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ALS・2012年4月〜6月の報道等

ALS 2012 (English)
ALS

last update:20130417

 *以下、寄せられた情報を掲載。webmaster@arsvi.comまで情報をいただければ掲載いたします。

  ◆ALS・2012
 
新聞記事見出し
◆2012/04/02 「憂楽帳:桜」
 『毎日新聞』
◆2012/04/02 「日経サイエンス、5月号販売中(日経からのお知らせ)」
 『日経産業新聞』
◆2012/04/04 「佐賀大:入学式 1840人、表情晴れ晴れ 新たな一歩踏み出す /佐賀」
 『毎日新聞』
◆2012/04/08 「出張デイホスピス:がん患者に、悩みや療養アドバイス 京築保健福祉事務所で毎月第3水曜日 /福岡」
 『毎日新聞』
◆2012/04/10 「てんかん手術の後遺症減らせ 脳に直接電極つけ、厳密に場所特定 影響を最小限に」
 『朝日新聞』
◆2012/04/15 「難病カルテ:患者たちのいま/38 筋ジストロフィー /佐賀」
 『毎日新聞』
◆2012/04/15 「障害者参政権 保障を」
 『しんぶん赤旗』
◆2012/04/16 「(商業化する脳:1)伝 話さなくても脳波で発信」
 『朝日新聞』
◆2012/04/16 「難病患者の介護家族 リフレッシュ制度拡大 静岡県」
 『静岡新聞社』
◆2012/04/19 「神奈川工大、“まばたき”で家電操作できるシステム−筋電位変化を利用」
 『朝日新聞』
◆2012/04/24 「技術トレンド調査(2011年12月〜12年2月)(上)希少資源代替材など上位。」
 『日経産業新聞』
◆2012/04/25 「21時間以上の介護命じる=ALS訴訟−和歌山地裁」
 『時事通信』
◆2012/04/25 「ALS介護サービス「時間増を」 和歌山市に命じる判決」
 『朝日新聞』
◆2012/04/25 「ALS介護支給、1日21時間以上を市に命じる」
 『読売新聞』
◆2012/04/25 「21時間以上の介護サービス義務付け 和歌山地裁判決」
 『MSN産経ニュース』
◆2012/04/25 「ALS:介護時間「延長を」市の対応批判…和歌山地裁判決」
 『毎日新聞』
◆2012/04/25 「「主人も喜んでくれると思う」 ALS訴訟判決で介護の妻」
 『MSN産経ニュース』
◆2012/04/25 「ALS訴訟 21時間介護受けられる」
 『読売新聞』
◆2012/04/26 「インデックス 4月26日」
 『朝日新聞』
◆2012/04/26 「ALS介護、延長命じる 和歌山地裁、市に「1日21時間」」
 『朝日新聞』
◆2012/04/26 「「訪問介護21時間」評価 支援者ら歓声・拍手 ALS訴訟、原告「勝訴」/和歌山県」
 『朝日新聞』
◆2012/04/26 「(キセキを語る)京都大iPS細胞研究所長・山中伸弥さん:下 失敗していい【大阪】」
 『朝日新聞』
◆2012/04/26 「ALS介護「21時間に」 市に延長命じる 和歌山地裁判決 【大阪】」
 『朝日新聞』
◆2012/04/26 「ALS介護の時間増命じる 和歌山地裁 患者側の訴え認める」
 『読売新聞』
◆2012/04/26 「ALS訴訟 21時間介護受けられる=和歌山」
 『読売新聞』
◆2012/04/26 「ALS介護延長 初の認定 8時間から17.5時間に 和歌山地裁判決」
 『読売新聞』
◆2012/04/26 「ALS介護訴訟:「支給時間増うれしい」 原告の妻に笑顔−−地裁判決 /和歌山」
 『毎日新聞』
◆2012/04/26 「和歌山・ALS介護訴訟:介護時間延長、地裁判決 原告弁護団の池田直樹団長、和歌山市の大橋建一市長の話」
 『毎日新聞』
◆2012/04/26 「和歌山・ALS介護訴訟:時間「延長を」 市の対応を批判−−地裁判決」
 『毎日新聞』
◆2012/04/26 「ことば:筋萎縮性側索硬化症(ALS)」
 『毎日新聞』
◆2012/04/26 「和歌山・ALS介護訴訟:介護時間延長、市に命令 21時間以上に−−地裁判決」
 『毎日新聞』
◆2012/04/26 「難病ALS訴訟、介護時間延長、市に命じる、和歌山地裁判決、「1日21時間以上」。」
 『日経産業新聞』
◆2012/04/26 「難病ALS訴訟、介護時間延長、市に命じる――患者の70代妻、安堵の表情。」
 『日経産業新聞』
◆2012/04/26 「難病介護時間を延長」
 『しんぶん赤旗』
◆2012/04/27 「和歌山・ALS介護訴訟:介護時間延長、地裁判決 和歌山市、控訴せず」
 『毎日新聞』
◆2012/04/27 「ALS訴訟、和歌山市が控訴断念 21時間介護義務判決」
 『朝日新聞』
◆2012/04/28 「「長時間介護は時流」 ALS訴訟、控訴断念で和歌山市長 /和歌山県」
 『朝日新聞』
◆2012/04/28 「ALS訴訟、和歌山市が控訴断念 「お父さん、よかったね」患者と妻、喜び 【大阪】」
 『朝日新聞』
◆2012/04/28 「ALS介護延長訴訟で控訴断念 和歌山市」
 『読売新聞』
◆2012/04/28 「介護時間の延長受け入れ、ALS訴訟、和歌山市、控訴せず。」
 『日経産業新聞』
◆2012/04/28 「21時間超の介護受け入れ ALS訴訟控訴せず 和歌山市」
 『MSN産経ニュース』
◆2012/04/28 「和歌山市控訴せず ALS判決」
 『わかやま新報オンラインニュース』
◆2012/04/29 「なるほドリ:ALS訴訟の地裁判決の影響は? /和歌山」
 『毎日新聞』
◆2012/05/01 「ALS訴訟、地裁判決確定へ=「介護給付義務付け」原告評価−和歌山」
 『時事通信』
◆2012/05/01 「ALS訴訟判決確定へ 原告側も控訴せず」
 『日本経済新聞』
◆2012/05/02 「地裁判決が確定へ 原告側「控訴せず」 ALS訴訟 /和歌山県」
 『朝日新聞』
◆2012/05/02 「ALS介護訴訟:男性側弁護団、公的介護充実訴える /和歌山」
 『毎日新聞』
◆2012/05/02 「和歌山・ALS介護訴訟:時間拡大確定へ 原告も控訴せず」
 『毎日新聞』
◆2012/05/02 「ALS訴訟、判決確定へ、原告側も控訴せず。」
 『日経産業新聞』
◆2012/05/05 「原発:稼働ゼロ、関西の苦慮(その1) 停電、命にかかわる 不安募る医療機関」
 『毎日新聞』
◆2012/05/08 「[顔]女性科学者に贈られる「猿橋賞」を受賞する東京大学准教授 阿部彩子さん」
 『読売新聞』
◆2012/05/08 「出版:中高生の未来へエール「あきらめないで行こう」 難病と闘い38年、御宿の元教師・滝口仲秋さん /千葉」
 『毎日新聞』
◆2012/05/09 「ALS、ES細胞で再現 京大 【大阪】」
 『朝日新聞』
◆2012/05/09 「ES細胞でALS再現 治療薬開発に期待」
 『読売新聞』
◆2012/05/09 「ひと:阿部彩子さん=「氷床」研究で猿橋賞に選ばれた」
 『毎日新聞』
◆2012/05/09 「京大、筋肉が動かなくなる難病ALS、ES細胞で症状再現。」
 『日経産業新聞』
◆2012/05/09 「京大、難病ALSをES細胞で再現 治療薬開発に利用も」
 『日経速報ニュースアーカイブ』
◆2012/05/09 「京大、ヒトES細胞からALS疾患モデルを作製して病状再現に成功」
 『日経速報ニュースアーカイブ』
◆2012/05/10 「ニュースでQ」
 『朝日新聞』
◆2012/05/12 「人工呼吸器:バッテリー、保険適用 厚労省義務付け、在宅患者の不安解消」
 『毎日新聞』
◆2012/05/12 「人工呼吸器:電源に保険適用 在宅患者、停電対策で」
 『毎日新聞』
◆2012/05/12 「人工呼吸器:バッテリー、保険適用 計画停電で問題発生、今年度から対象明記」
 『毎日新聞』
◆2012/05/12 「青木志帆弁護士:障害者、難病患者守りたい−−尼崎あおぞら法律事務所 /兵庫」
 『毎日新聞』
◆2012/05/12 「ALS地裁判決が確定=和歌山」
 『読売新聞』
◆2012/05/12 「サウンドハウス、Carvinとジェイソン・ベッカーが共同制作したギターを発売」
 『日経速報ニュースアーカイブ』
◆2012/05/15 「ALS訪問介護、法制度の確立を 判決確定で日弁連会長 /和歌山県」
 『朝日新聞』
◆2012/05/15 「ALS判決確定 日弁連会長が評価=和歌山」
 『読売新聞』
◆2012/05/16 「「これからも前進、前進」 難病の「篠沢教授」、音声ソフトで声復活 都内で講演」
 『朝日新聞』
◆2012/05/16 「難病女性と家族描いた番組合評 審議会=長崎」
 『読売新聞』
◆2012/05/18 「「iPS」知財、進捗60%、京大・山中教授、日経電子版2周年で講演。」
 『日経産業新聞』
◆2012/05/18 「夏の節電尽きぬ不安、在宅患者「協力は限界」、学校「子供の健康が…」。」
 『日経産業新聞』
◆2012/05/19 「北電、7%節電要請 計画停電「極力回避する」 /北海道」
 『朝日新聞』
◆2012/05/19 「節電弱者、おびえる命 呼吸器、手動式を用意 【大阪】」
 『朝日新聞』
◆2012/05/19 「節電:北電管内7% 難病患者ら不安の声 医療機器、非常電源普及進まず」
 『毎日新聞』
◆2012/05/22 「理化学研究所と武田薬品、中枢神経疾患領域で創薬・創薬技術開発で連携センターを開設」
 『日経速報ニュースアーカイブ』
◆2012/05/24 「(インタビュー)障害者が生きる タレント・稲川淳二さん」
 『朝日新聞』
◆2012/05/24 「生きられる世に変えよう 「生存学」を研究する 立岩真也さん51」
 『読売新聞』
◆2012/05/25 「節電:九電10%、医療・介護の現場では… 「工夫で乗り切れる」 「5%限度」の声も」
 『毎日新聞』
◆2012/05/26 「(となりの原発)迫る停電、命の不安 人工呼吸器や透析に頼る患者ら /滋賀県」
 『朝日新聞』
◆2012/05/28 「(インタビューズ)大好き! ミシュラン三つ星シェフ・福本伸也さん /兵庫県  THE INTERVIEWS (34歳)」
 『朝日新聞』
◆2012/05/28 「[ズームアップ]母から母へ 口でつづる愛」
 『読売新聞』
◆2012/05/29 「ALS患者の訪問介護、21.5時間に増 判決うけ和歌山市 【大阪】」
 『朝日新聞』
◆2012/05/29 「和歌山・ALS介護訴訟:判決受け市、1日21.64時間に拡大」
 『毎日新聞』
◆2012/05/30 「妻「やっと終わった」 24時間はかなわず ALS介護延長 /和歌山県」
 『朝日新聞』
◆2012/05/30 「ALS男性介護 21.5時間支給 和歌山市=和歌山」
 『読売新聞』
◆2012/05/31 「「訪問介護増」、香川でも提訴 和歌山に続き 【大阪】」
 『朝日新聞』
◆2012/05/31 「母から母へ 口でつづる愛 6人の育児経験「自然に愛して」=長崎」
 『読売新聞』
◆2012/06/01 「[医療ルネサンス]ALSを生きる(1)筋肉の萎縮「まさか僕が」(連載)」
 『読売新聞』
◆2012/06/04 「[医療ルネサンス]ALSを生きる(2)病院建設 眼球で指示(連載)」
 『読売新聞』
◆2012/06/04 「球脊髄性筋萎縮症:新たな治療法 名古屋大、細胞の変性抑制に成功」
 『毎日新聞』
◆2012/06/04 「氷床変動の再現で女性研究者の賞を受賞、阿部彩子氏(フォーカス)」
 『日経産業新聞』
◆2012/06/05 「[医療ルネサンス]ALSを生きる(3)意思伝達装置 仕事の友(連載)」
 『読売新聞』
◆2012/06/06 「[医療ルネサンス]ALSを生きる(4)保険きく薬 まだ1種類(連載)」
 『読売新聞』
◆2012/06/07 「[医療ルネサンス]ALSを生きる(5)呼吸器つけ一人暮らし(連載)」
 『読売新聞』
◆2012/06/08 「特集――電子版創刊2周年フォーラム、京都大学山中伸弥氏、iPS研究カギは人材。」
 『日経産業新聞』
◆2012/06/09 「「原発と一緒に歩む」 首相再稼働表明 おおい町民、前向く」
 『読売新聞』
◆2012/06/09 「原発と歩むしかない」地元おおい揺れた 首相 再稼働明言」
 『読売新聞』
◆2012/06/13 「節電・北海道:北電などへ要望、難病患者らの計画停電対応を /北海道」
 『毎日新聞』
◆2012/06/14 「ALS患者の勝訴確定 和歌山弁護士会が声明=和歌山」
 『読売新聞』
◆2012/06/19 「装着型ロボット、医療応用、サイバーダイン、歩行を補助、日米欧で治験へ。」
 『日経産業新聞』
◆2012/06/23 「専門家や医師が地域難病相談会 四日市で来月8日 /三重県」
 『朝日新聞』
◆2012/06/23 「難病患者ら不安「人工呼吸器、電源は」 計画停電75万戸対象 /大分県」
 『朝日新聞』
◆2012/06/23 「計画停電、その時何が 医療機関・事故対策などシミュレーション 【大阪】」
 『朝日新聞』
◆2012/06/23 「計画停電の概要発表 四電「不実施が原則」 企業など準備 不安の声も=香川」
 『読売新聞』
◆2012/06/23 「計画停電:実施なら、農家や患者に死活問題 工場も自前は最小限 /大分」
 『毎日新聞』
◆2012/06/23 「節電・北海道:計画停電 「早期の具体策を」 医療機器“命綱” 患者から強い声 /北海道」
 『毎日新聞』
◆2012/06/23 「再生医療の実用化へ制度づくり急げ(社説)」
 『日経産業新聞』
◆2012/06/23 「計画停電、万が一に備え、在宅患者、呼吸器の電源確保、大阪府警、手信号へ配置計画。」
 『日経産業新聞』
◆2012/06/23 「計画停電、万が一に備え、天神地下街、地上誘導頭悩ます、交差点、警官に手信号講習。」
 『日経産業新聞』
◆2012/06/24 「計画停電:不安の声 ALS患者団体、九電に支援求める 「命に関わる」 /宮崎」
 『毎日新聞』
◆2012/06/25 「迫る再生医療(4)英エディンバラ大所長に聞く――iPS細胞で病気解明(終)」
 『日経産業新聞』
◆2012/06/28 「(エコでいこ! 2012夏)計画停電備えが肝心 【大阪】」
 『朝日新聞』
◆2012/06/30 「女の気持ち:最後のエアメール 愛知県知多市・遅沢美也子(主婦・67歳」
 『毎日新聞』


催しもの、その他


 
 

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◆2012/04/02 「憂楽帳:桜」
 『毎日新聞』

 「病院から出ると、青空の下で土手に並ぶ桜が満開だった。花見の時期は私にとって、父を亡くした季節でもある。20年前の今ごろ、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患った父の死を見届け、病院を後にした時の光景を今も忘れない。

 ALSは全身の筋肉が衰え、呼吸も難しくなる。死の数日前、私はベッドわきに一人いた。腹が減って「パン買ってきていい?」と聞くと、父は「行ってこい」というふうにうなずいた。戻った時には呼吸困難を起こしていて、それから意識は戻らなかった。肝心な時に枕元を離れた。自責の念は桜と結びついた。

 しかし、いつごろからだろうか。こんな気がし始めた。自分より家族をいつも優先していた父の生き方が、つらい病床でも息子の空腹を思いやったやり取りに象徴されている、と。最期も父らしかった。今は勝手に納得して花を眺める。

 東日本大震災から1年余りたつ。昨年の桜は、多くの被災者には悔いや悲しみ、喪失感とともにあっただろう。私の個人的な感傷と比べられるはずもないが、被災者にとっての桜の意味が、時とともに変わることを願う。【麻生幸次郎】」(全文)
 
 

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◆2012/04/02 「日経サイエンス、5月号販売中(日経からのお知らせ)」
 『日経産業新聞』

 「主な内容 時空は粒々か/動物の体内コンパス/前立腺がん検診の是非/帰ってきたナンキンムシ/チョコレートの木を救う/脳震盪とALS/地球を潤すサハラの砂塵/ネットでシチズンサイエンス――ほか
 書店、日経販売店でお求めください(定価1400円)。詳細はhttp://www.nikkei−science.com/」(全文)
 
 

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◆2012/04/04 「佐賀大:入学式 1840人、表情晴れ晴れ 新たな一歩踏み出す /佐賀」
 『毎日新聞』

 「佐賀大の12年度入学式が3日、佐賀市文化会館で開かれた。強い風雨の中だったが、大学院生や編入学生を含め1840人が晴れ晴れとした表情で、学生としての新しい一歩を踏み出した。

 式で、学生を代表し、農学部に入学した北島悠さん(19)が「学業に励み、佐賀大学生としての本分を全うすることを誓います」と宣誓した。

 佛淵孝夫学長は「これからの数年間がみなさんの人生にとって輝ける時間でありますよう、全ての学生に対して最大限の支援とエールを送るべく教職員一丸となって取り組みます」と告辞を述べた。

 入学生の一人で、進行性の難病「筋ジストロフィー」を抱え、電動車椅子を使って生活する理工学部の高橋禎喜さん(18)=福岡県糸島市=は「一人ではできないこともあるので、友人を増やし手助けをしてもらいながら、頑張っていきたい」と抱負を語った。

 大学ではサークル活動にも参加したいと考えている。難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の物理学者、スティーブン・ホーキング博士への憧れから「宇宙がどうやってできたか」を追究する研究者になるのが目標だ。【蒔田備憲】」(全文)
 
 

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◆2012/04/08 「出張デイホスピス:がん患者に、悩みや療養アドバイス 京築保健福祉事務所で毎月第3水曜日 /福岡」
 『毎日新聞』

 「がんや神経難病の患者の不安を受け止め、療養についてアドバイスする「出張デイホスピス」が4月から行橋市中央の県京築保健福祉事務所で始まる。同市の緩和ケアサロン「ほっとひと息」での相談事業を同事務所に出向いて実施するもので、スタッフの看護師らは「話すことで楽になる。気軽に利用して」と呼びかけている。

 デイホスピスは毎月第3水曜日の午前10時〜午後3時。対象は京築地区を中心に、がんや筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経難病を患い、介護保険の対象外かまたは医療ニーズの高い人。深刻な病にかかり孤立している患者の悩みを聞き、健康相談に乗って訪問看護につなげたり、手芸品を作って気分転換したりもする。希望者にはアロマオイルでマッサージも行う。

 2年前から実施している「ほっとひと息」では、これまで45人が延べ720回利用した。涙を流しながら悩みを打ち明け「家族には話せなかった。きょうは眠れそう」と帰っていく人もいるという。

 出張会場の会議室にはソファやクッション、CDラジカセを持ち込み、リラックスできる環境を演出する。担当看護師の白川美弥子さんは「病名を知られたくないのでケアサロン通いに抵抗がある人も、公共の施設なら通いやすいと思う。患者さんに寄り添って共に考え、安心して在宅療養できる環境をつくっていきたい」と話す。

 県のモデル事業のため利用は無料。問い合わせや予約は、ほっとひと息0930・22・2575。【山本紀子】

〔京築版〕」(全文)
 
 

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◆2012/04/10 「てんかん手術の後遺症減らせ 脳に直接電極つけ、厳密に場所特定 影響を最小限に」
 『朝日新聞』

 「薬が効かないタイプのてんかんで、手術による言葉や運動への後遺症が心配されるような人にも、脳波を細かく解析することで後遺症リスクを下げ、手術をできるようにする技術が進んできた。手法を応用し、体を動かせない人の意思疎通を助ける試みも始まった。

 中学2年の夏休みだった。朝食の時、突然コップを落とした。でも、ぼーっとして、10秒間ほど記憶がない。大阪府寝屋川市の女性(23)にとって、それが最初の発作だった。
 病院のMRI検査で頭を調べると、左側の側頭葉という場所に影が見つかり、てんかんと診断された。脳細胞の一部から異常な電気信号が出て、けいれんなどの発作を繰り返す病気だ。
 薬が効かず、母親がいないとどこへも出かけられなくなった。20歳のとき、大阪大病院で手術を受けることになった。
 女性の場合、異常な信号の発信源となる「焦点」と呼ばれる場所が、言葉にかかわる言語野という領域に近かった。焦点を取りすぎると、話をするのが不自由になる心配がある。そこで、脳神経外科の貴島晴彦医師の提案で「脳表機能マッピング」を受けた。
 頭を直径10センチほど開いて、脳波をとらえる電極を100個ほど敷き詰めたシリコンシートを脳表面に置き、いったん閉じる。2週間そのままにして、焦点はどこにあるのか、言語野がどこにあるか、特定した。
 2度目の手術で言語野を慎重に避けつつ、焦点を取り除いた。手術室を出てすぐ、無意識のまま「寒い」と言葉が出た。発作は止まり、マヒもない。今は一人で外出ができ、美術の習い事をしている。
 てんかん発作は、7〜8割は薬で抑えられるとされる。複数の薬が効かず、焦点を特定できれば、手術が選択肢になる。ただ、言葉や運動などへの後遺症を避けるため、個人ごとに違う焦点や言語野などの場所を見極める必要がある。
 一般に、焦点は脳波をみる電極を頭の表面につけたり、MRIを使ったりして探す。だが、場所を測る精度に限界があり、厳密な特定は難しかった。
 脳表機能マッピングは、発作を起こしているときの焦点の場所がリアルタイムで正確にみられるのが強みだ。電極から電気を流しながら患者の反応をみれば、言語野などを細かく区別でき、手術の計画をより精密に立てられる。
 技術は1990年ごろに登場した。近年のデジタル技術の進化で解析精度が飛躍的に高まり、いまは10年前の5倍以上の細かさで調べられるという。
 日本てんかん学会によると、国内でてんかんの外科手術に取り組む27施設の半数ほどで、こうしたマッピングをしている。東京大の川合謙介准教授は「この技術によって、患者の希望や生活に合わせた手術ができるようになった」と話す。
 会話が不可欠の職業なら、多少発作が残る可能性があっても言語野へのメスを避ける。言語障害はリハビリで補うので発作をとにかくなくしたいなら、焦点を残さないことを優先する。脳の様子がよくわかるので、そんな選択がしやすい。公的保険が効き、自己負担額は20万円ほどに収まることが多いという。
 ただ、電極を入れている間は頭から配線が出ているため、入院が必要だ。感染症などの危険もある。川合さんは「焦点が左右の脳に広がっていて手術の効果自体が見込めない場合などは、別の治療法を考えないといけない」と話す。

 ●脳波を感知、義手やマウス動かせたら… 患者自立へ研究進む
 脳のどの領域がどんな役割を果たしているのか。脳波を使ったこうした解析は、義手や義足を動かしたり、言葉がしゃべれない人が意思疎通したりする試みにも応用されつつある。
 何かをしようとするときに特有の脳波をあらかじめ分析し、その脳波が出たときに、目的の動きを機械に代行させようという試みだ。脳と機械を融合する「ブレーン・マシン・インターフェース」(BMI)と呼ばれる。
 阪大脳外科のチームは、全身の筋肉が動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者を対象に、マッピングで使う電極を頭に埋め込み、義手やコンピューターのマウスを動かせるか調べる臨床研究を倫理委員会に申請中だ。マウスをうまく使えれば、体が動かなくても文章を書いたりして意思を伝えられる。
 チームの吉峰俊樹教授は「脳波の解読精度をさらに高め、患者さんの自立と家族の負担軽減につなげたい」と話す。
 (東山正宜)
       *
 医療サイト・アピタルに、意見交換ができる「もっと医療面」を開設しています。

 【図】
電極シートを使った脳波解析のイメージ」(全文)
 
 

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◆2012/04/15 「難病カルテ:患者たちのいま/38 筋ジストロフィー /佐賀」
 『毎日新聞』

 「◇「宇宙を学びたい」 研究者目指し大学へ

 4月3日、佐賀市文化会館で開かれた佐賀大入学式。電動車椅子に乗ったスーツ姿の高橋禎喜さん(18)=福岡県糸島市=は、付き添いの兄弟、両親とともに出席した。同大理工学部物理科学科の新入生として「宇宙の成り立ちを追う研究者になりたい」という目標に向けた新生活をスタートさせた。

 発症は幼稚園生の頃。両親からは同年代の子供と比べておとなしいように見えた。「跳んだりはねたりしない」様子を心配して通院させ「筋ジストロフィー」と判明した。

 小学校入学後、学年が上がるにつれ、歩くのが遅れるようになる。5年生の頃には外出時、車椅子を常用していた。中学校では当初、校舎にはエレベーターなどが無かったこともあってか、入学時に「事故があっても責任を追及しない」という書面を提出した。

 教師や同級生は協力してくれた。トイレや階段の昇降は教師が介助した。「技術」の時間には、同じ班の友人が「特注デスク」を製作。肩より高く腕が上がらず、肘を置いてノートを取る高橋さんに合うよう、机を高くし、車椅子が入るように幅を広くした。机の広さも2倍にして1時限ごとに教科書を出し入れせず上に置いておけるよう工夫した。

 高校の進学先を検討する際も担当教師が奔走。受け入れに積極的な高校を探した。通信制高校も検討していただけに、母真喜子さん(44)は「人に恵まれていましたね」と振り返る。

 外遊びができない分、勉強や読書が好きだった。特に理科。図書室で過ごす時間も長く自然とSFや科学に関する本を選んでいた。

 中でも、進行性の難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」患者の物理学者、スティーブン・ホーキング博士の伝記が印象に残っている。「車椅子に乗っていても研究できるんだ」。似た病気を抱えていることもあり「自分にもできるかも」と目標を持ち始めた。

 大学は、両親の車で自宅から通える範囲で選んだ。どの大学でも試験には「事前相談が必要」と言われ、そのために診断書を5、6通用意しなければならなかった。

 学校に専用の机を配置してもらうなどの配慮もあり、不都合は感じていない。ただ今後は、エレベーターのない教室での講義も増えると見込まれ、大学側も対応を急いでいる。

 「体の中は至って健康ですよ」といい、体調を大きく崩したこともないという。病気の進行についても「自分の中では意識したことないなあ」と、ひょうひょうと語った。【蒔田備憲】

………………………………………………………………………………………………………

 ◇筋ジストロフィー

 全身の筋力低下が進行していく遺伝性の病気。発症年齢や症状が異なるさまざまな種類があり、高橋さんの場合は「デュシャンヌ型」と呼ばれるタイプ。国内の患者数は推計2万〜3万人。日本筋ジストロフィー協会によると国の難病対策のあり方を定めた「難病対策要綱」(1972年)の前から国の研究が進められてきたという。医療費助成の対象「特定疾患」には指定されていない。」(全文)
 
 

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◆2012/04/15 「障害者参政権 保障を」
 『しんぶん赤旗』
「障害のある人の参政権保障を求めるシンポジウムが14日、東京都内で開かれました。主催は、「障害をもつ人の参政権保障連絡会」など6団体です。  「私たちの参政権を妨げているもの」と題したシンポジウムでは、金沢大学の井上英夫教授を進行役に、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の投票権裁判の元原告、橋本操さんと岐阜県中津川市の代読裁判原告で元同市議(日本共産党)の小池公夫さんと妻の典子さん、成年後見制度選挙訴訟弁護団の杉浦ひとみ弁護士が参加しました。  成年後見制度は、後見人が判断能力の不十分な人の権利擁護のため財産管理や契約などを支援するもの。一方、後見人がつくと被後見人は参政権がなくなります。杉浦弁護士は「選挙権を奪うことは人の尊厳を奪うことだ」と強調。障害者も参政権があって当たり前の国を目指したいと決意を述べました。  小池さんは発声障害があり、議会で代読発言を認められなかったのは不当だとして中津川市を訴えています。「『障害者が自分の障害を補う手段を自分で選択するのは当然だ』というのがいまの社会の流れだ」と指摘。裁判でこの流れを促進させる思いを語りました。  橋本さんは2000年、当時の公職選挙法下での郵便投票で代筆が認められないのは憲法違反だと他の患者3人と訴訟を起こしました。その後、国会で同法を改正し代筆が可能となったことを紹介しました。  井上教授は基調講演で、社会保障のあり方が問われているいまこそ、誰もが参政権を保障される仕組みが必要だと強調しました。 【写真説明】(写真)障害のある人の参政権保障をと開かれたシンポジウム=14日、東京都港区 」(全文)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-04-15/2012041515_01_1.html
 
 

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◆2012/04/16 「(商業化する脳:1)伝 話さなくても脳波で発信」
 『朝日新聞』

 「「話さなくても自分の気持ちを伝えられないかな」。恥ずかしがり屋のある女性クリエーターの願いから、白い猫の耳の形をしたカチューシャ、「necomimi」は生まれた。
 これをつけた女性モデルをカメラマンが撮り始めると、機械音とともに耳がぐるぐる回り出した。シャッター音が鳴りやむと、ネコの耳は垂れた。
 「モデルさんが写真を撮られる時って、みなさんこうなるんですよ」。開発プロジェクト「neurowear」の鈴木教久さんが言った。
 シャッター音に反応しているのではない。necomimiには、女性の額から脳波を読み取るセンサーがついていて、脳波の中でもアルファ波が増えた時にはリラックスしているとみなして、ベータ波が増えた時は、集中しているとして、それぞれの状態に合わせて耳が動くように設計されているのだ。
 この「耳」の心臓部は、米国のベンチャー企業が開発した脳波を簡単に測定・分析する装置。頭に数十〜数百の電極を張り付けて測る医療用や研究用と違い、額の1点で測定するため、脳全体の活動がぼんやりとわかる程度。だが安価で、ゲーム機などへの利用も広がっている。
 necomimi開発プロジェクトの加賀谷友典さんは、脳から直接コミュニケーションする世界を視野に入れている。
 「言語を挟むことによって、ギャップが生じることもある。脳波でコミュニケーションできれば、言葉では伝えきれない情報を伝えられるかもしれない」
 産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の長谷川良平さんらは、全身の筋肉が次第に動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)向けに「ニューロコミュニケーター」というシステムを開発した。
 8個の電極が付いたヘッドセットを人の頭に載せると、何もしゃべっていないし、手も動かしていないのに、コンピューター画面上の人物(アバター)が「水が飲みたいです」としゃべり出す。
 人間の脳が「これだ!」と思った直後に出る特別な脳波をとらえ、512種類の文を組み立てる仕組み。企業との交渉に入っており、実用化が近いという。
     ◇
 私たちの脳はわからないことだらけ。生命科学の「最後のフロンティア」ともいわれるが、脳の活動を直接「見る」技術の進歩で、商業応用の動きもある。そんな「脳」の最先端を追った。(月舘彩子)

 【写真説明】
この耳で私の気持ちがばれちゃうの?=松本敏之撮影」(全文)
 
 

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◆2012/04/16 「難病患者の介護家族 リフレッシュ制度拡大 静岡県」
 『静岡新聞社』
「重病患者を在宅介護する家族の負担軽減策で、県は本年度「難病患者介護家族リフレッシュ事業」を大幅に見直した。家族が熟睡や外出をできるよう、一定時間看護師を派遣する試みを後押しする制度で、夜間と休日昼間のみだった利用可能時間帯を「終日」に拡大。県は補助の前提となる実施市町の早急な制度整備を働き掛け、利用者の増加を図る。  補助対象は、在宅で人工呼吸器を使用する特定疾患患者など。県疾病対策課によると、昨年度は当初予算113万3千円に対し36万6525円の利用実績にとどまり、利用は重症心身障害の4歳女児を含む富士市の男女3人と、伊豆市の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の60代女性のみだった。  利用低迷の背景に、夜間や土日に対応できる看護師が少ない▽買い物など平日の短時間利用の希望が多い―が指摘されてきた。県は日本ALS協会県支部などと意見交換し、利用時間の拡大を決めた。さらに、最初の2時間を診療報酬が得られる訪問看護に位置付け、事業者にもメリットが生じる制度とした。  2月時点で制度を整備していたのは熱海、伊東、伊豆、伊豆の国、富士、富士宮、焼津、磐田と、独自制度を設ける静岡、浜松両政令市の計10市。県の制度改正を受け、沼津や森など新たに9市町が実施を表明した。  日本ALS協会県支部の内山悦子事務局長(62)は「不公平がないよう、一つでも多くの市町に制度を用意してほしい」と期待する。  子ども6人を含む9人の利用希望者を把握する掛川市福祉課は「通常の訪問看護の後、『あと数時間長くいて』と願う家族の声は以前から多い。5月開始に向け準備を進めたい」としている。  難病患者介護家族リフレッシュ事業 筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの特定疾患患者や重症心身障害児・者などを24時間付きっきりで在宅介護する家族に、夜間に熟睡できる時間を提供しようと、県が1999年度に全国に先駆けて開始した。2006年度からは土日祝日に限り、昼間の利用も可能にしていた。看護師による通常の訪問看護とは別の、滞在型の看護料を実施主体の市町に補助する。利用者負担は1割で、残りを県と市町が半分ずつ補助する。 」(全文)
http://www.at-s.com/news/detail/100116083.html
 
 

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◆2012/04/19 「神奈川工大、“まばたき”で家電操作できるシステム−筋電位変化を利用」
 『朝日新聞』
「 神奈川工科大学は人のまばたきによる筋電位(生体信号の一種)変化を利用した家電操作システムを開発した。ヘアバンド状の脳波センサーを装着して筋電位を検出。まばたきによる信号パターンに対応した操作信号を照明やエアコン、テレビなどに送信できる。けがで一時的に体の動きができない人や筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対する意思伝達手段の一つとしての応用が期待される。  神奈川工科大学の田中博教授が開発した。まばたきによる筋電位変化の検出を市販の脳波センサーで行って信号パターンを解析、それを入力信号に応用する。脳波センサーで検出した信号をパソコンから赤外線送信し家電を操作できる。スマートフォン(多機能携帯電話)と組み合わせ、テキストも読み上げられる。  その際に自然に行うまばたきと、意識的に行うまばたきの筋電位変化は同じだったため、三つのモードから信号を構成して区別を図った。  「トリガーモード」はまぶたを開閉する間に1―2秒の時間を持たせ、単純なまばたきと区別し、それを信号生成と操作対象機器を選択する。まばたきの有無を組み合わせた「信号生成モード」、2回連続でまばたきをしてコマンド送信する「確認モード」も用意した。  従来、まばたきはカメラで検出していた。ただ、カメラと操作者が向き合わなければならず、距離も1メートル以内にカメラを置くことや暗い時は認識することが難しいなどの課題があった。 」(全文)
http://www.asahi.com/digital/nikkanko/NKK201204190006.html
 
 

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◆2012/04/24 「技術トレンド調査(2011年12月〜12年2月)(上)希少資源代替材など上位。」
 『日経産業新聞』

 「肺がん遺伝子発見の成果も
 日本経済新聞社は主な技術開発成果を評価する「技術トレンド調査」(対象期間2011年12月〜12年2月)をまとめた。大阪大学やダイハツ工業などが開発した貴金属のロジウムが不要な排ガス浄化触媒の新技術が1位となった。東京大学などがレアメタル(希少金属)をまったく使わないリチウム電池を試作した成果も5位に入り、希少資源を代替する技術が目立った。
 阪大などの触媒技術は高価なロジウムの代わりに銅の酸化物を使う。理論解析で自動車排ガスに含まれる一酸化窒素の浄化に適した材料構造を突き止めた。銅をまず酸化させ、さらに表面の酸素原子を取り除いて作る。
 車の排ガス浄化触媒には現在、高価なロジウムや白金、パラジウムを使っている。安価な銅で代替できればコスト低減につながる。「資源確保の観点から大きな成果」(科学技術振興機構の技術移転プランナー)
 レアメタルを使わないリチウム電池は東大と米マサチューセッツ工科大学の共同研究。正極の材料にコバルトやニッケルなどのレアメタルの酸化物の代わりに、カーボンナノチューブ(筒状炭素分子)を採用した。
 しかもナノチューブの中で、構造が1層や2層ではなく、3層のタイプに着目したのが特徴だ。「3層は今まで研究の目標になっていなかった。これが良ければ、みんな取り組むようになると思う」(電子系専門家)。ただ、量産化とコスト低減など実用化への課題を指摘する声もあった。
 このほか材料分野は、物質・材料研究機構が電気抵抗ゼロの超電導状態になる炭素繊維を開発した成果が10位。フラーレン(球状炭素分子)がつながった繊維構造で、糸や布状にも加工できる。
 今回のランキングでは医療やバイオの成果も上位に並んだ。2位には、がん研究会と国立がん研究センターのそれぞれのグループが新たに肺がん遺伝子を発見した成果が入った。京都大学やキリンホールディングスなどがビール醸造に使われるホップの苦み成分を作る遺伝子を特定した成果も同じく2位だった。
 発見した肺がん遺伝子は2つの遺伝子がくっついた融合遺伝子の一種で新しい治療薬につながる可能性がある。実用性については高いとする意見と低いとみる意見に分かれた。
 苦み成分遺伝子はホップの品種改良に役立つほか、抗炎症作用のある物質などを作る働きもあるため、健康食品の開発にも応用が期待できるという。「ゲノム(全遺伝情報)解析とインフォマティクス(情報科学)技術を利用した美しい研究」(国立大学のバイオ系教員)と受け止められた。
 医療分野ではほかに、京都大学が開発したヒトの新型万能細胞(iPS細胞)から大量の血小板を作る技術が8位。再生不良性貧血などの輸血治療に応用が期待できる成果だが、「データ不足で評価が難しい」(医療系団体幹部)との意見もあった。広島大学などによるC型肝炎ウイルスが肝臓細胞に感染する受容体の発見も同順位だった。
 《調査の方法》大学や企業など国内の研究機関が2011年12月〜12年2月に公表した主な技術開発成果(対象38件)を、日本経済新聞社が組織した外部の専門家と科学技術振興機構の技術移転プランナーが評価した。指標は(1)実用性(2)市場性(3)新規性(4)学術性(5)話題性――の5項目。項目ごとに評価の高い順に3、2、1点と採点し、各平均値を合計して総合順位を決めた。
【表】技術トレンド調査総合1〜10位
順位   研究開発者〓(発表日)   成果の概要   評価点
1   ダイハツ工業、大阪大学など(2月7日)   ロジウム不要の排ガス浄化触媒開発、貴金属コスト抑制   10.14
2   がん研究会、自治医科大学など(2月13日)   新たな肺がん遺伝子発見   10.00
国立がん研究センターなど〓(2月13日)   新たな肺がん遺伝子発見      
京都大学、キリンホールディングス、徳島大学(12月27日)   ビールの苦み作る遺伝子特定、ホップ内の物質解析      
5   東京大学など〓(12月7日)   レアメタル不要、リチウム電池試作、ナノチューブ使う   9.43
6   新日鉄エンジニアリング、東京大学(2月2日)   バイオ燃料製造、省エネ技術開発   9.38
7   沖縄科学技術大学院大学、東京大学など〓(2月8日)   アコヤガイのゲノム解読、真珠作り、仕組み解明に期待   9.33
8   京都大学〓(12月12日)   iPS細胞から血小板量産、輸血治療に応用   9.25
広島大学など〓(1月10日)   C型肝炎感染の受容体を発見      
10   物質・材料研究機構(12月27日)   超電導の炭素繊維開発、糸や布状加工OK   9.00
大阪大学、科学技術振興機構〓(1月4日)   光でくっつくゲル、水中で反応、医療用途など期待      
情報通信研究機構、光伸光学工業、セブンシックス(12月13日)   光通信網、容量10倍に、1〜1.32マイクロレーザー光発振      
名古屋大学〓(12月2日)   歯の幹細胞で神経再生、脊髄損傷治療に可能性      
東京医科歯科大学、医薬基盤研究所など〓(1月18日)   運動神経の難病ALS、サル使い症状再現      
大阪大学など〓(12月19日)   ブドウ表面の粉の主成分、オレアノール酸合成成功、抗加齢に効果      
【図・写真】物材機構が開発した超電導状態になる炭素繊維のイメージ(物材機構提供)」(全文)
 
 

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◆2012/04/25 「21時間以上の介護命じる=ALS訴訟−和歌山地裁」
 『時事通信』
「 24時間介護が必要なのに公的な介護時間に上限があるのは違法として、和歌山市に住む筋萎縮性側索硬化症(ALS)の70代の男性患者2人が、市を相手に24時間介護を求めた訴訟で、和歌山地裁(高橋善久裁判長)は25日、患者1人が1日21時間以上の介護サービスを受けられる介護支給を行うよう市に命じた。原告側弁護団によると、ALS患者が24時間介護を求めた訴訟の判決は全国初。
 高橋裁判長は、原告の病状から「ほぼ常時、付き添い介護サービスが必要」と認定。自宅で介護している妻の年齢や健康状態を考慮し、介護サービスへの公的給付を1日約12時間分としている現在の状況は「社会通念上、明らかに合理性を欠く」とし、少なくとも21時間分に増やす必要があるとした。
 その上で市に対し、1日当たり3.5時間分の介護保険法による介護給付に加え、障害者自立支援法に基づく介護給付費を17.5時間分支給するよう命じた。(2012/04/25-20:02)
」(全文)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201204/2012042500672
 
 

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◆2012/04/25 「ALS介護サービス「時間増を」 和歌山市に命じる判決」
 『朝日新聞』
「 和歌山市に住む難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の男性患者(75)らが、公的介護サービス提供時間を市が1日約12時間と決めたのは不当だとして、決定の取り消しと24時間介護を市に義務付けることなどを求めた訴訟の判決が25日、和歌山地裁であった。高橋善久裁判長は市が2011年度に決定した今年5月末までの提供時間12時間を、少なくとも21時間とするよう義務付ける判決を言い渡した。  男性らの弁護団によると、ALS患者の介護サービスの時間増を義務付けた司法判断は全国初。もう1人いた原告は昨年9月に死亡。遺族が引き継いだ慰謝料請求は棄却された。  高橋裁判長は判決で、11年度の市の決定について、市は男性や介護をしている妻の心身の状況などを「十分に考慮していない」などと指摘。市の決定は裁量権を逸脱しており、違法と判断した。そのうえで、少なくとも1日あたり21時間分のヘルパーの介護サービスがないと「男性の生命、身体、健康の維持などに対する重大な危険が発生する蓋然(がいぜん)性が高い」と結論づけた。 」(リンク内全文)(つづきあり)
http://www.asahi.com/national/update/0425/OSK201204250104.html
 
 

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◆2012/04/25 「ALS介護支給、1日21時間以上を市に命じる」
 『読売新聞』
「全身の筋肉が弱る筋萎縮性側索硬化症(ALS)で24時間介護が必要なのに、和歌山市がサービスを1日8時間としたのは障害者自立支援法に反するなどとして、同市内の男性(75)が、介護保険分のサービス時間(1日3・5時間)と合わせて24時間介護となる1日21時間のサービス提供と、慰謝料100万円を求めた訴訟の判決が25日、和歌山地裁であった。 高橋善久裁判長は「市の決定は障害程度や介護者の状況を適切に考慮していない」として、サービス提供時間を1日17・5時間に引き上げるよう命じた。慰謝料請求は認めなかった。  ALS患者への介護サービス時間増を命じる判決は全国で初めて。男性の介護サービスを受ける時間は、介護保険分(1日3・5時間)と合わせて1日12時間から21時間に増える。1日のうち、残る3時間程度は妻が介護できると判断した。  訴状などでは、男性は足の不自由な妻(74)と2人暮らし。頻繁なたんの吸引や人工呼吸器の管理が必要で、24時間介護を求めていた。  同市は、介護保険分を除いて独自に1日8時間の介護サービスを提供しており、「家族による介護が原則で、介護保険分のサービスだけを受ける市民もおり、8時間以上の提供は不公平になる」と主張していた。  高橋裁判長は、妻の健康状態などから1日21時間のサービスがないと男性の生命に危険があると判断。「市の決定は裁量権を逸脱、乱用しており違法」とした。  同市の大橋建一市長は「判決文を確認して対応を検討する」とのコメントを出した。  男性は、判決が出る前の「仮の義務付け」を申し立て、同地裁は昨年9月、サービスを1日16・5時間とするよう市に命じた。しかし、市が抗告。大阪高裁は「緊急性が明らかでない」として取り消し、最高裁も今年2月に男性の特別抗告を棄却した。 (2012年4月25日22時38分 読売新聞)」(全文)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120425-OYT1T00802.htm
 
 

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◆2012/04/25 「21時間以上の介護サービス義務付け 和歌山地裁判決」
 『MSN産経ニュース』
「筋肉を動かす神経が徐々に侵されていく難病「筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)」を患う和歌山市内の70代男性2人が、和歌山市に24時間体制の介護サービスなどを求めた訴訟の判決が25日、和歌山地裁であった。高橋善久裁判長は「(1日約12時間とした)市の決定は合理性に欠き、患者の生命、身体、健康の維持に重大な危険が発生する恐れがある」などとして、提供時間を21時間以上に拡大するよう市に義務付ける判決を言い渡した。  原告側弁護団によると、ALS患者への介護サービス提供時間をめぐる司法判断は全国初。原告の1人は昨年9月に死亡しており、遺族が引き継いだ慰謝料請求の訴えは棄却された。  和歌山市は介護サービスの提供時間を1日約12時間と決めていたが、高橋裁判長は判決理由で「患者は寝たきりでほぼ常時、介護サービスを必要とする状態」と認定。介護時間について、「たん吸引や人工呼吸器の管理など生存に関わる介護の必要性や、70代の妻への負担を考慮すると、少なくとも1日21時間は必要」とした。  原告側は「緊急性がある」として、介護時間増の仮の義務付けも申し立て、和歌山地裁は昨年9月に20時間に増やすよう決定したが、大阪高裁が市の抗告を受けて決定を取り消し、最高裁も原告側の特別抗告を退けていた。  原告側代理人の長岡健太郎弁護士は「十分な介護サービスを受けられていない他のALS患者を勇気づける判決」と評価。和歌山市の大橋建一市長は「判決の詳細を把握していないので判決文を確認し、対応について検討していきたい」とのコメントを出した。 」(全文)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120425/trl12042521050005-n1.htm
 
 

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◆2012/04/25 「ALS:介護時間「延長を」市の対応批判…和歌山地裁判決」
 『毎日新聞』
「 難病の筋萎縮(きんいしゅく)性側索硬化症(ALS)の70代の男性患者=和歌山市=が、市に1日24時間の介護サービスの提供を求めた訴訟で、和歌山地裁(高橋善久裁判長)は25日、現行の1日あたり約12時間から、21時間以上に延長するよう命じる判決を言い渡した。原告弁護団によると、ALS患者を巡り公的介護サービスの時間延長を認めた司法判断は初めて。  判決によると、06年6月にALSと診断された男性は寝たきり状態で、70代の妻と2人暮らし。左足小指など体の一部しか動かず、人工呼吸器を付けている。公的介護に加え、妻とヘルパーのボランティアにより24時間態勢で介護をしている。  男性は、障害者自立支援法と介護保険による24時間の介護サービスを求めてきたが、市側は「24時間の介護は必要ない」として、約12時間のサービスしか認定してこなかった。  判決はまず、男性について「ほぼ常時、介護者がそばにいる必要がある」と認めた。そのうえで、(1)妻は高齢で健康に不安がある(2)男性の人工呼吸器が正常に動作しているか頻繁な確認が必要(3)流動食の提供に細心の注意が必要??などと指摘。「少なくとも1日21時間はプロの介護がなければ、生命に重大な危険が生じる可能性が高い」と結論付けた。  1日約12時間という市側の決定に関しては「妻が起床中は、一人で全ての介護をすべきだという前提で、裁量権の逸脱だ」と厳しく批判した。【岡村崇】  ◇解説…自治体で運用に差  ALS患者への介護時間の延長を命じた今回の判決は、公的介護が不十分なために生命が危険にさらされないよう、行政側に柔軟な対応を求めたものといえる。日本ALS協会の金沢公明事務局長も「ALS患者には、24時間の介護が必要不可欠だ」と一定の評価をしている。  重い障害を抱える人に公費で介護を提供する「重度訪問介護」は、障害者自立支援法に基づくもので、具体的な介護の時間は市町村の裁量に任されている。  しかし、自治体間で運用に差があるうえ、財政支出を抑えるために上限を厳しくしている自治体もあるとの批判が、障害者団体などから出ていた。  判決を踏まえ、全国の自治体は、重い障害がある人に必要な介護サービスを提供しているか、改めて検証する必要があるだろう。 」(全文)
http://mainichi.jp/select/news/20120426k0000m040123000c.html
 
 

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◆2012/04/25 「「主人も喜んでくれると思う」 ALS訴訟判決で介護の妻」
 『MSN産経ニュース』
「 「『時間が増えたよ』と伝えたい。主人も喜んでくれると思う」。ALS患者への介護時間の拡大を和歌山市に義務づけた、25日の和歌山地裁判決。日々長時間の介護にあたってきた70代の妻は静かに語り、ほっとした表情を浮かべた。  夫で原告の70代の男性患者は、平成18年にALSを発症。たんの吸引や人工呼吸器の管理などのため、絶えず家族やヘルパーが見守る必要がある。高齢の妻にとり、毎日続く長時間の介護は心身ともに大きな負担になっていた。  判決後の記者会見で、妻は「少しでも(介護時間が)増えてよかった。私自身、体がいうことを聞かないようになってきていたので助かります」と語り、「このまま決まってほしい」と、市に対し控訴しないよう求めた。  原告団の長岡健太郎弁護士は「24時間介護が認められなかったのは残念だが、一歩進んだ。21時間以上という幅の中に、24時間介護の可能性もある」と一定の評価を示した。  今回の判決について、ALS患者だった兄を平成5年に亡くした、日本ALS協会(東京都)の金沢公明事務局長(61)は「和歌山地裁は妥当な判断をしてくれた。全国で十分に介護サービスを受けられていない患者たちも励まされると思う。和歌山市は控訴する理由はないはず」と話した。 」(全文)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120425/trl12042523420007-n1.htm
 
 

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◆2012/04/25 「ALS訴訟 21時間介護受けられる」
 『読売新聞』
「24時間の介護サービス支給を求めていた筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の男性(75)の訴えを、地裁(高橋善久裁判長)が一部認めた25日、男性の介護を続けてきた妻(74)は、「お父さんにできるだけのことをしてあげたいと頑張ってきたので ... 」(全文)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/wakayama/news/20120425-OYT8T01155.htm
 
 

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◆2012/04/26 「インデックス 4月26日」
 『朝日新聞』

 「■裁判 難病ALS、介護時間を延長
 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者が、24時間の訪問介護などを求めた訴訟の判決で、裁判所は最低でも21時間介護とするよう和歌山市に義務付けた。弁護団によるとALS患者の介護時間増を命じた判決は初。 38面」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「ALS介護、延長命じる 和歌山地裁、市に「1日21時間」」
 『朝日新聞』

 「和歌山市に住む筋萎縮性側索硬化症(ALS)の男性患者(75)が、ヘルパーの24時間訪問介護の義務付けなどを求めた訴訟の判決が25日、和歌山地裁であった。高橋善久裁判長は、介護時間を1日約12時間とした市の決定を「社会通念に照らし、合理性を欠く」として違法と認定。最低でも1日21時間とするよう、市に義務付けた。
 原告弁護団によると、ALS患者の介護サービスの時間増を命じた司法判断は初めて。全国8500人とされる患者の介護のあり方に、影響を与えそうだ。
 判決は、男性が呼吸や食事など、生存にかかわるすべての要素で介護がいると指摘。2人暮らしの妻は74歳で、歩行も不自由な点などを十分に考慮せず、起床中は妻1人で介護できるとの前提で介護時間を決めた昨年の市の決定は裁量権の逸脱、乱用で違法と結論。夫婦の状況などから訪問介護時間は1日最低21時間が必要との判断を導き出した。
 介護時間はどう算出されるのか。障害者自立支援法に基づく重度訪問介護サービスの申請を受けた市は、障害の程度に応じ、市の基準に沿ってヘルパーの訪問介護時間を決める。65歳以上なら、介護保険法分の介護時間と合わせ、必要な時間を決める仕組みだ。
 原告の男性は2006年6月、ALSと診断された。身体はほぼ動かせず、障害者自立支援法の障害程度区分は最も重い「6」。」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「「訪問介護21時間」評価 支援者ら歓声・拍手 ALS訴訟、原告「勝訴」/和歌山県」
 『朝日新聞』

 「少しでも時間が増えたらいい――。筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の介護をめぐる訴訟で、原告の男性患者の妻(74)は25日の判決後、会見で感想を求める報道陣に同じ言葉を繰り返した。ほぼ24時間、付きっきりの介護に加え、自身も足の具合が悪い。伴侶の難病と向き合った約6年の思いが言葉からあふれた。訪問介護時間を少なくとも21時間に増やすよう義務付けた判決に弁護団も「勝訴」と評価した。

 午後1時すぎ、和歌山地裁の3号法廷。男性患者の妻や原告側弁護団と支援者らは、判決言い渡しを前に続々と廷内に入った。小柄な妻は、杖を右脇に置き、用意された長いすに浅く座って、両手をひざの上に乗せて背筋を伸ばした。
 主文が読み上げられると、妻は口をひきしめ正面を見据えた。ヘルパーの訪問介護のサービス提供時間について、21時間を下回らないようにせよとの文言を聞くと、少し間をおいて、笑顔になって口に手を当てた。
 裁判所の外では支援者らが判決を待った。法廷から出てきた原告側弁護団の2人が「勝訴」と書かれた垂れ幕を掲げると、歓声が上がって拍手がわき起こり、喜び合った。
 午後2時すぎからは、和歌山弁護士会館(和歌山市四番丁)で原告側の記者会見があり、妻と池田直樹弁護団長らが出席した。
 池田団長は「義務付けの判決が出たという意味では勝訴と言えるが、求めていた『24時間』の主張は認められず、中間的なものだった点には少し不満が残る」と述べた。和歌山市に対しては「早急に21時間を下回らない支給決定をして欲しい」と訴えた。
 一方、判決に基づいて市が支給決定を見直しても、1日3時間は家族による介護をしなければならない点について、妻は「足があまりよくないが、それぐらいなら何とかなると思います」と語った。
 会見後に同じ会場で開かれた報告集会には、二十数人が参加した。男性患者と同じく重度の障害がある県内外の車いすに乗った男性たちの姿もあった。
 弁護団の長岡健太郎弁護士は、国会で審議中の障害者自立支援法の改正法案に触れ、「支援法に代わる法を作る第一歩になった」と話した。改正法案は、福祉サービスの対象になる障害の範囲に難病患者を加えることなどが柱だ。会場にいた障害者の男性は「判決が国に届いて早く法案が成立して欲しい」と語った。
 (雨宮徹、上田真美)

 ●全国の患者らに勇気
 <寝たきりの祖母を約10年間介護した経験を持つ介護ジャーナリスト小山朝子さんの話> 全国には「もっと介護時間を増やしてほしい」と考えている患者や家族がたくさんいるが、私を含めて「訴えても棄却される」と声を上げなかった人が大半だと思う。今回の判決はそういった人たちの意見を司法が聞いてくれることを示してくれた。全国の患者や家族に勇気を与える判決だ。

 ●「和歌山市は控訴断念を」 弁護団
 原告側弁護団と男性患者の妻らは25日、和歌山市長らに控訴しないよう書面で求めた。
 市障害者支援課の職員が対応した。原告弁護団の長岡健太郎弁護士が「原告にとって裁判の負担も大きい。判決を重く受け止め、控訴をしないという決断をすべきだ」と求めた。妻は「家に来て、本人の症状を見て決定して欲しい」と話した。

 【写真説明】
原告側の弁護士らが「勝訴」の垂れ幕を掲げると、支援者からは拍手が起こった=和歌山市二番丁
和歌山市職員(左)に申入書を提出する原告側の弁護士ら=和歌山市役所」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「(キセキを語る)京都大iPS細胞研究所長・山中伸弥さん:下 失敗していい【大阪】」
 『朝日新聞』

 「《山中伸弥さんは、人工多能性幹細胞(iPS細胞)や再生医療の未来をどうみているのか。》
 予測は実に難しい。20年前、がんは今ごろ克服できていると思われていました。一方、人の遺伝子解析はアポロ計画くらい難しいと考えられたのに、今や10万円ほどで遺伝子診断するサービスもあります。限界もありますが、科学の潜在能力はやっぱりすごい。
 数十年後に、こうなっていて欲しいな、という希望はあります。iPS細胞から作った骨髄が移植医療に使われていたり、全身の筋肉がやせていく筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療法が確立し、もう難病ではなくなったりしている未来です。
 《だが、夢ばかり語ってはいけないと指摘する。》
 すばらしい薬も副作用が出ることがあります。iPS細胞もうまく使えば人を幸せにできるでしょうが、一歩間違うととんでもないことになりかねない。iPS細胞からは精子ができ、生命とは何かという問題も生じています。医学とは新たに作り出すものでなく、もともと人間に備わっている力を利用すること。負の部分を隠さず、抑えながら、いい部分を伸ばすのが科学者の仕事です。
 《未来を担う中高生たちには、いろんな経験をして欲しいという。》
 高校のとき、ある先生の口癖が「スーパーマンになれ」でした。あれこれ考える前に行動して、たくさん失敗して欲しい。私も部活や自治会と何でもやりました。中学で始めた柔道では10回以上骨折して、今でも左手首の動きが悪い。「枯山水」というバンドのギター兼ボーカルとして、文化祭で歌ったこともあります。
 受験問題には正解がありますが、社会の問題は勉強だけでは解決しません。失敗は多くのことを学べる機会。恥ずかしくなんかない。若い人は、いくら失敗したっていいんです。(東山正宜)」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「ALS介護「21時間に」 市に延長命じる 和歌山地裁判決 【大阪】」
 『朝日新聞』

 「和歌山市に住む筋萎縮性側索硬化症(ALS)=キーワード=の男性患者(75)が、ヘルパーの24時間訪問介護の義務付けなどを求めた訴訟の判決が25日、和歌山地裁であった。高橋善久裁判長は、介護時間を1日約12時間とした市の決定を「社会通念に照らし、合理性を欠く」として違法と認定。最低でも1日21時間とするよう、市に義務付けた。

 原告弁護団によると、ALS患者の介護サービスの時間増を命じた司法判断は初めて。全国8500人とされる患者の介護のあり方に、影響を与えそうだ。
 判決は、男性が呼吸や食事、たんの吸引など、生存にかかわるすべての要素で介護がいると指摘。2人暮らしの妻は74歳と高齢で、股関節の病気や高血圧で歩行も不自由な点などを十分に考慮せず、起床中は妻1人で介護できるとの前提で介護時間を決めた昨年の市の決定は、裁量権の逸脱、乱用で違法と結論づけた。
 そのうえで夫婦の状況などから「生命、身体、健康の維持」には、訪問介護時間は1日最低21時間が必要との判断を導き出した。
 介護時間はどう算出されるのか。障害者自立支援法に基づく重度訪問介護サービスの申請を受けた市は、障害の程度に応じ、市の基準に沿ってヘルパーの訪問介護時間を決める。65歳以上なら、介護保険法分の介護時間と合わせ、必要な時間を決める仕組みだ。
 原告の男性は2006年6月、ALSと診断された。身体はほぼ動かせず、障害者自立支援法の障害程度区分は最も重い「6」。10年9月に市を提訴し、市側は生活状況から「24時間介護は必要なく、妻による介護も可能」と全面的に争っていた。提訴時にいたもう1人の原告男性は昨年9月に死亡。遺族が引き継いだ慰謝料請求は棄却された。
 和歌山市の大橋建一市長は「改めて判決文を確認し、今後の対応を検討したい」との談話を出した。

 ●難病、気休まらぬ家族
 原告側弁護団や患者団体は、“老老介護”の実態も踏まえた今回の判決が、訪問介護時間を決める全国の自治体の決定に波及するのでは、と期待を寄せた。
 判決後、和歌山市内で記者会見した原告の妻は「(訪問介護の)時間が増えたことはうれしい」と笑顔を浮かべた。現在、市内の自宅で、昼夜問わずの介護を続ける。たんの吸引はヘルパーなら十数秒でこなすが、妻は「私だと、もっとかかる」。吸引の間隔もばらばらだから、常に付き添う必要がある。寝る時も「すぐに動けるように」と普段着のまま。「いつも夫の状態が気になり、仮眠のような状態」と明かす。
 男性の左足小指のそばにはセンサーが取り付けられている。かすかな動きでパソコン画面上のカーソルを動かし、文字を選んで、意思を伝える。記者が訪問した際、妻から足のマッサージを受け、「か・お・か・ゆ・い」と入力するのに、5分ほどかかっていた。
 市の担当者が自宅を訪れるのは年1回の調査時のみ。裁判に訴えたのは、「毎年担当者が代わり、数十分で帰る。市にいくら言っても患者の現実が伝わらない」と考えたからだ。
 現在、市が決めた1日12時間を超える分の介護は、訪問介護サービス会社が無償で補っている。この日の判決はこの行為を「患者の生存に不可欠であるという判断で、やむを得ずしている」と指摘。市が介護時間を減らす要素にはならないと、はっきり指摘した。
 日本社会事業大学の佐藤久夫教授(障害者福祉論)は「障害者が地域で暮らすのに、家族に過度に依存することなく、社会が支援すべきだという公的責任を明確にした画期的な判決」と評価。「自治体は障害者やソーシャルワーカーら専門家の意見を尊重し、支援内容を決めるべきだ」と訴える。
 介護ジャーナリストの小山朝子さんによると、個人負担での訪問介護は、一般的に1時間数千円程度かかる。小山さんは「公的介護の時間を増やしてほしいと考える全国の患者の思いを、受け止めてくれた判決ではないか」と話す。(野中良祐)

 ◆キーワード
 <筋萎縮性側索硬化症(ALS)> 全身の筋肉が衰え、次第に動かなくなる病気で、原因や治療法は未解明。厚生労働省や患者団体「日本ALS協会」(本部・東京都)などによると、1年間で10万人に1人の割合でかかり、難病指定されている。体を動かす神経が障害を受け、筋力の低下で食べ物ののみ込みなどが困難になる。進行すると人工呼吸器をつける必要があり、声や身ぶりで意思を伝えられなくなる。」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「ALS介護の時間増命じる 和歌山地裁 患者側の訴え認める」
 『読売新聞』

 「全身の筋肉が弱る筋萎縮性側索硬化症(ALS)で24時間介護が必要なのに、和歌山市がサービスを1日8時間としたのは障害者自立支援法に反するなどとして、同市内の男性(75)が、介護保険分のサービス時間(1日3・5時間)と合わせて24時間介護となる1日21時間のサービス提供と、慰謝料100万円を求めた訴訟の判決が25日、和歌山地裁であった。高橋善久裁判長は「市の決定は障害程度や介護者の状況を適切に考慮していない」として、サービス提供時間を1日17・5時間に引き上げるよう命じた。慰謝料請求は認めなかった。
 ALS患者への介護サービス時間増を命じる判決は全国初。男性の介護サービスを受ける時間は、介護保険分(1日3・5時間)と合わせて1日12時間から21時間に増える。1日のうち、残る3時間程度は妻が介護できると判断した。
 訴状などでは、男性は足の不自由な妻(74)と2人暮らし。頻繁なたんの吸引や人工呼吸器の管理が必要で24時間介護を求めていた。
 同市は、介護保険分を除いて独自に1日8時間の介護サービスを提供しており、「家族による介護が原則で、介護保険分のサービスだけを受ける市民もおり、8時間以上の提供は不公平になる」と主張していた。
 高橋裁判長は、妻の健康状態などから1日21時間のサービスがないと男性の生命に危険があると判断。「市の決定は裁量権を逸脱、乱用しており違法」とした。
 同市の大橋建一市長は「判決文を確認して対応を検討する」とのコメントを出した。
 社会保障に詳しい大正大の新田秀樹教授は「今回の判決は、障害者それぞれの事情に応じた介護支給を行政に強く促した。今後の各自治体の判断にも影響を与えるだろう」と話している。」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「ALS訴訟 21時間介護受けられる=和歌山」
 『読売新聞』

 「◆原告弁護士「判断 全国に波及を」 
 24時間の介護サービス支給を求めていた筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の男性(75)の訴えを、地裁(高橋善久裁判長)が一部認めた25日、男性の介護を続けてきた妻(74)は、「お父さんにできるだけのことをしてあげたいと頑張ってきたのでうれしい」と喜んだ。介護保険とあわせて1日21時間の介護が受けられることになり、妻は「3時間だけならば、なんとかできるかも」とほっとした表情を見せた。
 男性は2006年にALSを発症。現在では寝たきりで会話もできず、わずかに動く左足の小指を使ってパソコンで思いを伝えるのが精いっぱいだ。
 妻は、自宅でヘルパーと共に男性を見守り、たんの吸引や人工呼吸器の管理にあたる。「意思が伝わらないことが一番はがゆい」と訴える男性のために、小指を丹念にマッサージすることもある。
 「体が前よりも言うことを聞かなくなった」と話す妻は、足が不自由な上、心不全や高血圧の持病があり、医師からは手術や入院を勧められている。それでも、ヘルパーが1日12時間も無償で介護を手伝ってくれていることを考えると、入院には踏み切れなかった。
 男性側の主張をほぼ認め、介護時間を9・5時間増やすよう命じる判決に、妻は「和歌山市には、裁判所が認めた内容を実現してもらいたい」と訴えた。
 原告側弁護団は判決後、同市に対して「判決を重く受け止め、控訴すべきでない」とする申し入れ書を提出した。長岡健太郎弁護士は「男性と同じような環境にいるALS患者は他の自治体にもいる。今回の司法の判断が全国に波及してほしい」と期待していた。
 
 〈筋萎縮性側索硬化症(ALS)〉
 運動神経が侵され、筋肉が弱って萎縮する原因不明の病気。次第に動けなくなり、発症から数年で発声や食事、自力呼吸ができなくなることが多い。全国の患者数は約8500人で、厚生労働省が特定疾患(難病)に指定している。
 
 写真=勝訴を知らせる垂れ幕に拍手する支援者ら(地裁前で)」(全文)

 

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◆2012/04/26 「ALS介護延長 初の認定 8時間から17.5時間に 和歌山地裁判決」
 『読売新聞』

 「全身の筋肉が弱る筋萎縮性側索硬化症(ALS)で24時間介護が必要なのに、和歌山市がサービスを1日8時間としたのは障害者自立支援法に反するなどとして、同市の男性(75)が介護保険分と合わせて24時間介護となる1日21時間のサービスと、慰謝料100万円を求めた訴訟の判決が25日、和歌山地裁であった。高橋善久裁判長は「市の決定は裁量権を逸脱しており違法」として、1日17・5時間に引き上げるよう命じた。慰謝料請求は認めなかった。
 ALS患者への介護サービス時間増を命じる判決は全国で初めて。男性の介護時間は、介護保険分と合わせて1日12時間から21時間に増える。
 訴状などでは、男性は足の不自由な妻(74)と2人暮らし。頻繁なたんの吸引や人工呼吸器の管理が必要で、24時間介護を求めていた。
 同市は「家族の介護が原則で、8時間以上は不公平になる」と主張していた。
 高橋裁判長は、妻の状態などから21時間のサービスがないと男性の生命に危険があると判断。「市は障害程度や介護者の状況を適切に考慮していない」とした。
 大橋建一市長は「判決文を確認して対応を検討する」とのコメントを出した。
 男性は判決が出るまでの救済を求め、同地裁は昨年9月、サービスを1日16・5時間とするよう市に仮の義務付けをした。だが、市が抗告。大阪高裁は「緊急性が明らかでない」と取り消し、最高裁も今年2月に男性の特別抗告を退けた。
 ◆「不可欠なサービス やっと認められた」
 「生きるのに必要な介護が、ようやく認めてもらえた」。和歌山市に対して介護支給を増やすよう命じた判決に、男性の介護を続ける妻(74)は笑顔を見せ、弁護団の長岡健太郎弁護士は「ALSの特質や本人の状況を十分に考慮してもらえた」と評価した。
 男性が命をつなぐには、何度もたんを吸引し、食事の世話などが必要だが、現在のサービスは介護保険も使って1日12時間。残る時間は、見かねたヘルパーがボランティアで介護する。
 同市は「家族の介護が原則」などとして、公費サービスの拡大を拒んできたが、男性より障害の程度が軽くても12時間を超える介護を認める自治体もある。
 社会保障に詳しい大正大の新田秀樹教授は「判決は障害者の個々の事情に応じた介護支給を強く促した。各自治体の判断にも影響を与えるだろう」としている。
 
 写真=記者会見で「夫も喜ぶはず」と話す男性の妻(中央、和歌山弁護士会館で)=辻和洋撮影」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「ALS介護訴訟:「支給時間増うれしい」 原告の妻に笑顔−−地裁判決 /和歌山」
 『毎日新聞』

 「「支給時間が少しでも増えたらうれしい」。和歌山市の筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)の70歳代の男性患者が公的介護を1日24時間に拡大するように求めた訴訟で、和歌山地裁は25日、同市に男性へのサービス拡充を義務付けた。訴えの一部が認められ、男性の70代の妻は笑顔をみせた。【岡村崇】

 判決後、男性の妻や弁護団が記者会見。長岡健太郎弁護士は完全勝訴ではなかった点は残念としながらも「24時間介護の可能性を認めている点では評価できる」とした。

 訴訟で男性側は「妻自身いつ発作を起こすか分からない。倒れないまでも疲弊して眠り込み、男性のたんの吸引ができず呼吸困難に陥ることもある」と訴えていた。判決は妻の重い介護負担を認め、「1日21時間以上の公的介護がなければ、男性の生命、健康の維持などに重大な危険が発生する蓋然(がいぜん)性が高い」とした。

 06年に夫がALSと診断されて以来、介護を続けてきた妻。「できるだけのことをしてあげたいと頑張ってきた」。しかし、最近は持病の足の関節痛がひどくなっていた。会見では判決に苦しみが少し癒されたかのよう。

 「夫に報告したら喜ぶと思う」と会見で話した通り、帰宅後、判決内容を聞いた夫は、顔をほころばせたという。」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「和歌山・ALS介護訴訟:介護時間延長、地裁判決 原告弁護団の池田直樹団長、和歌山市の大橋建一市長の話」
 『毎日新聞』

 「◇原告弁護団の池田直樹団長の話

 24時間介護は認められなかったが、和歌山地裁が仮の義務付けをした1日20時間を超える認定であり、勝訴といえる。

 ◇和歌山市の大橋建一市長の話

 判決の詳細を確認し、今後の対応について検討していきたい。」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「和歌山・ALS介護訴訟:時間「延長を」 市の対応を批判−−地裁判決」
 『毎日新聞』

 「難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の70代の男性患者=和歌山市=が、市に1日24時間の介護サービスの提供を求めた訴訟で、和歌山地裁(高橋善久裁判長)は25日、現行の1日あたり約12時間から、21時間以上に延長するよう命じる判決を言い渡した。原告弁護団によると、ALS患者を巡り公的介護サービスの時間延長を認めた司法判断は初めて。

 判決によると、06年6月にALSと診断された男性は寝たきり状態で、70代の妻と2人暮らし。左足小指など体の一部しか動かず、人工呼吸器を付けている。公的介護に加え、妻とヘルパーのボランティアにより24時間態勢で介護をしている。

 男性は、障害者自立支援法と介護保険による24時間の介護サービスを求めてきたが、市側は「24時間の介護は必要ない」として、約12時間のサービスしか認定してこなかった。

 判決はまず、男性について「ほぼ常時、介護者がそばにいる必要がある」と認めた。そのうえで、(1)妻は高齢で健康に不安がある(2)男性の人工呼吸器が正常に動作しているか頻繁な確認が必要(3)流動食の提供に細心の注意が必要――などと指摘。「少なくとも1日21時間はプロの介護がなければ、生命に重大な危険が生じる可能性が高い」と結論付けた。

 1日約12時間という市側の決定に関しては「妻が起床中は、一人で全ての介護をすべきだという前提で、裁量権の逸脱だ」と厳しく批判した。【岡村崇】

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 ■解説

 ◇自治体で運用に差

 ALS患者への介護時間の延長を命じた今回の判決は、公的介護が不十分なために生命が危険にさらされないよう、行政側に柔軟な対応を求めたものといえる。日本ALS協会の金沢公明事務局長も「ALS患者には、24時間の介護が必要不可欠だ」と一定の評価をしている。

 重い障害を抱える人に公費で介護を提供する「重度訪問介護」は、障害者自立支援法に基づくもので、具体的な介護の時間は市町村の裁量に任されている。

 しかし、自治体間で運用に差があるうえ、財政支出を抑えるために上限を厳しくしている自治体もあるとの批判が、障害者団体などから出ていた。

 判決を踏まえ、全国の自治体は、重い障害がある人に必要な介護サービスを提供しているか、改めて検証する必要があるだろう。」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「ことば:筋萎縮性側索硬化症(ALS)」
 『毎日新聞』

 「◇筋萎縮性側索硬化症(ALS)

 脳の命令を筋肉に伝える神経に障害が生じる難病。筋肉を動かそうとする命令が伝わらなくなるため、筋肉が動かしにくくなり、筋肉がやせて力がなくなる。知覚や感覚は正常とされるが、症状が進むと、自分で食事や呼吸ができなくなり、付きっきりの介護が必要になる。原因は不明で、有効な治療薬もない。厚生労働省によると、患者は全国に約8400人いる(10年度末時点)。」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「和歌山・ALS介護訴訟:介護時間延長、市に命令 21時間以上に−−地裁判決」
 『毎日新聞』

 「難病の筋萎縮(きんいしゅく)性側索硬化症(ALS)の70代の男性患者=和歌山市=が、市に1日24時間の介護サービスの提供を求めた訴訟で、和歌山地裁(高橋善久裁判長)は25日、現行の1日あたり約12時間から、21時間以上に延長するよう命じる判決を言い渡した。原告の弁護団によると、ALS患者を巡り、公的介護サービスの時間延長を認めた司法判断は初めて。【岡村崇、写真も】

 判決によると、06年6月にALSと診断された男性は寝たきりの状態で、70代の妻と2人暮らし。左足小指など体の一部しか動かず人工呼吸器を着けている。今は公的介護に加え、妻とヘルパーのボランティアにより24時間態勢で介護をしている。

 男性は、障害者自立支援法と介護保険による24時間の介護サービスを求めてきたが、市側は「24時間の介護は必要ない」として、約12時間のサービスしか認定してこなかった。

 判決はまず、男性について「ほぼ常時、介護者がそばにいる必要がある」と認めた。そのうえで、(1)妻は高齢で健康に不安がある(2)男性の人工呼吸器が正常に動作しているか頻繁な確認が必要(3)流動食の提供に細心の注意が必要――などと指摘。「少なくとも1日21時間はプロの介護がなければ、生命に重大な危険が生じる可能性が高い」と結論付けた。

 1日約12時間という市側の決定に関しては「妻が起床中は、一人で全ての介護をするべきだという前提で、裁量権の逸脱だ」と厳しく批判した。

 男性は10年9月、別の患者の男性(当時70代、提訴後に死亡)とともに提訴した。判決は、遺族が引き継いだこの男性分を含め、慰謝料の請求は退けた。

 高橋裁判長は昨年9月、男性の介護の緊急性を認め、介護時間を1日20時間に延長するよう仮に義務付ける異例の決定をした。しかし、大阪高裁は同年11月、この決定を取り消し、原告側が最高裁に特別抗告していた。

 ◇「頑張ってきた」妻ほっと

 原告の男性は、和歌山市内の古い木造2階建て住宅に妻と2人で暮らす。6畳の居間のベッドに寝たきりで、左足の小指と眼球しか動かせない。人工呼吸器を着け、流動食を補給してもらい、公的サービスとボランティアのヘルパーから24時間態勢で介護を受けている状態だ。

 しかし、介護ヘルパーの公的サービスは1日のうち12時間。残りは、同じヘルパーがボランティアで世話をしている。妻は足が不自由なうえ、高血圧で心不全を患っており、ボランティアがなければ、一人で介護をするのは難しいという。

 例えば、男性が装着する人工呼吸器は昼夜を問わず、たんを取り除かなければならない。平均すると、30分で2、3回の吸引をしているという。

 妻は人工呼吸器の状態などが気になり、ベッドの横に付き添って過ごすことが多いという。

 男性がALSと診断されたのは06年6月。この年の12月ごろから寝たきりになり、妻は5年以上、家事と介護に1日の大半を費やす生活を続けている。

 妻は判決後の会見で「夫にできるだけのことをしてあげようと介護を頑張ってきた。今回の判決は夫も喜んでくれていると思う」とほっとした表情だった。【岡村崇】

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 ■視点

 ◇行政に柔軟な対応要求

 ALS患者への介護時間の延長を命じた今回の判決は、公的介護が不十分なために生命が危険にさらされないよう、行政側に柔軟な対応を求めたものといえる。日本ALS協会の金沢公明事務局長も「ALS患者には、24時間の介護が必要不可欠だ」と一定の評価をしている。

 重い障害を抱える人に公費で介護を提供する「重度訪問介護」は、障害者自立支援法に基づくもので、具体的な介護の時間は市町村の裁量に任されている。

 しかし、自治体間で運用に差があるうえ、財政支出を抑えるために上限を厳しくしている自治体もあるとの批判が、障害者団体などから出ていた。

 介護時間の延長を巡っては、脳性まひの男性への介護を、1日18時間に延長するよう和歌山市に命じた大阪高裁判決(昨年12月)が確定しており、障害者への配慮を求める司法判断が続いている。

 今回の判決も和歌山市の対応について、「介護を受ける人の状況を適切に考慮しておらず、明らかに合理性を欠く」と断じた。判決を踏まえ、全国の自治体は、重い障害がある人に必要な介護サービスを提供しているか、改めて検証する必要があるだろう。【岡村崇】

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 ■ことば

 ◇筋萎縮性側索硬化症(ALS)

 脳の命令を筋肉に伝える神経に障害が生じる難病。筋肉を動かそうとする命令が伝わらなくなるため、筋肉が動かしにくくなり、筋肉がやせて力がなくなる。知覚や感覚は正常とされるが、症状が進むと、自分で食事や呼吸ができなくなり、付きっきりの介護が必要になる。原因は不明で、有効な治療薬もない。厚生労働省によると、患者は全国に約8400人いる(10年度末時点)。」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「難病ALS訴訟、介護時間延長、市に命じる、和歌山地裁判決、「1日21時間以上」。」
 『日経産業新聞』

 「難病の「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」を患う和歌山市の70代の男性2人が、和歌山市に24時間体制の介護サービスを求めている訴訟で、和歌山地裁は25日、現行の1日約12時間から21時間以上への拡大を義務付ける判決を言い渡した。
 原告側代理人によると、ALS患者の介護サービス支給時間増加をめぐる司法判断は初めて。判決は全国の自治体の支給時間に影響を与える可能性もある。慰謝料請求は退けられた。
 判決理由で高橋善久裁判長は「患者はほぼ常時、介護サービスを必要とする状態」と認定。障害者自立支援法に基づき1日約12時間の支給とした市の決定について「明らかに合理性を欠き、患者の生命に重大な危険が発生する可能性が高い」と指摘した。
 その上で、必要な介護時間は「たんの吸引や人工呼吸器管理など生存に関わる介護の必要性、妻への負担を考慮すると、少なくとも21時間」と結論付けた。
 2人は2010年9月に提訴。うち1人は11年9月、ALSに起因する肺炎で亡くなった。
 訴訟と並行し、原告側は「緊急性がある」として介護時間増加の仮の義務付けを申し立てた。和歌山地裁は11年9月、20時間に増やすよう決定したが、市の抗告を受けた大阪高裁が決定を取り消した。
 さらに原告側が最高裁に特別抗告したが、2月に棄却され、認められていなかった。
 和歌山市の大橋建一市長の話 判決文を確認し、今後の対応について検討していきたい。
 ▼ALS(筋萎縮性側索硬化症) 体を動かす神経が徐々に侵され、全身の筋肉が動かなくなる厚生労働省指定の難病。手足のしびれや脱力などから始まり、進行すると、感覚や知能ははっきりしたまま、寝たきりとなって食事や呼吸も困難になる。詳しい原因は不明。有効な治療法はなく、多くの場合人工呼吸器による延命措置が必要となる。厚労省によると、国内の患者数は2009年度末時点で約8500人。
【図・写真】ALS訴訟で和歌山地裁の判決を受け、弁護団と記者会見に応じる原告の妻(中)(25日、和歌山市)」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「難病ALS訴訟、介護時間延長、市に命じる――患者の70代妻、安堵の表情。」
 『日経産業新聞』

 「「社会的意義が大きい」。ALS訴訟の原告弁護側は判決を評価し、原告患者の妻も安堵の表情を見せた。
 70代の男性原告患者は2006年に発症。たんの吸引や人工呼吸器の管理などのため、絶えず家族やヘルパーの見守りが必要。同じく70代の妻にとって、日々の長時間の介護は心身ともに大きな負担だ。
 判決後の記者会見で、つえを使いゆっくり会場に入ってきた妻は「主人も喜んでくれる。私の足の具合も悪くなってきた今、1日3時間なら介護できる」と話した。
 支給時間の少なさに苦しむ患者や家族は多い。ヘルパーを雇うなどして患者を24時間見守るケースでは、経済的な負担も大きい。
 代理人の長岡健太郎弁護士は、判決が「21時間以上」と命じ、24時間介護の可能性が残ったことを評価。「社会的意義は大きい」と強調した。日本ALS協会の金沢公明事務局長も「他の自治体でも判断基準となって、支給時間の見直しにつながれば」と期待した。」(全文)
 
 

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◆2012/04/26 「難病介護時間を延長」
 『しんぶん赤旗』
「 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の男性(75)が、和歌山市が訪問介護を1日12時間しか認めないのは不当として24時間介護を求めた訴訟で和歌山地裁(高橋善久裁判長)は25日、1日21時間以上の介護を市に命じる判決を言い渡しました。  ALSは全身の筋肉が衰え、進行すると呼吸する筋肉も動かなくなり人工呼吸器を使用するなど24時間介護が必要な難病です。原告は人工呼吸器を着け自宅で生活しています。  同訴訟では昨年9月、1日20時間の「仮の義務づけ」(取り返しがつかない損害を避ける判決確定までの救済措置)決定が出されていました。  裁判後の報告会で原告弁護団の長岡健太郎弁護士は「24時間の義務づけまでは認められず残念だが、24時間の可能性を認める判決。命の危機にあるALS患者に少なくとも21時間の支給決定をせよと義務づけた」と判決を評価。原告の妻(74)は「今日帰って、お父さんに“時間が増えたよ”と話したい。よろこんでくれると思う」と話しました。  原告が利用する生協病院在宅総合ケアセンター事務局長で同訴訟を支援してきた森田隆司氏は「市は控訴せず判決をすぐに実行してほしい。裁判途中で2人の原告のうちの1人が亡くなった。亡くなった方の損害賠償を請求したが認められず残念だ」とのべました。報告会に参加した日本共産党の、くにしげ秀明衆院和歌山1区予定候補は「一定の評価ができる判決が出てよかった。こうした裁判を起こさなくてもよい政治にしなければと痛感しました」と話しました。 」(全文)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-04-26/2012042601_04_1.html
 
 

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◆2012/04/27 「和歌山・ALS介護訴訟:介護時間延長、地裁判決 和歌山市、控訴せず」
 『毎日新聞』

 「難病の筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)の和歌山市の70代の男性が、和歌山市に介護サービスを1日24時間に拡大するよう求め、和歌山地裁が21時間以上に延長するよう命じた判決に、同市は27日、控訴しないことを発表した。【御園生枝里】」(全文)
 
 

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◆2012/04/27 「ALS訴訟、和歌山市が控訴断念 21時間介護義務判決」
 『朝日新聞』
「 和歌山市に住む筋萎縮性側索硬化症(ALS)の男性患者(75)が、市にヘルパーの24時間訪問介護の義務付けなどを求めた訴訟で、介護時間を1日約12時間とした市の決定を違法とし、1日最低21時間の介護を義務づけた25日の和歌山地裁判決について、市は27日午後、控訴を断念する、と発表した。  大橋建一市長が記者会見で「病気の進行状況や、妻の健康状態などを考慮し、判決を厳粛に受け止める」と述べた。男性患者の代理人の弁護士は朝日新聞の取材に対し、「市は適切な判断をしてくれた。男性や奥さんとよく相談し、今後の対応を決めたい」と話している。 」(全文)
http://www.asahi.com/national/update/0427/OSK201204270065.html
 
 

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◆2012/04/28 「「長時間介護は時流」 ALS訴訟、控訴断念で和歌山市長 /和歌山県」
 『朝日新聞』

 「「長時間の介護は大きな流れなのかなと思う」。和歌山市の大橋建一市長は27日の会見で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の男性患者(75)へのヘルパーの訪問介護時間を「少なくとも1日21時間」と市に義務づけた和歌山地裁判決について、こう語った。
 この日、午後1時半に始まった市役所での定例会見の冒頭で、大橋市長は「判決の内容が妥当かどうかは意見のあるところだ」と述べたうえで、ALSが進行性の病気であることや家族の健康状態を判断して控訴しないことを決めた、と市の判断を説明した。
 一方、原告側も市の控訴断念を歓迎した。和歌山市内の自宅で市の判断を知った原告の男性患者の妻(74)は「長い裁判に一区切りがついた」とほっとした表情で語った。「お父さんも喜んでいる。本当にありがたい、この機会に全国のALS患者やその家族と集まって、あきらめないでと励まし合いたい」と話した。」(全文)
 
 

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◆2012/04/28 「ALS訴訟、和歌山市が控訴断念 「お父さん、よかったね」患者と妻、喜び 【大阪】」
 『朝日新聞』

 「和歌山市に住む筋萎縮性側索硬化症(ALS)の男性患者(75)に対し、1日最低21時間のヘルパーの訪問介護を市に義務づけた25日の和歌山地裁判決について、同市は27日、控訴の断念を発表した。24時間の訪問介護を求めた男性の訴えに判決は、介護時間を1日約12時間とした市の決定を、違法と判断していた。
 大橋建一市長は会見で「病気の進行状況や、妻の健康状態などを考慮し、判決を厳粛に受け止める」と述べた。市は男性の訪問介護時間を、21時間以上に積み増す可能性も示唆。5月中に男性の生活ぶりなどを改めて調べる方針だ。
 市によると現在、男性の1日の訪問介護時間は介護保険による固定分の約3・5時間に、障害者自立支援法に基づく重度訪問介護サービス分の8・5時間を加えた計12時間。大橋市長は判決が、市の裁量の幅が大きい重度訪問介護サービス分について「『市の決定は裁量権の逸脱』と指摘したことを考え、従うべきだと判断した」と述べた。
 控訴断念を知った男性の妻(74)は、夫が寝ている自宅のベッドに寄り添った。「お父さんよかったね。長かったなあ」。耳元で語りかけると、夫は口元をわずかに緩めたように見えた。「うれしそうやね」。全国約8500人のALS患者に「あきらめないで」とエールを送った。
 男性の代理人弁護士も朝日新聞の取材に「市は適切な判断をしてくれた」と評価。「男性や奥さんとよく相談したい」として、週明けにも対応を決める。
 障害者の福祉政策に詳しい東京大の福島智(さとし)教授は「地域で暮らす重度の障害者で、長時間の訪問介護が受けられる人はまだ少ない。判決が全国に波及し、必要な介護支援を受けられる障害者が増えるよう期待したい」と話した。

 【写真説明】
「お父さんよかったね」。市の控訴断念を受け、原告男性に妻が話しかけた=27日午後、和歌山市内の自宅、加藤美帆撮影」(全文)

 

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◆2012/04/28 「ALS介護延長訴訟で控訴断念 和歌山市」
 『読売新聞』

 「和歌山市に住む筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の男性(75)が、市に介護サービスの時間延長を求めた訴訟で、大橋建一市長は27日、介護保険と合わせて1日12時間から21時間に増やすよう命じた和歌山地裁判決を受け入れ、控訴を断念すると発表した。男性の妻(74)は「市が判決を受け入れたのならば控訴しない」と話しており、判決が確定する。
 大橋市長は、断念の理由を「男性の病気が進行性であることや、介護する家族の健康状態などを考慮した」と説明している。」(全文)
 
 

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◆2012/04/28 「介護時間の延長受け入れ、ALS訴訟、和歌山市、控訴せず。」
 『日経産業新聞』

 「和歌山市の大橋建一市長は27日、難病の「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」を患う男性への1日21時間以上の介護サービス支給を市に義務付けた、25日の和歌山地裁判決について、控訴しない方針を明らかにした。
 大橋市長は記者会見で「原告や原告の妻の健康状況を考慮して、厳粛に受け入れるべきだと判断した」と説明。8千人を超す全国のALS患者への影響について「(原告と)同じような状況の患者へは支給時間が変わってくる可能性もあるのでは」と述べた。
 和歌山市は再度ALS患者の状況を調査して、5月中に支給時間を決定する。」(全文)
 
 

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◆2012/4/28 「21時間超の介護受け入れ ALS訴訟控訴せず 和歌山市」
 『MSN産経ニュース』
「 ■原告団「妥当な判断」  難病の「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者への1日21時間以上の介護サービス支給を市に義務付けた和歌山地裁判決について、和歌山市の大橋建一市長は27日、控訴しない方針を明らかにした。原告団は「適切、妥当な判断」と評価したうえで、24時間支給を求めて控訴することについて慎重に検討している。  大橋市長はこの日の定例会見で、「原告の病気が進行性で家族の健康状態などを考慮した」と判決を受け入れた理由を説明。そのうえで「介護のサービス時間は市町村が決めることで、今回の判決の内容が妥当であるかどうかなどの意見もあるが、判決に従ってやっていく」と21時間以上の介護時間を提供することを確約した。市は男性の家族の生活状況などを調査し、5月中に介護時間を決定する。  一方、原告団の長岡健太郎弁護士は「和歌山市には控訴しないよう(判決当日に)申し入れ書を提出していたので適切、妥当な判断をしていただいたと思う」と評価。日々長時間の介護にあたってきた70代の妻の負担も軽減される。  ただ、21時間以上という幅に24時間介護の可能性は残るが、地裁に24時間必要だと認められなかったこともあり、控訴について「原告と相談したうえで決めたい」と話した。  25日の判決で、地裁の高橋善久裁判長は「患者は寝たきりでほぼ常時、介護サービスを必要とする状態」と認定。介護時間について「たん吸引や人工呼吸器の管理など生存に関わる介護の必要性や、70代の妻への負担を考慮すると、少なくとも1日21時間は必要」と判断していた。 」(全文)
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120428/wky12042802240002-n1.htm
 
 

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◆2012/4/28 「和歌山市控訴せず ALS判決」
 『わかやま新報オンラインニュース』
「 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う男性(75)に対し、和歌山市に一日21時間以上の介護サービスを命じた和歌山地裁の判決について、同市は27日、控訴しないと発表した。判決では、同市が決めていた一日約12時間の介護時間について違法と認定していた。  同日の定例記者会見で大橋建一市長は「原告の病気が進行性であること、家族の健康状態などを考慮して判決を厳粛に受け入れるべきと判断した」と説明。5月中に男性の生活状況などをあらためて調査し、介護時間を決定するが、判決が命じた一日21時間を最低ラインとし、上積みする可能性も示唆した。  介護時間の決定は市町村が行うことから、大橋市長は「今回の判決が妥当かどうかはいろいろと意見がある」とも述べたが、難病患者や重度の障害者に対する長時間介護の決定は「大きな流れなのかなと思っている」との認識を示した。  同市の判断を受けて和歌山ALS訴訟弁護団の長岡健太郎弁護士は「妥当な判断だと思う。全国のALS患者に与える影響も大きい」と評価した。訴訟では一日24時間の介護を求めてきたことから、「控訴するかどうかはこれから話し合って決めていきたい」と話している。 【写真説明】控訴しないと発表する大橋市長 」(全文)
http://www.wakayamashimpo.co.jp/2012/04/20120428_12351.html
 
 

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◆2012/04/29 「なるほドリ:ALS訴訟の地裁判決の影響は? /和歌山」
 『毎日新聞』

 「◇障害者の介護状況改善求めた 自治体は実態に即した判断を

 なるほドリ 筋萎縮(きんいしゅく)性側索硬化症(ALS)を患う70代の男性(和歌山市)が市に1日24時間の介護サービスを求めた訴訟で、和歌山地裁が、現行1日約12時間から1日21時間以上に延長するよう命じる判決を出したね。これまで、男性の介護はどうしていたの?

 記者 男性患者は左足の小指や眼球しか自力で動かすころができません。人工呼吸器を装着しており、痰(たん)の吸引や流動食の補給などを、妻とヘルパーの2人体制で行っています。市が公的介護として認めているのは1日12時間(介護保険も含む)。このため、残りの時間はヘルパーがボランティアで夜も滞在しています。

 Q 訴訟ではどのような点が争われたの?

 A 男性患者に24時間介護が必要か▽同居する妻がどれだけ介護することができるか――などです。判決では、高齢の妻の健康状態などを考慮し、「少なくとも1日21時間はプロの介護がなければ、男性の生命に重大な危険が生じる可能性がある」と指摘されました。

 Q 市町村から支給される介護サービス時間に不満を持つケースはほかにもあるの?

 A 脳性まひの男性(43)が和歌山市を相手取り支給時間拡大を求めた訴訟が起こされましたが、1日18時間以上に拡大するよう命じた大阪高裁判決が昨年12月に確定しています。

 Q 今回の訴訟は、今後どうなるの?

 A 和歌山市は27日に控訴しないことを発表しました。原告側はまだ、控訴について検討中ですが、妻は判決前の取材に「裁判に勝っても負けてももう終わりにしたい」と漏らしました。代理人も「市の判断は妥当」と受け止めています。判決が確定すると、市が改めて、支給時間について検討します。

 Q 支給時間について見直しの動きはあるのかな?

 A 支給時間は、各市町村が障害者自立支援法に基づいて決定します。現在、同法に代わる障害者総合支援法案が国会に提出されています。障害者区分によるサービス決定の見直しも検討されていますが、支給時間が大きく変わることはなさそうです。ただ、和歌山地裁が障害者の介護状況を十分考慮するよう求めた意義は重く、和歌山市だけでなく、全国の自治体がより障害者の実態に即した判断を心がける必要があるでしょう。<回答・岡村崇>

………………………………………………………………………………………………………

 あなたの質問をお寄せください。

 〒640−8227 和歌山市西汀丁38 レグルスビル2階 毎日新聞「質問なるほドリ」係(wakayama@mainichi.co.jp)」(全文)
 
 

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◆2012/05/01 「ALS訴訟、地裁判決確定へ=「介護給付義務付け」原告評価−和歌山」
 『時事通信』
「 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者に対する介護時間給付費の上限をめぐる訴訟で、原告側弁護団は1日、1日当たり21時間以上の給付費を支払うよう和歌山市に命じた和歌山地裁の判決を受け入れ、控訴の見送りを決めた。市側も控訴断念の意向を示しており、ALS患者への介護給付費の支給決定を義務付けた初の判決が確定する。  訴えていたのは、和歌山市在住の70代男性患者2人(1人は死亡)。介護サービスの公的給付の上限を約12時間としたのは違法として、上限をなくすよう求めていた。(2012/05/01-16:43) 」(全文)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201205/2012050100603
 
 

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◆2012/05/01 「ALS訴訟判決確定へ 原告側も控訴せず」
 『日本経済新聞』
「 難病の「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」を患う70代の男性への1日21時間以上の介護サービス支給を和歌山市に義務付けた4月25日の和歌山地裁判決について、男性ら原告側は1日、控訴しないと表明した。市も控訴しない方針を明らかにしており、判決が確定する。  原告側代理人の長岡健太郎弁護士は「大幅に支給量を増やした画期的判決。患者や妻の状態、ALSの特性が考慮されたことを評価した」と説明。70代の妻も「早く認めてもらって自宅で穏やかな生活がしたい」と話しているという。  ALS以外の患者も札幌地裁や高松地裁で、24時間介護を求め係争中。長岡弁護士は「今回の判決内容が影響するはず」と期待を示した。〔共同〕 」(全文)
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E2E3E2E08A8DE2E3E2E7E0E2E3E09180EAE2E2E2;at=ALL
 
 

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◆2012/05/02 「地裁判決が確定へ 原告側「控訴せず」 ALS訴訟 /和歌山県」
 『朝日新聞』

 「和歌山市に住む筋萎縮性側索硬化症(ALS)の男性患者(75)に対し、1日最低21時間のヘルパーの訪問介護を市に義務付けた4月25日の和歌山地裁判決について、原告の男性側は1日、控訴しない考えを明らかにした。市もすでに控訴断念を発表しており、地裁判決が確定する。
 男性の代理人の弁護士らがこの日、和歌山市内で会見した。男性の介護時間を1日約12時間とした市の決定を違法と判断した地裁判決を「男性の健康状態や妻の介護の可能性などを検討した上で、市の裁量権の逸脱を認めた意義は大きい」と評価。訴訟では24時間介護を求めてきたが「男性の家族の意向もくんで判決を受け入れた」と述べた。」(全文)
 
 

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◆2012/05/02 「ALS介護訴訟:男性側弁護団、公的介護充実訴える /和歌山」
 『毎日新聞』

 「筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)の70代男性への介護サービスを1日21時間以上に拡大するよう和歌山市に命じた和歌山地裁判決に対し、控訴しないことを表明した男性側の弁護団は1日、同市に改善を促す声明も発表した。

 和歌山市への要望は▽すみやかに原告に判決に従った支給決定をすること▽一人一人の事情を考慮した支給決定方法に改め、審査会を形骸(けいがい)化させず、機能させること――など。

 弁護団は「家族の介護負担などを考慮し人工呼吸器を付けずに亡くなってしまう患者さんが7割いるといわれている」と指摘し、公的介護の充実を訴えた。【御園生枝里】」(全文)
 
 

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◆2012/05/02 「和歌山・ALS介護訴訟:時間拡大確定へ 原告も控訴せず」
 『毎日新聞』

 「難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の和歌山市の70代の男性が、和歌山市に介護サービスを1日24時間に拡大するよう求め、和歌山地裁が21時間以上に延長するよう命じた判決について、男性側の弁護団は1日、控訴しないと発表した。同市も控訴を断念しており、判決が確定する。

 弁護団によると、原告の妻は「判決を受け入れ、(介護時間を)増やしてもらって自宅で穏やかに生活をしたい」と話しているという。弁護団は「個別事情を考慮して支給決定すべきだとした判決の意義を評価する」とした。原告の妻は取材に対し「今後の市の調査で24時間が認められたらと思う」と話した。【御園生枝里、岡村崇】」(全文)
 
 

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◆2012/05/02 「ALS訴訟、判決確定へ、原告側も控訴せず。」
 『日経産業新聞』

 「難病の「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」を患う70代の男性への1日21時間以上の介護サービス支給を和歌山市に義務付けた4月25日の和歌山地裁判決について、男性ら原告側は1日、控訴しないと表明した。市も控訴しない方針を明らかにしており、判決が確定する。原告側代理人の長岡健太郎弁護士は「大幅に支給量を増やした画期的判決。患者や妻の状態、ALSの特性が考慮されたことを評価した」と説明。70代の妻も「早く認めてもらって自宅で穏やかな生活がしたい」と話しているという。
 ALS以外の患者も札幌地裁や高松地裁で、24時間介護を求め係争中。」(全文)
 
 

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◆2012/05/05 「原発:稼働ゼロ、関西の苦慮(その1) 停電、命にかかわる 不安募る医療機関」
 『毎日新聞』

 「5日に北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)が定期検査で運転を停止し、国内の原発すべてが停止する。原発が再稼働せず、10年並みの猛暑となった場合、全国で電力不足が起きる可能性がある。中でも原発への依存度が高い関西電力は今夏、最大約19%の電力不足に陥る可能性があるとしており、企業などは自家発電の導入など対策に知恵を絞る。一方、人工呼吸器に頼る在宅難病患者らは、停電で機器が止まれば命の危機に直面するだけに、不安を募らせている。

 地域の拠点病院などの医療機関の多くは、自家発電の導入などで「急な停電にもある程度、対応できる」としている。

 心臓移植などを手がける国立循環器病研究センター病院(大阪府吹田市)は、灯油と天然ガスを燃料とした自家発電を導入済み。停電になっても全病棟の電源を10時間程度賄える。ただ、自家発電に切り替える際に数十秒の空白が生じる可能性があり、人工呼吸器など一瞬の機能低下も許されない機器については、停電時も瞬時に電力供給が可能な「無停電電源装置」に接続している。

 同センター総務課は「以前から、緊急時にも通常の医療体制を維持できるように体制を整えてきた」と話す。大阪大病院(同)やりんくう総合医療センター(同府泉佐野市)などもほぼ同様の対応だ。兵庫県も「各県立病院とも3日間は自家発電で機能を維持できる」(病院局企画課)という。

 もっとも、これらは災害など緊急時に備えた対応だ。もし計画停電という事態に陥れば、数カ月間、毎日のように電力不足が発生し、連日、自家発電の稼働などを迫られる可能性もある。ある大阪府内の病院は「緊急時の設備は常時、動かすことを想定していない。予想外のトラブルが起こらなければいいが」と不安を漏らす。

 一方、重症のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者など在宅難病患者にとっては深刻だ。京都府は今年1月、突然の停電や計画停電に備えるため、対応が必要な患者と主治医、地域医療機関などが協議し、停電時の搬送先を事前に決めておく体制を整えた。しかし「救急患者が殺到し、必ずしも予定通りの病院で受け入れられるとは限らない」(健康福祉総務課)と不安も残る。

 厚生労働省によると、ALSなどで在宅で人工呼吸器が必要な患者は全国に約1万1300人(10年度)。京都市左京区のALS患者、増田英明さん(68)は「緊急時に備えて外部バッテリーが一つあり、ヘルパーも停電時に手動で機器を動かせる訓練をしているが、人工呼吸器患者にとって停電は即、命にかかわる。人工呼吸器患者が安心できるよう、外部バッテリーなどの準備や確保を関係機関でしてもらいたい」と訴える。【江口一】

 ◇JR西日本は「間引き」対応

 鉄道各社も対策を進めている。JR西日本は間引き運転を視野に対策を練っている。昨年4月には、東日本大震災による車両の部品不足で間引き運転を実施しており、車両や乗務員の運用、乗客への周知など課題は把握済みだが、真鍋精志社長は「計画停電も念頭に準備が必要だ」と危機感を募らせている。

 近畿日本鉄道は冬以降も駅構内の消灯や冷暖房の調整などを続け、今春のダイヤ改正では運行本数を約4%削減した。関電などからの節電要請があれば、より踏み込んだ対策を検討する方針だ。【川口裕之】」(全文)

 

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◆2012/05/08 「[顔]女性科学者に贈られる「猿橋賞」を受賞する東京大学准教授 阿部彩子さん」
 『読売新聞』

 「◇あべ・あやこ 49歳
 約2万年前の地球は、平均気温が5度低く、海面も130メートル低かったとされる。「氷期」と呼ばれる時代だ。当時の気候をコンピューターで再現し、地球の軌道変化や大気中の二酸化炭素濃度の減少が寒冷化を引き起こしたことを明かしてきた。「気候メカニズムを知ることで将来の気候を正しく予測できる」と、受賞業績の意義を語る。
 中学生の頃に読んだ本で、過去の地球が現代と違う姿だったことに衝撃を受け、研究者を志した。人類活動が気候を変えつつある現代。過去の気候を探る研究も重要性を増している。第一人者として「責任を感じる」という。
 東大准教授(惑星科学)の夫、豊さん(52)とともに、3人の子育てと研究を両立させた。「末っ子が3歳になり子育ても一段落した」7年前、豊さんが筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症した。英国の物理学者ホーキング博士と同じ難病。夜中に起きて、寝返りを打たせてあげることもある。親の協力はあるが、思い通りに研究できる環境ではない。それでも、「夫も私も、研究が一番の生きがい」。車いす生活の夫とともに、探究が続く。(科学部 三井誠)
 
 写真=阿部彩子さん(撮影・三輪洋子)」(全文)
 
 

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◆2012/05/08 「出版:中高生の未来へエール「あきらめないで行こう」 難病と闘い38年、御宿の元教師・滝口仲秋さん /千葉」
 『毎日新聞』

 「難病の脊髄(せきずい)腫瘍に侵され足の不自由な生活を余儀なくされて38年。御宿町の元教師、滝口仲秋さん(75)が「中学生・高校生の君たちへ――あきらめないで行こう」(本の泉社)=写真=を出版した。悩み苦しんだ自らの闘病生活から学び取った生き方。「大切な人生 あきらめるな」「あきらめず一歩一歩、歩こう」というメッセージとともに、中学・高校生に対して「未来は君たちのものだ」とエールを贈る一冊だ。【吉村建二】

 農家の7人兄弟の末っ子に生まれた。千葉大教育学部卒業後、教職に就く。34歳の時、10万人に1人か2人しかかからない難病「脊髄腫瘍」と診断された。熱血教師で元気そのものと思っていた自分が難病にかかるとは信じられなかった。「手術すれば治る。今度こそ」と願い続け、50歳代後半まで4回の手術を繰り返した。だが、つえや車いすに頼る生活が続いた。「入退院を重ねたのは何のためだったのか」。絶望と後ろ向きの発想しかできず、すべてに意欲がわかなかった。他人とも会わず、家にこもりっきりになっていった。

 そんな時、滝口さんに生きる力を与えてくれたできごとがあった。神経の難病、「ASL(筋萎縮性側索硬化症)」と闘っている人に「(両足を失っても)まだ手があるではないか」と言われたことだ。

 手があれば何かを作ることもできるし、車いすも動かせる。夢を追うことだってできるじゃないか。考え方を変えて再スタートとなる転機となった。一歩外に出たら、あとは早かった。近所から隣町、そして国内、海外旅行へ――行動範囲だけでなく気持ちも前向きになり世界は広がった。68歳の時にはホームページ作りに挑戦。慣れないパソコンを操り、1年がかりで開設した。月単位の更新、改訂は大変だが「頭の体操」と、今の日常生活を支えている。

 訪れた再スタートは、自分を見つめ直すことにもなった。当時は「自分の力で行ったと思っていた」という大学も、今思えば母親や兄弟たちの励ましがあってこそ。人の支えを再認識した滝口さんは「今の幸せはみんなのおかげ。心の底から感謝している」と話す。

 本のあとがきには、こう記した。「ぼくはいま、エコノミー症候群という病気が進行している。主治医からは、もう少しひどくなったら足の切断をすすめられている。でもそうなっても、ぼくは必ず自分なりの立ち上がり方を見つけるつもりだ。生きることを楽しみ、人との関わりを大切に、ぼくらしく生きていくつもりだ」

 全165ページ、1500円。問い合わせは本の泉社(電話03・5800・8494)。」(全文)
 
 

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◆2012/05/09 「ALS、ES細胞で再現 京大 【大阪】」
 『朝日新聞』

 「運動神経が徐々に衰えていく難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の神経細胞を健康な人の胚(はい)性幹細胞(ES細胞)からつくり、病気を再現することに京都大が成功した。薬の開発などに使えるという。米医学誌電子版で9日発表した。
 ALSは運動神経が障害を受け、手足など全身の筋肉が動かなくなる病気。詳しい原因はわかっていないが、多くのケースで、SOD1という酵素の異常が関わっているといわれる。
 京大物質―細胞統合システム拠点(iCeMS)の中辻憲夫教授らはES細胞に異常なSOD1の遺伝子を入れ、異常な酵素を大量につくる運動神経の細胞に分化させた。すると正常な細胞に比べ20倍も速く死ぬなど、ALS患者の細胞と同じような現象が起きた。
 発病の仕組みの研究は、患者の細胞ではなかなかうまくいかないが、この細胞を使えば可能になりそうだという。中辻さんらはこの細胞で、ALSが起こる仕組みを詳しく調べたり、薬への反応をみたりして、治療法につなげたいとしている。
 (鍛治信太郎)」(全文)

 

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◆2012/05/09 「ES細胞でALS再現 治療薬開発に期待」
 『読売新聞』

 「あらゆる種類の細胞に変化できる人の胚性幹細胞(ES細胞)に、神経難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症させる遺伝子を組み込んで病気を再現することに、京都大の中辻憲夫教授らのグループが成功した。病態解明や治療薬の開発につながる成果。9日、米科学誌ステム・セルズ・トランスレーショナル・メディシン電子版で発表する。
 ALSは、運動神経が死滅していき、全身の筋肉が次第に動かなくなる病気。原因は不明だが、患者の2%は「SOD1」という遺伝子の異常で発症する。中辻教授らは、異常なSOD1をES細胞に組み込み、運動神経の細胞に変化させた。すると20%近い細胞が患者で見られるのと同じように、神経の細胞から伸びている突起が切れて死滅した。正常な遺伝子を組み込んで作った神経細胞は、ほとんど死ななかった。神経細胞を支える細胞(アストロサイト)に変化させたところ、神経細胞を殺す毒素を分泌した。
 難病患者の皮膚などからiPS細胞(新型万能細胞)を作って病気を再現する研究は行われているが、人の受精卵から作製するES細胞では、初めてという。」(全文)
 
 

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◆2012/05/09 「ひと:阿部彩子さん=「氷床」研究で猿橋賞に選ばれた」
 『毎日新聞』

 「◇阿部彩子(あべ・あやこ)さん(49)

 「歴代受賞者が道を切り開いてくれた。『しっかりやれ』と励まされているような気持ち」。自然科学分野で優れた業績を上げた女性科学者を顕彰する「猿橋賞」の受賞が決まり、7日の記者会見で喜びを語った。

 科学者を志したきっかけは、中学時代の「新しい地球観」という本との出合い。地球の表面が硬いプレートで覆われ、プレートは地球内部の熱対流で少しずつ移動しているという「プレート理論」が解説されていた。「地球って、複雑で面白い」。少女の心は躍った。

 物理学者だった父の影響もあり、東京大で地球物理学を専攻。93年にスイス連邦工科大に留学し理学博士号を取得した。スイス時代に北大西洋のグリーンランドで見た、陸地を覆う氷の塊「氷床」がその後の研究対象に。約20年間のチーム研究で、10万年ごとに繰り返される氷床の「固化と融解」の様子を再現できる数値解析モデルの開発に成功した。地球の気候変動や温暖化の予測につながる、世界で初めての成果だという。

 05年、夫で東京大准教授の豊さん(52)が、筋肉が衰えて体が動かなくなる難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、車いすで生活するようになった。「夢や希望を捨てずにやれるところまでやろう」と前向きに考え、互いの親や子供らと支え合っている。

 「研究は生きがいです。男女を問わず、困難があってもあきらめないことが大切」。後進へ贈る言葉だ。<文・鳥井真平/写真・猪飼健史>

………………………………………………………………………………………………………

 ■人物略歴

 東京都出身。04年から東京大大気海洋研究所准教授。07年に日本気象学会堀内賞受賞。17〜10歳の2女1男の母。」(全文)
 
 

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◆2012/05/09 「京大、筋肉が動かなくなる難病ALS、ES細胞で症状再現。」
 『日経産業新聞』

 「全身の筋肉が動かなくなる難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の症状を再現した細胞を、ヒトの胚性幹細胞(ES細胞)から作ることに京都大学の中辻憲夫教授や饗庭一博講師らが成功した。従来の細胞モデルよりもよく再現でき、病気のメカニズム解明や治療薬の開発に役立つ可能性があるという。
 成果は米科学誌ステム・セルズ・トランスレーショナル・メディシン(電子版)に9日、掲載される。
 ALSは体を動かす神経が徐々に侵され発症し、多くの場合、人工呼吸器による延命措置をする。詳しい原因は不明で、有効な治療法はない。国内の患者は約8500人で、約9割は原因を特定できないが、残りは遺伝性で、うち約20%に遺伝子「SOD1」の変異があるという。
 研究チームは変異のあるSOD1をES細胞に入れて培養し、運動神経細胞やグリア細胞などに分化させた。運動神経細胞で神経の電気信号の通り道である軸索が切れる患者の細胞に似た特徴がみられた。ALSでみられる細胞死は、運動神経細胞で通常の細胞に比べ約20倍に増加。全ての細胞では約2倍に増えた。」(全文)
 
 

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◆2012/05/09 「京大、難病ALSをES細胞で再現 治療薬開発に利用も」
 『日経速報ニュースアーカイブ』

 「全身の筋肉が動かなくなる難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の症状を再現した細胞を、ヒトの胚性幹細胞(ES細胞)から作ることに京都大学の中辻憲夫教授や饗庭一博講師らが成功した。従来の細胞モデルよりもよく再現でき、病気のメカニズム解明や治療薬の開発に役立つ可能性があるという。
 成果は米科学誌ステム・セルズ・トランスレーショナル・メディシン(電子版)に9日、掲載される。
 ALSは体を動かす神経が徐々に侵され発症し、多くの場合、人工呼吸器による延命措置をする。詳しい原因は不明で、有効な治療法はない。国内の患者は約8500人で、約9割は原因を特定できないが、残りは遺伝性で、うち約20%に遺伝子「SOD1」の変異があるという。
 研究チームは変異のあるSOD1をES細胞に入れて培養し、運動神経細胞やグリア細胞などに分化させた。
 その結果、運動神経細胞で神経の電気信号の通り道である軸索が切れる患者の細胞に似た特徴がみられた。ALSで多くみられる細胞死は、運動神経細胞で通常の細胞に比べ約20倍に増加。すべての細胞では約2倍に増えた。
 ALSになるとグリア細胞が運動神経細胞に毒性を及ぼす物質を出すといわれている。作ったグリア細胞の培養液を運動神経細胞に加えると細胞死が約2割増えた。従来の細胞モデルではここまで再現できなかったという。
2012/05/09 03:00」(全文)
 
 

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◆2012/05/09 「京大、ヒトES細胞からALS疾患モデルを作製して病状再現に成功」
 『日経速報ニュースアーカイブ』

 「ヒトES細胞からALS疾患モデルを作製し、病状再現に成功:病態の解明や治療薬の開発に期待


 京都大学(総長:松本 紘)とNPO法人幹細胞創薬研究所(理事長:横山 周史)は、ヒト胚性幹(ES)細胞に筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子を過剰発現させた疾患モデル細胞を作成し、ALSの疾患症状の再現に成功しました。この成果は、ALSの病態の解明や治療薬の開発等に役立つことが期待されます。


■研究の概要
 中辻憲夫 物質−細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)拠点長、饗庭一博 同講師らのグループは、iPS細胞研究所(CiRA)、医学研究科および幹細胞創薬研究所と共同で、家族性ALS原因遺伝子の一つであるスーパーオキシドディスムターゼ1(SOD1)の変異型遺伝子を過剰に発現しているヒトES細胞を作成しました。これをALS患者で影響の出る運動神経細胞に分化させたところ、そうした細胞に特異的な細胞死が起こることを確認し、また運動神経細胞内に異常な凝集体が形成されることを検出しました。さらに、運動神経細胞死に関わると報告されているグリア細胞(アストロサイト)にも分化させることで、その培養上清にヒトES細胞由来の運動神経細胞の細胞死を引き起こす因子が存在しているなど、これまで報告されているALS症状に関わる現象を培養細胞によって再現できることを確認しました。これまで、iPS細胞やES細胞を用いてALSの病態を再現するための研究が世界中で行われていますが、運動神経細胞とアストロサイト共に同じヒト多能性幹細胞株(万能細胞株)から分化誘導させ、ALSモデル細胞の作成に成功したのは、本研究が世界で初めてです。

 この成果は、これまで動物とヒトという生物種による違いから疾患モデル動物では充分に理解できなかったALSの疾患発症・進行メカニズムのより正確な解明に加え、モデル細胞の細胞死や異常な凝集体形成の抑制などを指標にした効果的な治療薬の探索・開発にも寄与することが期待されます。

 本論文は、米国東部時間5月8日に米科学誌「ステム・セルズ・トランスレーショナル・メディシン」オンライン速報版で公開されました。


1.背景
 筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis,ALS)は、運動神経細胞が選択的に影響を受け、機能を喪失していく神経変性疾患の一つですが、根本的な治療法、予防薬がないのが現状です。ALS患者の約10%が遺伝する家族性ALSで、そのうちの約20%が、スーパーオキシドディスムターゼ1(SOD1)の変異が原因とされています。

 これまでのモデル動物や動物神経細胞を用いたALS研究は、多くの知見を生み出してきました。しかし、これらの研究材料では動物とヒトという生物種による違いにより、ヒト神経細胞での反応を正確に反映できていない場合があり、モデル動物で効果が見られたとされるALS候補薬の多くが、臨床試験でヒトへの効果が見られないために開発中止になってきています。このようなことから、正常な機能を有した各種の神経系細胞へ分化誘導可能であるヒト多能性幹細胞(ES/iPS細胞等)で作る疾患モデル細胞を用いた新薬開発方法が有望視されています。様々な難病患者の体細胞から樹立するヒトiPS細胞株は疾患モデル細胞として有望であり、注目される研究成果が発表されています。しかしながらALSに関しては、SOD1遺伝子に変異があっても成人になってから発症する典型的なALS患者から樹立されたiPS細胞を運動神経細胞へ分化誘導させても、これまでのところはALS疾患症状を観察することが困難でした。また、SOD1変異ALSの病態を再現できるモデル細胞で、同じヒト多能性幹細胞株だけからモデルに必要な細胞を分化させて作製したモデル細胞はこれまでありませんでした。


2.研究手法
 今回、本研究グループは、ALSの原因遺伝子の一つであるSOD1の野生型(健常人型)遺伝子と変異型(家族性疾患型)遺伝子(G93A SOD1)を恒常的に発現するプロモーターで過剰に発現しているヒトES細胞株を作製し、既に我々が確立した運動神経細胞への分化誘導法によって、ALSで影響の出る運動神経細胞へ分化誘導させ、ALSでみられるような運動神経細胞特異的な細胞死をTUNELアッセイで調べました。また神経細胞内に異常な凝集体の形成が起きているのかどうかを免疫染色にて調べました。さらに、運動神経細胞への分化誘導に用いたのと同じヒトES細胞株をグリア細胞であるアストロサイトへも分化誘導し、運動神経細胞の細胞死を誘導する毒性因子の分泌存在を、運動神経細胞を培養上清で処理し、細胞死の検定をしました。


3.研究成果
 最初に、健常人型SOD1または変異疾患型SDO1を過剰に発現しているヒトES細胞株の未分化細胞とそれらから分化させた神経細胞で、同程度のSOD酵素活性および遺伝子発現レベルを示す株を選びました。選ばれた細胞株に神経分化誘導を行ったところ、健常人型、変異疾患型にかかわらず、SOD1過剰発現株で親株同様に強く神経前駆細胞のマーカー分子の発現が確認でき、SOD1の過剰発現が神経前駆細胞形成に影響しないことがわかりました。さらに、健常人型SOD1発現神経前駆細胞と変異疾患型SOD1発現神経前駆細胞の細胞生存率にも違いは見られませんでした。このことはSOD1の過剰発現が神経前駆細胞の生存率にも影響しないことを示しています。

 その後、神経前駆細胞を運動神経細胞(HB9陽性細胞)まで分化させたところ、変異疾患型SOD1発現している神経細胞に、形態的に健康的でない神経細胞が現れてきました(図1)。そこで細胞死の割合を調べたところ、細胞死の割合が親株からの神経細胞や健常人型SOD1発現神経細胞に比べ、2倍ほどに増加しており、運動神経細胞での細胞死を調べてみたところ、変異疾患型SOD1を発現している運動神経細胞特異的な細胞死が20倍くらいに促進されていました。一方、グリア細胞であるアストロサイトの細胞死は、特に変異疾患型SOD1発現によって、増加する現象は見られませんでした。このことは、ALS患者で起きる運動神経細胞の選択的な細胞死が、変異疾患型SOD1の発現によって再現できていることを示しています。

 ※「図1」は添付の関連資料を参照

 また、SOD1変異による家族性ALSの特徴の一つとして、ユビキチン陽性の凝集体形成があります。変異疾患型SOD1発現運動神経細胞内にも、そのような凝集体が検出できるのか調べてみました。健常人型SOD1でも変異疾患型SOD1でも、どちらの発現運動神経細胞もユビキチン抗体によって染色されました。しかし、変異疾患型SOD1発現の運動神経細胞の半数に異常なユビキチン染色パターンが見られました。この異常なユビキチン染色パターンは、変異疾患型SDO1発現運動神経細胞のユニークな表現形であり、ALS患者にみられるユビキチン凝集体に相当する可能性があります。

 最近、アストロサイトから分泌される因子の運動神経細胞死への関与が報告されています。以前の報告で用いられたアストロサイトは、ALSモデルマウス脳からのアストロサイト、もしくは変異疾患型SDO1を遺伝子導入したヒトアストロサイトの初代培養を用いており、ヒトES細胞から分化誘導したアストロサイトにも同じような運動神経細胞死に関与する因子を分泌しているのかは明らかにされていませんでした。そこで、SOD1過剰発現ヒトES細胞をアストロサイトへ分化誘導し、その培養上清でヒトES細胞から分化させた運動神経細胞を数日間処理し、その細胞死率を測定しました。その結果、健常人型SOD1発現運動神経細胞において、健常人型SOD1発現アストロサイトの培養上清より、変異疾患型SOD1発現アストロサイトの培養上清で処理された方が、明らかに細胞死が増加していました。このことは、ヒトES細胞から分化させたアストロサイトが運動神経細胞に細胞死を引き起こす因子を分泌していたことを示しています。また、アストロサイトで発現している健常人型や変異疾患型に関わらず、変異疾患型SOD1発現運動神経細胞で、健常人型SOD1発現運動神経細胞より多くの細胞死が検出されています。これらのことは、運動神経細胞死において、今回のALSモデル細胞では細胞自律的効果も、非細胞自律的効果も検出できていることを示しています。

 本研究では、これまで報告されているALS症状に関わる現象を培養細胞によって再現できることを確認しました。また、運動神経細胞とアストロサイトともに同じヒト多能性幹細胞株(万能細胞株)から分化誘導させ、ALSモデル細胞の作製に成功したのは、本研究が世界で初めてです。またこの研究成果は、今後ALS患者由来のiPS細胞株をさらに詳細に研究するための基礎として貢献することが期待されます。


4.今後の期待
 今回本研究で作製されたALSモデル細胞は、モデル細胞に必要な運動神経細胞とアストロサイトともに同じ細胞株から分化させています。このことは、動物とヒトという生物種による違いから疾患モデル動物では充分に理解できなかったALS患者での疾患発症・進行メカニズム、運動神経細胞死のおこるメカニズム、細胞自律的効果や非細胞自律的効果をより正確に解明し、ALSの根本的な治療法開発に繋がる可能性があります。

 また、ALSモデル細胞で検出された運動神経細胞特異的な細胞死や異常な凝集体形成の抑制などを指標とした新薬候補化合物のスクリーニング、またヒトES細胞から分化誘導させたアストロサイトから分泌される毒性因子の同定、解析などを通して、より効果的な治療薬の探索・開発にも貢献することが期待されます。


■論文タイトルと著者
 "Amyotrophic lateral sclerosis model derived from human embryonic stem cells overexpressing mutant superoxide dismutase 1"
 Tamaki Wada,Sravan K.Goparaju,Norie Tooi,Haruhisa Inoue,Ryosuke Takahashi,Norio Nakatsuji,and Kazuhiro Aiba
 Stem Cells Translational Medicine,DOI:10.5966/sctm.2011−0061


 本研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクト「研究用モデル細胞の創製技術開発」(2005〜2009年度/プロジェクトリーダー:中辻憲夫)、日本学術振興会(JSPS)科学研究費助成事業・基盤研究(C)課題「ヒト胚性幹細胞から作製した筋萎縮性側索硬化症モデル細胞を用いた疾患発症機序の研究」(2011〜2013年度/代表者:饗庭一博)の一環として行われました。



リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。
図1
http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0309211_01.JPG


2012/05/09 17:40」(全文)
 
 

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◆2012/05/10 「ニュースでQ」
 『朝日新聞』

 「最新ニュースからのクイズです。Q1の( )には全身の筋肉が衰え、次第に動かなくなる病気が、Q2の( )には島の名前が入ります。

 Q1 和歌山市に住む( )の患者が24時間訪問介護の義務付けなどを求めた訴訟の判決が和歌山地裁であり、介護を1日約12時間とした市の決定を「社会通念に照らし、合理性を欠く」として違法と認定。最低でも1日21時間とするよう市に義務付けた。全国8500人とされる患者の介護に影響を与えそうだ。

 Q2 日本の大陸棚の拡大が国際機関の「大陸棚限界委員会」に認められた。国土の約8割に匹敵する約31万平方キロメートルの海に眠る天然資源の開発に道が開ける。拡大する大陸棚には( )を基点とする海域も含まれており、この島を「岩」と主張して進出を狙う中国、韓国への反論材料にもなりそうだ。

 【答え】Q1 筋萎縮性側索硬化症(ALS) Q2 沖ノ鳥島
 (東京本社発行の4月26日付と同29日付の朝刊最終版の記事などから作成)」(全文)
 
 

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◆2012/05/12 「人工呼吸器:バッテリー、保険適用 厚労省義務付け、在宅患者の不安解消」
 『毎日新聞』

 「筋萎縮性側索硬化症(ALS)など難病の在宅患者にとって欠かすことができない人工呼吸器の外部電源バッテリーについて、厚生労働省が今年度から、費用を保険適用とすることを義務付けた。昨年の東日本大震災後の計画停電で、対策が課題となった反省を踏まえた措置。人工呼吸器を使っている在宅患者は全国約1万1300人に上るが、これまでバッテリーが保険適用の対象なのか、不明確だった。全原発が停止し、電力不足が懸念される中、保険医療として明確に位置付け、患者の不安解消を図る。

 在宅で人工呼吸器を使っているALSや筋ジストロフィーなどの患者は、停電で電気が途絶えると命に直結する。このため、これらの患者にとっては災害時などには外部バッテリーが必要だ。厚労省在宅医療推進室によると、これまで保険適用の「人工呼吸器加算」には「人工呼吸器」とだけ記され、バッテリーが対象か、個々の医師の判断に委ねられていた。購入費は2万〜30万円程度で、患者団体などが保険適用するよう求めていた。

 保険適用で、自己負担は基本的に3割となる。ただ、バッテリーの使用電気料は対象としない。【江口一】」(全文)
 
 

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◆2012/05/12 「人工呼吸器:電源に保険適用 在宅患者、停電対策で」
 『毎日新聞』

 「筋萎縮性側索硬化症(ALS)など難病の在宅患者にとって欠かすことができない人工呼吸器の外部電源バッテリーについて、厚生労働省が今年度から、費用を保険適用とすることを義務付けた。昨年の東日本大震災後の計画停電で、対策が課題となった反省を踏まえた措置。人工呼吸器を使っている在宅患者は全国約1万1300人に上るが、これまでバッテリーが保険適用の対象なのか、不明確だった。全原発が停止し、電力不足が懸念される中、保険医療として明確に位置付け、患者の不安解消を図る。【江口一】

 在宅で人工呼吸器を使っているALSや筋ジストロフィーなどの患者は、停電で電気が途絶えると命に直結する。このため、これらの患者にとっては災害時などには外部バッテリーが必要だ。厚労省在宅医療推進室によると、これまで保険適用の「人工呼吸器加算」には「人工呼吸器」とだけ記され、バッテリーが対象か、個々の医師の判断に委ねられていた。購入費は2万〜30万円程度で、患者団体などが保険適用するよう求めていた。

 大震災に伴い東京電力管内で昨春、実施された計画停電では、バッテリーなどの準備ができていない患者の把握や、発電機の貸し出しに追われるなどの問題が起きた。

 今回、これらの教訓から、今年度の診療報酬改定の際、人工呼吸器加算の中で「外部バッテリーなど必要な回路部品や付属品に関わる費用は、所定点数に含まれる」と明記した。保険適用で、自己負担は基本的に3割となる。ただ、バッテリーの使用電気料は対象としない。

 併せて「在宅人工呼吸指導管理料」の項目でも「患者が使用する装置の保守・管理を十分に行い、緊急時の対応等について患者に情報提供を行うこと」と明示し、停電時の搬送先などの情報を患者に提供することを医師に義務付けた。

 患者や家族らで構成する日本ALS協会の金沢公明事務局長は「これまであいまいだった位置付けが明確になり前進だ。適切に運用されるか、検証したい」と話した。」(全文)
 
 

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◆2012/05/12 「人工呼吸器:バッテリー、保険適用 計画停電で問題発生、今年度から対象明記」
 『毎日新聞』

 「筋萎縮性側索硬化症(ALS)など難病の在宅患者にとって欠かすことができない人工呼吸器の外部電源バッテリーについて、厚生労働省が今年度から、費用を保険適用とすることを義務付けた。昨年の東日本大震災後の計画停電で、対策が課題となった反省を踏まえた措置。

 人工呼吸器を使っている在宅患者は全国約1万1300人に上るが、これまでバッテリーが保険適用の対象なのか、不明確だった。全原発が停止し、電力不足が懸念される中、保険医療として明確に位置付け、患者の不安解消を図る。

 在宅で人工呼吸器を使っているALSや筋ジストロフィーなどの患者は、停電で電気が途絶えると命に直結する。このため、これらの患者にとっては災害時などには外部バッテリーが必要だ。厚労省在宅医療推進室によると、これまで保険適用の「人工呼吸器加算」には「人工呼吸器」とだけ記され、バッテリーが対象か、個々の医師の判断に委ねられていた。購入費は2万〜30万円程度で、患者団体などが保険適用するよう求めていた。

 大震災に伴い東京電力管内で昨春、実施された計画停電では、バッテリーなどの準備ができていない患者の把握や、発電機の貸し出しに追われるなどの問題が起きた。今回、これらの教訓から、今年度の診療報酬改定の際、人工呼吸器加算の中で「外部バッテリーなど必要な回路部品や付属品に関わる費用は、所定点数に含まれる」と明記した。保険適用で、自己負担は基本的に3割となる。ただ、バッテリーの使用電気料は対象としない。

 併せて「在宅人工呼吸指導管理料」の項目でも「患者が使用する装置の保守・管理を十分に行い、緊急時の対応等について患者に情報提供を行うこと」と明示し、停電時の搬送先などの情報を患者に提供することを医師に義務付けた。

 患者や家族らで構成する日本ALS協会の金沢公明事務局長は「これまであいまいだった位置付けが明確になり前進だ。適切に運用されるか、検証したい」と話した。【江口一】」(全文)
 
 

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◆2012/05/12 「青木志帆弁護士:障害者、難病患者守りたい−−尼崎あおぞら法律事務所 /兵庫」
 『毎日新聞』

 「◇青木志帆弁護士(30)=大阪市福島区

 ホルモン分泌ができず血圧の低下などを引き起こす難病「下垂体機能低下症」を抱えながら、障害者を巡る民事訴訟に奔走している。支えになっているのは、「お金がなければ命をつなげないのはおかしい」との思い。障害や難病を持つ人の暮らしをよりよくするため幅広く動いている。

 6歳のころに脳腫瘍の手術を受け、下垂体機能低下症を発症した。低気圧になるとめまいに襲われ、今もベッドから起き上がれない朝がある。

 だが20歳になって医療費の助成が突然打ち切られた。当時「小児慢性特定疾患」ではあったが、20歳以上は3割負担だった(09年から指定)。平均寿命を保つために必要な薬は3カ月で約18万円。高額がネックとなり治療を諦める人もいた。「こんなのおかしい」。この時感じた理不尽さが司法を目指す原点になった。

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者が介護サービスの拡大を求めた裁判の弁護団などに加わる。また司法だけでなく、ネットでもブログやツイッターで思いをつづり、理解を訴える。弁護士登録して2年半。「少しでも障害者と難病患者の生活をよくしたい」。その思いを胸に走り回っている。【藤顕一郎】

〔三田版〕」(全文)

 

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◆2012/05/12 「ALS地裁判決が確定=和歌山」
 『読売新聞』

 「和歌山市に住む筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の男性(75)が市に介護時間の延長を求めた訴訟で、市に対して介護保険と合わせて1日21時間の介護サービスを男性に支給するよう命じた地裁の判決が11日、確定した。市は今月末までに、判決を踏まえて時間を拡充した介護サービスの支給決定をするとしている。
 男性側も市側も、控訴期限の同日午前0時までに控訴しなかった。市障害者支援課の担当者がこの日、男性宅を訪れ、男性の病状や妻(74)による介護の現状について調査を実施。同課の高垣康宏課長は「判決に従った決定を速やかに下し、男性が安心して生活できるようにしたい」と話した。」(全文)
 
 

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◆2012/05/12 「サウンドハウス、Carvinとジェイソン・ベッカーが共同制作したギターを発売」
 『日経速報ニュースアーカイブ』

 「CARVIN新製品「Jason Becker Tribute JB200C」


 1988年、当時カコフォニーのツインリードギターとして活躍していたジェイソン・ベッカーとマーティ・フリードマンが、理想のギターを求めてCarvinにやってきた。
 ジェイソンはDC220のような伝統的なモデルを選んでいる間、マーティはV220を気に入った様子だった。そしてCarvinは、ジェイソン本人からのリクエストにより、フレイムメイプル指板、タングオイルネック、ブラックハードウェア、そして鮮やかなサファイヤブルーフィニッシュの「tremolo−equipped DC200」を製作。
 このギターはジェイソンを代表するギターのひとつとなり、その後、雑誌やステージ上で頻繁に見かけるようになった。
 ジェイソンのファンは、この話の続きを知っている。1989年、デヴィッド・リー・ロス・バンドでリードギタリストとして参加していた頃“筋萎縮性側索硬化症(通称ALS)”と診断され、当時3〜5年という余命を宣告されたにも関わらず、その後ジェイソンは20年以上も逞しく生き続けている。パソコンを使って作曲し、彼の父親が考案したシステムを使い、目で人とコミュニケーションをとっている。

 Carvin Customshopは、今も世界中から寄せられる根強いファンの声に答え、「Jason Becker Tribute JB200C」を発売することになりました。このギターはCarvinとジェイソンによる共同制作で、ルックス、プレイヤビリティ、そしてオリジナルの「DC200」から続く彼の“想い”が詰まっています。彼が所有するオリジナルのDC200を忠実に再現。更に様々なオプションを活用して貴方だけの「JB200C」を創り上げることもできます。JB200Cはカリフォルニア州サンディエゴにあるCarvin Customshopで生産される、誇り高きMade In USAのギターです。

商品名:JB200C JASON BECKER
標準価格:オープン 販売価格:169,800円 (税抜161,714円)
http://www.soundhouse.co.jp/shop/ProductDetail.asp?Item=224^JB200C

メーカーサイト製品ページ
http://www.carvinworld.com/catalog/guitars/jb200c

Jason Becker:Not Dead Yet
http://www.jasonbeckermovie.com/

Jason Becker Facebookページ
http://www.facebook.com/jasonelibecker


◆株式会社サウンドハウス 〒286−0825 千葉県成田市新泉14−3
 E−MAIL:shop@soundhouse.co.jp
 URL:http://www.soundhouse.co.jp/
 携帯サイトURL:http://soundhouse.mobi/
 TEL:0476−89−1777 FAX:0476−89−1778」(全文)
 
 

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◆2012/05/15 「ALS訪問介護、法制度の確立を 判決確定で日弁連会長 /和歌山県」
 『朝日新聞』

 「和歌山市に住む筋萎縮性側索硬化症(ALS)の男性患者(75)に対し、1日最低21時間のヘルパー訪問介護を市に義務付けた4月25日の和歌山地裁判決が今月11日に確定したことを受け、日本弁護士連合会の山岸憲司会長は14日、談話を発表した。全ての人に十分な訪問介護時間が公的に保障されるような法制度の確立や運用を求めた。
 地裁判決は11日午前0時に確定した。談話では判決の意義について、個別事情に即した十分な介護を保障すべきだと改めて確認できた、としている。その上で、障害者自立支援法の廃止などを求めた日弁連の2011年の決議などの実現も国に求めている。
 日弁連は談話を市と内閣府、厚生労働省あてに郵送した。」(全文)

 

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◆2012/05/15 「ALS判決確定 日弁連会長が評価=和歌山」
 『読売新聞』

 「筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の男性(75)による介護時間延長訴訟で、和歌山市に対して介護保険と合わせて1日21時間の介護サービスを支給するよう命じた地裁判決が確定したことを受け、日本弁護士連合会の山岸憲司会長は14日、「改めて、全ての人に十分な介護支給量が公的に保障される法制度の確立と運用を、国と市町村に強く求める」などとする談話を発表した。
 山岸会長は談話で、「市町村が支給決定に際し、一人ひとりの個別具体的な支援の必要性を考慮すべきとの基本的な考え方を示した」と判決を評価。これまでの判例も踏まえ、「市町村が障害のある人や難病患者の個別事情に則した十分な介護支給量を保障すべきとの法解釈は法理として定着した」と指摘した。
 同連合会はこれまで、障害者自立支援法の廃止や障害者の地域での自立生活に向けた法整備を求めており、今回の判決を受けて会長談話を出した。」(全文)
 
 

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◆2012/05/16 「「これからも前進、前進」 難病の「篠沢教授」、音声ソフトで声復活 都内で講演」
 『朝日新聞』

 「仏文学者の篠沢秀夫さん(78)が15日、東京都内で開かれた日本文芸家協会の集まりで講演した。難病で声を失った篠沢さんだが、かつての声を合成して文章を読み上げるコンピューターソフトを用いて、闘病の思いなどを語った。
 「これからも前進、前進、また前進」。事前に自らパソコンで用意した原稿が、かつてクイズ番組でおなじみだった「篠沢教授の声」で読み上げられた。篠沢さんは2009年に筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断され、のどに人工呼吸器を付けたため話せなくなった。昨年、音声ソフトの技術者らと出会い、出演したテレビ番組のテープから声を集めた。
 講演を終え、篠沢さんは「僕の話を真剣に聞いてくださって感激でした」と謝意を来場者に伝えた。このやりとりではソフトの操作者と筆談。その内容がソフトに入力され、「声」になった。(宮本茂頼)
    *
 朝日新聞デジタルに動画」(全文)

 

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◆2012/05/16 「難病女性と家族描いた番組合評 審議会=長崎」
 『読売新聞』

 「◇NIB情報
 長崎国際テレビ(NIB、長谷川国夫社長)の第213回番組審議会が15日開かれ、同社制作のNNNドキュメント「7つの宝と生きる?ALSの母と家族の3000日」(4月23日午前0時50分?1時20分)について合評した。
 番組は、全身の筋肉が次第に動かなくなる難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症した平戸市の女性(56)と、家族7人との絆を描いた。
 女性は7年前にALSを宣告され、寝たきりになった。パソコンと連動したチューブを、わずかに動く口でかんでメールを打ち、家族に送信している。子どもたちは、母親がいてくれることに感謝し、励ましのメールに後押しされ、成長を続けている。
 委員からは、「ナレーションや家族の言葉が心に残る。素晴らしい番組」「カメラの目線も優しく、よくまとまっていた。家族の絆の強さが読み取れる内容だった」と評価する声が相次いだ。ほかに「難病と向き合う家族の大変さを描いてもよかったのではないか」と指摘する声もあった。
 番組は26日午後3時55分から再放送される予定。審議の模様は、6月4日午前11時25分からの「あなたとNIB」の中で放送する。」(全文)
 
 

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◆2012/05/18 「「iPS」知財、進捗60%、京大・山中教授、日経電子版2周年で講演。」
 『日経産業新聞』

 「研究支援人材の重要性強調
 京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授は17日、日本経済新聞の電子版2周年フォーラムで講演し、新型万能細胞(iPS細胞)を使う再生医療について「日本が先端を走っている。2020年まで全力で研究し、新しい医学を確立させたい」と語った。世界と競争するうえで、知的財産戦略の強化や研究支援人材の充実が不可欠だと訴えた。
 山中氏は「知財確保や基盤技術確立」「移植に使えるiPS細胞作製」「糖尿病などへの臨床研究」「希少疾患の治療薬開発」という4つの目標を掲げ、進捗状況を説明した。知財面は、昨年に日米欧でiPS細胞の作製法の特許が成立したことなどから、達成度を60%と評価した。
 ただ、今後の状況次第では成立した特許が拒絶される可能性もあることに触れ、「楽観視はできない」と発言。知財専門家らの支援なしでは、日本発の医療として応用するのが難しくなるのでないかという危機感も見せた。
 他の目標については、移植に使える細胞作りが30%、残り2つを20%と判定した。血液などからiPS細胞を作る研究や、運動神経が破壊される筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者のiPS細胞から作った神経を正常に戻す化合物の探索を進めていることなども明らかにした。
 大学の研究を実用化するために、高度な装置を扱える技術員や規制当局との交渉ができる専門家などが不可欠だと強調。こうした人材は非正規の雇用契約なので、長期雇用できる新たな仕組み作りが急務だと訴えた。
【図・写真】基調講演をする山中氏(17日午前、東京・大手町)」(全文)
 
 

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◆2012/05/18 「夏の節電尽きぬ不安、在宅患者「協力は限界」、学校「子供の健康が…」。」
 『日経産業新聞』

 「今夏の電力不足を乗り切るため、九州電力管内でも2010年比で10%の節電を要請することが決まった。原子力発電所はすべて止まっており、節電目標を達成できても電力需給は綱渡りの状況が続く。電気の使用が欠かせない難病の在宅患者や学校などからは不安の声が上がった。(1面参照)
 「エアコン使用を控えたりして節電に協力してきた。でも限界に近い」。福岡市城南区のマンション5階の一室。全身の筋肉が動かなくなる難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の男性(42)は、センサーを取り付けた左手親指をわずかに震わせ、パネル表示で不安な気持ちを伝えた。
 人工呼吸器、たん吸引器……。ベッドの回りには機器が並ぶ。人工呼吸器は何らかの理由で電気が止まると、数時間しかもたない。意思表示の唯一の手段であるセンサーも使えなくなる。
 福岡県内で人工呼吸器を使うALS患者らは約300人。うち40人が在宅だ。10人ほどを訪問看護する野田洋子さん(52)は「室内の温度を一定に保てず、体調を崩すことが心配」。多くは非常電源を備えているが「エレベーターがもし止まったら、連れ出すことも難しい」と不安を漏らす。
 別の難病で人工呼吸器が欠かせない福岡市東区の男児(4)の父親(47)は、東日本大震災後に急きょ、ポータブル電源を2つ購入。父親は「在宅患者たちの不安を減らすのが国などの役割のはず。患者の節電対策が準備できたか、確認してから始めてほしい」と訴えた。
 桜島の噴火活動が活発な鹿児島市では降灰で窓が開けられない日も多い。桜島地区にある7つの小中学校は全教室にエアコンを完備。外気温が30度以上という冷房使用の目安を設けている。
 ただ「暑さを我慢して子供たちの健康を害したら元も子もない。冷房を使うなとは言えない」と東桜島小の宮田藤蔵教頭。室内の照明をこまめに切ったりするなど節電を徹底することで、何とか乗り越えようと職員や児童に指導している。
 ピカソやダリの絵画などスペイン美術を多く収蔵する長崎県美術館(長崎市)は、契約電力524キロワットの大口需要家。作品管理に不可欠な館内の空調が使用電力の大半を占める。「節電には協力したいが、できることは限られる」と頭を抱える。
 絵画はカビやひび割れを防ぐために一定の温度・湿度で管理する必要がある。同美術館では昨年、事務所の照明を間引くなどしたが、「今年は作品の配置換えをして、展示室で稼働させる空調を減らすことも検討せざるを得ない」(担当者)という。
 一方、マリンワールド海の中道(福岡市)では5、6年前から自家発電機を導入。平日午前8時〜午後10時は九州電力から電力を購入していない。「仮に計画停電があっても、自家発電機でまかなえる」(総務部)とみている。
【図・写真】ALS患者らにとって節電への不安は尽きない(15日、福岡市城南区)」(全文)
 
 

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◆2012/05/19 「北電、7%節電要請 計画停電「極力回避する」 /北海道」
 『朝日新聞』

 「今夏に原発が再稼働しない場合の電力不足対策を政府が決めたことを受け、北海道電力の川合克彦社長は18日に記者会見し、「ご不便、ご迷惑をおかけするがご協力をお願いする」と述べ、猛暑だった一昨年夏と比較して「7%以上の節電」への協力を企業や家庭に要請した。政府が準備を求めた計画停電は「極力回避する」とした。▼2面参照

 北電の節電要請は、1973年にオイルショックで10%の節電を求めて以来2度目という。
 北電によると、今年8月の供給力は485万キロワット。日々の需要変動に備えるには供給予備力として3%ほどの15万キロワットを確保する必要があり、最大電力需要を470万キロワット以下に抑えねばならないという。一昨年夏の最大電力量は506万キロワットのため、7%以上の節電が必要との計算だ。
 節電の要請期間はまず、7月23日〜9月7日の午前9時から午後8時で、お盆期間(8月13〜15日)は除く。道内の夏の電力需要は、企業などが仕事を始める午前9時ごろから上昇。午後8時ごろまで高い需要が続く。気温が上昇する午後に冷房がフル稼働し、需要がピークとなる道外とは対照的で、要請時間は朝から夜までとした。
 続く9月10〜14日は午後5時から午後8時までとした。この間に道内は日没が早まり、照明を一気に点灯するため、需要が高まる夕方以降だけを対象とした。
 川合社長は、需給計画に盛り込まなかったものの、60万キロワットの送電ができる海底ケーブルを通じて東京電力などから電力をもらえる可能性があるとの認識を示し、「計画停電は最後の最後までやりたくない」と強調した。
 一方、政府の決定を受けて、道と北海道経済産業局は21日に道地域電力需給連絡会の初会合を開く。北電や経済団体のほか、小売業や建設業などの業界団体など計31機関が参加。電力需給の見通しの情報を共有し、節電対策を話し合う。
 高橋はるみ知事は18日の定例会見で「(節電目標は)大変厳しい数字だが、オール北海道で取り組む準備を進める。停電は万が一にもあってはならない。節電でこの夏は乗り切りたい」と述べた。夕方には北電の川合社長の訪問を受け、節電への協力を直接求められた。
 (綱島洋一、諸星晃一)

 ●「地域力問われる」 道経済同友会の横内代表幹事
 どうやって7%節電するべきか。北海道経済同友会の横内龍三代表幹事(北洋銀行会長)は、「大変だと大騒ぎする前に、道民すべてが協力して乗り越えるのが大切で、『地域力』が問われる」と強調。「節電が無理なところには、可能なところが手助けして電力不足を乗り切るべきだ」と指摘する。
 横内氏は、お年寄りの家庭で空調の温度設定を上げると、体調を崩しかねないと危惧する。中小企業では節電対策で夜間に操業すると、生産効率が落ちる事例もありそうだという。
 一方、北洋銀では昨年秋から全店舗でどれだけ節電できるか調べ、店舗ごとに照明の点灯割合や空調の設定温度を調整。現金自動出入機(ATM)を止めずに10%節電できるようにしている、という。
 横内氏は「企業、業界団体を中心にどれだけ節電できるかを急いで検証し、道内全体での節電目標を達成すべきだ」と話した。

 ◆人工呼吸器・ナースコール・搾乳…停電に危機感広がる 「対策、詳しい説明を」
 節電や計画停電に不安を募らせる人たちも多い。
 全身の筋肉が動かなくなっていく難病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)を6年前に発症した札幌市北区の深瀬和文さん(48)は札幌市の自宅で介助を受けながら過ごす。人工呼吸器と、1時間に2回ほどのたん吸引が必要だ。
 人工呼吸器のバッテリー稼働時間は計6時間。たん吸引器はバッテリーがなく、計画停電に強い危機感を持つ。北電や行政に対し、「どういう対策をしようと考えているのか詳しい説明が欲しい」と訴える。
 北電は、医療機関や福祉施設には節電の数値目標を設けなかった。ただ、自家発電施設を持たない所も多く、計画停電があれば患者や入所者に影響が及ぶ。
 特別養護老人ホーム「四恩園」(北広島市)の三瓶徹施設長は「電気が止まれば、ナースコールもトイレも使えなくなる。ボイラーが止まるので風呂にも入れない」と話す。
 畜産業や食品加工など、24時間稼働する設備を持つ事業者にも懸念が広がる。
 上士幌町で乳牛を約2200頭飼育している農業生産法人「ドリームヒル」。メリーゴーラウンドのように円形に並んだ搾乳機「ロータリーパーラー」で1日3回、約1450頭の牛の乳を搾り、48トンの生乳を生産する。牛の健康のためにも365日搾乳を休めず、電気を使わなくていい時間はほとんどない。
 小樽市銭函にある道漁連の「ぎょれん総合食品」にはマイナス40度と30度の冷凍庫があり、長時間は止められない。工場設備の一部を電気からガスに切り替える準備を始めたという。(熊井洋美、渕沢貴子)

 【写真説明】
北電の川合克彦社長(右手前)から節電対策の説明を受ける高橋はるみ知事=道庁
会見で、記者の質問に耳を傾ける北電の川合社長=札幌市中央区、いずれも杉本康弘撮影
 【図】
北電の夏の時間ごとの電力需要と節電時間帯」(全文)
 
 

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◆2012/05/19 「節電弱者、おびえる命 呼吸器、手動式を用意 【大阪】」
 『朝日新聞』

 「政府が公表した夏の節電要請に向け、不安を募らせる人たちがいる。人工呼吸器が手放せない難病患者や体力の弱ったお年寄りだ。計画停電や無理な節電ともなれば、命を脅かされかねない。十分な対策を求めている。▼1面参照

 京都市西京区の元中学教諭井上秀雄さん(58)は、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症して4年。ほぼ全身の筋肉が動かず、24時間動かしている人工呼吸器が命綱だ。
 妻の美貴さん(54)は3年前、電気工事に伴って自宅が停電した時の不安が消えない。復旧まで約10分間、呼吸器に内蔵するバッテリーで持ちこたえたが、「ハラハラして、すごく長く感じた」と振り返る。
 もし夏に停電になったら、内蔵バッテリーで約1時間はもちそうだが、その後は、3年前に約10万円で購入した外部バッテリーにつなぎ換えなければならない。持続時間は最長で6時間程度といわれるが、最悪の時に備えて手動式の人工呼吸器も用意し、2人の子どもたちにも交代で動かすよう言い聞かせている。
 日本ALS協会(東京)の金沢公明事務局長は「計画停電をやるなら、患者が事前に十分な備えをとれるよう、行政は責任を持ってほしい」と求めている。
 京都府は計画停電に備え、人工呼吸器を24時間使う在宅患者が病院に移れるよう、緊急搬送先の病院を登録する制度を進めている。47人が登録。府は「不測の事態を防ぐため早めに準備した」と説明している。(永田豊隆)

 ●高齢者、熱中症に注意
 「昨年の夏、精いっぱい節電した。これ以上は厳しい」。大阪市の田中伊左雄さん(72)と妻の正子さん(67)は、関西電力管内の節電要請に頭を抱える。
 昨年も、政府から10年比で10%以上、関電から15%減の要請があったため、正子さんは昼のテレビ番組をあきらめ、テレビは夜のニュースだけにした。冷房は寝る前の1時間だけつけ、扇風機を回した。
 正子さんは一昨年、熱中症になりかけたことがある。もし今年が猛暑だったら……。伊左雄さんは、関電が一定以上の節電をした家庭に商品券配布を検討していることに憤りを感じる。「商品券より命です」
 高齢者は暑さを感じにくくなっているため、室温が上昇しても気づきにくい。汗をかく機能や心肺機能も衰えているため、熱中症になりやすいと言われる。
 日本救急医学会の「熱中症に関する委員会」委員長で、昭和大学医学部の三宅康史准教授は「社会全体で電力を譲り合い、時間や場所のメリハリをつけて冷房を使うしかない」と話す。(沼田千賀子)

 【写真説明】
ALSを患い、24時間、人工呼吸器が欠かせない井上秀雄さん(手前)。妻の美貴さん(奥)が身のまわりのケアをする=京都市西京区」(全文)
 
 

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◆2012/05/19 「節電:北電管内7% 難病患者ら不安の声 医療機器、非常電源普及進まず」
 『毎日新聞』

 「夏の節電対策で政府は18日、北海道電力管内の目標を猛暑の10年と比べて7%削減と正式決定し、北電に計画停電の準備も求めた。こうした状況下で、人工呼吸器など電源が必要な医療機器を自宅で使う患者らの中には十分なバックアップ機器を持たない人も多く、行政の支援も不十分なため、不安の声があがっている。

 筋力が低下する難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者らで作る「日本ALS協会北海道支部」(会員365人)の深瀬和文支部長(48)は、「人工呼吸器やたん吸引器を使用する患者にとって停電は生死に関わる」と訴える。自らも闘病中で人工呼吸器を使い、3時間もつ外部バッテリーを二つ持っている。しかし、内部電源が1時間しかもたない古いタイプを使い、外部バッテリーを持たない患者も少なくない。高いものでは30万円もし、4月から購入費用に保険が適用されているが、そもそも高価で普及していないという。

 同支部は電力不足が問題になった昨年から、患者に自家発電機を支給するよう北海道に求めてきたが実現していない。

 厚生労働省は、災害時に拠点病院が携帯用の非常用発電機を難病患者に貸し出すのを促すため、昨年7月に購入の補助制度を設けた。だが、北海道難病連の福田道信事務局長は「狙い通りに普及していない。維持費に補助がなく、貸し出し手順も示されていないのが理由」と話した。【鈴木勝一、山下智恵】」(全文)
 
 

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◆2012/05/22 「理化学研究所と武田薬品、中枢神経疾患領域で創薬・創薬技術開発で連携センターを開設」
 『日経速報ニュースアーカイブ』

 「「理研BSI−タケダ連携センター」を開設
−理研BSIと武田薬品工業が中枢神経疾患領域で創薬を目指す−


 理化学研究所(野依良治理事長)は、5月1日に武田薬品工業株式会社(長谷川閑史代表取締役社長、以下タケダ)と共同で理研脳科学総合研究センター(※1)(理研BSI、利根川進センター長)内に「理研BSI−タケダ連携センター」を開設しました。
 本連携センターの理念は、直近の目標に限らず長期視野を見据えて双方一体となった知識共有、意見交換の促進です。従来の分野限定になりがちの公的研究機関と企業共同研究の枠組みを取り外して、潜在的な知識・技術の融合を十分に発揮できる体制を構築できることが特徴です。具体的には、現在有効な治療法が確立されていない「中枢神経疾患領域」において日本初の創薬、創薬技術開発という難関に挑みます。


1.背景
 統合失調症、筋委縮性軸索硬化症(ALS)、双極性障害などの中枢神経疾患はいまだに有効な治療法がなく、早急に取り組むべき課題となっています。これらの疾患の治療法を確立するには、従来の手法に基づいた新薬開発に加えて、脳内の部位特異的な遺伝子発現の解析、バイオイメージング、電気生理学、オプトジェネティクスといった多様な要素技術の活用によるブレイクスルーが必要となります。
 1997年の設立以来、理研BSIは脳科学における要素技術の開発と、神経回路を中心とする脳機能の解明に向けた基礎研究を行ってきました。一方、タケダは創薬データベースの蓄積に加え、代謝性疾患や中枢神経疾患などに関する高い研究開発力と世界有数の創薬技術を有する医薬品の総合メーカーです。今回、産業界との連携センター制度(※2)に基づく理研BSI−タケダ連携センターの開設により、中枢神経疾患の解明から新規創薬標的の探索、さらには新薬の創製までのプロセスを一貫して行える研究の場を構築しました。本連携センターの目標に向けて、双方の活発な人材交流を促進させ、共同で取り組む研究の方向性を検討しながら、未来を見据えた知識・情報・技術の融合を目指します。


2.「理研BSI−タケダ連携センター」の概要
 [1]組織名
    理研BSI−タケダ連携センター
    (略称:BTaC/RIKEN BSI−Takeda Collaboration Center)
    連携センター長:津本忠治(理研脳科学総合研究センター 副センター長)
 [2]所在地
    理研脳科学総合研究センター内(埼玉県和光市広沢2番1号)
 [3]開設期間
    2012年5月1日から2017年3月20日まで
 [4]業務内容
    「新規創薬プラットフォームの構築」
    将来の医薬品候補化合物の探索および臨床試験への橋渡し研究を進めるための基盤技術の開発を目指す。
    「新規創薬ターゲットの探索及び機能解析」
    疾患解明への新しいアプローチを研究し、将来の中枢神経疾患の新規創薬ターゲット発見を目指す。


<補足説明>
※1 理研脳科学総合研究センター
  1997年10月に設立。理研BSIは、わが国の脳科学研究の中核拠点として国内外から優れた研究者を結集し、総合的な研究を展開している。設立以来、数多くの優れた研究成果と人材を輩出し、世界有数の脳科学の研究拠点として国際的な認知を得ている。学際的かつ融合的な研究体制を特徴とし、脳のミクロな分子機構にはじまり、神経細胞、神経回路、よりマクロな現象である認知や記憶と学習の仕組み、さらには言語の獲得、脳とコンピューターなど、個体、行動、社会までを対象として、理論と実験を交えながら、医学、生物学、物理学、工学、情報科学、数理科学、心理学など多彩な学問分野を背景にした研究を進めている。

※2 産業界との連携センター制度
  産業界との包括的な連携の場として2007年2月に整備した制度。企業からの提案をもとに、理研の各センター内に「連携センター」を設置し、中・長期的な課題を実施する。この制度は、これまで理研が実施してきた、企業が主体となり具体的な研究目標を設定する「産業界との融合的連携研究プログラム」などとは異なり、中・長期的視野で目標設定を行える点、企業名を冠する点が特徴である。これにより、理研は産業界との連携をさらに発展させ、企業と共同で新分野を切り開き、理研と企業双方の文化を吸収した人材の育成を目指している。


<これまでに設置した連携センター>
 連携センター名:理研BSI−オリンパス連携センター
 設置年度:2007年6月

 連携センター名:理研−東海ゴム人間共存ロボット連携センター
 設置年度:2007年8月

 連携センター名:理研BSI−トヨタ連携センター
 設置年度:2007年11月

 連携センター名:理研RSC−リガク連携センター 
 設置年度:2010年12月

関連ホームページ
(独)理化学研究所 ホームページ(http://www.riken.go.jp/

2012/05/22 16:10」(全文)
 
 

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◆2012/05/24 「(インタビュー)障害者が生きる タレント・稲川淳二さん」
 『朝日新聞』

 「私がテレビでバカやってたころですよ。次男の由輝(ゆうき)が生まれたのは。はい、1986年です。先天性の重い病気でしてね。それからずっと障害を抱えて生きています。今度、障害者に関する法律が変わるんですって。いろいろ思うところはありますよ。障害者の父親ですから。あぁ、はい、それじゃぁ、お話ししましょうか。

 そのころはね、仕事も調子が良くてね。長男も9歳になって、すごく幸せだったんです。で、子ども1人でこんなに幸せなんだから、2人ならもっと幸せになるだろうと。単純な考えですよね。
 でもって、次男が生まれたんですけど、クルーゾン氏症候群という先天性の重い病気だっていうじゃないですか。生命に別状はないのですが、頭の骨に異常があって、手術が遅れると手足にマヒが出る可能性がある、と言われました。私も頭真っ白ですよ。
 生後4カ月で、手術を受けることが決まって、その前のある日、病院に行ったんです。すると、次男を見ていた女房が「あんた、ちょっと見てて」と、用足しで個室を出て行った。私一人で次男に向き合うことになったんです。でも見るのが怖いんですよ。無責任だけど、あり得ない世界が起きていると思っているわけだから。おそるおそる見ると、次男は寝ていました。だれもいない、しーんと静まり返った病室に、「はぁ、はぁ」という、次男の小さな息の音が響いています。
 本当に許されないことですが、うちの子のことですから、こんな話をどうか許してください。私はね、次男に死んで欲しいという気持ちがあった。助けたい。でも怖い。そして悲しい。この子がいたら、女房も長男も将来、大変だろうな。よしんば助かって生きたとしても、いずれは面倒なことになるんだろうな。いろんなことを考えた。
 どういう病気かも当時はよく分かってなかったし、病室には私と次男しかいない。だれにも分からない。小さいから葬式も簡単だし。じゃあ今、自分で殺しちゃおうかな。その代わり、ずっとこいつに謝り続けて生きればいいんだ、と。
 「鼻をつまんだら死ぬだろうな」と思って、次男の鼻先にぐっと手を伸ばした。でも、鼻先数センチのところで、手がぶるぶる震えるんですよ。手が震えて、どうしてもできない。そこに女房が戻ってきたんです。
 ……。そんなことがありました。
 手術は朝から始まって、夜の8時半ごろにようやく終わった。エレベーターが開いて、おりみたいなベッドが出てきた。まわりに先生がたくさんいて、のぞくと次男が寝ている。頭は包帯だらけで、足とか腕にはチューブが何本も刺さっていた。苦しそうに呼吸をしている。
 もうね、たまらなかったです。小さな体を切り刻まれて、ぼろぼろになっても頑張っている。私はベッドにすがりついて、「由輝! オレはお前の父ちゃんだぞ。由輝っ!」と叫びました。
 実は、次男の名前をこのとき、初めて呼んだんです。それまでは、名前を呼べなかった。自分の中から抹消しようとしていたんです。心のどこかで拒絶していたんです。自分が望んだ子どもなのに、オレは命を否定した。最低です。本当に最低です。何て最低な父親なんだと。……。思いました。
 こんな最低なことを考える親なんて、きっと私だけでしょうね。障害を持つ子にも、変わらぬ愛情を注ぐのが親心ですから。
 以後、人生、がらりと変わりました。テレビのお笑いの仕事もやめました。芸能人っていうのは、身内に不幸があっても笑ってなきゃならない。陰でどれだけ泣いても苦しくても、テレビでは「はいどうも〜」って、笑わせなきゃならない。もう、やかましいぐらいよくしゃべって、「あんた明るいねぇ」なんて言われていましたね。
 でももうやめました。自分を殺してまで笑いの仕事をするのはやめよう、と。今は怪談のほか、バリアフリーの講演とか、街頭や駅で障害者に対する理解を訴えたり、応援したりしています。

 ●法律をどう作るか
 2006年にできた障害者自立支援法にも反対しましたよ。ホームヘルプなど障害福祉サービスを受けるのに、利用料の1割を障害者が負担しなければならない。「えっ」と思った。
 だって、重症の人ほどお金がかかるんです。重症の人ほど働けないわけでしょう。おかしいじゃないですか。働ける人が働いて、重症の人をフォローしてあげるのが普通なのに。元気な人が考えたら「それだけ手間ひまかかるんだから、その分お金ちょうだい」ということなんだろうけど。でもそれは元気な人の考え方ですよ。
 私も今は元気ですが、8月で65歳になります。いずれ仕事もできなくなる。女房だって、いつまで面倒を見られるか分からない。先のことを考えると怖いんです。
 何も私は人様のお金で楽がしたいなんて思っちゃいませんよ。障害は国の責任じゃないし、国に面倒を見る義務もないことは分かってます。だれが悪いなんて言いません。でも、障害者なんか放っておいてもいいじゃないか、何で面倒を見る必要があるのか、日本の発展に関係もない、と思われているんじゃないか、と感じるんです。
 私は、子どもには「ごめんね」、周りの人には「お願いします」「ありがとうございます」しか言えずに生きている。次男も一生懸命、生きている。お金なんかなくったって、一度でも「お父さん」と呼んでくれたら、どんなにうれしいか。そればっかり考えて生きてるんですよ。そこを分かってくれているのか。日本が豊かな国なら、経済的にも精神的にも優しさを持てるんでしょうけど、財政も厳しい中で、どういう法律を作るか、ということなんですよね。
 民主党は2009年の総選挙で、障害者自立支援法を廃止して新法を作る、と公約に掲げていました。しかし政権を取ると、廃止を見送り、新法の検討会の提言も先送りしてしまいました。これまでの1割負担を実質的に「払える人は払う」という応能負担に変更していますが、障害者から「だまされた」という怒りの声が上がりました。今回は、法律の名前を「障害者総合支援法」に変える程度にとどまるようです。
 もちろん、経済的に困っている障害者や家族も少なくないので、負担が軽くなればありがたい。公的援助があれば、いちばんですよ。病院に通うのだってお金がかかるんですから。
 でもね、法律がどんなに変わったって、障害者がすべて救われるってことには、おそらくならない。私たちはね、たった5メートルでも手を引いてくれる人がいたら本当にうれしいんです。そんな温かみ、思いやりが感じられれば負担の割合うんぬんじゃなくて、法律や制度の受け止め方も少しは変わってくると思います。

 ●誰にでも起きうる
 一般の方々にも分かってほしいですね。私が街頭や駅頭で一生懸命しゃべっても、「うるせえなぁ」という顔をして無視する人がほとんどです。誰も聞いてやしない。
 私も次男のことがあるまでは、ひとごとだと思ってた。でもみんな年をとれば、どこかしら障害が出てくると思うんですよ。足が動かないから、車いすが欲しいとかね。障害者の問題は、特別なものじゃない。いつ、だれにでも起きうる問題なんです。
 私の仕事の関係とか、いろいろあって、女房と次男とは残念ながらもう何年も別居しています。別に夫婦仲が悪いわけじゃないですよ。次男は今年、26歳になるんですが、重度の知的障害者です。こないだね、次男が生活実習所で作った簀(す)の子を女房が送ってくれました。私は最低の父親ですが、そんな小さな成長の証しが、心からうれしい。優しくしてくれとは言いません。せめて、嫌がらないでください。忘れないでください。
 私がね、今回、こんなみっともないことも、あえてお話ししたのは、みなさんに分かってほしいという一心、それだけなんです。ごめんなさいね。世の中に要らない人、要らない命なんてないんですよ。それだけは、分かってください。
 (聞き手・有近隆史、秋山惣一郎)
     *
 いながわじゅんじ 47年生まれ。80年代に熱湯に入るなど体を張ったリアクション芸で人気を博す。現在は、怪談だけでなく工業デザイナーとしても活躍する。

 ◆骨抜きにされた自立支援法見直し 日本社会事業大学教授(障害者福祉論)・佐藤久夫
 政府が3月に国会に提出した「障害者総合支援法案」が審議中だ。
 私は政府の「障がい者制度改革推進会議」のもとに設置された作業部会の部会長を務め、約1年半、18回の会合で法案への提言をまとめた。障害者と家族、事業者、自治体など立場を超えて合意したものだ。その内容は、支援対象をすべての障害者とする▽支援の必要度合いを示すとされる「障害程度区分」を廃止し、本人のニーズにあったサービスにする▽利用者負担は原則無償とする、など60項目に及ぶ。障害者を保護する対象ではなく権利の主体であるとし、地域で他の人と平等に生活するための必要な支援を示している。
 しかし、法案にほぼ盛り込まれたのは「共生社会の実現を目指す」という「法の目的と理念」だけ。障害の範囲に難病が加わったものの、支援を受けられない谷間は残るなど、21項目が不十分ながら取り上げられ、それ以外は全く触れられていない。小宮山洋子厚生労働相は「(提言実現への)第一歩だ」と言うが、どういう方向に行こうとしているのか、法案からは見えない。
 2006年施行の障害者自立支援法は、「サービス利用に応じて利用者にも負担してもらう」という考えだったが、実情は収入がほとんどない障害者が多く、悲鳴が上がった。マスコミも含めて反対意見が相次ぎ、違憲訴訟も全国各地で起きた。
 民主党は09年の総選挙で「現行法を廃止し新法を制定する」とマニフェストに掲げた。新政権は新法を作ると約束して裁判をやめさせた。障害者に寄り添う姿勢は政権交代の大きな原動力になったのではないか。
 我々も最大限の努力をして提言をまとめても、こういう法案しか出てこないことに徒労感を覚える。民主党は「ねじれ国会」を理由に「国会で否決されるような法案を出すわけにはいかない」と言うが、本当にそうか。野党の賛成が見込めないなら国民の目の前で議論して、どちらが障害者が求めているものなのか、はっきりさせれば良いではないか。
 先月、和歌山市に対し、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の男性(75)に1日21時間の介護を義務づける判決が出た。男性は人工呼吸器をつけながら必死に生きている。74歳の妻は歩行も不自由だが、睡眠以外の時間は介護に充ててきた。
 我々は、このように裁判に訴えなくても必要な支援がなされ、障害者も家族も安心して暮らせるようにとの願いで、提言を作った。
 障害者は社会に参加して貢献し、胸を張って生きたいと考えている。そのために必要な支援は何か、自らのプライバシーをさらして法廷や社会に訴えてきている。理解が広がり、社会と障害者の距離が変わってほしいと願っている。障害者も含めてみんなが参加し支え合う共生社会こそが、大震災から再生する日本社会ではないか。
 (さとうひさお・64歳)

 【写真説明】
「怪談の全国ツアーを始めて、気づいたら今年で20年になります。みなさんの心に残るようなものにしたいなぁ」=東京都中央区、麻生健撮影」(全文)

 

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◆2012/05/24 「生きられる世に変えよう 「生存学」を研究する 立岩真也さん51」
 『読売新聞』

 「◆「死に急ぐことを勧める風潮」に疑問 
 まずは生きること。立命館大先端総合学術研究科教授の社会学者、立岩真也さん(51)は、5年前から「生存学」の研究を率いてきた。観念的に生の意味を探るのではない。むしろ世の中のありようが人の生を左右している現実がある。であれば、生きやすくするために社会の制度を変えるのも、技術を活用するのも、大事なこと。死に方を考える前に、生きる技法とそれを支える手だてを考えようではないか、と言うのだ。(編集委員 原昌平)
 ◆「障老病異」と社会
 終末期医療や仏教など、死にかかわるテーマに社会的な関心が高まっている。
 「いや、ブームはずっと前からで、死生学とか、いかに死ぬかといった本は1980年代からわんさと出ている。日本人は死の話を避けてきたと言われるけれど、実際は盛んに語ってきた」
 そこに違和感があった。
 「なんだか死に急ぐことを勧めるような風潮。生きることが先ではないのか」
 2007年度に政府のまとまった研究費(グローバルCOE)を得て「生存学」創成拠点が設立された(現在は学内の生存学研究センターが活動を引き継ぐ)。
 柱にしたのは「障老病異」。いろいろな障害、老い、病気、あるいは少数派の体や心を持つ人たちが、どのように生きてきたのか、当事者の側に立って歴史や現状を調べることに重点を置いた。重度の身体障害、視覚障害、血友病、性同一性障害などの大学院生も研究に加わった。
 親による障害児殺しが相次ぐ中で「殺すな」と訴えた脳性まひ者グループ。隔離収容と差別を変えようとする精神医療の改革運動。人工透析の保険適用・公費負担を実現させてきた患者団体。24時間介護を求める重度障害者……。
 「社会は90%の多数派用につくられている。それはひとまず仕方ないとしても、残り10%の人たちに生じる不利は社会がカバーすべきだ。社会保障はもちろん、移動の自由も、点字や字幕などのコミュニケーション手段も、社会で生きるのに欠かせないし、差別や排除があれば生きにくい」
 生存のための闘いは、今も続いている。
 ◆危うい「自己決定」
 延命治療はいらない、それを拒む自己決定を尊重せよという主張がある。生命維持の中止や不開始に、法的な免責をほしがる医師も多い。
 「医療全体で言えば、患者の自己決定は時代の流れ。しかし死ぬという選択は別ではないか。本人の意向は大事だが、元気な時に単純に○×で決められるものではない」
 そして医療の内容には、診療報酬制度など社会的な要因が大きく関係する。
 「過剰医療は、医療行為ごとに点数を加算する『出来高払い』に伴って起きた。近年は検査や点滴、投薬をしても定額の『包括払い』が増えており、やらないほうが病院は得になる。過剰医療ばかりとみるのは認識が古い」
 日本では、家族や社会に負担をかけたくないと考える人が多い。そういう理由で延命を拒むとすれば、本人の希望といえるのか。
 「緩和ケアや看護・介護が十分になされているか、本人の側に身を置く人がいるかによって、その時の気持ちは違ってくる。一方、『死に方はこうあるべきだ』と著名人が語ったり、法律ができたりすると、世間的な圧力になる」
 自己決定といっても、周囲の状況や社会の影響を必ず受けるということだ。
 ◆その状態なりの生
 神経難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)は、全身の筋肉がしだいに動かなくなり、進行すると自力では呼吸もできなくなる。人工呼吸器を着けて生きることを選択する人は3割ほどだ。立岩さんは、そうした患者たちが伝えた体験の記録を多数、集めた。
 「全く意思伝達できない状態が2年ほど続いた後、脳波を読み取る装置で対話できるようになった人の文章も読んだ。死ぬほどつらかったという記述はなく、景色が見えたり声が聞こえたりする喜びはあったという。放置されたらたまらないが、親身なケアがあれば違うかもしれない」
 認知症になったら長く生きたくないという人も多い。
 「恐怖心はわかるが、そうなったら、なったなりの人生があるのではないか。否定するのは、認知症の人たち全体を蔑視するのと紙一重。自分はいつまでも同じではない。その時なりの状態を生きる。それでいいという考え方もできるのではないか」
 
 ◇たていわ・しんや 1960年、新潟県佐渡島生まれ。東京大社会学研究科博士課程単位取得退学。千葉大、信州大を経て2004年から立命館大大学院教授。07年4月から今年3月まで同大学生存学研究センター長。著書に「私的所有論」「弱くある自由へ?自己決定・介護・生死の技術」「ALS 不動の身体と息する機械」「良い死」など。
 
 写真=「元気な時と違う状態になっても、それはそれで人生ではないか」と話す立岩さん(立命館大で)=竹田津敦史撮影」(全文)
 
 

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◆2012/05/25 「節電:九電10%、医療・介護の現場では… 「工夫で乗り切れる」 「5%限度」の声も」
 『毎日新聞』

 「◇人工呼吸器の在宅患者「停電は死を宣告」

 九州電力は今夏、猛暑となった10年夏に比べ10%以上の節電要請を決め、計画停電の準備に入った。中国地方も5%以上の節電要請となる。医療・介護の分野は「支障のない範囲で」(九電)とするが、求められる程度が不明確で、事業者からは戸惑いの声が上がる一方、知恵を絞って原発ゼロの夏を乗り切ろうとする声も聞かれる。人工呼吸器を使う在宅の難病患者にとって、計画停電は命に関わりかねず、患者団体は代替電源の早期整備を求めている。【関谷俊介、写真も】

 福岡市の介護老人保健施設「木の葉の里」は昨年夏、リアルタイムで電気使用量がわかる九州電気保安協会の「ECOねっとシステム」を導入。例年夏は平均200キロワット程度の電気を使っていたため、目標として設定した10%削減の180キロワットを超えたらモニターの警報が鳴るようにした。警報が鳴る度に職員のパソコンや電気ポットの電源を消したが、目標値になかなか届かず、昨秋に目標値を190キロワットに変更したという。

 小島美嘉・介護部長(45)は「入所者も節電を理解し、照明も極力消したが、5%がせいぜい」と実感を込めて話す。ある大学病院も「院内で節電の呼びかけはするが、極端にやり過ぎると患者からクレームが出かねない」と懸念する。

 一方、10%程度なら工夫次第で乗り切れるという声もある。

 福岡県田川市の社会保険田川病院(348床)では昨年度、現場の職員から無駄と感じる空調や照明を指摘してもらい、空き部屋の空調を消したり、不必要な照明を消せるようにスイッチを改修したりした。こうした工夫で5年前に比べて約10%減の省エネを達成。担当の山野好弘さん(46)は「患者の療養環境を第一に考えているが、現場で働く職員に聞くと病院といえども無駄は結構ある」と話す。

 佐賀市内で民家を利用した介護サービスを提供している宅老所7カ所を運営する「NPOたすけあい佐賀」(利用者約60人)でも昨夏、こまめに冷房を消し、高齢者の首もとを冷やすベルトを導入するなどした。代表の西田京子さん(67)は「昨年もやっていけたので、工夫すれば乗り切れると思う」と話した。

 一方、九電の大型火力発電でトラブルがあれば計画停電の可能性も出てくる。筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者や家族らでつくる日本ALS協会宮崎県支部は4月、知事あてに長時間の停電に対応できる人工呼吸器の代替電源の整備を要望した。

 県内の114人の患者の一人でもある平山真喜男支部長(59)によると、人工呼吸器を使う在宅患者は十数人いるが、予備バッテリーは数時間しか持たず、ガソリン式発電機などの整備が急務という。平山支部長は「人工呼吸器を使っている在宅患者にとって、停電は死を宣告されることと同じだ」と訴えている。」(全文)
 
 

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◆2012/05/26 「(となりの原発)迫る停電、命の不安 人工呼吸器や透析に頼る患者ら /滋賀県」
 『朝日新聞』

 「停電によって命を脅かされる人たちがいる。人工呼吸器に頼る難病患者や透析患者たちで、病院などでは緊急時に備え、自家発電機やバッテリーの確保を進めているが、果たして十分な対応が取れるのか、患者やその家族は不安を募らせている。

 「少しでも電気が止まれば夫の呼吸が止まる。その恐怖に毎日おびえているところに停電と言われ、戸惑うばかりです」。そう話すのは、守山市の主婦高谷里美さん(65)。夫の茂さん(70)は3年前に全身の筋肉が次第に動かなくなる難病「筋萎縮性側索硬化症」(ALS)と診断された。人工呼吸器を24時間動かすことで命をつないでいる。
 在宅療養では、訪問入浴の介護サービスを受ける。その際はコンセントから外して内臓バッテリーで呼吸器を動かすが、その間は気が気でないという。里美さんは計画停電に備え、外部バッテリーの利用を勧められたが、「停電がもし長時間に及んだらと、つい思いをめぐらせてしまう」という。隣の福井県にある原発については、「不安もあるけれど、例えば期間限定で動かすとかできないのでしょうか」と訴える。
 県の調査では、在宅で人工呼吸器を使う患者は県内で66人。隣の京都府では計画停電に備え、在宅患者について緊急搬送先の病院を登録する制度を進めているが、県の担当者は「主治医との連絡を密にしてほしい」とし、自家発電装置の貸し出しなどで対応する方針だ。
 人工透析も停電の影響が予想される。腎臓疾患の患者が通院する草津市の富田クリニックには40台の透析装置があり、100人近くが週3回、4〜5時間ずつ血液をきれいにする。だが、停電になると浄水を電気で循環させるシステムが働かなくなるため、富田耕彬院長(62)は「早朝や夜に透析ができるよう手を打ちたい」という。
 県内の透析に携わる医師らでつくる「滋賀腎・透析研究会」は、災害時に透析施設の被害状況をネット上で情報提供するシステムを設ける。富田院長は「交通手段の問題もあるため、保健所も入って対策を練る必要がある」としている。
 一方、県内の災害拠点病院は10カ所ある。その中心的な役割を果たす大津赤十字病院(大津市)には自家発電機が3台があり、最低約3日分の重油を備蓄する。担当者は「人工呼吸などの処置が必要な患者を受け入れる用意はある」という。県健康福祉政策課の大岡紳浩参事は「医療機関同士の連携を深め、計画停電を乗り切ることができれば、将来起きうる大災害への備えになる」としている。
 (飯竹恒一)

 ●自家発電なし、4病院 県調査
 県は、今夏に実施される可能性がある計画停電に備え、県内の医療機関や福祉施設、在宅の療養者を対象に、停電時の影響やその対応について調査をした。その結果、県内に59カ所ある20床以上の病院のうち、自家発電装置がない病院は4カ所あった。県は、対応が困難な患者については転院を要請するとしている。
 特別養護老人ホームや障害者支援施設などでは、回答のあった151カ所の入所者のうち、人工呼吸器の使用は24人、酸素吸入器は92人、たんの吸引器は368人だった。
 また、訪問看護ステーションを通じて在宅療養者も調べた。回答のあった70カ所では人工呼吸器の使用が66人、酸素吸入器287人、たんの吸引器417人に上り、このうち外部バッテリーがないなど停電に対応できない人は、それぞれ6人、28人、250人としている。県では一時入院の要請や自家発電装置の貸し出しを予定している。
 (千種辰弥)

 【写真説明】
難病のため24時間、人工呼吸器が必要な高谷茂さん=守山市」(全文)
 
 

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◆2012/05/28 「(インタビューズ)大好き! ミシュラン三つ星シェフ・福本伸也さん /兵庫県  THE INTERVIEWS (34歳)」
 『朝日新聞』

 「母は料理が大好きな人でした。女手ひとつで僕と兄を育てるため、毎日とても忙しかったはずなのに、食事は必ず自分で作って、一品一品工夫があった。
 小学生のころから一緒にハンバーグやカレーを作って、料理はおいしい、楽しいということを、母から教わった。4年生になってクラブを選ぶとき、料理がしたくて女の子ばかりの家庭科部に入ったぐらいです。
    *
 イタリアやスペインのレストランを渡り歩いて8年たった2006年、バレンシアのカ・セントは、おやじさんが引退。ラウルと僕で共同経営しようという話になった。そんなある日、電話してきた母の言葉が、変だった。知り合いのおばちゃんに見て来てもらうと、「体調が悪くて自殺したい」と悩んでいると。すぐに帰国して1カ月間、いろいろな病院に連れて行った。診断結果は、どこも「普通のストレス」。ちょっと安心してスペインに戻った。
 しかし、その1週間後、神戸市民病院から電話があって「お母さんは筋萎縮性側索硬化症(ALS)です」と言われた。全身の筋肉が動かなくなる難病。まもなく24時間介護が必要になり、最終的には植物状態になるという。1週間後、「もう、ここに戻ってくることはないだろう」とカ・セントに別れを告げ帰国しました。
 病院の先生は「ずっと入院していてもいい」と言ってくれましたが、僕は「家で面倒みます」と言った。昨日動いていた小指が今日は動かない。母は毎日、刻々と変わっていった。のどの筋肉が衰え、栄養剤を入れるための穴を開けた。次は胃に。手術を決断するのは僕。どんどん機械が増え、家が病院みたいになった。
 味覚も感じない。それでも、カレーを食べたがった。僕はカレーを作って液状にして、香りをかがせてチューブに入れてあげた。温度は感じるのでアイスクリームを口に。味はわからへんのに、「おいしい」って喜んでくれた。そんな時間がすごい幸せだった。
 2007年7月。母、福本博美は54歳で亡くなりました。思えば中学を卒業してからずっと離ればなれで暮らしてきた。3カ月しか無理と言われたが、最後に1年間そばにいられた。いっぱいいっぱい話して、僕は母が大好きなんだと知りました。
 (聞き手・三浦宏)

 【写真説明】
細心の注意を払って料理を盛りつける福本伸也さん=神戸市中央区のカ・セント、諫山卓弥撮影」(全文)

 

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◆2012/05/28 「[ズームアップ]母から母へ 口でつづる愛」
 『読売新聞』

 「〈子育てって難しい?いいえ、自然に愛したらいいんです〉
 児童虐待をなくしたい。そんな思いから、石田光代さん(56)は寝たきりの病床で、子育てに悩む母親たちに向けた言葉を1冊の本にまとめた。
 口にくわえたチューブを前歯でかみ、その力を加減してパソコン画面の文字を選び、文章をつづる。全身の筋肉が徐々に衰えて体が動かなくなる難病・ALS(筋萎縮性側索硬化症)を7年前に発症し、声も出せなくなった石田さんにとって、パソコンは意思を伝える唯一の手段だ。
 長崎県平戸市に住む石田さんは17?28歳の男4人女2人の母親。夫の治男さん(57)とともに大家族の世話をこなしながら、近所の子どもたちにも厳しく朗らかに接し、「肝っ玉母ちゃん」と呼ばれて慕われていた。
 だが、ようやく子育てが一段落した時、穏やかな日常は暗転した。ALSは治療法も確立していない。入院後は寝たきりになり、人工呼吸器を装着した。
 病室でじっと天井を見上げ、テレビの音声に耳を傾ける毎日。ニュースで児童虐待が報じられるたび心が痛み、「自分にも何かできないだろうか」と問うた。
 6人の子育てに奔走した体験を文章にしようと決めた。悩む母親に、〈そんなに力を入れなくていいよ〉というメッセージを届けたいと思った。1年がかりでパソコンに打ち込んだ手記は「子育てとおっと 7つの宝」という本になり昨夏、出版された。
 長男に娘が生まれ、4月には初孫の節句を家族で祝った。家を離れた子どもたちも集まり、にぎやかな笑い声が病室に響く。「子どもってなに?」。そんな問いかけに、石田さんが口のチューブをかんだ。パソコン画面に「い き が い」という4文字が浮かんだ。(写真と文 上田尚紀)
   
 ◇レイアウト 山口景子
  
 ◎毎週月曜日掲載
  
 ◇ヨミウリ・オンラインのズームアップはhttp://www.yomiuri.co.jp/zoomup/
  
 写真=生後6か月の初孫の笑顔をながめた石田光代さんのほおを涙が伝った。光代さんはパソコンに「すくすく育ってね。未来にはばたけ」と打ち込んだ(4月7日、長崎県平戸市で)
 写真=「あかりをつけましょ ぼんぼりに」。初孫を囲んで治男さん(右端)ら家族がひな祭りの歌を合唱した。新しい宝の成長を見守る希望がわいてくる(4月7日)
 写真=担当の理学療法士と時折、病院周辺を散歩し、季節の移ろいを楽しむ(4月8日)
 写真=口のチューブをマウス代わりに使い、画面上のひらがなを選んで一文字ずつ打ち込む(4月7日)
 写真=40歳代半ばの光代さんと家族。今でも、病室から子どもたちに励ましのメールを送るという」(全文)
 
 

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◆2012/05/29 「ALS患者の訪問介護、21.5時間に増 判決うけ和歌山市 【大阪】」
 『朝日新聞』

 「和歌山市は29日、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の市内の男性患者(75)について、最低でも1日21時間の訪問介護を義務付けた4月の和歌山地裁の判決を受け、介護時間を1日約12時間から約21・5時間に見直した。市幹部が、朝日新聞の取材に明らかにした。
 訪問介護時間を見直すため、市の担当者が今月18日に男性宅を訪問。人工呼吸器が欠かせない生活ぶりや健康状態、妻(74)の介護状況などを調べた。
 この結果を踏まえ、市の審査会は28日夜、男性の訪問介護時間を1日約21・5時間に増やすのを「妥当」とする意見をまとめた。市は29日、審査会の結論に従うことを決め、この日午前、男性と妻に伝えた。男性の妻は朝日新聞の取材に「介護への不安が和らぎ、肩の荷が下りたような気持ちです」と喜んだ。
 和歌山地裁の4月25日の判決は、介護時間を1日約12時間とした昨年度の市の決定を「社会通念に照らし、合理性を欠く」として違法と判断。男性と市はともに控訴せず、判決は今月11日に確定している。(野中良祐、上田真美)」(全文)
 
 

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◆2012/05/29 「和歌山・ALS介護訴訟:判決受け市、1日21.64時間に拡大」
 『毎日新聞』

 「難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の和歌山市の70代男性への介護サービスを巡り、1日21時間以上に延長するよう命じた和歌山地裁判決を受け、市は29日、現行の1日約12時間から「21・64時間」に見直すことを決めた。

 障害者自立支援法に基づく公費負担と介護保険分に緊急時の介護も考慮した。【御園生枝里、岡村崇】」(全文)
 
 

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◆2012/05/30 「妻「やっと終わった」 24時間はかなわず ALS介護延長 /和歌山県」
 『朝日新聞』

 「和歌山市が29日、4月の和歌山地裁の判決を踏まえ、市内に住む筋萎縮性側索硬化症(ALS)の男性患者(75)の訪問介護時間を1日あたり約12時間から約21・5時間に増やしたことを受け、男性の家族や訴訟の支援を続けてきた関係者には喜びが広がった。決定までに時間がかかったことや、求めていた24時間介護が認められなかったことには不満の声も漏れた。

 判決を受け、市障害者支援課の担当者2人が今月11日に男性宅を訪れ聞き取り調査した。「妻の心身の状況を十分に考慮していない」と判決で指摘されたため、市側は男性の健康状態や、介護をする妻(74)がひざの具合が悪く、立ったり座ったりするにも苦労している実態などを詳しく聞いたという。
 市はこれまで男性の介護は基本的に妻1人で十分可能として、ヘルパーによる訪問介護時間を1日約12時間と決めていた。同課の担当者は今回、介護時間を増やした理由について、「妻の体の状態を考えると、単独での介護は難しいと判断した」と説明する。
 市は判決の指摘や調査内容を踏まえ障害者自立支援法に基づく昨年6月から今年5月までの男性の重度訪問介護の時間を増やし、介護保険分と合わせて1日計約21・5時間が必要と判断。さらに今年6月以降の1年分についても同様の訪問介護時間にすることを決め、29日午前に市の担当者が男性宅を訪問し伝えた。
 妻から訪問介護時間が増えたことを伝えられた男性はベッドの上でかすかに口元を動かし、笑顔を見せた。妻は「私の介護負担を心配していたので、安心したのでは」とほほ笑んだ。
 ただ最初に県に不服審査請求を申し立てた10年7月から2年近くかかったことを振り返り、「結果がなかなか出ないので疲れた。やっと終わった」とほっとした表情を見せた。
 訴訟の支援を続けてきた在宅介護支援センター和歌山生協病院の森田隆司事務長は「介護時間が増えたことは一つの区切りだが、介護をする妻の体の調子が悪いので、毎日が緊急事態に追い込まれている。やはり求めていた24時間の訪問介護を市は認めてほしかった」と述べた。
 (上田真美、加藤美帆)

 ●行政、速やかな体制作りを
 <解説> 地裁の判決を受け、ALS患者の訪問介護時間を1日あたり約2倍に増やした市の決定について、家族や関係者からは一定の評価をする声が上がる。だが、介護を続ける高齢の妻が県に不服審査請求を申し立ててから今回、市が決定を見直すまでに約1年10カ月もかかった。
 この間、介護の負担に加え、慣れない訴訟と向き合ってきた妻は疲れ切っていた。具合の悪い自身のひざのリハビリに行く時間さえままならず、「不安で眠れない日々が続いた」と取材に心情を打ち明けた。
 市の介護時間の見直しについて、日本社会事業大学の佐藤久夫教授(障害者福祉論)は「訴訟までしないと必要な介護時間が得られない現状は困る」と指摘する。個別の介護の実態に応じ、必要な介護が速やかに受けられる体制作りが行政に求められている。(野中良祐)

 【写真説明】
訪問介護時間が増えたことを男性患者に伝える妻=和歌山市の自宅」(全文)

 

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◆2012/05/30 「ALS男性介護 21.5時間支給 和歌山市=和歌山」
 『読売新聞』

 「和歌山市に住む筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の男性(75)が市に介護時間の延長を求めた訴訟で、市は29日、介護保険と合わせて1日21時間以上の介護を男性に支給するよう命じた地裁判決(確定)通り、男性に1日約21・5時間の介護サービスを支給することを決定した。
 男性への介護支給はこれまで、1日12時間にとどまっていたが、判決確定後の今月11日、市の担当者が男性宅を訪れ、病気の進行状況や、介護を担う妻(74)の健康状態について聞き取り調査を実施した。
 調査結果を基に、1日21時間を支給し、さらに緊急時対応のために月20時間を加算するとの素案を作製。28日夜、市の支給審査会が「妥当」と判定したことから、29日、男性に通知した。
 男性の妻は「ようやく介護時間が決まってほっとした。これからは安心して夫を見守っていける」と話した。」(全文)
 
 

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◆2012/05/31 「「訪問介護増」、香川でも提訴 和歌山に続き 【大阪】」
 『朝日新聞』

 「香川県まんのう町在住で、知的障害を持つ多田羅(たたら)洋介さん(31)が、町を相手取り、訪問介護時間の増加の義務付けなどを求めて高松地裁に提訴した。当初は代理人を置かない本人訴訟だったが、新たに結成された弁護団が30日、高松市で会見。請求を24時間介護や複数ヘルパーの派遣に広げると説明した。この日あった第1回口頭弁論で、町側は請求の棄却を求めた。
 多田羅さんは一人暮らし。弁護団によると、障害者自立支援法に基づき決まる障害程度区分は最重度の6で、食事や入浴にも介助がいる。しかし町は訪問介護時間を1日約12時間に決定。不足分は民間の介護事業所が無償で提供している。2月の提訴時、多田羅さんは、訪問介護時間を1日約14時間に増やすよう請求していた。
 弁護団は6府県の弁護士10人で結成。長岡健太郎弁護士は、和歌山市の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者について、21時間以上の訪問介護を市に義務づけた判決が確定した訴訟も担当した。洋介さんの父の正(まさし)さん(62)は会見で「知的障害があっても安心して生活できる環境を求めていきたい」と話した。(吉田海将)」(全文)

 

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◆2012/05/31 「母から母へ 口でつづる愛 6人の育児経験「自然に愛して」=長崎」
 『読売新聞』

 「◆平戸の難病女性 
 〈子育てって難しい? いいえ、自然に愛したらいいんです〉
 児童虐待をなくしたい。そんな思いから、平戸市の石田光代さん(56)は寝たきりの病床で、子育てに悩む母親たちに向けた言葉を1冊の本にまとめた。
 口にくわえたチューブを前歯でかみ、その力を加減してパソコン画面の文字を選び、文章をつづる。全身の筋肉が徐々に衰えて体が動かなくなる難病・ALS(筋萎縮性側索硬化症)を7年前に発症し、声も出せなくなった石田さんにとって、パソコンは意思を伝える唯一の手段だ。
 石田さんは17?28歳の男4人女2人の母親。夫の治男さん(57)とともに大家族の世話をこなしながら、近所の子どもたちにも厳しく朗らかに接し、「肝っ玉母ちゃん」と呼ばれて慕われていた。
 だが、ようやく子育てが一段落した時、穏やかな日常は暗転した。ALSは治療法も確立していない。入院後は寝たきりになり、人工呼吸器を装着した。
 病室でじっと天井を見上げ、テレビの音声に耳を傾ける毎日。ニュースで児童虐待が報じられるたび心が痛み、「自分にも何かできないだろうか」と問うた。
 6人の子育てに奔走した体験を文章にしようと決めた。悩む母親に、〈そんなに力を入れなくていいよ〉というメッセージを届けたいと思った。1年がかりでパソコンに打ち込んだ手記は「子育てとおっと 7つの宝」という本になり昨夏、出版された。
 長男に娘が生まれ、4月には初孫の節句を家族で祝った。家を離れた子どもたちも集まり、にぎやかな笑い声が病室に響く。「子どもってなに?」。そんな問いかけに、石田さんが口のチューブをかんだ。パソコン画面に「い き が い」という4文字が浮かんだ。(写真と文 上田尚紀)
 
 写真=生後6か月の初孫の笑顔をながめた石田光代さんのほおを涙が伝った。光代さんはパソコンに「すくすく育ってね。未来にはばたけ」と打ち込んだ(4月7日、平戸市で)
 写真=(上)口のチューブをマウス代わりに使ってひらがなを選び、傍らの孫へ向けたメッセージを打ち込む(4月7日)(下)40歳代半ばの光代さんと家族。今でも、病室から子どもたちに励ましのメールを送るという」(全文)

 

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◆2012/06/01 「[医療ルネサンス]ALSを生きる(1)筋肉の萎縮「まさか僕が」(連載)」
 『読売新聞』

 「◇通算5339回
 神奈川県鎌倉市の北部にある湘南鎌倉総合病院。救急患者の受け入れを断らず、年間救急車搬入数が1万3000台と全国有数の同病院は、国内66病院を展開する徳洲会グループの中核施設だ。
 最上階の15階には、特別な部屋がある。入り口で靴を脱ぎ、フローリングの床に上がる。すると、縦長の部屋の奥から「プシュー、シュー」という規則的な音が聞こえてきた。人工呼吸器の作動音だ。そこに、一代で巨大医療グループを築いた徳洲会理事長、徳田虎雄さん(74)がいた。
 病で不動の体を車いすに預け、口角を上げてこちらを見る。表情筋の動きも少ないが、それが笑顔であることはすぐに分かった。
 気管を切開して人工呼吸器をつけているため、声は出ない。記者があいさつすると、男性職員が徳田さんの前にさっと立ち、透明の四角いプレートを徳田さんの顔の前に掲げた。
 プレートには、50音のひらがなや数字が書き込まれている。徳田さんの眼球が上下左右に動き、狙った文字の前で止まる。それを男性職員がプレート越しに確認して読み上げ、別の職員がノートに書き留める。
 唯一、自在に動く眼球を使い、会話をしているのだ。1文字あたりの所要時間は2秒弱とかなり早い。この繰り返しで言葉ができあがっていく。
 「今は、元気な時よりも規則正しく文化的な生活を送っています。これからが人生の勝負」
 徳田さんの病は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)。筋肉を動かす指令が脳から伝わらなくなる難病で、手足や呼吸に必要な筋肉が急速に衰えていく。
 有効な治療法はなく、患者は発症から平均3年半で、呼吸不全などで死亡する。呼吸不全は、人工呼吸器の装着で乗り越えられるが、家族の介護負担などを気に病み、装着しない患者が7割にのぼるためだ。
 徳田さんは、10年前の02年春、ALSと診断された。衆議院議員としても多忙を極めた時期で、「診断の少し前、左手の筋肉の萎縮が起こったが、あまり気にとめなかった。まさか、僕が病気になるなんて思わなかったから」と振り返る。
 各地の医師会と対立しながら病院網を広げ、公職選挙法違反の逮捕者が続出する選挙を勝ち抜いて、国政にも打って出た。そんな恐れ知らずの男にとっても、ALSの診断は重かった。
 「今までのような活動が出来なくなる。そう考える度、大きな不安と焦りに襲われた」(このシリーズは全5回)
 
 ◎連載「医療ルネサンス」は、月曜日から金曜日の週5回の掲載です
 
 写真=文字が書かれた透明なボードを持ってもらい、視線の動きで会話をする徳田虎雄さん(神奈川県鎌倉市の湘南鎌倉総合病院で)=上甲鉄撮影」(全文)

 

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◆2012/06/04 「[医療ルネサンス]ALSを生きる(2)病院建設 眼球で指示(連載)」
 『読売新聞』

 「◇通算5340回
 医療法人「徳洲会」理事長の徳田虎雄さん(74)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断された翌年の2003年、歩行障害が進んだ。04年2月、食事ができなくなり、腹部の穴から胃に栄養を送る胃ろうをつけた。間もなく、呼吸が困難になった。
 「これまでも僕は、その時々にできる最大限の勝負、決断に生きがいを感じてきた。開発途上国にたくさん病院を作り、医療を平等に提供する仕事は僕にしかできない。際限のない夢の実現のために、生きる」
 05年2月、声と引き換えに人工呼吸器をつけた。
 「生命(いのち)だけは平等だ」
 徳田さんの原点ともいえるこの言葉は、鹿児島県・徳之島での少年時代の体験から生まれた。体調を崩した3歳の弟の容体が深夜に急変し、当時小学3年生の徳田さんが、往診を頼みに2キロ離れた診療所に走った。だが、医師にいくら頭を下げても断られ、弟は治療を受けられぬまま、苦悶(くもん)の形相で息絶えたのだ。
 その直後から猛勉強を始め、2浪して大阪大学医学部に入学、外科医になった。病院で経験を積み、自身にかけた多額の生命保険を担保に銀行融資を受け、1973年、大阪府松原市に最初の病院を開院した。以後、「年中無休、24時間オープン」を理念に、離島や地方にも病院網を広げた。
 ALSが進行した今も、眼球で徳洲会を仕切る。各病院の会議などをモニター中継で視聴し、眼球を素早く動かして指示を出す。2006年にはブルガリアに1016床の総合病院を開設し、アフリカやアジア、ロシアなど多くの地域で病院建設計画を進めている。
 「元気な時は、動き回り過ぎて寝る間もなかったが、今はきちんと寝ているし、テレビで野球などを見てくつろぐ時間もある。そのため以前よりも頭はさえ渡り、いい仕事ができます」
 将来、まぶたや眼球も動かなくなり、意思伝達が不可能になる恐れもあるが、「今を必死に生きるだけ。再生医療など、治療法の開発に期待しています」。
 2時間超の取材中、徳田さんの両脇には病院職員が1人ずつ立ち、両腕を抱え上げてマッサージを続けた。こうしないと、筋肉の衰えで支えを失った両腕を激しい痛みが襲うのだ。それでも徳田さんはベッドに横たわることなく、車いすで記者と向き合い続けた。
 眼球の会話はさらに続いた。「死は絶えず考えていますが、怖いと思ったことは少ない。でも、夢の実現を見届けるためには、あと20年は生きないと」
 口角を上げ、自信とちゃめっ気に満ちた表情がそこにあった。
 
 ◎医療・健康情報はインターネットサイト「ヨミドクター」(http://yomidr.jp)で
 
 写真=腕の痛みを和らげるため、職員らにマッサージを続けてもらう徳田虎雄さん(神奈川県鎌倉市の湘南鎌倉総合病院で)=上甲鉄撮影」(全文)
 
 

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◆2012/06/04 「球脊髄性筋萎縮症:新たな治療法 名古屋大、細胞の変性抑制に成功」
 『毎日新聞』

 「全身の筋力が低下する遺伝性の難病「球脊髄(せきずい)性筋萎縮症」を引き起こす運動神経細胞の変性を食い止め、病気の進行を抑止する治療法を名古屋大と自治医科大の研究グループがマウスの実験で開発、3日付の米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表した。

 アルツハイマー病やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、他の神経変性疾患にも応用できるという。これまでは、変性した細胞が死んだ後の治療がメーンで、変性そのものを止める手だてはなかった。名古屋大の祖父江元教授(神経内科学)は「根本原因を抑える世界に先駆けた治療法だ」と話している。

 球脊髄性筋萎縮症は男性のみに起こる病気で、国内では約2000人の患者がいると推定されている。神経変性疾患の共通原因は神経細胞にたまった異常たんぱく質。疾患によって種類は違うが、球脊髄性筋萎縮症の場合だと「異常アンドロゲン受容体たんぱく質」(異常AR)が原因になる。

 マウスの遺伝子解析で、たんぱく質合成を担う主要物質のメッセンジャーRNAに着目。異常ARを合成している異常メッセンジャーRNAが「CELF2」というたんぱく質と結合し、安定化されることを発見した。遺伝子の発現を調節するマイクロRNAのうち「196a」がCELF2の発現を抑えることが分かった。その結果、RNAの安定性が下がって分解が進み、異常ARの量が減少することを突き止めた。

 球脊髄性筋萎縮症のマウスに196aを注射したところ異常ARが約60%減少した。患者から採取した皮膚の細胞に投与すると、異常ARの発現が抑えられ効果が確認された。他の疾患でも組み合わせが分かれば、治療できるという。」(全文)
 
 

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◆2012/06/04 「氷床変動の再現で女性研究者の賞を受賞、阿部彩子氏(フォーカス)」
 『日経産業新聞』

 「研究・家庭の両立あきらめず
 自然科学で優れた業績をあげた女性研究者に贈られる2012年度の「猿橋賞」を受賞した。氷床が12万年かけてゆっくりと拡大し、急速に溶けて小さくなる様子をコンピューター上で再現した。「成功したときはうれしくて小躍りした」
 東大准教授として氷床の変動を研究する傍ら、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書の執筆者の一人でもある。大昔の気候変動を知ることで「生物の進化の解明にもつながり、ワクワクする」と話す。
 「数学好きな少女」が地球に興味を持ったのは中学2年生のとき。「新しい地球観」という本を読み、過去の地球は今の姿ではないという事実に驚き、科学者同士が協力して取り組む研究にひかれた。
 東京大学理学部の地理教室に進んだが、性に合わず、新聞記者を目指して就職活動した時期もある。その中で自分を見つめ直し、東大地球物理学科に学士入学し直した。
 海外では同じ分野で女性研究者が活躍している。気候変動の研究は様々な分野の考え方をバランスよく取り入れる必要がある。「他人に教えを請いやすい女性には向いている」というのが持論。
 東大准教授の夫は筋肉が動かなくなる難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」を発症し、車いす生活をおくる。1男2女がおり、育児・家事、夫の介護、研究で多忙だが、親や周囲とで支え合っている。研究者を目指す女性の後輩にも「あきらめないことが大切」とエールを送る。
=あべ・あやこ、49歳」(全文)

 

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◆2012/06/05 「[医療ルネサンス]ALSを生きる(3)意思伝達装置 仕事の友(連載)」
 『読売新聞』

 「◇通算5341回
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の進行で体の自由と声を失っても、最新の意思伝達装置を駆使して社会復帰する患者もいる。
 神戸市の岡本興一さん(38)は、24歳の時にALSと診断された。大学卒業後、柔道整復師の国家資格を取って働き始めたばかりだった。柔道の練習で鍛えた身長187センチの頑健な体が、短期間で動かなくなった。それでも「必ず元気になる」と心に決め、2005年、人工呼吸器をつけた。
 岡本さんは今、筋肉の微細な動きなどでパソコンを操作できるソフト「オペレートナビ」を使っている。
 筋肉がわずかに動く額にセンサーをつけ、ベッド上の大型液晶画面を見る。そこに、ひらがななどの文字が順番に黄色で表示され、狙った文字が黄色くなった瞬間、額を動かしてそれを選択する。
 最初の1、2文字を選ぶだけで、よく使う単語が表示される予測変換機能などが、素早い文章作りに役立つ。ALS患者は、このような意思伝達装置の導入費用の多くを、国の制度により自治体の給付でまかなうことができる。
 オペレートナビは、操作に慣れると一般のパソコンソフトも自在に使える利点がある。岡本さんはパソコンの操作技術をかわれ、友人が社長を務める会社のインターネット店舗で、バスケットボール用品の販売を4年前から任されている。
 商品の発注や在庫管理、広告のデザイン、ホームページ編集などを引き受け、発送作業を行う社員と2人で店を切り盛りする。今春には正社員となり、自身のブログに「納税者になりました。心の中にある『社会への負い目』は軽減されます」と喜びを書いた。
 発症以来、市の福祉サービスを受けて独り暮らしを続けたが、岡本さんの介助を以前担当したヘルパーの悦子さん(40)と10年秋に結婚した。プロポーズの言葉もオペレートナビで書いた。「作成中、家に来ている別のヘルパーさんに画面を見られないかと、冷や冷やしました」
 携帯用の別の意思伝達装置と共に外出する機会も多い。先月には、大阪で開かれたミスターチルドレンのコンサートに行った。
 「ものすごく多くの人たちの中にいると、俺は社会に取り残されていないぞ、と思えてうれしくなった」
 ネット販売の売り上げは順調に伸びている。「目標は年商1億。将来、画期的な治療で身体を復活させるために、日々準備中」
 液晶画面に打ち出される文字が、弾んで見えた。
 
 ◎ご意見・情報を 〒104・8243 読売新聞東京本社医療情報部 FAX03(3217)1960 iryou@yomiuri.comへ
 
 写真=岡本興一さん(手前)が液晶画面に打ち出す言葉を見る妻の悦子さん(左奥)。右は岡本さんが正社員になった会社の社長」(全文)

 

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◆2012/06/06 「[医療ルネサンス]ALSを生きる(4)保険きく薬 まだ1種類(連載)」
 『読売新聞』

 「◇通算5342回
 千葉県の男性Aさん(57)は、2010年10月に神経難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断された。
 診断当初は「人工呼吸器はつけない」と心に決めていた。呼吸器を装着して自宅で療養すると、水分補給、たんの吸引などで、妻と娘2人に大きな負担をかけてしまうからだ。
 しかし呼吸器をつけないと、死は確実に訪れる。患者仲間の中には、進行する病気におびえ、生きる意欲を失う人もいた。一方、難病患者を受け入れてくれる施設は少ない。
 そこで思いついたのが、難病患者が一緒に暮らすケアホームだ。24時間介護で家族に負担はかけない。患者が孤立せず、悩みを打ち明け合える。将来はケアホーム周辺に、介護サービスを提供する会社を誘致して「難病タウン」を作る。
 昨年10月、神経難病の集まりで、この構想を発表。実現のためにも生き続けよう、と思った。ただ、不安は拭いきれない。病状が進むことへの不安だ。
 現在、保険で認められている薬は、ALSの進行を抑える「リルテック錠」(商品名)1種類のみ。Aさんは発病当初服用したが、効果は実感できなかった。これが効かないと、現在のALS薬物治療は行き詰まってしまうのだ。
 しかし最近、いくつかの薬の臨床試験(治験)が始まり、光が見え始めた。
 一つは、脳梗塞の薬として既に認められている「エダラボン」(一般名)。ALS発病にかかわる活性酸素を取り除くとされる。
 発病3年以内の患者らへの治験では効果が統計的に証明されなかったため、昨年末から、発病2年以内の早期患者に絞った新たな治験が始まっている。
 もう一つの「光」は、肝臓の細胞の再生を促す「HGF(肝細胞増殖因子)」。大阪大学が発見したたんぱく質で、肝臓だけでなく、神経の細胞の再生・増殖などを促進する働きがあることが分かってきた。神経細胞が死滅していくALSの進行抑制に期待できる。
 東北大学病院が昨夏から、安全性を確かめる治験を始めた。腰に留置したカテーテル(細い管)でHGFを脊髄周辺に投与する。神経内科教授の青木正志さんは「患者さんの治療の選択肢を増やしたい」と話す。
 Aさんは今年4月に人工呼吸器をつけ、5月末には家族と離れ千葉市のアパートで一人暮らしを始めた。介護保険などを使って24時間介護の体制も整えた。今後、ALSの仲間もこのアパートに住む計画がある。
 Aさんは「夢を実現するためにも、病状の進行を抑える新薬が承認されてほしい」と期待している。
 
 ◎医療・健康情報はインターネットサイト「ヨミドクター」(http://yomidr.jp)で
 
 写真=難病患者が共に暮らす「難病タウン」設立に向け活動するAさんと妻(人工呼吸器を装着前の今年3月、千葉県の自宅で)」(全文)

 

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◆2012/06/07 「[医療ルネサンス]ALSを生きる(5)呼吸器つけ一人暮らし(連載)」
 『読売新聞』

 「◇通算5343回
 ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、全身が動かなくなるだけでなく、次第に呼吸にかかわる筋肉もまひする。人工呼吸器をつければ長く生きられるが、大半の患者は装着せずに亡くなっているのが現実だ。
 2003年6月にALSを告知された山口県下関市の大神和子さん(54)も、当初は呼吸器をつけるつもりはなかった。
 6歳上の兄は20歳で交通事故死し、父も他界した。家族は高齢の母親一人だったため、介護の負担をかけたくない。限られた時間を精いっぱい生きればいい、と思っていた。
 発症後、まだ車を運転できた時、ふいに「今なら楽に死ねる」と思い、アクセルを踏み込んだ。しかし、兄を亡くして父が男泣きした姿が脳裏に浮かび、急ブレーキを踏んだ。「自分まで母を残して死ぬわけにはいかない」と心に決めた。
 パソコンを初歩から習い、多くのALS患者とメール友達になった。亡くなった親友2人は、本当は生きたかったのに「家族に迷惑をかけるから」と人工呼吸器をつけなかった。その親友の悔しさの分まで自分が生きてやろうとも思った。
 1年半を福岡県内の実家で過ごした後、昨年6月まで長期入院した。人工呼吸器をつける意思は示していたが、息苦しさを訴えても、病院では装着の目安になる血中酸素濃度をなかなか調べてくれなかった。
 「単身で生活保護を受けているから、呼吸器をつけて医療費をかけない方がいいと考えたのでは」
 そんな時、日本ALS協会理事の知人に、障害者自立支援法を使い、一人で暮らす道もあると教えられた。
 病院も親戚も猛反対したが、24時間体制で支援してくれる団体が下関市に見つかり、昨年6月、その団体が借りている一軒家で一人暮らしを始めた。間もなく、地元の病院で人工呼吸器をつけた。
 「今は友達とメールしたり、買い物に行ったり、普通の生活を楽しんでいます。若い世代のALS患者は、ぜひ人工呼吸器をつけてほしい」
 ALSが重症化すると、眼球も動かなくなり、意思表示の手段を失うこともあるが、大神さんは「何とかなるかな」と前向きだ。
 数多くのALS患者を診ている国立病院機構新潟病院の中島孝副院長は「患者が人工呼吸器を使って生きるかどうかの自己決定は、実は療養環境に左右されている場合が多い。良い介護を受けられる体制を整備すべきだ」と話している。
 (佐藤光展、坂上博、藤田勝) (次は「北欧で聞いた終末期」)
 
 ◎記事コピーサービス(有料)の申し込みは読者センター((電)03・3246・2323)へ
 
 写真=「人工呼吸器をつけて良かった」と話す大神さん(山口県下関市で)」(全文)
 
 

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◆2012/06/08 「特集――電子版創刊2周年フォーラム、京都大学山中伸弥氏、iPS研究カギは人材。」
 『日経産業新聞』

 「電子版創刊2周年フォーラム「日本経済成長への革新」
京都大学iPS細胞研究所 所長 山中伸弥氏
資金確保も不可欠
 日本経済新聞社はこのほど電子版創刊2周年フォーラムを開催した。「日本経済 成長への革新」と題し、イノベーションで国際競争を勝ち抜く戦略や日本の先端技術の可能性について、第一線の研究者や企業経営者らが講演した。その発言からは、日本経済の強みとなってきたものづくりの力を再興するイノベーションへの期待と、それを支える人材の重要性が伝わってきた。
 iPS細胞は2006年にネズミで、07年にヒトで作製に成功した若い技術だ。皮膚など体の細胞に4つの遺伝子を送り込むと1カ月ぐらいで、皮膚だった細胞が全く異なる細胞に変わる。
 iPS細胞は様々な刺激を加えることで神経や血液、内臓の細胞など、どんな細胞にもなる。また、何万倍と無限に増やせるので神経などを大量に作れる。
 京大では08年にiPS細胞研究センターを立ち上げ、10年4月にiPS細胞研究所を開所。27の研究グループがiPS細胞に関する情報やアイデアなどを共有して日夜研究に励んでいる。所長就任時に20年までの達成目標4つを掲げた。
 「iPS細胞の基盤研究推進と知的財産の確保」「移植に使える高品質iPS細胞の作製と国内外への提供」「iPS細胞を使った再生医療の臨床研究の開始」「希少疾患の患者iPS細胞から病気を再現、治療薬の開発」だ。
 安定的にiPS細胞を作る技術も開発、当初懸念された作製法による、がん化の問題も解決した。知的財産についても京大が申請した基本的作製法の特許が日本に続き欧米でも成立。来年にかけて細胞をストックする「iPS細胞バンク」設立に注力したい。
 iPS細胞による再生医療では日本がトップを走っている。今年から来年には網膜の病気で臨床研究が始まる計画だ。パーキンソン病や血液の病気でも応用を目指している。病気の再現では、運動神経が侵される筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者のiPS細胞から神経を作り、特徴を解析している。何としても治療薬につなげたい。
 技術開発をするうえでいくつかの課題も強く感じている。大学における研究のミッションは変化し、数年前は論文発表をしていればよかったが、今はそれだけではない。
 基礎研究を患者や産業界に持っていくには知財を知り、臨床応用には厚生労働省など規制当局に対応しないといけない。社会への情報発信や研究技術の高度化にもついていかないといけない。教員1人ではできない。知財や規制、広報などの専門家、高度な実験装置を扱える技術者など研究支援の専門家が大切だ。支援してくれる人材と連携して働く必要がある。
 私たちが基本特許を国内外で成立できたのも、民間から雇用した専属の知財専門家のおかげだ。ただ、研究所で働く人のうち正規雇用は11%にすぎず、89%は非正規雇用。非正規雇用分の人件費年間10億円は(獲得した)国からの研究費でまかなっている。
 東日本大震災や厳しい経済状況にもかかわらず40億円近い血税をいただいており、大変恵まれているが、14年には終了する。米国の研究所にならって研究基金を募り始め、これまでに3億5000万円が集まった。私もマラソンを走り1000万円を集めたが、毎日走っても追いつかない。
 iPS細胞だけでなく、大学で生まれる新しい技術を日本で開発するには、研究を支える人材を安定雇用できる仕組みが必要だ。
 やまなか・しんや 1993年(平5年)大阪市立大大学院医学研究科修了。奈良先端科学技術大学院大教授などを経て2004年京大教授。10年から現職。」(全文)

 

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◆2012/06/09 「「原発と一緒に歩む」 首相再稼働表明 おおい町民、前向く」
 『読売新聞』

 「野田首相が8日、記者会見で関西電力大飯原子力発電所3、4号機を再稼働させる意向を表明し、各地で様々な反応が上がった。〈本文記事1面〉
 大飯原発の立地する福井県おおい町で、原発作業員向けの旅館を経営する女性(60)は、稼働停止で客足が落ち、廃業も考えた。だが首相の会見を聞き、「これからも原発と一緒に歩むしかない。これで、一歩踏み出せる」と前を向いた。
 東京電力福島第一原発事故で福島県いわき市の仮設住宅で避難生活を送る同県双葉町の自営業福田一治(かずはる)さん(40)は、「我々の地元も原発で雇用を確保してきた面がある。大飯原発の地元が再稼働に賛成するならば、野田総理の判断も理解はできる」と話した。
 電力不足が懸念されていた関西地区では、改善が期待される。人工呼吸器が欠かせない筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者らでつくる「日本ALS協会滋賀県支部」では、太陽光発電導入のため自宅を建て直した家族もいた。水江孝之事務局長(56)は「患者らは、とりあえず安心するのでは」と胸をなで下ろした。
 原発などを抱える他の地域でも、首相の発言は重みを持って届いた。
 東北電力東通原発や使用済み核燃料再処理工場が立地する青森県の三村申吾知事は、「総理自らが国民生活を守るという観点から、その安全性、必要性を直接国民に訴えたことは意義がある」とコメントし、首相を評価。一方、東京電力柏崎刈羽原発がある新潟県の泉田裕彦知事は「福島原発事故は収束しておらず、事故の検証も進行中。総理が安全性を確認できるはずがない」とコメントした。」(全文)

 

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◆2012/06/09 「原発と歩むしかない」地元おおい揺れた 首相 再稼働明言」
 『読売新聞』

 「野田首相が関西電力大飯原子力発電所3、4号機を再稼働させる意向を表明した8日、地元・福井県おおい町の住民らは、一様に安堵(あんど)の様子を見せた。40年以上、原発と共にあった生活は、東日本大震災、そして今回の再稼働問題に、大きく揺さぶられた。住民の心には、大きな傷が残った。(社会部 羽尻拓史、敦賀支局 島田喜行、本文記事1面)
 ◆町役場 批判メール1000通 
 「町が生き残るには、やはり原発しかなかった」
 テレビで野田首相の記者会見を見た池上千蔵さん(92)は、こうつぶやいた。
 計4基の大飯原発が建つ大島半島に生まれ、暮らしてきた。かつての大島から町中心部へは、険しい山道か1日数便の定期船のみ。病院もなく、夜中の急病人は、池上さんら漁師が漁船で運んだ。
 そんな暮らしは1973年、関西電力が約7億円をかけた「青戸の大橋」(743メートル)の完成で一変した。大島だけではない。目立った産業もなく、時に町職員の給料の支払いさえ滞ったという町には、70年代の大飯原発建設に伴って一気に「原発マネー」が流れ込む。
 79年、1号機が稼働し、町は80年度、原発関連の交付金や電力会社の法人税収入などで、普通交付税が不要な「不交付団体」に。今年度の当初予算108億円のうち、原発関連収入はほぼ6割を占める。
 「原発しかない」との池上さんの言葉に、町で生きてきた住民の実感がこもる。
    □  ■
 先月14日、町議会の全員協議会が、3、4号機の再稼働容認を決めた。その翌日から、町役場の電話は鳴りっぱなしとなった。
 「安全より経済を優先させるのか」「福島の事故があったのに信じられない」。8日までに電話が約900本、届いたメールは1000通に上る。大半が再稼働容認を批判する内容だった。
 「私たちにできるのは、黙ってお話をうかがうことだけ」と担当の町職員。住民の心も複雑だ。
 大島出身で今も暮らす女性(49)は学生時代、友人に故郷について話すと、「そんな所に住んでたら嫁に行けんよ」と言われた。夫は漁師。福島の事故を機に魚の値はぐっと下がった。
 「確かに原発の恩恵は受けたが、良いことばかりではなかった。関西の電力を支えてきたとの自負もある。原発への強い風当たりは、私たちが悪者扱いされているようでつらい」。女性は声を落とした。
 大島にある約40軒の原発作業員向け旅館。昨年12月に4基すべてが稼働を停止後、多くの窓は日が暮れても明かりがともらない。
 ある旅館の女性経営者(60)は最近、3代続く家業の廃業も考えたというが、野田首相の会見後、こう言って前を向いた。
 「不安がなくなるわけではないが、これからも原発と一緒に歩むしかない。これで、一歩踏み出せる」
 ◆橋下市長が容認理由 「停電リスクおじけづいた」 
 大阪市の橋下徹市長は8日の記者会見で、関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の再稼働を容認した理由について、「停電のリスクにおじけづいたところはある」と述べ、真夏に計画停電が実施された場合の影響を懸念したことを明らかにした。
 再稼働せずに、計画停電を実施した場合の市民生活への影響を市の担当部局に検討させたといい、「病院はどうなるのか、高齢者の熱中症対策はできるか。そう考えると、原発事故の危険性より、目の前のリスクに腰が引けた」と語った。
 また、野田首相が記者会見で再稼働の判断を表明したことに対し、市役所で報道陣の取材に、「夏を乗り切ればいったん(大飯原発を)止めて、きちんとした安全基準による判断が必要だ。期間を限定しない稼働は、国民生活ではなく電力会社の利益を守ろうとしているだけだ」と言い、夏季限定の再稼働を求めた。
 ◆周辺首長から懸念の声 
 大飯原発の再稼働で夏の電力不足が改善する電力消費地・関西。人工呼吸器が欠かせない筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者らでつくる「日本ALS協会滋賀県支部」では、太陽光発電導入のため自宅を建て直した家族もいた。水江孝之事務局長(56)は「患者らは、取りあえず安心するのでは」と安堵(あんど)した。
 一方、大飯原発から30キロ圏内にほぼ全域が入る京都府舞鶴市の四方筆樹さん(68)は、首相が大飯原発の安全性を強調したことに「原発の近くで危険を背負う住民には簡単に信用できない」と不信感を示した。
 福島第一原発がある福島県大熊町から家族5人で神戸市に避難している主婦(33)は「福島の事故が忘れられてしまうのでは」と複雑だ。
 首長たちからも発言が相次いだ。夏のみの限定稼働を求めている嘉田由紀子滋賀県知事は「福島であれだけの事故が起きたのに、野田首相が記者会見で『夏場限定の再稼働では、国民の生活を守れない』というのは釈然としない」と語った。
 嘉田知事と共に限定稼働を訴えている山田啓二京都府知事も「(将来の原発依存度を巡る)エネルギー政策の結論は8月に先送りにされた。政策の提示があった後に、再稼働を考えるべきではないか」と指摘した。
  
 図=地図
 
 写真=自宅近くの旅館街を見て「人通りが少なくなった。このままだと大島半島の集落はつぶれてしまう」と話す池上さん(8日)
 写真=大飯原発(奥)と大島半島の集落(手前)。再稼働問題で住民の心は揺れた(8日、福井県おおい町で、本社ヘリから)=若杉和希撮影」(全文)
 
 

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◆2012/06/13 「節電・北海道:北電などへ要望、難病患者らの計画停電対応を /北海道」
 『毎日新聞』

 「道内でも「計画停電」の可能性が懸念される中、北海道難病連などは12日、難病患者や障害者への停電時の対策を求める要望書を北海道電力と道、札幌市へ提出した。北電は「電力が必要な在宅の患者がいることは承知している」と応じ、小型発電機の貸し出しを検討するという。

 提出したのは筋力が低下する難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者らで作る「日本ALS協会北海道支部」など難病連に加盟する32団体と、DPI(障害者インターナショナル)道ブロック会議。患者の中には、人工呼吸器や体温調節用にエアコンを使ったり、冷蔵保存しなければならない薬を常用するなど、計画停電に不安を抱える人が少なくない。

 要望では「わずかな時間でも停電は生命にかかわる。患者・障害者の不安を取り除き、安心できる対策を事前に示してほしい」と、具体的対策の明示を求めた。ALSで人工呼吸器を使用する深瀬和文さんは「発電機を支給してもらうなど、非常電源が確保されれば一番安心」と話した。【円谷美晶】」(全文)

 

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◆2012/06/14 「ALS患者の勝訴確定 和歌山弁護士会が声明=和歌山」
 『読売新聞』

 「筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の男性(75)が和歌山市を相手取って起こした介護時間延長訴訟の勝訴確定を受け、和歌山弁護士会の阪本康文会長は13日、「全ての人に十分な介護支給量が公的に保障される法制度の確立を強く求める」とする声明を、国や県、県内の各市町村に郵送した。
 阪本会長は声明で、「改めて何人も障害の有無に関わらず、地域で自立生活を営む権利を有していることを確認する」とし、国や自治体に対して、財政的措置などを講ずることを求めた。
 確定した地裁判決は、患者への1日21時間の介護を義務づけ、市は判決に従って1日21.5時間程度の介護支給を決定している。」(全文)
 
 

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◆2012/06/19 「装着型ロボット、医療応用、サイバーダイン、歩行を補助、日米欧で治験へ。」
 『日経産業新聞』

 「筑波大学発のベンチャー企業のサイバーダイン(茨城県つくば市)は、装着型のロボットを使って足の運動障害を治療する臨床試験(治験)を日米欧で始める。7月のスウェーデンを皮切りにドイツやベルギーで今秋にも着手。国内や米国で年内にも始める計画だ。装着型ロボットの医療応用は世界初といい、福祉や介護用に続く新市場の開拓を狙う。
 これまで福祉や介護用に使っていた歩行補助ロボット「HAL」を医療用に改良した。患者が足を動かそうとしたときに体の表面に流れる微弱な電流を検知し、関節部のモーターに伝えて、思った通りに足を動かせるように補助する。
 治験は事故による脊椎損傷や脳卒中の後遺症、神経性の難病などで足が思うように動かせなくなった患者を対象にする。医師の指導を受けながら使用し、足を動かす機能の回復や症状の進行を抑える効果を確かめる。
 まず、スウェーデンのカロリンスカ医科大学のダンドリュー病院と組み、7月から治験を開始。ドイツ最大の労災病院グループ、ベルクマンスハイル病院とは2月から準備を進めており、9月にも治験に着手する。脊髄損傷で足を動かせなくなった患者30〜40人の機能改善の試験に取り組む。6月11日には、ベルギーのルーバン・ラ・ヌーブ大学と覚書を交わした。
 日本では、国立病院機構新潟病院と連携し、審査を担当する医薬品医療機器総合機構との事前相談を今月下旬にも終える見通し。新潟病院が中心に4つの病院と連携する計画だ。米国ではジョンズ・ホプキンス大学と治験の実施で基本合意。年内にも治験を手がける。
 国際標準化機構(ISO)は来年にも、医療用ロボットの安全性に関する基準案をまとめる。
【表】サイバーダインが手がける臨床試験の概要   
機関名   対象となる病気
国立病院機構新潟病院(日本)   筋萎縮性側索硬化症(ALS)、筋ジストロフィー、シャルコー・マリー・トゥース病など
カロリンスカ医科大学ダンドリュー病院〓(スウェーデン)   脳卒中やポリオなどによる足の運動障害
ベルクマンスハイル病院(ドイツ)   脊椎損傷に伴う歩行困難(完全なまひ状態ではない)
ルーバン・ラ・ヌーブ大学(ベルギー)   交通事故による後遺症など
ジョンズ・ホプキンス大学(米国)   脳神経系の難病が候補(今後に詳細を検討)
【図・写真】ロボットを使って足の運動機能を改善するリハビリに取り組む(ドイツのベルクマンスハイル病院)。」(全文)
 
 

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◆2012/06/23 「専門家や医師が地域難病相談会 四日市で来月8日 /三重県」
 『朝日新聞』

 「県とNPO法人「三重難病連」は7月8日、四日市市諏訪町の市総合会館で地域難病相談会を開く。
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)や1型糖尿病、パーキンソン病などの難病の専門家や医師らが健康相談などを行うほか、ハローワーク職員による就労相談もある。午後1時半〜同3時。参加無料。問い合わせは県難病相談支援センター(059・223・5035)へ。」(全文)
 
 

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◆2012/06/23 「難病患者ら不安「人工呼吸器、電源は」 計画停電75万戸対象 /大分県」
 『朝日新聞』

 「九州電力は、22日に概要を発表した計画停電について「実施しないというのが大原則」と強調するが、県内からは早くも不安と批判の声が上がっている。

 九電大分支社によると、一般家庭やビルなど75万戸が対象で、大規模工場や商業施設は一定の連続操業ができるよう配慮する。災害拠点病院や県庁、警察署は対象外。牧原大介副支社長は「ぎりぎりまで電気使用を抑えてもらい、他の電力会社に供給してもらうなどして努力する」と述べた。
 「人工呼吸器は命。電源なくして生きられない」。神経が次第に衰える難病、筋萎縮性側索硬化症の夫を持つ武生洋子さん(61)は心配する。受け入れ先の病院が確保できるか分からない患者が多いという。
 九電が影響を緩和するとした救急医療機関に指定されていない大分市の病院は「人工呼吸器や心電図モニターが止まったら困る」。自家発電装置を買うか借りるかを検討するという。
 「一度停電すれば1〜2週間は工場が動かない」と案じるのは同市の半導体工場。クリーンルームを動かす装置の立ち上げに時間を要すると言い「ダメージは相当大きい」と話した。
 同市のNPO法人「九州・自然エネルギー推進ネットワーク」の小坂正則代表は「九電管内は電力は足りるはずで、計画停電の検討は原発再稼働を進めるためのキャンペーンだ。電力業界への新規参入を早く認めるべきだ」と批判した。
 「電力の使い方を見直す良い機会だ」という声も。同市の古城修一さん(66)が所属する自然保護団体は昼は電気を使わず、夜は風力発電で賄う。「日本は世界で最も明るい国。今の生活で本当にいいのかを考え直す機会だ」と話した。
 (新宅あゆみ、城真弓)」(全文)
 
 

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◆2012/06/23 「計画停電、その時何が 医療機関・事故対策などシミュレーション 【大阪】」
 『朝日新聞』

 「関西電力と四国電力が22日、計画停電の実施方法を発表した。停電になったら何が起こるのか。昨春の東京電力による計画停電を例にシミュレーションしてみると――▲1面参照

 ●医療機関 病院、4割弱が対象に
 今回の計画停電では、「緊急かつ直接的に人命に関わる施設」が対象外となった。関電管内の1239病院のうち、救急病院や周産期母子医療センター、災害拠点病院など783病院が該当する。ただ、残る4割弱の一般病院や診療所は計画停電の対象となる。
 昨年3月の東電の計画停電は、対象外の施設を重篤患者を受け入れる救命救急センターなど、今回より絞っていた。日本医師会のシンクタンク日医総研のアンケートによると、救急患者受け入れに支障が出たほか、人工透析ができなくなった▽手術を延期した――といった報告があった。
 大阪市内の民間病院は「全病院を除外してほしかった」と話す。小型発電機を数台持つが、院内の全電力は賄えない。夏に空調を止めれば、入院患者の体調悪化が心配だという。
 1回4時間程度かかる人工透析は、停電の数時間前からできなくなる。大阪市内の専門の診療所は、いつも予約でいっぱいだとし、停電が患者の治療計画に影響する恐れを懸念する。
 自宅で常に人工呼吸器を使う筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの難病患者にも危険が及ぶ。東京消防庁は昨春、自宅などで医療機器が使えなくなった患者11人を搬送した。

 ●マンション エレベーター要注意
 マンションでは、停電するとエレベーターやオートロックのドア、機械式駐車場、インターホン、宅配ボックスなど様々なものが使えなくなる。給水ポンプが止まり、断水が起こる恐れもあり、オール電化だと電磁調理器も使えなくなる。
 特に影響が大きいのはエレベーターだ。昨春の計画停電では計668台(国土交通省の調べ)で人が閉じ込められる事故が発生した。高層マンションの管理会社が加盟する「高層住宅管理業協会」によると、非常用電源を設置したマンションでも発電量は限られ、多くが停電中に動かすのは難しいという。
 このため、三菱電機(東京)は、ビルオーナーに停電開始前にエレベーターを止めるよう要請する方針。日立ビルシステム(東京)は、停電10分前に遠隔操作で、一度扉を開いて利用者を出した上で停止させるサービスを昨夏始めた。
 関西で約300棟のマンションを管理する「野村リビングサポート」は21日、計画停電に備え、社員や管理員向けの研修会を大阪市で開いた。停電が始まる時間帯にエレベーターに乗らないことや、警報機や換気扇が作動しない中でのコンロの使用に注意することなどを住民に説明するよう指示した。

 ●事故対策 警察官、手信号を訓練
 昨春の東電の計画停電では、10日間で延べ9万基の信号が消えた。警察庁によると、その間、消えた信号機の場所で死亡事故が2件、重傷事故が5件発生した。警察官が手信号で交通整理にあたったが、必要な場所すべてに配置できなかったという。
 今回はどうなるのか。大阪府警も警察官の手信号で対応する方針で、交通指導課が5月末、各警察署に手信号の熟練度を高めるよう指示した。しかし、府内にある計1万1882基の信号機のうち、自家発電機を備えているのは291基だけ。府警幹部は「できる限り車やバイクによる移動を控えてほしいのが本音」と漏らす。
 停電すれば道路の照明も消える。ただ、今回の停電は夜間の可能性は低く、国や自治体は「特に影響はない」とみている。

 ●交通網 鉄道・空港は支障なし
 鉄道はどうか。昨春の首都圏では東電の発表が二転三転し、鉄道各社が運行本数を減らしたため、混乱が生じた。
 今回、関電と四電は鉄道を計画停電から除外した。JR西日本によると、鉄道向けの変電所以外から電気が供給されている信号機、踏切が一部あるが、約3時間持続する非常用バッテリーなどで対応するため、「基本的に運行に支障はない」としている。ただ、小さな駅には電気が届かない可能性があり、今後、改札、券売機などに影響が出ないか調べるという。
 阪急電鉄と阪神電鉄も、変電所が計画停電の対象外とされたことで、運行に支障はないとする。
 空港とターミナルビル、航空管制施設も昨春同様、計画停電の対象外とされ、空の便への影響もなさそうだ。

【写真説明】
信号が消えた道路で交通整理をする警察官=昨年3月16日、東京都調布市
【図】
身の回りの備えはどうしたら?」(全文)

 

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◆2012/06/23 「計画停電の概要発表 四電「不実施が原則」 企業など準備 不安の声も=香川」
 『読売新聞』

 「四国電力は22日発表した今夏の計画停電の概要について、実施の可能性は極めて低いとしている。猛暑の時に大型発電所が停止し、ほかの電力会社から応援融通が受けられないなどの条件が重なった時に限られるためだ。ただ、供給余力に乏しいことは変わらず、2010年比7%以上の節電への協力要請は続ける。県内では企業などが「万が一」への準備を進めているが、不安の声も上がる。
 22日夜、高松市内の本店で記者会見した広報担当の河合幹夫常務は、計画停電についてセーフティーネット(安全網)だとし、「不実施が原則だ」と説明した。さらに、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働が決まったことで、「可能性はさらに低くなった」と述べた。
 節電目標については、河合常務は「維持するが、需給状況次第では見直す可能性もある」と説明した。
 居住地がどのグループ・地区に属するかを自社ホームページ(http://www.yonden.jp/kt/index.html)で調べられるようにしたほか、問い合わせ窓口(0120・459・311)も設けた。検針票やダイレクトメールでも知らせることにしており、情報提供に万全を期したいとしている。
     ■
 電子部品メーカーのアオイ電子(高松市)は、特注品の生産が多く在庫を事前に積み上げるのは難しいため、「生産計画を見直して増産するなどして停止分を取り戻す」(木下和洋・管理本部長)ことで対応する。
 製粉会社の吉原食糧(坂出市)では、平日の昼間、10?12時間連続して製粉機を稼働させているが、途中で停止すると、小麦粉が均一にならず廃棄せざるを得ない。このため、休日か夜間に操業を切り替えることも検討している。
 三豊市三野町の養鶏業者「新延孵化場(ふかじょう)」の新延修社長(65)は「自家発電装置のない鶏舎では、小型発電機でファンを回すことなどで対応する」と話す。猛暑下で鶏舎の空調設備が止まり、何の対策も取らないと、高温と酸欠で鶏が死ぬためだ。
 高松市中央卸売市場は、いけすに入れる魚の量や冷蔵庫の開閉を減らして乗り切る。同市場業務課は「魚や野菜が売り物にならないと困る。節電に協力するので、計画停電は避けてもらいたい」。
     ■
 坂出市の横井敬往(ひろゆき)さん(58)は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)で人工呼吸器が手放せない。介護する妻の由美さん(50)は「患者はみな7、8時間はもつ外部バッテリーを用意しているが、外出中に計画停電が決まり、それを知らずに残量が少ない状態で帰宅後、停電したら対応できない。いつどこにいても情報が伝わる仕組みがないと、不安だ」と表情を曇らせた。
 約60人が入居する特別養護老人ホーム「一宮の里」(高松市一宮町)では、入居者がストレッチャーのまま入浴する電動設備が使えなくなるため、職員が入浴させるなどの対策を検討。稲井佳馬事務長は「暑い日に停電すれば、体調を崩す人が出ないか心配です」。
 レジャー施設「ニューレオマワールド」(丸亀市綾歌町)は、遊具のほか、プール(7月1日オープン予定)の営業も止める。コンピューター制御のポンプで水質を保っているためだ。
 停電区域では、信号機も止まる。県警交通規制課によると、県内2106か所の信号機のうち、停電時に起動する発電機を備えているのは、交通量の多い主要50か所だけ。残りは警察官が発電機を持って行って接続するか、手信号で交通整理する方針だが、台数や人員は限られる。「停電した信号機のある交差点では、十分気をつけて」とホームページなどで注意を促す。
   
 写真=養鶏場では停電で室温管理が難しくなり、鶏が死ぬ危険が高まることを懸念している(三豊市山本町で)」(全文)
 
 

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◆2012/06/23 「計画停電:実施なら、農家や患者に死活問題 工場も自前は最小限 /大分」
 『毎日新聞』

 「今夏に電力需給が逼迫(ひっぱく)した際の計画停電がいよいよ現実味を帯びてきた。22日に概要を発表した九州電力大分支社の牧原大介副支社長は「そうならないようぎりぎりまで努力する」と、不安ムード沈静化に躍起。しかし、各方面から生活や経済活動への影響を懸念する声が聞かれた。【佐野優】

 JAおおいたによると、換気扇を回して室温を冷やすなど、電気に頼るハウス農家が多い。自家発電を備える例は少なく、室温調節にハウスを開け閉めする必要も出てくる。集荷後、出荷まで冷蔵庫に保管する作物の品質低下も。河野秀徳・園芸2課長は「労力がかかり、影響は大きい」と不安を口にする。

 在宅で人工呼吸器を使用する難病患者には死活問題だ。5月下旬の日本ALS協会県支部の総会では患者から「計画停電は困る」との声が寄せられた。県健康対策課によると、県内にはこうした難病患者は61人おり、大半が代替電源や4時間以上使える内部バッテリーを備えるが、何もない人も2人いる。更に、県難病医療連絡協議会相談員の看護師、上原みな子さんは「停電の際に本当に動くのかという心配もある」。

 半導体業界への影響は大きい。東芝セミコンダクター&ストレージ社大分工場は必要最低限の自家発電しかなく、工場全体への供給能力はない。同工場総務部は「計画停電がないのを祈るだけ」と深刻だ。九電によると、県内には大工場など70件の特別高圧契約がある。計画停電日でも、10年夏比15%以上の節電を条件に通電する。

 県工業振興課の竹野泰弘課長は「自動車産業が息を吹き返してきたのにマイナスの影響が心配」と話す。」(全文)
 
 

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◆2012/06/23 「節電・北海道:計画停電 「早期の具体策を」 医療機器“命綱” 患者から強い声 /北海道」
 『毎日新聞』

 「北海道電力は22日、計画停電の概要を発表したが、具体的なグループ分けは先送りされ、電気を使う医療機器が“命綱”の難病・透析患者たちから「早期の具体的対策を」との強い声が上がった。また、冷蔵冷凍庫が止まることを懸念する農漁業関係者たちは「損失補償はどうなるのか」と不安を募らせた。【岸川弘明、山下智恵】

 ◆難病患者

 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者らでつくる「日本ALS協会北海道支部」の深瀬和文支部長は「このまま計画停電に突入するのは危険」と話す。

 同支部をはじめ北海道難病連に加盟する32団体や障害者団体は12日、人工呼吸器などを使用する患者や障害者への対策を求め、道と札幌市、北電に要望書を提出したが、その後「実質何も進んでいない」(同支部長)という。外部バッテリーの支給や購入補助などの課題が宙に浮いたまま。「グループ別の患者数を把握すべきなのにそれもまだ。緊急時に病院は受け入れてくれるのか。一刻も早く、具体的対策を」と訴える。

 ◆透析現場

 週3日、4時間の人工透析を受ける腎臓病患者団体「道南腎友会」の河村伸司事務局長は、「人工透析が1日でも受けられなければ、高齢者には影響が出る」と心配する。同会は来月、節電に最大限協力する代わりに、人工透析施設を停電から除外するよう北電に求めるという。

 透析患者を受け入れる札幌市北区の坂泌尿器科病院は「自家発電で人工透析機を2時間維持するのは不可能」と指摘した。一度電源を切ると稼働に1〜2時間かかり、停電が終わっても透析は夜間にかかってくる。「患者を深夜に通わせるのは体力的に厳しい。発電車手配には1日約100万円かかり、前日に分かってもレンタルが間に合わず現実的ではない」と話した。

 ◆農漁業

 JA北海道中央会の飛田稔章会長は「電力は農業経営に不可欠。一時的でも電気の供給が止まれば多大な影響がある。食料の品質、安全性の確保のため計画停電という最悪の措置を取らないよう強く要望したい。私たちも節電に組織を挙げて取り組む」とコメントした。

 北海道ぎょれんの崎出弘和・代表理事常務は「道内ではこれからサンマやイカ、サケの漁が続く。水揚げした魚は冷凍冷蔵しなければ鮮度が落ちる。前日に計画停電を発表されても、船は漁に出ており、取った魚は水揚げする。(損失が出たら)北電は補償してくれるのか」と心配する。

 ◇グループ分け複雑 利用者の混乱必至

 北海道電力が22日に公表した計画停電の方法は、泊原発(泊村)周辺の13町村と離島を除く地域を60グループに分け、非常に細かく複雑だ。隣接地域が同時に停電しないよう分散させるためだが、利用者の混乱は必至だ。

 北電によると、約390万件の利用者を地域で60区分し、01〜60の番号を振る。さらにそれぞれ時間帯で6区分し、視覚的区別のため、同一時間帯のグループには同一色を割り当てる。

 7月2日発表の具体的グループ分けは、同社のホームページや「電気ご使用量のお知らせ」(検針票)などで実施。希望者にはグループごとの住所一覧を郵送する。また、各グループの停電予定日時を示す月間カレンダーを、あらかじめHPや新聞折り込みチラシで知らせ、実際に実施が予想される場合は前日の午後6時ごろに対象グループを公表する。カレンダーや前日発表で対象になっても、電力の不足量によっては一部しか停電しないこともある。

 石井孝久副社長は「来週以降、各市町村役場に説明し、情報が行き渡るようにしたい」と述べた。一方、新聞やインターネットで情報を得られない利用者らへの周知方法には言及を避けた。また、停電から除外する具体的な施設名は公表せず、相馬道広営業部長は「各施設に聞いてほしい」と述べるにとどめた。【大場あい】」(全文)
 
 

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◆2012/06/23 「再生医療の実用化へ制度づくり急げ(社説)」
 『日経産業新聞』

 「心臓や肝臓など体のどんな臓器の細胞にも育てられる「万能細胞」を使う再生医療の研究が加速している。難病の治療が期待でき、日本の医療産業の成長の起爆剤ともなりうる。治療の安全性と有効性をしっかり見極めつつ早期に実用化するには、承認審査の仕組みなどを整える必要がある。
 再生医療は病気や事故で損なわれた体の組織や臓器を体外で育てた健康な細胞を使って回復する。やけど治療に使う培養皮膚などがすでに臨床で使われているが、網膜や肝臓といったより複雑な働きを備えた組織や臓器の再生医療はまだ研究段階にある。
 複雑な臓器の再生には、京都大学の山中伸弥教授が開発したiPS細胞など、いわゆる万能細胞を使う。万能細胞を育てて作った組織などを患者に移植するため、移植後に細胞ががん化しないかなど、臨床で使う前に安全を徹底して確認する必要がある。
 万能細胞は、薬や医療器具を対象としてきた既存の安全審査の枠に収まりきらない新しい治療技術だ。審査の新たな基準や安全確認の手法が必要で、審査体制が不確かなままでは実用化の障害になる。厚生労働省は専門家の意見を踏まえ、薬事法など必要な制度改正を迅速に進めてほしい。
 再生医療で体の機能が回復し元気に働いたり学んだりできるようになれば、患者の幸せになるだけでなく、医療費の抑制など社会的な意味合いも大きい。
 ただ再生医療は治療費が数千万円かかる高額医療になるとみられる。細胞の培養などに費用がかかるからだ。このため治療の有効性をよく吟味してから医療保険の適用を考えねばならない。闇雲に保険適用すると真に必要な医療の普及をかえって妨げることになりかねない。無論、培養技術の改良などを通じコストを下げる努力も求められる。
 万能細胞は医薬品開発にも革新をもたらす。体中の筋力が低下する筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの難病は実験動物が存在しないため治療薬開発が困難だった。患者の細胞からつくったiPS細胞を育てて使えば、薬の毒性や効果を確かめるのに役立つ。
 再生医療関連の市場は2030年に国内で1兆円ともされる。政府は今夏にまとめる日本再生戦略に再生医療の実用化を盛り込む予定だが、言いっ放しに終わることなく着実な実行を求めたい。」(全文)
 
 

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◆2012/06/23 「計画停電、万が一に備え、在宅患者、呼吸器の電源確保、大阪府警、手信号へ配置計画。」
 『日経産業新聞』

 「関西電力が22日に概要を発表した計画停電。節電が十分なら避けられる可能性も高いが、治療を医療機器に頼る患者らは「万が一実施されたら……」と不安を抱える。道路の信号機もほぼ消灯するため各警察は手信号の準備を急ぐものの、人手不足は否めない。鍵を握る節電意識は東日本大震災直後の昨夏に比べ、濃淡が生じているようだ。(2面参照)
 「停電させるなら、できるだけ早く正確な実施時間を知らせてほしい」。特定非営利活動法人(NPO法人)「兵庫県腎友会」(神戸市)の事務局長を務める浅野兵庫さんは、透析治療を受けている患者の切実な思いを語る。関電の発表では、救命救急センターなどは計画停電の対象外だが、透析患者が通う中小病院や診療所などは対象となっているためだ。
 県内の透析患者は約1万3千人。血液を浄化するため多くは週3回、1回につき約4時間の透析が必要だ。停電で透析治療の機械が突然停止すれば、命に関わる恐れがある。計画停電になりにくい早朝時間帯の透析を検討する病院もあるようだが、浅野さんは「患者が集中して治療時間が短くなるなど不安要素は多い」と話す。
 生命維持に人工呼吸器が不可欠なALS(筋萎縮性側索硬化症)患者らの不安も尽きない。
 大阪府は5月下旬、在宅での人工呼吸器の使用状況を調査。24時間使っている611人のうち17人が予備バッテリーがないことが判明、医療機器メーカーを通じて確保したという。まだ準備が十分でない患者もいるとみられ、日本ALS協会近畿ブロック事務局は予備バッテリーと手動式の人工呼吸器の購入も呼び掛けている。
 大阪府警交通規制課によると、府内の信号機は約1万2000基で、うち自家発電で対応できるのは約290基のみ。停電時は警察官による手信号になるため、府警は今月、各署に交通整理計画を作るよう通達した。ただ同課幹部は「ドライバーが手信号を覚えているかどうかも問題。臨機応変にジェスチャーを交えて交通整理をする必要も出てくる」と語る。
 兵庫県内の信号機約7200基のうち、自家発電対応は約290基。兵庫県警は主要交差点では5人前後の警察官を配置する方針だが、全てに配置できない可能性も。県警交通規制課は「ドライバーには交差点で一時停止してもらうなど安全走行を求めるしかない」と話す。
 一方、一般家庭の節電意識には濃淡が出てきている。関西電力が7月から導入予定の時間帯別の料金プランには20日までに約1万件の申し込みがあった。家電を夜間に使うよう促して昼間の節電につなげる同様の料金プランを始めた東京電力では約400件にとどまっているという。
 大阪市は昨夏から目標値を超えて電気を使った場合にブザーなどで知らせる機器の無償貸し出しを実施している。だが今夏の申し込みは22日時点で約50件のみ。昨夏は希望者が多く、急きょレンタルで枠を増やし、約280台が稼働した。市の担当者は「今年は正直、昨年ほどの勢いがない」と話している。
【図・写真】在宅で24時間人工呼吸器をつけるALS患者は予備バッテリーなどの確保が欠かせない(大阪府高槻市)」(全文)
 
 

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◆2012/06/23 「計画停電、万が一に備え、天神地下街、地上誘導頭悩ます、交差点、警官に手信号講習。」
 『日経産業新聞』

 「九州電力は22日、今夏の電力不足の恐れがある時に行う計画停電の概要を発表した。主要病院や官公庁、鉄道運行などは停電対象から除外する方針だが、昨夏の首都圏の計画停電では対象外だった大都市中心部も九州では含まれる。7月2日に始まる九州初の「非常事態への備え」は万全か。市民らは不安を抱えつつ、対策を急いでいる。(2面参照)
●商業地
 九州最大の商業地、福岡市天神地区の地下に長さ約600メートルにわたって150店以上が並ぶ「天神地下街」。買い物客や地下鉄利用者らで毎日、約40万人が行き交う。
 「地下街は電気が止まれば昼間も真っ暗。地上への階段などに人が殺到したら大混乱になる」。眼鏡店店長の国武良二さん(51)は心配する。夏場の地下街は空調の利いた「避暑地」。7月1日からは商店街のセールもあり、混雑が予想されるだけに、停電時の不安を募らせている。
 地下街の管理会社によると、非常用照明では明るさが不十分で、利用者が階段などで転倒する恐れもあるという。このため「停電時は地下街を封鎖せざるを得ない」(同社)。今後、利用者の誘導法などを協議するが、「正直、何をすればいいのか……」と戸惑う。
 九州新幹線の全線開業で集客力が高まったJR博多駅の駅ビル「JR博多シティ」も停電時には営業を停止する方向。店によっては開店・閉店準備に数時間を要するため、停電時間以上の影響が出そうだ。駅ビルの担当者は「停電回避を祈るしかない」と話す。
●交通網
 福岡県警は手信号による交通整理の講習を始めた。計画停電では信号機も消灯するので、警察官を交差点などに配置する。同県内の信号機約9900カ所について現在、配置や道路状況を調査。交通量や横断者の多い場所に4〜5人の警察官を置く予定だ。
 ただ、全てをカバーするのは「物理的に無理」(県警)。今後は運転者や歩行者に対し、左右をよく確認したりするなどの安全確保策をインターネット上などで呼び掛ける。
 運行自体は停電対象外の鉄道も支障が出る可能性がある。JR九州によると、遮断機や警報機付き踏切は管内に約2600カ所あるが、約4割は電源を確保できない。停電すると自動的に遮断機が下りるといい、同社は「対応を検討中」としている。
●難病患者ら
 難病の在宅患者や高齢者も不安を抱えている。九電は人工呼吸器が欠かせない難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」の患者らに対し小型発電機を貸し出す方針を示す一方、バッテリーの準備や病院への移動も求めている。人工呼吸器を使う子供を持つ福岡市東区の40歳代男性は「結局は患者任せ。本当に患者の安全を考えているのか」と憤る。
 佐賀市の人工透析専門医院には1日に40〜120人が訪れ、治療に4〜5時間かかる患者もいる。同院は「治療を中断するわけにはいかず、大人数の日程変更も簡単にはできない」という。
 高齢者が暮らす介護施設では室温管理用のエアコンや補助器具を常に使っているケースも。入所型施設が約90カ所ある熊本市は停電時に機器類が突然停止して介護に支障が出ないように、施設管理者への周知を徹底。福岡市も民生委員が停電時に高齢者を訪問し、熱中症への注意を促すなど「対策の充実を検討する」としている。
【図・写真】計画停電時に天神地下街が封鎖となる可能性も(22日、福岡市中央区)」(全文)
 
 

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◆2012/06/24 「計画停電:不安の声 ALS患者団体、九電に支援求める 「命に関わる」 /宮崎」
 『毎日新聞』

 「筋力が低下する難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者と家族でつくる「日本ALS協会県支部」は23日、宮崎市で交流会を開き、九州電力などが発表した夏の計画停電をテーマに意見交換した。人工呼吸器が必要な患者もおり、「命に関わる問題」として、行政や九電に外部電源貸し出しなどの支援を求める意見も出た。【百武信幸】

 支部によると、県内で人工呼吸器が必要な在宅患者は24人。厚生労働省は今年度から、約20万〜30万円かかる人工呼吸器用の外部電源購入の保険適用(患者負担3割)を決めたが、広がっていない。

 定期総会に続いて開いた交流会は約20人が参加した。夫が10年前に発症した宮崎市の50代女性が「入院先の病院には自家発電機があるが、自宅介護する人は非常に困っており、うちも自宅に戻ることになれば対応できない。たんの吸引や体温調整なども電気がないとどうしようもない」と不安を口にした。

 自身もALS患者の平山真喜男支部長も「援助者を確保するには、前日や2時間前の停電予告ではどうしようもない」と話した。

 また「行政や九電が個別に蓄電池などを貸してほしい」「ポンプ式なら断水も起きるなど、あらゆることを想定しないといけない」などの意見が出た。

 平山支部長は「外部電源は正常に作動するか不安もあり、停電しないよう節電するのが一番だが、万一のために行政や九電に支援を求めたい」と話した。九電によると、外部電源貸し出しについて自治体と調整中という。」(全文)
 
 

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◆2012/06/25 「迫る再生医療(4)英エディンバラ大所長に聞く――iPS細胞で病気解明(終)」
 『日経産業新聞』

 「臨床への普及、なお時間
 クローン羊「ドリー」の開発で知られる英エディンバラ大学再生医療センターのイアン・ウィルムット所長(67)が学会出席のため来日したのを機に、英国内外の研究の現状や課題を聞いた。
 ――センターではiPS細胞を使ってどんな研究を進めているのか。
 「他のグループとも協力してALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者などから得たiPS細胞をもとに神経細胞のニューロンを作り、病気の仕組みを調べている」
 「『TDP―43』と呼ばれるたんぱく質を作る遺伝子に特定の変異がある患者から得たiPS細胞を神経細胞に育てると、健康な人の細胞に比べ死滅しやすいことがわかった。ニューロンを包むグリア細胞の作製にも成功し、詳しく分析中だ」
 「センターで新たに自前のiPS細胞を作る計画もあるが、予算不足などから作製に必要な施設の整備が遅れている。患者の承諾を得て皮膚細胞をもらい、iPS細胞を作る専門会社に渡す際にどんな契約を結ぶかも課題だ。所有権の問題などを調整し、細胞を最大限有効に使えるようにしなくてはならない」
 ――患者の治療に使えるまでには時間がかかりそうか。
 「英国は研究を推進しやすい環境で制度もよく練られているが、成果を活用するための投資が不十分。論文を発表し、評価が定まってから臨床応用していたら時間がかかりすぎる。両方を並行して進めるべきだ。京都大学の山中伸弥教授から日本では研究費の多くが政府予算で賄われていると聞いたが、英国政府は予算を減らしている」
 「(受精卵から作る万能細胞の)胚性幹細胞(ES細胞)などを使った臨床試験は、大学と病院が連携した『ロンドン・プロジェクト』と呼ばれる計画がある。米アドバンスト・セル・テクノロジーの臨床試験と似ており網膜細胞を作って目の病気を治すのが目標だが、予定より遅れている」
 「目の場合は移植した細胞に問題が起きたらすぐにわかるし、取り除けるので、被験者になろうと考える人も多い。iPS細胞が様々な病気の治療に広く使われるのはもっと先で、2020年以降だろう」
 ――iPS細胞に関する理解はかなり進んだように見える。
 「(がんの発生などにつながるとして)大きな懸念になっているのは、初期化と呼ばれるiPS細胞の出来栄えにばらつきがあることだ。細胞の選別法、取り扱い方、培養条件などが影響しているとみられ、改善が必要だ」
 「ただ、25年ほど前にはES細胞も品質が一定ではなかった。今では(世界の)多くの研究機関が同じ品質で作れる。iPS細胞でも、ばらつきをなくすという目標までの道のりの3分の1程度は達成したのではないか。今回の学会で京大の高橋和利講師の発表もそれに役立つ内容で、大変興味を覚えた」
 ――研究の新潮流として注目しているのは。
 「ある細胞を初期化して万能細胞にすることなしに、直接別の細胞に変えるダイレクト・リプログラミングだ。安全性の問題の解決策になり得る。学会ではこの手法への疑問の声も聞いたが、まだ新しい技術なので改善の余地はある。欲しい細胞をより正確に作り、しかも作製効率を上げられるようになるだろう」
(おわり)
 連載は安藤淳、吉野真由美、松田省吾が担当しました。」(全文)
 
 

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◆2012/06/28 「(エコでいこ! 2012夏)計画停電備えが肝心 【大阪】」
 『朝日新聞』

 「この夏の電力不足に備え、政府と電力会社が計画停電の基本方針を発表しました。万一の措置とされていますが、心構えをしておくのに越したことはありません。家庭はどんな点に注意すればいいでしょうか。

 ●健康
 東京都内に住む消費生活アドバイザーの和田由貴さん(39)は昨年3月、計画停電を経験した。「昨年はまだ肌寒い時期だったが、今回は真夏。熱中症に気をつけて」と呼びかける。
 あらかじめ窓にすだれなどを立てかけて日差しを遮り、窓を開けて風通しをよくする。充電式扇風機を準備しておくのも手だ。体の表面近くに太い血管が通っている首やわきの下、足の付け根あたりを保冷剤やぬれタオルで冷やすと、体温の上がりすぎを防げる。
 停電は、在宅医療関係者にとっては死活問題だ。筋萎縮性側索硬化症(ALS)など難病患者の中には、常に人工呼吸器が必要な人もいる。
 大阪市の男性患者(52)も24時間人工呼吸器を使う。機械に内蔵するバッテリーで計画停電を乗り切るつもりだが、2時間はもたない恐れもある。「内蔵バッテリーが切れたら、手動の人工呼吸器を家族に動かしてもらうしかない」
 外部バッテリーにつなぎ替えれば動くが、外部バッテリーを持っていない人もいる。このため、国は4月から人工呼吸器に付ける外部バッテリーを保険適用にした。

 ●家庭
 いろいろな家電製品も動かなくなるが、夏に気になるのが冷蔵庫。冷蔵庫や洗濯機などを製造販売する東芝ホームアプライアンス(東京)の担当者は「停電の時間が2〜3時間なら、扉を開けないで庫内の温度を保って」と呼びかける。
 あらかじめ冷凍庫で凍らせた保冷剤を冷蔵庫に入れても保冷効果が保てる。冷蔵庫は食品を詰めすぎない方がよいが、冷凍庫は庫内にものをかためて置いた方が保冷効果は高いという。
 インターネットにつなぐための関連機器に電気が使われていると、ネットもつながらなくなる。携帯ラジオを用意し、携帯電話を普段から十分に充電しておくと備えになる。
 観賞魚への影響はどうか。海遊館(大阪市)によると、魚の種類や数にもよるが、「2〜3時間の停電なら、水温に関しては金魚や熱帯魚はそれほど心配ない」という。冷却装置を使って低い水温で飼っている魚は、水槽の周りを氷で冷やすなどの対応をとった方がいい場合もある。水中の酸素が少なくなるのを防ぐには、電池式エアポンプを準備するとよいという。
 街中では、コインパーキングを使う場合、注意が必要だ。計画停電の時間にあわせて、遠隔操作で車止めを下げ、車が出せなくなることを防ぐ予定のところもあるが、そうした対応をとるところばかりではない。
 マンションのエレベーターは、停電中は動かなくなる。業界団体である日本エレベーター協会(東京)の担当者も、「計画停電の時間帯の使用は避けて、閉じ込められないよう注意して」と話す。
 マンションの水道も、水をくみ上げる給水ポンプが止まると水が各戸に届かなくなり、断水する恐れがある。

 ●防犯
 消費生活アドバイザーの和田さんは「防犯と防火にも気を配って」と注意を促す。停電になると、マンションの入り口ドアのオートロックも解除される。窓を全開にするのが心配な場合は、窓を少し開けた状態でロックできる補助錠を使うとよいという。
 火災も要注意だ。マンションの火災報知機にはバックアップ用のバッテリーが内蔵されている。メーカーは一般的に、停電しても1時間程度は火災を警戒するように作っているが、停電が長いと作動しなくなる。
 埼玉県毛呂山(もろやま)町に住む会社員の女性(29)が計画停電を体験したのは、昨年3月の夜、最寄り駅から自宅まで帰る最中だった。「真っ暗闇で怖くなった。懐中電灯や反射材があればよかった」
 今回の計画停電は夜間の可能性は低いとされているが、照明器具を準備する場合、和田さんは、長持ちして火災の危険性の少ない電池式LEDランタンをすすめる。一時的には、携帯電話のカメラのフラッシュ機能などを使う方法もある。

 <この夏の計画停電>
 関西、四国、九州、北海道の4電力会社が万一に備えて準備。関電や四電の場合、他の電力会社から電気を融通してもらったうえで、西日本全体の余力が1%を下回りそうなときに実施を決定、約2時間前に周知する。期間は7月2日〜9月7日(土日、祝日とお盆を除く)の8時半〜21時。

 【写真説明】
(上)すだれをつるすと、直射日光を避けられる
(下)凍った保冷剤を冷蔵庫に入れるのも効果的」(全文)
 
 

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◆2012/06/30 「女の気持ち:最後のエアメール 愛知県知多市・遅沢美也子(主婦・67歳」
 『毎日新聞』

 「それは見覚えのある封筒で、2年近くも音信が途絶えていた彼女からのものだったから、うれしくて封を切るのももどかしく、あて名の筆跡が違うことをうっかり見落としていた。

 しかし、差出人は彼女ではなく、母親の死を知らせる娘さんからのものであった。1年半前に亡くなっていたが、いろいろあって気持ちの整理もつかず、連絡するのが遅くなってしまったことをわびる内容だった。

 こちらから手紙を出しても返事がなく、クリスマスには忘れずに海の向こうからカードが届いていたのに、もしかして体調を崩されているのかも、入院でもされたのかもと、ずっと気になっていた。

 2年前に筋萎縮性側索硬化症と診断されたこと、闘病生活の様子、最後の1年間は家庭で3人の娘さんが交代で仕事と両立させながら看護されたことなど、つらく大変な思いをされたことが詳しくしたためられていた。あまりのことに、しばらくの間、何も考えられなかった。

 彼女は12歳の時、家族と広島からロサンゼルスに渡り、向こうで読んだ日本の少女雑誌の文通コーナーが縁となって、私とペンフレンドになった。結婚や出産などで途絶えがちなこともあったが、なぜか気が合って、長い間、交際は続いていた。

 来日した時は我が家にも泊まってもらった。きしめんを「おいしい、おいしい」と喜んで食べてくれたことなどが、懐かしく思い出される。エアメールはもう出せないけれど、いつかまた会いましょう、富美子さん。」(全文)


*作成:山本 晋輔長谷川 唯
UP:20120507 REV:20130411, 0417
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