「もうずいぶん前のことだが、一九九六年に、アダルト・チルドレン(AC)ということばが、朝日新聞で流行語の一つに選ばれた。[…]もともとは、アメリカのアルコール依存症治療にかかわる人たちから生まれたことばで、Adult Children of Alcoholics がその語源であり、アルコール依存症の親のもとで育った人たちのことを指していた。[…]日本語で流行語になった背景には、AlcoholicのかわりにDisfunctional Family(機能不全家族)をあてたことも大きかった。これによってACの範囲が一気に拡大したのだ。外見はふつうの家族だが、目に見えない家族内の抑圧・軋轢を感じていた人たちは多かっただろう。そこにぴったりはまったのが機能不全という言葉だった。「そうか、自分の家族は機能不全だったのだ」と彼らは納得し、ACだと自覚したのだ。」(信田[2008:82-83])