが、家族では離れるわけにはいかず、特にお金に関してはあいまいになりやすく、恨みがた
まりやすい」と背景を分析する。
◇幼い命、巻き添えも
実際、身内の凶悪な犯行(容疑)で、複数の親族・家族が被害者となった事件は後を絶たない(年齢は発生当時)。
04年8月、兵庫県加古川市で2家族計7人が刺殺される事件があった。死亡したのは女性(80)と女性の長男、次男のほか遠縁の一家4人。殺人容
疑で逮捕されたのは女性のおい(47)で、現在は公判中。冒頭陳述では、おいが疎外感を募らせ、親族らにゆがんだ感情をふくらませた過程が明らかにされ
た。
06年7月には、大阪府豊中市で大阪大学の男子学生(24)が、生活態度をとがめられ、母親をハンマーで殴り殺す事件があった。
横浜港で94年11月、女性(31)と長女(2)、長男(1)の他殺体が見つかった事件では、夫の医師(29)が、自らの浮気が原因で妻と口論となった
末に殺して、殺人罪などで無期懲役の判決が確定した。
一方、子どもが巻き込まれる事件も多い。 00年12月には、東京都世田谷区の会社員(44)宅で、会社員と妻(41)、長女(8)、長男(6)の一家
4人が惨殺される事件があった。この事件は未解決のままになっている。
また、福岡市東区の貯木場岸壁で03年6月、衣料品販売業の男性(41)と妻(40)、長男(11)、長女(8)の一家4人の遺体が見つかった事件も
あった。元留学生ら中国人3人が強盗殺人などの罪に問われ、このうち1人が中国で死刑を執行された。
◇進む家族崩壊−−ジャーナリストの大谷昭宏さんの話
身内が、無関係の子ども2人まで被害に巻き込んだやりきれなく、許しがたい事件だ。昨年から今年にかけ、親族や家族間での凶悪事件が続いている。
本来なら支えあうべき社会の最小単位である家族や親族という存在が、音を立てて崩壊しつつある。日本が「格差」「勝ち組負け組」の社会だと言われ
る中、そのひずみが出た事件のような気がする。今後の捜査では、亡くなった3人がどのような形で殺害されたのか、単独犯なのかがポイントになる。
◇衝動的な可能性−−小宮信夫・立正大学教授(犯罪社会学)の話
一般論として、今回のトラブルが借金だとすれば、被害者と被疑者が身内というのはあまり関係なく、オーソドックスな事件だと言えるのではないか。
室内に大量の血痕が残されていたことからも、犯人は計画的というより、口論などの結果、衝動的に犯行に及んだ可能性がある。子どもを巻き込んだこ
とについても、相手の年齢がいくつであれ、犯罪者がパニック状態の場合、相手と目が合ってしまっただけで恐怖を感じるもの。特定される可能性がある限り、
無関係の幼い子どもを巻き込むべきではないという判断は働かないだろう。
(2007.11.28 毎日新聞 朝刊
http://mainichi.jp/select/50news07/news/20071207org00m040044000c.html)
◆無罪判決:広島の3人放火殺人で 「自白、信用性低い」
広島市西区で01年、保険金目的で母と娘2人を殺害したとして殺人や現住建造物等放火などの罪に問われ、死刑を求刑された元会社員、中村国治被告
(37)=東広島市西条町寺家=の判決が28日、広島地裁であった。細田啓介裁判長は自白調書の信用性の低さを指摘し、「被告の犯行と認定するには合理的
な疑いが残る」と無罪を言い渡した。最高裁によると、78年以降、1審(再審を除く)の死刑求刑に対し無罪判決が出たのは3件目。検察側は即日控訴した。
中村被告は01年1月17日午前3時ごろ、母で飲食店経営の中村小夜子さん(当時53歳)方1階で、小夜子さんを絞殺。灯油をまいて火をつけ、2
階で寝ていた中村被告の長女彩華ちゃん(同8歳)と次女ありすちゃん(同6歳)を焼死させ、3人の生命保険金など計約7300万円をだまし取ったとして起
訴された。
中村被告は、06年5月、別の詐欺事件で逮捕され、起訴後に放火殺人を供述、再逮捕された。裁判所は自白調書を証拠採用したが、公判で中村被告は起訴事
実を否認。弁護側は「威圧的な取り調べで得た自白調書で証拠価値はない」と無罪を主張していた。
判決は、犯行状況の具体的な供述が不自然、不合理▽燃焼実験などの証拠や立証がない▽動機や犯行を決意した理由、経緯も不自然−−などと自白調書を否
定。「客観的な証拠との一致をもって自白を信用できるとすることは危険」とした。
細田裁判長は判決読み上げ後、「疑わしい事情は多くシロではなく灰色だが、クロとは断定できない。疑わしきは被告人の利益にという原則に基づき、冤罪
(えんざい)を防ぐためにこの判決を下す」と付言した。【井上梢、福沢光一】
毎日新聞 2007年11月28日 11時33分
http://mainichi.jp/kansai/news/20071128k0000e040037000c.html (最終更新時間
11月
28日 20時05分)
◆死刑求刑の被告に無罪 保険金目的母娘殺害『自白に疑いある』
2007年11月28日 東京新聞 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007112802068106.html
広島市で二〇〇一年、保険金目的で自分の母親と娘二人を殺害したとして、殺人や放火などの罪に問われ、死刑を求刑された中村国治被告(37)に広島地裁
は二十八日、「自白に合理的な疑いがある」として無罪の判決を言い渡した。
細田啓介裁判長は判決理由で、犯行を認めた捜査段階の自白調書の任意性や信用性を検討。「任意性に疑いはなく、客観的な証拠と整合しているところ
も多々あり、信用性もある程度認められる」と指摘したが、「より詳細に検討すると、犯人が被告と断定することはできない」と述べた。
細田裁判長は判決言い渡し後、中村被告に「シロではない、灰色かもしれないが、クロとは断言できない。冤罪(えんざい)を防ぐための刑事裁判の鉄則を
守った。『疑わしきは被告人の利益に』を厳格に適用した」と呼び掛けた。
中村被告は捜査段階で犯行を認める供述をしていたが、公判で起訴事実を否認。「動機も当時現場にいたという証拠もない。自白調書は任意性、信用性がな
い」と無罪を主張していた。
検察側は公判で、母親の服から灯油が検出されたことや、中村被告に借金があったことなどを指摘し「犯人であることは明らか」としていた。
中村被告は〇一年一月十七日未明、広島市西区の自宅で母小夜子さん=当時(53)=の首を両手で絞めて殺害。灯油をまいて家に火を付け、長女彩華
ちゃん=同(8つ)、二女ありすちゃん=同(6つ)=を焼死させ、三人の死亡保険金など計約七千三百万円をだまし取ったとして起訴された。
広島県警は〇六年、偽装の離婚届を提出し、児童扶養手当をだまし取ったとして、中村被告を詐欺容疑で逮捕。捜査の過程で放火や殺人を認める供述をしたこ
とから、再逮捕していた。
◆殺人事件:3件に関与の組長に死刑求刑 検察側「冷酷かつ凶悪」 /群馬
安中市で05年9月、指定暴力団稲川会系の渡辺良夫組長(当時61歳)が射殺された事件など3件の殺人事件で指揮役として殺人、死体遺棄罪などに
問われた指定暴力団山口組系組長の無職、高見沢勤被告(52)=同市古屋=の論告求刑公判が26日、前橋地裁(久我泰博裁判長)であった。検察側は「犯行
は冷酷かつ凶悪」と死刑を求刑した。
論告などによると、高見沢被告は01年11月25日ごろ、組員らに指示し、同市松井田町の林道で、土木作業員、佐藤昇司さん(当時60歳)を射
殺。高崎市内の山中に埋めた。05年4月3日には組幹部(当時35歳)を別の幹部に指示して射殺、安中市内に埋めた。同9月4日には渡辺組長を殺害させ、
山中にいったん遺棄した後、高崎市内の飲食店駐車場に運んだ。
高見沢被告は佐藤さん殺害については全面否認し、組幹部殺害は正当防衛と主張。渡辺組長については関与を否定、死体遺棄だけを認めていた。
毎日新聞 2007年11月27日
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20071127ddlk10040430000c.html
◆元ボクサーの袴田死刑囚に名誉ライセンス贈呈へ
2007年11月27日18時58分
財団法人・日本ボクシングコミッションは、66年に静岡県で一家4人を殺害したとして刑が確定した元プロボクサー袴田巌死刑囚(71)=再審請求中=に
名誉ボクサーライセンスを贈ると27日発表した。袴田死刑囚は元日本フェザー級6位で、60年には当時の年間最多記録となる19試合を戦った。同コミッ
ションによると、名誉ライセンスは日本チャンピオン級以上の元ボクサーが対象で、社会的な理由で発行するのは初めてという。
来年1月24日に日本プロボクシング協会が東京・後楽園ホールで開く袴田死刑囚の支援大会で贈呈式をする計画だ。
(2007.11.27 asahi.com
http://www.asahi.com/sports/spo/TKY200711270317.html)
◆憂楽帳:死刑と裁判員
企業や団体を対象にした裁判員制度の説明会が各地で開かれている。会場で検察幹部は「死体の写真とか見るんですか」との質問に交じり、たまに「死
刑を決断しなくてはいけないんですか」という声を耳にする。「執行が自動的に進まないか」との法相発言が物議を醸したが、裁判員制度で死刑はどれほど負担
になるのだろうか。
裁判を担当した8年ほど前、凶悪事件の極刑が確定する最高裁の法廷で、何度となくこんな光景を目にした。裁判長が死刑を告げると絞り出すような怒声が飛
んだ。「人殺しー」。傍聴席から叫んだ男性はすぐに連れ出された。
今、法廷に乗り込み死刑廃止を叫ぶ人はいない。オウム真理教事件などや子供を狙う殺人の多発を反映してか、死刑存続を求める世論は内閣府調査で8割に上
る。
裁判員制度では遺族の処罰感情に影響され死刑判決が増えるとの予測があるが、多くの市民と接した検察幹部は「逆に減るかも」とも言う。自分は決断できる
だろうか。「人殺し」と叫ばれたら? 死刑をめぐる論議の行方は存廃を含め気になるところだ。【小出禎樹】
毎日新聞 2007年11月26日 東京夕刊
http://mainichi.jp/select/opinion/yuraku/news/20071126dde041070074000c.html
◆中国 猶予つき判決増加 最高法院は自賛
2007年11月26日11時41分
中国最高人民法院(最高裁に相当)の肖揚院長は、今年初めからこれまでに言い渡された猶予つき死刑の判決数が、死刑執行数を超えたことを明らかにした。
24日付の中国各紙が伝えた。中国は今年1月、地方の裁判所に委ねる形をとっていた死刑執行の承認権を最高人民法院に一本化すると規定。その成果を強調し
た格好。肖院長は23日の全国法院司法改革工作会議で、死刑執行の承認権をめぐる「重大な改革」が定着しつつある、と指摘した。
中国の司法制度では死刑のほか、猶予つきの死刑判決がある。一般的に2年間の猶予期間中に問題を起こさなければ死刑は執行されず、無期懲役刑などに減刑
される。
ただ、「死刑大国」と国際社会から批判されている中国は、依然として死刑判決や執行の統計を発表していない。
(2007.11.26 asahi.com
http://www.asahi.com/international/update/1126/TKY200711260111.html)
◆サルコジ大統領、死刑執行で中国に注文
2007年11月26日09時51分
中国を公式訪問中のサルコジ仏大統領は25日の晩餐(ばんさん)会で中国での死刑執行の状況に触れ、「完全な廃止は求めないが、執行停止に向けた動きを
強めてほしい」と胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席に注文した。AFP通信が仏政府筋の話として伝えた。
中国における死刑執行は年間7500件から8000件に上ると人権団体はみている。胡氏はサルコジ氏に「死刑適用のケースを減らしたい」と答えたとい
う。
サルコジ氏は、中国で獄中にいるとされるジャーナリストの釈放も胡氏に求めた。NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)は「中国では83人のジャーナリ
ストが獄中にいる」として、サルコジ氏に対し訪中時にこの問題を取り上げるよう求めていた。
(2007.11.26 asahi.com
http://www.asahi.com/international/update/1126/TKY200711260031.html)
◆参院法務委員会:東京拘置所の死刑場を視察
参院法務委員会(遠山清彦委員長)は22日、東京・小菅の東京拘置所を訪れ、施設内の死刑場を視察した。視察したのは遠山委員長と与野党理事ら計11
人。衆院法務委は26日に視察する予定。
参加議員によると、死刑場はカーペットが敷かれ、12畳程度の広さ。中央の約1メートル四方の床が外れる仕組みで、別室には職員が押すボタンが三つあっ
た。議員からは「絞首刑という方法がいいのか、議論が必要」「職員の精神的負担が心配だ」などの感想が出た。
毎日新聞 2007年11月23日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20071123ddm012010096000c.html
◆Newsクリック:やまぐち 裁判員制度で市民の負担は? /山口
◇候補者通知まで残り1年余
◇下関から山口地裁へ−−3日間の審理、行き来は自己判断
刑事裁判に市民感覚を取り入れようと09年5月までに導入される裁判員制度に、「実感がわかない」という声は少なくない。来年12月に裁判員の候
補者に通知が始まるまで残り1年余り。すっかり言葉は浸透した制度だが、下関市民にはどれだけの負担をもたらすのだろうか。【新里啓一】
■年間600人
「多数決で人を裁けるのか」「難解な裁判用語を理解できるのか」。10月24日に下関市のシーモールパレスで開かれた裁判員フォーラム。広く制度
に対する理解を深めてもらおうと山口地裁下関支部が主催した。最高裁製作の広報用映画を上映後、支部の現役判事と判事補が参加者と意見を交わした。
定員50人に対し、参加は40人ほど。支部もアピールに必死だが、弁護士の姿も散見され、一般市民の関心が高まっているとは言えないようだ。
殺人や強盗致傷など制度の対象となる事件はすべて山口地裁(山口市)に起訴される。このため下関で起きた事件でも、支部が制度の舞台にはならない。
地裁によると、06年に県内で対象となった裁判は33件。1件につき裁判員は6人のため、年間約200人が必要とされる。実際は辞退者などを想定
して1件当たり50〜100人に呼び出し状が送付されるため、1年間に県内の有権者約1500〜約3000人が候補者になる計算だ。この人数が各自治体の
有権者数に応じて割り振られるため、下関市からは年間300〜600人程度が候補者になる見込みだ。
■心理的圧力に不安
下関市から山口市までは相応の距離がある。フォーラムでは「(多くは3日とされる)審理期間中は毎日行き来するのか」との質問も出た。支部によると「判
断は自由」。1日1万円が上限の日当のほか、旅費や交通費が支給される。
ただフォーラム参加者からは、これらの物理的側面より心理的プレッシャーに対する不安に意見が集中した。向野剛判事は「事前に争点や証拠を絞り込
むため、分かりやすいよう制度設計されている」などと理解を求めた。だが、下関西高出身で前最高裁長官の町田顕さんも6月に母校であった講演で「死刑を宣
告する負担などをいかに軽減できるかが検討課題」と指摘している。
地裁下関支部は来年2月に市民参加の模擬裁判を予定しているほか、制度の無料出張説明会も開催している。問い合わせは支部(0832・22・
4076)。
〔下関版〕
毎日新聞 2007年11月21日
http://mainichi.jp/area/yamaguchi/news/20071121ddlk35010520000c.html
◆死刑制度:鳩山法相発言に抗議 再審無罪の免田さん、死刑廃止を訴え講演 /福岡
死刑制度について「法相が絡まなくても(執行が)自動的に進む方法はないか」などと発言した鳩山邦夫法相に抗議し、市民団体「死刑廃止・タンポポ
の会」が18日、福岡市内で集会を開いた。参加者は確定死刑囚の急増や死刑執行の常態化などの状況報告を受けた上で改めて死刑廃止を訴えた。
集会では死刑囚として国内で初めて再審無罪が確定した免田栄さん(81)=大牟田市在住=がゲストとして講演。死刑確定という絶望を乗り越え、再
審無罪を勝ち取るまでを振り返った。免田さんは「体の自由が続く限り、死刑廃止を訴えたい」と述べた。鳩山発言については「法治国家の大臣として恥ずかし
い」と厳しく批判した。【木下武】
〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2007年11月20日
http://mainichi.jp/area/fukuoka/news/20071120ddlk40040424000c.html
◆追跡京都2007:裁判員制度模擬裁判 困難な量刑判断、責任重く /京都
◇参加者6人全員「本番は参加したくない」−−評議運営は好評、結論に満足
裁判員制度の7回目の模擬裁判が京都地裁(増田耕児裁判長)で開かれた。初めて裁判員選任手続きから実施し、殺人罪に問われた被告の刑事責任能力
が争点となる難解な事件が題材となった。評議の運営が裁判員役に好評だった一方、本番に向けて厳しい声も聞かれた。3日間の日程を振り返る。【太田裕之】
■法廷審理
事件は、レンタカーを回収された統合失調症の無職の男(40)が盗まれたと妄想し、「落ち着いて話しましょう」と応対したレンタカー会社の社員(58)
を刺殺したという設定。プロの裁判官3人と、大学や企業の職員で20〜50代の裁判員役男女各3人が席を並べた。
公判では、「妄想の影響があるが、応対に怒ったことが動機。行動の制御能力は残されていた」とする簡易鑑定書と、「行動制御能力が完全に失われて
いた」とする本鑑定書が示された。簡易鑑定書は罪が減軽される「心神耗弱」、本鑑定書は罪に問えない「心神喪失」との診断を意味している。
本人尋問で被告は「アリゾナにいる」など意味不明の発言を連発。裁判員は2人が直接「どんな体勢で刺したか」などと尋ねただけだった。鑑定医への尋問で
は「急性憎悪期」「人格水準の低下」など専門用語も使われ、裁判員4人が「病状は現在も悪化しているのか」などと質問。
検察側が心神耗弱にとどまるとして懲役10年を求刑、弁護側は心神喪失状態だったとして無罪を主張し、2日間計約7時間の審理を終えた。
■評議
続いて有罪・無罪や量刑を決める「評議」へ。裁判長が「裁判員と裁判官の意見は平等で同じ価値。みなさんの意見を聞くので、どんどん言ってください」と
述べた。
最初の議題は、最大の争点である責任能力。動機について、被告の供述は捜査段階や鑑定、公判で変遷しており、裁判員からは「事件に近い時の方が信
ぴょう性がある」との意見が相次ぐ一方、「応対に怒ったのは妄想と言えない」との声も。「統合失調症という病気を理解できない」との迷いも出て、裁判官の
1人も「決めかねている」と打ち明けた。
最終的に検察側が立証責任を果たせていないことで一致。行動制御はある程度できていたとして、両鑑定を部分的に合わせる形で「心神耗弱により有罪」と結
論づけた。
量刑では、裁判官が通常はまず死刑、無期懲役、有期刑のいずれか選択し、その後減軽する方法を説明したが、分かりやすいよう減軽後の刑を考えることに
なった。
参考に示された同様の事件18件は懲役10〜3年。当初の意見は懲役5〜10年が5人、10〜15年が2人、15〜20年が1人で、裁判員からは
「違う判断をする自信がない」「一番重めにする検察の求刑を超えるのはどうか」との声が出た。一方で被害者遺族の感情を重視する意見が続出した。
裁判長も「15年に近い裁判員3人と同じ」と発言。最終的に裁判員は15年が3人、14、12、10年が各1人。裁判長は14年、裁判官は10年と8年
で、多数決で懲役14年とし計6時間の評議を終えた。
■感想と課題
終了後、裁判員6人全員が記者会見に応じた。全員が「貴重な経験」「自由に議論でき、結論にも納得できた」と話したが、量刑判断が難しかったことや責任
の重さに、全員が「本番は参加したくない」と打ち明けた。
量刑では「自分の1票で被告を14年閉じ込めることになった結果を思うと不安」との感想が聞かれた。今回の量刑が従来の“相場”や求刑を超えた点に「制
度導入の前後で大差が出るのは不公平」との指摘もあり、裁判員の役割は事実認定などに限定すべきとの意見が強かった。
精神鑑定も難解なだけに「医師ですら意見が割れるのに、知識がないと判断できない」などの声が続出。精神鑑定のある裁判は対象外にとの提案が複数あっ
た。
記者会見には、初日の選任手続きで「落選」した13人中4人も応じた。いずれも約1カ月前に「呼出状」を受けて3日間の欠勤調整に苦労しており、
「6人選ぶのに20人も呼ぶ必要があるのか」と憤慨に近い意見も。今回は候補者544人全員が協力企業・団体の職員だが「理解のない企業や、零細業者の場
合は難しいのでは」との声が聞かれた。
また、呼出状を受けた20人中1人は「仕事が予定より多忙になった」として欠席。正当な理由なく来ない場合は10万円以下の過料の罰則があるが、裁判長
は「厳格に適用するかどうか現段階では分からない」とした。
地裁によると、府内の有権者で候補者に選ばれる確率は06年試算で0・11〜0・22%となっている。
◇米山正明・刑事上席裁判官の話
自分がかかわるのはしんどいというのは率直な感想だと思うし、今回が好条件だった点も認識している。次回はできるだけ本番に近い裁判員を選ぶ必要
があり、その方向で検討している。公判での主張や立証にはまだ見直す余地があり、今後は裁判員の負担感も多少改善されると思う。
毎日新聞 2007年11月18日
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20071118ddlk26040348000c.html
◆奈良・女児誘拐殺人:事件から3年 「時止まったまま」 両親が手記
奈良市の小学1年生、有山楓(かえで)ちゃん(当時7歳)が誘拐、殺害された事件から17日で3年を迎えるのを前に、両親が報道各社に手記と楓
ちゃんの写真を寄せた。小林薫死刑囚(38)は自ら控訴を取り下げて死刑が確定したが、6月に弁護士が控訴審を開くよう申し立てた。両親は安全・安心な社
会の実現を願う気持ちをつづっている。【阿部亮介】
あの忘れられない悲しい出来事から3年がたちます。妹は「楓ちゃん帰ってきたら“大きくなったね”と頭をなでてくれるかな」「楓ちゃんと一緒に遊
びたいな」と言います。楓との思い出を毎日のように語ってきます。3年の月日がたちましたが、私たちはいまだあの日から時間が止まったままです。
私たち家族の幸せを奪った小林死刑囚は、控訴取り下げ無効の申し立てを行うなど反省もなく、ただ死刑という恐怖から逃れたいとしか思えません。今も私た
ち家族を苦しめる小林死刑囚を決して許せません。どこまで私たち家族を苦しめるのでしょうか。
今も地域による子供たちの見守り活動や防犯パトロールなどが各地で広がっています。それでも子供が被害に遭う事件が後を絶たないことはとても心苦しい思
いでいます。
楓が被害に遭ったことを忘れないで下さい。わずか7年で夢や希望を奪われたことを忘れないで下さい。地域・親・学校・警察・行政がお互い協力し合
い、子供たちの笑顔のあふれる、そして二度とあのような悲しい事件が起きない「安全・安心」な社会になることを心より願います。
有山茂樹
江利
毎日新聞 2007年11月17日 大阪朝刊
http://mainichi.jp/kansai/archive/news/2007/11/17/20071117ddn041040004000c.html
◆奈良・女児誘拐殺人:発生から3年 命守る取り組み続く /奈良
◇二度と惨事繰り返さない
04年11月に起きた奈良市の小1女児誘拐殺害事件は、17日で発生から3年を迎える。二度と惨事を繰り返さないという決意のもと、地元では子ど
もの命を守る地道な取り組みが続く。小林薫死刑囚(38)の死刑確定後、弁護士が控訴審を開くよう求めた申し立ては、今も奈良地裁が取り扱いを検討してい
る。【石田奈津子、高瀬浩平、花澤茂人、高橋恵子】
■子どもの安全
女児が通っていた奈良市立富雄北小学校は、この3年間で子どもを守る数々の手段を考えてきた。児童と保護者が通学路を歩き、危険個所を記す地域安
全マップを作製。遠回りでも人通りの少ない道を避け、通学路を変更した。公園や道路脇の植え込みは低く刈り込み、子どもが見えやすい工夫もした。
事件後から今も続く集団登下校を見守り続ける富雄地区自治連合会の安達孝雄会長(74)は「親が変り、地域が変わった。自分たちで子どもを守る意識が出
てきた」と話す。
しかし、兵庫県加古川市で先月16日、小学2年の鵜瀬柚希ちゃん(7)が刺殺された事件は、奈良の関係者にも衝撃を与えた。奈良市教委の馬場浩行・少年
指導センター指導主事(46)は「加古川の事件で、子どもは最終的に1人になるという現実を改めて感じた」と話す。
■性犯罪防止
事件をきっかけに関心が高まった性犯罪者の再犯防止の取り組みは、まだ始まったばかりだ。昨年5月、性犯罪者に対する矯正教育が義務化され、認知行動療
法によるプログラムが導入された。
認知行動療法は、人の価値観などの「認知のゆがみ」を修正しながら、指導する。プログラムで受刑者は家族、仕事、性体験、事件などの自分史を書き、グ
ループで体験を話し合うことなどで「認知のゆがみ」に気付いていく。
法務省によると今年5月までの調査で、奈良少年刑務所など全国20施設で対象者644人のうち、266人の受刑者が受講を始めた。元法務省職員の
浜井浩一・龍谷大法科大学院教授(刑事政策)は「再犯防止に効果があるか検証するには数年はかかる。時間をかけて検証することが必要」と話している。
■小林死刑囚
「この先、生あるうちは毎年この日を迎え、(女児の)冥福を祈り、犯してしまった事に対し深く反省していきたいと思っています」。事件から3年を
前に、弁護士に手紙を出した小林死刑囚は昨年10月、自ら控訴を取り下げ、死刑が確定した。しかし、別の弁護士が今年6月、取り下げ無効を主張して控訴審
を開くように求めた申し立ては、奈良地裁が取り扱いを検討中で今も結論は出ていない。
◇再発防止を考える集い
■300人が黙とう
奈良市学園南3の学園前ホールでは16日、事件の再発防止などを考える「子ども安全の日の集い」が開かれた。約300人の参加者らは集会の冒頭で女児の
冥福を祈り全員で黙とう。安全への思いを新たにした。
女児の両親はメッセージを寄せ、「前に進まないといけないと分かっていても、目の前には大きな壁が立ちふさがり、行く手を阻んでいます。どうして
も前に進めません」とつらい心境を明かし、「一丸となって子どもたちを見守っていくことで、子どもたちの笑顔の絶えない安全・安心な街になることを心より
願っています」と訴えた。
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■ことば
◇奈良小1女児誘拐殺害事件
奈良市の小学1年、有山楓(かえで)ちゃん(当時7歳)が04年11月17日、下校中に行方不明になり、翌18日午前0時すぎ、平群町の側溝で遺
体で見つかった。県警は12月30日、元新聞販売所従業員、小林薫死刑囚(38)をわいせつ目的誘拐容疑で逮捕。殺人など計八つの罪で起訴され、昨年10
月、死刑が確定した。
毎日新聞 2007年11月17日
http://mainichi.jp/area/nara/news/20071117ddlk29040300000c.html
◆脅迫:刑務所から脅迫状送り、出所直後に逮捕−−熊谷署 /埼玉
刑務所内から脅迫文を送ったとして、熊谷署は16日、坪井好正容疑者(61)を脅迫容疑で満期を迎えて出所した直後に逮捕した。
調べでは、坪井容疑者は青森刑務所に服役中の06年3月13日ごろ、いとこの男性(70)とその妻(72)に「死を迎える前に死刑を覚悟でやらな
ければならないことがある」と書いた郵便はがきを郵送し、脅迫した疑い。ほかにも「うその証言で無実の罪を着せられた」などと書いたはがきを送っていた。
容疑を否認している。坪井容疑者は熊谷に住んでいた02年、離婚を勧めた男性らに「お前らにそそのかされた」と逆恨みし、男性らから現金30万円を脅し取
るなどして逮捕、起訴され、3年10カ月間服役していた。【町田結子】
毎日新聞 2007年11月17日
http://mainichi.jp/area/saitama/news/20071117ddlk11040359000c.html
◆奈良・女児誘拐殺人から3年 両親が手記
・地元小は追悼集会
奈良市立富雄北小1年、有山楓ちゃん(当時7歳)が誘拐、殺害された事件は17日、発生から3年を迎える。父茂樹さん(33)と母江利さん
(31)は、奈良県警を通じ、今の心境をまとめた手記を発表、小林薫死刑囚(38)の弁護人による控訴取り下げ無効の申し立てに苦しめられている気持ちや
癒えぬ悲しみをつづった。また、同小の全校集会で、児童らは楓ちゃんの冥福(めいふく)を祈った。
同小の児童は、16日も保護者や地域住民に見守られて登校。体育館で開かれた「命を考える集会」で、全員が黙とうをささげた後、田中弥彦校長は「みなさ
んの命はかけがえがない。過去から受け継がれ、次の世代に引き継いでいく大切な命」と語りかけた。
一方、小林死刑囚が、1審で弁護人を務めた高野嘉雄弁護士に、手紙を送付していたことが判明。先月31日付で、便せん2枚に「今年も(女児を)死
なせてしまった罪深い日が近づいてきました。この先、生あるうちは毎年冥福を祈り、犯してしまった事に対し深く反省していきたい」などと記していた。
小林死刑囚は昨年、遺族あてに手紙を送ったが、受け取りを拒否されている。
・手記全文
あの忘れられない悲しい出来事から3年が経(た)ちます。妹は「楓ちゃん帰ってきたら“大きくなったね”と頭を撫(な)でてくれるかな」「楓ちゃ
んと一緒に遊びたいな」と言います。楓との思い出を毎日のように語ってきます。3年の月日が経ちましたが、私達(わたしたち)は未(いま)だあの日から時
間が止まったままです。
私達家族の幸せを奪った小林死刑囚は、控訴取り下げ無効の申し立てを行うなど反省もなく、ただ死刑という恐怖から逃れたいとしか思えません。今も私達家
族を苦しめる小林死刑囚を決して許せません。どこまで私達家族を苦しめるのでしょうか。
今も地域による子供達の見守り活動や防犯パトロールなどが各地で広がっています。それでも子供が被害に遭う事件が後を絶たないことはとても心苦しい思い
でいます。
楓が被害に遭ったことを忘れないで下さい。僅(わず)か7年で夢や希望を奪われたことを忘れないで下さい。地域・親・学校・警察・行政がお互い協
力し合い、子供達の笑顔のあふれる、そして二度とあのような悲しい事件が起きない「安全・安心」な社会になることを心より願います。
有山 茂樹
江利
(2007年11月17日 読売新聞)
◆米陸軍:兵士の脱走率、80年以降で最高に
【ワシントン和田浩明】米陸軍の07会計年度(06年10月〜07年9月)の脱走率がイラク戦争が始まった03年当時と比べて80%も上昇し、
1980年以後では最高になった。AP通信などが16日報じた。イラクへの派遣は過去の戦争に比べ期間が長く、頻度も高いが、陸軍は「兵士としての任務の
ストレスが脱走増加の背景にある」と見ているという。
陸軍の脱走兵は今年9月末までの1年間で4698人と、1000人あたり約9人だった。脱走率は04会計年度以降上昇を続けており、特に07会計年度は
前年度比42%増と急増した。男性の新兵に目立つという。
陸軍は、派遣兵士の過半数を提供するなどイラクやアフガニスタンでの戦闘で中心的役割を果たしている。米国防総省によると、イラクで今月3日までに死亡
した3840人の米兵中、約7割は陸軍兵士だ。
ベトナム戦争(60〜70年代)当時の脱走率は約5%で、単純比較すれば、現在はピーク時の5分の1程度にすぎない。ただベトナム戦争当時は徴兵制が敷
かれていた。海軍ではここ数年減少傾向にあり、海兵隊も今年は前年より少なかった。最も低いのは空軍という。
米軍では、脱走兵は軍法会議での刑事訴追の対象となる。戦時の脱走には最高で死刑が科される場合もある。訴追を避けるためカナダに逃亡し、難民申請をす
る米脱走兵もいるが、カナダ最高裁は今月、実質的に申請を却下する決定を下している。
毎日新聞 2007年11月17日 22時29分
http://mainichi.jp/select/world/news/20071118k0000m030092000c.html
◆横浜・都筑区の3人殺害:上告棄却、死刑判決確定へ
横浜市都筑区で02年、妻の両親ら3人を刺殺したとして殺人罪などに問われた無職、古沢友幸被告(42)に対し、最高裁第1小法廷(甲斐中辰夫裁判長)
は15日、「極めて身勝手な犯行」と指摘、上告棄却の判決を言い渡した。1、2審の死刑判決が確定する。
1、2審判決によると、古沢被告は02年7月、離婚を決意して実家に戻っていた当時の妻の拉致を計画。実家に侵入し、義父母、妻と前夫の間の長男の3人
を刺殺。さらに妻を乗用車で監禁した。【高倉友彰】
毎日新聞 2007年11月16日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071116ddm012040139000c.html
◆死刑執行停止決議を採択 日米などは反対 国連総会委
2007年11月16日11時01分
人権問題を扱う国連総会第3委員会は15日、死刑執行の停止(モラトリアム)を求める決議案を賛成99、反対52、棄権33で初採択した。死刑制度が存
続している日本や米国、中国などは反対した。年内に総会本会議で正式に採択される見通しだ。総会決議に法的拘束力はないが、決議案を主導した欧州連合
(EU)などは、執行の停止を実質的な死刑全廃への足がかりにする考えだ。
決議案は87カ国が共同提案。死刑制度の継続に「深刻な懸念」を示すとともに、制度存続国に(1)死刑制度廃止を視野に入れた執行の一
時停止(2)死刑が適用される対象犯罪の漸進的削減(3)死刑の執行状況や死刑に直面する人の人権状況を事務総長に報告すること――などを要求。廃止国に
対しても制度を再導入しないよう求めている。
同様の決議案はイタリアなどの主導で94年にも提出されたが、小差で否決された。99年には反対派の修正要求が通ったため、採決を断念
した経緯がある。今回も、「刑事司法制度は国内管轄事項だ」とするシンガポールやエジプトなどが修正案を出して抵抗したが、原案通りで採択された。
EU議長国ポルトガルのサルゲイロ国連大使は採択後、「幅広い支持を得られたことは、死刑制度が人権問題であり、その執行停止が人権状況の改善につなが
るとの認識が共有できた表れだ」と歓迎した。
一方、日本の神余隆博次席大使は「日本では、国民の大半が最も悪質な犯罪には死刑を宣告すべきだと信じている。死刑制度の廃止に向かうことは難しい。死
刑廃止に国際的な合意はない」と反対の理由を説明した。
(2007.11.16 asahi.com
http://www.asahi.com/international/update/1116/TKY200711160004.html)
◆国連第3委:死刑一時停止、初採択 99対52、日本は反対票
【ニューヨーク小倉孝保】欧州連合(EU)など87カ国が国連総会第3委員会(人道問題)に提出していた死刑執行の一時停止(モラトリアム)を求
める決議案が15日、小差で採択された。同委員会が死刑のモラトリアム要求決議案を採択したのは初めて。国際社会で死刑反対の動きが強まっていることを象
徴する結果といえそうだ。
賛成はEUのほかトルコ、イスラエルなど99カ国。反対は日本、米国、中国など52カ国、棄権が33カ国。12月中旬の総会で採択されれば正式な
国連総会決議になるが、委員会が小差だったため、総会での採択は微妙な情勢だ。日本はモラトリアムが憲法に反することなどを理由に反対した。
採択された決議案は▽死刑は人間の尊厳を否定し、死刑廃止は人権保護に貢献すると確信する▽世界的な死刑廃止や執行一時停止の動きを歓迎する▽死
刑を廃止した国には死刑制度を復活させないことを求める−−としたうえで、死刑執行を続けている国に対して▽死刑を制限して執行を受ける者の数を減らす▽
死刑廃止に向けてモラトリアムを作る−−ことなどを求めている。
決議案の協議では、モラトリアムの設定が最大の焦点となり、イランやエジプトなどは、その部分を「死刑を凶悪犯罪に限定する」との表現に替えるよう求め
る決議案を提出したが否決された。
EUはここ数年、死刑のモラトリアム要求決議案採択を目指してきたが採択のめどが立たず、提案を見送ってきた経緯がある。
毎日新聞 2007年11月16日 東京夕刊
http://mainichi.jp/select/world/news/20071116dde007030045000c.html
◆難民:国際人権団体局長「日本はもっと寛容に」
国際人権団体「ヒューマンライツ・ウオッチ」(本部・米ニューヨーク)のブラッド・アダムズ・アジア局長が15日、東京で会見し、日本国内で懸念
される人権問題として死刑制度と難民受け入れ数の少なさを挙げ「もっと難民に寛容になり、受け入れを増やしてほしい。難民の多くは普通の人として社会に貢
献できる」と述べた。【吉富裕倫】
毎日新聞 2007年11月16日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/world/news/20071116ddm007030053000c.html
◆奈良・女児誘拐殺人:「罪深い日が近づく」 小林死刑囚、弁護士に手紙
奈良市で04年に起きた小学1年女児(当時7歳)誘拐殺害事件から17日で3年になるのを前に、死刑が確定した小林薫死刑囚(38)が、1審で弁
護人を務めた高野嘉雄弁護士に手紙を送っていたことが分かった。「今年も(女児を)死なせてしまった罪深い日が近づいてきました。冥福を祈り、犯してし
まった事に対し深く反省していきたい」などと記している。
手紙は便せん2枚で先月31日付。命日には昨年と同じく教戒師に頼んで読経供養をするという。また、食事制限による減量中で、持病の腰痛を軽くするた
め、できるだけ体を動かしているなどと、近況も書かれている。
小林死刑囚は昨年も謝罪の思いを書いた手紙を弁護士に送ってきたが、女児の両親は受け取りを拒否した。
小林死刑囚は昨年9月に奈良地裁で死刑判決を受け、翌月控訴を自ら取り下げて判決が確定。しかし、別の弁護士が今年6月、「被告自らの取り下げは無効
だ」と控訴審の期日指定を申し立て、同地裁が取り扱いを検討している。
高野弁護士は、小林死刑囚について「ひどいことをしてしまったという思いと、生きたいという思いとの間で揺れている。彼が事件を客観的にとらえられるよ
うになるためには時間が必要だ」と話している。【高瀬浩平】
毎日新聞 2007年11月15日 大阪夕刊
http://mainichi.jp/kansai/news/20071115ddf041040007000c.html
◆人権問題:日本の懸念は死刑と難民受け入れ…国際団体指摘
国際人権団体「ヒューマンライツ・ウォッチ」(本部・米ニューヨーク)のブラッド・アダムズ・アジア局長が15日、東京都内で会見し、日本国内で
懸念される人権問題として、死刑制度と難民受け入れ数の少なさを挙げ「もっと難民に寛容になり、受け入れを増やしてほしい。難民の多くは普通の人として社
会に貢献できる」と述べた。
ミャンマーの民主化問題では、国連のガンバリ事務総長特別顧問(特使)の活動については「軍事政権の姿勢を変えることが本来の目標なのに、対話を
実現することが目標になってしまっている」と不満を表明し、圧力を強める必要性を指摘した。日本外交について「他国と内々で話す傾向がある。民主主義の
国、人権を尊重する国として自信を持って価値について話してほしい」と訴えた。【吉富裕倫】
毎日新聞 2007年11月15日 19時48分
http://mainichi.jp/select/world/news/20071116k0000m030056000c.html
◆更生保護大会:佐木さんが講演 /福岡
第47回県更生保護大会(県保護司会連合会などの主催)がこのほど、早良区のももちパレスであり、作家の佐木隆三さんが「法廷の人間模様」の題で話し
た。
佐木さんは、広島高裁で差し戻し控訴審が開かれている山口県光市の母子殺害事件をテーマに講演。「差し戻し控訴審で、弁護団はこれまでになかった
新主張を始めた。傍聴している遺族には耐えられないだろう」と指摘。死刑か無期懲役かが争われる公判について「死刑制度については私自身も揺れているが、
死刑を回避するかどうかは、矯正教育で更生可能かどうかが最大の争点」と述べた。
〔福岡都市圏版〕
毎日新聞 2007年11月15日
http://mainichi.jp/area/fukuoka/news/20071115ddlk40040020000c.html
◆オウム真理教:日弁連、松本死刑囚の治療勧告
日本弁護士連合会は、オウム真理教の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚(52)が長期間の拘置で重篤な精神障害を患っているとして、医療刑務所などで
の速やかな治療を求める勧告書を東京拘置所に出した。控訴審の弁護人が05年、適切な治療を求めて人権救済を申し立てていた。6日付の勧告書によると、日
弁連担当者が今年1月に接見した結果などから「松本死刑囚はおむつを使用するなど、人間として最低限の生活を自立して行うことができない重篤な拘禁反応状
態」と判断。「治療を受ける機会を奪われ、基本的人権が侵害されている」と結論付けた。
毎日新聞 2007年11月15日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071115ddm041040128000c.html
◆「日本人に軍事機密」 元中国大使館員に猶予付き死刑
2007年11月15日01時17分
対日交流に積極的な中国人民解放軍系の民間団体・中国国際友好連絡会(友連会)の幹部が、日本人に軍事情報を流したとして、機密漏洩(ろうえい)罪で猶
予つきの死刑判決を受けていたことがわかった。
複数の関係筋によると、判決を受けたのは友連会の常務理事を務めていた王慶前氏。王氏は軍情報部門の出身で、90年代末から在日中国大使館の1等書記官
を務め、日本の各界に人脈を築いた。友連会ではアジア部副部長なども務め、主に対日交流を担当した。
しかし、昨秋ごろから国家安全省の取り調べを受け、軍事情報を漏らしたとして起訴。今春に有罪判決を受けたという。中国での猶予つきの死刑判決は、2年
間の猶予期間中に問題がなければ無期懲役に減刑される可能性がある。
情報を流したとされる相手の日本人や情報の中身は、明らかになっていない。王氏と同時期に、友連会の柴永光アジア部副部長も違法行為に関与したとして懲
役3年の判決を受けたとされる。
友連会側は、王、柴両氏について「2人とも約1年前に友連会を退職した。いまは関係ない」と説明している。
(2007.11.15 asahi.com
http://www.asahi.com/international/update/1115/TKY200711140399.html)
◆中国:元大使館員に死刑 日本に機密漏えい
【北京・浦松丈二】中国の対日交流団体、中国国際友好連絡会(会長・黄華元外相)の王慶前・常務理事(51)が、日本側に機密情報を漏えいした罪で死刑
判決(猶予2年)を言い渡されたことが14日までに分かった。王氏は01年まで中国大使館員として東京で勤務していた。
日中関係筋によると、王氏は昨年秋から当局の隔離審査を受け、今年春に死刑判決を受けた。同時期に友連会の柴永光・アジア部副部長も汚職に関係した罪で
禁固3年の判決を受けている。
友連会は中国軍系の交流団体として知られ、80年代から日本船舶振興会(現・日本財団)と交流を続けてきた。友連会は昨年秋ごろ、王、柴の両氏は
「退職した」と日本側に伝えてきたという。中国当局は事実関係を公表していない。猶予付きの死刑判決は大半の場合、無期懲役に減刑される。
毎日新聞 2007年11月14日 東京夕刊
◆滋賀・男女2人殺害:松本死刑囚の再審請求棄却−−大津地裁
90〜91年に男女2人を殺害し金を奪ったとして、強盗殺人罪などに問われ死刑が確定した松本健次・死刑囚(56)=大阪拘置所収監=の再審請求を、大
津地裁(長井秀典裁判長)が棄却していたことが13日、分かった。弁護側は大阪高裁に即時抗告した。
確定判決によると、松本死刑囚は90年9月、兄(事件後に自殺)と共謀し、京都府城陽市のいとこの男性(当時36歳)を絞殺し、自宅と土地を
2700万円で売却。91年9月には滋賀県湖北町の女性(同66歳)の首を電気コードで絞めて殺害し、現金などを奪った。00年4月、最高裁が上告を棄却
し、死刑が確定した。【豊田将志】
毎日新聞 2007年11月14日 大阪朝刊
http://mainichi.jp/kansai/archive/news/2007/11/14/20071114ddn041040025000c.html
◆連続児童殺害:第8回公判 検察、被告陳述に疑問 /秋田
◇豪憲君遺体写真、「自ら見たがった」
秋田地裁(藤井俊郎裁判長)で12日開かれた連続児童殺害事件の第8回公判で、検察側は畠山鈴香被告(34)が捜査段階で検察官に見せられ、恐怖
を覚えたと主張していた米山豪憲君(当時7歳)の遺体の写真について「被告自ら強引に見たがった」と指摘するなど、法廷での被告陳述に疑問を呈した。また
「極刑を望む」との陳述について検察側が問いただしたのに対し、畠山被告は「主張が認められれば(死刑でも)構わない」と述べた。【岡田悟】
■任意性で攻防
畠山被告はこれまでの公判で、「取り調べ時に休憩を求めても受け入れられなかった」と述べ、無理な取り調べで自白を強要されたと主張していた。こ
れに対し、12日の公判で検察側は、記録から体調不良などで頻繁に休憩を取ったことを指摘、無理な取り調べはしていないと反論した。
秋田地検での検察官の取り調べを体調不良で中断し、能代署に帰る車中で「もうよくなった」と話したことを挙げ、「本当に体調が悪いのか疑わしいことも
あった」とも指摘したが、畠山被告は「休ませてもらった記憶があまりない」などと反論した。
供述調書を「検事さんの作文」と主張する畠山被告に対し、検察側が「(彩香ちゃんが橋から転落し)『信じられない、信じたくない、信じない』と
思ったなど、今でも(あなたが)主張するものがいっぱいある。あなたが言わなければ書けないが」と指摘。畠山被告は小声で「はい」と答えた。
また畠山被告はこれまで、取り調べた検察官に怒鳴られたり、豪憲君の遺体写真を見せられ恐怖を感じ、長女彩香ちゃん(当時9歳)への殺意を認める
調書に署名したと述べ、自白に任意性はないと主張していた。検察側の「自ら見たがったのではないか」との指摘に畠山被告は「違います」と否定した。
■主張認められれば
また畠山被告は彩香ちゃんへの殺意を認める検察官の調書に「意味を理解せずサインしたことがよくあった」「(検察官が)怖かった」などこれまで通
りの主張を展開。検察官が「以前『極刑を望む』と述べたが、(彩香ちゃんに対し殺意はなかったなど)自分の今の主張が認められれば、極刑でも控訴しないの
か」と質問。畠山被告は「はい」と答え、改めて死刑の覚悟を示した。だが、「今の主張に関係なく死刑になってもいいのか」との質問には「それはわからな
い」と答えた。
■能代署員が証言
午後の証人尋問では、取り調べの序盤と終盤に立ち会った能代署の女性署員が出廷。「上司から任意性に注意するよう指示を受けていた」とし、「(主
に取り調べた男性署員が)畠山被告を罵倒(ばとう)したことはなかった」、「こちらから体調を気遣い、休憩を持ちかけた」などと、無理な取り調べはなかっ
たと強調した。
畠山被告がこれまでの公判で、取り調べの際に両手を押さえられるなどして彩香ちゃん殺害の自白を強要されたと主張していたのに対し、女性署員は
「被告が『彩香にもしかしたら何かしてしまったかもしれず怖い』と右手を握ってきたので、応じたことはあるが、そういうことはない」と証言し、任意性に問
題はなかったことを強調。弁護側は反対尋問で「身体接触で任意性が疑われるとは思わなかったのか」と指摘。女性署員は「苦しい供述をする畠山被告を励まそ
うとした」と述べた。
毎日新聞 2007年11月13日
http://mainichi.jp/area/akita/archive/news/2007/11/13/20071113ddlk05040242000c.html
◆読めば読むほど:校閲インサイド 「公算」は高まらない
山口県光市で起こった母子殺害事件。当時18歳の元少年に対する差し戻し控訴審の弁護側被告人質問の原稿で、気になる記述に出合った。元少年は、1、2
審で認めていた起訴事実を否認した理由を答えている。
「検察官に『否認していると死刑の公算が高まる』と言われ、調書に署名した」
元少年の殺意については検察側と弁護側の主張は大きく隔たっている。中1の時に母の自殺を目撃した元少年だけに、事件の真相を知るうえで冷静な審理が進
められることを願うが、校閲として引っかかったのはそこではない。「公算が高まる」の表現である。
一部の辞書では「高・低」「多・少」も採用しているが、一般的には「公算大」と表現し、「公算高」とは書かない。似たような表現の「計算高い」と混同し
て使っているのであろうか。
当日の校閲者は、検察官の肉声を引用したのではないかと判断し、「公算が高まる」のまま紙面化した。ところが翌日、他紙では「公算が大きくなる」と直し
たところもあったことが分かった。
本人の発言であっても放置すべきでなかったかもしれない。インタビュー記事などでも、相手が何を言いたいのかを眼目に表現を手直しするのは日常作
業だ。ここは遠慮せず、出稿元に声をかけて論議を高めたほうが良かった。最初から“降参”したことを反省している。【林田英明】
毎日新聞 2007年11月13日 東京朝刊
◆秋田児童連続殺人:死刑でも控訴せず 鈴香被告
秋田県藤里町で昨年4、5月に起きた連続児童殺害事件で、殺人と死体遺棄の罪に問われた畠山鈴香被告(34)の第8回公判が12日、秋田地裁(藤
井俊郎裁判長)で開かれ、被告人質問が行われた。検察側が「自分の主張が認められたうえで死刑になったら控訴しないのか」と問うと、畠山被告は「はい」と
答えた。
これまでの公判で、畠山被告は長女彩香ちゃん(当時9歳)への殺意を否認。橋の欄干に乗っていた彩香ちゃんが抱きついてきたのでとっさに手を払っ
たところ転落したとの主張を繰り返している。一方で、米山豪憲君(当時7歳)の殺害は認め「極刑にしてほしい」と陳述していた。
12日の公判では、検察側がさらに「死刑以外では不満か」と質問すると、しばらく沈黙した後「不満かどうかわからない。私が主張していることを認めても
らえるなら、それでかまわない」と続けた。【百武信幸、岡田悟】
毎日新聞 2007年11月12日 12時31分
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20071112k0000e040065000c.html(最
終更新時
間 11月12日 13時04分)
◆死刑制度:鳩山法相発言 「責任のがれでは」 元死刑囚の免田さん講演 /福岡
死刑制度に関する鳩山邦夫法相の発言をきっかけに10日、久留米市で「法相の資質を問う集会」が開かれたが、集会では国内の死刑囚で初めて再審無
罪を勝ち取った免田栄さん(82)=大牟田市=が講演、死刑囚の胸中や再審決定時の喜びなどを語りながら、死刑制度廃止を訴えた。
免田さんは集会後の取材に対し「(法相発言は)腹が立つ立たない以前の話でおかしい。法相は(死刑執行を決める)人殺しが仕事。鳩山さんは責任を取るの
が怖いのでしょう」と切り捨てた。【平野美紀】
〔筑後版〕
毎日新聞 2007年11月11日
◆広島・小1女児殺害:控訴審始まる 登下校見守り、なお /広島
◇ボランティア200人ら 矢野西小「事件風化させない」
安芸区で小学1年の木下あいりちゃん(当時7歳)が殺害された事件の控訴審が8日、広島高裁で始まった。事件から間もなく2年。あいりちゃんが通ってい
た広島市立矢野西小学校(安芸区矢野西4)では、この日も保護者やボランティアの人たちが、児童の登下校を見守った。
事件直後には、保護者が当番で集団登下校に同伴した。しかし、仕事の都合などで継続が難しくなり、今年6月から、横断歩道など通学路の要所に当番の保護
者や約200人の地域ボランティアが立ち、見守る活動に切り替えた。
転勤族も多い地域で、最近引っ越してきた保護者からは「事件があったところで不安だったが、今はかえって安心」との声も聞かれる。「どうやって子どもた
ちを守るか、ピリピリしていた」。事件直後を振り返る同小PTA会長の川田秀司さん(40)は、自らの変化を感じる。活動を続けると、子どもたちの成長や
ちょっとした変化も分かる。「地域で子どもに接する良さを再認識した」と話す。
事件のあった22日は同校の「安全祈りの日」。児童、教職員で黙とうし、あいりちゃんが好きだった歌をささげる。土田真理子校長は「黄緑色のベストを着
た見守り活動の人を見れば、口に出さなくても、誰もがあいりちゃんに心を寄せる。事件を風化させないためにも、子どもたちを守っていかないと」と話した。
【矢追健介】
◇高裁の判断に注目−−諸沢英道・常磐大大学院教授(被害者学)の話
今回の控訴審では、新たに有力な証拠が提出されなければ、量刑が争点となるだろう。事実認定や法解釈はぶれては困るが、量刑は遺族感情や世論により幅が
あっていい。光市の母子殺害事件で最高裁は、遺族感情を死刑適用の判断の重要な要素とした。性犯罪の法定刑も引き上げられた。一方、今回の事件を、被害者
が女児1人で被告が死刑となった奈良女児殺害事件と比較すると、同程度以上に悪質と言えるかは微妙。高裁の判断に注目している。
==============
■解説
◇死刑適用−究極の一線どう引く
広島高裁で8日始まった小1女児殺害事件の控訴審は、被害者が1人で金品目的でなくとも、性的被害を受けて無残に殺されたケースで死刑が適用されるか、
選択基準が改めて問われる。
死刑を巡っては、動機▽事件の態様▽結果の重大性(特に被害者数)▽遺族感情▽社会的影響▽前科−−などを考慮し、やむを得ない場合に死刑選択も許され
るとの永山則夫元死刑囚の最高裁判決(83年)が基準とされてきた。1審はこれに照らし、動機や態様を悪質としたが、被害者が1人で前科がないなどとして
無期懲役を言い渡した。
一方、04年の奈良・小1女児誘拐殺害事件で、奈良地裁は遺体の写真などを母親に送信した残虐性や性的被害、両親の激しい処罰感情などを重視。犠牲者が
1人で、金品目的でなく、被告に殺人の前歴がないケースでは異例の死刑を選択した。
控訴審で検察側は、性犯罪は金品目的の犯罪と同程度の悪質性があると主張。「被害者1人の事案の中でも格段に悪質な事犯」として、改めて死刑を求めた。
被害者数や前科の有無などに重きを置くか、女児に対する性的犯罪を伴うなど結果の重大性や遺族感情、社会的影響などをくみ取るか。死刑存続を認め、厳罰
化を求める声が高まる中、公判で検察、弁護側双方の主張を聞いた裁判所が、究極の刑罰が許される一線をどう引くのか注目される。【井上梢】
毎日新聞 2007年11月9日
http://mainichi.jp/area/hiroshima/news/20071109ddlk34040333000c.html
◆マブチモーター会長宅放火殺人:小田島被告が手紙 後悔の一方、揺れる心境 /千葉
◇後悔の一方、揺れる心境記す−−死刑判決の小田島被告
松戸市で02年8月から11月にかけ、マブチモーター社長(現会長)、馬渕隆一さん(75)方が放火されるなどした3件の強盗殺人事件で、1審千
葉地裁で死刑判決を受け、今月1日に控訴を取り下げた住所不定、無職、小田島鉄男被告(64)が、控訴取り下げの際に弁護人に送った手紙の内容が7日、判
明した。小田島被告は「遺族の怒りや悲しみが、鋭い槍(やり)となって私の心に突き刺さってきます」などと後悔を記す一方、死刑制度の存廃について言及
し、生と死のはざまで揺れる心境が垣間見える。【寺田剛】
◇死刑制度存廃にも言及
手紙はB5判の用紙9枚。自らを死刑囚と認識した上で「季節の移り変わりを目で、肌で感じたいと渇望している」という文面から始まる。「死刑年報」を基
に死刑執行の順番を予測し、「上告審まで争えば執行まで5年以上かかり、そんなに長く生きたくない」と記している。
千葉地裁の公判では、昨年11月の弁護側の被告人質問で「何を言っても言い訳としか受け取ってもらえない。無駄なことは言いたくない」などと発言。事件
について自ら語ろうとせず、その後も「強盗するつもりはなかった」などと、反省とはほど遠い供述に終始していた。
約1年が経過した現在は「自分のこれまでの生き様のすべてを深く後悔しています」と記し、自分の命で償うと言明。一方で、「一日も早く死刑制度が
廃絶されるように」とする「年報、死刑廃止07」の編集者の言葉を引用したり、共謀とされる住所不定、無職、守田克実被告(57)=1審死刑判決を控訴中
=にあてて「若いのだから最後まで頑張って生きるように」と伝えるなど、死刑制度を受け入れられない心境ものぞかせている。
弁護人は「小田島被告が事件を反省しきれない気持ちで控訴を取り下げたことと、死刑制度廃止を求めていると分かってほしかった」と話している。
==============
◆小田島被告の手紙(要約)
◇遺族のやり場のない怒り、鋭い槍となって心に刺さる
拝啓
東拘(東京拘置所)に来て、空調が入っている部屋で、暑さ寒さに一喜一憂せずに生活できるのはありがたいと思っています。
10月に出版社から「年報、死刑廃止07」が無料で送付されてきました。この年報の巻末に確定者と係属中の一覧表があり、これを見ると、自分の(刑執行
の)順番を予測することができ役立ちます。
年報を見ると、控訴審は1年ぐらいで終わりますが、上告審は4〜5年かかるのが普通のようです。この先私はとてもそんなに長く生きていたいとは思いませ
ん。
遺族の方々のやり場のない激しい怒りと胸が張り裂けそうな悲しみは、鋭い槍となって私の心に突き刺さってきます。
遺族の方々の願いは、犯人が処刑されることだけです。しかし犯人が処刑されても被害者は生き返りませんから、遺族の方々の悲しみはいやされることはない
でしょう。
でも私には、自分の命でしか償うことしかできません。本当にいま、自分のこれまでの生き様のすべてを深く後悔しています。
(弁護人と)徐々に疎遠が進み、交信がたえた様な現状で毎日をすごしていますと裁判を継続しているという気持ちがせず、なにか放り棄(す)てられてし
まった様な疎外感だけが増幅してきます。
最近の状況からしますと、果たしてあと何年生きられるのか不明ですが、死刑確定することで真の自分を見つめ直す時間が訪れると思っています。
PS 最期の晩餐(さん)の前倒しで、好物のコーヒーでも飲んでから逝きたいと思っています。なお、もし守田の弁護人と会話の機会がありましたなら、
「私の事は一切気にせずに、若いのだから最後まで頑張って生きるように」とお伝えくださるようにお願い致します。
毎日新聞 2007年11月8日
http://mainichi.jp/area/chiba/news/20071108ddlk12040222000c.html
◆マブチモーター会長宅放火殺人:被告、控訴取り下げ 弁護人「寝耳に水」 /千葉
「被告に裁判を任されていたはずだった。取り下げは寝耳に水だ」
松戸市で02年8月に、マブチモーター社長(現会長)馬渕隆一さん(75)方が放火され、妻悦子さん(当時66歳)と長女由香さん(当時40歳)
が殺害された事件など3件の殺人事件で、強盗殺人などの罪に問われた、住所不定、無職、小田島鉄男被告(64)が東京高裁への控訴を取り下げたことを受
け、同被告の弁護人は、驚きをあらわにした。小田島被告は今年3月の1審千葉地裁で死刑判決を受けていた。
弁護人によると、9月中旬に東京拘置所で接見した際、「裁判はすべて任せる」と話し、犯行当時の様子を詳細に示した手紙を送るなど、控訴審に対して強い
意気込みを見せていたという。
だが、2日に東京高裁に届いた文面には▽遺族の心が休まるのなら控訴を取り下げてもいい▽弁護士にこれ以上迷惑を掛けられない、などとして控訴を
取り下げると記されていたという。弁護人は「控訴取り下げを撤回して、被告の真意を知りたい。撤回できるか裁判所の判断を仰ぎたい」と話している。
共謀とされ、1審で死刑判決を受けた住所不定、無職、守田克実被告(57)は東京高裁で控訴審中。【寺田剛】
毎日新聞 2007年11月6日
http://mainichi.jp/area/chiba/news/20071106ddlk12040543000c.html
◆強盗殺人:控訴取り下げ死刑確定 千葉マブチ宅事件などで
02年に千葉県松戸市の「マブチモーター」社長(現会長)宅など3軒に押し入り4人を殺害したとして、強盗殺人罪などに問われた無職、小田島鉄男
被告(64)が1日付で、東京高裁への控訴を取り下げたことが分かった。1審・千葉地裁の死刑判決(3月)が確定した。量刑不当を理由に弁護人が控訴し、
来年1月に控訴審が始まる予定だった。
弁護人によると、小田島被告は接見を拒否し「これ以上私のことで負担をかけるわけにいかない」という手紙を書いてきたという。弁護人は「取り下げは本人
の誤解に基づくものだ」として、6日にも控訴取り下げの無効を高裁に申し立てる。
1審判決によると、小田島被告は02年8〜11月、千葉県のマブチモーター社長宅と金券ショップ社長宅、東京都の歯科医宅に相次いで押し入り、4
人を殺害して現金などを奪った。ともに死刑判決を受けた守田克実被告(57)は控訴し、東京高裁で審理されている。【銭場裕司】
毎日新聞 2007年11月5日 20時04分
http://mainichi.jp/select/today/archive/news/2007/11/05/20071106k0000m040063000c.html
(最終更新時間 11月5日 20時48分)
◆終身刑:創設を求め、放火殺人事件遺族が署名提出
宮崎市で04年5月に起きた放火殺人事件で妻と次女を失ったイタリア出身のストッキ・アルベルトさん(51)=京都市在住=が2日、仮出所のない
「終身刑」の創設を求める約8900人分の署名を鳩山邦夫法相に提出した。法務省を訪れるのは2回目で、提出した署名は計8万人近くに上るという。
妻子を殺害した近所の男は、以前にも複数の服役歴があったが、無期懲役を言い渡された(確定)。ストッキさんは「死刑と(仮出所のある)無期の間に差が
あり過ぎる」と考え、05年7月からオートバイで全国を回って署名活動を続けている。
この日、署名を受け取った鳩山法相はストッキさんに「(導入の)メリット、デメリットについて研究したい」と述べた。ストッキさんは「法相に直接面会で
きて、うれしい。終身刑の創設まで活動は続ける」と語った。【坂本高志】
毎日新聞 2007年11月2日 19時32分
http://mainichi.jp/select/today/archive/news/2007/11/02/20071103k0000m040049000c.html
◆署名活動:アルベルトさん、終身刑の創設訴え全国行脚 県庁で協力呼び掛け /千葉
放火殺人事件で妻と娘を失い、仮出所のない「終身刑」の創設を訴え全国をバイクで巡っている京都市山科区のタイル輸入業、ストッキ・アルベルトさ
ん(51)=イタリア、スイス国籍=が31日、県庁を訪れ、署名への協力を呼びかけた。バイクでの「全国行脚」は今回が3周目、走行距離は12万9000
キロに達した。それでも、「創設実現までは活動を続ける」と決意は固い。
事件は04年5月に発生。近所の男がアルベルトさんの自宅から現金などを盗んで放火、妻公子さん(当時46歳)と次女友理恵さん(当時12歳)が殺害さ
れた。
05年6月、宮崎地裁は無期懲役の判決を下し、刑が確定。早ければ10年程度で仮出所できるため、「死刑と無期の間に差があり過ぎる」と同年7月から活
動を開始した。これまでに集めた署名は8万人を超えるという。
この日は法改正を求め、自民、公明、民主の各県連で協力を要請した。2日には鳩山邦夫法相に面会する予定だという。
署名などの問い合わせは、アルベルトさん(電話090・2505・1210、メールminervai@rhythm.ocn.ne.jp)。【神足俊
輔】
毎日新聞 2007年11月1日
http://mainichi.jp/area/chiba/news/20071101ddlk12040166000c.html
◆松戸の男性殺害:被告に無期懲役 遺族に悲しみと怒り /千葉
◇骨髄移植予定の妹も死亡「2人死んだも同然、なぜ死刑にならないのか」
松戸市で昨年4月、同市の無職、加藤木秀孝さん(当時47歳)が殺害された事件で、強盗殺人罪に問われたいずれも住所不定、無職、野崎隆(42)
と松本光司(59)の両被告に、求刑通り無期懲役を言い渡した31日の千葉地裁判決。共謀殺人を否認していた松本被告側は即日控訴した。こうした態度に、
死刑判決を望んでいた遺族らは「急性骨髄性白血病を患い、(加藤木さんから)骨髄移植を受ける予定だった妹(京子さん、当時43歳)も命が絶たれた。2人
死んだも同然、なぜ死刑にならないのか」と、悲しみと怒りをあらわにした。
彦坂孝孔裁判長は判決で「従属的ながら、刺殺した時に加藤木さんの口を押さえるなど重要な行為に及んだ」と松本被告の共謀を認定。2被告とも生涯、罪の
償いをするべきだと述べた。
「これでは殺された2人は納得してくれない」。公判後、京子さんの夫(41)は唇をかみしめた。なぜ義兄を殺したのか。2被告から明確な理由も、謝罪の
言葉も聞かれなかったからだ。
加藤木さんは、京子さんが骨髄移植を受ける手術予定日の1週間前に殺された。兄が亡くなったことを知った京子さんは「真相を知るために公判を傍聴した
い」と回復に努めたが、その願いもかなわぬまま、6月の初公判直後に亡くなった。
弟の貞夫さん(46)は、公判が続く中で、担当検事から「これまでの判例からも、死刑は難しい」と説明を受けていた。理屈では分かっても「それでも」と
いう思いが先に立った。
貞夫さんは公判後「捜査関係者には感謝するが、(死刑にならず)残念だ」と漏らした。「控訴してほしい」という言葉を押し殺すように、遺族は法廷を後に
した。【寺田剛】
毎日新聞 2007年11月1日
http://mainichi.jp/area/chiba/news/20071101ddlk12040165000c.html
◆列車爆破テロ:主犯格3人に禁固3〜4万年判決 スペイン
【パリ福井聡】マドリードで04年3月11日に起き、死者191人、負傷者1841人を出した列車同時爆破テロ事件で、殺人罪などに問われた被告
計28人に対する判決公判が31日、マドリードの全国管区裁判所で開かれた。同裁判所は被告21人を有罪とし、うち主犯格のモロッコ人、ジャマル・ゾウガ
ム▽同、エル・グノウリ▽スペイン人、ホセ・スワレツ3被告に対し、それぞれ約4万3000〜約3万4000年の禁固刑を言い渡した。有罪となった被告は
上訴する見込み。
ただ、スペインの現行法に死刑や終身刑はなく、規定により、3人はそれぞれ最長40年の禁固刑に処される。検察側が中心的存在としたエジプト人、アハ
メッド被告ら7人は証拠不十分で無罪となり、釈放された。
判決によると、被告らは01年の米同時多発テロ事件後、スペイン国内で逮捕された国際テロ組織アルカイダのメンバーから思想的影響を受け、犯行を
計画。03年のスペインのイラク戦争介入や同年10月18日にアルカイダ指導者、ビンラディン容疑者がカタールの衛星テレビ、アルジャジーラを通じて送っ
たメッセージで犯行を決断した。
毎日新聞 2007年10月31日 23時10分
http://mainichi.jp/select/today/archive/news/2007/10/31/20071101k0000m030154000c.html
(最終更新時間 11月1日 1時07分)
◆露殺人鬼:14年間で48人殺害…33歳被告に終身刑
【モスクワ大木俊治】92年から昨年6月に逮捕されるまでの14年間に、モスクワの公園などで男女60人を殺害したと自白した元スーパー店員、ア
レクサンドル・ピチュシキン被告(33)に対し29日、モスクワ市裁判所が終身刑の判決を言い渡した。同被告は自宅のチェス盤のマス目(64マス)に殺人
を1件ずつ記録していたことから「チェス盤殺人鬼」と呼ばれた。
報道によるとピチュシキン被告は、18歳の時に初めて級友をロープで絞殺。さらに01〜06年の間に知人や市内で声をかけた男女を公園に誘い込
み、ハンマーで殴ったり、下水口のマンホールに突き落とすなどの方法で殺害を続けた。主に殺害場所となった公園名から「ビツェフスキーの殺人鬼」とも呼ば
れていた。
検察が立件したのは殺人48件と殺人未遂3件で、今後残る事件も捜査を続けるという。ロシアは96年から欧州諸国にならって死刑を凍結しており、現行制
度では最高刑となる。
これまでの公判で同被告は「最初の殺人が初恋のように忘れられなかった」と述べ、ロシアで92年、52人を殺害したとして有罪判決を受け、死刑となった
男を上回るのが目標だったと語った。
捜査の過程では、02年の未遂に終わった事件で被害女性から事情を聴いた警察官が捜査をいやがり、事件のもみ消しを図った疑いも浮上。結果的に連続殺人
を断ち切れなかった警察の失態も批判されている。
毎日新聞 2007年10月30日 10時40分 http://mainichi.jp/select/today/archive/news/2007/10/30/20071030k0000e030020000c.html
(最終更新時間 10月30日 13時10分)
◆オウム元信者:端本被告の死刑確定へ 最高裁が上告棄却
坂本堤弁護士一家殺害、松本サリン、サリンプラント製造の3事件で殺人罪などに問われ1、2審で死刑判決を受けた元オウム真理教信者、端本悟被告
(40)に対し、最高裁第2小法廷(津野修裁判長)は26日、上告を棄却する判決を言い渡した。松本サリン事件実行役では初めて死刑が確定する。小法廷は
「犯行の動機は教団の組織防衛で、人命軽視も甚だしく反社会性が極めて強い。責任は極めて重大」と述べた。
オウム事件での死刑確定は▽坂本弁護士事件の実行役で元幹部、岡崎一明(47)▽松本智津夫(麻原彰晃)(52)▽地下鉄サリン事件の実行役で元
幹部、横山真人(44)−−の各死刑囚に次ぎ4人目。教団の3大事件とされる坂本弁護士事件と松本、地下鉄両サリン事件のすべてで、少なくとも1人の実行
役の死刑が確定する。
弁護側は上告審で「松本死刑囚や教団にマインドコントロールされており、事件に関与しないことは不可能だった」と死刑回避を求めていた。小法廷は直接こ
れに触れず「従属的・追随的に犯行に参加したことなどを十分考慮しても、死刑を是認せざるを得ない」と指摘した。
1審・東京地裁(00年7月)、2審・東京高裁(03年9月)の判決によると、端本被告は松本死刑囚に武道の腕を買われて89年11月、坂本弁護
士襲撃の指示を受け、教団幹部ら5人と共に一家3人を殺害。94年6月の松本サリン事件では、サリン噴霧車の運転と、警察が介入した場合の警護役として関
与、7人を殺害し4人に重症を負わせた。【高倉友彰】
毎日新聞 2007年10月26日 16時39分
http://mainichi.jp/select/today/archive/news/2007/10/26/20071026k0000e040077000c.html
(最終更新時間 10月26日 20時59分)
◆【山口県光市母子殺害事件 遺族の思い】(4)完 「君は社会人たりなさい」
2007.10.26 09:38 産経ニュース
3 犯罪被害から立ち直るということ〜「遺族になって思うこと」
私は遺族ですので、犯罪により直接身体に危害を加えられたわけではありません。また、加害者と対峙し死の恐怖を体験したわけでもありません。
ですから、理不尽に人生を絶たれた妻と娘の苦しみや怒り、無念さに比べれば、私の悲しみなど取るに足らないはずだと思っています。しかし、そう思って頑
張って生きようとしましたが、事件発生から1年くらいは本当に辛い日々でした。
特に、山口地裁で刑事裁判が始まった直後は辛かったです。法廷で加害者を見るからです。犯罪被害者の辛いところは、加害者が存在することなのかもしれま
せん。当時の私は、裁判のことを考えると仕事が手につかなくなりました。私は会社へ辞表を提出しました。
また、平成12年3月の山口地裁判決の前日には、遺書も書きました。死刑判決が出なければ命を持って、抗議しようと思ったからです。今になって思えば愚
かな行為だと思いますが、当時は真剣に悩んだ結果でした。
当時、私は山口県に一人で住んでいました。同県に親族は住んでいませんでした。そんな私が辞表や遺書を綴り人生を踏み外しそうになった時に私を支えて下
さったのは、会社の上司や先輩の方々、そして同僚と友人でした。現在でも私は事件当時と同じ職場で、充実した仕事をさせていただいています。会社は、事件
後の私にも責任ある仕事を任せていただき、サポートして下さいました。
本当に良い会社へ就職でき、素晴らしい上司や先輩の方々、そして同僚に恵まれたと思います。
今でも忘れられないのが、辞表を提出した時に上司が私に授けてくれた言葉です。
「この職場で働くのが嫌なのであれば、辞めてもいい。ただ、君は社会人たりなさい。君は特別な経験をした。社会へ対して訴えたいこともあるだろう。で
も、労働も納税もしない人間がいくら社会へ訴えても、それは負け犬の遠吠えだ。だから君は社会人たりなさい。」
私は、この言葉に何度助けられたことでしょう。今になって思えば、私は仕事を通じ社会に関わることで、自尊心が回復し社会人としての自覚も芽生え、その
自負心から少しずつ被害から回復できてきたと思います。
もし、会社という媒体で社会との繋がりがなく一人孤立していたら、今の私は居なかったと思います。私は、周りの方々に本当に恵まれたと思います。
しかし、犯罪被害者の中には、相談できる人もなく、孤立し、一人で重荷を抱えている方が大勢いると思います。そのような状況に置かれている方を想像する
だけで、私は言葉を失います。
犯罪という愚かな行為で、命を奪ったり、生きる気力を失わせるほどの身体的、精神的な苦痛を与えるのも人であれば、犯罪という閉塞された暗闇から被害者
を救うことができるのも、また人です。
被害者が、社会との繋がりを回復し、社会や人を信頼して生きて行く気力を再生させるには、その心の傷を吐露できる場と、その気持ちを受け止めてあげる人
が必要です。そして、社会から隔絶されているのではなく、社会と繋がっているという意識を持ち、孤立感を払拭させてあげることが極めて重要だと思います。
その為には、親族や周囲の方々からの精神的な支えも当然必要ですが、福祉医療、法律など専門的な知識とそれに基づく支援は必要不可欠です。このような専
門的な支援を提供できるのは、犯罪被害者支援団体や地方自治体だと私は考えています。
今後は、犯罪被害者に関わる専門的な知識を有した方や機関による支援を速やかに受けることができる連携体制を整える必要があると思います。
4 最後に
犯罪は、誰も幸せにしません。被害者も加害者も不幸にします。
私は、犯罪被害者支援の必要性と犯罪被害の深刻さが社会へ広まり、犯罪は絶対に許されないという価値規範が社会通念として浸透することで、被害者支援だ
けでなく、犯罪防止へ繋がればと願って止みません。そして、犯罪被害者そのものが減少し、不幸にして犯罪に巻き込まれた方々が一日も早く犯罪被害から回復
し、平穏な生活を取り戻せるような社会を実現できればと切に願っています。
◆【山口県光市母子殺害事件 遺族の思い】(3) 犯罪被害を乗り越えて…
2007.10.26 09:37 産経ニュース
事件後の平成12年1月、私は弁護士であり犯罪被害者でもある岡村勲さんの呼び掛けで、「全国犯罪被害者の会〜あすの会〜」の設立に参画させていただき
ました。
あすの会の活動を通じ、たくさんの被害者の方々と知り合うことができました。そして、多くの方が、犯罪だけでなく司法制度そのものにより犯罪の傷口を広
げられるような思いをされていることが分かりました。犯罪被害者の抱える問題は、多くの犯罪被害者に共通する問題であり、全ての人が犯罪被害者になる可能
性があることに鑑みれば、これは大きな社会問題であることを確信しました。
例えば、
・加害者が逮捕されない場合、事件の真相が分からないだけでなく、その犯罪による医療費などの経済的な損害すらも自力救済を余儀なくされる被害者。
・刑事裁判の記録を懸命に集め弁護士を雇い民事裁判を提訴し損害賠償支払い命令が下されても、ほとんど支払いをせずに消えてしまう加害者と、弁護士費用
を支払い裁判に費やした膨大な日々を無意味にされる被害者
・被害相談やカウンセリング、法律相談に行き、さらに傷を深くする被害者
・誤報や興味本位の報道により名誉を傷つけられ、プライバシーを侵害され、日常生活すらできない事態へ追い込まれる被害者
・性被害に遇い警察へ訴えることすら出来ない被害者
など、例を挙げればきりがないのですが、とにかく現行法には、犯罪被害者を支援する法律がないどころか、犯罪被害者そのものが法の前提に存在しませんでし
た。忘れられた存在でした。ですので犯罪被害者に関わる法律が何一つ存在しないのは、当然なのかもしれません。
私は、微力ではありますが仕事と裁判の傍らで、あすの会の活動を通じ全国の講演会やシンポジウム、署名活動などに参加させていただき、犯罪被害者支援の
必要性や刑事裁判や民事裁判の問題点を訴えてきました。
そして、平成16年12月に「犯罪被害者等基本法」が制定されました。犯罪被害者基本法は、今後の日本の犯罪被害者施策の分水嶺に当たる画期的な法律だ
と思います。今後、犯罪被害者等基本法の理念に基づき様々な被害者施策が司法や国レベル、地方公共団体レベルで実施されていくことと思います。現に平成
19年6月には、刑事裁判への被害者訴訟参加の法案が国会で可決されました。重大犯罪に限られるなどの制約はありますが、被害者が訴訟参加人として法廷に
入り、検察官と協議しながら被告人に質問することができるようになります。また、刑事裁判の中で損害賠償請求も提訴することもできます。私の裁判には間に
合いませんでしたが、今後多くの被害者が、この法律により被告人に質問したり、意見を表明したりすることで、被害感情が慰撫されたり、民事裁判を提訴する
負担を大幅に軽減させることになると思います。被害者にとって、実に有益な法律です。このような刑事訴訟の枠組みを大きく変化させるこの法律制定も犯罪被
害者等基本法の理念がなければ、まず実現は不可能だったでしょう。犯罪被害者等基本法が制定された意味が極めて大きいと思います。
犯罪被害者等基本法には、長年苦しんできた犯罪被害者の積年の思いが込められています。今後も、この思いを無駄にしないように適切な施策が速やかに実行
され、不幸にして犯罪被害に遇われた方々が一日でも早く犯罪被害を乗り越え平穏な生活に近づけるようになればと思います。
◆【山口県光市母子殺害事件 遺族の思い】(2) 「娘は二度殺されました」
2007.10.26 09:36 産経ニュース
2 刑事裁判〜「裁判を通して思うこと」
事件発生後から1カ月間、私は会社を休み警察による事情聴取を毎日受けました。事件を解明し、少しでも妻と娘の無念を晴らしてあげたいと思い一生懸命に
応じました。警察の方も、時に涙を浮かべながら私の話を熱心に聞いて下さいました。
事情聴取の途中、何度か加害者の証言や事件の内容について警察の方に質問しましたが、「被告人しか知りえないことを他言することはできない。裁判で必ず
事実が解明されるから、裁判を傍聴して事実を知って欲しい。申し訳ないが、今は堪えて欲しい」と言われました。
事件発生から4カ月後、山口地裁で刑事裁判が始まりました。私達遺族は、事件の真相を知るために裁判所へ向かいましたが、遺族に用意された傍聴券は3枚
でした。傍聴券は足りません。そのため、私達遺族は一般の方と同様に裁判所の抽選に並び、当選しなければ入廷できませんでした。残念ながら山口地裁では遺
族全員が傍聴することは出来ませんでした。
話は少し逸れますが、私は裁判が始まる前に一つの大きな悩みがありました。それは、妻に対する強姦のことです。私は、妻の第一発見者です。素人でも妻の
最期の姿を見れば、妻が何をされたのか分かります。私は、妻が強姦されたことをお母様に話すことができませんでした。しかし、裁判が始まれば、事件の概要
が分かります。当時の報道では、女性に対する配慮から『強姦』という言葉は使わず、『暴行』という曖昧な表現をするのが一般的でした。ですので、お母様も
強姦されたとは思っていなかったようです。私は裁判で突然強姦された事実を知るのは酷だと思い、ある日お母様に、私の知りうる全てをお話しました。私の話
を聞き泣き崩れるお母様が言われた「娘は二度殺されました」という言葉を私は忘れられません。
被害者にとって、事実を知ることが幸せなのか、不幸なのか分からなくなった瞬間でした。しかし、それでも被害者は、事実を知りたいのだと思います。どん
な残酷な最期であっても愛した人の最期を知り、墓前で手を合わせ、語りかけてあげたいのだと思います。
だから多くの被害者は見たくもない加害者が居る法廷へ向かい、聞きたくもない加害者の弁明を聞いてでも裁判を傍聴するのだと思います。
被害者にとって裁判は、唯一事実を知ることができる場なのです。
私の事件は、平成12年3月に山口地裁判決、平成14年3月に広島高裁判決が下り、いずれも検察の死刑求刑に対し、無期懲役という判決でした。この判決
を不服とし、検察は上告して下さいました。そして、広島高裁判決から4年後の平成18年6月に最高裁判所は広島高裁で再度審理をやり直すように判示しまし
た。いわゆる『差し戻し』という判決です。
この最高裁判決を受けて、平成19年5月より、再び広島高裁で裁判が始まりました。実に事件発生から8年も裁判をしていることになります。そして、この
8年間、いろいろなことがありました。
裁判傍聴券がなく遺族全員が傍聴できないことだけでなく、法廷への遺影持ち込みを裁判所に拒否され入廷させてもらえなかったことや、弁護人が裁判を欠席
したため法廷が延期されたこと、被告人が山口地裁や広島高裁では認めていた犯行を事実を、事件から7年経過した最高裁で突然否認に転じるなど、様々なこと
がありました。
私は、被害者にとって裁判を傍聴するということはとても大変なことだということを痛感しました。そして、裁判が結審せずに長期に亘り継続されることは、
想像以上に精神的疲労が蓄積することも知りました。
しかし、その一方で、刑事裁判において被害者が置かれている状況があまりにも酷いことが社会へ認知されはじめ、平成12年5月には犯罪被害者保護法が制
定されました。この法律により、被害者の優先傍聴が認められるようになり、更に被害者が法廷で意見陳述をすることが出来るようになりました。私は、広島高
裁で意見陳述権を行使させていただき、初めて遺族として事件や家族に対する思い、そして被告人に対する思いを話すことができました。
犯罪被害者保護法の制定により裁判を傍聴することは出来るようになりましたが、傍聴席でじっと聞くだけでは、必ずしも事件の真相が見えてこないことが分
かりました。被害者から観ると納得し難い主張を被告側がする場合があります。時として、その被告側の主張は被害者や遺族を侮辱するような内容であることも
あります。
私は何度も傍聴席から声を上げたくなることがありました。そして、被告人に直接聞き、問い質したいという事が幾つも湧いてきました。
しかし、現行法では犯罪被害者には被告人に質問する権利は認められていません。被害者は法廷で加害者や弁護士が何を言っても、ただじっと傍聴席で切歯扼
腕して耐え忍ぶだけです。私は、被害者遺族はもっと刑事裁判に関わる権利を有するべきだと強く思いました。
◆【山口県光市母子殺害事件 遺族の思い】(1) 「妻が殺されています」
2007.10.26 09:34 産経ニュース
山口県光市で当時18歳の少年に妻子を殺害された本村洋さんが平成19年版「犯罪被害者白書」に「遺族の思い」と題して手記を寄せた。寄稿された手記は
以下の通り。
1 事件発生まで
平成9年11月3日 結婚
私と妻は、共に21歳の時に結婚しました。当時、私は広島大学工学部の4年生であり、妻は福岡県在住の会社員でした。いわゆる遠距離恋愛でした。
私達に新居はなく、広島と福岡の別居生活でした。2人が結婚した証は、妻に授かったお腹の子供が日々大きく成長することだけでした。
私は、妻と共に暮らすことができない無力な自分が悔しくてなりませんでした。
しかし妻は、そんな私を一度も責めませんでした。そして、笑顔で「11月3日の『文化の日』に入籍しようね。だって、結婚記念日が祭日だったら、毎年一
緒に記念日を過ごせるよ」と言ってくれました。どんな時も前向きな妻は、いつも私を支えてくれました。
私は、妻を幸せにしたいと素直に思いました。
平成10年5月11日 長女誕生
出産予定日の頃、就職したばかりの私は、愛知県で新入社員研修中でした。出産が間近と研修先に連絡があり、急遽妻の暮らす福岡へ向かいました。分娩室の
前で、相変わらず無力な私は、ただただ佇むだけでした。しばらくすると、落ちつかない私の耳に娘の泣き声が聞こえました。
私は、助産婦さんに呼ばれ、妻と産まれたばかりの娘に対面しました。母になった妻が優しい顔で「パパと私の子供だよ。抱いてあげて」と言ってくれまし
た。私は、不器用な手つきで初めて我が子を抱きました。溢れる涙を堪えることで精一杯でした。
私は、妻と娘を幸せにするため、これから生きて行くのだと強く思いました。そして、その責任の重さに自分が父親であることを自覚し、私をここまで育てて
くれた両親へ感謝の気持ちが自然と湧いてきました。
私は、娘を『夕夏』と名付けました。夏の夕陽のように人を暖かく包む優しい人になって欲しいという思いからです。
1歳の誕生日を迎える前に生涯を終えた娘にとっては、この名前が私からの最初で最後の誕生日プレゼントになりました。そして、私にとっても最初で最後の
娘へのプレゼントでした。
平成10年7月某日 新居へ
勤務先が山口県光市に決まり、やっと妻と娘と3人の暮らしが始まりました。決して裕福な生活ではありませんが、本当に幸せな日々でした。
平成11年4月14日 別れ
この日、私は残業を終え22時頃に帰宅しました。いつもなら鍵がかかっている玄関のドアが開いており、不思議に思いました。家の中は、異様な雰囲気でし
た。居間の机や座椅子の位置が煩雑で、台所には洗い物が積まれた状態でした。何より、妻と娘の姿がありません。
お風呂、トイレなど家中を探しましたが見当たりません。家の周辺も探し回りましたが見当たりません。私は妻が外出する時にいつも使っていた鞄と抱っこひ
もを確認するため押入れを開けました。押入れには、複数の座布団が不自然に並べられていて、座布団の隙間から人の足が見えました。私は、慌てて座布団を払
い退けました。
そこには、服を剥ぎ取られ、顔と手首にガムテープを巻かれた妻が横たわっていました。
私は妻の体を手で揺さぶり妻の名前を叫びました。手に伝わる感触は冷たく、妻の温もりを感じることができませんでした。私はそっと手を離し、ただそこに
呆然と立っていました。
私は、妻を抱きしめてあげることもできず、視線を逸らすこともできず、姿の見えない娘を捜してあげることもできませんでした。どのくらい押入れの前に
立っていたのか分かりませんが、私は最後の気力を振り絞って警察に通報しました。蚊の泣くような声で、「妻が殺されています」と。
翌日の早朝。娘も自宅から遺体で発見されたことを警察の方から教えていただきました。
妻は23歳で人生を終えました。
娘は11カ月で人生を終えました。
家族で暮らしたのは、たった9カ月間でした。父親らしいことを何一つしてあげることができず、妻には苦労ばかりをかけました。「もっと妻と会話をすれば
良かった」「もっと娘と遊んであげれば良かった」「もっと家族を大切にすれば良かった」「もっと…」後悔ばかりが募ります。
そして、事件発生から4日後、近所に住む18歳の少年が逮捕されました。
◆犯罪被害者白書に手記 光市・母子殺害の本村さん
2007.10.26 09:30 産経ニュース
政府は26日の閣議で、犯罪被害者に対する政府の支援策の実施状況をまとめた平成19年版「犯罪被害者白書」を決定した。白書には、11年に山口県光市
で当時18歳の少年に妻子を殺害された本村洋さんが「遺族の思い」と題して手記を寄せ、犯罪被害者への支援策の充実を求めた。
本村さんは、手記の中で結婚や長女が誕生したころの幸せな日々や妻の遺体を発見したときの生々しい様子をつづっている。裁判の経過にも詳しく触れ、義母
に強姦の事実を告げたときに「娘は二度殺されました」と言われたことや、死刑判決が出なければ「命を持って、抗議しよう」と遺書も書いていたことなども明
かした。
また、「被害者がその心の傷を吐露できる場と、その気持ちを受け止めてあげる人が必要」と、福祉や医療、法律など専門的な知識を持つ専門家や犯罪被害者
支援団体、地方自治体などが連携していく体制の整備を訴えている。
一方、内閣府は「犯罪被害者等給付金」の最高額(障害給付金約1800万円)を自賠責(重度後遺障害4000万円)に近づける方向で検討。都道府県や政
令指定都市には、犯罪被害者の相談窓口を設けるように要請、今月1日現在、27道府県と浜松市に設置された。
白書は、17年12月に閣議決定された「犯罪被害者等基本計画」に基づく258項目の被害者対策について、どの程度実施されているかをまとめ、昨年から
発行されている。
◆裁判員辞退理由 「精神上の不利益」個別判断
2009年に始まる裁判員制度で、裁判員の辞退が認められる理由を定める政令の法務省案が24日、明らかになった。焦点となっていた、個人の思想
や信条を理由とした辞退については明記しなかったものの、「裁判参加によって精神上の重大な不利益が生じる」と裁判官が判断した場合には辞退が可能とし
た。ただ、個人の心の問題に関して、重大な不利益かどうかを見極めるのが難しいケースもあると見られ、運用面で課題を残しそうだ。
法務省は同日、自民党にこの案を示した。同省は来月までに、国民の意見を聞く「パブリックコメント」を実施した上で、年内にも政令を正式決定する方針。
裁判員法では、70歳以上の高齢者や学生は無条件で辞退を認めているほか、「重い病気やけがの人」や「介護や保育の必要な家族がいる人」なども、
辞退が可能と定めている。しかし、同法が成立した2004年の国会では、自民党内から「『人を裁くのは宗教上の信念に反する』といった人の辞退も認めるべ
きだ」との声が上がり、この点について、政府は政令で追加すると答弁していた。
今回の案では、単に裁判員になるのが面倒だと思っている人が、思想・信条を名目に辞退を希望する事態を防ぐため、思想・信条を直接の辞退理由には
しなかった。しかし、「裁判員の職務に伴って、自分や第三者に身体上、精神上、経済上の重大な不利益が生じる場合」という項目を設け、精神面の負担の大き
さを裁判官にきちんと説明できる人については、辞退が認められるようにした。
例えば、死刑制度に反対しているにもかかわらず、明らかに死刑判決が予想される事件に呼び出された人は、内心の葛藤(かっとう)を考慮して辞退が
認められるとみられる。裁判員の重責によるストレスや、事件の残酷な場面の再現で精神的にダメージを受ける恐れがある人も、辞退が認められる可能性があ
る。
このほか、今回の案では、裁判員法が明記していなかった「妊娠中や出産直後の人」や「単身赴任などで裁判所の管轄外に住んでいる人」などについても、辞
退が可能とした。 一方、日本商工会議所などは、従業員数50人以下の企業の役員・従業員は辞退を認めるよう求めていたが、同省案は、こうしたケースを辞
退理由には含めなかった。
(2007年10月24日 読売新聞)
◆裁判員制度:辞退事由の政令案公表 「思想信条」明記せず
09年春に始まる裁判員制度に向け、法務省は24日、裁判員に選ばれた人がどのような場合に辞退できるか定めた政令案を公表した。新たに出産などのケー
スを列記したが、「思想信条を理由とする辞退」は明記せず、ケースごとに裁判官の判断に委ねることになった。
裁判員法は、70歳以上の人や学生らのほか、「やむを得ない事由」として▽重い病気やけが▽同居親族の介護▽事業上の重要な用務で、自らが処理しなけれ
ば著しい損害が生じる恐れがある▽父母の葬式など社会生活上の重要な用務−−の四つを列挙し、辞退を認めている。
政令案では、妊娠などを新たに辞退事由とし、介護の対象も広げた。加えて、「自己または第三者に身体上、精神上、経済上の重大な不利益が生じると認めら
れる場合」という抽象的な規定を盛り込んだ=別表。
裁判員法の国会審議では、「人を裁くのは信念に反する」「死刑制度に反対している」など思想信条の自由での辞退を認めるかどうかが議論になった。
自民党の一部から配慮を求める声もあり、政府側は「思想信条は『やむを得ない事由』の一項目と考えている」と答弁。しかし、辞退の名目として使われた場
合、裁判員の確保に支障が出る恐れがあり、明記しなかった。
法務省は「裁判員は広い層から選任されることが望ましいが、同時に候補者の負担が重くならないよう配慮した。ただし、辞退を求める人は、裁判官に
『不利益』の具体的内容を説明する必要が出るだろう」としている。一般の意見募集(パブリックコメント)を実施し、年内に公布する方針。【坂本高志】
■政令案が新たに明記した主な辞退事由■
・妊娠中または出産から8週間以内。男性の場合、妻または娘が出産する場合で、入退院の付き添い・出産への立ち会い(事実婚も含む)
・介護がなくては日常生活に支障がある別居の親族または同居人がいる
・重い病気やけがの配偶者や親族、同居人の入通院への付き添い
・住所または居所が裁判所の管轄外の遠隔地で出頭が困難
・自己または第三者に身体上、精神上または経済上の重大な不利益が生じると認めるに足る相当の理由がある
毎日新聞 2007年10月24日 12時08分
http://mainichi.jp/select/today/archive/news/2007/10/24/20071024k0000e040051000c.html
(最終更新時間 10月24日 14時25分)
◆宗教的信念で死刑忌避など 『精神上不利益』で辞退可
2007年10月24日 東京新聞 夕刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007102402058903.html
二〇〇九年五月までに始まる裁判員制度をめぐり、法務省は二十四日、裁判員を辞退できる理由として「精神上の重大な不利益」など六項目を定めた政
令案をまとめた。個人的な立場や事情から負担が大きい人に配慮した結果だが、幅広い層の国民が参加する裁判員制度の理念との調整が今後、課題になりそう
だ。
自民党などに「思想信条も辞退理由に加えるべきだ」との意見が強かったが、法務省は「憲法が保障する思想信条の自由を主張すれば容易に拒否できると、誤
解される恐れがある」として見送った。
同省は今後、ホームページなどで政令案への意見を一般から募り、年内の公布を目指す。
〇四年に成立した裁判員法は、裁判員になることや選任手続きを辞退できる理由として、「重い疾病や傷害」「同居親族の介護・養育」「処理しないと著しい
損害が出る重要な用務」などを列挙。
それ以外の「やむを得ない理由」を政令で定めるとしており、法務省が検討を進めていた。
今回の政令案は、辞退理由として「妊娠中または出産直後」「配偶者らの入院に付き添い」など具体的な五項目を掲げ、さらに包括的な項目として「自己また
は第三者に身体上、精神上、経済上の重大な不利益が生じること」を加えた。
法務省は「精神上の不利益」として、例えば(1)宗教的な信念により、死刑選択もあり得る裁判員への参加に強い葛藤(かっとう)を覚える(2)裁判員の
仕事に心理的不安が強く、体調を崩す可能性が高い−などが想定されるとしている。
◆講演会:犯罪被害者・本郷さん、癒えぬ悲しみ訴える−−前橋 /群馬
◇子供を守るのは自分だという意識を…
犯罪被害者を支援する県などが主催の講演会「子どもの安全を守る〜悲劇を繰り返さないために〜」が17日、前橋市大渡町の県公社総合ビルで開かれ
た。01年6月に大阪教育大付属池田小学校で起きた児童殺傷事件で2年生の長女を殺害された本郷紀宏さん(42)が、癒えることのない被害者の心の痛みや
学校・地域での安全対策について語った。
本郷さんの長女優希さん(当時7歳)は教室に乱入した元死刑囚の男に刃物で刺され、校舎の出入り口まで逃げたところで、息絶えた。男は他に7人の児童を
殺害、15人に重軽傷を負わせた。
本郷さんは当時を振り返り「優希は懸命に生きようとして『パパ、ママ、助けて』と何度も心の中で叫んだろう」と言葉を詰まらせ、「どんなに愛して
いようが子供の命は守れない。たった一人の犯罪者に尊い命が奪われた現実を、ただ運が悪かったで片付けていいのか」と無念の思いをにじませた。
また、悲劇を生んだ背景には「危機意識の希薄さがある」と指摘、学校の安全対策を問題視した。校門の施錠や不審者への声掛け、侵入者対策や子供たちの避
難誘導訓練の必要性などを挙げ、「子供を守るのは自分だという意識を持つことが大切」と訴えた。
県は県警やNPO法人などと犯罪被害者等支援連絡協議会を設置し、心のケアや情報提供などの支援を進めている。講演会には各市町村の被害者対策の
担当者や警察学校の初任科生ら約200人が出席し、メモを取るなど熱心に聞き入った。本郷さんが優希さんを失った悲しみを切々と語ると、聴衆からもすすり
泣きがもれた。【鈴木敦子】
毎日新聞 2007年10月18日
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20071018ddlk10040359000c.html
◆山口・光の母子殺害:検察最終弁論「死刑回避の理由ない」
山口県光市で99年に母子を殺害したとして、殺人や強姦(ごうかん)致死罪などに問われた当時18歳の元少年(26)の差し戻し控訴審は18日、
広島高裁(楢崎康英裁判長)で検察側の最終弁論があった。検察側は「被告の弁解は言い逃れで、死刑を回避する理由はない」などとして改めて死刑を求めた。
1、2審判決によると、元少年は99年4月14日、光市の会社員、本村洋さん(31)方で、妻弥生さん(当時23歳)の首を両手で強く絞めて殺害、長女
夕夏ちゃん(同11カ月)を床にたたきつけたうえ絞殺した。
検察側は差し戻し審での元少年の新たな供述について、「弁護側の法医・精神鑑定に合わせ、供述を変遷させたのは明らか」などと不合理さを指摘。弥
生さんの殺害方法に関し元少年が「抵抗されたので右手の逆手で押さえようとしたら、首を絞めてしまっていた」などと殺意を否定した点については、「5分以
上素手で圧迫し続け、殺意は明らか」とした上で、検察側の法医鑑定を基に「右手の逆手では力が入らず、現実的にあり得ない。遺体の所見とも一致しない」と
反論した。
強姦の計画性については、「弥生さんに抱きついたのは、実母の姿と重なって見えて甘えたかった。姦淫(かんいん)は生き返らせるため」とする弁護
側の主張に対し、「唐突に言い出したもので、明らかに荒唐無稽(こうとうむけい)のこじつけ」と主張。一方、検察側が「床にたたきつけられた」としている
夕夏ちゃんの脳に障害が残っていなかった点については、「障害が残る前に絞殺された」とした。【安部拓輝、大沢瑞季、井上梢】
毎日新聞 2007年10月18日 12時21分 (最終更新時間 10月18日 16時43分)
◆「遺族の希望踏みにじる」 光市検察側弁論要旨(11)
2007.10.18 20:21 産経ニュース
【第4 反省の情と遺族の峻烈な被害感情】
本件は事件発生から8年を経過し、この間、被害者の遺族は被告人に対する極刑を求めるとともに、被告人の口から真実が語られることを希求していた。
しかしながら、被告人は当公判廷において、被害者の首を絞める経緯やその際の被害者の状況、被害児の首にひもを巻いて絞殺した状況についていずれも分か
らないとし、遺族の切実な望みを踏みにじっている。さらに、遺族は公判廷において被告人が通常人の目から見て真(しん)摯(し)な供述とは到底受け取れな
い不自然不合理な弁解を繰り返すのを聞かされてきたものであって、その苦しみや憤りがいかほどのものかは想像の及ぶところではない。
被告人は当公判廷で一応は反省の弁を述べ、また、教誨師による教誨を受けているとして、反省していると主張する。しかし、真の反省は事実を直視し、自ら
負うべき責めを受けるところから始まるのであり、形式的な反省の弁や、事実を捏造(ねつぞう)し、責任回避を図った上での教誨は到底反省悔悟の態度とは言
えないのである。
ところが、被告人は教誨を受けるに当たり、当公判廷で述べる虚構を前提としているのであって、事実を直視した真摯な反省とは到底言えないものである。こ
れらの行為が遺族を慰謝することはない。むしろ、形式的表面的な反省の弁を聞かされる苦痛を思うべきであり、現に遺族の被害感情は峻烈である。
さらに、被告人は臨床心理鑑定人に対し、被告人が死刑になった場合、被害者の夫になる可能性があるとまで供述しているのである。被告人のこの供述は、被
害者や遺族を愚(ぐ)弄(ろう)した友人に対する被告人の手紙と同様に、遺族の目の届かないところで、被害者や遺族を侮辱するものである。このような被告
人の態度は、2審以前と変わっていないのであり、被告人に反省悔悟を求めることは無意味といわざるを得ない。
以上の通り、被告人は当審の審理においても、被害者を冒涜(ぼうとく)し、遺族を苦しめ続けたというべきであって、被害は今も続いているといわねばなら
ない。
【第5 総括】
最高裁は2審で認められた情状事実からは被告人に対し死刑を選択しない事由として十分な理由に当たると認めることはできないとして、本件を当裁判所に差
し戻したものであるが、当審での審理によっても2審が認定した情状事実以上に被害人に有利に解すべき情状事実は現れなかった。
むしろ、当審においては、被告人が事実関係を争い、荒唐無(む)稽(けい)な弁解を弄することにより、被告人が本件犯行を真摯に反省しているものでない
こと、被害者の遺族の感情を踏みにじって顧みないことが明らかとなり、2審の段階以上に被告人を死刑に処すべきことが明らかとなったといわざるを得ない。
したがって、1審および2審の審理結果並びに当審における事実の取り調べの結果を総合すると、被告人に対して無期懲役刑を言い渡した1審判決の量刑は甚
だしく不当であって、これを破棄しなければ著しく正義に反するものであるから、これを破棄した上、刑事訴訟法第400条但し書を適用して、被告人に対し死
刑を言い渡すべきである。
◆「環境は主要因でない」 光市検察側弁論要旨(10)
2007.10.18 20:20 産経ニュース
▽(3)被告人が鑑定人の姿勢に乗じていること
被告人は、家裁から逆送された際、検察官に対して「僕が今回こうした事件を起こしてしまった原因について、家裁送致された後、僕の生い立ち、特に本当の
お母さんが自殺してしまったことや僕がお父さんのことを嫌っていること、お父さんがフィリピン人の新しいお母さんと再婚したこと等が何らかの原因になって
いるのではないかと思うようになったことです」「僕がこのようなことを思うようになったのは、家庭裁判所に送致されてから弁護士の先生や家庭裁判所の調査
官の方々から、僕のこうした複雑な家庭環境について何度も繰り返し聞かれたので、僕がこんな事件を起こしてしまったことと、僕の生い立ちとは何か関係があ
るのかなと思うようになったからです」「ただ、その一方で僕は事件の原因について、僕が今回の事件を起こしたのは、僕が複雑な家庭環境で育ったからだなど
と他人から言われると、それは違うと言いたくなるというのも事実です」と供述していた。
この供述は、その生育環境が被告人に影響を与えた可能性はあっても、それが潜在的副次的なものであったことを如実に示しているものであって、生育環境が
本件犯行を決定する主要因ではなかったことが明らかに示されている。
しかしながら、被告人はその後、本件犯行についての被告人の責任を軽減するがために自らの責任を生育環境に転嫁することを考えるようになっていくのであ
る。このことを示しているのが、被告人が友人にあてた手紙の「ヤクザはツラで逃げ、馬鹿(ジャンキー)は精神病で逃げ、私は環境のせいにして逃げるのだよ
アケチくん」という記述である。
臨床心理鑑定人はこの記述について「環境というのは非常に、彼にとって記号的な言葉でありまして、自分の具体的な環境とつなげて考える力はありません」
と証言するが、上記供述調書の被告人の供述に照らせば、被告人が環境という言葉を単なる記号としてとらえているのではなく、自分の具体的な環境と結び付け
ていることが明らかである。
もともと被告人は「非難拒否を避けるため取り繕いや言い訳はかなり巧みである」とされ、また「(少年鑑別所)在所中に行った精神科医の診察によると、不
遇な家庭環境を強調して関心を引こうとする様子…」が見られたことが少年事件記録に記載されている。
そのような被告人が最高裁の判決を受け、死刑に直面するという状況下において、臨床心理鑑定人および精神鑑定人の鑑定面接を受けているのである。しかも
臨床心理鑑定人はその調査手法として、調査結果を本人に開示し、本人がドラフト等を見て内容についてフィードバックするという方法を採っている旨証言して
いる。被告人としては、鑑定人が本件犯行をどのように被告人の生育歴と結び付け、どのように解釈しようとしているかを理解した上で面接に応じているのであ
る。
実際に、被告人の供述は上告審段階と臨床心理鑑定人による鑑定が行われた後では大きく変遷し、臨床心理鑑定書の結論に乗じたものとなっている。
例えば、被告人はガムテープで被害者の手を縛り、鼻口をふさいだ理由につき、上申書では「気絶から覚めて抵抗されたら困るので、ガムテープで縛って抵抗
できないようにしようと考えた」としているのに対し、第2回公判では「お母さんが変貌(へんぼう)を遂げられるのを防止するための措置として」として、被
害者を被告人の実母と同一視していたことを強調する内容となっている。
また、被害者の乳房に対する行為の理由についても、上申書では「気絶したふりをさせないようにしようと思った」としているのに対し、臨床心理鑑定書では
「一連の行為は、生きていれば恥ずかしいから反応を示すと思ってやったことである」「そのあと、赤ん坊を演じていた」とされるようになり、第2回公判期日
には「このときの僕の感覚では、赤ん坊になったような心境ですね。そういった甘えたいといった気持ちが同居しておりまして」として、いわゆる母胎回帰ス
トーリーに合わせようとしている。
最高裁あての上申書に記載された被告人の供述はそれなりに合理的なものとなっており、通常人に了解可能であるのに対し、当公判廷における供述は、いわゆ
る母胎回帰ストーリーという特異な解釈による以外、通常人からは到底理解しがたいものとなっているのであって、被告人の供述が臨床心理鑑定書に触発され、
これに乗じているものであることは明らかである。
▽(4)本件以前は異常行動を起こしていなかったこと
仮に被告人がその生育環境に支配され、その行動が生育環境によって決定付けられているものであれば、本件以前にも、いわゆる母胎回帰ストーリーをもって
説明しなければならないような異常行動があってしかるべきであるが、そのような異常行動は起こしていない。
弁護人は、被告人がアパートの各戸を順次回った行為について、強姦目的の物色ではなく、仕事を欠勤したことの後ろめたさと人恋しさから仕事のふりをして
戸別訪問したものであるとしている。
しかし、仕事のまねごとをして後ろめたさが解消されるはずはなく、また、単なる人恋しさから初対面の家庭を順次訪問するというのは常軌を逸した行為とい
わざるを得ない。18歳になり、高校を卒業して就職し、曲がりなりにも通常の社会生活を送っていた被告人の行動としては理解できないところであって、実
際、本件以前に被告人がこのような戸別訪問を行った事実はないのである。
また、被告人は被害者と実母が混同したとするが、本件以前に被告人が乳児を抱いた女性を見たことがないはずはなく、被告人が過去に見ず知らずの女性に甘
えようとしたという形跡もない。
臨床心理鑑定書および精神鑑定書とも本件当時の被告人がその生育歴による強い影響下にあって、異常な精神状態にあったことを前提として、退行状態で説明
しようとしたものであるが、本件までに被告人が退行状態に陥って異常な行動を起こしたことは何ら認定していない。また、本件当日のみことさらに退行現象を
引き起こした理由は述べていない。すなわち、本件当日、被告人が退行現象にあったとするのは、犯行を退行現象で説明しようとした牽強付会の議論といわねば
ならない。
◆「母体回帰ストーリー」 光市検察側弁論要旨(9)
2007.10.18 20:19 産経ニュース
■3 母胎回帰ストーリー
▽(1)母胎回帰ストーリーの根拠となる各鑑定の姿勢の誤り
弁護人がいわゆる母胎回帰ストーリーなるものの根拠としているのは、弁護人が請求した臨床心理鑑定人および精神鑑定人作成の各鑑定書である。 このう
ち、先に作成された臨床心理鑑定書によると鑑定事項は「(1)被告人の生育環境の問題性(2)生育環境が被告人の人格に与えた影響(3)前記(1)(2)
と本件犯行に至る経緯および動機形成との関係性(4)量刑および処遇上特に留意すべき事項」とされている。すなわち臨床心理鑑定書は被告人の生育環境に問
題があることを前提とし、さらにこれを本件犯行と結び付けようとする基本的姿勢の下に作成されたものである。
精神鑑定書については、鑑定事項は「(1)犯行に至る時点までの人格形成についての精神医学的考察(2)犯行時の精神状態について(3)現時点における
精神状態」であるが、その論述は臨床心理鑑定書と同様に被告人の生育環境に問題があることを前提とし、さらにこれを本件犯行と結び付けようとするものであ
る。
ところで、人の生育環境は人が行動を起こす際に影響するさまざまな要因のうちの一つではあっても、行動を決定する主たる要因ではないことは、われわれの
日常生活の中での行動決定について考えれば明らかである。ところが、臨床心理鑑定書および精神鑑定書は本件犯行を被告人の生育歴からのみ説明しようとする
ものであり、その姿勢自体が人の行動の分析としては偏ったものであることが明らかである。
▽(2)臨床心理鑑定書・精神鑑定書とも偏った鑑定であること
臨床心理鑑定書、精神鑑定書ともに、捜査段階の供述をことさら無視し、鑑定時の被告人の供述にのみ依拠しているものであり、そのことだけからも鑑定が客
観性を欠くものであることは明らかである。
また、鑑定結論に不都合な事実を無視している。臨床心理鑑定書、精神鑑定書とも、被告人の父親による虐待があったとして、被告人の本件犯行について「被
虐待的愛着障害」あるいは「父親の理不尽な暴力」に原因があるとする。
両鑑定書が父親による虐待を認定した根拠は主として面接の際の父親から虐待を受けた旨の陳述である。しかし当公判廷において、被告人は以下のような父親
の姿についても供述している。すなわち、
(1)息子と家の近所でキャッチボールやバドミントンを楽しむ父親
(2)息子をアスレチックランドに連れて行き、帰り道で一緒に魚釣りに興じる父親
(3)息子に自分の得意とする将棋の手ほどきをする父親
(4)息子と一緒にゲームセンターに行く父親
(5)ぜんそく気味の息子を健康のため、スイミングクラブに通わせ、その行き帰りに近所にもかかわらず送り迎えする父親
−である。
また、被告人は1審および2審でも父親に対して以下のように供述している。「僕のお母さんが死んで再婚するまでの期間は、本当幸せだったんです」「(殴
られることも)なくなったわけです。僕の成績が悪いというのも知っていながら、殴ることはなかったです」「僕の親の方が将棋とか、すごく好きだったので、
父から教えてもらいました」「お父さんに対するいい思い出は、再婚する前がほとんどなんですが、一緒に釣りに行ったり、一緒にゲームセンターとか行った
り、一緒に将棋とかしてくれたり、いろいろありました」。このような父親の姿に息子に対する愛情が感じられることは多言を要しないところである。
ところが臨床心理鑑定書および精神鑑定書では、被告人と父親との良好な関係については無視されている。臨床心理鑑定書では被告人の言葉として「父には岩
国や宮島、下松近辺の釣りなどに一緒に連れて行ってもらっている」との記載があるのみであり、精神鑑定書には「父親は被告人が出生後、長男をかわいがり、
海へ連れて行ったりしていた」と記載しているのみで、それ以上言及しておらず、そのほかは専ら父親による虐待を列記しているのみである。
本件において、被告人と父親との関係が重要な意味を持つというのであれば、さまざまな角度から検討するのが当然であるが、臨床心理鑑定書も精神鑑定書も
被告人と父親との良好な関係にかかわる点はほとんど記載がなく、分析も全くなされていないのであって、これらの鑑定が客観性を欠くものであることは明らか
である。
一方、弁護人の主張するいわゆる母胎回帰ストーリーの根拠は臨床心理鑑定書にいう「母子一体感」、精神鑑定書にいう「実母との性愛的共生」であるとこ
ろ、両鑑定はいずれも被告人の父親による暴行・虐待を原因として、共通の被害者として被告人とその母親が一体感を持つに至っているとしている。
しかし、両鑑定書が前提とする被告人と父親との関係は上記の通り、ことさら良好な部分を無視し、被告人の供述する粗暴な父親像をそのまま受け入れている
ものであって、両鑑定書の結論を採用することはできない。
さらに被告人と母親との関係についても、被告人は被害者および被害児あての謝罪の意を記した文書では「僕は長男として生まれ、二男がすぐに生まれたこと
から母親のぬくもりを知らずに育ちました。何かにつけて、ものごころがついたころより『お兄ちゃんなんだから』と子供のころ甘えさせてもらっておりません
でした」と記載しており、臨床心理鑑定書および精神鑑定書が事実として認めている被告人と母親との関係とは相違している。
ここでも被告人は相手によって事実を変えて説明しているのであり、臨床心理鑑定書および精神鑑定書が面接時の被告人の供述にのみ依拠しているのは、客観
性を欠くものといわざるを得ない。
被告人自身の生育歴に関する供述は一貫しておらず、供述の相手によって異なっているのであって、信用性を欠くものである。
被告人が平成9年にポケットに花火を入れられやけどした際の父親の言動につき、1審の被告人質問では、父親が相手に対してすごく怒ってくれ、被告人を病
院にも連れて行き優しくしてくれた旨述べていたものであるが、臨床心理鑑定書では「父親は相手を簡単に許してしまった」とされており、精神鑑定書によれば
「父親は自分を守ってくれず、ただ仕返しに行けとけしかける」としている。
被告人は当公判廷で、父親から包丁を突き付けられたことが3回あると供述しているが、臨床心理鑑定書では「父親が包丁を持ち出したのは就職をめぐる言い
争いにおいてのようだ」と1回だけのことととらえている。また当公判廷では、父親から浴槽で水につけられたことがあるとして苦しかった状況を具体的に供述
し、その時期は精神鑑定書によれば、小学校3、4年のころとされており、臨床心理鑑定書では小学校高学年に起こったこととされている。しかし、2審では物
心つく前のことで母親や祖母に教えられたと供述し、父親が包丁を持ち出したことを引き合いに出して、父親ならやりかねないと思ったと述べているのであっ
て、自身の記憶にあることとしては述べていない。
以上の通り、被告人はその生育歴に関してもその場その場で供述を変えているのであり、到底信用できるものでないにもかかわらず、臨床心理鑑定書および精
神鑑定書がこの点に関しても、面接時の被告人供述にのみ依拠しているのは客観性を欠いている。
◆「平然とうそ」 光市検察側弁論要旨(8)
2007.10.18 20:07 産経ニュース
■2 死刑を免れるがための虚偽
▽(1)供述変遷に関する弁解
供述の変遷に関する弁護人の主張は、捜査段階の供述は検察官から押し付けられたものであり、1審および2審ではいずれも弁護人が事実を争わない方針を
採ったために被告人に十分な弁解の機会が与えられなかったものであって、被告人自身は最高裁段階で供述を翻したものではないというものである。
しかし、以下詳述する通り、この弁護人の主張が真実に反するものであることは明らかである。
▽(2)捜査段階の供述
被告人は捜査段階では、1審の認定した事実を認めていたものである。ところが当公判廷において、捜査段階の供述について、捜査官による押し付けの結果で
あるとし、E検事には「レイプ目的がないとあまりにも言い張るようだったら、自分にはそのつもりはないけれど、上と協議した結果、死刑という公算が高ま
る」と脅迫され、F検事には「供述調書には捜査官の感想を書くもので、後で取り直すこともできる」と言われて、意に反する供述調書に署名指印したと供述す
る。
しかし、被告人の当公判廷における供述が虚偽であることは以下の諸点から明らかである。
被告人は犯行状況について詳細に供述し、殺意や強姦の目的についてもその場の状況も合わせて具体的に述べている一方で、捜査官から追及を受けた事柄でも
被告人の意に沿わない点は明確に否定しているのである。
まず、本件犯行に当たり、被害者の顔面や両手首を緊縛するのに用いたガムテープは被告人が自宅から持ち出したものであるが、当日、被告人は仕事に行くつ
もりもなく、また通常、仕事で使用するガムテープを自宅から持ち出す必要もなかったのであって、ガムテープ持ち出しの時点で強姦を計画していた可能性につ
いて追及するのは捜査官として当然であり、実際にも捜査官から追及を受けているが、被告人は一貫して、本件犯行との関係を否定している。
また、被告人が被害児の首に巻き付けて絞殺した籠手のひもを所持していた理由についても、下げ振りという工具を作るつもりだったと供述しているが、下げ
振りとは重りを細い糸でつり下げて垂直面を確認するものであり、籠手のひものように太いひもを使用するものではない。そして、この点についても、検察官か
ら追及されながらも弁解を押し通している。
以上の通り、被告人は捜査官の言いなりになっていたわけではなく、否定するところは否定しているのであって、このことからすれば、被告人が認めていた犯
行状況に関する供述が捜査官の押し付けによるものでないことは明らかである。
しかも被告人はF検事から供述調書の取り直しを約束してもらったと言いながら、取り直しを求めた形跡もない。さらに言えば、被告人は捜査段階においても
同検事に対し、弁解録取時の検察官、勾留質問時の裁判官の悪口を言うなどしており、その態度は到底、自己の意に沿わない供述を強いられた者の態度とは認め
られない。
被告人は平成11年5月2日、光警察署武道場で犯行状況を再現し、供述内容を具体的に動作で示している。この中で、被告人は被害児をカーペット上にたた
き付けた態様について「赤ちゃんを…両手で抱え上げ、体の向きを変えるのと同時に、床にたたき付けた」と指示説明しながら、ダミー人形を被告人と対面する
格好で支え上げ、回れ右の要領で後ろを振り返り、床に左ひざをつくと同時に、中腰の格好で床に人形を背面からたたき付けている。
この動作は供述調書には詳しく書かれていなかった態様を具体的に示したものであって、供述調書が捜査官の言いなりになって作成されたものであれば、この
ような動作は起こり得ないものである。もっとも、被告人はこの動作についても、実況見分に臨場したF検事から指示されたものである旨供述するが、この実況
見分より後である平成11年5月5日に同検事が録取した被告人の供述調書には、被告人がひざをついて中腰になった旨の記載はないのであって、同検事が意図
的に被告人に動作を再現させたとの被告人の弁解が虚偽であることは明らかである。
被告人は当公判廷では、1審での検察官の求刑が死刑であったことについて裏切られた感が否めずショックを受けた旨供述しているが、1審で死刑の求刑を聞
いた後になされた最終陳述でも被告人は事実を認めていたものであって、検察官に裏切られたという感情を抱いていたことは認められない。また友人にあてた手
紙では「死をかけたぼくは何でもできる。だって死刑って言われた者は強いぜ」と記載しており、その一方で検事が取り調べの過程で「虫のように殺した」とい
う表現を使ったことに対して「これは一生忘れてやるか」と記述しているが、死刑を求刑されたことで裏切られたという記述はどこにもないのである。
被告人は当公判廷では、捜査段階の供述調書について、読み聞かせの際に読み替えられたため、実際の記載と異なっていることに気付かなかった旨供述する。
ところが2審では、捜査に対する不満を述べる中で、供述調書の作成経過について「読んで聞かせてというところもなかったですね」「ぼくのほうに渡して、
読んでくれという形です」と当公判廷とは正反対の供述をしているのである。このことからも、被告人がその場その場で適当に言いつくろった供述を行っている
ことが歴然としている。
被告人は捜査段階の当初、当番弁護士の助言を受けることができず、当番弁護士の接見は逮捕後10日くらいたってからの1回だけであった旨供述していた
が、実際には、逮捕の2日後には約30分間にわたり接見しており、さらに勾留満期当日にも約20分間接見している。すなわち被告人は当番弁護士の助言につ
いて、明らかに事実に反する供述をしている。
▽(3)家裁の調査および少年鑑別所における鑑別
被告人は家庭裁判所における調査や少年鑑別所における鑑別の際にも、強姦の犯意の発生時期については捜査段階の供述より後のこととしながら犯行自体は認
めていたものであり、調査および鑑別の結果については当公判廷で、職員の方の認識度が違う、あるいは誘導されて抵抗はあったが質問に答えたと述べるのみ
で、積極的に供述を否定していない。
被告人は少年鑑別所において本件犯行時、被害者と目が合った際「死んじゃえ」と思ったと述べた点につき、当公判廷において「死んじゃえ」と思ったという
のは、被害者に取り付いているものに出て行けという意味で言ったものである旨供述する。
この供述自体、いわゆる母胎回帰ストーリーに乗じたもので信用性が認められないが、その点を除いても「死んじゃえ」と「出て行け」では意味内容が全く異
なるのであって、被告人の当公判廷における供述は単なる言い逃れに過ぎないと断ぜざるを得ない。
▽(4)1審および2審の供述
被告人は当公判廷において、1審の供述に関し、本心では公訴事実に不満があり、機会があれば争いたいと思っていたが、その機会がなかったため認めた形に
なっている旨弁解している。しかしながら被告人は1審の公判廷においては、自ら積極的に犯行を認める供述をしているのであって、当公判廷における供述が上
告審段階に至って突如供述を変遷させたという事実を否定するための言い逃れに過ぎないことが明白に看取される。
被告人は当公判廷において、2審では弁護人と十分な打ち合わせができなかったため事実を争うことができなかったとして、2審段階での弁護人との打ち合わ
せにつき、2カ月ないし3カ月に1回くらいしか接見に来てくれず、それも公判期日直前にやっと来るという状態だったため、言い分を十分に聞いてもらうこと
ができなかった旨供述している。
しかしながら、実際には弁護人との接見は2審の弁護人選任以後結審までに合計61回、多いときには月13回も行われているのである。弁護人との接見は被
告人にとっては重大な関心事であることは容易に推測できるところであり、しかも、上記の通り多数回の接見は被告人の供述と相いれないのみならず、被告人に
おいて勘違いするということも考えられないところである。
被告人は開示された証拠については、それと整合する供述をしているが、先に論じた捜査段階での当番弁護士との接見や2審段階での弁護人との接見日時、回
数等、被告人の供述前に開示された証拠に記載のない事柄については、平然とうそをつくことが如実に示されている。
▽(5)最高裁に提出した上申書
被告人が最高裁へ提出した上申書と当公判廷における供述内容が食い違うことは先に指摘したところであるが、被告人は供述が変遷したのではなく、表現の問
題であるとする。被告人の供述によれば、上申書作成時には頭の中で起こっていたことと現実に起こったことの区分けができておらず、頭の中だけで起こってい
たことを記載してしまったというのである。
しかし、事件後8年間も被告人が現実であると認識していたことが、なぜ現実と頭の中だけのことと区分けできるのか、その区分けはどのようにして行うの
か、被告人には全く合理的な説明ができない。さらに被告人は、本件犯行時に被害者が大声を上げたのが現実ではなく、被告人の頭の中だけで起こったことであ
ると供述する。しかし、どこの誰とも分からぬ男性にいきなり抱き付かれた女性が終始、声を立てないなどということの方が余程不自然であり、むしろ、大声を
上げたという従前の供述の方が経験則にも合致する。
被害者が大声を上げたのは頭の中だけのこととする被告人の供述は、正に単なる言い逃れのための詭(き)弁(べん)に過ぎない。
◆「重要行為であいまい供述」 光市検察側弁論要旨(7)
2007.10.18 20:05 産経ニュース
▽(2)実況見分調書等に合わせた供述
本件犯行後に実施された実況見分では、被害者方居間のテーブルこたつの北東に座いすが倒れていたことが確認されている。しかし、被害者が被害直前に、座
いすが倒れていた位置付近にいたとすると、被告人の上申書通りの行為が行われた場合、被害者はテーブルこたつの東側に頭部を南、足を北に向けて倒れたこと
になる。
ところが、テーブルこたつの南側のホットカーペットカバー上には染みが残されており、被害者が絶命したとき、その臀部がこの染みの付近にあったと認めら
れるのであって、上申書に記載された犯行状況は、最高裁が指摘した通り、他の動かし難い証拠との整合性を無視したものといわざるを得ない結果となる。
これに対し、被告人は第2回公判において、被害者に抱き付く際の位置について、被害者がテーブルこたつの南側にいたと供述し、被害者の位置とホットカー
ペットの染みの位置は整合性を持たせている。そして、座いすがテーブルこたつの北東に倒れていたことについては、「後にテーブルこたつと座いすを僕が引き
ずって位置を改めているわけなんですけど」と供述してつじつまを合わせている。
しかし、なぜ座いすの位置を動かしたのか、なぜテーブルこたつの北東に置いたのかについては全くその理由を述べることができないのであって、被害者に抱
き付いている際の座いすの動きを異常に詳細に述べていることと対比すれば、その不自然さは顕著である。
被告人の当公判廷におけるストーブガードやテーブルこたつに関する供述は実に詳細である。被告人の肩が当たった状況、それによってストーブガードが動い
た位置および状況、ストーブの上にあったやかんが落ちる状況および落ちた位置、ストーブガードを押した状況とそれによるストーブガードとやかんの位置の変
化、被害者の足の裏が当たってテーブルこたつが動いた位置等、現場に第三者がいて冷静に観察したとしても観察しきれないほど詳しく述べ、その位置について
現場の状況についての実況見分調書に合う位置を図示している。
およそ、人が他人ともみ合っている場合、その注意はもみ合いの相手に向けられており、その間に周辺にある器物がどのようになるかには注意が及ばないこと
が通常である。ところが、被告人は自分の足で座いすをけった状況のみでなく、座いすが被害者の左足に当たってさらに左にずれた状況や、被害者の足の裏が
テーブルこたつに当たった状況等、直接には被告人がかかわっていない状況についてまで具体的な供述を行っている。
ところが、被告人はこの一連の行為の中で被害者の頸部をスリーパーホールドの形で絞めたとしているが、この点については「無意識的にやったことでありま
して、被害者の動きがなくなった後に、スリーパーホールドであったことが確認できております」「(自分がスリーパーホールドの形をしていることは)分から
なかった状態にありました」と供述している。座いす、ストーブガード、テーブルこたつの動きについて詳細に観察していながら、自分自身の行為は意識してい
ないというのである。
さらに、被告人の供述全体を見ると、被告人は被害者を死亡させた際、被告人の右手が被害者のどこを押さえていたかについてはあいまいな供述をしており、
被害児の首をひもで絞めた状況についても、自分自身の手に絡めていたひもを赤ちゃんの首を絞める行為に使ったかどうかわからない、その認識はない旨供述し
ているのである。
本来、最も記憶しているべき自分自身が行った重要な行為についてはあいまいな供述をしている一方で座いす、ストーブガード、テーブルこたつの状況という
いわば派生的な状況に関しては極めて詳細な供述をしているのであって、このことからしても、被告人の弁解自体が全体として不自然なものであることは歴然と
している。
◆「辻褄あわせ不自然な供述」 光市検察側弁論要旨(6)
2007.10.18 19:57 産経ニュース
このニュースのトピックス:光市の母子殺害事件
また、被告人は被害児の頭部に3カ所の皮下出血が存在することについて、供述内容を遺体所見に意図的に符合させようとしている。被告人の当公判廷におけ
る供述は以下の通りである。
被告人は皮下出血について、第3回公判において(1)被告人が被害者に抱きついた際、同女が立ち上がろうとして抱いていた被害児を落とした(2)被告人
が被害児を抱き上げようとして手をすべらせて落とした(3)被告人がベビーベッドと間違えて被害児を浴槽に落とした−という3回の契機によるものであると
している。
被告人の上記供述は、その供述経過からも意図的に遺体所見に符合させようとしたものであることが認められる。
A鑑定書(被害児事案)が鑑定事項において引用する被告人の供述内容は「床にたたき付けたり、両手で頸部を絞めたりしたことはない」というものであっ
て、上記の(1)ないし(3)の事実は何一つ引用されていなかった。そして同鑑定書には「落下外傷とすれば、頭上の高さからたたき付けたというよりも、も
う少し低い位置から落下したと思料される」と記載されていた。その後、被告人自身が作成し、上告審に提出した上申書には「腰より下の位置の高さからカー
ペットの上に被害児を落としてしまったことはあります」と記載された。
しかし、ここにも被害者が被害児を取り落としたことについては全く記載がなく、浴槽とベビーベッドを間違えたという点においても「風呂桶がベビーベッド
に見え、被害児をその中に入れました。その時、被害児を入れたもののゴスゴスという音がして泣き声が激しくなり」とは記載しているが、浴槽に落としたとは
記載していない。
その後に作成されたB鑑定書では被害児の頭部外傷について「左側頭前部、左側頭中部、左後頭部にそれぞれ限局的で薄層の皮下出血があり、これらはそれぞ
れ該当する部分に対する鈍体の打撲・圧迫などによって生じたと認められた」と記載されていた。すると被告人は、当審においてにわかに3カ所すべてについ
て、不自然な説明を付けるに至ったのである。
被告人の供述する3回の契機の内容自体も不自然なものであり、現実に起こった事実とは認められない。
被告人は被害者が被告人に抱き付かれた際に、被害児を落とした旨供述するが、母親が乳児を抱いているときに異変が起これば、むしろ本能的に乳児を抱き締
めようとするのが自然であって、頭から床に落とすということは経験則にも合致しないところである。
また、被告人は浴槽とベビーベッドを間違えたと言うが、形状も明らかに異なり、これを見誤るというのはおよそ考えられないところである。被告人は浴室に
至るまでに、居問から廊下に出、台所を通過し、この間に洗濯かごやゴミ箱等の障害物につまずくこともなく浴室に至っているのであって、周囲の物の位置や形
状を正確に把握していたこともうかがわれる。にもかかわらず浴室・浴槽についてのみ形状の認識を誤り、さらに、臥床の有無すら見誤るというのは不自然極ま
りない。なお、この点について、説明らしきものとなっているのは臨床心理鑑定書および精神鑑定人による鑑定書であるが、この各鑑定書が採用するに足りない
ものであることは後述する。
さらに、被告人が被害児をあやそうとして取り落とすというのも、本当に乳児をあやそうとするのであれば、取り落とすことのないように注意して抱き上げる
のが当然であって、他の2回の契機についての供述の不自然さを併せ考慮すると、単なる言い逃れとしか言えないものである。
以上のように、被告人が当公判廷において供述する被害児の頭部皮下出血の原因はその供述に至る経過が不自然である上、内容自体も不自然・不合理であっ
て、頭部3カ所に皮下出血があることにことさらつじつまを合わせようとして不自然な供述を行っているというべきである。
この点について、弁護人は上告審以前の被告人の供述では、被害児の頭部に3カ所皮下出血が存在することの説明がつかないとして、上告審以前の被告人の供
述を信用できないものであるとする。しかし、一連の行為が行われている過程で、被告人が積極的に被害児の頭部に打撃を加えた場合には、そのことを記憶して
いるのは当然であるが、頭部に打撃を加える意図を有しないで行った行為については頭部への打撃を記憶していないことは何ら不自然ではなく、また、被害児自
身の行為によって傷害が生じた場合には、被告人が認識していないのは当然である。被告人が被害児の皮下出血の成因すべてを供述していないことは、何らその
信用性を損なうものではない。
本件では、被告人が被害児を浴槽内に閉じ込めた際、閉じ込められた被害児が浴槽から出ようとして伝い歩きできるようになったばかりの足で立ち上がり、転
倒して頭部を打撲した可能性、被告人が被害児を天袋あるいは浴槽に入れた際、被害児が頭部を打撲した可能性、その他、本件の一連の事実経過の間に被害児が
頭部を打撲した可能性は低くないのであって、この場合に被告人が被害児の頭部の皮下出血に気付かないことは何ら不思議ではなく、したがって、捜査段階の供
述ですべての皮下出血の説明ができないことには、何ら不自然な点はないのであり、弁護人の主張が失当であることは多言を要しないところである。
◆「鑑定にあわせて弁解」 光市検察側弁論要旨(5)
2007.10.18 19:44 産経ニュース
【第3 被告人の弁解】
上告審係属後における被告人の弁解はことさら、弁護人申請の法医学鑑定の結果や実況見分の結果等に合致させるために捏造(ねつぞう)・歪曲(わいきょ
く)された虚構であり、当公判廷で真実を供述していないことが明らかである。
■1 鑑定結果等に合わせた歪曲
▽(1)鑑定に合わせた供述
被告人は被害者の頸部を絞めた手の状況について、供述内容を弁護人の依頼による法医学鑑定に符合させようとしている。
弁護人は捜査段階での被告人の供述および上告審係属後の被告人の供述と被害者および被害児の遺体所見との整合性について、平成18年4月20日、法医学
鑑定人Aに鑑定を依頼し、A鑑定書(被害者事案)およびA鑑定書(被害児事案)がいずれも同月27日付で作成された。
A鑑定書(被害者事案)によると、被告人は弁護人による鑑定依頼当時、「被害者をあおむけに押し倒し、その上に自分の頭が被害者の胸辺りの位置で被害者
に重なるように覆いかぶさり、左右の手で、被害者の左右の手を広げるように押さえ付けた。しかし、被害者が大声を上げ続けたため、右手の逆手で相手のあご
付近を押さえ付け、そのまま手がずれて首辺りを押さえ付けたところ、被害者はぐったりして動かなくなった」と供述していたとされている。しかし、鑑定依頼
以前の被告人のこのような供述は証拠化されていない。
A鑑定書(被害者事案)では、被害者の左下あご部に存在する表皮剥脱(同鑑定書ではAとしている)につき、被告人の右第1指によるものとし、「加害者は
右手を逆手にして右第1指をAに押しあて、残る右第2、3、4、5指を声を封ずるために口の上に乗せた。…本人は抵抗して顔を右上方に傾けたので、Aの右
第1指はBに移動し、口封じの右第2、3、4、5指は口からCにずれた状態になりながら、右手に力を入れて圧迫を続けた」として、遺体所見と被告人が供述
しているとされる行為の状況が一致すると結論していた。
その後、平成18年6月15日付で被告人による上申書が作成され、ここで被告人は「被害者が大声を上げ続けたために僕は被害者の口をふさごうとして右手
を逆手にして被害者の口を押さえました。…被害者はいつの間にかぐったりとしており、動かなくなっていました」としており、右手の逆手で被害者の口を押さ
え、その後、被告人の手がずれて被害者の頸部を圧迫するに至ったというA鑑定書(被害者事案)に添う内容を記載していた。
弁護人は上申書およびA鑑定書を最高裁に提出したが、同月20日、最高裁は「弁護人らが言及する資料等を踏まえて検討しても…1、2審判決の認定説示す
る通り揺るぎなく認めることができる」として弁護人の主張を排斥した。
弁護人は同年12月26日、法医学鑑定人Bに法医学鑑定人Aに対すると同趣旨の鑑定を依頼し、平成19年4月19日付でB鑑定書が作成された。
B鑑定書では、被害者の首を絞めた際の被告人の手が右逆手であるという点ではA鑑定書(被害者事案)と一致していたものの、A鑑定書(被害者事案)で右
第1指の跡とされていた被害者の左下あごの表皮剥脱については、被告人の着衣の袖のボタンの跡とし、被害者の頸部正中やや左よりの表皮剥脱について、被告
人の右第1指が掌側に折り込まれたものとなっていた。
すなわち、B鑑定書によれば、被告人が被害者の口を押さえるために、被害者の左下顎部に親指を当てたことにより表皮剥脱が生じたというA鑑定書(被害者
事案)に即した説明はかえって遺体所見との整合性を欠くものとなる。
すると、被告人は平成19年6月26日に開かれた第2回公判における被告人質問で、上申書における供述を変遷させて被害者の口を押さえたことを否定し、
右腕で被害者の胸から肩を押さえたものであるとし、さらには被害者の悲鳴を聞いたという事実すらも否定した。
しかし、そのことによって、被害者の悲鳴を封じようとした行為が誤って被害者を死亡させたとの主張を維持することができなくなる一方、それでは、何故に
頸部を圧迫する行為に至ったのかについての理由付けに窮することになり、その結果、被告人は「漠然と被害者を押さえようという、被害者というよりも被害者
に取りついているものを押さえるような感覚ではありました」とする極めて不自然かつ不明確な供述をするに至ったのである。
本件においては、被告人が被害者の首を故意に絞めたか否かが問題であり、被告人が誤って被害者の首を絞める結果となったというのであれば、被告人が何を
意図して行為した結果、首を絞めることになったかは極めて重要である。また、被害者の死亡という結果を生じさせた以上、その原因が何であったかは、被告人
自身にとっても重要な事実であり、思い違いなどが生じる余地はあり得ない。
ところが、被告人はこの重要な点について、悲鳴を上げる被害者の口をふさぐという目的から、被害者に取りついたものを押さえるという目的に供述を変遷さ
せているのであって、このような供述の変遷は明らかに合理性を欠き、B鑑定書に合わせるためにことさら供述を変えたものであることが明白である。
さらに言えば、被告人は最高裁の判決宣告後、臨床心理鑑定人の面接を受けているが、臨床心理鑑定書によれば、被告人は「(被害者が)悲鳴というか大声を
上げたので、左手で腕、右手で口を押さえた。声が耳障りであった」「覆いかぶさったときの抵抗力はかなり大きなものであった。右胸に顔をつけた状態で、手
を挙げて口をふさぐ形になっていたと思う」旨述べていた。臨床心理鑑定人による面接は8回にわたって行われ、平成19年4月9日には鑑定書のドラフトに対
する被告人の意見を聞いている。したがって、同日の段階でも被告人は被害者の口を手で押さえたとする臨床心理鑑定書記載の事実について異論がなかったこと
になる。
しかるに、被告人は事件発生後、7年を経過して作成した上申書の内容を、上申書作成からは1年後、臨床心理鑑定からはわずか2カ月余りで変更し、同月
19日に作成されたB鑑定書に符合する内容に変えているのであって、供述変遷の時間的経過からも被告人が当初A鑑定書(被害者事案)に合う供述をしていた
ものの、これが最高裁に否定されたことから、B鑑定書に合わせるために供述を変遷させたことが如実に見て取れるのである。そして、被告人が供述を合わせよ
うとした法医学鑑定は、その判断自体が誤ったものであることは上記の通りであり、この点からも被告人の弁解が真実に反することが明らかである。
◆「遺体を陵辱」 光市検察側弁論要旨(4)
2007.10.18 19:41 産経ニュース
■3 強姦の犯意の存在
▽(1)強姦の犯意が認められること
被告人が被害者を姦淫した事実は争う余地がない。そこで、被告人が被害者を殺害した行為が強姦の手段として行われたものか否かが問題となるが、被告人は
被害者の遺体を陵辱しており、この行為自体から強い性的欲望を有していたこと、その欲望に基づき被害者を姦淫したことが認められる。
その際、被害者が抵抗し被告人がその抵抗を排除したことも容易に推認されるのであり、殺害がその抵抗を排除するために行われたものであることが明らかで
ある。加えて被告人には、被害者および被害児を殺害する動機となるような怨恨はないのであり、このことも被告人の被害者殺害が強姦の目的によるものである
ことが認められる。
被告人は捜査段階では逮捕の翌日以降一貫して強姦の目的を認めていたものであるが、それだけではなく被告人が自由に述べることができたことが明らかな1
審公判の被告人質問および最終陳述並びに友人に対する手紙の中でも、強姦の目的を認めていたものである。
すなわち、1審における被告人質問では「自分の考えがスムーズに事が運ぶので、襲っても、あんまり抵抗しないんじゃないかなというふうな考えが出てき
て、それで襲ってしまいました」「全くは抵抗を受けないとは思わなくて、だからスプレーを用心して持っていったわけで、でも、実際あれほど抵抗を受けるも
のとは思いませんでした」として、強姦の犯意を前提とし、被害者の抵抗を排除しようとする意思を有していたことを認めた供述を積極的に行っている。
さらに被告人は、被害者の遺体を陵辱したことについて、「怖いというより、そのときには欲望の方が上だったと思います」と述べ、性欲を満たしたいという
思いであったことを認めている。また、上記友人に対する手紙には「犬がある日かわいい犬と出会った…そのままやっちゃった これは罪でしょうか」と記述
し、さらに「同種を犯し、殺しても」という記述が続けられている。
この記載は法廷と切り離された環境の下で、自らの意思で自らの言葉で犯行時の気持ちをそのまま自由意思で書いたものであることが明らかであり、この点か
らも強姦の犯意を有していたことが明らかである。
▽(2)被告人の弁解が不合理であること
被告人は被害者を姦淫したのは復活の儀式であり、性的欲望を満たすという意識はない旨弁解する。
遺体を陵辱することが死者を生き返らせる手段であるというのは、極めて非科学的であり、健全な社会常識を持つ一般人からすると明らかに荒唐無(む)稽
(けい)な弁解であり、それ自体信じがたい。
加えて被告人自身、上告審である最高裁あての上申書の中では「絶望の中での姦淫なのです」と書いているのであって、復活の儀式とかこれを想定させるよう
なことは一言も書いておらず、当審に至って唐突に言い出した弁解であって、それ自体、信じがたい。のみならず、被告人は被害者を姦淫した後、その復活を確
認する行為を一切行っていないのであって、この一事からしても、復活の儀式なる被告人の弁解が虚構のものであることは明らかである。
被告人は主張の根拠として、「魔界転生」なる小説をあげるが、死者の蘇(そ)生(せい)をフィクションで根拠付けようとすること自体、荒唐無稽なこじつ
けであり、被告人があえてこのような弁解をすること自体、被害者を冒涜(ぼうとく)し、その死という厳粛な事実を軽んじていることの表れである。
弁護人は被告人の精神発達に遅れがあるとして、非科学的かつ不合理な死者復活を信じていたと主張するもののようであるが、被告人の当公判廷での供述態度
からすれば、精神発達の遅れをうかがわせるものはない。
さらに臨床心理鑑定書でさえ、「『死と再生』という意味づけが事実だとしても」として被告人の弁解の当否の判断を保留しながらも、「性的結合への意思は
否定できない」としているのであり、同じく精神鑑定人は、被告人がこれまで身に付けたファンタジーの説明を総動員した「後追いの説明」であるとしているの
であって、いずれも復活の儀式であり、性的欲望を満たすためのものではないという弁解を否定している。
以上の通り、被害者に対する姦淫は被告人の性的欲望の充足として行われたものであり、強姦の犯意を否定する被告人の弁解は虚偽である。
■4 窃盗
財布の窃盗については、被告人による被害者の殺害・姦淫及び被害児の殺害の後、被害者方から財布がなくなっていたこと、財布が発見された際、現金および
地域振興券が抜き取られていたこと、被告人方から被告人方に交付されていない地域振興券が発見されたこと、財布の形状が一見して財布であることが明らかな
ものであることなどから、被告人の故意による窃盗であることが合理的に認定できる。
被告人は財布を窃取した事実につき、ガムテープと間違えて持ち出したと弁解する。しかしながら、現場に遺留されていたガムテープと財布とは形状・色彩が
明らかに異なっており、ガムテープと財布とを間違えたという弁解自体信じられない。被告人は、財布とガムテープを間違えたといいながら、その後ガムテープ
の回収を試みることもなく、むしろ、財布から現金と地域振興券を抜き取り、残りを隠匿しているのであって、このことからしても、被告人に財布を盗む意思が
あったことは明らかである。
◆「ひもの伸張の限界超え…」 光市検察側弁論要旨(3)
2007.10.18 19:39 産経ニュース
■2 被害児(=夕夏ちゃん)に対する殺意の存在
▽(1)被害児に対する殺意が認められること
被害児がひもで頸部を絞められて殺害されたことも、遺体所見から明らかである。
被害児については、頸部にひもによる圧痕が残されているところ、凶器として使用されたひもは伸縮性に富むものであり、被害児の頸部に2重に巻かれていた
部分の長さは収縮時で約30センチメートル、伸張時で約35センチメートルである。
このように伸縮性に富むひもをゆるく首に巻いただけでは頸部を圧迫することはできないのであり、このひもが伸張の限界を超えて被害児の頸部に巻き付けら
れ圧痕を残しているのであるから、このひもが被害児の頸部を強く圧迫する意思で頸部に巻かれ、絞められたものであること、すなわち、被告人に被害児を殺害
しようという意思があったことは容易に認められる。
被告人は被害児についても、捜査段階で殺意を認めていたのみならず、1審の最終陳述では「1歳にもなっていないのに、はいはいして自分のお母さんのとこ
ろに努力して、ぼくみたいな殺人鬼みたいな人がいたのに、はいはいしてお母さんのところに行こうとしていた被害児を床にたたきつけたり、押し入れに入れた
り、作業着のポケットに入っていたひもで首を…再婚して自分の本当の弟と認められない弟とだぶってしまい、強く絞めてしまい、しかも癖とはいえ蝶々結びし
てしまい、申し訳ないと思います」と積極的に供述している。
「ひもの伸張の限界超え…」 光市検察側弁論要旨(3) (2/2ページ)
2007.10.18 19:39
このニュースのトピックス:光市の母子殺害事件
以上の通り、被告人が被害児を殺害する故意をもっていたことは明らかである。
▽(2)被告人の弁解が不合理であること
被害児の殺害についての被告人の弁解は、何とか泣きやませようと考えているうちにいつの間にか首にひもが巻かれて被害児が死亡していたというものであ
る。この弁解自体が不合理であることは多言を要しないところである。
しかも法医学鑑定人Aでさえ、幼児の首にひもを巻いて縛った場合、死亡させるには中等度に絞める必要があり、かつ、その場合には死亡まで10分前後かか
ると証言しているのであって、被告人の弁解は法医学鑑定人Aの証言からしても不自然である。
▽(3)弁護人申請の法医学鑑定の誤り
A鑑定書(被害児事案)およびB鑑定書は被害児の頸部に表皮剥脱がないことおよび頸部に力一杯絞めた痕跡がないとして、力一杯絞めたとする捜査段階の被
告人の供述を不合理であるとしている。
しかし、この結論は小児の頸部の皮膚の弾力性や、凶器として使用された籠手ひもの伸縮性の高さを全く考慮していないのであって、当を得ないものであるこ
とが明らかである。
また、A鑑定書(被害児事案)およびB鑑定書が被害児の頭部外傷と捜査段階の供述が整合しないと判断したのは、小児の頭部の特殊性および行為の具体的態
様への検討が十分でないことによるものである。
A鑑定書(被害児事案)およびB鑑定書はいずれも被害児の頭部外傷について、「被告人は泣きやまない被害児を殺害しようとして、頭上からカーペット上
(その下は畳)に後頭部からあおむけに思い切りたたき付け、後頭部をカーペットに激突させたとされている」との鑑定事項を前提として、被害児に重篤な障害
が生じていないことが不自然であるとして整合性を否定している。
しかしながら幼児の場合、成人とは頭蓋骨(ずがいこつ)や脳の柔軟性が異なっており、激しい衝撃があっても損傷の発生を免れることも起こり得ることであ
り、直ちに重篤な障害がなければ不自然であるとする両鑑定人の結論は、小児の頭部の特殊性についての理解不足によるものといわざるを得ない。
さらに、法医学鑑定人Bは脳浮腫が生じる可能性が高い旨証言するが、被害児は頭部に衝撃を与えられた直後に殺害されているのであり、仮に、そのまま時間
が経過すれば脳浮腫が生じ得る場合であったとしても、脳浮腫が生じる時間がないのであって、その証言は明らかに誤りである。
また衝撃の強さについても、捜査段階で被告人がその供述内容を具体的に示した犯行再現状況によると「両手で被害児の脇の下を持ち、被告人と対面する格好
で支え上げ、そのまま、回れ右の要領で後ろを振り返り、床に左足をつくと同時に、中腰の格好で床に被害児を背面からたたき付けた」というものであって、法
医学鑑定人Aや法医学鑑定人Bが想定したような頭上から直接床にたたき付けたものとは落下開始高度や加速度が異なり、さらに、背面からの衝突による衝撃の
緩和、床面が畳の上にカーペットが敷かれていたことによる衝撃の緩和が考えられる。
すなわち、脳浮腫も含む重篤な所見がないことをもって直ちに被告人の捜査段階の供述が不合理と断定した両鑑定は誤りである。しかも、法医学鑑定人Aおよ
び法医学鑑定人Bが鑑定書作成時に、被告人の犯行再現による実況見分に示されている行為態様を想定していなかったことは明らかであって、この点からもA鑑
定書(被害児事案)およびB鑑定書の結論は不正確である。
◆「単なる言い逃れ」 光市検察側弁論要旨(2)
2007.10.18 19:31 産経ニュース
【第2 犯罪事実】
弁護人は、1、2審判決は事実の認定を誤っており、被告人には殺意はもとより強姦の故意も窃盗の故意もなく、傷害致死罪が成立するにとどまるとし、1、
2審判決が認定する事実を積極的に裏付けるものは、被告人の捜査段階の供述のみであると主張する。
しかしながら、本件においては、以下詳述する通り、客観的事実だけからでも被告人の各犯罪事実は認定できるのであり、被告人の自白はこれを合理的に裏付
け、具体化しているものであって、本件各犯罪事実は揺るぎなく認定できる。
これに反して、被告人の当公判廷における弁解は通常人の合理的理解を超えるばかりか、その内容には明らかな虚構があり、1、2審判決の認定事実に合理的
疑いを入れるものではない。
■1 被害者(=弥生さん)に対する殺意の存在
▽(1)被害者に対する殺意が認められること
被害者が扼殺されたことは遺体の所見から明らかであり、その行為態様自体から被告人の殺意が認められる。
人の頸部を素手で絞めて窒息死させる行為は定型的な殺人行為であって、それ自体からして殺意が認定されるべきものである。ましてや本件においては、成人
女性である被害者の必死の抵抗を受けながら、5分間あるいはそれ以上の時間継続して頸部を素手で圧迫し続けて窒息死させているのであり、これが被告人の強
い殺意に基づく行為であることは明白である。
被告人は捜査段階では殺意を明確に供述しているほか、少年鑑別所における鑑別の際には、犯行時に被害者と目が合った際、「死んじゃえ」と思ったと述べ、
1審の最終陳述で「ぼくは4月14日に被害者宅へ作業員になりすまして侵入し、被害者を殺してしまい、強姦してしまった」「申し訳ないと思います」と供述
している。この言葉は、まさに殺意をあるがままに述べたものであることが明らかである。
さらに、被告人は1審判決後に、友人に出した手紙の中では「オレは最低な人間さ! 平気で人を殺した」と書いている。このような被告人の従前の供述に
は、これがすべてうそであったとして否定し去るにはあまりにも重いものがあるといわなければならない。
▽(2)被告人の弁解が不合理であること
被告人は当公判廷において、被害者の右胸に被告人の右ほおを付けた状態で被害者の体の上に乗り、右腕で被害者の胸から肩を押さえていたところ、いつの間
にか右手が被害者の頸部を圧追していたと供述する。
しかし、被害者の右胸に被告人の右ほおを付けた状態で被害者の体の上に乗っていたのであれば、被告人の体重は被害者の体幹部に掛かることとなり、被告人
の右手には、右腕の筋肉による力しか加えられない。健康な成人女性の抵抗を排除し、5分以上継続して頸部を圧迫し続けることは不可能である。
また、被告人は第2回公判において「重心としましては、全体に掛かっているわけじゃなくて、右側のほうに重心が掛かっている姿勢にあります」と供述して
いるが、被告人と被害者の姿勢を考慮すると、右側に重心が掛かってもそれは被害者の体幹部に掛かるものであり、被害者の頸部を圧迫する手に体重を掛けるこ
ととならないことは明らかであって、被告人の弁解は現実性のない単なる言い逃れに過ぎない。
現に、被告人は上記の友人に対する手紙の中で「平気で人を殺した」という文言に続けて、「今では自分の両手が憎いよ!」と書いているのであり、被告人が
その両手で被害者の頸部を絞めて殺害したことを如実に物語っている。
▽(3)弁護人申請の法医学鑑定の誤り
弁護人申請に係る法医学鑑定人A作成のA鑑定書(被害者事案)および法医学鑑定人B作成のB鑑定書のいずれも、右手の逆手により被害者の頸部を圧迫して
死亡させたとするが、これが現実的なものでないことは上記第2、1、(2)の通りである。
A鑑定書(被害者事案)およびB鑑定書が右逆手とする根拠自体が、人の手の作用に対する考察を欠いたものである。
A鑑定書(被害者事案)およびB鑑定書が右逆手の根拠としているのは、被害者右頸部の蒼白帯のうち1番下のものが最も長い約11センチメートルであるこ
とである。
しかし、人が物をつかむ際に最も力が入るのは示指ではなく、栂指と環指および小指である。したがって、小指および小指球辺縁部の痕跡が強く印章されるこ
とは当然であり、約11センチメートルという長さは指の長さのみでなく、小指側の掌の辺縁部の長さも加わったものと考えるべきである。蒼白帯の長さが約
11センチメートルであることを親指と示指によるものと断ずることは、人の手の作用に対する認識を欠いたものというほかない。
また、右逆手による圧迫は以下の通り、遺体の所見と矛盾することが明らかである。
(1)被害者の右頸部に残る被告人の指の跡と思料される蒼白帯は下に凸な弧状を呈しており、右逆手の場合の指の形状とは一致しない。
弁護人は解剖医作成の嘱託鑑定書添付の写真からは蒼白帯が下に凸であることは明らかでないとするが、嘱託鑑定書には「左右下頸部に弧状をなす」と記載さ
れているところ、添付写真からは下に凸とは見えても上に凸とは認められない。この点については、A鑑定書(被害者事案)に記載された図においても下に凸と
されているのであって、鑑定書の記載と写真を総合的に考慮すれば、下に凸であることは明らかである。
(2)右逆手によって頸部を圧迫しただけでは、被害者の遺体に認められる顔面全般の溢血点を含む鬱血(うっけつ)、左右のまぶた結膜の小豆大1個、粟粒
大多数の溢血点(斑)は生じ得ない。
顔面およびまぶた結膜の溢血点・鬱血は、被害者の頸部静脈が圧迫され、静脈血の環流が妨げられた結果、毛細血管に破綻が生じ出血したことを意味してい
る。この場合に圧迫されることが想定される頸部の静脈は左右の内頸静脈および外頸静脈であり、このことについては法医学鑑定人Bも証言しているところであ
る。
しかし、内頸静脈および外頸静脈はいずれも頸部左右に位置する静脈である。右手の逆手のみで頸部を圧迫した場合には、四指により圧迫される右側頸部はと
もかく左側頸部の内頸静脈および外頸静脈は圧迫されないことが明らかである。まして被告人は、右手についても「つかむように押さえた覚えはありません」と
述べているのであり、これであれば右内頸静脈や右外頸静脈すら圧迫されないのであって、顔面およびまぶた結膜の溢血点・鬱血は生じ得ない。なお、法医学鑑
定人Bは、左右の各静脈が絞まるとしているが、それぞれの静脈の位置を考慮すれば、この証言が誤りであることは明らかである。
◆「被害者を冒涜」 光市検察側弁論要旨(1)
2007.10.18 19:28 産経ニュース
山口県光市の母子殺害事件の差し戻し控訴審第11回公判で読み上げられた検察側の弁論要旨は次の通り。
【第1 序論】
差し戻し控訴審の審理の結果によっても、被告人に対し死刑を回避するに足りる特に酌量すべき事情は認められない。
本件審理は、死刑を選択しなかった1審判決を支持した2審判決は最高裁の判例に反するとして、検察官が上告した結果、破棄差し戻しされた控訴審段階にあ
る。
最高裁は事実関係については1、2審判決の認定した通り揺るぎなく認めることができるとした上で、「原判決およびその是認する1審判決が酌量すべき事情
として述べるところは、これを個別にみても、また、これらを総合してみても、いまだ被告人に対し死刑を選択しない事由として十分な理由に当たると認めるこ
とはできないのであり、原判決が判示する理由だけでは、その量刑判断を維持することは困難であるといわざるを得ない」とし、死刑の選択を回避するに足りる
特に酌量すべき事情があるかどうかについて、さらに慎重な審理を尽くさせるため審理を差し戻した。
しかしながら、当審における審理の結果によっても、被告人に対し死刑を回避するに足りる特に酌量すべき事情は、一切見いだすことができない。
のみならず、被告人は上告審および当審に至ってそれまで認めていた事実関係を争い、以下に詳述する通り、反省悔悟するどころか事実を捏造(ねつぞう)・
歪曲(わいきょく)し、被害者を冒涜(ぼうとく)してまで死刑を免れようとする態度に出ており、被告人の真(しん)摯(し)な反省悔悟と被告人の口から真
実が語られることを希求する遺族に更なる苦痛、更なる憤りを与えて顧みない態度に終始しているのであって、被告人に対しては死刑をもって臨むほかない。
◆能代の女性刺殺:内縁の夫に懲役16年を求刑 /秋田
能代市住吉町の野上朝子さん(59)が5月に刺殺された事件で、殺人などの罪に問われた内縁の夫で大工、大倉勇悦被告(57)の論告求刑公判が
16日、秋田地裁(藤井俊郎裁判長)であり、検察側は「凶悪で残忍」として懲役16年を求刑、弁護側が最終弁論して結審した。判決は11月14日に同地裁
で言い渡される。
検察側は論告で「『別れるぐらいなら自分の手で殺してしまえ』との動機は短絡的かつ自己中心的」「胸部を6回刺すなど殺害の態様は残忍」などと厳
しく指弾。一方弁護側は「被害者との生活を大事にしたいとの思いがすれ違った」「しょく罪の道を模索している」と情状酌量を求めた。
論告求刑に先立ち、野上さんの弟と長女が証人として出廷し、長女は「あんな残酷な殺し方をするとは。やはり死刑を求めてしまう」と涙ながらに話した。
【岡田悟】
毎日新聞 2007年10月17日
http://mainichi.jp/area/akita/news/20071017ddlk05040403000c.html
◆極刑求める署名11万超 闇サイト殺人
2007.10.6 08:29 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/071006/crm0710060829006-n1.htm
名古屋市の路上で、契約社員、磯谷利恵さん(31)が拉致された上、殺害された事件で、母の富美子さん(56)ら遺
族が、強盗殺人などの容疑で逮捕された新聞販売員、神田司容疑者(36)ら3人への死刑適用を求めている活動に対し、全国から11万118通に上る署名が
寄せられたことが5日、分かった。
署名は検察側が公判で証拠申請する予定で、富美子さんの姉、山本美穂子さん(60)は「署名は4日までの数。(極刑という)目標が達成できるまで続けた
い」と話している。
◇
名古屋地検は5日、強盗殺人と営利略取、逮捕監禁の罪で神田容疑者のほか、無職、川岸健治(40)、同、堀慶末(32)の3容疑者を追起訴した。同地検
は先月14日、岐阜県瑞浪市の山林に磯谷さんの遺体を捨てたとして、3人を死体遺棄罪で起訴している。
◆「今枝vs橋下」全面対決へ 山口・光市事件懲戒請求訴訟
2007.9.27 10:29 産経ニュース
これに対し橋下弁護士は、弁護団の一部のメンバーが最高裁の弁論を欠席したことや、1、2審での主張が上告審以降に変更されたことなどは「弁護士全体の
信用を失い、品位を失うべき行為」であって、懲戒事由に相当すると主張。「弁護団は懲戒請求を避けるために、社会に対して説明する必要がある」とした。
また、懲戒請求を扇動したことは認めながらも、自身の発言と多数の懲戒請求が行われたこととの因果関係を否定。さらに「弁護団の社会的評価は以前から低
下していた」と損害の発生についても争い、原告側の請求棄却を求めている。
■山口県光市の母子殺害事件
平成11年4月、山口県光市の会社員、本村洋さん(31)方で、妻の弥生さん=当時(23)=と長女の夕夏ちゃん=同11カ月=が遺体で発見された事
件。殺人などの罪に問われた男性被告(26)=事件当時(18)=には死刑が求刑されたが、1、2審ともに無期懲役を選択。しかし、最高裁は18年6月、
「特に酌量すべき事情がない限り、死刑を選択するほかない」として2審判決を破棄、審理を広島高裁に差し戻した。差し戻し控訴審は現在までに10回の公判
が開かれ、弁護側は殺意を否認し、殺人罪の成立を争っている。
■橋下徹弁護士による懲戒請求発言
橋下弁護士がレギュラー出演しているテレビ番組「たかじんのそこまで言って委員会」(読売テレビ制作)の5月27日放送分で、光市母子殺害事件の被告弁
護団について「もし許せないと思うんだったら、一斉に弁護士会に懲戒請求かけてもらいたい」「懲戒請求というのは誰でも簡単に立てれますんで、(略)10
万人とかこの番組見てる人が懲戒請求をかけてくださったら、弁護士会のほうとしても処分出さないわけにはいかない」などと発言。橋下弁護士自身は懲戒請求
を行わなかったが、その後、弁護団のメンバーへの請求が急増した。
◆光市の母子殺害、弁護団巡る訴訟で第1回口頭弁論
2007年09月27日 asahi.com
http://www.asahi.com/kansai/kouiki/OSK200709270070.html
山口県光市で99年に会社員本村洋さん(31)の妻(当時23)と長女(同11カ月)が殺害された事件で、殺人や強姦(ごうかん)致死などの罪に問われ
た元少年(26)=一、二審で無期懲役=の弁護団の4人が、懲戒請求をテレビ番組で呼びかけられ業務に支障が出たとして、大阪弁護士会の橋下(はしもと)
徹弁護士(38)に1人300万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が27日、広島地裁であった。橋下弁護士は出廷しなかったが、「発言に違法性は
ない」と訴えの棄却を求める答弁書を提出し、全面的に争う姿勢を示した。
訴状によると、橋下弁護士は5月27日放映の読売テレビの番組で、「弁護士会に弁護団の懲戒請求をかけてもらいたいんですよ」などと視
聴者に呼びかけ、4人はそれぞれ300件を超える懲戒請求を受けた。原告の今枝仁弁護士(広島弁護士会)は「言動は刑事弁護人の職責について誤解や偏見を
助長し、職務を萎縮(いしゅく)させる」と陳述した。
一方、橋下弁護士は答弁書で、弁護団が広島高裁の差し戻し控訴審で一、二審の主張を変遷させて殺意や強姦目的を否認したのは「弁護士会の信用を害する非
行」で、弁護士会除名などの懲戒事由にあたるとした。
民事訴訟は本人が出廷しなくても書面で意見の主張ができる。橋下弁護士の事務所は欠席理由を「一方的に日時の指定があり、広島という遠隔地である」こと
を挙げた。
◇弁護団側の訴え要旨◇
橋下弁護士はテレビ番組の発言で視聴者を扇動した。多数の懲戒請求がなされれば弁護士会が懲戒処分せざるをえなくなると誤解させ、多数の請求を促すこと
になった。このため弁明、反論を余儀なくされ、業務に多大な支障を生じた。今後も負担を強いられる。
懲戒請求の妥当性が争われた裁判の最高裁判決(4月)は「懲戒請求をする者は懲戒請求を受ける者の利益が不当に侵害されることがないよう
に、懲戒事由がある相当な根拠について、調査、検討すべき義務を負う」と判示している。懲戒請求を(他人に)勧める者もこれが適用される。橋下弁護士は十
分な調査、検討を行わなかった。
橋下弁護士は、弁護人が真に被告人の供述を代弁し、展開していないものと決めつけた。しかし、刑事弁護人の職責は、被告に代わりその利
益を最大限主張することであり、それゆえ弁護人までが被害者・遺族の恨みの対象となり、世論の激しい非難にさらされる場合もあることを橋下弁護士は当然理
解しているはずだ。その行為は極めて悪質で責任は重大だ。
◇橋下弁護士側の反論要旨◇
弁護団のうち2人が(光母子事件の)最高裁期日を欠席したことと、差し戻し審で一、二審の主張を大きく変遷させ、強姦目的や殺意を否認し犯行へ至った経
緯も著しく変更させたことは事実として確定している。
懲戒請求においては、その事実が弁護士会の信用を害し、品位を失うべき非行にあたるかどうかの評価の問題である。その評価は世間一般の常識的な感覚で判
断するほかなく、世間の声は重要な判断要素になる。
今回の懲戒請求は、一般市民が自発的意思で自ら得た情報に基づいて懲戒事由を検討し請求しており、テレビ発言と懲戒請求との因果関係はな
い。また、原告は多数の懲戒請求で業務に多大な支障を来したというが、不当な請求であれば、弁明など適当にあしらっておいても懲戒処分が下るわけがない。
刑事弁護活動に不当な重圧を受けたと主張するが、社会にきちんと説明しないのだから当たり前だ。被告人の利益を最大限に図りつつも、社会から信用される
よう真摯(しんし)に国民を説得するよう努めなければならない。
◆一生懸命我慢しても 涙が止まらない
母 富美子さん 極刑求め署名運動
「一生懸命、気を張って我慢していますが、つい利恵を思い、涙が止まらなくなります」。磯谷利恵さんの母富美子さん(56)が、「最愛の宝物」を理不尽
に奪われた心境を手記につづり、14日、読売新聞に寄せた。
手記はA4判1枚。「何の関係も落ち度もない人に、これほどの行為ができるのでしょうか」と3容疑者に対する怒りをあらわにし、「これから先、何
を楽しみに生きていけば良いのかわかりません。利恵の恐怖と苦しみを思うと、可哀想(かわいそう)で居たたまれない気持ちで一杯」と無念の気持ちをつづっ
ている。
関係者によると、富美子さんは親類や知り合いに声をかけ、3容疑者の極刑を求める署名運動を始めたといい、姉の山本美穂子さん(60)は「(妹の思い
を)少しでも世の中に訴えていきたい」と話している。
(2007年9月15日 読売新聞 http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/070915_1.htm)
◆(3)裁判員制度伝えたい
学生主体で模擬裁判 シナリオ作りに熱い夏
「殺人罪で死刑か無期懲役を争うものを作ろうよ」「では母子家庭で母親が入院してしまい、収入の道を絶たれた大学生の息子が妹を高校に行かせるお金ほし
さに、強盗殺人を犯すのはどうだろう」
夏休み中の7月31日、名古屋市東区の愛知大学車道校舎。法学部の裁判員模擬裁判に向けた、9人のシナリオ班の話し合いの一場面だ。
2009年に始まる裁判員制度を見据えて、同大では05年から裁判員模擬裁判を行っている。同大が特色ある学内の教育を支援するプログラム(愛大版特色
GP)にも選ばれており、法学部公式行事として授業で取り組まれている。
法学部では、「裁判員制度を学びたい」「地域の人々に裁判員制度の内容や仕組みを伝えたい」という学生を対象に「法律学特殊講義」を開講している。今年
度も約70人が履修しており、同模擬裁判には受講者全員が取り組む。
学生たちは4月から、裁判員制度や刑事訴訟法についての勉強を始めた。7月からは9グループに分かれ、法廷での役割分担を決め、本番の12月15日に向
けて準備は着々と進んでいる。
裁判員模擬裁判は、シナリオ作成をはじめとする準備、企画、当日の運営などすべて学生が主体だ。教員はあくまでサポート役。裁判員役を市民から募
集、多数の市民に傍聴してもらい、評決に参加してもらう。裁判員用のシナリオは用意されず、本番さながらの雰囲気で体験してもらうのも特徴だ。
昨年、実行委員長を務めていた4年の高麗貴文さん(22)は「法学部のある他大学とも情報交換しているが、ゼミやサークルとしてではなく、学部公式の取
り組みとして行っているのは東海地区で本学だけのはず」と話す。
昨年の模擬裁判では約400人の参加があり、会場の同大コンベンションホールは立ち見が出るほど。裁判員役6人のうち高校生も2人参加した。そのうちの
女子高校生は「本当に自分が裁判員になって刑を決めるとなったら、少し怖いかも」と考えこんでいた。
反面、狙いがいま一つ定まらなかったという反省点もあったし、シナリオの甘さを裁判員に指摘される一幕もあった。
昨年はシナリオ班として参加し、今回は見守る立場の4年、飯田しずかさん(23)は「何を伝えたいのか、狙いを明確にして頑張ってほしい」と後輩たちに
エールを送る。
学生たちは、市民の立場に立った裁判を行うため、証人尋問でも、難しい法律用語はかみ砕いて説明するなど、市民の理解に細心の注意を払っている。
パンフレット作成などに携わった4年の原達弘さん(21)は「どのようにすれば一般市民の人たちにわかりやすく説明できるかを考えることにより、表現力
が磨かれた」と振り返る。
今年で3回目となる裁判員模擬裁判。授業を担当する広瀬裕樹准教授は(商法)は、「学生一人ひとりを信頼している。裁判員模擬裁判が愛知大の伝統行事と
なるよう、内容のある模擬裁判を作り上げてほしい」と期待を寄せる。
実行委員長の3年、藤岡倫生さん(21)は「本番までに、まだ何度も壁にぶつかることもあると思うが、チーム一丸となって過去最高の裁判員模擬裁判を作
り上げていきたい」と意気込んでいる。
模擬裁判に向け、刑事裁判や裁判員制度に関する知識を深めながら準備に取り組んでいる学生たち。授業だけでは得られない貴重な体験となるはずだ。
(記事、写真は、読売新聞中部支社でインターンシップ研修した愛知大学法学部3年の日比野紘子が取材しました)
(2007年9月5日 読売新聞)
◆集団殺害の罪に問われたイラク「ケミカル・アリ」死刑確定
【カイロ=福島利之】1980年代後半にイラク北部で化学兵器などでクルド人十数万人を虐殺した「アンファール作戦」を指揮したとしてジェノサイド(集
団殺害)などの罪に問われた元国防相アリ・ハッサン・マジド被告の上訴審で、イラク高等法廷は4日、1審の死刑判決を支持する判決を下した。
これにより死刑が確定し、刑は30日以内に執行される見込みだ。
マジド元国防相はフセイン元大統領のいとこで、「ケミカル・アリ」の異名で呼ばれた。上訴審ではこのほか、スルタン・ハシム元国防相ら2人の死刑判決も
支持された。
(2007年9月4日22時9分 読売新聞)
◆執拗殴打、服従目的か 頭部に致命傷なし
磯谷利恵さん拉致、殺害事件で、磯谷さんはハンマーで頭部を数十回も殴られたにもかかわらず、頭の骨が折れたり、陥没したりしていなかったことが
31日、分かった。愛知県警特捜本部では、殴打は殺害目的ではなく、抵抗を抑止し痛めつけることが狙いだったとみて、逮捕した同県豊明市栄町、新聞セール
ススタッフ神田司容疑者(36)らを追及している。
調べによると、神田容疑者らは24日夜、同区内の路上で磯谷さんを車に拉致。車は、住所不定、無職川岸健治容疑者(40)が運転し、後部座席左側に神田
容疑者、右側に名古屋市東区泉、無職堀慶末容疑者(32)が乗った。
磯谷さんは、約20キロ離れた同県愛西市の殺害現場まで、神田容疑者の足元の床に座らされ、神田容疑者らから、頭をハンマーで数十回にわたって殴
られた。川岸容疑者は、この間、磯谷さんが何度も命ごいをするのを聞いたと供述しており、特捜本部では、神田容疑者らは、磯谷さんが意識を失わないよう、
力を加減しながら、執拗(しつよう)に殴打を繰り返したとみている。
磯谷さんは、拉致から約2時間後の25日午前0時ごろ、愛西市の駐車場で、額から口にかけて粘着テープでぐるぐる巻きにされたことで窒息死した。
(2007年9月1日 読売新聞 http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/070901_2.htm)
◆闇サイト殺人 「抵抗され、頭に袋」
容疑者供述 口・鼻ふさいだ上に
名古屋市千種区で24日夜、帰宅途中の同区、契約社員磯谷(いそがい)利恵さん(31)が拉致され、殺害された事件で、磯谷さんの頭にビニール袋
をかぶせたのは、確実に息の根を止めようとしたためだったことが、愛知県警特捜本部の調べで29日、分かった。死体遺棄容疑で逮捕された住所不定、無職川
岸健治容疑者(40)が、調べに対し「磯谷さんが激しく抵抗したため、(ほかの2容疑者が)頭にビニール袋をかぶせた」などと供述。磯谷さんは顔を粘着
テープで巻かれ、ビニール袋を頭からかぶせられた上、さらに粘着テープでぐるぐる巻きにされており、特捜本部では、暴行を主導した同県豊明市栄町、新聞勧
誘員神田司容疑者(36)らの殺意を裏付ける行為とみて追及している。
調べによると、神田容疑者らは24日夜、名古屋市千種区自由ヶ丘の路上で磯谷さんを車内に拉致し、現金などを奪った。その後、鼻や口などを粘着テープで
巻いたところ、磯谷さんは激しく抵抗したという。
このため、ハンマーで数十回にわたって頭部を殴りつけた後、頭全体に半透明のビニール袋をかぶせ、袋の上から顔全体を覆うように再びテープでぐる
ぐる巻きにした。その上で、空気が入らないように首の部分をひもでくくりつけると、磯谷さんはぐったりとなったという。磯谷さんの死因は、鼻や口を粘着
テープで圧迫されたことによる窒息死だった。
事件当時、後部座席には、神田容疑者と名古屋市東区泉、無職堀慶末(よしとも)容疑者(32)が、磯谷さんを挟むように座っていた。ハンマーで
殴ったのは神田容疑者が中心だったが、堀容疑者も数回殴っていたことも分かった。座席付近には、磯谷さんのものとみられる血痕があり、車内から発見された
ハンマーや、頭にかぶせられたビニール袋にも血痕が付着していた。
特捜本部では、車内での磯谷さん殺害に至る経緯について、さらに3容疑者を厳しく追及している。
数日前から計画 事務所荒らし下見中に
一方、川岸、神田、堀の3容疑者は犯行の数日前から、夜間、名古屋市内を車で走り、事務所荒らしに入るための下見をしながら、金を奪う目的で、一
人歩きの女性を襲撃する機会をうかがっていたことも分かった。犯行に使われた車の中からは、磯谷さん殺害に使用した粘着テープやハンマーだけでなく、ドラ
イバーや懐中電灯など盗みに使うための道具も押収されており、特捜本部では、3容疑者は金目当てで、盗みと女性襲撃の二つの犯行を計画していたとみてい
る。
調べによると、川岸容疑者は拉致事件の約1週間前の17日、インターネットの闇サイトに「裏の仕事をやりませんか」と書き込み、共犯者を募った。これに
神田、堀両容疑者が応じ、直後から下見を開始した。
犯行当日の24日夜は、川岸容疑者が数時間にわたって車を運転。一人で帰宅途中の磯谷さんを見つけ、道を尋ねるふりをして声をかけ、神田、堀の両容疑者
が後部座席に押し込み、連れ去った。
磯谷さんの告別式に130人
磯谷さんの告別式は29日、名古屋市千種区内の葬儀場で営まれた。利恵さんと交友のあった知人や親族ら約130人が参列し、最後の別れを惜しんだ。
午前11時の出棺では、母の富美子さん(56)が位牌(いはい)を両手で胸に抱き、沈痛な表情で霊きゅう車に乗り込んだ。参列者は涙を浮かべながら見
送った。
磯谷さんが小中学生のころ、ピアノを教えていたという女性(45)は、「富美子さんは事件のことに一切触れず、それが一層つらさをうかがわせた。母一人
子一人で頑張ってきたことを思うと、いたたまれない」と話していた。
(2007年8月30日 読売新聞 http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/070830_1.htm)
◆なぜ利恵が…許さない 女性拉致・殺害
帰宅途中に拉致され、遺体で見つかった名古屋市千種区の契約社員磯谷(いそがい)利恵さん(31)の通夜が28日、同区内の葬儀場で営まれ、親族
や知人らのすすり泣きが漏れた。利恵さんは食べ歩きが好きで、趣味の囲碁で知り合った男性と交際を始めたばかりだった。残忍な事件の犠牲となった利恵さん
を悼み、会場は悔しさと悲しみに包まれた。
友人ら300人別れ
通夜には、親族や元同級生ら300人以上が参列し、遺影の前で焼香した。会場には遺影のほかに、家族や友人らが写ったスナップ写真も飾られた。
通夜に際し、利恵さんの母富美子さん(56)が直筆のコメントを公表。「何の落ち度もない娘に、あれほどの異常な行為を行った人間の存在を認めることは
出来ません」と、憤りと悲しみを訴えた。
利恵さんと保育園から中学校まで一緒だったという会社員石川愛弓さん(30)は、「自分が拉致現場を通っていてもおかしくなかった。助けられたか
もしれないと思うと、悔しい」と、言葉を詰まらせた。死体遺棄容疑で逮捕された3容疑者に対しては、「命を奪って手にした金では何も出来ないのに」と語気
を強めた。
元同僚の女性(32)は、「こんな形で会いたくなかった。今でも信じられない」と唇をふるわせ、何度も涙をぬぐった。富美子さんと事件後に会ったという
女性(63)は、「『亡くなった実感がわかない』と富美子さんは話していた。一番悲しい通夜だった」と、うつむいた。
利恵さんは今年4月から、名古屋市中区の喫茶店に通い、週1回、客らと趣味の囲碁を楽しんでいた。今月22日には友人と調理室に入り、ケーキを作ってふ
るまった。喫茶店の経営者(49)は、「明るい子だったので、信じられない。本当に悔しい」と肩を落とした。
おいしかった食べ物などを利恵さんが紹介していたインターネットのブログには、哀悼の意を表す書き込みが続々と寄せられている。
「第4の男」直前自首 川岸容疑者と事務所荒らし
磯谷さん拉致、殺害事件で、死体遺棄容疑で逮捕された住所不定、無職川岸健治容疑者(40)が、磯谷さん拉致前日の23日、別の男と2人で事務所
荒らしの犯行に及んでいたことが28日、分かった。川岸容疑者は1人で現場から逃走、取り残された男は、愛知県警名東署に自首し、建造物侵入、窃盗未遂容
疑で逮捕されていた。逮捕されたのは、住所不定、無職本堂裕一朗容疑者(29)。川岸、本堂両容疑者は、23日午後11時50分ごろ、愛知県長久手町の水
道工事会社事務所に侵入し、室内を物色した疑い。
本堂容疑者は、川岸容疑者の車で犯行現場に行ったが、川岸容疑者とはぐれたため、名古屋市名東区内まで歩き、24日未明、公衆電話から110番通
報し、建造物侵入と窃盗未遂容疑で緊急逮捕された。調べに対し、「川岸容疑者に取り残された。土地鑑もなく、嫌気がさして自首することにした」と供述して
いる。
本堂容疑者は今月17日、インターネットの闇サイト「闇の職業安定所」で、川岸容疑者の仲間を募る書き込みを見てメールで連絡。21日、愛知県豊
明市内の駐車場で、川岸容疑者ら、磯谷さんの拉致に関与した3容疑者と会い、「杉浦」と偽名を名乗って、事務所荒らしの打ち合わせをした。事務所荒らし以
外の犯行計画については、「知らない」と関与を否定しているという。
川岸容疑者 多額借金 夜逃げ
川岸容疑者は、多額の借金を抱えて夜逃げするなど、生活に困窮していた。川岸容疑者は、1999年8月に愛知県瀬戸市内で、住宅ローンを組んで分
譲マンションを購入、家族と暮らしていたが、税金を滞納したため、2002年から04年にかけて瀬戸市などに部屋を差し押さえられた。関係者は、「借金か
ら逃げ回るような生活をしていた。最後には電気やガスも止められていたようだ」と話す。
02年末には、人材派遣会社を通して瀬戸市内の会社に就職し、会社が借り上げたアパートに住み始めた。犯行に使ったワゴン車は、この会社を通して
毎月の給与から天引きして購入したが、04年5月に車とともに夜逃げした。逮捕された際、車内には多数の生活用品があった。県内を転々としながら車内で生
活していたとみられる。
お母さん助けて!と叫んでいたに違いない 母、悲しみの手記
マスコミの皆様へ
今の偽らざる気持ちをお伝えいたします。
なぜ利恵が…
その時の娘の恐怖と痛みと苦しみを思うとき、居たたまれない気持ちで一杯になります。
お母さん助けて、助けて!と叫んでいたに違いありません。
あと少しで我が家にたどり着けたのに、と思うと本当に残念でなりません。
同時に行き場のない悔しさ、無念と、犯人たちに対する憤りで胸が張り裂けそうです。
何の落ち度も、関係もない娘に対し、あれほどの異常な行為を行った人間の存在を、私は認めることは出来ません。
絶対に、絶対に、許しません。
私と亡き娘の気持ちをどうか酌んでいただき、ご理解とご協力を賜りますよう、お願いいたします。
平成十九年八月二十八日
磯谷富美子
(2007年8月29日 読売新聞 http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/070829_2.htm)
◆女性拉致遺棄 神田容疑者が主導か
ハンマーや縄など購入 事前謀議で殺害提案
名古屋市千種区で24日夜、帰宅途中の同区、契約社員磯谷(いそがい)利恵さん(31)が拉致され、殺害された事件で、愛知県警に逮捕された3容
疑者のうち、同県豊明市栄町、新聞勧誘員神田司容疑者(36)が、犯行を主導した疑いが強いことが28日、県警特捜本部の調べで分かった。神田容疑者は、
ハンマーなどの凶器類を自ら準備したとみられ、犯行前から「顔を見られたら殺そう」などとほかの2人に指示していた。特捜本部では、磯谷さん殺害に至る詳
細な経緯を調べている。
3容疑者が知り合うきっかけとなったインターネットの闇サイト「闇の職業安定所」には、住所不定、無職川岸健治容疑者(40)が犯行仲間を募る書
き込みをし、これを見た神田容疑者と名古屋市東区泉、無職堀慶末(よしとも)容疑者(32)が連絡、犯行グループが形成された。
これまでの調べでは、3容疑者は今月24日夜、名古屋市千種区自由ヶ丘の路上で磯谷さんを拉致。愛知県愛西市内の駐車場の車内で現金約7万円を
奪った上、神田容疑者が磯谷さんの頭を数十回にわたりハンマーで殴ったり、粘着テープで顔をぐるぐる巻きにしたりして殺害した。遺体は25日未明、岐阜県
瑞浪市内の山林に捨てた。
川岸容疑者は、多額の借金を抱えており、金目的で仲間を集めたとみられるが、特捜本部では、神田容疑者は当初から、女性を拉致して金を奪った後、
殺害することを想定していた疑いがあるとみている。犯行前、3容疑者が名古屋市内のファミリーレストランで謀議した際、神田容疑者が、「女性なら抵抗しな
い。拉致して金を奪い、顔を見られたら殺そう」などと犯行計画について、具体的に提案。堀容疑者も応じたことで、拉致が決まったという。
川岸容疑者らの供述によると、神田容疑者は磯谷さんを殴るのに使ったハンマーを始め、粘着テープ、ロープを自ら購入したとみられるほか、スコップや手錠
などの準備を川岸、堀両容疑者に指示していた。
さらに、磯谷さんから奪ったキャッシュカードを殺害現場から持ち去ったのも神田容疑者だった。暗証番号が分からず、現金の引き出しをあきらめたものの、
改めて引き出すつもりで、手元に残していたとみられる。
(2007年8月29日 読売新聞 http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/070829_1.htm)
◆名古屋市千種区の女性拉致 殺害、当初から狙う?
ハンマーやスコップ準備
名古屋市千種区で24日夜、帰宅途中の同区、契約社員磯谷利恵さん(31)が拉致され、岐阜県瑞浪市内の山林で遺体で見つかった事件で、死体遺棄
容疑で逮捕された男3人が、犯行に使用したハンマー、手錠のほか、遺体の遺棄に使った複数のスコップや包丁なども準備していたことが27日、愛知県警特捜
本部の調べで分かった。特捜本部では、磯谷さんを拉致した段階で、すでに殺害を想定していた疑いもあるとみて追及している。
調べによると、住所不定、無職川岸健治(40)、愛知県豊明市栄町、新聞勧誘員神田司(36)、名古屋市東区泉、無職堀慶末(32)の3容疑者は
今月24日夜、同市千種区自由ヶ丘の路上で磯谷さんを拉致。約20キロ離れた同県愛西市内の駐車場の車内で現金7万円を奪った上、殺害し、25日未明、岐
阜県瑞浪市内の山林に遺体を遺棄したと供述している。
ワゴン車は川岸容疑者の所有で、同容疑者が運転、後部座席で神田、堀両容疑者が磯谷さんを挟んで座った。さらに、事前に用意したステンレス製の手
錠で磯谷さんを拘束。ロープで首を絞めようとしたが、抵抗されたため、堀容疑者が磯谷さんを押さえつけ、神田容疑者がハンマーで執拗(しつよう)に頭を
殴ったという。
スコップや包丁、手錠などは、ワゴン車の後部座席などから見つかった。包丁は磯谷さんを脅すために使用、手錠は磯谷さんの遺体にもかけられていた。特捜
本部では、だれが購入したかなども追及している。
川岸容疑者らは「顔を見られたから殺した」と、殺害の動機を供述しているが、特捜本部では、犯行に及ぶ際、自らサングラスや帽子などで顔を隠していな
かったことは矛盾があるとして、3容疑者の一部が、当初から被害者を殺害するつもりだった可能性もあるとみて調べている。
特捜本部は27日、神田、堀両容疑者の自宅を捜索するとともに、3容疑者を名古屋地検に送検した。
(2007年8月28日 読売新聞 http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/070828_1.htm)
◆「金を奪うなら女」 千種の女性拉致・殺害
遺棄の3人 自宅目前で拉致 偽名使い素性隠す
男3人は連れ去った車の中で、女性が抵抗するたび、ハンマーで執拗(しつよう)に殴るなどして殺害していた。名古屋市千種区春里町の派遣契約社
員・磯谷(いそがい)利恵さん(31)が殺害された強盗殺人・死体遺棄事件。磯谷さんは歩いて帰宅する途中、母親が帰りを待つ自宅団地まであと数十メート
ルの路上で、3人組に拉致された。静かな夜の住宅街で起きた凶悪事件に住民らは恐怖を募らせていた。
「金を奪うなら女の方がいいね」。ネットの闇サイトを通じて知り合った3容疑者は事件直前、名古屋市内で顔を合わせ、犯行計画を打ち合わせた。川
岸健治容疑者(40)は「山下」、堀慶末(よしとも)容疑者(32)は「田中」と偽名を使い、お互いの素性がばれないようにしていた。
拉致した後、車内の後部座席では、神田司(36)、堀両容疑者が磯谷さんを挟むようにして座り、逃げ出さないようにしていた。
また、3容疑者は磯谷さんのキャッシュカードを奪ったが、暗証番号が分からず、預金を引き出すことができなかったという。
神田容疑者は昨年9月中旬から、愛知県豊明市内の会社で、新聞購読を勧誘するサービススタッフとして勤務していた。同社社長(46)は「勤務態度や性格
は普通で、客とのトラブルや金に困った様子もなかった。仲間とも和気あいあいと仕事していた」と驚いていた。
神田容疑者は携帯電話に詳しく、ほかの人に操作を教えていた。2、3か月前にも「新機種に変更した」と同僚に見せていたという。24日朝、「足を
くじいたので、病院へ行く」と社長に電話で連絡。犯行後の25日朝には、「まだ足が痛いので25、26日は休みます」と電話してきた。社長は「犯行の後と
は思えないほど、平然としゃべっていた」と振り返った。
堀容疑者は定職には就いていなかったが、名古屋市内のダーツバーに頻繁に通っており、バー経営者の一人は「口数は少なく、あまり社交的ではなかった。交
際している女性から1日1万円ほどもらっていたようだ」と証言した。
ダーツの腕前は「上級」だったといい、26日には同市内でダーツ愛好家の試合に参加する予定だったが、25日に「用事ができたので参加できなくなった」
と関係者に連絡してきたという。知人の一人は「特に金に困っていた様子もなかったのに。なぜ」と首をひねった。
一方、犯行に使われたミニバンは川岸容疑者の所有で、川岸容疑者は遺体が遺棄された岐阜県瑞浪市周辺に以前、住んでいたこともあった。ミニバンの車内に
は多くの荷物も積まれており、愛知県警特捜本部では「車内で生活していた可能性もある」とみている。
「母のため家建てたい」 磯谷さん 「孝行娘なぜ」知人涙
殺害された磯谷利恵さんは、母の富美子さん(56)と2人で、名古屋市千種区の団地で暮らしていた。将来の夢は「母のために家を建てること」。女手一つ
で育ててくれた母に親孝行したい一心で仕事に励んでいたという。
付近の住民らによると、磯谷さんは幼いころに父親を失い、それ以降、富美子さんが事務員として働き、利恵さんを育ててきた。磯谷さんの中学時代の同級生
らは、「まじめでおとなしく、読書が好きだった」と振り返り、突然の悲報に涙ぐんだ。
最近では、名古屋市中区の人材派遣会社の契約社員として、同区内の会社で事務を担当。普段は午後7時半ごろには帰宅し、母親と夕食を共にしていた。
趣味は囲碁で、毎週、囲碁サークルに通い、アマチュア5級程度の実力だった。また、自分で浴衣を着付けたり、お菓子を作ったりすることも好きだったとい
う。
知人男性(26)は25日夜、磯谷さんとハモを食べにいく予定だったが、連絡が取れなくなったため、心配していたところ、ニュースで事件を知った。男性
は「すてきな人だった。犯人を極刑にしてほしい……」と唇を震わせた。
磯谷さんと同じ団地に住む60歳代の主婦は、「パンツスーツで出勤する姿がきりっとしていて、利発そうな女性だった。現場の道は暗いので、用心し
てあえて遠回りする人もいたのに」と悔やんだ。団地の同じ棟の主婦(57)も「おとなしくていい子だったし、お母さんと一緒できれいだった。一人っ子なの
でお母さんの気持ちを思うとたまらないし、許せない」と怒りをあらわにした。
(2007年8月27日 読売新聞 http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/070827_2.htm)
◆男3人遺棄容疑逮捕 千種の女性拉致・殺害
手錠、ハンマー殴打 直前に顔合わせ
名古屋市千種区で24日夜、帰宅途中の女性が拉致され、岐阜県瑞浪市の山林で遺体で見つかった事件で、愛知県警は26日未明、住所不定、無職川岸
健治(40)、同県豊明市栄町、朝日新聞のセールススタッフ神田司(36)、名古屋市東区泉、無職堀慶末(よしとも)(32)の3容疑者を死体遺棄容疑で
逮捕した。3容疑者は「金を奪う目的で、通りがかりの女性を狙った」と供述しており、県警は強盗殺人・死体遺棄事件として特別捜査本部を設置、強盗殺人容
疑でも追及する。
調べによると、遺体で見つかったのは同市千種区春里町、派遣契約社員磯谷(いそがい)利恵さん(31)。
3容疑者は25日午前4時ごろ、岐阜県瑞浪市稲津町の山林に磯谷さんの遺体を遺棄した疑い。特捜本部は27日に司法解剖する。
3容疑者は、24日午後10時ごろ、名古屋市千種区の路上で、帰宅途中の磯谷さんをミニバンに拉致。25日午前0時ごろ、愛知県愛西市内の国道
155号線沿いの駐車場で、現金約7万円を奪った上、脱出用の車内ハンマーで執拗(しつよう)に殴って殺害したなどと供述している。3容疑者と磯谷さんの
間に面識はなく、奪った金は犯行後、山分けしたという。
瑞浪市の山林で見つかった遺体は、着衣の乱れはなく、顔に粘着テープがまかれ、両手首にステンレス製の手錠が掛けられていた。
3容疑者は今年になって、犯罪を行う仲間を募集するインターネットの闇サイトを通じて知り合い、犯行直前に顔を合わせて打ち合わせをしていた。事前に手
錠を用意していたことなどから、特捜本部は計画的な犯行の可能性が高いとみて、3人の役割分担などを追及する。
朝日新聞名古屋本社販売部のコメント 「取引先である新聞販売所がセールス業務を委託した会社の従業員が、このような事件を起こしたことは大変遺憾。今
後、このようなことがないよう改めて関係先に人事管理の徹底などを求めていく」
(2007年8月27日 読売新聞 http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/070827_1.htm)
◆「顔見られて殺した」 女性拉致・殺害
3人組、サイトで接点
携帯のサイトで知り合った男3人が、金目当てに通りがかりの女性を路上でいきなり拉致し、「顔を見られた」という理由だけで、犯行後、数時間で殺
害、遺体を山中に捨てた。「死刑になるのが怖かった」。3人組のうち、1人が犯行後、警察に自ら電話したことで、事件は発覚した。
愛知県警の調べによると、男3人は24日夜から25日未明にかけ、人通りの少ない名古屋市千種区自由ヶ丘の路上で、歩いていた女性を車に押し込ん
だ後、後部座席に男2人が女性を挟むようにして座り、連れ去ったという。その数時間後、拉致現場から西へ約20キロ離れた同県愛西市の国道155号線沿い
の駐車場で、女性を殺害。3人のうち1人が、「岐阜へ行こう」と提案し、再び車で移動。岐阜県瑞浪市の道路脇の山林に、浅い穴を掘り、遺体を捨てた。
「現金を奪おうとしたが、顔を見られたので殺した」。コンビニ駐車場から警察に通報した男は、居場所を告げ、警察官が到着すると、素直に取り調べに応
じ、犯行を認めたという。県警では残りの2人についても男の携帯電話の番号から割り出し、身柄を確保した。
男たちは携帯電話のサイトで知り合った。携帯サイトを介した犯罪は、共犯探しなどに悪用される事例が目立ち、「犯罪の温床」とも言われている。県警で
は、男らが知り合ったサイトの特定を急ぐとともに、犯行の動機などを追及している。
サイトを巡る犯罪では、今年5月、出会い系サイトを通じて知り合った三重県亀山市内の女子生徒(14)を誘拐、身代金を奪おうとした愛知県岡崎市
内の工員(39)ら2人が身代金目的誘拐容疑で逮捕されたほか、2005年4月には、「どんな仕事でもやります」とサイトに書き込んでいた男に、1000
万円の報酬で夫の殺害を実行させた妻が逮捕される事件も起きた。
(2007年8月26日 読売新聞)
◆路上で女性拉致、殺害 男3人拘束
千種の30代? 瑞浪山中に遺体
25日午後1時半ごろ、愛知県警に、男の声で「昨夜、仲間3人で女性を車で拉致し、現金などを奪って殺し、岐阜県内に埋めた」と電話があった。県
警は、電話をかけてきたとみられる男(40)の身柄を名古屋市緑区内で確保し、供述に沿って岐阜県瑞浪市内の山林を捜索、同日午後7時10分ごろ、女性の
遺体を発見した。県警では、仲間とみられる男2人の身柄も確保しており、容疑が固まり次第、3人を死体遺棄の疑いで逮捕し、殺害についても追及する。
遺体で見つかったのは、名古屋市千種区在住の30歳代の女性とみられ、県警で身元の確認を急いでいる。
男の供述によると、24日午後、仲間2人と名古屋市千種区内で歩いていたOL風の女性を車で拉致、粘着テープで体を縛り、愛知県愛西市内の国道
155号線沿いの駐車場に車を止め、現金約7万円を奪ったうえ、鈍器で殴るなどして殺害し、遺体を瑞浪市内の山林に埋めた。女性とは面識はないとしてい
る。
調べに対し、男は女性を殺害した理由について、「顔を見られたから」と供述。「死刑になるのが怖かったので電話した」と話している。
電話をしてきた男は愛知県小牧市在住。残りの2人は30歳代で、うち1人が名古屋市東区在住、もう1人は住所不定。3人は携帯電話サイトで知り合ったと
供述しているという。
遺体は、道路わきの山林に捨てられ、上から土をかぶせたような状態であおむけで見つかった。上半身は土から露出、顔には粘着テープが張られていた。
遺体が見つかった現場は、中央自動車道瑞浪インターチェンジの南東約4キロ。女性が拉致されたとみられる名古屋市千種区からは、直線距離で40キロほど
離れている。
(2007年8月26日 読売新聞)
◆シーア派住民弾圧、イラク元国防相ら15被告の初公判
【カイロ=福島利之】イラク南部で1991年、フセイン政権に対して蜂起(ほうき)したイスラム教シーア派住民を弾圧したとして人道に対する罪に問われ
ているアリ・ハッサン・マジド元国防相ら15人の被告に対する初公判が21日、イラク高等法廷で開かれた。
旧フセイン政権の高官に対する裁判は、82年の中部ドゥジャイルの住民殺害と、イラン・イラク戦争中のクルド人虐殺に続き3件目。マジド被告ら3人は既
に、クルド人虐殺の裁判でジェノサイド(集団殺害)などの罪で死刑判決を受けている。
検察側は冒頭陳述で、イラク軍は、湾岸戦争終結直後の91年、イラク南部で蜂起したシーア派の住民数万人を組織的に殺害し、マジド元国防相らはその攻撃
を命令する立場にあったと指摘した。
「ケミカル・アリ」の異名を持つマジド元国防相は法廷で名前を問われると、「私は闘士のアリ・ハッサン・マジドだ」と答えた。
(2007年8月21日21時2分 読売新聞)
◆豊川の男児殺害 逆転有罪判決 身柄拘束 被告ぼう然
弁護側 「自白偏重」批判
無罪を言い渡した1審判決から一転、2審はわずか1歳10か月の村瀬翔ちゃんを連れ去り、海に投げ捨てて殺害するという残虐な犯行を厳しく断罪し
た。2002年に起きた「豊川幼児連れ去り殺害事件」で、元トラック運転手・田辺(旧姓・河瀬)雅樹被告(40)を逆転有罪とした6日の名古屋高裁判決。
判決前、読売新聞の取材に「無罪を確信している」と語った田辺被告は、判決が言い渡されると法廷で、落胆の色をにじませた。一方、父親の純さん(30)
は、一緒に傍聴した家族らとともに、大きく一つうなずいた。
田辺被告は、青色の半袖シャツ姿。ほとんど無表情で入廷した。しかし、前原捷一郎裁判長が、「1審判決を破棄する」と述べた瞬間、裁判官席の方を一瞬見
つめ、頭を前に傾けた。何度もまばたきをし、落ち着かない様子だった。
田辺被告は昨年1月、無罪判決を受けて釈放されたものの、妻とは離婚。妻の姓を名乗っていたため、名字は「河瀬」から、結婚前の「田辺」に変わった。
自分で見つけた電機部品製造会社に派遣社員として通いながら、控訴審公判に出廷。職場の同僚は事件のことを知らないといい、「裁判のために仕事を休む理
由を見つけるのが大変だった。早く、無罪が確定して、きちんとした正社員の仕事につきたい」と語っていた。
事件については、「物証も目撃証言もない。(逆転有罪の)不安はない」と自信を見せていたが、控訴審で行われた被告人質問では、検察側の追及に、しどろ
もどろになることも多かった。
今年2月の控訴審第6回公判では、検察側が、「逮捕後に面会に来た妻に対して、犯行を認めている」と指摘すると、初めは否定していたが、最後は事
実関係を認めた。「それでも犯人ではないというのですか」と畳みかけられ、長い沈黙のあと、「私は犯人ではないです」とつぶやく場面もあった。
判決言い渡し後、後藤昌弘弁護士は記者会見で、「自白さえあればクロでいいという恐ろしい前例を作ってしまった。疑わしきは被告人の利益にとい
う、刑事裁判の大原則を無視した判決だ」と、厳しく批判し、「警察の取り調べで、自白調書が作られれば、すべて有罪になってしまう」と述べた。
後藤弁護士によると、田辺被告は言い渡し直後に身柄を拘束されたが、ぼう然とした様子で、「家に荷物がある」と泣きそうな顔で話していたという。
父 「自ら罪を認めて」
一方、事件から5年。欠かさず公判を傍聴してきた純さんは、公判前、読売新聞の取材に対し、「僕が車に翔を残さなければ事件は起きなかった。傍聴
は、翔のためにできる、せめてもの償い」と語り、「傍聴していて、(田辺被告が)ウソを言っていると感じた。何もしていないならウソをつく必要はない。正
しい判決を翔に報告したい」と、この日の判決に期待を寄せていた。
判決言い渡し後、純さんは、「1審判決を覆すのは難しいと思っていただけにうれしい。このまま犯人が捕まらないかと不安になっていた」とほっとし
た様子を見せた。判決については、「非常に分析していて、田辺被告が犯人と確信できた。田辺被告には、自らの口で罪を認めてほしい」と話した。
自白調書 正反対の評価
◆解説◆
1、2審で、無罪と有罪に判断が分かれた原因は、自白調書の信用性を裁判所がどう評価したかに尽きる。
1審は、「捜査官による誘導」の可能性にまで言及して、自白の信用性を否定した。確かに調書では肝心な殺害方法で内容が変遷するなど、不可解な部
分があった。しかし、2審はこうした変遷を、「表面的なもの」ととらえた。「1審は自白の信用性を過小に評価した」とし、田辺被告の否認を、「罪から逃れ
るための場当たり的なもの」と断じた。
田辺被告は取り調べの早い段階で犯行を認め、その内容は詳細で具体的だった。その一方で、1980年代に死刑確定者の再審無罪事件が相次ぎ、最近
も婦女暴行容疑で有罪となった男性の冤罪(えんざい)が発覚するなど、自白偏重の捜査が冤罪をまねくという危険性は、長年指摘されている。無罪を言い渡し
た1審判決の背景には、自白偏重に対する司法側の危機感があったと見ることも出来る。
「自白調書が信用できるかできないか」。職業裁判官でさえ、判断は真っ二つに割れた。こうした難しい問題が、裁判の経験、知識に乏しい一般国民に
直接投げかけられたらどうなるのか。今回の判決は、裁判員制度において、検察側が、わかりやすく事件を立証する必要があることを、浮き彫りにしたといえ
る。(木下吏)
(2007年7月7日 読売新聞)
◆三重の連続強殺 被告の死刑確定へ
三重県内で1994年、男性2人を射殺し、奪った預金通帳で銀行から約1200万円を引き出したなどとして、強盗殺人などの罪に問われ、1、2審で死刑
判決を受けた同県松阪市、元会社役員、浜川邦彦被告(47)の上告審判決が5日、最高裁第1小法廷であった。
甲斐中辰夫裁判長は「犯行は計画的で、殺害方法も冷酷、残忍。遺族の処罰感情も極めて大きい」と述べ、浜川被告の上告を棄却した。浜川被告の死刑が確定
する。
(2007年7月6日 読売新聞)
◆「ケミカル・アリ」イラク元国防相らに死刑判決
【カイロ=福島利之】イラク高等法廷は24日、旧フセイン政権が1980年代後半、同国北部で化学兵器などを使いクルド人十数万人を殺害した「ア
ンファール作戦」を立案・指揮して「ケミカル・アリ」の異名で呼ばれ、ジェノサイド(集団殺害)などの罪に問われたアリ・ハッサン・マジド元国防相ら3被
告に求刑通り死刑を言い渡した。
ほかの2被告は終身刑、1被告は証拠不十分で無罪となった。
マジド被告はフセイン元大統領のいとこ。旧フセイン政権要人で死刑判決を受けたのは元大統領を含め7人となった。
テレビ映像によると、黒と白のカフィーヤ(ずきん)をかぶり法廷に姿を現したマジド被告は、表情を変えず判決に耳を傾けた。死刑判決を受けて法廷を出る
際、マジド被告は「神のお陰だ」とつぶやいた。
イラク高等法廷は2審制で、1審で死刑、または終身刑の判決が出た場合、上訴審が自動的に開かれる。
(2007年6月24日20時46分 読売新聞)
◆春日井の原田さんへカトリックの団体 アロイジオ賞贈る
弟殺された苦しみ乗り越え 精力的活動/犯罪被害者家族と加害者の和解
「カトリック名古屋教区正義と平和委員会」(竹谷基委員長)は、正義や平和に貢献した個人、団体などに贈る第2回「アロイジオ賞」に、犯罪被害者
の家族と加害者の和解を目指した活動を続けてきた春日井市藤山台、団体職員原田正治さん(60)を選び、23日、名古屋市北区金城の城北橋教会で表彰式を
行った。
同賞は長年、同教区長を務め、ホームレスの救援活動などに尽力した故相馬信夫さんの功績をたたえ、正義や平和に尽くした個人、団体を顕彰しようと
2006年に創設。賞の名は相馬さんの洗礼名にちなんだ。
原田さんは、保険金目的に原田さんの弟を殺した元死刑囚(2001年に死刑執行)と文通し、拘置所での面会をきっかけに、犯罪被害者と加害者との
和解を目指す活動を始め、「人間的和解のための殺人被害者遺族の会」日本支部を発足。自らの苦しみを乗り越えて、精力的な活動を続けてきたことが評価され
た。
原田さんは、「当たり前のことをしてきただけで、思いがけずに賞をいただきうれしいです。新団体もでき、ますます責任を感じています。犯罪被害者を助け
るため、これまで以上に頑張りたい」と喜んでいた。
尾張旭の団体には特別賞
また、母子家庭に乳牛を安価に供与する活動をしてきた尾張旭市の市民グループ「バングラデシュの人々を支える会」(横山紀子代表)にも、「アロイジオ賞
特別賞」が贈られた。
(2007年6月24日 読売新聞)
◆裁判員制度、規則決まる
2009年に始まる裁判員制度を前に、最高裁は13日、裁判官会議を開き、裁判員裁判の実施場所や裁判員の選任手続き、日当など、制度の細則を定めた
「裁判員規則」を制定した。7月上旬に公布され、来秋までに施行される。
裁判員裁判が行われるのは、全国50か所の地裁本庁に、八王子(東京)や堺(大阪)、小倉(福岡)など10支部を加えた計60か所。裁判員が裁判所に出
向く負担などを考慮し、支部にも拡大した。今後、専用法廷の整備や、裁判官の配置などの準備が進められる。
裁判員の選任手続きは、毎年10月ごろに始められる。翌年1年間で裁判員に選ばれる可能性がある候補者(全国で約36万人)を、選挙人名簿から抽
選で選ぶ。実際の事件で、候補者に呼び出し状を送るのは初公判の6週間前。呼び出し状には、審理にかかる日数が記載され、同封の質問票に書いた理由が認め
られれば、出頭が免除されることもある。
裁判員6人を選ぶ手続きが行われるのは初公判当日の午前中。選任手続きに来た候補者は全員、裁判長から直接、口頭で個別に質問を受ける。辞退したい理由
や、事件との関係の有無、重大事件であれば、死刑制度に対する考え方なども聞かれる見通しだ。
裁判員に支払われる日当は上限で1日1万円。選任手続きで裁判所に出頭したものの裁判員に選ばれなかった候補者にも、8000円を上限に日当が支
払われる。実際に支払われる額は、拘束時間に応じ裁判長が決定する。また、交通費のほか、宿泊が必要な場合は1泊8700〜7800円が支給される。
裁判員裁判は、死刑または無期の懲役・禁固にあたる罪などの重大事件が対象で、年間約3600件。裁判員や補充裁判員に選ばれるのは、年間約2万
9000人と見込まれている。
(2007年6月13日 読売新聞)
◆犯罪被害者と加害者 「対話」考える会発足
弟を殺害した元死刑囚と文通や面会を重ねてきた、愛知県春日井市の原田正治さん(60)が4日、「被害者と加害者との出会いを考える会」を設立した。
1983年に弟を殺人事件で失った原田さんは、当初、極刑を望んだものの、元死刑囚と面会してからは、生きて償ってほしいと考えるようになった。
死刑執行後は講演などで、犯罪被害者と加害者の対話が、被害者の立ち直りに役立つことなどを訴えてきた。考える会は、米国で両者の対面プログラムを実施し
ている被害者団体の連携団体として発足。原田さんは、「両者の距離を縮める方法を模索していきたい」と話した。
(2007年6月5日 読売新聞)
◆レバノン国軍と過激派の衝突続く、死者66人に
【カイロ=長谷川由紀】レバノン北部トリポリ近郊のパレスチナ難民キャンプ付近で20日に起きた国軍部隊とパレスチナ過激派組織「ファタハ・イスラム」
との戦闘は21日も続き、ロイター通信によると、死者はこれまでに計66人に達した。
国内衝突としては内戦(1975〜90年)終結後、最悪の規模。同国では、ハリリ元首相暗殺(2005年2月)事件を裁く国際法廷設置などを巡
り、シニオラ首相ら反シリア勢力と、イスラム教シーア派組織ヒズボラなど親シリア勢力の対立が先鋭化しており、今回の衝突が国内情勢の一層の不安定化を招
く恐れも出ている。
ロイター通信によると、20日の戦闘では、国軍兵士27人、ファタハ・イスラム要員15人、民間人15人が死亡。国軍は21日、ファタハ・イスラ
ムの拠点であるナハル・バリド難民キャンプを戦車などで包囲、武装要員との間で戦闘が続いている。国軍の砲撃で同日、民家などが被弾し、パレスチナ難民9
人が死亡、衝突による被害が拡大している。
ファタハ・イスラムは、80年代にパレスチナ解放機構(PLO)から独立した「ファタハ・インティファーダ」(拠点・シリア)から分派した組織。
要員は数百人程度とされる。指導者のシャキル・アブシ容疑者は、「イラクの聖戦アル・カーイダ組織」のヨルダン人指導者、アブムサブ・ザルカウィ容疑者
(米軍の攻撃で06年6月に死亡)とのつながりが深く、2人は米外交官殺害容疑でヨルダンの裁判所から被告不在のまま、死刑判決を受けている。
シニオラ政権など反シリア勢力は、ファタハ・イスラムとシリアのつながりを指摘。国内に混乱をもたらし、シリアの関与が疑われるハリリ元首相暗殺を裁く
国際法廷設置を妨害しようとの狙いがあると見ている。
しかし、地元LBCテレビによると、死亡した要員には、イエメン人などアラブ人や、バングラデシュ人が含まれている。レバノン治安当局の立ち入り
が制限されている難民キャンプを隠れみのに、アル・カーイダ系など外国要員が浸透している実態を浮き彫りにした。衝突を受けて、レバノン、シリアなどで活
動するイスラム過激派組織ジュンド・シャム(レバントの兵士)も、レバノン南部の難民キャンプで国軍の攻撃に対する備えを固めているとされ、他の難民キャ
ンプなどを舞台に衝突が拡大することへの懸念が強まっている。
(2007年5月21日22時30分 読売新聞)
◆「ケミカル・アリ」らイラク旧政権要人5人に死刑求刑
バグダッドからの情報によると、1980年代後半にイラク北部のクルド人を化学兵器などで殺害した「アンファール作戦」を実行、ジェノサイド(集団殺
害)などの罪に問われた旧フセイン政権要人に対する裁判で、検察側は2日、フセイン元大統領のいとこで、「ケミカル・アリ」の異名を取ったアリ・ハッサ
ン・マジド元国防相ら5被告に死刑を求刑した。(カイロ支局)
(2007年4月3日0時19分 読売新聞)
◆イラクでラマダン元副大統領の絞首刑執行
【カイロ=柳沢亨之】イラクからの報道によると、昨年末に処刑されたサダム・フセイン元同国大統領と同様、1982年に同国中部ドゥジャイル村民
148人を殺害した「人道に対する罪」で死刑が確定していた元副大統領のタハ・ヤシン・ラマダン死刑囚が20日未明、絞首刑を執行された。
ドゥジャイル村事件で処刑された旧フセイン政権幹部は、元大統領、今年1月のバルザン・イブラヒム元情報機関長官、アワド・バンダル元革命裁判所長に続
き、4人目。20日は、旧政権崩壊を招いたイラク戦争開戦から、ちょうど4年にあたる。
ラマダン元副大統領に対しては、昨年11月のイラク高等法廷の一審がいったんは終身刑判決を言い渡したが、翌12月、上訴審が差し戻しを決定。今年2月
の差し戻し審は死刑判決を下し、2度目の上訴審も今月15日、これを支持したため、死刑が確定していた。
(2007年3月20日14時0分 読売新聞)
◆フセイン裁判の裁判長、英へ亡命申請…暗殺恐れて
【カイロ=柳沢亨之】中東の衛星テレビ、アル・ジャジーラは9日、イラクのフセイン元大統領に昨年11月、死刑判決を下した同国高等法廷のラウフ・アブ
デルラフマン裁判長が今月、滞在先の英国で英政府に亡命を申請したと伝えた。
裁判長本人と家族の暗殺を恐れているためで、英政府は現在、申請の諾否を検討しているという。
クルド人の同裁判長は、元大統領や弁護人への退廷命令を連発する強硬姿勢で知られ、旧フセイン政権の支配層だったイスラム教スンニ派などの強い反発を招
いていた。元大統領は昨年12月末、死刑を執行された。
(2007年3月10日11時42分 読売新聞)
◆2女性殺害・切断に死刑 岐阜地裁
交際相手の女性2人を殺害し、遺体をバラバラにして岐阜県柳津町(現・岐阜市)の境川などに遺棄したとして、殺人と死体損壊、死体遺棄の罪に問われた三
重県桑名市下深谷部、無職兼岩幸男被告(49)の判決が23日、岐阜地裁であった。
兼岩被告は、殺害された2人のうち1人は「自殺だった」と主張していたが、土屋哲夫裁判長は「短絡的、自己中心的で身勝手な犯行で、情状酌量の余地はな
い」として2人の殺人を認定し、求刑通り死刑を言い渡した。弁護側は量刑不当で控訴する方針。
判決によると、兼岩被告は2003年5月、愛知県一宮市のアパートで、交際していた清掃管理会社役員村井栄子さん(当時49歳)を絞殺し、切断した遺体
をポリ袋に入れて境川などに遺棄。遺体は岐阜県羽島市の長良川で見つかった。
1999年8月には愛知県蟹江町のアパートで、交際相手のパート事務員渡辺愛子さん(当時43歳)を絞殺し、同県小牧市の焼却炉に捨てた。渡辺さんにつ
いての死体損壊罪、死体遺棄罪は公訴時効が成立している。
(2007年2月24日 読売新聞)
◆松本死刑囚の弁護士、東京高裁が37年ぶり懲戒請求へ
オウム真理教の松本智津夫死刑囚(51)の控訴審で弁護人を務めた弁護士2人について、日本弁護士連合会(日弁連)が処分しないと決定したことを受け、
処分を求めていた東京高裁は15日、両弁護士の所属弁護士会に改めて懲戒請求を行う方針を明らかにした。
日弁連は両弁護士の弁護活動について調査をしないまま、「門前払い」の形で決定を出したが、懲戒請求を受けた所属弁護士会は事案の調査を行わなければな
らない。
最高裁によると、裁判所による懲戒請求は過去4件しかなく、今回行われれば、1970年以来37年ぶりになる。
同高裁が処分を求めていたのは、松下明夫(仙台弁護士会)と松井武(第2東京弁護士会)の両弁護士。
両弁護士は松本死刑囚の控訴審で、当初2005年1月11日だった控訴趣意書の提出期限の延長を申し立て、同年8月31日まで延長が認められたに
もかかわらず、期限までに趣意書を提出しなかった。この結果、同高裁は昨年3月に控訴棄却を決定。最高裁もこれを支持し、昨年9月15日に松本死刑囚の刑
が確定した。
同高裁は同月25日、両弁護士の弁護活動が悪質な審理妨害に当たるとして、日弁連に懲戒処分などの措置をとるよう求める「処置請求」を行った。
これに対し、15日の日弁連決定は、「処置請求の目的は審理中の訴訟手続きの障害を取り除くことにある」と指摘した上で、「裁判が終了した後に処
置請求は出来ない」として、両弁護士が審理を妨害したかどうかを調査しないまま、不処分の結論を下した。調査委員長を務めた柳瀬康治弁護士は東京・霞が関
の弁護士会館で記者会見し、「(弁護活動の)中身について議論すべきという意見はあったが、不適法な請求に対し、調査を継続することはできない」と述べ
た。
また、松下、松井両弁護士も同日夜、東京・霞が関で記者会見し、松井弁護士は「決定については素直に喜びたい。(処置請求は)裁判所が弁護活動を委縮さ
せることを狙っているとしか思えない」などと話した。
この決定について、東京高裁の山名学事務局長は、「日弁連は、形式的な理由で両弁護人の弁護活動の当否についての判断を回避した。弁護士倫理の強
化が求められているのに、今回の判断は、こうした要請を無視するもので、極めて遺憾だ」と厳しく批判。「両弁護人の行動が許されないものであることを明確
にする」として、弁護士会の自主的な判断を促す「処置請求」ではなく、直接、所属弁護士会に懲戒処分を求める「懲戒請求」に踏み切る方針を明らかにした。
一方、事件の被害者らからも、日弁連の決定に批判の声が相次いだ。
地下鉄サリン事件の被害対策弁護団事務局長の中村裕二弁護士(50)は、「日弁連が身内の弁護士をかばったと国民から誤解され、法律家に対する不
信を招きかねない」と批判。同事件で夫を殺害された高橋シズエさん(59)は、「弁護士会の自浄作用には期待していなかったので、仲間の弁護士を処分しな
いと判断しても不思議ではない」と語った。
(2007年2月16日2時8分 読売新聞)
◆死刑廃止願う、最後の銃殺執行人…20年で55人処刑、精神的負担に
〜タイ発
タイで1984年から約20年にわたり死刑囚55人を処刑した「最後の銃殺刑執行人」が英文で回顧本を出版した。淡々とした筆致で処刑の様子や執行人と
しての胸の内をつづった内容で、根底にあるのは死刑廃止への強い願いだ。
「処刑も殺人。人としての罪だ。死刑の問題を多くの人に考えてもらいたい」
話題の本「最後の執行人」(マーベリックハウス社、本社・アイルランド)を書いたチャワレ・ジャルボンさん(58)は出版の動機を語る。バンコク
の北20キロほどのノンタブリ県にある重罪受刑者ばかり約4500人を収容するバンクワン刑務所で、今は外国使節担当官を務める。
タイで銃殺刑は1935年、斬首(ざんしゅ)刑に代わって導入、2003年に薬殺刑に切り替わるまで約70年間続いた。チャワレさんは約15年間の執行
補佐時代と合わせ銃殺刑の歴史の半分にかかわり、最後の銃殺刑執行人となった。
タイ唯一の処刑場は同刑務所内。銃殺はドイツ製短機関銃HK―MP5を使用。目隠しの死刑囚を十字架に対面させて、両手、両足、胴をつなぎ留め、背後か
ら撃つ。「死刑囚が体をひねるようなことがあれば弾は急所をそれる。即死できず、うめき声が漏れる」
処刑前は死刑囚の個人情報に触れないように努めた。「冷静沈着に執行されるべきだ。私情が入る余地があってはならない」。ただ、執行後は、自分の
仕事を妻と3人の子供に説明するためにも事件の記録を読んだ。国家が命じる殺人を実行する人間の精神的負担は大きい。チャワレさんには家族の理解が必要
だった。
心に残るのは99年11月24日に処刑した女性死刑囚。バンコクのスラム出身でヘロイン密売のボス。密売に手を染めたのは3人の子供の教育費確保
が理由だった。処刑直前には、「麻薬に近づかないで。私は悪い見本。稼ぎは裁判費用で消えた。割に合わない」と、後悔の言葉であふれた手紙を子供に残し
た。
最後の銃殺刑は02年12月11日。「前年、薬殺刑への切り替え方針が決まっていた。銃殺はもはやあるまいと思っていたので執行命令を受けた時、落ち込
んだ」と振り返る。
薬殺執行人には同情している。「死刑囚の苦痛は緩和されるかも知れないが、執行人にとって殺人という点で銃殺刑と変わらない」
「将来の死刑廃止」を願いつつ、自分にできることは犯罪防止のための啓発だと考えている。タイ語の本も2冊出した。講演もする。「犯罪が割に合わないこ
とを知ってもらいたい」
これがチャワレさんのメッセージだ。
(バンコク 鶴原徹也)
(2007年2月16日 読売新聞)
◆松本死刑囚の弁護人、日弁連は処分せず
オウム真理教の松本智津夫死刑囚(51)の控訴審の主任弁護人を務めた松下明夫弁護士(仙台弁護士会)と松井武弁護士(第2東京弁護士会)につい
て、東京高裁が日本弁護士連合会に処分を求める「処置請求」を行っていた問題で、日弁連は、両弁護士を処分しないとする決定をしたことがわかった。
両弁護士は、松本死刑囚の控訴審で、当初2005年1月11日だった控訴趣意書の提出期限の延長を申し立て、同年8月31日まで延長を認められたにもか
かわらず、期限最終日に持参した控訴趣意書を提出せずに持ち帰った。
この結果、同高裁は昨年3月に控訴棄却を決定。最高裁への特別抗告も認められず、昨年9月15日に松本死刑囚の刑が確定した。
(2007年2月15日14時48分 読売新聞)
◆イラク高等法廷、元副大統領に死刑判決
【カイロ=長谷川由紀】イラク高等法廷は12日、同国中部ドゥジャイル村のイスラム教シーア派住民148人を殺害したとして、人道に対する罪に問われて
いた元副大統領タハ・ヤシン・ラマダン被告に対する差し戻し審で、絞首刑による死刑判決を下した。
ラマダン被告は、2006年11月に1審で終身刑判決を受けたが、同年12月の上訴審判決は、「刑が軽すぎる」として審理を差し戻しており、今回の判決
で死刑が確定する可能性が高いとみられている。
この事件では、元大統領サダム・フセインと、異父弟で元情報機関トップのバルザン・イブラヒム、元革命裁判所長アワド・バンダルの両死刑囚の死刑が確定
し、3人に対する絞首刑が既に執行されている。
(2007年2月13日20時58分 読売新聞)
◆倫理考える余裕はない
約15年前からアジアの臓器移植の実態調査を行っている岡山大大学院教授の粟屋(あわや)剛(つよし)さん(56)(生命倫理)は、腎臓移植が必要な患
者を中国本土の病院へ送っていた香港大・腎臓内科教授(当時)の言葉が忘れられない。
「(中国での移植は死刑囚から摘出した臓器が使われているが)死刑囚はどうせ死んで、臓器は捨てられる。しかし、その臓器で助かる患者がいる。患者の命
を救うのは医師の責任だ。絶望的な患者を目の前にすれば、倫理を持ち出す余裕はない」
粟屋さんは1995年7月、当時は闇に包まれていた中国の移植医療の実態を詳細に聞き出し、死刑囚の臓器が使われていることを公表。98年には、米国連
邦議会の下院公聴会で証言し、大きな反響を呼んだ。
粟屋さんによると、中国の死刑囚は白血球の型(HLA)や健康状態などの検査を受ける。HLAが臓器移植を望む患者と死刑囚が一致するなどした場合、死
刑囚の臓器が移植に使われることがあるという。
それを裏付けるように、90年代半ばに中国で腎臓移植を受けた50歳代の男性は「執刀医から『死刑が執行された25歳の男性から摘出した臓器を移植し
た』と聞かされた」と話す。
死刑囚から臓器提供への自発的な同意が得られているかは不明だ。
倫理的な問題はほかにもある。臓器売買だ。粟屋さんは93〜94年に3度、インドを訪れて調査した。
多くの腎臓提供者が住んでいて「腎臓村」と呼ばれるビリバッカム村で、腎臓を売った55人に聞き取り調査した。最年少は14歳で最高齢は48歳。女性が
6割を占める。臓器購入者は55%が外国人だった。
村民の月収が5000円(当時)以下なのに対し、腎臓を売って得た金額は2万4000〜11万円だった。
粟屋さんは「臓器を必要とする人と、売りたい人がいれば、倫理的に問題があろうと臓器は売買されてしまう。人体の商品化の流れは止まらない」と話す。
国際移植学会や日本移植学会は、死刑囚からの臓器提供や臓器売買による移植に反対している。
海外の移植事情に詳しい東京歯科大角膜センター長の篠崎尚史(なおし)さんは「他国を非難するより、日本の移植医療を進める努力をすべきだ。命がけで、
これらの国に渡る患者を責めるべきではない」と強調する。
臓器移植法施行から今年で10年を迎えるが、脳死での臓器提供者はわずか50人。法律の改正を含め真剣に見直しを検討する時が来た。(坂上博)
(次は「皮膚の専門看護」です)
移植希望数と実施数 脳死移植を仲介する日本臓器移植ネットワークに登録した移植希望者は今年1月末現在、腎臓が1万1915人、肝臓が140人。一
方、脳死移植を受けることができたのは10年で腎臓が57人、肝臓が35人に過ぎない。
(2007年2月2日 読売新聞)
◆3人殺害 3被告 死刑判決確定へ
最高裁が上告棄却
フィリピンのマニラ市や長野県内で1994年から96年にかけ、保険金目的などで男性3人を相次いで殺害したなどとして殺人などの罪に問われ、
1、2審で死刑判決を受けた、いずれも住所不定、無職の松本昭弘(52)、双子の弟の和弘(52)、下浦栄一(35)の3被告の上告審判決が30日、最高
裁第3小法廷であった。
上田豊三裁判長は「保険金目的で用意周到に計画した上で敢行しており、犯行態様も冷酷、非情」と述べ、3被告の上告を棄却した。3人の死刑が確定する。
判決などによると、3被告は94年12月、宮崎県清武町の元保険外交員、東榎田加代子受刑者(57)(無期懲役が確定)らと共謀し、マニラ市内の
ホテルで東榎田受刑者の前夫(当時43歳)を、保険金目当てに窒息させて殺害。95年6月には、知人の男性(同47歳)を3000万円の海外旅行傷害保険
に加入させ、同市内で殺害した。
さらに、昭弘、下浦両被告は96年5月、旅行会社の愛知県一宮市(旧尾西市)の男性社員(同24歳)を拉致してクレジットカードを奪い、長野県内で頭に
石を投げつけるなどして殺害した。
(2007年1月31日 読売新聞)
◆フセイン元大統領の処刑初報道、北朝鮮が米を非難
【ソウル=中村勇一郎】朝鮮中央通信によると、17日付の北朝鮮の内閣機関紙「民主朝鮮」は、サダム・フセイン元イラク大統領の死刑執行について分析記
事を掲載し、米国のイラク政策を非難した。
北朝鮮で元大統領の死刑が報道されるのは初めて。
金正日総書記による独裁国家の北朝鮮にとって、フセイン元大統領の死刑執行は他人事ではなく、成り行きを注視していたものとみられる。
記事は「どうしてサダム処刑を急いだのか」と題し、<1>米国はイラン―イラク戦争時にイラクに提供した情報や兵器の極秘内容が裁判で公開されることを
恐れた<2>米政権はイラク政策失敗の責任をフセイン元大統領に負わせた――との説があると指摘。
「米国は処刑を通じて何かを得ようとしたが、事態は逆に米国にとって不利になっている」などと米国を批判した。
(2007年1月17日19時3分 読売新聞)
◆バグダッドで爆弾テロ4件、90人以上が死亡
【カイロ=岡本道郎】イラクの首都バグダッドで16日、爆弾テロ4件が発生、少なくとも計90人が死亡した。
昨年末のフセイン元大統領に対する死刑執行後、爆弾テロによる1日の犠牲者数としては最悪となった。15日には、元大統領異父弟ら旧政権幹部2人の絞首
刑も執行され、スンニ派武装勢力が報復行動を強める可能性が指摘されるなど、治安が一段と悪化する懸念が出ている。
AP通信によると、16日午後、市東部にある名門ムスタンシリヤ大学の正門付近で、自動車爆弾が爆発し、帰宅途中の学生や職員ら少なくとも65人
が死亡、138人が負傷した。また、同通信によると、市中心部にある市場近くで自動車爆弾が爆発、少なくとも15人が死亡、74人が負傷した。
ロイター通信によれば、このほか市内2か所で爆弾がさく裂し、合わせて10人が死亡した。
(2007年1月17日1時51分 読売新聞)
◆イラクでの死刑執行、国連やEUなどが批判
【ジュネーブ=渡辺覚】イラク政府が、サダム・フセイン元大統領の異父弟で元情報機関トップのバルザン・イブラヒム、元革命裁判所長のアワド・バ
ンダル両死刑囚に刑を執行したことに対し、国連人権高等弁務官事務所のルイーズ・アーバー高等弁務官は15日、イラク高等法廷での審理の公正さに疑問を呈
し、「上訴に関する規定などを十分に備えない今回の死刑執行は、生きる権利の重大な侵害だ」と批判した。
また、欧州連合(EU)欧州委員会のバローゾ委員長は、訪問先のローマで15日、「我々は死刑に反対だ。何人も他者の生命を奪う権利はない」と語り、プ
ローディ伊首相も、「我々の立場は、フセイン元大統領の処刑と同じだ。イタリアは死刑に反対する」と述べた。
一方、英外務省の報道官はAFP通信に対し、「最終的に、主権国家によってなされた決断だ」との声明を発表した。
(2007年1月16日19時40分 読売新聞)
◆フセイン元大統領らの処刑、米国務長官が失望感を表明
【カイロ=長谷川由紀】エジプト訪問中のライス米国務長官は15日、イラクのサダム・フセイン元大統領と、元大統領の異父弟で元情報機関トップの
バルザン・イブラヒム、元革命裁判所長アワド・バンダルの両死刑囚に対して行われた処刑について「(死刑囚に)尊厳が与えられなかったことに失望した」と
述べ、処刑のあり方に疑問を呈した。
エジプト南部ルクソールで行われたアブルゲイト外相との共同記者会見で語った。
ライス長官は、3人の死刑執行が「イラクの法と手続きにのっとった判断」と指摘しながらも、「尊厳ある対応がなされるべきだった」と述べた。
昨年12月30日に行われた元大統領の処刑では、処刑の直前に元大統領が執行人らに罵声を浴びせられる映像が流出し、イラク当局の対応に内外の批判が高
まっていた。
(2007年1月16日10時43分 読売新聞)
◆フセイン元大統領の異父弟ら処刑、新たな抗争懸念
【カイロ=柳沢亨之】イラク政府が15日、フセイン元大統領の異父弟で元情報機関トップのバルザン・イブラヒム、元革命裁判所長のアワド・バンダル両死
刑囚の絞首刑執行に踏み切ったのは、自らの権威を内外に印象付け、政権安定を図るためと見られる。
元大統領の処刑を機に、イスラム教スンニ派はシーア派主導のマリキ政権に不信を一層強めているだけに、宗派抗争の新たな火種になる懸念も出ている。
処刑は元大統領と同じバグダッドの元情報機関本部で執行された。イラク政府が同日、記者団に公開した処刑の模様を撮影したビデオ映像によると、両
死刑囚は、元大統領のコート姿と異なり、オレンジ色のつなぎ服姿で、フードをかぶせられ、同じ絞首台に並んで処刑された。2人の遺体は15日中にも元大統
領の墓がある故郷の中部オウジャ村に埋葬される見通し。
同国政府によると、元大統領らを裁く高等法廷設置法で、死刑は判決確定から30日以内に執行されなければならないと規定されており、フセイン裁判
の全3死刑囚の刑は昨年12月26日に確定していた。ライエス首相顧問によると、マリキ首相は元大統領処刑を前に両死刑囚の刑執行を認める文書にも署名し
ていた。
元大統領の処刑でイラク政府は、イスラム教の祝祭「犠牲祭」の初日に刑を執行した上、執行人による罵倒(ばとう)を黙認したため、スンニ派や国際
社会から非難された。このため、今回の両死刑囚については、刑執行の方法やタイミングを慎重に検討、内外の反発をはねのけようとした。
首相報道官によると、政府は今回、執行人らに、違法行為をしない旨の誓約書への署名を要求。報道官は15日の記者会見で「罵倒はなかった」と胸を張っ
た。
マリキ政権には、外的影響から独立した政府としての権威を印象付ける狙いもあったと見られる。タラバニ大統領は米国が敵視するシリアを初訪問し、
関係強化を模索。米軍がクルド人自治区でイラン人5人を拘束した事件でも、マリキ政権は釈放を求め、「米国離れ」を強めている。
ただ、処刑が政権浮揚につながると見る向きは少ない。首相報道官が15日、「バルザン死刑囚の頭部が処刑時の衝撃で切断された」と発表すると、ス
ンニ派の一部は「処刑後に(故意に)切断された可能性がある」と猛反発した。遺体損壊というイスラム教の禁忌を犯したのではないかという疑いからくる怒り
だ。シーア派は「バルザンの罪に対する神の裁き」(首相顧問)などと反論しており、対立感情が高まっている。
(2007年1月16日1時47分 読売新聞)
◆フセイン元大統領異父弟ら2人に絞首刑執行
【カイロ=柳沢亨之】AP通信によると、12月30日に処刑されたサダム・フセイン元イラク大統領と並び、1982年に同国中部ドゥジャイル村民
148人を殺害した「人道に対する罪」で死刑が確定していた元大統領の異父弟で元情報機関トップのバルザン・イブラヒム、元革命裁判所長のアワド・バンダ
ル両死刑囚が15日未明、絞首刑を執行された。
(2007年1月15日13時54分 読売新聞)
◆フセイン元大統領「礼賛」、アラブの官民に広がる
【カイロ=柳沢亨之】昨年12月30日にバグダッドで死刑が執行されたサダム・フセイン元イラク大統領に対する賛美や処刑非難の動きが、アラブ諸国の官
民双方の間で広がっている。
「反イスラエル」を最後まで叫んだ元大統領へのアラブ大衆の共感と、政変が自分たちにおよぶのを防ぎたい政権側の思惑が、図らずも一致した形だ。
「言葉を失った。死刑判決……。連中が書いた脚本通りだ。処刑が始まる」――。アラブ世界で絶大な人気を誇るエジプトのポップ歌手、シャアバン・アブド
ルラヒム氏(50)が元大統領処刑を非難して、近く発表する歌の一節だ。
地元報道によれば、アブドルラヒム氏は、イスラム教の祝祭「犠牲祭」初日の死刑執行に衝撃を受け、曲作りに励んだという。同氏は大衆の鬱屈(うっくつ)
した反米・反イスラエル感情に訴えた歌風で知られる。
エジプトやヨルダンでは、民主化を求めているはずの野党勢力が処刑への抗議デモを行い、アラブ有数の独裁者だった元大統領の肖像を掲げ、英雄扱いしてい
る。カタール紙も、論説記事の中で「サダムは勇敢に絞首台に向かい、米、イスラエル両国に挑んだ」などと称賛した。
一方、各国の政権側にも「フセイン礼賛」の動きが出ている。
カダフィ大佐率いるリビア政府は今月4日、絞首台へ向かう元大統領の「彫像建設計画」を明らかにした。同じく絞首刑に処されたリビア反植民地闘争指導者
の彫像の隣に置かれる予定という。
アルジェリアの政権与党は、「民族と統一パレスチナ、イラクの主権を信じたアラブ指導者を暗殺した」と処刑を非難する声明を発表した。
こうした動きの背景には、米国やイスラエルの域内介入を防げないアラブ指導者に対する大衆の「無力感」(エジプト政治評論家)がある。
また、各国の指導者側にとっても、既存の政権が崩壊すれば「サダム後のイラクのような混乱が起きると(米国に)警告する狙い」(同)を込めているとみら
れる。
(2007年1月13日18時50分 読売新聞)
◆日英首脳、北への国際圧力強化で一致
【ロンドン=林博英】欧州訪問中の安倍首相は9日午後(日本時間10日未明)、ロンドンの首相官邸で、ブレア首相と約1時間10分会談した。両首脳は北
朝鮮の核、ミサイル、拉致問題解決へ向け、北朝鮮に対し国際的圧力を強めていくことが必要との認識で一致した。
安倍首相の就任後、日英首脳会談は初めて。安倍首相は北朝鮮問題について、「拉致問題は極めて重要な問題だ。核、ミサイル問題は不拡散体制への重
大な挑戦として、国際社会が一致団結して取り組む必要がある」と指摘し、英国の協力を求めた。ブレア首相は「日本の立場を完全に支持し、協力したい」と応
じた。
また、安倍首相が欧州連合(EU)の対中武器禁輸措置の解除が「東アジアの安全保障に影響を及ぼし得る」として反対する考えを伝えたのに対し、ブレア首
相も、「中国の動きには注意が必要だ」と述べた。イランの核問題についても両首脳は「深刻な懸念」を表明した。
一方、会談後の共同記者会見でブレア首相はイラクのサダム・フセイン元大統領の死刑執行について、「死刑のやり方は完全に間違っていた」と述べた。安倍
首相は直接の言及を避けた。
(2007年1月10日13時46分 読売新聞)
◆英メディアの関心は死刑問題に集中…日英首脳会見
【ロンドン=森千春】安倍首相とブレア英首相が9日の会談後に行った共同記者会見で、英側マスコミからサダム・フセイン元イラク大統領の死刑執行に関連
した質問が相次いだ。
元大統領が罵声(ばせい)を浴びながら処刑された映像が世界中に与えた衝撃が、日英首脳の初顔合わせにも影を落とした形だ。
これまで元大統領の死刑執行について発言していなかったブレア首相は、「フセイン元大統領に対する死刑のやり方は、完全に間違っていたが、だからといっ
て、元大統領がイラク国民に対して行った犯罪を忘れてはならない」と答えた。
安倍首相に対しても、スカイテレビの記者が、日本で昨年末に死刑囚4人に死刑が執行されたことを指摘して、「21世紀に死刑があってもよいのか」
と質問。首相は、「日本では、きわめて厳重な審査のうえで、死刑を執行する。それぞれの国がそれぞれの制度で、犯罪を抑止している」と述べ、日本の制度へ
の理解を求めた。
(2007年1月10日11時49分 読売新聞)
◆フセイン元大統領の死刑執行、英首相が批判
【ロンドン=森千春】英首相府報道官は7日、「ブレア首相は、サダム・フセイン元イラク大統領の死刑執行のやり方が完全に間違っていた、と考えている」
と語った。
元大統領が罵声(ばせい)を浴びつつ処刑される様子を隠し撮りした映像が流れ反発を呼んだことを受けて、態度を表明したものだ。
ブレア首相は、死刑執行時には米フロリダ州マイアミで休暇をとっており、帰国後も、死刑執行について沈黙していたため、英国内では疑問の声が高
まっていた。7日朝には、首相後継として最有力視されているブラウン財務相がBBCテレビ番組で、執行の様子は、「全く受け入れがたい」と明確に批判し、
イラク当局は「教訓を得るべきだ」との見解を示した。プレスコット副首相やジョンソン教育相ら与党有力者からも、批判が相次いでいた。
首相は今週中にも、死刑執行について自ら発言すると見られていたが、批判の高まりで、早めの立場表明を迫られた形だ。
元大統領の死刑について、英国政府は執行直後、死刑制度への原則的反対を確認しつつ、主権国家であるイラクの決定として理解を示していた。
(2007年1月8日1時7分 読売新聞)
◆フセイン政権要人の死刑、見合わせ要求…国連事務総長
【ニューヨーク=白川義和】国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は6日、声明を発表し、イラク政府にフセイン政権時代の要人の死刑執行を見合わせるよ
う「強く要請」した。
潘事務総長は先に、フセイン元イラク大統領の死刑執行について、「各国が決めるべき問題」と発言。死刑制度に反対する国連の原則的立場の変更と受け取ら
れ、波紋を広げていただけに、自ら軌道修正を行ったものとみられる。
声明によると、ナンビアール官房長は同日、イラク国連代表部あてに書簡を送り、「国際社会のすべてのメンバーは国際的な人道法、人権法をあらゆる面で尊
重すべき」とする潘事務総長の見解を伝えた。
(2007年1月7日21時15分 読売新聞)
◆マリキ首相、元大統領死刑執行への批判に反論
【カイロ=岡本道郎】イラクのマリキ首相は6日、国軍設立記念日の演説で、昨年末のフセイン元大統領の死刑執行に対し、国際的な批判が出ているこ
とについて、「イラクの内政問題だ」として真っ向から反論するとともに、「イラク国民の意思を尊重しない国とは、関係を見直さなければならないかもしれな
い」と述べ、死刑執行を批判した国との国家関係の見直しもあり得ることを示唆した。
元大統領の死刑執行をめぐっては、独裁者に対する宗派的報復を優先したなどとの批判やイスラム教の犠牲祭に実施した時期のまずさを指摘する声が内外から
出ているが、首相発言はこうした批判に初めて公式に反論したものだ。
(2007年1月6日21時23分 読売新聞)
◆犯罪被害者の裁判参加、68%が肯定…読売世論調査
読売新聞社の全国世論調査(昨年12月9、10日実施、面接方式)で、犯罪の被害者やその家族が、裁判に参加して被告人に直接、質問ができるようにすべ
きだと考えている人が「どちらかといえば」を含めて68%に上った。
「そうは思わない」は計26%だった。現在、法制審議会(法相の諮問機関)が犯罪被害者や遺族の「訴訟参加」の是非を検討しており、近く結論を出す予定
だ。
無期懲役の受刑者は、服役から10年がたつと仮釈放が認められるようになるため、仮釈放を認めない「終身刑」を新たに作るべきかについては、「そう思
う」が「どちらかといえば」を含め82%に達した。「そうは思わない」は計12%だった。
死刑制度存続の是非では、「存続すべきだ」(「どちらかといえば」を含む)が計80%に上り、前回の1998年調査より8ポイント増えた。「廃止すべき
だ」は計15%で、同9ポイント減った。凶悪事件が依然後を絶たないためと見られる。
(2007年1月5日19時26分 読売新聞)
◆弁護団が特別抗告 ――毒ぶどう酒事件
高裁決定 厳しく批判
三重県名張市で1961年、女性5人が農薬入りのぶどう酒を飲まされて毒殺され、12人が中毒になった「名張毒ぶどう酒事件」で、奥西勝死刑囚
(80)(名古屋拘置所在監)の弁護団は4日、名古屋高裁が昨年12月26日に再審開始決定を取り消したことを不服とし、最高裁に特別抗告した。
弁護団は154ページに及ぶ特別抗告申立書を提出し、その中で再審開始決定を取り消した同高裁の決定について、「請求人(奥西死刑囚)側に無罪の
証明責任まで負わせるような判断だ」と厳しく批判した。さらに、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則が、再審にも適用されるとした最高裁の
「白鳥決定」に反している、などと主張している。
また、「妻の犯行を目撃したとウソの供述をしたことから、請求人を犯人と決めつけ、その心証から結論を決めている。再審請求を退けた過去の最高裁決定に
引きずられ、その結論を維持することに固執している」とも指摘している。
この日午後3時から会見した鈴木泉弁護団長は、「決定書を読み返したが、毒物の鑑定など、弁護側の科学的証拠を裁判官の心証によって否定してい
る」と厳しい口調で決定を非難。さらに、「素人の誤った直観的判断。『愚か者のごうまん』としか言いようがない」と語気を強めた。
そして、「最高裁で、この決定を覆すことは可能だ。最高裁には、事実と科学に忠実であってほしい」と話を締めくくった。弁護団は追って、申し立ての理由
補充書を提出する方針。
一方、同日、奥西死刑囚と面会した特別面会人の稲生昌三さん(67)によると、奥西死刑囚は気落ちした様子は見せず、弁護団と支援者への感謝の気持ちを
述べたうえで、「より一層の支援をよろしく頼みたい」と話したという。
(2007年1月5日 読売新聞)
◆フセイン処刑、イラク当局の対応に不快感…米軍報道官
【ワシントン=貞広貴志】イラクからの報道によると、イラク駐留米軍のコールドウェル報道官は3日の記者会見で、フセイン元大統領の死刑の執行に
ついて「米国が物理的に(刑執行を)担当していたなら、別のやり方をしていただろう」と述べ、米軍から身柄を引き受けた直後に処刑したイラク当局の対応に
不快感を示した。
国務省のマコーマック報道官も3日の定例会見で、米当局者が刑執行前にマリキ首相などに対し、「(処刑の)手続きと時期について問題提起していた」こと
を確認、イスラム教の祝日に処刑することでスンニ派の抗議を招いた事態に遺憾の意を表明した。
(2007年1月4日19時43分 読売新聞
◆米、フセイン元大統領の性急な死刑執行に不快感
【ワシントン=貞広貴志】イラクからの報道によると、イラク駐留米軍のコールドウェル報道官は3日の記者会見で、フセイン元大統領の死刑の執行に
ついて「米国が物理的に(刑執行を)担当していたなら、別のやり方をしていただろう」と述べ、米軍から身柄を引き受けた直後に処刑したイラク当局の対応に
不快感を示した。
国務省のマコーマック報道官も3日の定例会見で、米当局者が刑執行前にマリキ首相などに対し、「(処刑の)手続きと時期について問題提起していた」こと
を確認、イスラム教の祝日に処刑することでスンニ派の抗議を招いた事態に遺憾の意を表明した。
(2007年1月4日10時57分 読売新聞)
◆フセイン元大統領死刑の隠し撮り、刑場の護衛1人逮捕
【カイロ=岡本道郎】イラク当局は3日、先月30日行われたイラクのフセイン元大統領の死刑の様子を携帯電話に付いたカメラで隠し撮りし、テレビ局や
ウェブサイトに提供していた刑場の護衛1人を逮捕した。
米CNNテレビとAFP通信が3日、複数のマリキ首相側近の話として報じた。当局が動機などを事情聴取中という。
イラク政府はこれに先立つ2日、元大統領の首に縄がかけられるシーンや周囲からの罵声(ばせい)などを収めた戦慄的な映像が全世界に流れたこと
で、死刑執行の手法に対し内外の強い批判を招いた事態を重視、死刑執行時に絞首台周辺にいた立会人など関係者全員について、内務省に特別委員会を設置して
事実関係の調査を行うことを命じていた。
(2007年1月4日0時57分 読売新聞)
◆米、執行前日まで延期要請…フセイン元大統領死刑
【カイロ=岡本道郎】イラクのフセイン元大統領の死刑について、米ブッシュ政権が執行前日の12月29日深夜まで、執行を延期するようマリキ首相に要請
したにもかかわらず、同首相は治安上の懸念を理由に拒否、30日早暁の死刑執行を命じていたことがわかった。
2日付米紙ニューヨーク・タイムズによると、米政府は、死刑をイスラム教の極めて神聖な行事である巡礼明けの犠牲祭に執行することはスンニ派の反
発を招くだけではなく、法的にも問題が生じかねないとの立場から、マリキ首相に対し、犠牲祭終了以降に延期した方がいいとの考えを伝えたという。米側は
29日午後11時ごろまで首相側と折衝を続けたが、マリキ首相は、死刑執行までに日数を置けば、武装勢力が元大統領奪還を試みる懸念があるとして拒否。米
側も、イラクの主権尊重の立場から執行を阻止することはできず、元大統領の身柄をイラク側に渡したという。
米CNNテレビによると、死刑執行承認の署名を行うかどうか注目されていたタラバニ大統領も、マリキ首相との電話協議で、上訴審で死刑が確定した以上、
大統領の署名は不要であるとの結論に達したことで、署名は行われなかったという。
(2007年1月3日22時15分 読売新聞)
◆国連総長、フセイン元大統領の死刑めぐる発言で波紋
【ニューヨーク=白川義和】国連の潘基文事務総長は2日、昨年末に執行されたイラクのサダム・フセイン元大統領の死刑について、「各国が決めるべき問
題」と述べた。
死刑制度に反対する国連の原則的立場の変更と受け取られかねない発言で、登庁初日から波紋を広げた。
元大統領の死刑については、イラク担当のアシュラフ・カジ国連事務総長特別代表が、「イラク人の正義を望む心情は理解するが、国連は戦争犯罪や人道に反
する罪、集団殺害であっても、死刑には反対する」との声明を出したばかり。
事務総長は死刑の是非について、「各国は国際人道法に留意すべきだ」とも付け加えたが、事務総長報道官は潘氏の発言に、「国連の見解が変わったわけでは
ない」との釈明に追われる事態ともなった。
(2007年1月3日19時43分 読売新聞)
◆フセイン死刑執行に相次ぐ抗議デモ、宗派対立激化か
【カイロ=柳沢亨之】イラクのサダム・フセイン元大統領処刑を受け、同国のイスラム教スンニ派各拠点で1日、抗議デモが相次いだ。
スンニ派は、12月31日に漏えいした処刑のビデオ映像で、シーア派の執行人らが元大統領を罵倒(ばとう)したことに反発しており、宗派対立激化の懸念
が強まっている。
元大統領の地元の中部ティクリート近郊では、支持者数百人が「反占領」「反政府」を叫び行進。中部サマッラ、バグダッド北部などでも同様のデモが
起きた。ロイター通信によると、北部モスル近郊の刑務所では処刑の報を聞いた囚人が施設を破壊し、治安部隊と衝突、計10人が負傷した。
ヨルダンの首都アンマンでは1日、1000人規模の抗議デモがあり、元大統領の長女ラガドさんが出席、「殉教者サダムへの支持にお礼を申したい」と語っ
た。ラガドさんが2003年にヨルダンに亡命して以来、公の場に姿を現したのは初めて。
(2007年1月2日22時4分 読売新聞)