◇2006.12 菊地英明、「ヨーロッパにおけるベーシック・インカム構想の展開(特集:ベーシック・インカム構想の展開と可能性)」、『海外社会
保障研究』、157: 4-15.
・目次
T はじめに
U BIについての基礎知識
1. BIの多様性
2. BIと従来の社会保障・税制との関係
V 市場システムと福祉国家システムの誕生
1. 生産/賃労働の分断と自己調整的市場
2. 福祉国家による需要と雇用の創出
W 市場メカニズムの回復のための諸改革
1. 負の所得税構想とその挫折
2. ワークフェア改革の席巻と、負の所得税の「復活」
X BIによる、真の生産・労働の回復
1. 福祉国家の財政危機
2. システムの生活世界への侵食
3. 専門家支配への批判
4. BIによる労働と福祉国家の人間化
(1) BIによる賃労働時間の短縮
(2) 自律的活動への従事
5. BIと義務
(1) 賃労働の義務づけ
(2) 社会参加や教育・訓練の義務づけ
Y 福祉国家による環境破壊
1. 環境保護とBIとの関係
2. 生産物の循環と地域通貨
Z 我が国の社会保障への示唆
1. ワークフェアが見落としたものは何か
2. 社会保障制度・行政組織の再編の可能性
3. 残された問題点
・引用
「……、グローバル経済の中でBIを導入することによる、経済的競争力の喪失という問題もありうる。この観点から、リピエッツは、「普遍手当は、自由貿易
と
は両立しない」と指摘する……。実はこの問題は一国内でも生じうるものであり、アメリカでの負の所得税の審議過程でも指摘され、法案が葬り去られた原因の
ひ
とつになった経緯がある。保護基準や最低賃金に一定の地域間格差がある以上、この問題は我が国でも無視することはできないだろう。」(13)
◇2006.12 藤森克彦、「イギリスにおける市民年金構想(特集:ベーシック・インカム構想の展開と可能性)」、『海外社会保障研究』、157:
16-28.
はじめに
T 英国における市民年金をめぐる議論の経緯
U なぜ市民年金が求められるのか
1. 現行の年金制度の問題点
(1) 子育て・介護などを行う女性に不利な年金制度
(2) 年金生活者の貧困問題
(3) 資力調査付き給付の受給者が増加していくことへの懸念
2. これまでの政府の対応
V NAPFによる「全面的・市民年金」の提案
1. 「全面的・市民年金」案の内容
2. 市民年金への移行過程
3. 財政的な見通し
W 年金委員会による「部分的・市民年金」の提案
1. 基礎年金の市民年金化
(1) 長期的な視点からの市民年金構想
(2) 過渡的な措置としての「カテゴリーD年金」の改正
2. なぜ「部分的・市民年金」なのか
3. 財政的な見通し
X 政府による「保険原理の例外措置拡大」の提案
1. 保険原理の例外措置の拡大
2. なぜ「市民年金」を導入しないのか
Y 三つの提案の対立軸
1. 「市民年金案」と「保険原理の例外措置拡大案」の対立軸
2. 「全面的・市民年金」と「部分的・市民年金」の対立軸
Z 日本への示唆
・引用
「[普遍的な市民年金を採用しなかった英国の]政府の根拠は、以下の六点に整理できる……。 第一に、保険原理のもつ「権利は責任を伴う」という考え方の
重
視であ
る。…… 第二に、市民年金の導入にかかる膨大な費用である。…… 第三に、市民年金はどのような設計をしても、人々の間で不公平感を招く恐れがある点
だ。……
第四に、例外措置の拡大のほうが、貧困問題の克服に有効な面がある点だ。…… 第五に、市民年金はシンプルで理解しやすい点が大きな魅力であるが、移行
過
程が複雑なためにその長所が失われてしまう。…… 第六に、居住審査の問題である。」(24-5)
◇2006.12 牧野久美子、「南アフリカにおけるベーシック・インカム論(特集:ベーシック・インカム構想の展開と可能性)」、『海外社会保障研
究』、157: 38-47.
・目次
T はじめに
U 民主化後の社会保障制度の再編:南アフリカにおけるBI導入論の背景
V BI導入論の経緯
W 二つのBI提案:BIG連合と民主同盟
X 結びに代えて:「北」のBI、「南」のBI
・引用
「……、「南」のBI[の水準]は「働かない自由」とは程遠いものであり、貧困軽減(撲滅ではなく)を意図して提案されているのである。[改行] このよ
う
な「南」の文脈では、BIと従来型の社会扶助との境目はしばしば不明瞭となる。南アフリカとブラジル両国のBI論に共通するのは、究極的には普遍的なBI
を志向しつつも、そこに向かうステップとして「北」で批判にさらされてきた従来型の福祉国家の制度、具体的には資産調査つきの社会扶助の意義を否定せず、
むしろその導入をBIに向けた積極的な前進ととらえていることである。……「南」のBI論は、「北」の福祉国家の危機を根拠とする福祉国家批判に対抗する
理
論武装を行いつつ、ナショナル・ミニマムの保障を実現するという意味おいて、新たな福祉国家の樹立を志向するものであるといえる。」(45)
◇2006.12 両角道代、「修正された「ベーシック・インカム」?――スウェーデンにおける「フリーイヤー」の試み(特集:ベーシック・インカム
構想の展開と可能性)」、『海外社会保障研究』、157: 29-37.
・目次
T フリーイヤーの趣旨・目的
U 制度の内容
V 実績
1. 試行期間
(1) フリーイヤー取得者について
(2) 代替雇用者について
(3) フリーイヤーの効果について
@取得者
A代替雇用者
Bその他
2. 2005年の実績
(1) 取得者について
(2) 代替雇用者について
W フリーイヤーの意義と位置づけ
1. スウェーデンの雇用と社会保障:「基本的規範パターン」による分析
2. ベーシック・インカムとフリーイヤー
・引用
「……、フリーイヤーにおける所得保障は、所得比例給付であることを別にしても、決して無条件になされるわけではない……。当該労働者が有償労働を中断す
るこ
と(他の企業でも就労しないこと)、使用者が失業者を代替雇用することが、活動手当の支給要件である。すなわちフリーイヤーの取得は、当該取得者がまと
まった自由な時間を得るというだけでなく、失業者に良質の雇用機会を与えることになるが故に、所得保障を受けるにふさわしい「社会的」行為と見なされてい
るとも考えられる。」(36)
◇2006.12 山本克也、「「所得再分配調査」を用いたBasic
Incomeの検討(特集:ベーシック・インカム構想の展開と可能性)」、『海外社会保障研究』、157:
48-59.
・目次
T はじめに
U 先行研究と若干の整理
1. 先行研究
2. 若干の思想的背景
V 分析データと方法、結果
1. 分析データ
2. 分析の方法
3. 分析結果
W BIは実行可能か
Y おわりに
Appendix
◇2006.0000 小野一 「書評 Yannick
Vanderborght/Philippe van Parijs: Ein Grundeinkommen fur alle?
Geschichte und Zukunft eines radikalen Vorschlags
(ベーシック・インカム論の到達点を示した入門書)」、『ロバアト・オウエン協会年報』、31:
144-152.
◇2003.1200 小沢修司、「労働と生活の変容とベーシック・インカム構想」、『経済科学通信』、103: 19-26.
・目次
はじめに
T 今日に労働と生活の変容
U 「個人化」とウルリヒ・ベックの「危険社会」論
@ 「伝統社会」の制約からの脱却と「福祉国家」による「個人化」の進展
A 完全就業システムから部分就業システムへ
B 男女関係、家族関係の「個人化」と資本主義社会の構造的「矛盾」
V いまなぜBI構想が注目されているか?
@ 「労働」「家族」「環境」の変容への応答
A BIへの懸念について〜なぜ労働と所得を切り離すのか〜
おわりに