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ALS病者障害者運動史研究

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■新着

長見 有人増田 英明ユ・ジンギョン・立岩 真也 20200228 『ハングル、韓日現代アート、70年代と現在』エンディングトーク」,於:京都・アバンギルド
由良部正美 i2019 インタビュー 2019/10/25 聞き手:桐原 尚之西田 美紀長谷川 唯ユ ジンギョン 於:京都
◆長見 有人 i2019 インタビュー 2019/10/09 聞き手:立岩 真也 於:コモンズ紫野(旧杉江邸)
長見 有人(1952〜)

文献表(本頁内)

■お願い

 ※甲谷さん(略)年表がほしい
 ※市役所交渉の記録がほしい

■■人

甲谷 匡賛(こうたにまさあき)(京都市)
杉江 眞人(京都市)
高田 俊昭(京都) http://www2u.biglobe.ne.jp/~tahara/takata.htm
増田 英明(京都市) 日本ALS協会近畿ブロック会長(〜)

岡本 晃明(京都新聞)
長見 有人(ココペリ121、1952〜)
川口 有美子  ◆阪田 弘(京都工芸繊維大学)
◆志賀
西田 美紀
長谷川 唯
山本 晋輔
◆由良部

■■

■[1998]

◇立岩 真也 1998/05/30 「難病患者の自己決定の意味・介護人派遣制度の可能性」(講演)
 第3回日本ALS協会山梨県支部総会
 →2000/11/27 「手助けを得て、決めたり、決めずに、生きる――第3回日本ALS協会山梨県支部総会での講演」
 倉本智明・長瀬修編『障害学を語る』,発行:エンパワメント研究所,発売:筒井書房,189p.,2000円+税

■[1999]

◇1999/05/24 立岩、「障害学」のメーリングリストで調査に参加する人を募集。(cf.↓『ALS』の「あとがき」)
 http://www.arsvi.com/ml/1999jsds.htm
送信日時:1999年5月24日月曜日 23:11
宛先:jsds@fuji.u-shizuoka-ken.ac.jp
件名:[jsds2155] 研究者募集

「☆ 今日4通目の立岩です。研究者募集のお知らせです。なお予め言っとくと,旅費等も含め研究費の支給なし。そのうちなんか金づるを考える?。1回往復8000円くらいかかります。ただ,必要な文献は私が買います。&飲み代等おごります。
 実は,これは,お茶大・千葉大・……・……の大学院生数名(1名は多分このMLのメンバーではない)にお送りしようとも思うメイルです。(そのうち似たようなDMが各人宛に届くかもしれません。)ただ,まずは「公募」でと思いまして。1人でもできるし,2人でもできると思います。ただ,3人以上は?
 なおこのメイルの転送・転載は,皆さま各位が大丈夫だと思う範囲にとどめてください。(この種の但し書きがない場合,私のメイルは転送・転載可&歓迎です。)
☆ 何をするか。ALS(筋萎縮性側索硬化症)の本人,家族,医療関係者に対する聞き取り調査をはじめとする調査を行い,言えることを言う。
 人工呼吸器の装着(装着しなければ,呼吸筋による呼吸ができなくなった時点で「自然死」となります)の選択にもかかわる情報提供・告知,等のあり方,等々についての,実践的な課題,実際的な目標をもった調査研究です。
 ALSについてはホームページの「50音順索引」の「え」のところの「ALS」から見てください。リンク集,少ないですが文献リスト,等があります。
☆ とある地方の,とある,国立大学附属病院ではない病院が主なフィールド,というか出発点というか,になります。
 この調査を提案したのは,その病院に勤めている,私の知っている医療ソーシャルワーカーです。そして,担当の医者達も,基本的に調査してほしいという姿勢です。これは珍しいことです。
 今まで日本の医療社会学においてよい実証研究があまり多くなかった一つの(一つの,ですが)要因は,この種の研究をしようとしても,医療サイドが研究者が入ってくることを認めなかったことです。今回はそれがない。というか,医療サイドがこれまでどおりじゃまずいと思い,どうしたらよいか考えあぐねている。
☆ もう一つは医療サイド自身が,直接の利害関係者であるために,この種の調査ができない。というか,自分でわかっていて自分で言いたくても,言えない部分がある。上記の医療ソーシャルワーカー(MSW)も学会等で研究発表も行っている人ですが,自分の現在の勤務先,以前の勤務先のことはなかなか書けない。その分社会学者は無責任です。義務を負わない。直接の利害関係がない。
 ただ今回の調査も,場合によっては,固有名を出せない場合があると思います。もちろん出すべきでない場合が多々ありますが,そうでない場合でも。(私は固有名を明らかにした調査が少ないことが,施設・病院がなかなか変わらないことに関わっていると思っています。)不本意な部分は残りうるだろうことを予め申し上げておきます。
☆ 直接には上記のMSW(私と同世代の女性です)にまず会ってもらい,まず彼女が話せること,感じていることの一切をしゃべってもらい,それを聞くことから始める。(私もそれには立ち会いたいと思います。)そこからすべきことをだんだんと見出していく。
☆ なお,私の視点は私の視点としてあります。その一端は,
98/01/15「都合のよい死・屈辱による死──「安楽死」について」 『仏教』42:85-93(特集:生老病死の哲学) 25枚
に述べました。また次のようなこともしゃべっています。(全文はホームページの「最初の頁」→「立岩」のところにあります。)
 「……
 私が松本に来たのは3年くらい前なのですが、たまたま働いているところが医療の現場に近いこともあってALSの患者さんの処遇や治療について看護婦さんなんかに話を聞くことがあります。あるいは研究を仕事にする人から話を聞くこともあります。そこで聞いた話は、皆さんならば御存知かもしれませんけれど、病院によって、担当する医師によって、たとえば人工呼吸器を付ける付けないという選択が恣意的に行われているということでした。
 自分で決めるということ以前の状況なのです。また自分で決めることが仮にかたちの上で可能になったとしても、先ほどの開会の挨拶の中にありましたけれども、結局生きていこうとするとその負担が御家族に集中的にのしかかってしまうことがあって、それが患者に生きるのを止めてしまった方がよいのかと思わせてしまう状況であるということです。
 普通の自分にとってよいこと、自分が生きるために自分が生きやすいために必要なことを選ぶという意味での自己決定が可能であるためには、可能であるための状況・条件がなければならなのですが、それが決定的に不足してきたのが今までの私たちの社会であったのだと思うのです。
 しかし、何も変わらなかったわけではないし、何も起こらなかったわけではない。…」
(「難病患者の自己決定の意味・介護人派遣制度の可能性」(講演),1998/05/30,第3回日本ALS協会山梨県支部総会,より)
 ただ,今回の調査は,あくまで実際に言われてしまうこと,言われないでしまわれること,等々を調べ,実地の調査から言えることを言おうというものです。1
☆ ハードな調査であるかもしれません。しかし,やる意味のある調査だと思います。そうそう機会の巡ってこない調査だとも思います。ひどく大げさなものいいですが,そこから出発しそれを巡って一生考え続けるだけのものを与えられる「対象」というものは,(意外にたくさんあるのですが,それでも)そんなにはない。(しかしそんなに気負うこともない,とも思う。私が話をしたり聞いたりしたことのある数少ないALSの人を思い出して言うのですが。)
 御検討のほど,よろしく,お願い申し上げます。
 お返事,お問合せについて。このメイルにそのまま返事すると,このMLに着きますので(もちろんそれでよいならそれでよいのですが),この点御注意下さい。
                 立岩 真也」

■[2002]

◇甲谷ALS発症(河本[2013:1257])

◇2002/04/01 立岩、京都へ

◇立岩 真也 2002/08/01 「生存の争い――医療の現代史のために・4」,『現代思想』30-10(2002-08):247-261 ※資料
 〜2003/10/01 「生存の争い――医療の現代史のために・14」,『現代思想』31-12(2003-10):26-42
 ※これが『ALS』のもとになる。

■[2003]

◇2003/04/01 先端総合学術研究科開設

◇2003/05/25 立岩、川口に会う 於:東京

■[2004]

◇甲谷、ALSで入院(河本[2013:1257])

◇2004 増田 英明発症

◇植竹 日奈・伊藤 道哉・北村 弥生・田中 恵美子・玉井 真理子・土屋 葉・武藤 香織 20040305 『「人工呼吸器をつけますか?」――ALS・告知・選択』,メディカ出版,182p. 1800+ ※ [bk1][amazon][kinokuniya] ※
 ※1999年に呼びかけた調査の成果。ただ立岩はこの本には執筆していない。

◇2004/04 川口、立命館大学大学院先端総合学術研究科に入院

◇2004/12/18 ヘルパー養成講座『進化する介護』 主催:(NPO)ALS/MNDサポートセンター さくら会 於:東京
 立岩「その先を生きること」(講演)
 http://homepage2.nifty.com/ajikun/sinkasuru-kaigo/2004121218nakano.htm

◇2004/12/20 立岩(コメント)
 黒岩祐治のメディカルリポート さまよえる医療難民ALS5:介護保険と支援費
 医療福祉チャンネル774 http://www.iryoufukushi.com

◇立岩 真也 2004/11/15 『ALS――不動の身体と息する機械』 医学書院,449p. ISBN:4260333771 2940 [amazon][kinokuniya] ※

◇立岩 真也 2004/12/25 「ALSの本・1」(医療と社会ブックガイド・44),『看護教育』45-11:(医学書院)[了:20041103]

■[2005]

◇由良部の呼びかけで「甲谷さんの支援と学びの会」発足、志賀が世話役となる(河本[2013:1257])

◇立岩 真也 2005/01/25 「ALSの本・2」(医療と社会ブックガイド・45),『看護教育』46-01:(医学書院)

◇立岩 真也 2005/02/01 「「自己決定」「自然な死」を問う」(『ALS』の紹介・見出しは編集部による・370字)『おそい・はやい・ひくい・たかい』26:98

◇立岩 真也 2005/02/25 「ALSの本・3」(医療と社会ブックガイド・46),『看護教育』46-02:(医学書院)

◇立岩 真也 2005/03/03 「ALSと向き合って・社会は人が生きていくための場・中立でなく”生の支持”こそ」,『聖教新聞』2005/03/03:9

◇立岩 真也 2005/04/26 「患者の自己決定権――「生きて当然」な環境を」,『朝日新聞』2005/04/26朝刊:34(大阪本社版) オピニオン面 視点・関西スクエアから [取材:20050409]
 ※これを葛城さんが読んでくれた?

■[2006]

◇2006/01/17〜22 甲谷匡賛作品展 一畳百色〜ALS(筋萎縮性側索硬化症)の病床から〜
 主催:甲谷匡賛作品展実行委員会 代表 由良部正美

◇2006/03/25土 尊厳死集会

◇2006/05/06 日本ALS協会近畿ブロック総会

◇2006/05 増田 英明人工呼吸器装着

◇2006/11/23〜12/03 「ALS−D――ALS(筋萎縮性側索硬化症)の病床におけるHIGHな出来事」,於:横浜美術館アートギャラリー(河本[2013:1258])(甲谷匡賛作品展「A−LSD!」ALSの病床におけるHIGHな出来事)
 http://www.livingroom.ne.jp/n/kotani0611.htm
 長見介助者として甲谷に同行(長見[i2019])
「長見:とりあえず最初は横浜のね、単発で一緒に行って。
立岩:まず初仕事というか試しというか。
長見:そうですね。
立岩:付いてったというか。京都から横浜往復というか。で、あそこの横浜の介助って、胃ろうとかお手伝い。それは長見さん自身がやられたんですか?
長見:いや、西川〔勝〕さん★とか、志賀さんみんな一緒にチーム組んでやった。
立岩:で、ココペリからは?
長見:ココペリからは私一人だったと思いますけどね。」

◇2006 杉江眞人発症

◇2006/12/05 「京都精神研、ALS患者に共通の異常たんぱく質発見」
 日本経済新聞社

■[2007]

◇2007/01 川口、甲谷の病室を訪れ、さくらモデルを紹介(河本[2013:1259])

◇立岩 真也 2007/01/25 「ALSの本・4」(医療と社会ブックガイド・67)
 『看護教育』48-01(2007-01):-(医学書院)[了:20061203]

◇2007/02/10 難病と倫理研究会第1回京都セミナー,於:立命館大学
 甲谷・橋本みさお参加 中島孝講演(岡本[2008]、河本[2013:1259])

◇2007/02 杉江眞人梁山会診療所のデイケア利用開始〜西田に会う

◇岡本 晃明 2007/02 「医療と報道倫理」,『新聞研究』2007年2月号

◇立岩 真也 2007/02/25 「ALSの本・5」(医療と社会ブックガイド・68)
 『看護教育』48-02(2007-02):-(医学書院)[了:20061222]

◇2007/03 甲谷、気管切開(河本[2013:1259])

◇2007/03/03 日本ALS協会滋賀県支部発足(35番目)
 2007/03/03 日本ALS協会滋賀県支部結成総会・交流会
 http://als-siga.hp.infoseek.co.jp/soukai1.html

◇京都新聞社 編 20070321 『折れない葦――医療と福祉のはざまで生きる』,京都新聞出版センター,245p. ISBN-10: 4763805843 ISBN-13: 978-4763805843 1890 [amazon][kinokuniya] ※ als-b a02

◇立岩 真也 2007/03/25 「ALSの本・6」(医療と社会ブックガイド・69)
 『看護教育』48-03(2007-03):-(医学書院)[了:20070205]

◇2007/08 甲谷、独居開始(河本[2013:1259])

◇2007/10 杉江眞人北区へ転居

◇2007/10 甲谷:審査請求

◇2007/11/14 「動けなくても生きる 日本ALS協会近畿ブロック会長・和中勝三(わなか かつみ)さん(58)」
 『読売新聞』2007/11/14朝刊

■[2008]

◇2008/01/07 甲谷:京都市役所訪問 13:30〜15:30
「場所は、京都御池創生館6階の会議室です。
創生館の住所は、京都市中京区御池通柳馬場東入東八幡町579です。
地図は、下記でご確認ください。
http://www.city.kyoto.lg.jp/sogo/page/0000013364.html
現時点では事前打ち合わせなどを予定していないので、
当日13時15分に創生館の玄関付近で待ち合わせにしましょう。」

◇立岩 真也 2008/01/31 「学者は後衛に付く」,『京都新聞』2008-1-30夕刊:2 現代のことば
 「なにか新しいことを考えついて、新しいものを作っていくのはわるいことではない。私自身も「先端」なんとかいう名前の大学院に勤めてはいる。ただ、同時に、現実の後に付いて、拾って歩くことが大切だと思う。
 そんなことはわかっていると言う人もいるだろう。歴史学にしてもなににしてもそんなことをしているではないか。ただ私が思うのは、そんなに昔のことでなく、わりあい近い過去あるいは現在の記述・記録だ。例えば一つ具体的には、福祉や医療に関わる様々な活動の記録をしていくことであり、その制度や仕組みに関わるこまごましたことをまとめて知らせることだ。
 まず後者。これは制度の方に問題があるのだが、こまごまと複雑で、ころころ変わる。そして公務員なら制度のことを知っているかというとそんなことはない。忙しい、また異動が多いということもあって、勉強できない。すると、実際には使えるし、他の地域では使われている制度も、ある地域、例えば京都市では使えないことになってしまい、結果、人々に迷惑がかかる。こないだ、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の甲谷さんの介護保障についての京都市役所との協議に同席させてもらった時にも、そのことを感じた。例えば、介護に関わる加算など、もっと使える制度である生活保護がきちんと使われていないのだ。
 となると、制度を使う側が知識をもっていなければならないことになってしまう。めんどうなことだし、個人には難しいことでもあるが、民間の組織がその部分に対応してきた。結果、多くのことについて、いま最もよくものごとを知っているのは役人でも学者でもなく、民間でたいがいは儲からない活動をしている人たちということになる。その人たちが持っている知識やノウハウの方が、なにか気のきいたことを言おうとして実際にはたいしたことを言えていない研究者の論文に書いてあることより、よほど価値のあることが多い。
 ただ、その人たちは忙しい。前に進む、あるいは後退を食い止める、その日々の仕事で手いっぱいのことが多い。これまでの経緯を振り返ったり、全体をまとめたり、そんなことをしている暇がない。だから、一つにはその人たちがもっと余裕をもてるようになるとよいのだが、その他に、研究者や研究者になろうとする人たちが後にくっついて、調べるものを調べ、まとめるものをまとめる仕事をするというやり方がある。また、その人たちといっしょに仕事をするというやり方がある。
 […]」

◇2008/02/02難病と倫理研究会第2回京都セミナー 於:キャンパスプラザ京都
 立岩「ここ数年の間にできるはずのこと」

◇2008/02 京都市、甲谷へのヘルパー派遣を月861時間に変更

◇2008年04月08日(火)付 『京都新聞』朝刊より「ひとりで生きる みんなと生きる ALS患者 甲谷さんの挑戦(6)介助者空白「生存できぬ」 審査請求で改善へ道筋 」文・岡本晃明

 「ボランティアから資格を取って有償のヘルパーへ移行することで、甲谷匡賛さん(50)の支援者に変化もあった。
 ヘルパーになった舞踏家由良部正美さん(49)=西京区=は「関係を仲介するお金の力で、楽になった面がある。無償の支援だと要望にどこまでも応えなければならない気がして難しいが、客観的に見られるようになった。でもお金のためだけかと言うとそうではない」と思いを語る。
 ヘルパーがひと月に百時間、介護にあたった場合、事務所経費や保険料を差し引いて、ヘルパー報酬の時給は千二百円。月収は単純計算で十二万円に過ぎない。それだけで生計を立てるのは厳しい額だ。
 国は重度障害者への訪問介護報酬を、高齢者への身体介護(一時間約四千円)の半分以下に設定している。ヘルパー労働の長時間、低賃金労働が介護職離れを生んでいると指摘され、国政でも議論されている。
 社会学の研究者らが企画した筋委縮性側索硬化症(ALS)患者の二十四時間連続で、一分刻みの介護ニーズ調査の被験者となることを、甲谷さんは引き受けた。調査の結果、透明文字盤でやりとりしながら、夜一時間おきに数センチ単位で姿勢を直し、寝返りの介助やたんの吸引に備えて見守るALS介護の負担の重さが浮き彫りになった。
 甲谷さんは2007年10月、京都市が決定した月六百五十一時間(一日あたり十九時間)の訪問ヘルパーでは「介助者がいない空白の時間帯があり、ひとり暮らしの患者が生存できない」として、弁護士の支援を受けて京都府へ審査請求を申し立てた。
 2008年1月には京都市役所で福祉担当者と交渉し、ふたり介護の必要や「見守り」の大切さを訴えた。それはヘルパーの生活にも直結する。文字盤を使ったコミュニケーションでは多くの言葉を重ねることはできなかったが、手足の痙攣(けいれん)、たん吸引を受けながら、市の職員に向き合った。
 交渉を前に、支援者と相談をしている時。「権利への戦い」とか「不当」とかいった言葉を使って話す支援者に、甲谷さんは透明文字盤から瞳で告げた。
 「いかりではありません」
 甲谷さんの思いは通じた。今年二月、市は甲谷さんへのヘルパー派遣を「月八百六十一時間」に変更した。ヘルパーが二十四時間態勢でつき、さらに一日あたり三時間はふたりが介護にあたる。
 ふたり介護を含む一日二十四時間以上の公的介護保障は全国でもわずか。日本ALS協会によると、在宅ALS患者へのヘルパー支給時間数としては日本一だという。
 甲谷さんの願う「あとにつづくみち」がひとつできた。」

◇立岩 真也 2017/03/14 「病院から/病院へ――「身体の現代」計画補足・328」
 「京都に来て数年たって何人かの人の「在宅移行」に関わることになった。一人めが甲谷さん
http://www.arsvi.com/w/km22.htm
だった。「重度訪問」
http://www.arsvi.com/d/a02j.htm
の制度を使えるようにということで、京都市役所に甲谷さんは出かけ、私たちはそれに付いて行ったりもしたのだ。その後、同じALSの杉江さん。杉江さんは『生存学』創刊号
http://www.arsvi.com/m/sz001.htm
に載っている4本の論文に出てくる。それを読んでもなかなかたいへんだったことはわかるかと思うが、実際にはもっと(ずっと)大変だった。その杉江さんは何年か前に癌で亡くなられた。その大変だった時のことは『生存学』でも書いている西田さんが博士論文に書いてくれるはずだ。ただ「重度訪問(重訪)」制度自体は、本来は、大変ではない。ただ全国一律にうまくこの制度が使えているわけではない。そこでがんばらねばならないこともでてくる。ただ、それは京都の時もそうだった。上記のような交渉をして、それでようやく24時間一人住まいの生活が可能になった。ただ一度それを成功させると、その次はより楽になる。杉江さんはたいへんだったが、杉江さんに関わる制度的保障を得るのはより簡単だった。今度の金沢での試みがうまくいくということは、そのような道筋を作るということでもある。」

岡本 晃明 2008/03/01 「ALS‐D――勝手に甲開日記」,『現代思想』36-3(2008-3)(特集:患者学〜生存の技法)
 ※甲谷さんのこと

■[2009]

◇2009/01/07 「命ときめく日に」,『京都新聞』2009-01-07
 http://www.kyoto-np.co.jp/info/syakai/inochi/20090107.html
 ※杉江が紹介される

◇2009/02/21土 「東アジアALS患者在宅療養研究シンポジウム」
 於:立命館大学衣笠キャンパス
http://www.arsvi.com/a/20090221.htm

◇2009/02/25 『生存学』創刊号,生活書院,414p. ISBN-10: 4903690350 ISBN-13: 978-4903690353 2310 [amazon][kinokuniya] ※
西田 美紀 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(1)――二〇〇八年三月〜六月」,『生存学』1:165-183
長谷川 唯 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(2)――二〇〇八年六月」,『生存学』1:184-200
山本 晋輔 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(3)――二〇〇八年七月」,『生存学』1:201-217
堀田 義太郎 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(4)――課題・要因・解決方策」,『生存学』1:218-235

◇小長谷 百絵・川口 有美子 編 2009/08/10 『在宅人工呼吸器ポケットマニュアル 』
 医歯薬出版, ISBN-10:4263235290 ISBN-13:978-4263235294 [amazon][kinokuniya]

川口 有美子 2009/12/15 『逝かない身体――ALS的日常を生きる』,医学書院,270p. ISBN-10: 4260010034 ISBN-13: 978-4260010030 \2100 [amazon][kinokuniya] n02. als.

■[2010]

岡本 晃明 2010/02/01「医療的ケアに踊る ALS‐D」,『現代思想』2010年3月号(特集=医療現場への問い)
 ※甲谷さんのこと

西田 美紀 2010/03/31, 「重度進行疾患の独居者が直面するケアの行き違い/食い違いの考察−ALS療養者の一事例を通して−」,『Core Ethics』,VOL6, p311-321.

◇2010/04/13 ALSと人工呼吸器についてのコメント
 読売テレビ

◇杉江 眞人 2010/06/20 「進行性難病単身者から医療的ケアに関わる人たちへ」
 日本自立生活センター(JCIL)重度訪問養成講座・医療的ケア講義

◇立岩 真也 2010/08/24 「著者からの応答――『ALS』を読んでくれた皆さんに」(講義)
 立正大学文学部哲学科夏期合宿,於:立命館大学

◇2010/09 和歌山で提訴

◇立岩 真也 2010/12/16 「神経難病者の現況」,NHK和歌山支局によるインタビュー
 於:立命館大学・創思館416

■[2011]

西田 美紀 2011/03/31,「医療的ケアが必要な難病単身者の在宅生活構築――介護職への医療的ケア容認施策に向けた視点」,『Core Ethics』, VOL7, p223-234.

◇2011/09/08 和歌山で提訴した人死去

◇2011/09/18 和歌山地裁仮の義務付け

■[2012]

西田 美紀 2012/03/31,「医療機器を必要とする重度障害者の実態調査――地域のローカルなつながりに向けて−」, 『立命館大学生存学研究』, 生活書院, p113-139.

◇2012/04/25 ALS介護拡大義務づける和歌山地裁判決コメント
 NHKニュース(近畿)

◇2012/07/03 司会
 シンポジウム:高齢者やALS(筋萎縮性側索硬化症)患者が安心して日常生活を送るために 主催:東京弁護士会
 http://www.toben.or.jp/know/iinkai/koureisyougai/news/20120528.html
◇2012/07/03 「資料:良い死?/唯の生!」
 シンポジウム:高齢者やALS(筋萎縮性側索硬化症)患者が安心して日常生活を送るために 主催:東京弁護士会

◇増田 英明・佐藤 謙 20120331 「あいさつ」,『医療機器と一緒に 街で暮らすために シンポジウム報告書 震災と停電をどう生き延びたか〜福島の在宅難病患者・人工呼吸器ユーザーらを招いて〜』(立命館大学生存学研究センター報告書18), pp.20-21

■[2013]

西田 美紀 2013/03/31,「在宅ALS患者の身体介護の困難性――ホームヘルパーの介護経験から」, 『Core Ethics』9:199-210.[PDF]

◇2013/04/01 増田英明日本ALS協会・近畿ブロック会長就任

◇増田 英明 20131010 「<講演>自薦ヘルパーと共に 自立への一歩」,『日本ALS協会近畿ブロック会報』74号 http://www011.upp.so-net.ne.jp/alsosaka/Kaihou_00/k_74/5_Jyouhou/k74Kouen2Masuda.html

◇河本 のぞみ 20131015 「路地裏で試みられていること――甲谷匡賛さんの周辺」(当事者に聞く 自立生活という暮らしのかたち・4),『作業療法ジャーナル』47-11(2013-10):1254-1262

■[2014]

◇立岩 真也 2014/01/24 「ALSになって生きていく――ごく簡単にすこし」『生の技法――難病プロフェショナル・バージョン』

川口 有美子 20141222 『末期を超えて――ALSとすべての難病にかかわる人たちへ』,青土社,250p. ISBN-10: 4791768388 ISBN-13: 978-4791768387 2000+ [amazon][kinokuniya] ※ als. n02.

■[2015]

◇2015/04/01 増田英明日本ALS協会副会長就任

■[2016]

◇川口 有美子・小長谷 百絵 編 20160625 『在宅人工呼吸器ケア実践ガイド――ALS生活支援のための技術・制度・倫理』,医歯薬出版,168p. pp.151-161 ISBN-10: 4263236777 ISBN-13: 978-4263236772 [amazon][kinokuniya] ※
◇立岩 真也 2016/06/25 「人工呼吸器の決定?」川口・小長谷編[2016]

■[2017]

◇増田 英明 201710 「在宅生活・自立への一歩」

◇増田 英明 20171024 「あいさつ」,障害学国際セミナー2017 於:韓国・順天郷大学

◇増田 英明 20171123 発言
 国際ワークショップ ”Challenges of Illness Narratives”,於:立命館大学 http://www.r-gscefs.jp/?p=8177

 「トータルロックインといっても未知の世界でもあり、正直今は実感として何もわかりません。
 また私には考えるひまもありません。
 でもコミュニケーションをとれるよう色々な研究に対しては期待をしています。ハルのスイッチなどは私も使いたいと思います。
 それと同時に、そのときの準備として、早い段階から介護体制を構築する必要が有ると思います。
 わたしは今パーソナルアシスタントを、私の専属のヘルパーさんのことですが、育てながら生活をしています。家族だけに頼らず幅広く支援をしてもらうこと、自分にあったケアをしてもらっていくことが大切です。
 そうすれば意思表示が困難になっていってもコミュニケーションはできると思っています。」

◇増田 英明 2017/12/01 「人工呼吸器を装着した私の挑戦――障害学国際セミナー2017に参加して」,『研究の現場』,立命館大学生存学研究センター
 http://www.ritsumei-arsvi.org/news/read/id/782http://www.ritsumei-arsvi.org/en/news/read/id/330[English]

◇増田 英明 2017/12/06 国際ALS学会参加 アメリカ・ボストン(マスダ・ボストン・チャレンジ)

■[2018]

◇増田 英明 20180220 「人工呼吸器利用者の航空機利用についての提言」,立憲民主党バリアフリーヒアリング

◇坂野 久美 2018 「筋ジストロフィー患者が大学に行くということ――立命館大学の事例をめぐって」,『Core Ethics』14:223-235  [146+]

◇増田 智子 i2018 インタビュー 2018/12/25 聞き手:ユジンギョン 於:京都市・増田氏宅

■[2019]

◇増田 智子 i2019 インタビュー 2019/01/09 聞き手:ユジンギョン 於:京都市・増田氏宅

◇2019/03/22 全国ALS支援者養成研修,於:立命館大学朱雀キャンパス
 「これからのために」

■[2020]


■■

■cf.立岩『ALS』あとがき

 いろいろなことがたくさん言われていて、社会に起こることはなんでも既に知っているように思うところが私たちにはある。それはただ傲慢なことだと私は思わない。もっともな感覚のようにも感じる。ただそれでも、既に知っていることでももう一度知った方がよいこと、確認するのがよいことがあると思う。そうやって確認の作業を進めていくと、すこし最初に思っていたことと違うこともまた見えてくる。やはり知らないことも現れてくる。
 では、何がそこにあるとわかったか、また、あらためて当然のことが確認されたのか。それは本文に書いてきたから繰り返さない。この本ができた経緯をここでは記す。

 ALSをどこでどのように知ったのか、記憶がない。少なくともよくは知らなかった。ただ一九九四年に放映されたスー・ロドリゲスの裁判についての番組『スーが闘った一八か月』は録画している(第11章☆02)。ALSの女性が医師による自殺幇助を求めて闘った裁判をカナダCBCが取材し製作した番組を、NHKの教育テレビが放映したものである。安楽死のことは以前から気になっていたからそれで録画したのかもしれない。そのときには私は千葉大学につとめていたが、九五年から信州大学の医療技術短期大学部に移った。そこでの講義でこの番組を録画したビデオを見てもらっていた。他の大学、大学院で集中講義をしたときにも見てもらったことがある。(どのようなつもりでそれを見てもらっていたかについては立岩[2004f]に書いた)。
 そしてその勤め先で人工呼吸器の装着の有無が病院によって異なることを聞いた(第5章1節)。また同じ病院でも、担当の医師が代わると人工呼吸器を付けることになったり、また別の人に代わると付けないことになったりするのだという。それは私にはまったくとんでもないことだと思われたし、今もそう思っている。そしてそのような重大な、と私には思われることが、医療関係者の内輪の話としてひそひそとなされ、論文や学会報告になるのはもっとあたりさわりのないことであるのもおかしなことだと思った。そして、こうした事態を日本ALS協会は問題にしたことをどこからか知った。
 信州に移った後もしばらく、千葉大学の学生たちの一九九四年度の社会調査実習の報告書をまとめる仕事が終わらず、ずっとかかっていた。ようやく九六年の春にできあがったその報告書(千葉大学文学部社会学研究室[1996])の宣伝も兼ねて、九六年の日本社会学会の大会(於・琉球大学)で私は「権利を擁護するNPO」という報告(立岩[1996])をした。
《建て前としては基本的人権の尊重等々が主張されるにしても、閉じられた中ではどんなことでもできてしまう。たとえば知らせるか、知らせないか、どのような処置を行なうか、そこには以上に述べたような事情が様々に絡んでいるはずなのだが、その都合によって、どんなようにも采配できてしまう。そして、周りの人はそのことを知らないでいられる。外側にいる(と同時に負担者ではある)私達にとっては、原則を表向き否定することなく、しかし実際には否定しており、しかしそのことを実感する必要がないというのは大変便利なことではある。見えない限りにおいて、あえて知ろうとしない限りにおいて、それですんでいる。》。ここに次の注を付している。
《例えばALSと略称される原因不明の病気がある。全身の筋肉が徐々に動かなくなっていくのだが、やがて自発的に呼吸できなくなる。人工呼吸器を付ける(付けなければ死んでしまう)ことになるのだが、これを付けるか否かが病院によって、また担当する医師によってまちまちなのである。このことを問題にしたのは、ALSの患者会だけである。》
 以上は当時依頼されていた原稿(立岩[1997a])にもそのまま使われた。
 そのころある調査グループに関わっていて、学会報告をするというので、一時期日本社会福祉学会の会員だったことがある(その調査報告書として立岩他[1998])。その九五年一一月の大会で小林明子(中部学院大学教員)の報告を聞いた。彼女は日本ALS協会福井県支部の設立に関わり、ずっと活動に参加してきた人だ。その大会の報告の中でとてもよい報告で、彼女とすこし話をした。『最高のQOLへの挑戦――難病患者ベンさんの事例に学ぶ』(ベンさんの事例に学ぶ会編[1994])はその時に買ったのか、その前から持っていたのか、やはり覚えていない。このときにもまだ私はALSの人に会って直接話をしたことはなかった。
 九七年の秋、ALS協会山梨県支部の山口衛[496]からファックスで連絡をもらった。「介護人派遣事業」(第10章2節)の新設を山梨県に働きかけたいので情報がほしいとのことだった。私がいくつか関係した文章を書いていることが伝わったらしい。私自身は役に立ててもらえる情報をもっていなかったが、制度について最も多く詳しい情報をもち、対行政交渉の手法にも詳しい「障害者自立生活・介護制度相談センター」を知っていたから、この組織を紹介した(関連する書籍に自立生活情報センター編[1996]があるが、今では情報は古くなっているからホームページを見るのがよい)。
 『私的所有論』(立岩[1997b])という本も、そのころ、九七年一〇月に刊行された。その年の終わりに雑誌『仏教』から原稿を依頼された。「生老病死の哲学」という特集で、私への当初の依頼は「出生前診断」だったが、私はこの主題についてその時に書けることは本に書いてしまったし(『私的所有論』第9章)、にもかかわらず煮え切らず、詰められない部分があり、なにか新しいことが書けると思えなかった。そして私は、たしかに本では生まれることに関わる技術について書いたのだが、それよりも死ぬか死なないかの方が大切だと思っていた。想像力に乏しい私には、既に生きていて、自分が死ぬことを理解できる人間が死ぬという出来事の方が大きなことに思えた。今でもそう思っている。それで安楽死のことについて書かせてもらった(立岩[1998a])。そこでスー・ロドリゲスの裁判に言及し、松本茂[45][489]の文章(松本[1994])を引いた。この文章は拙著『弱くある自由へ』(立岩[2000d])に収録された。
 九八年一月、この雑誌が刊行された頃、山梨県で介護人派遣事業が始まることに決まったから、ALS協会の山梨県支部の総会で講演をしてほしいという依頼があった。その返信のEメールに『仏教』に書いた文章を添付して送った。「難病患者の自己決定の意味・介護人派遣制度の可能性」という題をいただき、五月に講演した(講演までの間の山口とのEメールのやりとりについては、この講演を再録した立岩[2000e]に記した)。
 そして九九年五月、金沢で開催された日本医療社会事業協会・日本医療社会事業学会全国大会のシンボジウム「「自己決定」を考える――ソーシャルワーカーの実践から」に呼ばれて話した(立岩[1999d])。金沢からの帰りの電車で、信州に来て知り合った医療ソーシャルワーカーの植竹日奈(植竹[2002]他)からALSの人たちのことを調べないかと提案された。現場にいてわかることがあるとともに、見えているが言いにくいこともある。内側にいる人と外にいる人がいっしょに調べたらよいという提案だった。それはよいと思った。ただ私自身には時間がなく、またこの仕事をするには幾人かいた方がよいと思い、呼びかけたらよいと思った。
 そこで、「障害学」のメーリングリストで調査に参加する人を募集した。五月二四日にメールを出した(この呼びかけのメールはhttp://www.arsvi.com/0r/1999jsds.htm#2155にある)。結局参加できなかった人もいたが、応じてくれた人では北村弥生、田中恵美子、土屋葉が後まで関わることになった。そして信州大学医療技術短期大学部(現在・信州大学医学部保健学科)で同僚だった玉井真理子、そしてその職場の私の後任ということになる武藤香織が加わり聞き取りを行なった。同じ頃、国際高等研究所のプロジェクト「臨床哲学の可能性」(その報告書のために提出した私の文章は立岩[2003c])でいっしょだった清水哲郎と話した折、彼が厚生労働省の研究班のメンバーになったこと、その研究に協力し必要な調査を行なうならその研究費を使うことができることを聞き、使わせてもらうことにした。メンバーは研究費を聞き取りやテープ起こしのために使うことができた。
 こうして聞き取り調査が行なわれた。ただ私自身はメーリングリストでの情報交換、議論には時々加わったが、聞き取りには参加することができなかった。その結果は二〇〇四年に本(植竹他[2004])になった。本を作ることは私から提案したことでもあったのだが、私はこの企画からは外れた。小さな理由は、その本に私が関わるとしたら、たんに分担執筆者として一つの章を書くといった性格のものであってはならないと私は思うはずで、本の内容に介入してしまうことになり、それはそれでなかなか大変な仕事のように思えたことにある。もう一つの大きな方の理由は分量だった。二〇〇一年の終わり頃、当初は私の書いたものもその本に載せてもらうつもりで、使おうと思う引用を並べてみることを始めたのだが、それは本の一章という分量をすぐに越えてしまい、本一冊分にした方がよいと思えた。さらにもう一つの小さな理由は、その本が想定する主要な読者として医療者が想定されたが、私にはそのような意識がとくになかったことにある。
 こうして本のことを考え出したこの年の末、『現代思想』(青土社)から「先端医療」という特集(二〇〇二年二月号)の原稿を依頼された。私は先端医療のことを知らないし、「先端的」なもの以外に大切なことがあると思っていたので、「生存の争い――医療の現代史のために」という文章を書くことにしたが、いつものことながら長くなってしまった。そして、第四回からはALSのことを書くことにしてしまい、途中一回別のことを書いた以外は、ずっとALSのこと、というよりALSの人たちの文章の引用を連ねてしまった。二〇〇三年一一月号の特集「争点としての生命」のために書いた「現代史へ――勧誘のための試論」(立岩[2003d])の前にはとにかくいったん終わらせようと思い、終わらせたが、結局、全部で一四回も書いてしまい、そのうちの一〇回がALSのことだった(立岩[2002-2003])。
 この本はそれがもとになっている。ただ、大幅な書き足しをした。分量は連載分の二倍を超えた。大きな構成の変更も行なった。けれど、その連載のために資料を集め連ねる作業を続けたから、基本的な部分ができた。こうしたわけのわからぬ連載を許してくださった青土社『現代思想』編集部、鈴木英果さんに感謝する。この本に載せなかった部分は、その続きを考え、やはり大幅に書き足し、一冊にできればと思う。
 何箇所かでも述べてきたことだが、この本に書くことのできなかったことはとても多い。このように中途半端な本が出ることが、もっときちんとした本が出るのを妨げてしまうことになることを恐れるのだが、すぐに誰かが書いてくれるようにも思えなかったし、私もこれ以上時間を割くことができそうになく、また分量もとうに適正規模を超えてしまったから、ここまででとりあえず終えて、出してもらうことにした。
 一人ひとりのことや、各地での運動・活動、ALS協会の活動の経緯、とくに医療・福祉の制度に関わること、呼吸器を付けての移動のこと、選挙権を現実のものにするための運動の経緯、医学やマスメディアにおける扱い、等々、等々。この本に書いたことすべてについてのより広く踏込んだ広い記述と考察が必要である。そしてALSと共通点も相違点もあるいくつもの病・障害がある。これらをすべて、無責任なことだが、それを知りたいと思う人たちの作業に委ねる。とはいえ、私は立命館大学大学院先端総合学術研究科という意味のよくわからない長い名前の大学院につとめているから、そこに来ていただければいくらかのお手伝いはする。既にそこでALSについて研究し論文を書こうという人もいる。

 文部科学省科学研究費、立命館大学学術フロンティア・プロジェクトの研究助成金により経費の過半をまかなうことができた。資金提供者の皆さんに感謝する。
 そしてこの本は医学書院「ケアをひらく」シリーズの一冊として刊行される。ずいぶん前に編集者の白石正明さんからこのシリーズで本をという話をいただいていた。何を書いたらよいか何年も定まらなかったのだが、ALSのことで書いていくと本になってしまうことがわかって、書かせていただくことにした。
 さて、患者がすべからく患者様と呼ばれてしまうこの時代である。編集者だけをさんづけにし敬語を使うというのも妙なものだ。この本を書く時、ずっとすべて呼び捨てできて居心地がわるかったのだが、敬称を略すことによって敬意を表することもあるだろうと思い、通させてもらった。お礼すべき人は多く、それは文献表に出てくる名前の数より多いのだが、なかでも直接にお話をうかがう機会のあった山口衛さん、橋本みさおさん、伊藤道哉さん、山口さんと橋本さんとの会話で通訳をしてくださった方々にお礼申し上げる。

二〇〇四月八月 立岩真也」


 
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■文献(39:20191019→+インタビュー03:202003)
 cf.http://www.arsvi.com/o/n06.htm

長谷川 唯 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(2)――二〇〇八年六月」,『生存学』1:184-200
堀田 義太郎 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(4)――課題・要因・解決方策」,『生存学』1:218-235
川口 有美子 2009/12/15 『逝かない身体――ALS的日常を生きる』,医学書院,270p. ISBN-10: 4260010034 ISBN-13: 978-4260010030 \2100 [amazon][kinokuniya] n02. als.
川口 有美子 20141222 『末期を超えて――ALSとすべての難病にかかわる人たちへ』,青土社,250p. ISBN-10: 4791768388 ISBN-13: 978-4791768387 2000+ [amazon][kinokuniya] ※ als. n02.
川口 有美子・小長谷 百絵編 2009/08/10 『在宅人工呼吸器ポケットマニュアル――暮らしと支援の実際』,医歯薬出版,pp.153-166 [English][Korean][Chinese]
◇川口 有美子・小長谷 百絵 編 20160625 『在宅人工呼吸器ケア実践ガイド――ALS生活支援のための技術・制度・倫理』,医歯薬出版,168p. pp.151-161 ISBN-10: 4263236777 ISBN-13: 978-4263236772 [amazon][kinokuniya] ※
◇河本 のぞみ 20131015 「路地裏で試みられていること――甲谷匡賛さんの周辺」(当事者に聞く 自立生活という暮らしのかたち・4),『作業療法ジャーナル』47-11(2013-10):1254-1262
◇『京都新聞』 2009/01/07 「命ときめく日に」,『京都新聞』2009-01-07  http://www.kyoto-np.co.jp/info/syakai/inochi/20090107.html
◇京都新聞社 編 20070321 『折れない葦――医療と福祉のはざまで生きる』,京都新聞出版センター,245p. ISBN-10: 4763805843 ISBN-13: 978-4763805843 1890 [amazon][kinokuniya] ※ als-b a02
◇小長谷 百絵・川口 有美子 編 2009/08/10 『在宅人工呼吸器ポケットマニュアル 』
 医歯薬出版, ISBN-10:4263235290 ISBN-13:978-4263235294 [amazon][kinokuniya]
◆増田 智子 i2018 インタビュー 2018/12/25 聞き手:ユジンギョン 於:京都市・増田氏宅
◆増田 智子 i2019 インタビュー 2019/01/09 聞き手:ユジンギョン 於:京都市・増田氏宅
◇増田 英明 20131010 「<講演>自薦ヘルパーと共に 自立への一歩」,『日本ALS協会近畿ブロック会報』74号 http://www011.upp.so-net.ne.jp/alsosaka/Kaihou_00/k_74/5_Jyouhou/k74Kouen2Masuda.html
◇増田 英明・佐藤 謙 20120331 「あいさつ」,『医療機器と一緒に 街で暮らすために シンポジウム報告書 震災と停電をどう生き延びたか〜福島の在宅難病患者・人工呼吸器ユーザーらを招いて〜』(立命館大学生存学研究センター報告書18), pp.20-21
◇増田 英明 201710 「在宅生活・自立への一歩」
◇増田 英明 20171024 「あいさつ」,障害学国際セミナー2017 於:韓国・順天郷大学
西田 美紀 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(1)――二〇〇八年三月〜六月」,『生存学』1:165-183
◇増田 英明 2017/12/01 「人工呼吸器を装着した私の挑戦――障害学国際セミナー2017に参加して」,『研究の現場』,立命館大学生存学研究センター http://www.ritsumei-arsvi.org/news/read/id/782http://www.ritsumei-arsvi.org/en/news/read/id/330[English]
◇増田 英明 20180220 「人工呼吸器利用者の航空機利用についての提言」,立憲民主党バリアフリーヒアリング
◆長尾 英彦 2013 「24時間介護を受ける権利」,『中京法学』47-3・4:25-47(145-167) [PDF] ◇西田 美紀 2010/03/31 「重度進行疾患の独居者が直面するケアの行き違い/食い違いの考察――ALS療養者の一事例を通して」,『Core Ethics』,VOL6, p311-321.
◇西田 美紀 2011/03/31 「医療的ケアが必要な難病単身者の在宅生活構築――介護職への医療的ケア容認施策に向けた視点」,『Core Ethics』, VOL7, p223-234.
◇西田 美紀 2012/03/31 「医療機器を必要とする重度障害者の実態調査――地域のローカルなつながりに向けて−」, 『立命館大学生存学研究』, 生活書院, p113-139.
◇西田 美紀 2013/03/31 「在宅ALS患者の身体介護の困難性――ホームヘルパーの介護経験から」, 『Core Ethics』9:199-210.[PDF]
岡本 晃明 2007/02  「医療と報道倫理」,『新聞研究』2007年2月号
◇岡本 晃明 2008/04/08 「ひとりで生きる みんなと生きる ALS患者 甲谷さんの挑戦(6)介助者空白「生存できぬ」 審査請求で改善へ道筋 」,『京都新聞』2008-04-08朝刊
◇岡本 晃明 2008/03/01 「ALS‐D――勝手に甲開日記」,『現代思想』36-3(2008-3)(特集:患者学〜生存の技法)
◇岡本 晃明 2010/02/01「医療的ケアに踊る ALS‐D」,『現代思想』2010年3月号(特集=医療現場への問い)
◆長見 有人 i2019 インタビュー 2019/10/09 聞き手:立岩 真也 於:コモンズ紫野(旧杉江邸)
◇立岩 真也 1998/05/30 「難病患者の自己決定の意味・介護人派遣制度の可能性」(講演),第3回日本ALS協会山梨県支部総会
→2000/11/27 「手助けを得て、決めたり、決めずに、生きる――第3回日本ALS協会山梨県支部総会での講演」,倉本智明・長瀬修編『障害学を語る』,発行:エンパワメント研究所,発売:筒井書房,189p.,2000円+税
◇立岩 真也 2004/11/15 『ALS――不動の身体と息する機械』 医学書院,449p. ISBN:4260333771 2940 [amazon][kinokuniya] ※
◇立岩 真也 2004/12/25 「ALSの本・1」(医療と社会ブックガイド・44),『看護教育』45-11:(医学書院)[了:20041103]
◇立岩 真也 2005/01/25 「ALSの本・2」(医療と社会ブックガイド・45),『看護教育』46-01:(医学書院)
◇立岩 真也 2005/02/01 「「自己決定」「自然な死」を問う」(『ALS』の紹介・見出しは編集部による・370字)『おそい・はやい・ひくい・たかい』26:98
◇立岩 真也 2005/02/25 「ALSの本・3」(医療と社会ブックガイド・46),『看護教育』46-02:(医学書院)
◇立岩 真也 2005/03/03 「ALSと向き合って・社会は人が生きていくための場・中立でなく”生の支持”こそ」,『聖教新聞』2005/03/03:9
◇立岩 真也 2005/04/26 「患者の自己決定権――「生きて当然」な環境を」,『朝日新聞』2005/04/26朝刊:34(大阪本社版) オピニオン面 視点・関西スクエアから [取材:20050409]
◇立岩 真也 2008/01/31 「学者は後衛に付く」,『京都新聞』2008-1-30夕刊:2 現代のことば
◇立岩 真也 2009/08/10 「人工呼吸器の決定?」川口・小長谷編[2009]
◇立岩 真也 2014/01/24 「ALSになって生きていく――ごく簡単にすこし」『生の技法――難病プロフェショナル・バージョン』
◇立岩 真也 2016/06/25 「人工呼吸器の決定?」川口・小長谷編[2016]
◇植竹 日奈・伊藤 道哉・北村 弥生・田中 恵美子・玉井 真理子・土屋 葉・武藤 香織 20040305 『「人工呼吸器をつけますか?」――ALS・告知・選択』,メディカ出版,182p. 1800+ ※ [bk1][amazon][kinokuniya] ※
山本 晋輔 2009/02/25 「独居ALS患者の在宅移行支援(3)――二〇〇八年七月」,『生存学』1:201-217
◆由良部 正美 i2019 インタビュー 2019/10/25 聞き手:桐原 尚之西田 美紀長谷川 唯ユ ジンギョン 於:京都


UP:20190607 REV:201910019, 20200305, 06, 08, 15, 0623
ALS  ◇病者障害者運動史研究  ◇生を辿り道を探る――身体×社会アーカイブの構築  ◇歴史  ◇  ◇索引 
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