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人工透析/人工腎臓/血液透析 1990-

人工透析/人工腎臓/血液透析


 作成:有吉玲子(立命館大学大学院先端総合学術研究科)*

◆19900122 厚生省健康政策局 「21世紀をめざした今後の医療供給体制のあり方」を発表
   →医療法改正 病院区分を一般、高次機能、長期療養に類型 (全国腎臓病患者連絡協議会[2003:144])
◆19900401 診療報酬改定 エリスロポエチンが保険適用になる (全国腎臓病患者連絡協議会[2003:145])
◆19910720 県立宮崎病院で精神障害者の透析が拒否され患者が死亡 (全国腎臓病患者連絡協議会[2003146])
◆19910912 老人保健法改正成立 (全国腎臓病患者連絡協議会[2003:146])
◆19911091 血液透析患者実態調査実施 (全国腎臓病患者連絡協議会[2003:146])

●19911031 県立宮崎病院での精神障害者透析導入拒否事件で患者の遺族が提訴 (全国腎臓病患者連絡協議会[2003:146])

藤野邦夫、藤野ヤヨイ 「透析治療受け入れ拒否事件 身体合併症患者の受療の権利」,『精神科看護』, 2003.12 vol.30 No.12(通巻135号):pp.70-73
概要―精神科で入院治療を受けていた糖尿病性腎症の患者が、県立宮崎病院に人工透析療法を求めたところ、「人工透析療法のための日常の自己管理能力がない」との 理由で断られ、まもなく死亡。患者の母親と妹らが治療を拒否した病院を相手どり損害賠償請求を行う。
県の主張→(1)・・長期血液透析を実施するか否かは、@改善される病態があり,A患者がそれに耐えられ、Bその結果が有意義である場合、が対象となる。(2)長期血液透析は日常生活に 制約を課し、極限までの忍耐を要求する。患者はそれにたいする理解・了解と苦痛に耐える自制心、自己管理能力、医師らへの協力が絶対必要である。患者は 自己導尿教育拒否、水分摂取指導拒否などの態度があり、透析導入は困難である。(3)・・自分の置かれた状況や何のために病院にきたかを理解しておらず 、精神分裂病を診断された。透析担当医師と協議し、透析に対する必要性を了解する能力と自己管理能力、家族の協力が必要であるため、透析の適応対象でないと判断した。 (4)母親らからどうしても血液透析してほしいとの希望が表明されていなかった。
裁判所の判断→(1)・・日常の自己管理能力がないことを利通として人工透析を断ることは社会通念に照らして著しく相当性を欠く。(2)患者が興奮したり暴れて 透析の施行自体が困難となったり、自己管理能力の欠如により透析をしても死亡する事態が近い将来に予想されるか、透析により腎不全状態が改善されても 退院後日常生活を営みうる可能性がないなどの特段の事情がない限り、透析の適応のある場合には、人工透析を導入すべき義務がある。として地裁、高裁とも原告が勝訴した。

◆19920401 診療報酬改定で透析患者の検査定額化、CAPD紫外線殺菌器と自動腹膜還流装置に保険適用 (全国腎臓病患者連絡協議会[2003:147])
◆19931125 各党協議会が臓器移植法案要綱作成(全国腎臓病患者連絡協議会[2003:149])
◆19940401 診療報酬改定 透析液、生理食塩水、血液凝固阻止剤の薬剤料を「包括化」 (全国腎臓病患者連絡協議会[2003:149])
◆19940801 CAPD熱殺菌器に保険適用 (全国腎臓病患者連絡協議会[2003:149]) 
◆199409 東京の透析施設で劇症肝炎発生 4人死亡  (全国腎臓病患者連絡協議会[2003:150]) 
◆19950117 阪神・淡路大震災 透析患者24人死亡、多数の透析施設が透析不能 (全国腎臓病患者連絡協議会[2003:150])
◆19950401 腎移植普及会が日本腎臓移植ネットワークの名称変更 (全国腎臓病患者連絡協議会[2003:151])
◆19950607 US腎移植問題  (全国腎臓病患者連絡協議会[2003:151])

◆山崎正俊(日本人工臓器工業協会常任委員)「欧州主要国における血液透析治療の現状」1999,『日本透析医会雑誌』Vol.14 No.4 :pp.9-14
透析治療の概況→ドイツ:透析患者数 45000人(内CAPD3000人)、透析費用 350DM/回+Dr.fee 25DM、 ハイフラックス使用時+40DM、ダイアライザー価格40〜50DM、 保険システム 病院金庫による公的医療保険制度、職業、地域によって所得の13〜14%の保険料を支払う、自己負担なし、リユース率5%未満
フランス:透析患者数 26645人(内CAPD2454人)、透析費用 公的と私立により差が大きい、大学―2600〜6600フラン 公的病院―2240〜5500フラン 私立病院―1600〜2100フラン  家庭透析―1100〜1400フラン セルフケア―1150〜1400フラン、保険システム 社会保険式出来高払い 治療費抑制のため若く合併症のない患者をauto-dialysis,self-dialysisに送る、患者 一時負担原則20%、後日償還、リユース率0%
イタリア:透析患者数 39000人(内CAPD4000人)、透析費用 透析償還価格30万リラ/回 実際コストは36〜40万リラ、保険システム DRG制導入、疾病別償還額は州によって異なる、 原則として患者負担なし、リユース率5%未満 <0011 <
透析治療費削減について、フランスでは、autodialysis,self-dialysisの実施。人件費抑制のため透析患者16名に対しナース1名で医師は巡回制。イタリアでは患者年齢の上昇や糖尿病患者増の常態から この方式には否定的。イタリアでは医療費削減には移植が一番効果的であるとし積極的に移植を実施しているが、腎提供が少なく十分実施できないのが現状 <0012<

◆國友哲之輔(日本人工臓器工業協会理事)「米国における血液透析治療の現状」1999,『日本透析医会雑誌』Vol.14 No.4:pp.5-8
米国での透析療法は腎移植までのつなぎの治療という位置づけ、血液透析患者数は1997年末で22万人と推定
→透析患者のほとんどがMedicareに依存している。Medicareの外来透析施設への支払いは極度に制限されている。
Medicareの支払いは80%分(US$128〜138/回・患者、州により異なる)で20%分(US$26〜28/回・患者)は2次保険または自己負担である。
患者ひとりあたり、約US$2150/月(内US$150〜200/月は医師技術料である)だがこれにはエリスロポエチン等薬剤費用や、入院治療費は含まれていない
→償還額が低いため、経済的にダイアライザーのリユースを行わざるを得ない状況になっている。また外来コストのみを抑えるあまり、入院や付随する費用が ふくらみ、総透析コストとしては、日本よりも高くなっている。
→1996年度Medicare負担額(US$/患者・年) 血液透析 55000、腹膜透析 48000、腎移植 18000 <0006<

◆池上 直己 19920610 『医療の政策選択』,勁草書房,p.177 ASIN: 4326700416 3360 [amazon][boople] ※ b m/e01 ts2007a

 「明確な資源制約の下に医師に最大の裁量権を与えているのがイギリスの国営医療であり、イギリスではプライマリ・ケアのレベルの開業医が患者が病院を選択できるかどうかを決めており、さらに病院レベルの専門医には予算制約を設けている。たとえば50歳以上で腎不全になった患者には通常透析治療を開始していない(但し、これは新規に開始する場合であり、50歳以前から腎透析を行っている患者についてはもちろん透析を継続している)。このような配給基準はどこにも銘記されておらず、あくまでも50歳以上に開始した場合には予後が悪いという医師の「医学的判断」による裁量権が前面に立っており、医師を守るために医療訴訟やインフォームド・コンセントのあり方について一定の制限を設けている(Aaron & Schwartz, 1984)。」(池上[1992:51])

Aaron, H. J. & Schwartz, W. B. 1984 The Political Prescription: Rationing Hospital Care, Wahshington, D. C.: Brookings Institution

◆宮崎精神医療を考える会 19911225 「彼女は生きる権利を剥奪された――「精神障害」が透析拒否の理由だった」
 『季刊福祉労働』53:115-117 1236 ※

山田 富秋 19920625 「精神障害者とノーマライゼーション――精神障害者に対する透析拒否事件について」,『ノーマライゼーション研究』1992年年報:079-089

山田 富秋 「精神障害者に対する透析拒否事件について」
 『あくしょん』22(特集:ただようこころの行方――精神障害者の人権と自立)

◆秋葉 膺右 19920725 『透析から脳死腎移植へ』,はる書房,250p.,ISBN:4938133407, 2000 ※ [amazon] ※ b

◆日本学術会議 死と医療特別委員会 19940526 「尊厳死について」
 町野朔他編[1997:146-152]* *
*町野 朔・西村 秀二・山本 輝之・秋葉 悦子・丸山 雅夫・安村 勉・清水 一成・臼木 豊 編 19970420 『安楽死・尊厳死・末期医療――資料・生命倫理と法II』,信山社,333p. ISBN:4-7972-5506-4 3150 [boople][bk1] ※ b ** *d01
 「延命医療は、人工呼吸器の装着、人工透析、化学療法、輸血などの積極的な治療のほか、静脈注射などによる栄養補給を等を内容とするため、患者はいかなる内容・範囲の延命治療を拒否しうるかが問題となる。」

◆伊東 昭一 19940625 「透析患者の海外旅行」
 『季刊福祉労働』63:068-071 

◆星川純一「医療経済の課題と効率」19950623 『透析療法の医療経済 』,瀬岡 吉彦 (著), 山上 征二 (著) , 日本メディカルセンター, 206ページ ,ISBN-10: 4888750831 ISBN-13: 978-4888750837

 「日本では透析患者の受け入れ制限はないが、1977年の調査で、全ヨーロッパの透析センターの約30%が65歳以上の患者を排除するという年齢制限を行い、また「選択的受入」 および「受入なし」を行うセンターがそれぞれイギリス57%、33%、スウェーデン68%、18%、西ドイツ24%、0.6%、フランス31%、3%であるという。「年齢制限なし」や 「糖尿病患者無条件受け入れ」のセンターもあるわけであるが・・」(星川[1995:102])

☆19960613「透析中止の死亡多発/患者の意思未確認も/複数の医師調査」『朝日新聞』夕刊、1面

 末期の腎不全患者の人工透析を中止し、患者が死亡している例が多くあることが、東京や北海道の医師の調査で明らかになった。尊厳死を望む末期患者の延命治療の中止について 日本学術会議は2年前、患者の意思確認を前提に容認する見解を出している。今回明らかになった末期患者の中には副作用のため透析継続が困難な場合があるが、 中には継続可能だった例や、患者本人の意思が確認できていない例もあった。調査したのは、北海道・岩見沢市立総合病院の大平整爾・副院長と、東京・国立国際医療センターの斉間恵樹・人工透析室長ら。 大平さんは昨年12月、北海道内の127の透析医療施設を対象にアンケートし、44施設で過去10年間に105例の透析中止があったとの回答を得た。それによると、血管が詰まるなどで 透析継続が極めて困難が39%、困難28%、やや困難11%だったのに対し、通常の透析ができたが22%あった。患者の平均年齢は65歳で、透析中止時の余命の詳細は不明だが、 ほとんどが1年以内とみられている。中止決定は、家族が患者の苦痛を考慮して申し出たのが38例でもっとも多く、患者自身が中止を求めたのは20例。残りは家族と医師らの 相談で決めたなど。ほとんどが透析中止から1週間以内に死亡。中には肺がんだが余命が1何以上見込まれたのに、本人の約半年にわたる強い希望で透析を中止した例もあったという。 斉間さんらは1989年以降、国立国際医療センターや関連施設で人工透析を1年以上受け、死亡した75歳以上の患者31人を調べた。

☆19960614 「「中止」と医師過半数/人工透析、家族容貌あれば/アンケート」『朝日新聞』夕刊、16面

 末期の腎不全患者の人工透析中止をどう考えるか――千葉県の国立佐倉病院の三浦靖彦・内科医長らが透析施設のある37の国立病院、診療所の透析医にアンケートしたところ、 末期患者の意思が不明でも、家族からの透析中止要望があれば中止するとの回答が半数以上を占めた。設問では、重度のアルツハイマー病の透析患者と、末期の脳しゅようで余命 3ヶ月と診断された透析患者を想定し24人の医師から回答を得た。アルツハイマー病で患者の意思が不明の想定では、家族からどうしたらいいか「相談があったとき」は「透析を中止する」 が4人で、20人は「注視しない」だった。家族から「中止の要望があったとき」になると「中止する」が13人と過半数を占めた。脳しゅよう患者の想定でも、ほぼ同様の回答だった。 どちらの想定でも、患者が中止を希望しても家族が継続を希望する場合は、医師の約8割が「継続」すると答えた。

同紙面に「案衆院厚生委に提出/議員・厚生省に賛否の声/移植法修正案」
 議員立法として国会に提出されている臓器移植法案の修正案が14日午前、衆院厚生委員会に提出された。同法案は1994年4月に提出されたが、この2年余り実質的な審議はほとんどされていない。 修正案をまとめた議員たちは「いまのままでは法案成立の見通しがたたない」と修正案提出によって審議を促進したい考えだ。しかし、ほとんど審議されていない段階で浮上した修正の動きに 批判的な意見もある。修正案は「臓器提供者が生前に提供の意思を書面で明確に示し、家族が同意したときに限って医師が臓器を摘出できる」とし、当初の法案で、本人の意思が明らかでない場合に、 家族の意思でも臓器を提供できるとした項目を削除し、本人意思に限定した。…厚生省内にも、脳死状態からの臓器摘出、移植に慎重な意見がある。ある課長クラスの職員は「患者や家族の意向が 本当に尊重されるのか、患者が自分のカルテを見ることさえ難しい医療現場の現状を考えると不安だ」と話し、患者の権利を法律で保障した上で、移植の議論を進めべきだとの見解を示している。 厚生省臓器移植対策室は「移植を待ちながら死んでいく患者さんが目の前にいる。審議もなく修正案が出ることに批判もあるかもしれないが、何もしないよりはずっといい」という。

●石井 暎禧 19980501- 「みなし末期という現実――広井氏への回答」 ,『社会保険旬報』1983(1998.5.1):14-19,1984(1998.5.11):36-29,1985(1998.5.21):32-35のうち
 みなし末期という現実(下)――広井氏への回答
 『社会保険旬報』1985(1998.5.21):32-35より

5.人工透析の中止(みなし末期の諸相2)
  「家族の会」の危惧が、危惧にとどまらない実例が、透析患者さんの会である「全国腎臓病協議会」の機関誌で紹介されている。「県立宮崎病院精神疾患患者透析導入拒否事件」の控訴審で「精神病理由の透析拒否は過失」との判決が出たとの記事である。「高齢や障害など透析導入を拒否される選別の動きが伝えられる中、そうした動きに対する厳しい警告になりました」と評価している。同会によれば、「透析中止に関する医療界の動きも、十分警戒していなければならない」と認識しているとのことである。それは新聞にも報道された透析医に対するアンケート調査にみられる、医師の意識である。「透析中止の死亡多発、患者の意志未確認も」『人工透析、家族要望あれば、「中止」と医師過半数』(朝日96.6.13および14)という見出しで報道された平成7年度厚生科学研究による、「透析医に対する、透析患者の終末期医療に関するアンケート調査」である。意図は「慢性腎不全に対する透析医療は、それ自体が延命治療であり、これに関わる医療従事者の意識や体験は、Advance Directive(代理人決定を含む広義のリビングウィル、以下ADと記す)を含む終末期医療の現状と将来性を考える上で、貴重な示唆を与えるものと考えられるため、本研究を企画した」とある。「結論や合議内容を導き出すためのものでなく、考える材料として提起するものである」と一応慎重な姿勢を見せている。だが内容を見ると、「医者は延命至上主義」という通説を一枚はいでみた、現実の医師の意識が明らかになる。
 設問は2つの症例に関するものである。ケースAはアルツハイマーの70歳の透析患者。「彼は自分が誰であるかもわからず、妻や子供さえもわからない状態です」と仮定されている。ADがあり家族が望むならば、84%の医師が中止すると答え、家族が望むだけで、約60%の医師が透析を中止すると答えている。家族に聞かれたら、透析中止を勧めると答える医師も約2割存在する。ただし家族が反対したら、本人の意思に関わらず84%の医師は透析を続行する、と答えているのである。「全ては家族の都合」、これがわが国の死生観の実体であり、国民的コンセンサスの危うさを示している。ほんの一歩で、家族の負担軽減という「功利的判断」が、歯止めなく登場することを示している。「みなし末期」の根底にある意識である。
 さらにこの設問には痴呆患者に対する、ふつうの医師の理解程度が窺える。「彼が自分が誰であるかもわからず」とあるが、これがなにを意味するかが判然としない、尊厳死協会のように痴呆とは「植物状態」とか「非尊厳的存在」であるとの認識のように感じられる。しかし自己認識は他人との関係において始めて成立する、この場合は「妻や子供さえもわからず」ということを意味するにすぎない、このレベルの痴呆でも「兄弟姉妹」は認識しうることが、しばしば見られる。私の母もこの設問のレベルの痴呆であるが、妹だけは認識できる、そして曾孫を見せられ「あなたの曾孫ですよ」といえば、「かわいいわね」と喜んであやそうとする。この私の母が「非尊厳<0032<的存在」で、一刻もはやく死なせることが幸福とだれが言えるのか、「家族の会」が、一般人の認識を嘆くゆえんであるが、医者も変わりはない。
 医師もこのような老人の死を家族が望めば容認する、これがわが国の医療の現実である。横内氏が「医師の責任」を強調するのも当然といえよう、しかし家族介護の現場に接する医師は、家族の要求する「みなし末期」を容認せざるを得ない状況に置かれている、これもまた現実である。設問の回答で、透析中止を家族の負担軽減のためとする医師が多い。  この現状をどう認識するのか、広井氏は、現実を容認する「視点」から「死に場所」に医療を不要と認識し、私は現実を変えようとする「視点」から、「生活」には医療も必要と認識する。

●北岡建樹 「透析医療に要する医療費」2000,『腎と透析』臨時増刊号:pp.140-142
 「・・わが国ににおける保険制度は出来高制といわれ、治療に要した検査や薬剤などは請求に応じて支払われてきたが、患者数の増加は必然的に医療費の増大を招き、国家予算における一般医療費を圧迫することが危惧されるようになった。 この対策として、初期の医療費からみるとしだいに1人当たりの透析医療費は経年的に減少することになり、透析医療費としての全体の枠を維持しようとする政策がみられるようになっている。具体的には、1979年の頃の1人当たりの平均的な 年間医療費は1626万円であったが、1994年には約1/3の588万円になってしまっている。これはダイアライザや技術料の請求価格を引き下げることにより、大幅に保険請求を抑制することを目的としたのである。・・・しかも 近年では支払い基金の慢性的な財政危機から、治療に要した費用が必ずしも適正に<0141<医療側に支払われないことが目立つようになっている。請求分を不適切な使用などと称して却下し返戻されるようになっている。」

●大平整爾 「透析中止のガイドライン――不可避だが苦渋のジレンマ――」2000,『日本透析医会雑誌』,Vol.15 No.1:pp.11-19
 1986年、Neu S,Kjellstrand CM 「Stopping long-term dialysis:An empirical study of with-<0011< drawal of life-supporting treatment 」より、1966年から1984年の間でのミネソタ州の慢性透析1766例の死亡705例のうち、透析中止による死亡は155例で、中止率約9%(155/1766)、全死亡の約22%(155/705) との報告。Neuらの論文の結語には次のように述べられている。「治療の中止は慢性透析を受ける患者、殊に高齢で変性疾患を合併する患者における一般的な死の形式であると私共は結論する。透析療法下にある患者の高齢化の故に、治療(透析)の撤退(中止)は将来において今より一層一般化するであろう。」
 北海道における透析中止の分析:1996年までに75施設から総計105例の透析中止が報告された。1996年12月末の北海道の慢性透析患者は7654人。@事前指示書があったのは2例 A男女比は60% vs 40% B透析中止時の当該患者の意識状態 なし34% あり66% 適正な判断力があるは全体の18% C透析中止の決定者 あえて主導者を分類すると患者自身による中止の選択は28%  残りは患者家族と医療側との双方による代理判断 D透析中止例の年齢 平均男性64.7±14.0歳 女性65.2±11.2歳 60歳以上のしめる比率は男性73%、女性76% E中止が検討された時点での透析困難性 きわめて困難39% 困難28% やや困難11% 通常に施行可能22%<0012< F透析中止後の臨床経過 死に至るまでの期間は5.4±3.3日であり1週間以内であった
1994〜1998の透析非導入と中止の再調査(12施設):@透析非導入(複数回答) 悪性腫瘍末期64% 高度の認知症68% 劣悪な循環動態50% DIC41% 重度の心肺機能低下55%<0013<
非導入決定は医療側と家族との間で話し合われ、問題は生じていない
 A透析の中止 5年間で8例でこのうち「判断力がある」と判定されたのは1例のみ、残る7例中3例ではあきらかに担当医が主導で「透析中止」が家族に提案され話し合いの末に決断されている
 B家族側の中止申し出の主な理由:持続的な苦痛を早く終えてやりたい、患者のイメージが崩れることを恐れる尊厳死の求め
 C中止の現場に立ち会った医師のコメントから:中止後の経過を医師一人で見守る心理的な重圧感、中止決断後、病状の僅かな好転に患者家族が動揺することに対する対応の難しさ、家族全員の意見一致が得られる困難性、 中止後の具体的な処置・治療選択上の苦労など<0014<
 
●橋本肇 200008 『高齢者医療の倫理――高齢者にどこまで医療が必要か』,中央法規
 高齢者の人工透析(pp.231-238) 
 「透析も医療であるから、導入に際して当然メリットと負担のバランスを考える必要があるが、現在、とくにわが国では負担への配慮が少なく高齢者に対しても安易に透析を導入する傾向にある。」<0231<
 「1970年代になると、透析機器が発達し次第に広く行われるようになり、また透析を必要とする患者が急増した。…アメリカでは腎不全末期の患者はメディケアの特例として透析を受けられるようになった。
  しかし、効果が明らかでない高齢者にも透析が行なわれるようになると、そのような医療資源を他に使用すれば、はるかに効果があるのではないかという意見が出された。 『社会的にみてQOLの価値も疑わしい比較的少数の高齢化した患者を生かすために、莫大な費用が使用されることに疑問が生じている」といわれた。また「高<0232<齢者の透析は、将来進歩してほしくない、 進歩させるべきでない技術である」という意見さえみられたのである。
 実際、1980年以前、イギリスでは60歳以上の患者には規則で透析をしないことにしていた。
 さらに高齢者の透析が増加すると、医療費の増加は避けられず、アメリカ大統領委員会は、腎不全に適用された「必要なものは誰にでも与えよ」では対処できないとし、公平の原則をあげた。ここでの“公平”は誰にでも 同じ医療をするということではなく、万人が適正なレベルの医療を受けること、医療費が公平に負担されるべき(公平に制限されるべき)というものであった。
 高齢者の透析の増加を受けて、腎臓病学者は導入決定の際に考慮する5つの条件の1つに年齢をあげている(1989年)。アメリカ議会はPublic Law 92-603のなかで、 「透析と移植」の患者の選択は適正に行なわれるように指示している。即ち年齢に夜制限、QOLによる制限を設けるべきとしている。」<0233<
「透析は中止するよりも控留(肇から透析を差し控えること)するほうが、しやすいといわれている。したがって高齢者では導入するときに十分な検討が必要である。」<0235<

●広井良典 200009 『ケア学 越境するケアへ』,医学書院 
 W 超高齢化時代の死生観とターミナルケア 
  ターミナル期におこなわれる医療行為の内容という点ともかかわるが、今後は、高齢者のターミナルケアについて、医療技術そのものに関する部分についてきちんとした検証をおこない、 必要に応じてガイドライン等を整備し、恣意的な医療サービスがおこなわれない方向での対応を進めていくことが大きな課題と考えられる。こうした点に関して参考になるのは、 アメリカにおける試みである。1987年にアメリカ連邦議会の技<0150<術評価局(OTA)がまとめた報告書『生命維持装置と高齢者Life-Sustaining Technologies and the Elderly』では、 代表的な生命維持技術として,心肺機能蘇生法(CPR)、人工呼吸器、人工透析、栄養補給(経管または静脈)、感染への抗生物質使用の五つが取り上げられ、 これらの技術がしばしば患者や家族の意思とは無関係におこなわれ、しかもその使われ方が恣意的なものであるとの調査結果が明らかにされた。そしてさらにこれを受けて、 各医療機関において、生命維持技術の実施に関するきちんとした要綱(プロトコール)を作成すべき旨の報告書が出されている[Institutional Protocols for Decisions about Life-Sustaining Treatments, 1988]。 <0151<

●大平整爾 「透析療法の限界と展望」 2001 ,『日本腎不全看護学会誌』,Vol.3 No.1:pp.15-19 
「日本における透析中止の現況:透析療法の適応は医学的見地のみならず患者の社会的・心理的な状況を考え合わせて考慮される。最も基本となる点は本療法により 当の患者のQOLが向上するか否かにあると考えているが、多大な心身の苦痛、尊厳の喪失、自己思考の減弱、介護者への思いやりなどをはらむ重篤かつ不治の病態では 透析の中止がやむをえず考慮されることになる。透析の中止は、限りなく自然経過をたどる死としての“尊厳死”の具現である。透析中止は治療拒否の権利を認めることであり、 本人が望まない侵襲からその個人の心身を守るべきだという慣習法に立脚するものであろう。
透析中止による死亡:アメリカでは死亡例中の22%、カナダでは28%と報告され・・日本透析医学会の統計調査項目の死亡原因分類には「自殺・拒否」が掲げられ、 この10数年1%内外の数字が掲げられている」

●大平整爾 「透析非導入と透析継続中止――国内外の現況と課題――」2002 ,『透析医会雑誌』Vol.17 No.2 :pp.127-134
アメリカでは透析中止が先行して死亡(withdrawal from dialysis before death,WD)に至る比率は20−25%で、死因の第2位または第3位を占めているという報告(US Renal Data Systemより)
→透析中止率には地域格差あり、人種間の差異も顕著で白人で81.5人/1000patient-yearに対し黒人では34.2人
スペインの血液透析・腹膜透析の死亡116例では30名(25.8%)が透中止による死亡、主因は“mental incapacity”
イギリス、75歳以上58例では透析中止による死亡は38% <0129<
透析療法における共同による意思決定について、RPA(Renal Physicians Association)並びにASN(American Society Nephrology)のRecommendation Summary(Moss[2001])より <0131<
急性腎不全または末期慢性腎不全の患者について、透析の非導入または透析の中止が適切である場合として@意思決定能力のある患者では、十分な説明が行われかつ自発的な選択として透析への導入または 透析の継続を拒否する場合A患者自身は意思決定能力を欠如しているが、口頭または書面によって透析の非導入または透析継続の中止を要求する場合B患者自身は意思決定能力を欠如しているが、適正に 指定された法的代理人が得透析の非導入または透析継続の中止を要求する場合C思考能力・感覚・目的行動・自己および他者の認識を欠如するような不可逆的かつ重篤な神経学的障害を有する患者の場合

◆2002/10/14 <体性幹細胞>腎臓で確認 腎不全治療に光 帝京、早大グループ
 毎日新聞ニュース速報

 「腎臓に血管や尿細管などをつくる体性幹細胞が存在することを、帝京大と早稲田大の研究グループがマウスの実験で確認し、13日に東京都内で開かれた日本高血圧学会で発表した。この幹細胞を含む細胞の集合体を培養し、管状の組織を持つ立体構造物を作ることにも成功した。グループは「治療が難しい腎不全の根本的な治療に応用できるかもしれない」と話している。
 幹細胞には、体をつくるあらゆる細胞に変化する胚(はい)性幹細胞(ES細胞)と、すでにできあがった体の各器官で増殖、分化する体性幹細胞がある。腎臓の体性幹細胞はほとんど論議されてこなかった。
 研究グループは、染色した幹細胞が細胞内の色素を外へ排出する特徴に注目。マウスの腎臓の細胞を染色し、その中で色が薄くなる細胞群を取り出して培養した。シャーレではなく、ゼリーのような立体的な素材で培養したところ、約3週間で血管、尿細管のような管状の組織に変化した。遺伝子分析でも、腎臓細胞や血管細胞などに関連する遺伝子が発現した。
 現在、国内で人工透析を受けている腎不全の患者は約20万人に上り、毎年3万人ずつ増加している。腎不全は根本的な治療法がなく、腎臓移植も年間約700件しか行われていない。日本臓器移植ネットワークに登録している腎臓移植希望者は、9月末現在で約1万3000人に達する。
 腎臓に体性幹細胞の含まれる割合は、健康なマウスと腎臓に疾患を持つマウスで大きな差はなく、腎臓疾患の患者本人から幹細胞を取り出して、治療に使うことも可能になるという。
 菱川慶一・帝京大医学部助教授(薬理学)は「体性幹細胞による腎臓再生が実現すれば、透析患者の負担減と同時に、ばく大な医療費の削減にもつながる」と話している。
【永山悦子】
 [2002-10-14-03:06]」cf.ヒト細胞・組織/ES細胞/クローン… 2002

◆宮坂 道夫 2005 「『ALS 不動の身体と息する機械』を読んで――ALSの隠喩について」

 「[…]前編・後編にわけて論じてきたこの論考の最後に、ALS患者にとっての人工呼吸器を、人工心臓と人工透析器という2つの「人間のあみ出した機械」のどちらに近いと考えるべきか、読者に問いたいと思う。[…]

◆Garrison, Marsha 20051230 「自己決定権を飼いならすために――自己決定権再考」
 土屋裕子訳,樋口・土屋編[2005:001-025]*
*樋口 範雄・土屋 裕子 編 20051230 『生命倫理と法――東京大学学術創成プロジェクト「生命工学・生命倫理と法政策」』,弘文堂,423p. ASIN: 433535343X 2940 [amazon][boople] ※, b be

 Schiderの透析患者のインタビュー調査:どの透析方法がもっとも生命や健康を保持するか尋ねた患者はひとりだけ。

●松信精一 「ヨーロッパの透析事情」2003,『腎と透析』,Vol.54 No.5 :pp.661-665
 イギリス:公的な医療保険制度はなく国民医療サービス(NHS)呼ばれる医療保障制度、原則的に無料だが、患者の一部負担が導入されている。財源の80%は国庫負担、残りは国民保険の 保険料や患者の一部負担金があてられる。1998年度末で末期腎不全患者総数は29173人、そのうち46%が透析療法で39%が腹膜透析、腎移植は29%。患者一人当たりのセンターでの 血液透析は29140ポンド/年、CAPDは17520ポンド/年
フランス:皆国民健康保険を原則とし、公的医療保険と任意の民間医療保険の形態。公的医療保険の医療給付は現物支給ではなく費用の償還で、給付率は医療費の70%、薬剤費の65%だが 長期・高額医療については患者負担は免除。1998年度末の末期腎不全患者総数は36808人、そのうち60%が血液透析7%が腹膜透析。患者一人当たりのセンターでの費用は血液透析60万フラン/年、 CAPD20万フラン/年
ドイツ:医療保険方式、全国民の90%が公的疾病保険、9%が民間医療保険に加入。収入が限度以下の国民は公的疾病保険に加入が義務付けられている、収入が限度以上は民間医療保険に加入。 公的医療保険は現物支給だが一部自己負担金を払うことになった。診療報酬の支払い方法は3ヶ月ごとの診療報酬請求に対して2%のサンプル平均と比較審査される(透析などは別の審査)。 2000年度末の末期腎不全患者総数は71513人、内76%が血液透析、CAPDは4.8%、腎移植は24%。患者一人当たりの費用はセンターでの血液透析が80000〜100000マルク/年、 CAPDは50000〜60000マルク/年
イタリア:1999年度末の末期腎不全患者総数は44071人、内86%がセンターでの血液透析、10.6%が腹膜透析。費用は血液透析が4680万リラ/年、CAPDは3276万リラ/年
スウェーデン:2000年度末の末期腎不全患者総数は6319人、腎移植32%、血液透析74.7%、CAPD25.3%
スペイン:1998年度末末期腎不全患者総数28946人、腎移植39%、血液透析56%、CAPD5%
オランダ:2000年度末末期腎不全患者総数9851人、腎移植36%、血液透析67.6%、CAPD30.6%

●向井承子 200308 『患者追放――行き場を失う老人たち』,筑摩書房 
 だれを生かし、だれを死なせるのか(pp.168-173) 
 「「社会の負担」では、まずやり玉に挙がったのは腎臓透析患者だった。20世紀が生み出した人工臓器、透析技術は、それまでは死ぬしかなかった末期腎不全患者にいのちを保証した まさに奇跡の医療だった。…<0170<…人工透析は公的な保険の適用を受け、やがてすべての患者の保障されることになる。ところが、今度は政府にかかる莫大な費用が問題になる。米国では 患者の自己負担増という方法がとり入れられた。すると今度は、透析を受けられるのは金持ちばかり、受けられない患者は貧しい層に集中する、という新たな問題が生まれてきた。 そうこうするうちに、腎臓移植の技術が向上、一生続ける透析よりも移植の方が医療費削減に寄与すると言われるようになる。医療政策もも臓器移植を後押しするようになると、 今度は臓器が足りない、という新たな難問に直面するようになった。…80年代に入ると、ついに大統領委員会も難問を受け止めることになった。「資源の限界という現実の意味するところは、 …社会全体が限界のある資源、ときには極めて乏しい資源しかない場合、それをどう利用するのかの選択という倫理問題に直面するということを意味する(1)…医療費の内部でも治療と研究の バランス、治療と予防のバランス、さらに、どの年齢集団、病気、治療を対象とするかなどといったものにまで及ぶのである。」(『アメリカ大統領委員会生命倫理レポート』、1983年) 自由と平等の社会、米国が建国以来掲げてきた大切な理念に「公平性」がある。大統領委員会レポートは公平性という概念にも踏み込む。<0172< 」
 「「公平の原則とは…必要とする医療のすべてを、だれでもが平等に受ける“権利”を認めるというわけではない」、むしろ「万人が適切な医療を受けること、および 医療費が公正に負担されるべきだということである(2)。」<0173<」 
  (1)『アメリカ大統領委員会生命倫理総括レポート』94-95頁(厚生省医務局医事課監訳、藤原出版、1984年)
  (2)同書 97頁 

●山崎親雄 「総論A透析医療費について」2003,『透析フロンティア』,Vol.3 No.3:pp.5-7
 平成12年社会医療診療行為別調査で、傷病(中分類)別上位7疾患の医療費で、腎不全は総点数で3位であるものの、1件あたりの点数は31070点と桁違いで1位。この傾向は数年変わらず、総医療費の 4.8%を占める。「ただし、シェアが膨らめば単価は切り下げられるというのは当然の市場原理で、ダイアライザーの償還価格はまさにこれに従って切り下げられてきた。パイ(国民医療費)が一定である限り、 透析単価が切り下げられることは間違いない。・・・「透析医療費が国民医療費を圧迫しているか?」という問いに対する回答は「成績が世界一という質の評価をせず」、「パイが拡大しないかぎり」、 他疾患との相対的な関係の中で、「国民医療費を圧迫している」と認識すべきである。また一方で、他疾患の医療費を確保するために犠牲となって、透析医療費が削減され続けているということも事実である。」<0007<

●井上裕司 「政策担当側から見た「透析医療」」2003,『IRYO』,Vol.57 No.11:pp.647-653
 「公費負担額の推移:更生医療・育成医療における公費負担額はあわせて、約150億円(平成12年度実績)となっている。育成医療における「腎機能障害」(人工透析の占める割合については不明)の実負担額は減少傾向にある。<0652< 他方、更生医療における「腎機能障害」(人工透析のしめる割合については不明)の実公費負担額(69億円)は増加傾向にある(シェア(全体に対する腎機能障害の割合)は58.4%と横ばいである)。

●大平整爾 「透析医療はどこへ向かうのか」2003, 『日本透析医会雑誌』,Vol.18 No.3 :pp.255-263
 日本透析医学会の統計では、好ましい透析の条件のひとつに透析時間5時間以上をあげている。<0256< しかし、血液透析時間の設定上の問題点の一つに、透析施設の特性(事情)を挙げている。具体的には、
@施設のスタッフ数、勤務体制(人員の確保)A時間外手当B透析関連機器の準備、洗浄、消毒に要する時間C診療報酬の締め付けD激務によるスタッフの心身の継続的疲労感<0257<
CAPD患者が増えない理由の社会的問題として、@患者・家族の依存性A医療者・患者/家族のバイアスB透析および一般医療界、一般社会への教育と啓蒙(患者が知らない、医師が選択肢としてPDを示さない) C在宅患者の孤独感(患者支援体制、患者会)D介護者の不足EPD中止および治療法変更への不安(先発完投型の治療法ではない)<0258<
医療経済について「1979年当時、国民葬医療費16兆円のうち透析医療は0.7(4.4%)を占めていた。20年後の1999年には国民葬医療費は30.7兆円へと約2倍に増加したのに対して、 透析医療費は1.1兆円(3.6%)であり相対的に減少したといえよう(川渕孝一,2003よりの引用)<0258<」
「日本透析医学会の膨大な透析資料は、すでに透析時間の一定以上の長さが患者の一般状態や生命予後に良好な結果をもたらすと結論しており、定番の4時間/回を5〜6時間/回へと延長しなければならない患者は 少なくない。これには適正人員の配置・機器の整備等相当な経費が必要であり、新報酬制度のもとで透析分野の収益が8〜10%減少している現状では個々の透析施設にのみ 犠牲を強いることは明白であり、透析時間の延長は担当医が望み患者が賛同したとしてもそう易々とは実行しがたい環境である。<0259<」

●栗原幸江 「透析中止(断念)に関する理念――我が国ならびに欧米比較――」2004, 『日本臨牀』62巻 増刊号6:pp.509-515
「透析中止をどのようにとらえるか:アメリカの腎専門医団体RPA(Renal physicians Association)とASN(American Society of Nephrology)は2002年1月に、'透析中止’が患者の自己決定件により認められ法的にも守られた一つの 選択肢であり、'医師による自殺ほう助’とは一線を画していることを明確にしている。<0509<」→アメリカでは'透析中止後の死亡(discontinuation of dialysis before death)と言い'透析中止による死亡(death from discontinuation of dialysis)とは言わない
「・・アメリカでは、Cohenらが2000年に6ヶ所の透析施設において、患者と家族を対象に聞き取り調査をおこない、その結果、透析中止の主な理由は身体状況の 悪化(慢性症状の憎悪、急性期疾患の発現、衰弱など)であった。<0510< Hirsch(1989)は、'患者自身の主観的な病状把握’が透析中止の意思決定に対する重要な要件と結論づけている。<0510<」またCohenらの透析中止の意思決定において 考慮すべきポイントには、透析中止が望ましいと考えられる患者の認定として、予後が極めて限られている・QOLがよくない・緩和困難な疼痛がある・治療困難な進行疾患がある(癌・痴呆・ AIDS・末梢静脈症・心疾患など)・透析継続に耐えることが困難、あるいは不能や(医療チームとして)透析中止が妥当であるとの意見を出し、家族からの同意を得るや透析中止の意思決定は撤回可能であるという保証を与える<0511<」

●岸本武利、土田健司、武本佳昭 「腎移植の医療経済」2004, 『Geriatric Medicine』Vol.42 No.5:pp.636-643
2002年末の慢性透析者数は約23万人、人口100万人あたりの患者数は1801.5人で世界の中では断突に高い、アメリカの1.7倍・フランスの3.2倍・イギリスの5.4倍
1日4〜5回繰り返すCAPDの場合で約44万/月、サイクラーを用いて夜間におこなうCCPDは約54万〜55万/月(いづれも日本)。透析患者一人当たりの年間費用を500万とすると総医療費は1.2兆円、国民総医療費の3%強、 全患者数は全人口の0.2%弱で慢性腎不全という一疾患で国民総医療費の3%強の治療費がかかるということが問題視されてきた<0639<
腎移植の現状は10年生着率はもうすぐ生体腎で60%、献腎で50%を超えるだろう<0640< 腎移植の平均医療費について、1986〜1999年の調査では最初の1年間の費用は平均725〜891万円(生体腎移植の方が安い、献腎の場合は移植後すぐには機能 発現せず2週間ほど血液浄化法が必要で、入院期間も長くなりまた免疫抑制剤も多種類使用のため医療費はやや高額になる)<0641<

●山川智之 「障害者自立支援法案と透析医療の公費負担」2005,『日本透析医会雑誌』Vol.20 No.3:pp.491-496
 「透析医療費の公費負担の現状:透析医療の「公費助成の利用優先順位は、@医療保険(長期高額疾病含む)、A更生医療、B障害者医療費助成制度となっている。障害者医療費助成が充実している 都道府県では、自己負担がほとんどないことと、更生医療による助成を受けるためには限られた更生医療指定機関で治療を受ける必要があるため、更生医療の助成を 受けている透析患者はそれほど多くなく、2001年の全国腎臓病協議会の調査では23.2%であった。なお、最近になり地方自治体の財政悪化を理由として複数の都道府県で、 障害者医療費助成制度が縮小され、患者の負担が増加する傾向にある。」<0495< 


☆20070122 「夕張、透析治療中止/市立病院大幅縮小/患者33人、市外通院に」『朝日新聞』2007-1-22、朝刊:36面
「財政再建団体に移行する北海道夕張市の市立総合病院で人工透析を受けていた患者計33人に対し、市は21日、4月以降は透析治療しないことを通告した。患者は他市町村の 病院へ通わなければならないが、交通費への支援はなく、突然の通告に患者から不安と不満の声が出た。財政再建に伴い、市立病院は4月から公設民営の診療所体制になり、 規模を大幅に縮小する。医師不足もあり、透析治療ができなくなるという。…21日に市が開いた患者らへの説明会では、男性が「10日も透析を受けなきゃ死ぬんだ。あんたたちは 生きているが、我々は生かされているんだ」と怒りをぶつけた。一番近いのは隣町の病院は、車で40分ほどかかる。透析を受けて6年になる69歳の女性は、これまでは心臓病を 患う夫に車を運転してもらい、市立病院に週3回通っていた。栗山町の病院に通うことを考えているが、冬の峠は雪深くて運転できそうにないという。」

◆2006/06 医療ルネッサンス 「超高齢時代の人工透析」
 主治医に「自然に逝きたい」 (2006年6月26日)
 治療継続 心臓に重い負担  (2006年6月27日)
 「中止」決断 穏やかな最期 (2006年6月28日)
 最期は「家でゆっくり」   (2006年6月29日)
 心と体のうつ治療も大切   (2006年6月30日)
 中止すべきか?重い決断   (2006年7月 3日)

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060626ik01.htm
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060627ik01.htm
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060628ik01.htm
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060629ik01.htm
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060630ik01.htm
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060703ik01.htm

 cf.立岩 2006/07/04 [ml-prosemip 2289] 「超高齢時代の人工透析」


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