HOME > ALS >

ALS・資料 医学書などでの記述

ALS


日本ALS協会のホームページより
 http://www.alsjapan.org/

 「ALSとは
 ALSは、英語名(Amyotrophic Lateral Sclerosis)の頭文字をとった略称で、日本語名は筋萎縮性側索硬化症といい、運動神経が冒されて筋肉が萎縮していく進行性の神経難病です。アメリカではメジャーリーグ野球選手のルー・ゲーリックが罹患したことからゲーリック病とも呼ばれています。また、イギリスの有名な宇宙物理学者ホーキング博士も30年来の患者です。
 病気が進むにしたがって、手や足をはじめ体の自由がきかなくなり、次第に話すことも食べることも、呼吸することさえも困難になってきますが、感覚、自律神経と頭脳は何ら冒されることがありません。進行は個人差がありますが、発病して3〜5年で寝たきりになり、人工呼吸器を装着しなければ呼吸することができなくなります。
 残念ながら、原因も治療法もわかっていません。一般に40〜60歳で発病し、患者は全国で5000人ほどと言われています。」

■布施さん(神戸市)のホームページより
 http://www.mfarhp.net/guide1.htm
 (「Doug Jacobson 氏のホームページ に掲載されている、Dr.D. Eric Livingston 氏の文章の”ALS:A Guide for Patients”の中の ”What is ALS ?” をもとに、一部、私の得た情報を加えて編集したものです。」)


■医学書などでの記述

 *以下の記述の多くには間違いがあります。ご注意ください。

 [◆]一九八二年・「筋萎縮性側索硬化症[…]本症の病型として、上記の定型的なもののほかに、球麻痺症状を主徴とする進行性球麻痺、上位運動ニューロン障害の臨床徴候を欠く脊髄性進行性筋萎縮症、主として下肢末梢をおかし、下位運動ニューロン障害が顕著な偽多発神経炎型を分類することもあるが、今日これらは本質的な差異ではないと考えられている。[…]予後は不良である[…](豊倉康夫)」(『医科医学大事典』、講談社、第十一巻、二三六頁)

 [◆]一九八五年・「筋萎縮性側索硬化症(運動ニューロン疾患)[…]ついには舌の筋も萎縮して、嚥下困難、発語困難となり、さらに進むと呼吸筋もマヒして死亡する。[…]経過は平均4〜5年であるが、症例によりまちまちで球マヒから始まるものは進行が速く、平均約1年7カ月といわれている。ときには経過の非常にゆっくりしたものもあり、数十年に徐々に進行するものがある。これは別の病気で、[…]」(『最新現代家庭医学百科』、主婦の友社、一九七四年初版、一九八五年最新版、三九五頁)

 [◆]一九八七年。「一九八七年に発行された看護師用マニュアルには、二〇〇一年の第九刷でも「予後はほとんどが五年以内といわれる」(椿他編[1987:112]*)と記されていたりする。」(立岩[2004])
*椿 忠雄・鈴木 希佐子・矢野 正子・高橋 昭三 編 198707 『神経難病・膠原病看護マニュアル』,学習研究社,ISBN: 4051505294 3150 ※ [amazon] ※

 [◆]一九九三年(19930410=新版(第2版)発行、初版=19691020):索引に「運動ニューロン疾患」。「神経内科でよくみられる病気」に「比較的ゆっくりおこって、運動障害をきたす病気としては、変性疾患とよばれるものがあります。その代表的な病気は、痴呆をきたす疾患やパーキンソン病、脊髄性小脳変性症、運動ニューロン疾患なとがあげられます。」とあり、運動ニューロン疾患のところに「*」がついていて、「*運動ニューロン疾患/筋肉を動かす運動をつかさどっている神経(運動ニューロン)が変性して、運動機能が失われていく病気です。」とある(p.1131)「運動ニューロン」という項目もあり、この語は「筋萎縮性側索硬化症」の解説中にあり、注で解説されている。  「筋萎縮性側索硬化症
 〇脳の信号を筋肉まで運ぶ神経が変性する
 筋肉を収縮させる信号を運ぶ神経である、運動ニューロン(運動神経細胞)の病気のひとつです。
 脳から脊髄と脊髄から筋肉までの運動がつぎつぎと変性、消失していくため、筋肉の収縮力がおちて、その結果として筋肉の萎縮が進行していきます。
 原因は不明ですが、代表的な難病としてさかんに研究が行なわれています。
 中年過ぎに症状があらわれてきます。多くの場合、手指の筋肉の収縮からはじまり、指先の力がなくなってきます。ときには舌の萎縮が先におこってくることもあります。やがて四肢の筋肉がぴくつき(筋繊維の攣縮)、手の筋肉がおちて骨ばってきます(ワシ手とよばれる独特の手指の形)。症状が進行すると筋肉の萎縮はだんだんとひろかり、ことばも不自由になり、物が飲みこみにくく、呼吸するのもつらくなってきます。
 この筋萎縮性側索硬化症とは別に、脊(p.1161)髄から筋肉までの運動神経細胞が減っていく病気がり、これは脊髄性進行性筋萎縮症といわれています。進行は筋萎縮性側索硬化症よりずっとゆるやかなことが多いといえます。遺伝性の場合、ウェルドニッヒ・ホフマン病、クーゲルベルグ・ウェランダー病などもあります。
 〇対症療法で苦痛をやわらげる
 原因が不明ですから、はっきりした治療法もありません。病気の進行をとめることはできませんが、患者さんの苦痛をすこしでもやわらげるために、あらわれた症状を抑える、対症療法が行われます。
 〇家庭でできること
 病気が進行する途中で、嚥下障害は必ずおこってきますので、飲みこみやすく、むせにくい食べ物で栄養をとるよう気を配ります。患者さんとよく相談して、たとえば、つるつるした物(豆腐、里芋、プリンなど)を献立に多くするなどして、きめ細かく工夫することが大切です。病気がすすんで運動機能が失われるようになると、患者さんの運命は家族の支え方の度合いに左右されます。また、患者さんとどのように意思の疎通をはかるかも重大な問題となります。まだ患者さんが会話力のあるうちによく話しあって、コミュニケーションのとり方を決めておくことも必要と思います。
 (木下真男)(p.1162)」(『新版 新赤本 家庭の医学』、保健同人社)
 「運動ニューロン」
 [◆]一九九四年・「筋萎縮性側索硬化症[…]この病気はつねに進行性で、呼吸筋の麻痺や肺炎などで三〜四年で死亡することが多いが、一〇年以上生存する例もある。球麻痺症状で始まる場合は、とくに予後が悪い。特別な治療法はまだない。<海老原進一郎>」(『日本大百科全書』、小学館、一九八六年、第2版一九九四年、第7巻、一九三頁)

 [◆]一九九五年・「アメリカでゲーリッグ病と呼ばれている病気がある。1930年代の大リーグでニューヨーク・ヤンキースの4番バッター、ルー・ゲーリッグは14年間に493本のホームランと3割4分の打率を残したが、1938年になって成績ががた落ちとなった。翌年に引退してから、みるみるうちに手足の筋肉がやせて寝たきりとなり、子供たちの英雄はやせ細って消耗しきって三七歳で亡くなった。[中略]多くは人生の最盛期である中年以降に発症し、たちまちにして人生を荒廃させ、生命を奪っていく。
 ブラック・ホールの理論的発見者で、車椅子の天文学者として有名なホーキング博士もかかっているといわれている。ただし、ホーキング博士は二〇歳ころの発症であり、発症してから20年以上になっても指でコンピューターの操作ができて、人工呼吸器を使っていないなど、ALSとしては早期発症でかつ進行が遅い。特殊なタイプのALS、あるいはべつの運動ニューロン病のようにも見受けられる」(小長谷[1995]の記述、鎌田[199?]に引用)

[◇]一九九五年・鎌田竹司が「新聞広告で知り、書店へ行き買い求め」た小長谷[1995]──「九五年三月の第一刷三万五千部がまたたくまに売り切れ、現在四刷を販売中」(『難病と在宅ケア』1-2(1995.6):27)──から。「多くは人生の最盛期である中年以降に発症し、たちまちにして人生を荒廃させ、生命を奪っていく。」(小長谷[1995:208-209]、鎌田[1998?]に引用)その続き。「発症してから三、四年で、嚥下障害によって食べものを気管につまらせて窒息するか、窒息しないまでも食べものが肺に迷いこんで肺炎を起こすか、あるいは呼吸筋のマヒで呼吸不全になるかで亡くなる。」(小長谷[1995:212])その後は「重い問題」という項で、「そのまますぐには死なないことがある。」「人工呼吸器で呼吸を管理しさえすれば、心臓が動いているかぎり死ぬことはない。[…]生命を何年も、ときには二〇年近くも保たせることができる。」(小長谷[1995:212])。(なおこの本の続篇である小長谷[1996]にはALSについての記述はない。)

 [◆]一九九五年・「運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症・脊髄性筋萎縮症)[…]筋萎縮性側索硬化症[…]どこの症状が最も目立つかによって、普通型、脊髄性筋萎縮症、進行性球まひなどの病型に分類されますが、本質的には同一の病気です。[…]一般に予後は不良で、約八〇%は発症から五年以内に、嚥下障害と呼吸筋まひに起因する誤嚥、窒息、嚥下性肺炎、呼吸不全で死亡します。しかし、五年以上生存者もふえており、一〇〜二〇年の長期生存者もいます。」(『百科家庭の医学』、尾形悦郎・小林登監修、主婦と生活社、一九九五年、三〇五頁)

 [◆]一九九六年・『改訂新版 家庭医学大百科』(法研)「運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症)[…]病気の種類や個人差もあり、その速度はさまざまですが、病気は基本的には次第に進行していきます。[…]似たような病気がたくさんありますし、運動ニューロン病のなかでも病気の種類によって進み方が非常にまちまちです。[…]p.585)患者の会(日本ALS協会 Tel03−3267−6942)に相談するのもよいでしょう。」(五八五−五八六頁)

 [◆]一九九九年・「運動ニューロン疾患とは[…]どの範囲に変性がおこったかによって、筋萎縮性側索硬化症、進行性球まひ、脊髄性進行性筋萎縮症の三つに分けられていますが、あとの二つは、筋萎縮性側索硬化症の部分症状とする考え方が最近の主流になっています。[…]筋萎縮性側索硬化症(ALS、アミトロ)[…]多くは、発病から五年以内に呼吸器の合併症をおこし、死亡します。/進行性球まひ/[…]会話と食事ができないために心理的な負担が大きく、栄養障害と衰弱をきたしやすいものです。/進行も早く、発病から三年程度で肺炎などにより死亡します。/脊髄性進行性筋萎縮症/筋萎縮性側索硬化症に比べて経過が長く、とくに非進行性の時期もみられます。発病から五年以上、しばしば一〇年以上も生命を維持できることがあります。」(『家庭医学館』、小学館、一九九九年、九八一−九八二頁)

 [◆]一九九九年(19991015)・「筋萎縮性側索硬化症/運動神経のみが選択的に変性していく原因不明の疾患です。三〇〜五〇歳に好発し、手足の筋力の低下と筋萎縮がじょじょに進行し、ついには呼吸筋などをもおかすようになります。知覚や知能の障害はありません。/現在のところ有効な治療法はなく、予後不良です。厚生省の難病疾患に指定されています。」(新星出版社編『ハンディ版家庭医学事典』、新星出版社、三六五頁、「脊髄の病気」の項に)

 [◆]二〇〇〇年(20000315)・「運動ニューロン疾患/運動ニューロンは、大脳の運動中枢細胞から始まって、脊髄を経由して抹消の運動器に至るまでの運動神経の経路を指します。脊髄の側索路を通って前角に至るまでを一次ニューロン、前角で中継点を通って筋肉に至るまでが二次ニューロンです。この運動ニューロンだけを選択的におかす疾患が筋萎縮性側索硬化症で、二次ニューロンの障害によって筋肉が萎縮します。このタイプを神経原性筋萎縮といい、筋自体に病気があって起こる筋原性筋萎縮と区別します。/筋萎縮性側索硬化症の症状は、神経原性筋萎縮が壮年期から起こります。筋萎縮は手から始まることが多く、肩、胸にも及び、呼吸筋や下筋に起こって、呼吸困難や嚥下不能になることがもっともおそれられています。/初めに筋肉がピクピク動いて、自分でおかしいと気づくこともありますが、筋肉がピクピクする病気はほかにいくつもあり、そのことだけで心配することはありません。しかし、筋肉のやせや脱力も併存する場合は、専門医の診療を受けるようにします。/治療 世界中で研究されていますが有効な治療法は見いだされていません。リハビリテーション、生活のしかたなどの指導を受けることが大切です。」(『三五歳からの家庭医学百科』、時事通信社、一四六頁)

 [◆]二〇〇〇年(20001015)・「筋萎縮性側索硬化症」の項目があり、その中に「運動ニューロン(運動神経細胞)」の語があり、注で説明されている。「筋肉を収縮させる信号を運ぶ神経である、運動ニューロン(運動神経細胞)の病気の一つです。/[…](p.824)/この筋萎縮性側索硬化症とは別に、脊髄から筋肉までの運動神経細胞が減っていく病気があり、これは脊髄性進行性筋萎縮性症といわれています。進行は筋萎縮性側索硬化症よりずっとゆるやかなことが多いといえます。」(『新版 ハンディ新赤本 家庭の医学』、保健同人社、八二四−八二五頁)

 [◆]二〇〇一年(20011106)・「運動ニューロン病」として「筋萎縮性側索硬化症/脊髄性進行性筋萎縮症/進行性球麻痺」があげられ、説明がある。「筋萎縮性側索硬化症[…]呼吸不能の状態になると、人工呼吸法が必要になります。特定疾患(難病)に指定されています。」(『大安心──健康の医学大事典』、講談社)

 [◇]『世界大百科事典』(平凡社、19810420):なし。「筋肉」の項の「筋肉の病気」にもなし。

 [◇]『広辞苑 第二版』:なし。

>TOP

■立岩真也『ALS――不動の身体と息する機械』より

□□第1章 間違い

 □1 「予後」について言われたこと
 □2 書かれていたこと
 □3 予定通りにならなかった人たち
 □4 なぜ、と思える

 「ALSの人、またその家族が読んだ本には次のように書かれてあったと記されている。
[19]一九七八年・「「変性神経疾患で進行性、原因は不明、治療方法は全く無く予後は不良、発病から三、四年の命である」と記してあり」(「医学書」、川口[1989:133])

[20]一九七九年・「予後不良で数年以内で死亡する疾患」(夫と一緒に書店で買った「家庭医学書」、菅原[1989:133])

[21]一九八一年・「筋肉がだんだん衰え、最後は呼吸困難に陥り、やがて死に至る、と書いてあった。またそれには、現代の医学では原因も治療法もわかっていない、とあった。そしてこの病気は、発病して普通四、五年で死亡するとも書いてあった。[…]家の百科事典は十年くらい前のものだからと思って、本屋に行き最新の家庭医学書を読んでみた。結果はどの医学書も同じようなことしか書いてなかった。」(土屋・NHK取材班[1989:23-24])

[22]一九八二年・「筋肉を動かす神経系統が侵され、指、腕の脱力、さらに足に及んで歩行も不能になり末期には舌の萎縮、嚥下(飲み下し)困難などを起こし、多くは発病後数年以内に死亡――と説明されていました。」(「家庭医学の本」、折笠[1986:12])
[23]一九八三年・「「ALSは難病中の難病、二〜三年で死ぬ」とありました。」(「書棚の医学全書」、松本[1995:289])

[24]一九八四年・「原因わからず、治療法なし、二、三年の命」(「医学書」、小林[1991:34])

[25]一九八六年・「予後は悪く五、六年で死亡」(湯島図書館にあった「家庭医学書」、橋本[1997])

[26]一九八六年・「この病気は進行性で発病して五〜十年で呼吸困難に陥り、やがて死にいたる」(『家庭の医学』、東御建田[1998:19])

[27]一九八八年・「数年で結局は死に至る。」(「医学書」、高田[1999:80])

[28]一九八八年・「「予後不良、治療方法がないため国の難病に指定されていて、申請をすれば医療費がただになる」とだけ書かれている。/<予後不良>だけではどういうことか分からない。もう一冊本を出してもらって調べるが、やはり同じことしか書いてない。」(「医学書」、杉山[1998:22-23])」


*作成:立岩真也
UP: 2002 REV:20040708 20080317 20100915 20131215
ALS
TOP HOME (http://www.arsvi.com)