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医療行為/医療的ケア 〜2002


■1997〜2002

◆1997/11/00 「静岡市の「全身性障害者登録ヘルパー制度」が発足して2年」
 『月刊全国障害者介護制度情報』1997年11月号

(静岡障害者自立生活センターの通信より転載)

 全身性障害者登録ヘルパー制度が発足して2年、自立生活センターの介護派遣シ
ステムを利用し、24時間介護者を入れて自立生活を始めた障害者は、昨年から今
年にかけて3人おります。しかし、自立生活をしている重度障害者が一旦入院して
しまうと介護制度(登録ヘルパーや、生活保護の他人介護料)が使えなくなってし
まうという大きな問題があります。病院内の基準看護では、点滴・注射・投薬等、
医療処置が中心でその他の入院生活に関すること殆ど出来ません。

 SK病院は、1病棟40人程の患者数に対して看護婦の数は、日勤6〜7人、夜
勤数2人。これでは、いくら献身的に看護婦が対応しても多くの介護を必要とする
重度障害者が入院した場合、絶対介護者が必要になります。それも日常的に、介護
に入っている介護者が必要になります。
 筋ジストロフィーのK氏は、5月中旬に自立生活を始めた矢先、肺炎で5月26
日入院、そして、肺の機能低下のため血液中の2酸化炭素量が増え危険な状態にな
り、やむをえず気管切開の手術を行い、人工呼吸器を使用する状態になりました。
K氏の入院前の介護体制は、2交代制で、入院中も同じ体制で、介護に入ってもら
いました。介護の内容は、体位交換、食事介護、排尿、排便等で、痰の吸引は基本
的には、当初看護婦がやっていましたが、退院後の生活も考え自立生活当初からの
専従介護者は、看護婦の指導のもと人工呼吸器の取り扱いと、痰の吸引も行なうよ
うになりました。

 一番困ったことは、本人がナースコールが押せないため常に誰かが付き添ってい
なければならないことでした。又、気管切開をしているため、コミュニケーション
がうまくとれず、口の動きか、又、50音の片仮名の表を介護者が一つ一つ指差し
言葉を拾って行くしかなく、体位交換と吸引は常に必要で、介護者は昼夜休む暇が
ありません。しかし、利用する障害者にとっては、入院する前から介護に入ってい
て、介護について方法とかコミュニケーションも十分にとれ安心した介護を受けれ
る、自ら推薦した介護者が中心でしたので、なんとか入院生活を送る事ができまし
た。しかし、入院中は登録ヘルパーも利用できない。又、制度上有料の介護者を入
れることも出来ず、先に述べたように重度障害者の介護の特殊性もあり、普段から
介護に入っている、登録ヘルパーでなければ、安心した入院生活をおくれません。
入院生活も日常生活の延長線上にあるものです。登録ヘルパーも専従として入って
いる以上、入院中は制度が使えないからといって、ボランティアというわけにはい
きません。

 介護者捜しには、つねに頭を悩ませており、ローテーションを組むのには本当に
苦労をしていました。
 介護制度が利用できないことについては、全ての障害者の介護保障を実現するこ
とを目指して設立された、静岡公的介護保障要求者組合の内部で緊急の話し合いが
持たれ、以下のことを確認しました。
1、介護支援基金の設立
2、介護料の緊急カンパを募る
3、この現状を打開するために、行政や、社会福祉協議会、病院に働きかけ協議の
  場をもうける。という内容でした。

 「3」については、6月18日に話し合いが持たれましたが、制度の壁があり、
「現状では入院中の介護料を出すことは出来ない」という答えでした。しかし、こ
の中で重度障害者の介護の大変さは、お互い確認することが出来たので、「現状の
中で最善をつくし、今後検討していく」ということで、確認されました。

 他都市の入院中の介護制度においては、北海道の札幌では、96年6月、すでに
市単独事業で全身性重度障害者介護料助成事業として制度化され、上限1ヵ月38
時間まで利用できます。制度化の背景は、在宅障害者からの「入院中の介護は劣悪
で生命の危険すらある」との指摘がありました。これは、当事者と行政・病院側と
の粘り強い話し合いにより出来た制度で、自立生活をしている重度障害者が、入院
した場合、生命を維持し、身の回りの事や、介護に関して、コミニュケーションを
自由にとるには、常に介護をしている介護者しかいません。こんな当たり前のこと
をその度訴えていったそうです。
 介護費用が支払われないというのは、介護者の仕事がなくなり、解雇されなけれ
ばならないということです。あまりにも不安定です。介護者の保障も考えて行かな
ければなりません。専従として、登録ヘルパーを職業とする人達もだんだん増えて
きております。全身性障害者登録ヘルパー制度が出来たきっかけは、今までのホー
ムヘルプ事業では、重度障害者の自立生活の視点に欠け、利用しにくいと以前から
当事者が訴えて来ていました。それを受けて厚生省は、94年3月2日、社会福祉
関係主幹課長会議で、以下のような指示を出しています。

「1」ヘルパーが提供するサービスの内容をめぐって、利用者から種々の問題提起
がなされている。
(ア)日常生活のニーズに対応したサービスが受けられない。(量の不足)
(イ)身体障害者の身体介護のための体力や技術に欠ける者が派遣される。
(ウ)障害の特性についての理解に欠ける者が派遣される。
(エ)コミュニケーションの手段に欠けるため十分な意思の疎通が出来ない。
(オ)同性ヘルパーを派遣してほしい。
 これを受けて厚生省は次のように指示しています。
「2」今後の事業運営に当たっては、こうした利用者の深刻な問題を踏まえその改
善に努める必要があるが、その際、次のような視点が重要である。
「重度の身体障害者の中には、身体介護やコミュニケーションに当たって特別な配
慮を必要とするものが少なくない。こうした派遣決定に当たっては、利用者の個別
の事情を十分考慮し適任者の派遣を行なうように努めることは当然であるが、こう
した対応が可能となるよう実施体制について十分な検討が必要であること。この際、
身体障害者の身体介護やコミュニケーションの手段について経験や能力をすでに有
している者をヘルパーとして確保するような方策も検討に値すると考えられる」

 この指示でもわかるように、重度障害者の介護者は、障害を持った人自身が選ん
だヘルパーが一番適任ということを厚生省が認めていることになります。しかし、
入院してしまうとこの制度も利用できません。それに変わるべき内容の介護が用意
されているのなら、なんら問題ないのですが、先に述べた、現状の基準看護は「病
院または、診療所においてその施設の‥‥‥‥‥家族が付き添う必要がないと認め
られる程度の看護を行なうこと」とあります。しかし、現状の基準看護では、K氏
をはじめとする重度障害者は、対応できないのは明らかです。私たちはこの問題を
きっかけに誰もが安心して、入院生活を送れるように、又、登録ヘルパーが継続し
て、登録ヘルパーの仕事が行なえるように、制度の改革に向けて粘り強く運動を続
けていきます。今後とも皆様の支援をよろしくお願いします。

 私事ですが、昨年半年ほどの長期入院したおり感じた事を少し書きたいと思いま
す。入院は、県外のあるリハビリ病院です。私は、頸髄損傷という障害で四肢麻痺
ですので床擦れになりやすく、昨年3月入院し、その間4度手術を行ない、一度は
退院したものの再度入院、12月に退院するまで、計6カ月の入院となりました。
一度手術をすると、1カ月以上車椅子に乗れないので、ほとんどベッドに寝たきり
の毎日でした。看護体制も、患者の付き添いの家族は、20時には帰らなくてはな
らず、その後は、すべて、病院側の対応になります。私は、場所が県外でしたので、
家族も面会に来れませんでした。入院中の1日の日程は、3度の食事中心に、その
間の体位交換、排便、医療処置といった、生命を維持するための最低限の看護の繰
り返しでした。そんな中たった一つの心の支えは入院する前まで入ってくれていた
介護者が週に1度、遠路面会に来てくれたことです。この時とばかり、ジュースや
雑誌等、必要なものを売店に買いに行って貰ったり耳掃除、爪切り、髭剃りの掃除
等頼んでいました。医学的な恩恵は絶大ですが、実は、これがある意味で私の長期
の闘病生活を支えてくれたのです。K氏の介護量と私の介護量とはだいぶ違います
が私も毎日介護者を必要としていました。
 いずれにせよ、入院中にも介護費用が支給されるよう行政側の速やかな対応が望
まれます。

編注:東京都でも97年度後期(注)から全身性障害者介護人派遣事業が改正され、
入院時でも必要がある場合、制度が使えるようになりました。(これまでは、各市
区町村で使えたり使えなかったりバラバラだった。もちろん交渉を行ったところだ
け使えるようになっていた。いままでも都は実施主体の判断があれば認めるという
立場だった。今後は全自治体で使えるようになる)

自立生活センターが介助派遣をやり始めて丸2年

 静岡全身性登録ヘルパー制度が出来て丸2年。自立生活センターが介助派遣をや
り始めて、丸2年経ったことになる。試行錯誤の2年でいまだに試行錯誤している
途中である。
 が、そんな事をしているうちに自立生活を始めた人が去年から今年にかけて3人、
他に家族と一緒に暮らしながら、家族の中で自分の役割を果たす為に介助者を入れ
た生活を始めた人が1人、そして家族の介助力軽減を目的として介助派遣を利用し
ている人が1人というように利用者が増えた。という事で介助者も増えた。最近で
は口コミやビラで介助者を見つけていくことも難しくなっているのでアルバイト情
報誌を利用して介助者を募集している。
 そして面接の段階で自立生活センターの説明と介助者としてのスタンスを説明す
る。「利用者は単にお世話されるべき対象者ではなく、介助者を雇っている雇用主
である。利用者の意思決定を最優先してほしい。そして失敗する事も一緒に付き合
っていける方を望んでいる。」といった説明の後2、3回実際に介助を経験し、ロ
ーテーションを組んでいく。

 利用者は筋ジストロフィーの人が多く、2人が気管切開をしている為24時間の
介助が必要である。今のところ介助者を確保していくことが最大の課題になってい
る。何とかローテーションが組めるくらいの介助者では、急に介助者が病気とかで
これなくなった時、代わりに入れる人が少ない。泊まり介助が特に大変なのでなり
手がいない。その分、介助料金を増やす事が出来ればいいのだが、財源がない。
 全くナイナイ尽しなのだ。
 そんな中で苦労している事務所と利用者、介助者であるが、今まで障害者に接し
たことがなかったり、福祉にあまり関心がなかったりする人達が介助者をやってみ
て、『障害者が地域に生きるって当たり前のことなんだ』と多くの人に肌で感じて
もらえればそれが一番の財産なのかもしれない。

(転載は以上)

◆1997/12/15 筋萎縮性側索硬化症(ALS)について
http://www.imasy.or.jp/~hsdl/mnd/als.html
執筆とご協力:
五十嵐 直敬/高速推進研究室 保健士/看護士
(前北里大学東病院神経内科病棟勤務/横浜市内の訪問看護ステーション前所長)
三好正堂/浅木病院(福岡県)院長/医師
参考文献:「今日の診療96年度版」医学書院/月刊「神経治療の進歩」医学書院/月刊「神経治療学」神経治療学会誌/「標準看護学講座・社会福祉」金原出 版 ほか
Copyright & Designed by: High-Speed Drive Lab. 1997 より

問題点
▼人工呼吸器装着/気管切開と延命治療
呼吸が困難になった場合の人工呼吸器装着/気管切開は,患者にも家族にも精神的・経済的に大きな影響を与えます.
気管切開は,発声しにくくはなりますが工夫により会話可能ですので,呼吸困難があれば安心して受けて良いでしょう.もし必要がなくなれば,喉の穴を塞いで元通りにできます.
最近は家庭用の人工呼吸器が登場し,利用しやすくなっています.人工呼吸器は一台数百万円,レンタルで月5万円以上と高価ですが,レンタルの場合は健康保険が適用され2-3割負担で済み,かつ特定疾患を申請すれば公費負担となり,最低限の経済的負担で人工呼吸器を利用できます.
ALSは運動神経が動かしている筋肉以外に影響を与えないので,手当てが良ければ呼吸器装着後も相当な延命ができます.
最近は呼吸療法が非常に進歩し,気管切開せずに呼吸苦があるときだけ補助呼吸器を使うことができます.これは発声機能を温存でき,気管切開口からの感染も起こらないので有効です.
現在,遺伝子の面からの原因究明が急速に進んでおり,コミュニケーションツールの発達により尊厳を持って生きることが可能ですので,人工呼吸器を装着してでも生き抜き治療法開発を待つ価値はあるといえるでしょう.
▼コミュニケーション障害/社会性・人間関係の喪失
呼吸が困難になって気管切開したり呼吸器を付けると,声を出すことがやや難しくなりますが,全く会話できないわけではありません.
会話および移動能力(歩行)の障害により,社会との関わりや友人などとのコミュニケーションが障害されます
患者にとってコミュニケーション手段の喪失は非常に苦痛であり,看護・介護にも支障があるので,意思を伝える工夫が必要です.
動く所を使って,筆談や指文字,文字盤を指差す,透明文字盤を目で追う,パソコンの利用など,不完全ながらコミュニケーション手段はあります.
最近は電子メールやホームページなどインターネットと特殊な入力装置により,全身がマヒし寝たきりでも他者との交流や外部の情勢を知ることが可能です.
▼介護負担
麻痺が進むと,自力で何もできないため介護が非常に大変になります.
訪問看護ステーション,自治体のヘルパーなどが利用でき,介護負担を軽減できます.
介護者の休養も重要です.市町村によるショートステイ(一時入院)制度がありますので,適宜利用し介護者の休養と患者さんの気分転換をすると良いでしょう.
▼経済的負担
ALSは働き盛りの年代に多いので,収入・家事に重大な影響が生じます.
厚生省指定の「特定疾患」のため治療費は公費負担ですが,差額ベッドや消耗品は自己負担です.特に入院すると経済的負担は月数万から数十万円になる場合もありますが,数千円のことも多く,経済的負担は場合によります.

◆1998/00/00 橋本みさお 「人権侵害ですよ」
  http://plaza9.mbn.or.jp/~sakurakai/jinnken.htm

 (医師法)「……4章17条の「医師でないものは医業をなしてはならない」を根拠に、ヘルパーの医療行為を禁止するなら、早急に、医療行為の必要な患者に対して医師を派遣せねばなりません。
 厚生省にたずねると「吸引などは医療行為なので医師、看護婦以外が行なうのは違法」とのこと。
 いったい民間の看護婦派遣会社の費用を知っているのかしら。
 それ以前にALSを初めとする難病患者の現状を把握しているのでしょうか? 
私はALSを発病して12年、5年前に人工呼吸器をつけた時、長期入院可能な病院を半年ほど懸命に探したけれど、一つもありませんでした。
 幸い我が家は、夫の収入を介護費用にできる環境にありましたが、中学受験の娘がいて介護費用を出せる家庭は少ないのです。
 話を戻して、私的に看護婦さんを依頼すると時給2500円前後、毎月180万円ほど、とても一般人には払えません。でもALSは、貧富の差なく人を選ばず10万人に3人から4人、律義に発病するのです。[…]
 人権侵害と言いたいのは、呼吸器を諦めて死んでいく7割の患者の人権はもとより、患者を家族に持っただけで介護を強いられ、睡眠さえ保証されない家族の人権です。
 「家族がいるから介護人を派遣しない」「ヘルパーは派遣するが、吸引は家族がするように」 だったら家族はいつ眠るのよー! 」

秦茂子・祐司 19981203 「ALS病患者の現状と支援体制への期待」

 「福岡県重症神経難病患者入院施設確保等事業」運用開始記念事業
 ー難病患者とその家族の生活の向上を目指してー  福岡県庁講堂
 http://www.ashibi.com/wv/hata.htm
 「ALS患者は、24時間そばにいる介護が必要で、しかも大変手がかかります。今のホームヘルパーによる短時間介護ではなく、少なくとも半日そばについてほしいと思います。そうしたら、家族は、勤めや学校を続けながら介護のローテーションが組めます。
 そして吸引もしてほしいのです。吸引は看護婦さんしか出来ないという点に困っています。吸引は注射と違って誰でも出来ます。現に、我が家の娘も小学生の時からやっています。患者のためを思って、誰がやってもいいことにしてほしいのです。」

『JALSA』045号(1998/12/10)

□「厚生省あてに「新しいサービス利用制度の在り方」について 当協会の見解(意見・要望)を回報
 11月2日、厚生大臣官房障害保健福祉部企画課から、現在、障害者3審議会合同企画分科会により審議されている「新しいサービス利用制度の在り方」に対する当会の見解を11月18日までに文書により提出してほしい旨の依頼がありました。
 これに対し、当会としては、時限性もあり、会長、副会長ほか数名の役員に諮ったうえで、以下のとおり意見、要望をまとめ会長名で回報しました。
平成10年11月18日
厚生省大臣官房
 障害保健福祉部企画課 御中
日本ALS協会
会長 松本 茂
ご来照の事項につき回報の件
去る11月2日受理いたしました貴課からの照会事項につき、当会としての見解を左記のとおり回報します。よろしくお汲み取りのうえ今後の詰めに活かしてくださるようお願い申し上げます。


〔…〕
3。特に、人工呼吸器装着の患者は、一般障害者の介護のほかに、意思伝達の支援、人工呼吸器の管理(注)、微妙な体位変換やたんの吸引などの特別な介護サービスが24時間必要で18<19ある(入院者も在宅者も同じ)点を重視していただきたい。
(注)手足の機能が衰え、ナースコールも押せなくなった患者にとっては、人工呼吸器のアラーム(警報音)が他人に生命の危機を知らせる唯一の手段であるので、常時、点検が必要であり、かつ、介護者が近くにいることが必須条件。
4。利用者がサービス提供者を自由に選択できるためには、サービスの十分な供給の確保が必要であるが、特に人工呼吸器装着患者の場合は、前記の特別な介護サービスが必要であるので、特別な介護技術に熟達した介護人を育成(育成のための研修事業も必要)し、かつ量の確保を図っていただきたい。
以上
編注:この意見書は、12月14日の合同企画分科会に参考資料として配布されることとなりました。」(p18-19)

『JALSA』045号(1998/12/10)

「1998.11
わが協会組織の現状と当面の課題等
[…] B在宅患者の介護に当たる家族の負担を軽減するため、吸引措置を医療行為ではなく、療養生活上の不可欠行為として広く取り扱えるよう改めること。」(p27)

◆1998/ 唾液吸引器のご紹介
 http://homepage3.nifty.com/masasi/old_hp/suction.htm
だ液吸引機の取り扱いについて
この度,平成10年(1998年)よりALS北海道支部で取り扱って参りました「だ液吸引機」は,下記のシースターコーポレーション社が,利益を度外視して「従来より優れた製品」を,今までと同価格で販売していただけることになりました.従ってALS北海道支部は取り扱いを停止し,業務をシースターコーポレーション社に引き継いでいただくことになりましたのでご了承下さい. ALS支会北海道支部


◆1999/**/** 日本ALS協会1999年度活動方針
 「…いわゆる医療行為とされているものを在宅療養の場合は必須ケア行為として認め、講習等を受けた者であれば訪問介護者が行えるようにすることを求めます。」(1999年度活動方針、『JALSA』47:38)

「<改善要望項目>
1. 「在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪問看護治療研究事業」においては、主治医(かかりつけ医)が複数の訪問看護ステーション等に指示書を発出することができるようにして下さい。
 一本事業は昨年度より、診療報酬とは別に年260回の訪問看護ができるように配慮されたものですが、複数の訪問看護ステーション等からの看護婦(士)の派遣が禁じられているため、マンパワーの不足から極めて限られた患者しか活用できていないのが実情です。
『JALSA』048号(1999/10/27)

□「厚生省あてに「要望書」を提出
JALSA'99第11号
厚生省 大臣官房障害保健福祉部長 今田寛睦殿
    健康政策局長       小林秀資殿
    保健医療局長       伊藤雅治殿
    老人保健福祉局長     近藤純五郎殿
日本ALS協会 会長松本茂
要望書
[…]
U。在宅療養上の改善要望
[…]
2. 痰の吸引や経管栄養等のいわゆる医療行為とされている行為を、医師の教育を受けたホームヘルパーが行えるようにして下さい。
 ―患者によっては吸引を頻繁に要する場合があり、24時間の訪問看護体制が整っていない現状では、家族は休む間がなく疲労困ぱいしております。教育を受け熟練したヘルパーが吸引等を行えるようにし、家族による看護と介護の負担を軽減させることが患者を救うことにつながります。」(p.10)

◆1999/09/24 「総務庁が厚生省に勧告(ヘルパーが医療類似行為をできるよう)」
 『月刊 全国障害者介護制度情報』1999年10月号より引用

 「総務庁は9月24日、介護保険に関連して施設やヘルパー制度に関する8項目の勧告を行いました。その中で、ホームヘルパーの項目では、ヘルパーがガーゼ交換や検温など、医療に類似する行為を、効率化を図る観点から、なるべく広い範囲で行えるように、具体的に示すように求めています。
(この記事では、医療行為ではないが、それに近いものを「医療類似行為」と表現します)。

勧告の内容(該当部分のみ) (7)介護などサービス業務の充実及び効率化を図る観点から、身体介護に伴って必要となる行為をできる限り幅広くホームヘルパーが取り扱えるよう、その業務を見直し、具体的に示すこと。

 総務庁の厚生省担当(室長補佐)に聞くと、「普通に家族が、研修を受けないでやっている行為などは、ヘルパーで扱えるように」「具体的に示すことと勧告は求めています」ということでした。
 人工呼吸気利用の全国の自立障害者などにとっては、仮に「ガーゼ交換はOK、吸引はだめ」などと具体的に回答が出たりすると、かえって迷惑な話になります。
 現在は、医師法で、「ここまでは医療行為で、ここからが医療行為でない」と規定されていないため、グレーゾーンについては、事実上ヘルパー制度の実施主体の自治体の裁量に任されており、また、法律で規定されていないので、国や自治体が仮に「やらないでください」と言おうが、自薦ヘルパーなら自由に行うことができます。医師法上は、家族やボランティアなど「介護を業としていない者」が行うのも自由ですので、「その瞬間だけボランティアになります」などと言っておけば自治体も何も言えません。
 仮に国で、「ガーゼ交換はOK、吸引はだめ」などの回答が出ても、医師法は変わっていないわけですから、いままでと同様に自薦ヘルパーは吸引等を行えばいいのですが、それにしても、このような回答が出ないように厚生省と交渉しておく必要があります。
 当会では、医療類似行為を自薦のヘルパー(など)で行っている障害者の方の情報を募集しています。吸引や人工呼吸器以外で、具体的に「だめなもの」のリストに入れられたら困る、というものがあれば、制度係0077−2329−8610までご連絡ください。」

◆2000/02/07 「医療類似行為関連の交渉」
 『月刊 全国障害者介護制度情報』2000年3月号より引用

 「医療類似行為関連の厚生省交渉の報告

 2月7日に医療類似行為関連の交渉を7団体合同で行いました。(2月号で
紙面の都合で報告できませんでした。)
参加者
 厚生省からは、健康政策局医事課(医師法の考え方の担当)の法令係長、老
人保健福祉局老人福祉計画課法令係主査(今回の総務庁勧告に対する回答取り
まとめ担当)と、障害福祉課身障福祉係長に出席していただきました。
背景
 最近、ヘルパーの医療類似行為に対して、一般ヘルパー業界や民間事業者か
らの規制緩和の声が出ていますが、そんな中、総務庁から「どこまでがヘル
パーのできる行為か具体的に示せ」という勧告が出ました。人工呼吸器利用者
の吸引などは、長時間介護に入る自薦ヘルパーには簡単でも、たまにしか派遣
されない一般ヘルパーに担わせるには問題が多く、「具体的に示し」たら「だ
めです」という回答になってしまうことが明らかでした。
結果
 まず交渉に参加した人工呼吸器利用者(単身24時間介護)2名から生活状
況の説明をし、次に、ベンチレーターネットワークの人工呼吸器利用者の生活
資料を見せ説明しまた。
 さらに、吸引等医療類似行為は、全身性障害者の1人暮し運動がはじまった
70年代から自薦介護人が行っており、さらに、「本人の手のかわりとして
やっている」「不特定多数に対してやっているわけではない」という2点を説
明しました。また、訪問看護婦や訪問医は人工呼吸器の設定を間違えて帰る
が、障害者と自薦ヘルパーがそのつど直しているという事例を出して、長時間
介護に入っている自薦ヘルパーは一般ヘルパーとは違うので切り離して考える
べきだと説明しました。
 医事課は、「今までもグレーゾーンということでやってきた」「今後もグ
レーのままがいいと思う」「はっきりとは(総務庁には)回答できないと思
う」と話し、老人計画課も、吸引などについては、はっきり書かないことには
異論はないようでした。
 何一つ回答しないわけにはいかないということので、「薬やガーゼ交換程度
はいいですよ」とだけ書けばいいのではないかと提案しました。総務庁への回
答が3月末のため、まだ回答方針の検討に入っていないということでしたが、
ほぼ同じ認識になったので交渉を時間内に終えました。(自治体が吸引OKの
方針でも、国はダメとは言わないということも確認しました。但し、自治体が
厚生省に問い合わせたら、一般的回答としてダメといわれます)。
(次ページは当日の要望書です)
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厚生大臣殿
平成12年2月7日
(仮称)常時医療類似行為介助を要する在宅障害者連絡会

構成団体 
ベンチレーター使用者ネットワーク(札幌市)
全国自立生活センター協議会
全国障害者介護保障協議会
静岡障害者自立生活センター
ヒューマンケア協会(八王子市)
自立生活企画(田無市)
障害者自立生活支援センターピアネットあおもり

連絡先:全国障害者介護保障協議会
東京都武蔵野市境2-2-18-302
TEL0422−51−1566
FAX0422−51−1565
要望書

総務庁が11年9月24日に厚生省に対して行った「要援護高齢者対策に関す
る行政監察結果報告に基づく勧告」の(7)番の「『医療類似行為のどこまで
がヘルパーの行う業務で、どこからがヘルパーの行えない業務か』を具体的に
示すこと」の件について

 当会の構成団体には、24時間要介護で単身生活を行う在宅の全身性障害者
で人工呼吸器利用者などがおり、全身性障害者介護人派遣事業(ホームヘルプ
国庫補助利用制度)の自薦の介護者や自薦のホームヘルパー(ホームヘルプ国
庫補助利用)が吸引等を24時間、10分〜20分ごとに行っています。ま
た、単身の全身性障害者の多くが導尿、摘便、経管栄養、人工呼吸器の操作を
(障害者が指示をして)自薦の介護者(上記同様ホームヘルプ国庫補助利用制
度による者も含む)に行わせています。これらは、全身性障害者の1人暮しの
運動が広がった1970年代からずっと行われてきました。(自薦介護人とは、各
障害者が確保した専用の介護人で、最重度障害者の場合、例えば、週20〜40時
間、数年以上にわたって介護を行う。介護内容は障害者の指示によって行う)。
 法律ではどこまでが医療行為で、どこからが医療行為ではない(医療類似)
かは規定されていないため、一部自治体の障害者部局は「吸引程度では医療行
為ではない」という方針(医療類似行為と呼んでいる)で、全身性障害者介護
人派遣制度(ホームヘルプ国庫補助利用)などで、吸引等を行うことを認めて
います。
 厚生省が総務庁勧告への回答で「具体的に示す」と当会の障害者は生活が維
持できなくなる可能性があるので慎重な対応を求めます。又、今後医療類似行
為に関係する内容で方針の確立や変更を行う場合は、障害当事者団体に事前に
相談すること。
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『JALSA』049号(2000/02/11)

○「ベンチレーター(人工呼吸器)と共に自立生活」 ベンチレーター使用者ネットワーク(J.V.U.N.)代表 佐藤きみよ
 […]
まずは自分の呼吸障害をよく理解すること。そして、自分のベンチレーターの種類や換気量等の設定値をきちんと自己管理して介助者に伝え、医師の指導のもと、吸引等の医療的ケアや人工呼吸器のセットアップなどを専従の介助者がマスターできるように研修を行えば、自立生活は必ず実現できるのです。また、病院や療養施設よりも、在宅生活の方が、安全性においてもコスト的にみても優れているのです。
 […]
10.介助体制
私の自立生活の介助体制については現在札幌市の制度では1日12時間分が保障されていますので、3〜4人分の介助者を有料で雇っています。足りない部分はボランティアや友人で埋めています。1日24時間使用のベンチレーター使用者にとっては、吸引やベンチレーターのトラブルを考えると24時間の介助体制が必要なことはいうまでもありません。〔…〕」
◆2000/04/08 「ホームヘルパーの簡単な医療行為黙認へ たんの吸引やガーゼ交換など――厚生省」
 『毎日新聞』

 「厚生省は、法律上認められていないホームヘルパーの簡単な医療行為について、介護現場での判断に任せて黙認する方針を固めた。
 これまでも利用者や家族の要望で、ヘルパーがたんの吸引などを違法に行わざるをえないケースがあり、しばしば混乱が発生。このため総務庁は介護保険制度の導入を機に、法的にヘルパー業務を幅広く認めるよう同省に勧告していた。
 医療行為は医師法などで医師や看護婦などに限られる。しかし、総務庁が一昨年以降、事業者などを対象にした行政監察でホームヘルパーの業務を調べた結果、家族らから傷口のガーゼ交換や体温・血圧測定、たんの吸引などの医療行為を求められることが多く、処置を断ってトラブルになるケースもあった。
 在宅介護を支援する介護保険制度では、ヘルパーの果たす役割はこれまで以上に大きく、総務庁は制度を円滑に進めるため、身体への危険度が低い医療行為はヘルパーも行えるよう昨年、見直しを勧告していた。
 厚生省も当初、具体的な事例で介護と医療行為の線引きを示す方向で検討していた。しかし、看護婦が自宅へ出向く訪問看護サービスの基盤がまったくなく、ヘルパーに頼っているような過疎地では、線引きによってかえって大きな混乱を招きかねないとして、あえてグレーゾーンを残すことにしたという。
 厚生省計画課は「現場のとまどいは承知しているが、良識の範囲で現場判断にゆだねることが最も実情に即していると思う」としている。
 これに対し、日本ALS(筋委縮性側索硬化症)協会近畿ブロック副会長の豊浦保子・梅花女子短大助教授(生活福祉学)は「現状ではヘルパーの良心で法的に禁じられている医療行為を緊急避難的に行っており、責任の所在はあいまいだ。ヘルパーの教育プログラムを充実させたうえで、簡単な医療行為は認められるべきだ」と話している。
 家族が簡単な医療行為をする場合は、ヘルパーのように業務としていないため、法的には問題ない。【出水奈美】」

『JALSA』050号(2000/04/27)

□「毎日新聞記事「ヘルパーも医療行為」について
○4月8日(土)の朝刊で表題タイトルの報道がなされ、私たちの希求に叶う朗報と喜んだのもつかの間、4月10日(月)厚生省は、これを否定するとともに、「今後引き続き検討していく予定」との情報(要約を下に掲載)を発出しました(吸引問題などの改善に向けての協会の取り組み方については52、53頁をご覧ください)

ヘルパーも医療行為
介護現場 ガーゼ交換や血圧測定 厚生省方針
厚生省は、法律上認められていないホームヘルパーの簡単な医療行為について、介護現場での判断に任せて黙認する方針を固めた。これまでも利用者や家族の要望で、ヘルパーがたんの吸引などを違法に行わざるをえないケースがあり、しばしば混乱が発生。このため総務庁は介護保険制度の導入を機に、法的にヘルパー業務を幅広く認めるよう同省に勧告していた。
 医療行為は医師法などで医師や看護婦などに限られる。しかし、総務庁が一昨年以降、事業者などを対象にした行政監察でホームヘルパーの業務を調べた結果、家族らから傷口のガーゼ交換や体温・血圧測定、たんの吸引などの医療行為を求められることが多く、処置を断ってトラブルになるケースもあった。
 在宅介護を支援する介護保険制度では、ヘルパーの果たす役割はこれまで以上に大きく、総務庁は制度を円滑に進めるため、身体への危険度が低い医療行為はヘルパーも行えるよう昨年、見直しを勧告していた。【出水奈美】」

各都道府県介護保険担当課御中
介護保険最新情報
vol.65
平成12年4月10日
厚生省介護保険制度実施推進本部
※管下市町村に速やかにFAX送信していただきますようよろしくお願いいたします。

毎日新聞記事「ヘルパーも医療行為」について
○平成12年4月8日(土)に毎日新聞朝刊に、「厚生省は、ホームヘルパーの簡単な医療行為について介護現場での判断に任せて黙認する方針を固めた」との記事が掲載されましたが、厚生省において、こうした事実はありませんので、ご連絡いたします。
○なお、医療的なケアを必要とする要介護者に対するホームヘルプサービスにつきましては、今後、訪問看護等との連携のあり方について具体例を示すことが可能かどうかなどを検討していく予定としています。」(p51)

『JALSA』051号(2000/09/20)

 「厚生省に対し理事会メンバー有志による要請行動を実施
○本部事務局では、多くの理事方に選挙権行使問題訴訟の第二回公判(七月十日(月)一六時半〜、東京地裁)を傍聴して頂きたいとの意図もあって、本年度第一回理事会開催日を公判日と連続するよう当初予定の七月八日(土)から一日繰り下げ、七月九日(日)に変更したいと考え、松本会長に伺いました。これに対し、会長からは「大変結構だが、折角の機会なのだから傍聴までの時間を活かし、厚生省への陳情行動を併せ行うことはできないものか」との有難く前向きな示唆を頂戴しました。

○要請事項の中で、最優先課題としている「在宅療養の場における吸引行為等9<10の問題解決」ならびに「複数の訪問看護ステーションの活用容認」などについて、前任時来、ご理解が深い、津島雄二新厚生大臣の下で一日も早く英断が下るのを皆で期待しましょう。

要請書 平成12年7月
T。介護保険をより良い制度に育成し、在宅療養の改善につなげるために不可欠な重要事項
1. 主治医により在宅人工呼吸療養(HMV)への移行、継続が適切と判断された場合に限っては、吸引、経管栄養注入等の行為を生活必須行為と位置付け、医師・訪問看護婦等による指導・訓練を経た家族以外の介護職(者)にも担えるよう、新たな指針を打ち出して下さい。
2. 特殊疾病対策に基づく訪問看護婦(士)の派遣については、マンパワーを確保するため主治医からの指示書を複数の訪問看護ステーションに対し発出し得るように改めて下さい。
3. 重症難病患者にとって入院中であれば全額公費負担でカバーされるものが、在宅に移行すると少なくない自己負担(衛生材料費、介護保険費用)を余儀なくされるという欠陥と矛盾を解消して下さい。
4. 「全身性障害者介護人派遣事業」について、本事業を採用していない自治体に対し、積極的導入を奨励するとともに「ALS等在宅優先医療機器使用患者」は全て利用できるよう条件を見直して下さい。[…]」

◆2001/01/00 「人工呼吸器利用者への派遣」
 「自薦ヘルパー(パーソナルアシスタント制度)推進協会の事業者向けマニュアル(その3)」より
 『全国障害者介護制度情報』2001年1月号掲載

 筋ジスやALSなどの進行性の障害が重度になり、自力で呼吸できなくなる
と、人工呼吸器を使用する事になる場合があります。人工呼吸器とは、肺の筋
力が弱って息が十分にできなくなり、体内に酸素が不足して来る時に、機械を
使って肺に空気を送り込むものです。
 自力でどのくらい酸素が取り込めるかにより、使用する機械の種類も違いま
すし、送り込む酸素の量も違ってきます。当然、障害が重くなるにつれて変化
していくものでもあります。
 日本では人工呼吸器を使用している人は、過半数が病院に入院したままで
す。在宅で人工呼吸器を使用している人も増えてきました。(例えば北海道で
は100人ほどがいます)。在宅の場合、ほとんどは同居家族がいて機器の管
理を行っています。
 一方、自立生活運動を行なう障害者団体の中には一人暮らしで人工呼吸器を
使用する障害者を自立支援しています。団体設立から1年未満で人工呼吸器利
用者の自立支援を行なった団体もあり、きちんと取り組めば、決して不可能な
ことではありません。

 人工呼吸器利用者の自立支援や人工呼吸器の情報はベンチレーター利用者
ネットワークの人工呼吸器マニュアルをご覧ください。

 この項では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などで、発語による会話ができな
い障害者で、さらに呼吸器を使う、特に重度の障害者への介助者の派遣につい
て述べていきます。(注:呼吸器利用者で会話できる障害者はたくさんいます
がここでは呼吸器をつける前から発語ができなくなった方の例を述べます)。


介助サービスの前に
 まず、障害者が地域で暮らすことを選択した場合、周囲(家族、医者など)の
人たちが、心配して在宅は無理だということがあります。このようなときには
自立生活センターでは、当事者のはっきりした意思のもとで、制度的にも技術
的にも在宅生活は可能ということを実際の例を挙げて当事者と一緒に周囲に説
明する事もあります。周囲はもしものときの責任を誰がどう取るのかと心配し
ますが、このような場合は当事者が自分の意思であることをきちんと話して説
得するしかありません。医療、看護、介助が連携する事になるので、信頼しあ
える関係をきちんと作っていきます。(当事者事業所のジェネラルマネージャ
ーとコーディネーターが病院と話をつけます。最終的には当事者の意思に沿っ
て、介助者は家族と同じと考えてもらい、病院での技術研修などを受け入れて
もらいます)。

介助者を選ぶ
 障害者自身がその時々で何をして欲しいかの指示を出しますが、話ができな
い、体が動かないという状況の中で、呼吸器の管理と、吸引の作業を介助者が
していきますので、介助者を誰にするかということはかなり重要な事です。す
なわち、障害者が何を求めているかをきちんと理解し、相手の身体状況を把握
した上で手早く確実な作業ができる介助者が求められます。また24時間介助
を必要としますので、夜に介助に入る人は自分が寝られるということはほとん
どない事を自覚しなければなりません。なぜなら、パソコンを使ってコミニ
ケーションをとっていても、マウスの位置が少しずれてしまうなど、いつも使
える状態にあるというわけではありませんし、瞬きで伝えるときには、いつも
相手を見ていないとわかりません。自分が寝てしまうと、指示が出ても分から
ないままになってしまう可能性があるからです。このような細心の注意を払わ
なければならない介助内容は派遣される介助者の体力的なことにも配慮が必要
となってきます。また、万が一介助者が都合で休むような事になったとき、代
わりに入る介助者の体力的な負担をできる限り少なくするために、また、いつ
でも介助に入れる人を確保しておくためにも、普段からなるべく多くの熟練の
専従介助者が関わっていたほうが良いといえます。以上のような事を考えて介
助者を選んでいきますが、実際の作業は病院での研修を経て(訪問看護婦から
習う場合もある)から、介助に入る事になります。
 病院では、呼吸器については、その仕組み、管理の方法、アラームが鳴った
時の対処の仕方などを学びます。また、吸引については、吸引器の使い方、清
潔でなくてはならない事の意味、吸引のやり方などを学びます。また障害の進
行が進んでいる場合には、経管栄養や胃ろう(胃の部分に穴をあけ直接チュー
ブを入れて口、食道を経ないで栄養剤を入れる)が必要になったりしますので、
その処置も習得する事になります。
 病室で実習する事になる場合は、介助者が多いと一度に研修できないので、
何人かに分けて研修します。また一度ですまないことが多いので何回か研修を
重ねます。日時など病院の担当者と相談しながら計画を立てます。

身体状況を把握する
 ALSや筋ジストロフィーなどの筋力の障害は、呼吸ばかりが困難になるだ
けではなく、体中の筋力が落ちてくるので、手足が自分の力では動かない、内
臓の働きも弱ってくるなど個々の状況により身体状況はずいぶん変わってきま
す。比較的緩やかに筋力が落ちていく場合には、自力呼吸の程度により、気管
切開をせず、マスク型の呼吸器を使用したり、チューブで鼻に直接酸素を送る
などして対応できる時期もあります(この場合は会話可能です)。また、一日
中酸素を送らなくても、1日1回、2時間程度でも充分という事もあります。
しかし、ALSの場合などは、発病からの進行がとても早く、1年や2年で気
管切開をして呼吸器を使っていく事も十分にあります。この時には発語をする
ための筋力がすでに無くなっていることが多く、または呼吸器利用開始後数年
で会話をする喉の筋力がなくなります。会話を通してのコミニケーションをと
る事はできません。しかし、コミニケーションは、会話によるものだけではあ
りませんので、時間はかかりますが、パソコン、文字盤などを使いながら十分
に意思の疎通は可能です。
 また、自力で身体を動かす事もできませんので、体位交換も頻繁に必要にな
ります。この場合の体位交換は、かなり身体が落ち着く場所が厳密ですので、
位置がきちんと決まらないと、何度も変える事になります。さっき変えたばか
りなのに、また体位を変えてくれといわれると、つい「またですか」と言いた
くなる介助者もいるようですが、このときには本人も自分の身体をどうしてい
いか分からなかったりしている事もあるので、何度でも、落ち着く位置に変え
ることが必要です。体位交換をきちんとしないと、辱創を作る事にもなってし
まいます。(辱創=血液が回らず、細胞が壊死していく 床づれともいう)

呼吸器・吸引器の管理
 介助に入る障害者がどんな機械を使っているのか把握します。気管切開をし
て呼吸器を使っている場合は、痰が通常よりも出やすくなっていますので、呼
吸器と同時に吸引器も使います。呼吸器は基本的に、呼吸の回数、送り込む酸
素の量の設定を医者がしますので、介助者は機械がきちんと働いているのか、
空気が漏れていないかをチェックし、異常があればあらかじめ説明を受けてい
る通りの適切な対応をする事になります。しかし、吸引器は、気管切開をした
部分から、チューブを入れて痰をとる作業をしますので、その時々で介助者が
気をつけなければならない事がたくさんあります。

吸引器の使用について
 吸引器の使用方法や吸引のやり方は、病院か訪問看護婦から介助者一人一人
が説明を受け、さらに研修を受けてきちんとできるようになるまで練習しま
す。
 気管切開をしていると、その部分から不潔になる要素(雑菌、ごみなど)が
入り込む事を防がなければなりません。口の中とちがい、直接体内に入ってし
まうので、肺炎などにすぐなりやすくなります。そのため、清潔な手袋をは
め、カテーテルも殺菌したものを使い一度気管内に入れたら、痰が取れなくて
も再び使う事はせず、新しいものと交換するという指導をする病院もありま
す。
 吸引をするときには気切部分(気管切開したところ)から一時的に呼吸器を
はずします。自力呼吸がどのくらいできるかによりますが、かなり障害が進行
しているばあには10秒くらいを目安にして、手早くカテーテルを気管に入
れ、側壁についている痰をカテーテルをまわすようにして取っていきます。一
度でうまく取れなかったら、もう一度同じようにしてカテーテルを入れなおし
ます。

体位交換について
 体位交換をするときには、呼吸器が外れないようにします。外れやすい機種
の場合は、あらかじめ呼吸器をはずして行います。はずしたときには、やはり
手早く作業を行う必要があります。どの位置にするのか確かめて、細部にいた
るまできちんとクッションやタオルなどを使い位置を決めます。位置が決まっ
ていないままにすると、かなり頻繁に何度も変える事になりますので、そのと
きには何度でも体位を変えます。

まとめ
 このような重度の障害者は地域でサポートする体制がないため在宅で暮らす
選択がなかなかできないのが現状です。しかしどんなに重度の障害をもってい
ても自分の意志で地域で暮らす選択ができる事はとても重要です。介助者への
医療処置に関する正しい知識を習得するための研修をはじめとして、地域で支
えていくための理念などをしっかり伝え、医療、看護、介助と連携を取りなが
ら在宅生活を支える体制をとっていきます。
 推進協会加盟事業所では、このように、どんな重度な障害者からの依頼が
あっても、からならず対応することを憲法にして、(団体の介助システムさえ
変えていき)、対応することが求められます。

◆2001/05/00 「医療類似行為Q&A」
 『月刊 全国障害者介護制度情報』2001年5月号より引用

「Q.人工呼吸器を利用しています。吸引は医療行為なので、ヘルパーはやって
はいけないと言われました。本当でしょうか? 吸引のできないヘルパーが来
ても、役に立ちません。

A.吸引は医療行為ではありません。「吸引は医療行為なので、ヘルパーの吸
引行為はやってはいけないとされている」と言う方がいますが、これは法律を
よくわかっていない方です。吸引は医療行為でなく、いってみれば医療「類
似」行為です。医師法では、明確に医療行為の範囲を規定していません。法律
論では通常、法律に書いていないことはやっていいことです。これが明確な法
律違反であれば、警察・検察が動き出します(たとえば、手術を行うヤミ医者
行為など)。
 A:「法律的にやってはいけない」ということと、
 B:「ヘルパー制度でやってはいけない」
 ということはまったくの別物です。Bの例では(介護保険ヘルパーでは)草
むしり*、大掃除、車の洗車などがあります。吸引はこのBに入ります(法律
で禁止されてはいません)。Aの例には、ヘルパーが泥棒をする、ヘルパーが
手術をする、などがあります(そんな人いない?)。こちらは警察出動です。
厚生労働省管轄ではありません。警察庁です。
(注:障害ヘルパーでは草むしり等は禁止されていない)
 吸引をやってはいけないという説明のさい「法律違反だから」という人は、
よく法律を知らない方です。やってはいけないのは、ヘルパーにお金を出して
いる厚生労働省が「国の金でやってはいけない」と言っているからです(です
から、自分でお金を出してヘルパーを雇う分には、吸引も草むしりも自由にで
きます。自治体が単独でお金を出している制度の場合も、吸引OKが多いで
す。これらは法律違反ではないからできるのです)。

※注:厚生労働省がやってはいけないと言うのは、いいかげんな一般ヘルパー
事業者に解禁したら死者がたくさん出るからです。全身性障害者の自薦の介護
人が障害ヘルパーや介護保険ヘルパーの場合は、厚生労働省医事課は「(吸引
していても)違法ではない」「やめなさいとは言わない」と言って、容認して
います(当会も入った2000年2月の人工呼吸器利用者のいる8団体合同交
渉で確認。2000年3月号に報告を掲載)。」

◆『JALSA』052号(2001/02/26)

□「介護保険実施に伴う在宅療養実態調査報告 企画調査部長 金沢公明
はじめに
昨年の八月下旬から九月上旬にかけて、全国の在宅療養を基本としている患者さんを対象に行った「介護保険実施に伴う在宅療養実態調査」の結果がまとまりましたので、紙上報告いたします。

二、個々の集計結果と分析
〔…〕
J喀痰吸引等(いわゆる医療行為)の実施状況
 在宅療養において吸引などが必要な患者さんは介護保険対象回答者の六二%(介護保険ホームヘルプサービス利用者の七一%)おられます。
 在宅における吸引等は医師の指導により、ほぼ全てのご家族が担われています。更に五二%の方がヘルパー、全身性等の介護人、私的有料介護人、親族等の無料ボランティアに依頼しています。(図11)
 また、看護婦(士)が六二%の患者さんに行っていますが、このことは吸引等等が訪問看護の大切な業務として位置付けられていることを示している半面、患者さんの実際の吸引実施回数に占める割合は低く(前述Iで訪問看護回数が週平均一〜三回)、必ずしも吸引等をカバーできているとは言えません。
 今回の調査で一番多かった要望が介護時間の長いホームヘルパーによる吸引の実施でした。
 経管で栄養摂取している方や呼吸器を装着している患者さんにとって、吸引は日常的に不可欠な行為であり、個人差はあるものの短い人では約三〇分に一度必要な方もおられます。そのため家族にとっては患者さんにから昼夜離れられず、喀痰吸引は介護負担のなかでも最も大きな比重を占めています。
 吸引のできる介護人の派遣がなければご家族の介護負担は軽減されません。
〔…〕
 三、まとめ
今回の調査により介護保険上で明らかになったこと
@  在宅療養を基本とされているALSの患者さんの九割が申請しており約八四%の方が介護保険を利用されている。
A  要介護度認定は患者さんの八四%が要介護五と四に認定されており、現行制度上では概ね妥当な審査がされている。
B  介護保険サービスはホームヘルプを八〇%、訪問入浴を六三%と多くの患者が利用しているがホームヘルプを利用してもヘルパーが吸引できないことや患者に習熟したヘルパーが少ないため家族の介護負担の軽減は少ない。
また、呼吸器装着患者の短期入所(ショートステイ)の受け入れ先が少ない。
C 介護保険利用負担額は一〜二万円が多く、以前より利用負担額が増えた方が五四%おり、経済的負担が重くなっている。そのためにサービスの利用を抑えている。
D 患者さん、ご家族の介護保険の総合的評価は「良くなった」と「悪くなった」がそれぞれ二割で全体としては経済的負担が増えた割には家族介護の負担は軽減されていないとの評価をしている。

患者さんご家族が切実に改善を求めていること
@ ヘルパーが行っている吸引を公的に認め、家族の介護の負担を軽減する。
A 介護保険利用者負担額の軽減
B 呼吸器装着患者が家族の付添い無しで短期入所(ショートステイ)や入院ができる環境の整備
C 患者の介護に習熟した介護人が選べ、夜間を含めて長時間利用できる介護人制度(全身性障害者介護人派遣事業等)の拡充
D 週一〜三回の利用にとどまっている訪問看護回数を増やせる様、訪問看護婦(士)の増員と併せ複数の訪問看護ステーションの利用を認める。

おわりに
〔…〕
これからの厚生労働省や自治体への働きかけに貴重な資料となります。
〔…〕」(p11-19)

「[付]
「介護保険実施に伴う在宅療養実態調査」患者さん、ご家族の意見
〔…〕
一、ヘルパー利用に関して
@ 吸引行為と家族の介護負担について
(声1)吸引のできるヘルパーがいなければ介護者は解放されません
(声2)ヘルパーを頼んでも家族がいなければならず介護者負担は変わらない
(声3)寝るわけにもいかず気兼ねにもなる
(声4)誰かが病気をしたら患者を看る者がいなくなる
(声5)現在は全くの素人を見つけ教えながら介護をして貰っている
A ヘルパーの働き方、質と量に関する意見
(声1)患者本人の食事づくりや部屋の掃除などしかできない
(声2)夜間のヘルパー派遣は無理でしょうか
(声3)滞在型で長時間夜勤してもらえるヘルパーがほしい
(声4)ヘルパーがある期間ごとに替ってしまう
(声5)ヘルパーは勝手気ままで横暴を極めている
二、家族の肉体的、精神的、経済的な負担の大きさ
(声1)八一歳の父が経済的中心で経済的負担もきつい
(声2)生活は苦しく、子供からの援助もないので、介護保険制度を全面的に利用できない
(声3)介護が高度になるほど対応が無くお金がかかる
(声4)介護保険になってありがたいことは全くなく、支払の金が増えただけ
(声5)介護保険はとにかくお金がかかる
(声6)介護保険を満額利用しても一ヶ月六五万の出費がある
(声7)家族介護の負担は保険導入前と変わらない
(声8)病気が進んで自己負担が増えたらどうすればよいのか。負担を軽くしてほし  い
三、訪問看護やショートステイの利用上の不満・要望について
@ 訪問看護について
(声1)訪問看護婦は短時間で帰り、定時に来ないが何も言えず情けない
(声2)介護保険開始後、訪問看護を減らされた
(声3)人数が足りずステーションは一か所しか利用できないため、折角の施策も絵に描いた餅である
(声4)複数のステーション利用を認めてもらいたい
A ショートステイについて
(声1)呼吸器を着けた患者はショートステイの受入れが無い
(声2)呼吸器装着等の全身性障害者がデイサービスやショートステイを利用する場合、家族同伴を要求される
(声3)夜間、たまにはゆっくり休みたいがショートステイで受入れてくれない
(声4)在宅介護が困難になった場合に受入れてくれる病院と施設がほしい
四、全身性障害者介護人派遣事業等について
(声1)介護保険で全身性障害者介護人派遣時間を制限しないで欲しい
(声2)全ての寝たきりの患者には全身性介護人派遣事業が利用できるように
(声3)仙台市の特別措置と宮城県のASL在宅療養介護人派遣事業
(声4)全身性障害者介護人派遣事業を全部のALS患者の制度として確立させてほしい」
(p20-25)

『JALSA』053号(2001/05/16)

□「「吸引問題」我が家の場合
東京都支部 松浦百合子
 私の父は、人工呼吸器をつけて在宅生活を続けています。ケアに入っているスタッフから「吸引行為」について質問を受けました。「自分が医療行為をしてもいいのだろうか?急変した場合はどうすればいいのだろうか?という不安があります。」というものでした。
 私達、家族の考えを伝えたところ次のようなレポートがきました。
 家族からの手紙「血糖値の測定・インシュリンの注射(父は糖尿病があるため朝・夕行っている)や吸引・呼吸器の回路交換など、本来家族がするように指導されたことを、すべて皆さんにお願いしています。皆さんには、指導された通りにやって頂いているので、私は安心して仕事ができるし、母も休息や気分転換の時間を持つことができます。もし、皆さんが引き受けてくださらなかったら、私達の生活や家族関係も全く違ったものになっていただろうと思います。私自身、なにもかもが父中心の生活ではないので、一番心配だった夫との関係も大事にできています。たまの休みには、父母の家に遊びに行くことが楽しみになりました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。もし、なにか質問や疑問があったら、聞いてください。私達は、皆さんとの信頼関係を築いてゆきたいと思っています。また、私達家族のことも、もっと知って頂きたいと願っています。」
 スタッフのレポート「茂氏(父)が在宅生活をすることで、家族の誰かが犠牲になることがないようにしたいというのが、ご家族の考えです。そうすることで、家族が介護の負担や犠牲を感じることがないし、茂氏も家族を犠牲にしていると思うことがないので、発病前と変わらぬ親子関係・夫婦関係を保つことができます。医療行為をご家族に担わせるような援助では、茂氏とご家族が望まれていることは実現できません。このご希望に添った援助をすることで、信頼関係が深まるし、もし何か起きたとしても、それで、援助者を責めることはないので安心34<35して援助に入ってくださいといわれて、心強く思いました。そして、ケア協会に援助を依頼して良かったと思ってくださっています。
 茂氏は、以前、(こういう体になってしまったら、何かあったらと心配していたり、遠慮していてはなにもできない)とおっしゃっていたそうです。茂氏は、生きることにとても前向きな方です。」
 先日、父の誕生会に援助していただいている皆さんもご招待しました。援助者の一人一人とは、よく話をしていたのですが、"この人たち全員が私達を支えてくれているんだ、一人もかけがえのない大事な人だ、全体がひとつになっている"と感じました。この人たちに支えられている父は、病気になったのはかわいそうだけれども、本当に幸福な人生だと思っています。」(p34-35)

◆咽喉部や気管カニューレ,気管内チューブなどの中の痰や分泌物を吸引する行為をヘルパーに特例として認めることに関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第74条によって提出する.
平成13年(2001)8月9日
参議院議員 渡辺 孝男
参議院議長 井上 裕 殿
http://www.jsdi.or.jp/~y_ide/001115mondai_kyuin.htm

◆立岩 真也 20041115 『ALS――不動の身体と息する機械』,医学書院,449p. ISBN:4260333771 2940 [amazon][kinokuniya] ※

 「日本ALS協会は国会、政府に働きかけた。二〇〇一年八月には参議院議長に議員が質問書を提出する。それに対して、九月、政府から吸引行為は「原則として医行為に該当」とする答弁書が示される(『JALSA』54:21-24)。これを、実際には行なってきていた行為を適法ではないとする見解をわざわざ出させてしまった、利口な戦術ではなかったと後に振り返る人もいる。
 次に医療行為とされるものについて不合理な制限をなくすための署名活動が行なわれた。二〇〇二年一一月、一七万人分の署名とともに厚生労働大臣に要望書が提出される。大臣は「前向きの姿勢」を示し、検討会を発足させて検討させると述べた。二〇〇三年二月から「看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会」が始まり、五月までに八回の検討委員会がもたれた。結果、吸引行為は許容されることになった。しかし許容されるのはALSの人に対する場合に限られ、そして許容される行為は吸引に限られ、またヘルパーの「業」としては認めないものだった。
 なぜ当然の方向に事態は運ばなかったのか。」(立岩[2004:316-317])

『JALSA』054号(2001/10/10)

□「巻頭言 陳情
 桝屋副大臣に陳情した。
 叶内、橋本、塚田、私と患者四人、熊本、金沢、梅田、川上、佐々木、大勢で押し掛けた。
 枡屋副大臣は、亡くなられた山口県支部の清水正男支部長と親しくしておられた。呼吸器をつけてからも、見舞いに行ってくれた。ALSのことが、よくわかってくれる副大臣だ。
 次のことを訴えた。
一、ヘルパーも吸引できるように。吸引してくれないと家族は、休むことも買物に行くこともできない。
二、ALSは長い闘病生活で、蓄えもなくなって、介護保険で介護度五となっても、十%の自己負担が重いため、半分しか使えない人がいる。自己負担を零か、せめて三パーセントにして欲しい。
三、早く法人にして欲しい。法人でないと、活動が制約される。全員一同、法人になることを、一日千秋の思いで待っている。
 枡屋副大臣は、一時間も陳情を受けてくれた。
 あとからもサポートをしてくれている。
 有意義な陳情であった。
日本ALS協会
会長 松本 茂」(p2)

□「坂口厚生労働大臣あて要請書を提出―枡屋副大臣に直接陳情を実施―
〔…〕
 これに対し、枡屋副大臣は、「ALSが加齢に伴う疾病として介護保険に組み入れられた当時、良かったと喜んだ一人だが、今や本当に良かったのかどうか疑問を抱かざるを得ない心境」と語り、次いで、「ALSは、政策医療として、国がきちんとみていなければならない難病」との持論を披瀝されたこともあって、陳情団の中によき理解者で何を話しても真摯に受け止めて下4<5さる、との安堵感が満ちました。
〔…〕
最後に副大臣からは「ご要請をいただいた点にはそれぞれに難しい背景や課題があって今日に至っている訳だが、今一歩踏み込んで新しい切り口でアイデアを出すかたちで検討させることとしたい」と約束して下さいました。
〔…〕
松本会長から枡屋副大臣にあてた陳情時のお礼のファックスに対し、副大臣から届いた返信のはがき

前略
御ていねいなお手紙をいただき恐縮しています。改めてヘルパーの医療的ケアの問題、介護保険料のこと、訪問看護のこと、そして法人化の問題について要請をいただきました。いずれも従前から私が深く感じていることであり、私自身の課題として取り組みを進めていることです。一歩前進できるよう、会長の思いを受けとめて頑張ります。」(p4-5)

□「平成一三年度総会の模様
松本会長挨拶
〔…〕
 次は介護の問題です。昨年、皆様のご協力をいただき「介護保険に伴う在宅療養の実態調査」を企画調査部が中心になり実施しました。その集計結果はJALSA52号に記載されております。その主な問題点を申しますと、
@ 介護保険で良くなった人は二〇%でした。介護保険前より利用料負担が増えた人は五四%もあり、これでは介護保険はありがたいとは言えません。ALSは重度障害、長期療養ですから、利用者負担は困難です。何とか、医療費のように無料にしてもらいたいのです。
A ホームヘルパーを利用しているALS患者の七一%は痰吸引の必要な患者です。三〇分おきに吸引をしなければ生きられない人が大半ですから、吸引のできないヘルパーさんに来てもらって8<9も、家族は助かりません。吸引は医療行為でなく、いまや生活必須行為ですので、一日も早く規制をといて吸引のできるヘルパーさんにしなければなりません。この問題は今年の最重点課題として運動します。
B ALSは頭脳は正常で個性的な生き方を望んでいる人ばかりですので「患者の介護になれた介護人を自選でき、夜間を含め長時間滞在型の介護人制度」である「全身性障害者介護人派遣事業」を七四%の患者が望んでいますので、厚生労働省に働きかけ、この実現に努力しなければなりません。現在東京都や一部の自治体では、既にこの制度をとり入れ、全身性重度障害者を支援していますので、私達自らも県や居住地の役場に働きかけるなど、全国的な運動にしていきたいと思います。
 〔…〕」(p8-9)

□「吸引行為に不可解な政府見解
○政府は、九月一一日の閣議で「吸引行為は医行為である」と位置付けたうえで、現段階においてとしながらも「医療関係資格を有していない訪問介護員(ヘルパー)が特例的に吸引行為を認めるについて検討している事実はない」などの見解を了承、内閣総理大臣から参議院議長に対し、答弁書を送付した。
 これは渡辺孝男参議院議員(公明、山形)が国会法第七四条に基づき質した「医師や看護婦による緊急対応が困難な場合、十分な教育を受けたヘルパーについては、特例を設けて吸引行為ができるような措置を求める」ことに対するものであるが、当協会が坂口厚生労働大臣に要請している希求(p6、要請書参照)などに照らし、不可解極まりないことと云わざるを得ない。
○この答弁書がどのような経緯、経過の下、したためられたものかは定かにされてないが、考え方のうえで欠落しているポイントや問題点を挙げれば次の通り。

@ 医療費の抑制が求められる中で、社会的入院を減らし、在宅療養への移行(社会復帰への途)を推進している立場でありながら、その受け皿となる介護保険制度をより良いものに改める熱意、視点に欠ける。―総務庁(現総務省)の勧告や患者団体からの切実な訴えに未だ何ら答えていない。
A 人工呼吸器装着患者が病院から在宅へ移行するに際し、主治医は主たる介護者(家族)に必要な指導を行っているが、医療関係資格を有していない者による介護を前提としているこうした現実をどうみているのか不明。
B 吸引行為は資格があるかどうかが問題なのではなく、"実践的な習練を積む"ことと、"患者を支える熱意"の二点にあることを理解していない。―医師、看護婦であっても、ALS等呼吸器患者に接して経験する機会がなければ、"無資格同然"である一方、「家人の中では小学6年の孫娘の吸引が最も優しく上手で安心」と目を細める患者も居るのが実態。(吸引は特殊技能ではなく、慣れることが肝心な証左)。
C 吸引行為が患者の身体に及ぼす危険性を問題にしているが、かりに気管を傷つけ出血するなどのリスクがあるとしても、痰の吸引が滞り患者が呼吸不全で命を失うことにつながるリスクに比べれば、どちらを優先すべきかは自明であるが、この点を見21<22落とし、ないし無視している。―在宅優先医療機器使用患者は、政策医療の最優先対象と考えるが、医師・看護婦(有資格者)による24時間カバーが非現実的である以上、次善の策を打ち出すべき。また、介護者が負担に耐えかね倒れれば、患者も倒れることを心に刻むべき。
D 吸引を要する患者宅には、家庭医や看護婦が頻度の差はあれ、訪問しており、日頃の症状の変化の把握や、緊急時の対応について体制が整っているので、万が一、吸引によって何らかの問題が発生した場合でも、これらの医療関係資格者による処置が可能である。
E 答弁書のなお書きにおいて「訪問介護員が緊急やむを得ない措置として吸引行為を行うことは…医師法第一七条に違反するものではない」としているが、緊急時に人の命を救うという観点からすれば、刑法第三七条の[緊急避難]の定めが優先する筈で、医師法上の問題たり得ないであろう。
○わが国の構造改革が迫られ、これに伴う規制緩和や各種見直しが求められている今日、役所作成の答弁書が閣議案件としてさしたる詰めや議論のないまま了承されるという事態に危機感を抱くのは杞憂であろうか。
日本ALS協会としては、これらを踏まえ厚生労働省に猛省を促し、難病や障害に苦しむ人々にとってより良い社会が到来するよう邁進してまいります。」(p21-22)

◆2001/12/06 「厚生労働省交渉」
 『月刊 全国障害者介護制度情報』2001年12月号より引用

12月6日の厚生労働省交渉の報告
人工呼吸器利用者等の吸引と医療行為との関係についての話し合いを行いました

参加:医政局医事課企画法令係(医師法についての見解を担当)
   老健局振興課法令係(介護保険事業者の基準などを担当)
   障害保健福祉部障害福祉課身障福祉係

 12月6日に、ベンチレーター利用者ネットワーク、静岡障害者自立生活セン
ター、自立生活企画など、人工呼吸器利用の1人暮らし障害者がいる7団体で吸引に
ついての厚生労働省交渉を行いました。
 背景には、ある国会議員がヘルパーへの吸引行為開放をもとめて質問を行い、厚生
省が「ヘルパーに開放する予定はない」と回答をしたということがありました。

厚生労働省が明言「すべての吸引が医療行為とはかぎらない」

 交渉の中心は、吸引のすべてが医療行為かどうかという点です。これについては、
話し合いの結果、
「肺炎でICUに入っているような状態の方への吸引は医療行為だが、治療が終わっ
て、在宅に帰って安定している方の吸引は、医療行為でない場合がある」「あらゆる
吸引が医療行為ですかという質問に対しては、それは違うとはっきりいえます」と厚
生省医事課として回答がありました。また、老健局振興課は「吸引を行っているから
と言って介護保険の訪問介護事業者指定を取り消しにするということはない」と回答
しました。(障害福祉課も「同様です」と回答あり)。もし、そのような指導が県か
らあれば、相談すれば厚生労働省から指導してくれるとの事を約束しました。
 今回の交渉は1人暮らしの人工呼吸器利用者で他人介護者が吸引をしている方を当
事者と位置付け、交渉を行いました。まず、全国各地の1人暮しの呼吸器利用者の介
護者を使った生活状況を説明しました。ベンチレーター利用者ネットワーク代表の佐
藤さんが実際に吸引を介助者にしてもらい、厚生省担当者に近くによって見てもら
い、さまざまな点を解説しました。また、病院から1人暮らしに移行する場合の医師
や病院との関係の実態も説明し、「自立生活者の場合は、入院して気管切開して、治
療が終わってすることがなくなるから医師は退院許可するのであって、自立生活者の
吸引は医療ではない」という事を理解してもらいました。
 医事課は、「ある瞬間の吸引が医療行為かそうでないかは、一概に判断できない。
その日の体調にもよるし、体調や周りの環境にもよって変わってくる。もし、はっき
りとどちらか判断しようと思えば、裁判を行って、その瞬間の体調の状況、医療の経
過、介護体制の状況などたくさん資料を集めて判決を出してもらわないとわからな
い」「医事課にはしょっちゅう「これこれは医療行為ですか?」という電話がかかっ
てくるが、「それだけを取り出して聞いても判断できない」と答えている」との事で
した。

 厚生労働省の公式見解では、「吸引は原則として医療行為」という立場であって、
「原則」という言葉をつけてぼかしています。しかし、自治体や一般事業者がこの言
葉をそのまま読むと規制したいと考えるのが普通です。自治体と交渉する際には、
「すべての吸引が医療行為とはかぎらない(厚生労働省)」「吸引を行っているから
と言って訪問介護事業者指定を取り消しにするということはない(厚生労働省)」と
の見解だけを使って交渉を行ってください。

 2003年にむけ、障害者団体が自ら指定事業者になって吸引を行えば、自由に吸
引を行えます。逆に社協や民間事業者などが「吸引は医療行為ですからやりません」
といわれれば、利用者は対抗することはできません。このことからも、全国各地に当
事者主体の事業所を作る必要があります。

 厚生労働省は、「今はあいまいなままにするしかないが、ずっと、このような状態
がいいとは思っていない。将来は整理していかねばならないと思う」と話し、当事者
側からの「吸引や投薬といった、個々の行為を「医療行為」「医療行為でない」と分
類するのではなく、例えば肺炎でICUに入っている障害者の投薬や塗り薬を塗るこ
とは医療行為だが、退院して安定していれば医療行為でない」との話に、「その通り
だと思う」との事でした。
 ただし、無原則に開放すると問題を起こす人が出るということで、当事者が自分の
責任で介助者個人に対して依頼していること、きちんと病院などで感染症についての
知識の研修を受けていることが必要ではないかなどとの話を意見交換しました。」

◆2002/02/01 盛岡市で全身性障害者向け毎日8時間の指名ホームヘルパー派遣制度開始
 日本ALS協会県青森県支部が要望/常時吸引が必要な場合は家族同居も対象に

◆2002/03/03 吸引問題解決促進委員会第1回会合
 http://homepage3.nifty.com/jalsaechigo/newshouse-9/9-5.kyuucom.html

◆2002/05/26 吸引問題解決促進委員会第2回会合
 http://homepage3.nifty.com/jalsaechigo/newshouse-9/9-5.kyuucom.html

◆2002/06/01 立岩 真也 「だれにとってのなんのための、資格?」
 『ばんぶう』2002-06(日本医療企画)

◆2002/07/20 日本ALS協会
 「「ヘルパー吸引」問題にご理解を!」

◆2002/08/04 佐々木公一「「吸引問題」の署名を集めて下さい」
 『週刊/ALS患者のひとりごと』87

◆2002/08/  ヘルパー等の吸引問題に関するニュース
 NHKニュース10

◆2002/08/30 吸引機・吸引器のクリーン・ケアー・プロダクツ 重さ1.45kgのポータブル吸引器
http://c-c-p.co.jp/gaiyou.html

新しい介護ビジネスをめざして 介護される人,介護する人の気持ちに一歩近づいた介護用品の開発
クリーン・ケア―・プロダクツ株式会社は,大津市の琵琶湖湖畔の閑静な住宅街にあります.同社が開発した小型携帯電動吸引機器「スッキリすう太」(商品名)は,吸引器の業界に新風を吹き込む画期的な商品として,全国から注目されています.担当の取締役,渋谷一郎さんにお話を伺いました.

世界初携帯型の洗浄・消毒不要なたん吸引システム誕生
「テレビで,患者さんのたんを取り除くのにストローや箸を使っているのを見て大変だと思い,何とか使いやすいものをと考えた」と開発のきっかけを話されました.
渋谷氏は,民間医療機器メーカーの開発技術者でした.従来の吸引器でまず感じられたことは,ベッドや車椅子等に据え置くことを前提に作られており,液をためるガラス吸引瓶がポンプと一体型のために重く,機器の持ち運びが不便で外出などが制限されていたことでした.
渋谷氏が開発した「スッキリとれ太」は,軽量かつチューブの洗浄が不要でHEPAフィルターを採用し吸引した最短位置で細菌が捕集出来る世界初の使い捨て液溜め構造です.小型・軽量で携帯に便利なうえ,吸引液をティッシュで固形化してその場で棄てるため,在宅で介護する家族の負担軽減とQOL(生活の質)改善につながっています.
「従来のメーカーの製品は吸う力ばかりを強くする傾向にあり,患者さんの体を傷つけることがあってはならない.」と医師も指摘しています.吸引力は,−50kPa(キロパスカル・圧力の単位)が限度であると指摘されており,実際に私の手のひらで試してみましたが相当強く感じました.これ以上強い吸引力であれば,当然患者の喉など粘膜も傷つけるおそれがあることから,従来の吸引機器メーカーの製品開発方針について渋谷氏は警鐘を鳴らしておられます.

滋賀県発の介護ビジネス企業としての飛躍
同商品は,近畿通商産業局(現在の近畿経済産業局)主催の「ベンチャービジネス2000京都」に採択されるとともに,2000年「ベンチャービジネスプランコンペ滋賀」で優秀賞に輝いた製品で,医療用具製造許可を取得しています.また,滋賀病院(大津市)呼吸器外科の根本正部長は,「容器が使い捨てなので,結核やMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の院内感染を防げる.災害で電源が断たれても,カテーテル(たまった液体の排出に用いる管)と容器だけで介護者が安心してたんを吸引できる.画期的な製品だ」と評価され,難しくて危険な細菌検査を担当すると共に,携帯に必要な機能の開発に助言をされています.大津市民病院,京都南西病院,京大病院,老健施設などにも納入されています.
現在,インターネットによる通信販売と展示会に出品して販売しており,今後は大手医療機器販売業,介護機器業を代理店として販売する予定であり,本格的な体制が整いつつあります.
さらに,小型化しポシェットのように身に着けられるタイプなどの新製品の開発や海外市場への展開などを考えておられます.
渋谷氏は,「利用者の声が何よりの励み.今後も改良を重ね,たんで苦しんでいる世界中の人を助けたい.」と話しておられました.滋賀県発の介護ビジネス企業として飛躍されることを期待しています.(南部 功嗣)

◆2002/09/04 ヘルパーにも吸引資格を 難病患者訴え3000人署名 /和歌山
 『朝日新聞』大阪・2002年09月04日朝刊・p.24 和歌山1

◆2002/09/05 佐々木公一『週刊/ALS患者のひとりごと』88
 このように呼びかけ、署名いま312人分

◆2002/09/05 SeaStar Corporation
http://www.sea-star.com/j/news.html
低圧持続吸引機 新発売
国立療養所犀潟病院で考案され,北海道難病連やALS協会で組み立てて対応しておりました鑑賞魚用エアポンプを改造した低圧吸引機を製品化し,これまで通り低価格で皆様にご案内しております.

◆2002/09/30 佐々木公一『週刊/ALS患者のひとりごと』89
 署名2800こす、全体で17万

◆2002/10/02 参議院決算委員会で谷博之(民主党)が養護学校や在宅での吸引行為の担い手について質問
 http://plaza9.mbn.or.jp/~sakurakai/kyuin1008.htm

◆2002/10/03 『朝日新聞』報道
 http://plaza9.mbn.or.jp/~sakurakai/kyuin1008.htm

◆2002/10/06 『日本経済新聞』報道
 http://plaza9.mbn.or.jp/~sakurakai/kyuin1008.htm

◆2002/10/08 「吸引問題解決促進委員会より」→日本ALS協会支部支部長・事務局長各位
 http://plaza9.mbn.or.jp/~sakurakai/kyuin1008.htm

◆2002/10/10 「ファミリー――たん吸引・軟膏を塗る…、介護職員できないの?」(生活)
 『日本経済新聞』2002年10月10日夕刊

「医師・看護士の仕事」、線引きあいまい、現場混乱
 たんを吸引する、軟膏(なんこう)を塗る――。高齢者施設のケアワーカーや訪問介護のヘルパーら介護職員が、こうした行為をする機会が増えている。医師や看護師がすべきだとする声も多く、高齢者、家族の間や介護の現場で戸惑いが広がっている。
 特別養護老人ホームたまがわ(東京・大田)。午後五時半を回ると入居者への夕食の準備が始まる。ベッドに寝たままのAさん(74)の部屋には介護職員のBさんが訪れ、チューブを口に入れてたんを吸い取る。次いでスタンドに乳白色の栄養剤をつるし、チューブから胃に直接送り込む。胃ろうと呼ぶ食事法だ。
 食堂で、背もたれ付きのいすに座って待つCさん(88)。鼻から出ているチューブに栄養剤をつなぎ、食道内のチューブを通じて食事をとる。AさんやCさんは飲み込む機能が働かないため、こうした経管栄養法が必要になった。この特養には同様の入居者が十八人おり、いずれも介護職が食事のケアに当たる。
 嚥下(えんげ)障害の高齢者が入居している施設では、よく見られる光景だ。東京都社会福祉協議会が昨夏実施した都内の特養への二十八項目の調査(回答二百四十二施設)では、介護職がたんの吸引をしている施設は半数を超え、経管栄養の注入は三分の一に達した。
 ところが、「これらは医療行為だから医師の指示で看護師がすべきだ。介護職にはその権限がない」と、非難する声がよく聞かれる。「たんの吸引中にのどを傷つけるおそれがある」「経管栄養もチューブがはずれると気管支や肺に炎症を起こす」。そんな指摘が医師や看護師からされる。
◎  ◎
 多くの施設は「看護師の多くは夕方には勤務を終えてしまう」「コスト面から夜勤の看護師はほとんど配置できない」と実態を訴える。特養たまがわでは看護師と連携しながら、「介護職に特別の研修を十分重ね、本人、家族に説明した上で行っている」という。
 実際は、さらに多くの「医療行為」が介護現場に浸透している。東京都社協の調査では軟膏の塗布や服薬介助についてはほとんどの施設で、血圧や脈拍の測定、点眼なども半数以上で実行されている。ヘルパーの訪問介護先でも同様だ。ヘルスケア総合政策研究所(東京)の調査では、ヘルパーの七〇%が外用薬の塗布、五六%が点眼の経験があると答えている。
 「医療行為といっても家族にはすべて認められていること。『専門職なのだから』と家族から頼まれれば断れない」とヘルパーの多くは声を潜めて話す。所属する事業所から「医療行為には手を出さないで」と注意され、家族との板挟みに悩むヘルパーもいる。
 こうした実態を行政監察した総務省は一九九九年九月、「利用者のニーズや家族介護の負担軽減から軟膏塗布などの身体介護に伴う行為はヘルパーに任せるように」と、厚生労働省に勧告した。
 その中で注目すべき指摘がある。「医療行為の範囲は不明確であり、事業者により判断はまちまち」としており、「医療行為の範囲」そのものに疑問を投げかけた。勧告に対して厚労省はこの六月に事実上の拒否回答を出し、その中で「何が医療行為かは個々の事例に則して判断すべきである」とした。
 医師法では一七条で「医師でない者の医療行為の禁止」とあるだけで、肝心の医療行為の内容には触れていない。東京都社協が調査した二十八項目は医療行為なのか、あいまいなのである。ただ、医療や福祉関係者はこれらを慣例として医療行為と認めてきた。より踏み込んだケアをする介護職には、後ろめたさがつきまとう。

医療・介護の連携を
 「医療行為」の範囲が一部で生活実感とずれているのも確かだ。東京都目黒区の特養入居者の家族連絡会(副島芳枝代表)の会員アンケートでは、「つめ切り、耳あか、外用薬塗布、点眼などは介護職が行ってもいい」という答えが七〇%に達した。
◎  ◎
 厚労省は「巻きづめや中耳炎など疾患があれば医療行為だが、普通の状態なら医療行為ではない」(医政局)と、あくまで「個々の事例」次第と言う。こうした境界線は関係者に広く伝えられていない。
 医師の間でも「じょく創の手当てや経管栄養の注入は介護職がしてもいい」とする声が、在宅診療を手がける人に目立つ。在宅ケアの実態に明るいためだろう。介護が必要な高齢者の増加は避けられない現在、介護職のプロとしての自覚と責任が問われている。
(編集委員 浅川澄一)
 医療行為の範囲が明確でないのが混乱の原因なのは明らか。そのガイドライン作りが必要だが、厚労省に前向きな姿勢はない。ただ、難病のALS(筋委縮性側索硬化症)などの家族団体からの要望を受けて二日、参院決算委員会で坂口力厚労相はヘルパーにたんの吸引を認めるかを検討すると初めて答えた。一歩踏み込んだ発言だが、高齢者ケアへの言及はない。
 今春の医療保険の改定で、療養型病床の病院から施設や在宅に移る高齢者は増える一方だ。介護保険のサービス現場に対応が委ねられる。医療と介護の接点に立つ看護職の動向がカギとなるが、日本看護協会は「総務省の勧告には反対。施設内の看護師の配置比率を高めることが必要」と言う。
 施設やヘルパーの管理者からは「医療寄りの看護師が増えると、介護保険の目標とする生活介護の視点が失われかねない」とする声も多い。確かに特養内では、看護業務にこだわっておむつ交換をしない看護師への視線は冷ややかだ。
 どうすれば介護される側の生活の質を確保できるのか。あまり実行されていないが、介護保険制度では、専門職が定期的にケア会議を開いてケアプランを作成するとある。介護の現場も同様に、医師、看護師、栄養士らの検討を経て、医療の研修を積んだ介護職が前向きに取り組んでいくのが今後の方向であろう。
【図・写真】栄養剤をセットするケアワーカー。在宅では家族が手がける(特養ホームたまがわ)」

◆2002/11/07 佐々木公一『週刊/ALS患者のひとりごと』91
 署名運動まとめ・1

◆2002/11/12 日本ALS協会が厚生労働大臣に陳情
 http://homepage3.nifty.com/jalsaechigo/

◆2002/11/13 「厚労省、呼吸器つけた患者らの介護、ヘルパーの「吸引」検討――家族らの負担に配慮」
 『日本経済新聞』2002年11月13日朝刊

 「全身の筋肉が動かなくなる難病のALS(筋委縮性側索硬化症)患者らについて、厚生労働省は十二日、患者のたんの吸引行為が医師や家族以外には禁じられている現状を見直すため、省内に検討会を発足させる方針を決めた。介護現場の実態などを踏まえ、来春にも、吸引行為者をホームヘルパーにも拡大するかどうか結論を出す。
 この日は、ALS患者やその家族が坂口力厚労相に対し、家族の介護の負担を減らすことに賛同し制度の見直しを求める約十七万人分の署名を提出。坂口厚労相は「吸引問題に決着をつけるときがきた。検討会で、解決策を話し合いたい」などと制度の見直しに前向きな姿勢を初めて示した。
 要望を受けて新設する検討会は厚労省の担当者のほか、学識経験者らで構成。年内にも初会合を開き、ヘルパーが吸引行為をした場合の危険性や、医師との連携のあり方などを、介護現場の実情を踏まえながら検討していく。
 ALS患者は、その多くが人工呼吸器を装着しており、二十四時間介護のもと、平均して三十分に一度の間隔で、たんの吸引が必要となる。吸引自体はごく簡単な手順で済む。厚労省は家族の吸引は容認する一方で、ヘルパーに対しては医師法で規定された医師の医療行為に当たるとして認めていなかった。このため、家族の間では「目が離せない」「肉体的・精神的負担が大きい」との不満の声が強かった。
 患者団体「ALS協会」(東京)によると、ALS患者は現在、約六千人。家族の介護の負担などを理由に、ここ数年間で計約二千人の患者が自発的に呼吸器の装着を選択せず、命を失った患者もいるという。署名には筋ジストロフィー患者らの分も含まれている。
 署名提出後、患者や家族らは厚労省で会見し、兵庫県尼崎市のALS患者、熊谷寿美さん(52)は「ヘルパーが介護に来ても、家族は休息できず、家族が倒れると私の生きる道も断たれてしまう。ヘルパーによる吸引を認めてほしい」と訴えた。
【図・写真】坂口厚労相(右)に署名を手渡すALS患者の家族ら(12日、東京・永田町)」

◆2002/11/15 佐々木 公一『週刊/ALS患者のひとりごと』92号
 署名運動まとめ一/お便り2

◆2002/11/26 佐々木 公一『週刊/ALS患者のひとりごと』93号
 署名運動まとめ一/お便り3

◆2002年11月27日
Dr山本の診察室 Dr Yamamoto's Clinic for ALS patients and families
救命士の気管内挿管と,ヘルパーの吸引行為
http://tenjin.coara.or.jp/~makoty/column/021127column.htm
「11月14日,厚生労働委員会で,ある議員が坂口厚労大臣に,この吸引問題をただした.坂口大臣の答弁は,こころあるものであった.ALS患者の窮状を理解し,問題を解決しようという意思を感じた.公明党は好きではないが,坂口さん,是非頑張ってこの問題を解決してほしい.本当にここに,ALS患者とその家族の窮状が凝縮されているのだから.」

◆2002/12/02 佐々木 公一『週刊/ALS患者のひとりごと』94号
 署名運動まとめ一/お便り4

◆2002/12/10 佐々木 公一『週刊/ALS患者のひとりごと』95号
 署名運動まとめ一/お便り5

◆ヘルパーの吸引 2002
現代史の中のALS《医療的ケアの必要な人のニーズと提供されているサービスの現状報告》第1回 Body and Society 発表レジュメ 川口有美子
http://www.livingroom.ne.jp/e/0403ky.htm


*作成:仲口 路子
UP:20090808 REV:2010020, 20100401, 09
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