HOME > 医療行為/医療的ケア >

医療行為/医療的ケア 2006


 *情報、御意見の提供を歓迎します。TAE01303@nifty.ne.jp(立岩真也 @→@)までお願いいたします。

◆2006 医療的ケア 最近の動向(杉本健郎氏ホームページ)
 http://shoufukumemo.com/zenkoku/mc_latest.htm#2006

◆2006/02/21 痰吸引の方法について 老人施設の介護士です
 「ある日痰吸引をしていたら,その家族がきて「病院では看護婦さんは皆,ベッドをキャッヂアップして痰吸引していた」とご指摘を受けました.ご存知かと思いますが痰吸引は医療行為なので,本来介護士はできないはずですが,やっているのが実情です.私もあまりきちんとした指導も受けず,みようみ まねでずっと痰吸引をしていました.それでつい,「ここでは痰吸引するのにギャッヂアップして行うという風には聞いていないので」と言ったところ,そのご 家族の方は大変機嫌を害してしまい,施設内でも大きな問題になってしまいました.
 家族の方がいう痰吸引する時のギャッヂアップは角度が45度くらいにしてのようでした.私はそんなでやったら,痰がのどの奥の方に流れてあまりひけないの ではないかと思います.私は痰吸引する時はギャッジが緩やかな方が取りやすいと思うのですが,痰が逆流して危険だという人もいます.しかし,それは目の前 で吸引器でもってバキュームするのだからあまり危険だと思わないのですが.
 実際後で聞くとギャッジアップして吸引している人が多かったのですが..はっきり痰吸引はギャッヂアップして行うものだと決まっているのでしょうか?
 施設で看護師さんの痰吸引をみても,そんなにギャッヂアップしていませんでした.今現在は施設の中でも「ギャッヂアップして痰吸引するのが基本だ」と言ってますが,今までそう聞いていなかったので,今ひとつスッキリしません.別にのけぞらせているわけでなく,ややフラット気味で痰吸引するのはまちがっていたんでしょうか?
投稿日時 - 2006-02-21 12:48:55

 別にどちらが正しいという事はありません.
 取り易い&ご本人が楽な姿勢で取ってあげてください.
 病棟のやり方が正しい と盲目的に信じている方は多いですが,その時その時の状況によって「最適なやりかた」は変わります.
 もしその方が,胃入口の閉じが悪くて,むせたりしてお腹に圧が加わるとしょっちゅう逆流を起こすような場合でしたら,それを少しでも抑制するためにベッドをギャッチアップする事には意味があります.
 病院ですと,ベッドの高さが固定されている事が良くありますので,単にナースのやり易い高さに合わせるためにギャッジアップしていただけかも知れませんよ.
 ちなみに,福祉関係者はむせる場合やたらと上体を起こしたがりますが(食道と気道の位置関係を理解していない証拠です.),背臥位と較べギャッジアップすればするほど,痰は気管に入り易くなります.
 その方は,どんな部位にどのような障害があることで嚥下困難な状態なのか,きちんとナースに教えてもらうと良いでしょう.(分らないナースしかいないとなると困っちゃいますね.)
 以上,ご参考まで
 投稿日時 - 2006-02-21 14:37:44

お礼
 疑問に思っていることについて,詳しく丁寧にお答えくださいまして,ありがとうございます.あなたのお答えで,どんなに私の気持ちが救われたことか.
この入所者の方は認知症が重度になって植物人間のようになってしまった方なので,強いていえば障害のある部位は脳です.(脳梗塞ではありません)
 結局施設で問題になったのは,痰吸引の仕方ではなくて,私が入所者の家族の言い分に「はい,そうですね.すみませんでした」と言えなかったことが問題なので..こってり絞られましたが,あなたの言葉が内心とても励みになり,持ちこたえられました.
投稿日時 - 2006-02-23 11:40:09<」br>
◆2006/03/05 筋萎縮性側索硬化症の診断マーカー
http://blog.goo.ne.jp/pkcdelta/e/ff53469eb7ea9296599b2e30e558a752
興味を持った「神経内科」論文より

 ALSの診断は難しい.上位ないし下位運動ニューロン徴候のいずれかしか認めない発症早期は当然のことながら,個人的に「難しい,と考えるのは,高齢発症 ALSの診断と,救急外来で診察する場合だ.まず前者については,高齢発症者は経験的に球麻痺症状にて発症し,かつ比較的急速な経過をとることが少なから ずある.球麻痺が初発症状である場合,すぐにALSは思いつかず,かつCTを撮ったらたまたま脳梗塞を合併していたりと,神経内科医でなければ脳梗塞と診断してしまう危険性もあるかもしれない.一方,後者については,ALSと診断されないまま在宅医療で経過が観察され,呼吸不全に陥って初めて救急外来に搬送されるという場合である.自分が未熟なせいもあるが,「このような状態になるまでALSの診断がついてないなんてことはありえない,という先入観が心の どこかで働いて,即座にALSと診断することはなかなかできない(ここで診断が遅れることはかなり問題である.というのは呼吸器装着の適応を考える上 で,ALSの診断はきわめて重要であるためだ).実は個人的に2度ほどそのような経験をしたことがあり,救急外来でかなりあたふたした.神経内科医は救急 外来でALSの診断を下さねばならない場面が起こりうるということを認識するとともに,ホームドクターにもALSについて啓蒙していく必要があるということだろう.
 さて,話題はALSの診断を,近い将来,変えるかもしれないというバイオ・マーカーについてである.周知のごとく,ALSの診断は,厚生省の診断基準 (1992年)に代表されるように,神経所見と臨床検査所見(針筋電図,神経伝導速度)に加え,鑑別すべき疾患を除外することで行われる(診断確実例となる).しかし,早期に本症を診断し,治療的介入を行うためには,病像が十分に完成しない段階,あるいは運動ニューロンが荒廃しない早期に診断することが望 まれ,そのため,診断確実性にグレードをつける試みが世界的に工夫されてきた.その代表がEl Escorial改訂Airlie House診断基準(1998年)である.世界で評価される研究を行うには,これに照らし合わせた診断を行うことが不可欠である.とはいえ,行っているこ とは神経所見の評価と筋電図,神経伝導速度,画像検査のみなので,診断技術の面からは,厚生省基準と本質的な違いはないとも言える.
 これに対し,最新号のNeurologyに掲載されたALSのバイオ・マーカーは,その診断を大きく変える可能性がある.というのは,検体は髄液と簡便 で,かつsensitivity,specificityとも良好であるためだ.方法としてはまずALS(36名;El Escorialでdefiniteないしprobable以上)と健常者(21名)の髄液を最新のproteomics技術(プロテイン・アレイ)であるSELDI-MS(surface-enhanced laser desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry)を用いて,比較した.pH4の条件下で,両群に30の陽性荷電した蛋白を認め,その発現量の比較を行ったところ,質量が 4.8,6.7,13.4 kDaという3つの蛋白質がALS群において有意に低下していることが判明した.診断確度(accuracy)を高めるため,それぞれ単独ではなく,3つ の蛋白を組み合わせてみると,
感度(ALS患者で検査が陽性となる割合)=91%
特異度(ALS患者以外で検査が陰性となる割合)=97%
診断確度(ALS患者をALSと診断できる割合)=95%
というきわめて良好な結果となった.しかも発症1.5年以内のALS患者に限っても
感度=95%,特異度=89%,診断確度=93%
という結果であった.
 さらにこの診断法の有用性を別の独立した対象,すなわち新たなALS患者13名,disease controls (MMNなどのニューロパチー症例)7名,そして健常者25名を用いて検証したところ,disease controlと健常者では違いを認めず,その有効性が確認された.
 さて問題はこれらの蛋白は一体,何であるか,ということである.もしかしたら病態に直接関与する可能性もある.ペプチドシークエンスの結果, 13.4 kDaの蛋白はcystatin C,4.8kDaの蛋白は神経内分泌物質VGFの断片であることが判明した.cystatin Cはカテプシンを含むシステインプロテアーゼの阻害物質であり,これまた最新号のAnn NeurolにMSの髄液でのバイオマーカーとして有用であることが報告されている(Ann Neurol. 59:237-47, 2006.;ただし総量の違いではなく,蛋白質断片の割合がMS群と健常者で違うというもの).cystatin CがALSの病態にどう関わっているのか分からないが,興味深いことにBunina小体はcystatin C抗体で陽性に染色される.VGFの役割についても不明だが,成長因子のひとつであることを考えると,病態に関与している可能性も否定はできない.いずれ にしても,今回の研究はSELDI-MSを用いたproteomics研究の威力を思い知らせるとともに,臨床的に大きなインパクトを持つものになる可能 性が高い.
Neurology 2006; 66, published on line

◆2006/03/15 富士山麓医療関連機器製造業者等交流会
Mt.Fuji foot medical related apparatus manufacturer
http://www.fuji.or.jp/index.html
平成17年度 第6回交流会
<講演2>「在宅看護の現状と使用器具に対する提言」
講師:医療法人社団静岡健生会 三島共立病院院長 矢部洋氏
http://www.fuji.or.jp/rireki_17.html

<講演2の内容>
「在宅医療の現状と未来〜医療機器開発メーカーに期待すること」をテーマに,医療法人社団静岡健生会三島共立病院院長の矢部 洋氏より,ご講演をいただいた.要旨は次の通り.
三島共立病院は1978年に開設.その後,在宅看護を担当する「共立クリニック」を1998年に設けた.管理患者件数は約140名で,訪問看護ステーションは三島市,清水町,函南町の3ヶ所あり,この他に訪問介護とデイサービスを行う「共立福祉サービスセンター」がある.
在宅医療の現状を見ると,患者の平均年齢は約80歳で,男女比は約122.その方々の主な対象疾患は,(1)高齢者の脳血管障害・整形外科疾患,(2)悪性腫瘍緩和ケア,(3)神経難病となっている.
在宅医療に対するニーズは非常に高い.しかし,それに応えられていないのが現状である.応えられるための発展の条件としては,(1)在宅診療を担う医師の確保と養成,(2)医療機器の進歩,(3)24時間診療体制の確保,(4)入院対応可能な連携病院の存在,(5)医療・看護・介護サービスの連携が挙げられる.
2006年度に診療報酬の改定が予定されているが,そのことにより,今後,在宅医療に対して次のような影響が懸念される.(1)療養型病床の診療報酬大幅削減計画,(2)在宅支援診療所規定の新設〜病棟医療から在宅医療へ,(3)在宅医療と医療機器関連分野,(4)診断・治療,(5)医療の安全,(6)情報の共有,(7)防災対策,(8)医療廃棄物の問題,(9)感染予防,(10)移送手段,など広範囲に及ぶ.

医療機器の進歩はめざましいものがある.在宅医療でもハイテク化が進み,かなりの検査・診断が在宅で可能になってきている.パルスオキシメーターやポータブルエコー,生化学検査がそれにあたる.
また,高齢者に多い脱水症,低栄養を防ぐために,ベット上で簡便に測定可能な方法体重計や,体脂肪測定と同じ原理で測る体水分率計も高精度化してきている.さらには嚥下機能や腸蠕動運動など見る生体モニター,アルコール アンモニア 二酸化炭素の呼気分析器もハイテク化されている. 
高齢者に多い医療事故に,(1)誤嚥・窒息,(2)転倒・転落,(3)誤配薬・誤注射が挙げられる.窒息事故では秒単位での迅速な対処が必要であるため,窒息事故に特化した吸引器の開発が望まれる.そのキーワードは,「携帯型」「強力な吸引力」「すぐに使用できる」「電源不要」という点である.胃チューブの気管内誤挿入事故も後を絶たない.現在の先端確認法は,エコー・レントゲン・内視鏡の活用と聴診法だが,今後は簡便で確実な先端位置の確認法の開発を希望する.
患者の移送手段も,在宅看護の課題となっている.モバイルクリニックのニーズも高まっているが,検査機器や医薬品,通信機器,そしてレントゲン現像設備がネックとなっている.また,患者移送の効率化のために,ベッドの統一規格化も図る必要があると思う.
在宅医療を行う上で,病院との情報の共有やIT化が欠かせなくなってきている.在宅診療に対応した電子カルテシステムや,医療・看護・介護施設間での情報共有システムの構築が求められている.
この他,私が日常業務の中でこんなものがあればと感じているものに,心胸郭比測定器がある.これは,心胸郭比(CTR)を計測するもので,(1)胸郭径の計測,(2)心横径の計測,(3)心胸郭比の計算を行うことで割り出される.計測機能と計算(割り算)機能を兼ね備えた機器があればと感じている.

<質疑応答>
Q.病室や病棟を減らし在宅へ,というのが今後の傾向とのことであったが,在宅看護を受けたくても受けられない人への対応はどのようにするのか.
A.そういった方は,老人保健施設や特別養護老人施設に入居せざるを得ないが,現在でも待機者が大勢いるので,すぐには入れない状況にある.今後,介護難民が発生するのではないかとの懸念がある.

講演のあと,静岡県富士工業技術センターの真野氏より,静岡県富士工業技術センターの研究と業界支援についてお話しいただき,交流会を終了した.

◆2006/ 介護情報最前線
http://www.kaigo-joho.com/evacuator.html
Q. 吸引器にはどのような種類がありますか?
A. 吸引器には,口腔内にたまっただ液を吸引する【だ液専用低圧持続吸引器】と,   痰(たん)を吸引する【吸引器】の2種類があります.
◇ だ液専用低圧持続吸引器
国立療養所犀潟病院(現:国立病院機構さいがた病院)で考案され,日本ALS協会や難病連のボランティアさん達が手作りして広まった,鑑賞魚用のポンプを利用した【だ液専用低圧持続吸引器】が最も一般的です.だ液が飲み込めない嚥下障害のある高齢者・障害者のためのもので,口腔内にカテーテルなどを入れたままにし,低圧のポンプで常時だ液の吸引を行う物です.
5年ほど前から,株式会社シースターコーポレーションが日本ALS協会に依頼されて商品化し,現在では毎月200件以上のお問合せがあります.コンセント式の設置型と,外出用乾電池式の携帯型の2種類が5,775円〜6,300円というお求め安い価格で販売しています.
◇ 吸引器
痰(たん)の吸引器.利用環境によって機種を選びましょう.
1. コンセント式
病室や自宅など使用する場所が一定している場合.
2. 電源式
コンセントだけではなく,内蔵バッテリーや自動車のシガーライターでも利用できるタイプ.利用者が外出する場合に便利.
3. 手動・足踏み式
あくまでも緊急用として,常時吸引が必要な方は備えておく事をお奨めします.

◆2006/06/25 『季刊福祉労働』111号 特集:暮らしの中の医療的ケア
 福祉労働編集委員会 編 A5判 並製 164ページ
 定価 1200円+税 [amazon] ※

□案内
人工呼吸器利用者の痰の吸引、経管栄養、導尿・摘便、人工肛門の
ケアなどは法律的には「医行為」として医療職しか行えないが、在
宅ケアの現場では素人の家族が担っている。学校・家庭における医
療的ケアの広がりと「医行為」概念の再検討をはかる。

□内容
・ベンチレーターをつけて私らしく生きる
      佐藤きみよ(ベンチレーター使用者ネットワーク代表)
・医療的ケアの拡大と近未来の在宅医療
 〜欠かせない地域医療・訪問看護のボトムアップと当事者主体の
  介護体制〜
      川口有美子(NPOさくら会、日本ALS協会理事)
・医療的ケアと生命倫理
 〜当事者主体の事業者・自立生活センターの立場から〜
      中西正司(全国自立生活センター協議会代表、
      DPI世界会議役員)
・人工呼吸器をつけた家出少年
 〜地域で暮らす・「医療行為」から「生活支援行為」へ
      折田みどり(人工呼吸器をつけた子の親の会事務局長)*
      *人工呼吸器をつけた子の親の会(バクバクの会)
・東京都東久留米市の保育園入園から考える
 〜障害の程度も医療的ケアがあっても関係ない!〜
      永瀬景一(東久留米市民)
・医療的ケアが必要な子どもと学校教育
      下川和洋(養護学校教諭)
・すべての子どもがともに学び、ともに生きるために
 〜学校における「医療的ケア」を考える
      長谷川美和子(「学校における医療的ケアを考える研究委員会」委員)
・医療的ケアを必要とする人の在宅生活を支える医療機関の支援、
 地域ネットワークづくり
 〜人工呼吸器をつけた子どもの退院とその後の関わりを中心に〜
      高橋昭彦(ひばりクリニック院長)
・「医行為」概念と医療的ケアの広がり
 〜法と医療の一面性〜
      樋口範雄(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

・Book Guide
 畦地 豊彦 2006/06/25 「「生きられる場」の思考――立岩真也著『ALS―不動の身体と息する機械』」
 『季刊福祉労働』111:132


*作成:仲口 路子
UP:20100204 REV:20100401, 24
医療行為/医療的ケア
TOP HOME (http://www.arsvi.com)