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女と海/クィアな海 Vol.2

Females and the Sea / Queer Sea (Vol.2)

神戸市外国語大学2019年度前期科目「ジェンダー論入門」
"Introduction to Gender Studies" [The First Semester of the 2019 Academic Year]
at Kobe City University of Foreign Studies
授業期間[Class Term]:2019/04/12 - 2019/07/26(全15回[Total 15 lectures])
担当教員[Lecturer]:村上 潔MURAKAMI Kiyoshi

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last update: 20190805


【Index】
授業情報[Course Information] ■主題と目標[Theme and Objectives of Class] ■キーワード/サブテーマ[Keywords/Subtopics] ■講義内容[Lecture Contents] ●第1回 ●第2回 ●第3回 ●第4回 ●第5回 ●第6回 ●第7回 ●第8回 ●第9回 ●第10回 ●第11回 ●第12回 ●第13回 ●第14回 ●第15回 ■参考[References] ●対象候補とした(が取り上げられなかった)もの[Alternative Candidates] ●関連する情報[Related Information]

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■授業情報[Course Information]

授業日程[Course Dates]

@2018年4月12日 A4月19日 B4月26日 C5月10日 D5月17日 E5月24日 F5月31日 G6月7日 H6月14日 I6月21日 *教室変更 J6月28日 K7月5日 L7月12日 M7月19日 N7月26日 ◎定期試験:8月2日 *GWを除く毎週金曜日[Every Friday]

授業時間[Class Hours]

・5限[5th period]=16:05〜17:35
・6限[6th period]=17:50〜19:20
*5限と6限は基本的に同内容(受講人数等の事情により変更する可能性がある)。
 Their details are basically the same. There is a possibility that a difference occurs for some reasons.

教室[Classroom]

学舎308教室[Room 308] 【Campus Map】
*6月21日(第10回)のみ学舎201教室に変更

使用言語[Classroom Language]

日本語[Japanese]

過去の授業[Past Lectures of this Course]

◇2018年度:「女と海/クィアな海」[Females and the Sea / Queer Sea]
◇2017年度:「女性がつくる自律的文化シーン――メディア・空間・アクティヴィズム」[Women's Autonomous Cultural Scenes: Media, Space, and Activism]
◇2016年度:“Grrrl/Queer/Feminist Zines”
◇2015年度:「女と海」[Females and the Sea]
◇2014年度:「《女子》と《都市》――神戸における女性文化」[Girls and the City: Women's Culture in Kobe]

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■主題と目標[Theme and Objectives of Class]

◆主題[Theme]
「女と海/クィアな海 Vol.2」[Females and the Sea / Queer Sea (Vol.2)]
◆目標[Objectives]
【背景】本授業は、2018年度《ジェンダー論入門》「女と海/クィアな海」(http://www.arsvi.com/d/2018igs.htm)の続編として位置づくものである。
[Background] This class is positioned as a sequel to the class of Introduction to Gender Studies of 2018: "Females and the Sea / Queer Sea" (http://www.arsvi.com/d/2018igs.htm).
【目標】本授業では、現代の創作表現(日本の歌謡曲)の検討を通して、「女」と「海」との関係性、そしてその関係性のもとに生起する情動的・生物的・物理的・社会的現象の諸相を読み解くことで、人間と自然との関係のうちに性(ジェンダー/セクシュアリティ)がどのように作用しているのかを理解する。また、「女」という枠組みを拡張させることで、近代の人間社会の秩序とは「異なる生命」が海(自然)において存在しうる可能性の意味と、海(自然)そのものがクィアな本質を有することの意味を確認する。たんなるテクスト論/表象論としてではなく、情動や身体性のレベルまで動員した内在的理解を追求する。
*本授業は、2018年度の授業内容の基本方針を継承し、一部重複する題材を扱うが、大部分は新たな題材を用い、刷新した内容で構成される。
[Objectives] This class is intended to understand how does gender/sexuality act in relations between human being and nature by comprehending the relationship between females and the sea, and the diverse aspects of emotional, biologic, physical and social phenomenon caused by that relationship through consideration of modern creations (Japanese pop songs). In addition, we confirm the meaning of the possibility that the organisms which deviated from the modern social order can exist in the sea (nature) and that the sea (nature) itself have the nature of queer through expanding the frame of females. We pursue the immanent understanding accompanied with emotions and physicality beyond the bounds of textual theory and representation study.
*This class inherits the basic policy of the class of 2018 and deal with partially duplicated subjects, but consists of largely revamped contents with new subjects.
【注記】本授業は、一定レベル以上の日本語能力を必要とする。
[Note] This class requires a certain level of Japanese language skills.

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■キーワード/サブテーマ[Keywords/Subtopics]

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■講義内容[Lecture Contents]

第1回:「イントロダクション」[2018/04/12]

◇本授業の(2014年度以降の)経緯
◇担当教員紹介
◇シラバス確認
◇定期試験/評価のつけかたについて
◇2015年度講義「女と海」・2018年度講義「女と海/クィアな海」の振り返り

◇講義の土台となる理念の枠組み
 _______________
 \[人間→自然]
  ――《支配(開発=征服・管理)× 畏怖・崇敬・依存》:矛盾・並存
 /[男性(社会)→女性/ノンバイナリー(の性/身体)]
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
‐ 規律・規範・訓化・飼いならし(=男性の欲望/男性社会の強迫観念)――を逸脱する(潜勢)力
‐ 海の時間軸:近代/前近代 → 先史/地球史
‐ 人類以前の「記憶」――を呼び起こす
◇分析の視角
‐ 自然が内包する8つの基本構成要素――@時間/A方角/B高度/C光度/D色彩/E速度/F温度/G天気
‐ 人間の身体(感覚――快楽・痛み・高揚・沈静・倦怠)と精神(感情――情動・愛・思慕・追憶・哀惜)
‐ 自然(現象)と人間(身体・精神)が交錯し・浸透しあい・錯乱し・変態[transform]する――その作用が生み出す次元・痕跡をつかむ

▼【導入】:「男はなぜ/誰に/どのような時間と世界を止めるよう願うのか――「勝てない」対象としての海と女」

【対象作品】
◆矢沢永吉“時間よ止まれ”
作詞:山川啓介
作曲・編曲:矢沢永吉
5th Single(1978/03/21)A-1→4th Album『ゴールドラッシュ』(1978/06/01)B-3
*1978年資生堂アクエアビューティーケイクCMソング

◇地点:太平洋の海風を西から受ける――アメリカ西海岸的架空イメージ
◇日常と無縁の解放感/開放性――孤独・あてなき旅
◇無条件に「負け」る対象:Pacific(海)+女
◇幻の世界に逃げ込む
‐ 色彩(青の力)・光度(夏の光)・温度(グラスの内外)の際立ち
‐ 汗・香り・匂い・酔い・めまい――身体感覚の隠喩
◇主体:都会の垢にまみれた一人の男:卑小感
‐ 受け身のメランコリー(× 攻撃性):自嘲的
◇「女[ひと]」:個別の一女性ではなく普遍化された女という存在枠組み
◇[海=女]の等置化(同一化)――海の化身/象徴としての女
◇「生命[いのち]のめまい」を引き起こす力:超越的・神秘的でかつ人間身体に直接的に作用しうるもの――海(=女)の力
◇男が生きる都会(近代文明)の時間を止める:海(=女)の時間に切り替える――その時間に自らを委ねたいという欲望
◇世界を止める:男性社会(近代文明)の秩序を無効化する
◇止める主体は自分ではなく海(=女)
◇きざな抗い/無力感の美化――ダンディズムの一形態
‐ 男の虚しさのメタ的表現――としての評価

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第2回:「要求か受容か――海と心を接続する作法/回路」[2019/04/19]


【対象作品】
@山下達郎“RIDE ON TIME”
作詞・作曲・編曲:山下達郎
6th Single(1980/05/01)A-1→5th Album『RIDE ON TIME』(1980/09/19)A-4
*日立マクセル「UD」(カセットテープ)CMソング
A山下達郎“SPARKLE”
作詞:吉田美奈子
作曲・編曲:山下達郎
6th Album『FOR YOU』(1982/01/21)A-1

▼@
◇環境条件
‐ 朝+青――晴れた空/澄んだ空気/整った海面
‐ 水平線――広角のワイドなスケールで見わたす
‐ ピュア/まっさらな海の状態――に清々しい感覚で向き合う
◇時
‐ 水平線を駆け抜ける流れ――海面に漂う時間
‐ 時を(確認するのではなく)感じる=意識化――日常とは異なる時間秩序=海の時間
‐ 海の時間を感じる:本来人間がもっていた海の世界の感覚をよみがえらせる――遠い夢を呼び戻す
‐ 時に乗る――時=波:サーフィンの暗喩
‐ 乗りこなす主体は自分
‐ 時を感じる→世界が動き出す――自分へのフィードバックを期待する
◇光
‐ 輝く(ことが期待される)自分の未来
‐ 目もくらむほど光り出す(ことが期待される)愛
‐ 強い光度を求める
◇燃焼
‐ 激しい光を受け→心に火を点ける→心が燃える
‐ 燃焼:温度を上げる/動力となる
◇高度
‐ 魂が飛び立つ――上空へ
‐ 燃焼の動力で浮上
◇要求
‐ たたみかける過剰な要求
‐ 実現できる力をもつ主体――目の前の海
‐ 整った条件のもとにアプローチ
◇目的
‐ 燃える心を君に届けに行く
‐ 浮上した魂で/が向かう
◇君=追う相手
‐ 不明瞭――実体がない
‐ やさしく抱擁してくれる――女性性
‐ いる場所――海の上の空:海のエッセンスが(気泡や蒸発から)昇華して滞留する領域
‐ (人間の恋愛とは異なる)愛にあふれた世界
‐ 海の世界を象徴/体現する存在――女性性/クィア性そのもの
◇男性の身体性
‐ 身体から切り離される魂
‐ 切り離すのは自力ではなく海(の時・愛)の力によって
‐ 身体自体は何ら機能しない――海とアクセスできない
◇全能感
‐ 純度・速度・光度・温度・高度 × 自らの感覚・情熱
‐ 海の力を借りてすべてを動かせる→すべての要求が叶うという前提(認識)
‐ 望み通りになる保証はないにもかかわらず
◇男性的アプローチの限界
‐ 自己中心・自己完結
‐ 海との対話(の意思)はない――海は利用する対象
‐ 男性から女性への要求(包み込んで癒して)のありかたと同じ――一方的・独善的

▼A
◇全体性
‐ 全世界の海から集まる女神たち
‐ 世界がさらに広がる――拡張性
‐ 極限の普遍性
◇スケールの対照性
‐ 海の世界/海が生み出す世界×自分の心
‐ ドレスに触れる――ほんのわずかな/ささやかな接点:海の世界とのつながりの糸口(回路)
‐ (膨大な)海の世界のエッセンスが心に流れ込む――細い管のような回路を介して:上(空)→下に
◇高度
‐ 届かないほど高い――海の上の空
‐ (無限の)愛のありか
‐ 女神たちが戯れる場所
◇時間
‐ 夕闇が降り出す
‐ 太陽は沈み上→下に徐々に暗くなる――空の上からのアプローチ
◇光・音
‐ 不思議な輝き/素敵なざわめき
‐ (強度の問題ではない)言語化できない様相
‐ 海の世界の多様性と混沌
◇人(自分)
‐ 主体性なし――ただドレスに触れるだけ
‐ 全体性の世界の只中に飲み込まれている
‐ 状況を俯瞰的に描写
◇記憶
‐ 心に注入される懐かしい思い出――海の世界の記憶
‐ すりかえる主体は海
‐ 特に希望するものではないが自然に受け入れる
◇委ねる心得
‐ 海に要求する/海を利用することの不可能性を認識している:前提
‐ (優しさ・抱擁など)女性的な機能の提供を求めない・期待しない
‐ 自らの無力さを(ことさらアピールすることなく)受けとめて待つ
‐ 結果的に生まれる/授かる関係性
◇my heart=your world(対の関係)
‐ 「you」=海:不可思議さを湛える――女性性・クィア性
‐ 自分と海との並置可能性(一体性ではない)
◇身体性
‐ もとより捨象されている
‐ 海の世界のエッセンスは心に直接注入される――身体は海にアプローチできない
‐ 男性身体の限界

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第3回:「南の海の風を受け女は永遠の再生産に向かう――欲望を包み返す根源的な力」[2019/04/26]


【対象作品】
◆ジュディ・オング“魅せられて――エーゲ海のテーマ”
作詞:阿木燿子
作曲・編曲:筒美京平
28th Single(1979/02/25)A-1→Album『白い幻想』(1979/05/21)A-2
*第21回日本レコード大賞:大賞・作曲賞(中山晋平賞)

◇南に向いて窓を開ける:南からの海風を身に受ける
‐ 女だけが一人で海と向き合う
◇海=女の共通点:過剰なほどの(若さの)美しさ
◇蜃気楼――海×光×風×温度:屈折で像が変質・反転
◇内と外が入れ替わる:男の腕の中→私の中――反転
◇ずれる男女の方向性
‐ 男:獲得/支配の(性的)欲望――受容する女の意識は常に他の選択肢に
‐ 女:(自分の中で)眠らせる――再生産・ケア
◇非対称な男女のありかた
‐ 語る主体:女のみ――個々の男の属性に意味はない
‐ 女の重層/複層性――「女=海」をメタ的に言語化する女の存在
‐ 男はヴァリエーションをもつものの単一次元
◇エーゲ海
‐ 多島海――点在する島とそれを内包する海
‐ [海=女]>[島=男]――女だけがメタ的な立場を有する意味
‐ 古代文明/神話世界への遡行可能性
◇女性身体と海
‐ レースのカーテン:
 @薄く光を通す――像が変質して(ソフトフォーカス的に)見える:蜃気楼との連関
 A白い/襞――波:それを纏う女=海
‐ 海と女性身体の一体性:波・蜃気楼の美しさを体現
‐ 部屋の中の物質性を自らの身体性に転化
◇女が司る空間(曲の舞台)
 @官能性:セクシュアリティ/身体
 A呪術性:幻惑・霊性・神話・女神*
 B装飾性:身体のもつ潜在力を増幅
 *語る主体:エーゲ海の女神的要素
‐ その空間で女は南の海に向き合う=同体化する
◇南北問題の構図の適用
‐ エーゲ海:ヨーロッパのリゾート地
‐ 「南」=資源(未開/自然/第三世界)=神秘
‐ 「北」(先進国/列強/近代社会)からの侵略・搾取(植民地化):憧憬・崇敬とともに
‐ オリエンタリズム[Orientalism]/エキゾチシズム[Exoticism]
‐ [北→南]=[男→女]
‐ 植民地主義的関係性を反転させる:抵抗/逸脱
‐ ポストコロニアリズム[Postcolonialism]
◇日本とアジア
‐ 「Aegean」の発音――誤読が拡張する適用地理
‐ 高度経済成長後:経済大国――海外への進出/海外での消費・搾取
‐ 日本でジュディ・オング(台湾出身女性)が歌う意味――台湾は日本の南(南西)/旧植民地/観光地
◇普遍的再生産システム
‐ 海が湛える悠久の歴史――古代文明からの連続性
‐ 母系制:再生産を担う女性を主軸とする共同体システム
‐ 歌い上げる現代の女性歌手――芸能者:神話的世界との親和性

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第4回:「全体世界への接続/接近――海と空の生命への移行」[2019/05/10]


【対象作品】
@松任谷由実“Tropic of Capricorn”
作詞・作曲:松任谷由実
編曲:松任谷正隆
15th Album『VOYAGER』(1983/12/01)B-3
A荒井由実“空と海の輝きに向けて”
作詞・作曲・編曲:荒井由実[Single version]
作詞・作曲:荒井由実/編曲:荒井由実+キャラメル・ママ[Album version]
1st Single「返事はいらない」(1972/07/05)B-1→1st Album『ひこうき雲』(1973/11/20)A-4

▼@
◇重たい航海:不穏さ/デカダンさの兆候
‐ 人間社会からの離脱
‐ 壮大な南の海の世界
◇不特定・不明瞭な人物:あの人/あなた/自分自身――明確に描写されない
‐ 人間存在の比重の小ささ
◇俯瞰的かつ具体的な環境描写:光(特定の色)・鳥(特定の種類)・星(特定の星座)・島々・海流――全体(の必然性)を細かく規定する視点
◇「南」へ向かうにしたがい無効化していくもの:近代文明(物質)・近代的自我(アイデンティティ)――「北」側世界の秩序/人間個人の肉体・感覚・記憶……
‐ 人の輪郭が溶ける:肉体の枠組みそのものの喪失
‐ 声を失う:身体機能・意思伝達手段の喪失
‐ 慰め・後悔といった感情を捨てる
‐ セイルがきしむ:物質の劣化
◇南回帰線:太陽と海が密接に関係する領域――巨大な力=自然(天体)の意志が働く磁場
‐ 人間の小さな力は失効する
‐ 自然の力のなすがままに
‐ 「愛」の変質:個人の恋愛感情→生命全体を包み込む愛
◇永遠の時間が支配する愛と真実の世界を求めて――個人の人生を捨ててより大きな愛の世界に入り込んでいく
‐ 人間(文明)世界からの離脱
‐ 海をただ南へ:その先の世界へ――戻らない(太陽とは異なり南回帰線で引き返さない)決意
‐ 人の命の限界性を超える
‐ タナトスとエロス
‐ 身体(性)の喪失と引き替えに(反比例して)肥大化する愛への情熱
◇手段:星(南十字星)の導きのもとに
‐ 陸への航路ではなく異なる世界へのルートの目印として
◇追い求める新たな/異なる世界
‐ 時が繰り返す永遠性の世界
‐ 愛と真実で満たされた世界

▼A
◇「わたし」の不在――近代的自我を必然としない人間存在(の可能性)
‐ 月の光・潮風は感知
‐ 意志は有する主体
◇人間以外のもの(月・潮風)が湛えるヒューマニティ
‐ 反転した構図
‐ シュール/皮肉でありつつむしろそこに本質を見る
◇(女性的主体が呼びかける)おまえ:非人称性――二人称以外/人間以外も含む潜在性
◇人生:個別の人間の生き方にとどまらない射程
◇人間の一生を超越した生命の存在――に人としての生命を移行させる
◇かの胸:人間以外の深い懐[ふところ]をもった存在――海:に錨を降ろす=自分の存在を着地(水)させる
◇永遠の輝きに満ちた世界:見渡す海の先
‐ 遠い・彼方にある永遠:死後の時間を想起させる
‐ 金色・輝き:黄泉の世界を想起させる
‐ ――が境界を示さない:いまの自分の位置と水平的につながっている
‐ 海のもつ生命(サイクル)の秩序は自分と地続き(地面ではないが)
◇存在が歌になる:姿かたち(物理的な身体)はなくなり精神の声が(海の上を)流れる――そして海に吸収され一体化する
◇呼び合う=呼応しあう世界:空+海+α(すべての生命+生命をもたない自然存在)=全体性[totality]
‐ 陸(仮の世界)→海(全体世界)
‐ 人の命(仮の世界)→海/天体の命(全体世界)
‐ 人間が見ている世界=仮×人間には見えていない世界(海の中/天体)=本質(真)

▼@・A
◇2つの世界の断絶ではなく連続面とその接続の道筋が示されている
‐ 断絶の強調(死の美学化/生き様・死に様の過剰な意味づけ):男性的価値観・規範
◇終わらない・繰り返す生命の営みを(特別なこととしてでなく)リアルに捉える
‐ 再生産との直接的関係性:女性的・クィア的主体が語る
◇女性的・クィア的主体のみが連続面・接続回路の現象を見て・感じて・語り・動く=呼応することができる(感受性をもつ)

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第5回:「孤独な貝の内と外――が表す海と女(の身体/記憶)の接合」[2019/05/17]


【対象作品】
@久保田早紀“真珠諸島[アイランズ]”
作詞:久保田早紀・山川啓介
作曲:久保田早紀
編曲:萩田光雄
2nd Album『天界』(1980/06/21)A-4
A久保田早紀“月の浜辺ボタンがひとつ”
作詞・作曲:久保田早紀
編曲:久米大作
7nd Album『夜の底は柔らかな幻』(1984/10/01)A-2

◇前回からの流れで――
(1)永続する(人間の生命を超えた)時間
(2)喪失する身体性と引き換えに獲得する(過去の〔人間に限らない〕他者の)経験・記憶
(3)海と自分との境界の無効化
――へのアプローチ

▼@
◇暖色の周囲の環境×寒色の私
‐ 青ざめた肌:生気がない/身体機能の低下/生命力の低さ
◇火が燃える周囲の環境×心が重い私
◇時間が推移し周囲の状況は変化×動かない・変われない私
◇交錯する入れ子構造
‐ (a)海の内と外×(b)貝の内と外
‐ (a)内:暗い・冷たい×外:明るい・暖かい/(b)内:愛を抱く:情熱×外:捨てられる:価値がないと見なされる
‐ 海(大)は貝(小)を包摂するが貝はその内に大きな熱い心を秘めている
◇私=貝のシンクロ
‐ 開かない貝:生命(力)がない
‐ 反転するスケール――海×私の心:満ち潮を抱く
‐ 海の外側(陸)にあって海と接続している
◇冷静で俯瞰的な孤独(感情的でない感傷)
‐ 「南」の海との関係がもたらすニュートラル化
‐ 傷心を癒す(「南」の世界の消費を通じて)という個人的目的が結果として別のかたち帰結――南の海そのものとの対峙による関係構築
‐ 自分の欲求・感情が削ぎ落とされていく
◇ポストコロニアルな関係性
‐ 北から来る者(収奪者・消費者)×南の海の資源(・労働力・人間性)
‐ 捨てられた真珠貝:過去の真珠産業(植民地支配)の歴史
‐ 衰退した産業:北側西洋文明の傲慢さ・儚さ――に対する冷ややかなスタンス
‐ 現在の現地の若者に見出す純粋さ:観光的オリエンタリズム――しかしそれを消費することなく孤独に向かう
◇私が海と対峙して向かう方向性
‐ 主体的な身体性(踊る・愛し合う)の放棄――ただ眺める・聴く→潮騒の中へ:受動的身体性=海の生命世界に入り込む
‐ 人の(恋愛)関係/人の(産業)文明からの離脱:「南の」海の生への回帰――積極的な孤独化→達観・安穏
◇海と私の仲立ち
‐ 金星(愛と美の女神)の力
◇接続条件:「水」の身体性
‐ 貝の生との接続――内部に生命力を担保しつつ水とともに生きる
‐ 海の水(潮/海水)とのシンクロ――循環し生命を育む水:経血・羊水

▼A
◇人工物(ボタン)=海の自然物(貝殻)
‐ もとは(貝として海で)生きていた:その後の(貝殻としての・ボタンとしての)「生」の経験・記憶を(海で)語る
‐ 海は個体が死んだ後の「生」もその生命体系に組み込んでいる
◇ボタン:人の身体の外にありつつも一体であるもの
‐ 人間の女性(身に着けていた貴婦人/縫い付けたお針子)の身体の記憶・(人生)経験の記憶――+(自らの最初の生における)海の記憶+(ボタン役割終了後の)海の記憶
◇見つけられたい(人への愛慕)×このままでいたい(海の包摂による安寧)
‐ 心が寒い:孤独――本来は誰か(人)の身体に付いているはず/べき(→温かさを取り戻す)
‐ but 光っている:いまここ(海)に居場所がある/ポジティブな力を保っている
‐ 金の糸と針(人工)×銀の砂(自然):対照的だが両立する対称性――どちらが上かは関係なくいずれにも価値がある
◇浜辺(海)にあり続けることの必然性
‐ もとはここの住人
‐ 今のままでも砂のおかげで光れる:それだけで存在価値がある
‐ ボタンとしては人のもとに行きたい/貝としては海にありたい
◇女性性の複層性と時間の複層性
(1)女性(・ノンバイナリー)性
‐ 人間の女性(貴婦人・お針子)−貝殻(私):身体接触:男性性は介在しない
‐ そもそも貝「殻」に性はない
‐ 貝には雌雄異体のものだけでなく雌雄同体のものもある
(2)時間
‐ 海への(複層的)回帰(海→人→海……)
‐ 海・人両方の(身体的な)経験と記憶
‐ 海の(人工物も含み込んだ)再生産機能
◇私が総合的に経験し・理解している世界
‐ 貝の生命/人の生命の(個別の)有限性を超える永続的・総体的な海の生命体系(の時間)
‐ 砂を纏っている今に至るまで大きくは海の体系の中にある
‐ 対比:人の人生の儚さとそれがゆえの愛おしさ

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第6回:「女と海の共犯関係――砂をさらう力を利用した儀式」[2019/05/24]


【対象作品】
@EPO“渚のモニュメント”
作詞・作曲:EPO
編曲:清水信之
11th Single「渚のモニュメント」(1986/03/21)A-1→8th Album『PUMP! PUMP!』(1986/06/05)B-2
A松任谷由実“サンド キャッスル”
作詞・作曲:松任谷由実
編曲:松任谷正隆
23rd Album『DAWN PURPLE』(1991/11/22): 9

◇砂:
‐ 無生物ではあるが海/人の力によって可動
‐ 意志はもたないが海の意志に従属
ゆえに状況を動かす潜在力をもつ――人間の世界と海の世界を橋渡し・往還して人間社会の秩序から逸脱することを助ける

▼@
◇毎日生まれの私:(人間のではなく)海の生命体系――に属している/そのものを象徴している/を身体レベルでリアルに捉えている
‐ (表面上は都会に生きる女ではあるが)海の時間/システムを前提に思考・行動する主体
◇自然と人工物の両面的・複合的な受容
(a)防波堤:堅牢な人工物:無機質
 +誰もいない:疎外・孤独:(人間性から逃げ)海とだけ向き合う
(b)夕陽×灯台の光:融合:哀しさを味わう
‐ (a)+(b)がもたらすもの:落ち着き
‐ 海の自然環境×都市生活者の価値観が矛盾せず共存している
‐ 海の体系には私も人工物も含まれる
◇砂に埋めることの意味
‐ 特性:海にある砂はつねに動く――風や波が絶えずさらってゆく
‐ 帰結:埋めたものはのち(数年後)に出てくる――それを前提に埋める
‐ 来たるべき未来に向けての所為――涙が色あせる(悲しみが癒えた)頃にまた愛を再生させることを狙って
◇砂に埋める:象徴的行為・儀式的演出
‐ 女と海との共犯関係――海を巻き込んだ/海の力を前提にした行為
‐ 対比的な象徴的行為:結婚(婚約)指輪――人間世界だけの象徴的行為:陳腐さ/小ささ/欺瞞:問題にしない
◇モニュメント:記念碑・記念建造物
‐ 堅牢な人工物:長く残るのが前提
‐ 無形なもの(記憶/未来のかけら)をモニュメントにする――そのままの状態で長く残すという意思
‐ それを砂に埋める:一定の時間を経てそのまま(劣化せず)出てくる
◇そっと抱きしめて:誰に言っているのか
‐ 別れる相手(男)には気を遣わせたくない
‐ 抱かれる:それに内包される
→海に
‐ 私は海の生命体系のもとにある(という自覚がある)
‐ でも私はすぐまた都会に戻る(海に生きる女ではない)――“そっと”:適度な距離感

▼A
◇設定
‐ おそらく都会から女が一人でやってくる
‐ 砂の城を作る→海の力を借りて(計算して)それを壊す
‐ 潮の都合で時間が必要:午前中〜夕方近くまで滞在
◇自然=人工の読み替え
‐ ナイロンのコートの裾が風で擦れる音=私の泣き声
‐ プラタナスの葉+風=アーチ(建造物の門)
‐ 波の泡+フレア(表面反射で白みがかること)=「白いレース」(カーテン/ドレスを想起させる)→城(二人の幸せな生活)
 *フレアスカート(裾が広がって波打っているような形のスカート)とかけている(ダブルミーニング)
◇物質性の抽象化
‐ 「キャッスル」・「お城」:「城」と言わない――ファンタジー性の強調
‐ 幻想性の強化:自らの恋に対する幻想の儚さを強調
◇男女関係の戯画化
‐ 「ゴールイン」・「プリンセスとプリンス」――不自然な(意図的に陳腐な)言葉遣い
‐ (物質性の抽象化と並行して)あえてファンタジー的な表現をすることで現実の男女関係(結婚/失恋)を直視しない(=認めたくない)/(だけでなく)相対化する(=絶対視しない)
‐ 理想の恋愛・結婚・夫婦生活のイメージをパロディして壊す――その幻想性を暴く
‐ (失恋した自分を納得させる手立てであると同時にそれにとどまらず)社会通念としての男女の恋愛モデルを揺さぶる
◇関係自体の抽象(不特定)化
‐ 男女一対の関係を語っているはずなのに「you」でも「him」でもなく「Somebody」
‐ 海における個体生殖の様態を象徴――個別性に基づかない関係性による(もしくは無性生殖による)再生産
‐ 目の前の海の再生産秩序に便宜的に対応:かつ根源的にアプローチ
‐ 相手となる可能性のある者の属性(男性/逞しい……)を消去する
◇砂の城を壊す:自作自演の確信犯的行為(演出/儀式)
‐ 壊すために/わざわざ壊れるように作る:満ち潮の時間を計算し波が来る場所に作る
‐ 自然に崩れ去るのを待つ
‐ 海が壊したというかたちをとる:関係の終わりの必然性を作る――自分を納得させる
‐ 波は砂の城だけでなく「心のなかの足あと」もさらう:波を心にまで介入させてさらなる痕跡の消去
◇女の自己完結における海との共犯関係
‐ 女一人と海との間だけで計画されまとまるストーリー展開
‐ 自然を装い(利用し)遂行される儀式
‐ 海からの応答を引き出す要素:女自身の再生産システム――への自覚的アプローチ

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第7回:「潮風のコールアンドレスポンス――海と女の身体的交感と親密性」[2019/05/31]


【対象作品】
@松任谷由実“潮風にちぎれて”
作詞・作曲:松任谷由実
編曲:松任谷正隆
8th Single「潮風にちぎれて」(1977/05/05)A-1
A南沙織“潮風のメロディ”
作詞:有馬三恵子
作曲・編曲:筒美京平
2nd Single「潮風のメロディ」(1971/10/01)A-1→1st Album『17才』A-6

●潮風:“@潮の干満時に吹く風。|A海から吹く潮気を含んだ風。また、海や海岸の近くを吹く風。”『[精選版]日本国語大辞典』

▼@
◇息を止める
‐ not 息が止まる(うまく呼吸ができない):意識的な行為
‐ 人が意識的に息を止める:危機/警戒:得体の知れないもの/脅威への反射的抵抗――強風+潮気+α
‐ 生命活動の一時停止を疑似的に象徴
‐ その前後の生に区切り:再び息をし始めるときは新たな生の始まり
‐ タイミングを計ったわたし(女)からの促し:今後はあなたは新しい彼女のもとへ――区切りをつけて(あげて)いる
◇なぜわたしは彼が息を止めているのがわかったか
‐ 日常的には他人の息遣いは気づかない/気にしない
‐ ましてや風が吹きすさぶようなシチュエーションで
‐ わたしは彼が息を止めるであろうと前から想定していた
◇潮風はなにをちぎったのか
‐ (失恋で)わたしの心がちぎれた?
‐ わたしは振り返らない=意志を貫徹できた:心はくじけていない→(さびしさはあるが)心はちぎれていない
‐ 二人の年月(の記憶):自分は蹴散らせ(さ)なかったもの――処理しないと先に進めない→潮風が代行
◇潮風の果たした役割
‐ [1]二人の年月をちぎる
‐ [2]彼の息を止めさせる
‐ わたしがセッティングした
◇わたしが泣けない理由
‐ 一連の流れを自らマネジメントしているから
◇海へのアクセス条件と行動の合図
‐ [a](生の足で)くるぶしまで海水に浸かる・砂に触れる――肌の身体接触 *サンダル履きである理由
‐ [b]木ぎれを沖に投げる:(実際は目の前の波間に落ちるのに)なぜ届くはずのない「沖」へか――沖=その海の中枢(海の意思決定がなされる領域)に向かって働きかける:合図を送る
‐ a:潮が引いて自らが触れた水・砂が海の内側に引き込まれていく――受動的アプローチ
‐ b:積極的アプローチ――実効性のない象徴的行為=儀式性
‐ →わたしの意思が海に伝達される[往]
‐ →潮風という/による応答がなされる[還]
◇瞼を閉じる意味
‐ [1]彼を見ないように
‐ [2]身体全体の感覚を研ぎ澄ます――海との交感・対話:背中越しに潮風を通じてコンタクト
◇“この”海との関係性
‐ もとから:長い時間の関係性
‐ 特定の戻るべき場所:故郷的:個別の強いつながり
‐ 男性性を省いた直接的関係性(男=彼は息を止めるだけ――だが結果的には男を解放する:わたしの望み)
 cf. 時期は夏の手前というタイミング――夏には彼が彼女と来ることを見据えて
◇女の身体(肌・感覚・動作)全体を通した海との対話――が一連の展開を作り上げる

▼A
◇呼びかけ→応答
‐ [1]海に沈む夕陽に向かって手を上げ別れた恋人の名を呼ぶ
‐ [2]海が男性を代行して応答:潮風を介して
‐ 主体の自動変換(人→海)が自然なものとして見なされている
◇潮風がしたこと:わたしの長い髪を編む
‐ 長い髪:女性性
‐ 髪を編む:女性性――編まれる自分のみならず編む潮風も
◇海がしたこと
‐ 男性性→女性性:変換
‐ 親密性をもった身体への介入:女性性をもった者同士ゆえ可能
◇潮風を通じた女(一人)と海の直接対話
‐ 男性性の不在(不関与)
‐ あなた(男)が忘れずにいるかどうか:気になるが確認しようがない――その答えがどうであれ自分には海がついている
◇音楽的応答
‐ メロディ:繊細さ・優しさ:音楽的に贈られるメッセージ――目に見えない・言葉に依らない対話*:→癒し/慰め/充足感
‐ *彼とは言葉のコミュニケーション不全で別れた
‐ 自分は口笛を吹く(身体を直接使った音楽的アプローチ)→海の返答(潮風)を引き出す

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第8回:海への移動が余裕をつくる――素足と砂浜/速度と距離[2019/06/07]


【対象作品】
@荒井由実“天気雨”
作詞・作曲:荒井由実
編曲:松任谷正隆
コーラスアレンジ:山下達郎
4th Album『14番目の月』(1976/11/20)B-2
A今井美樹“ポールポジション”
作詞:戸沢暢美
作曲:中崎英也
編曲:佐藤準
2nd Album『elfin』(1987/09/21)A-2
B今井美樹“9月半島”
作詞:岩里祐穂
作曲:上田知華
編曲:佐藤準
3rd Album『Bewith』(1988/06/21)B-5

[A]素足+砂――海との身体接触:素肌を部分的に晒すこと
[B]移動/速度――距離と手段はまちまち:それぞれの(過程の)意味
[C]気象条件(風/雨/直射日光)との対応――色の統一の効果
[D]男性性への侵犯・介入/女性性への回帰――ジェンダーのコントロール
――4要素がかけ合わされてストーリーを形成→ヴァリエーション

▼@
【移動手段】鉄道(相模線
【距離】八王子→(橋本→)茅ヶ崎(方向:北→南)
【速度】鉄道としては遅い(単線・各駅・非電化・約80分+α)
【過程】白いハウス(=沿線の〈キャンプ座間〉の米軍住宅)
◇あなたを濡らす:わたしの恋で浸す試み
‐ 波:注意深くかわされる
‐ わざと素足を見せて気を引く:効果は不明
◇天気雨を降らせる
‐ [a]素足(踵)×砂の接触:(彼の気を引く以外の)踵を出すもう一つの意味
‐ [b]移動の過程における儀式(*下記)
‐ [c]北→南(相模線)×南→北(天気雨〔海→陸〕):移動方向の対応
‐ 誰のせい?と嘯いてみせる:自らの主体性を隠す
◇「白」の統一/連鎖
‐ 青空に浮かぶ(天気雨を降らせる)雲&「煙」=水平線の(海上のの)水蒸気:白
‐ 足の裏&砂:白
‐ 相模線で車窓に「白いハウス」を眺めて来た:予備段階
◇波はかわされる→天気雨を降らせて→濡らす→二人の関係性を深める(よう促す)
◇ささやかな・間接的な・遠回しなアクション――にとどめている
◇サーフィン=男の世界(当時):男性性への消極的な介入――サーフィン優先の意識は尊重しつつ少しだけでも目の前のわたしに意識を向けさせようとする
◇クールなまま近くに:接近しすぎない適度な距離がベストと判断
◇心理的距離=(海までの)物理的距離:対応
‐ 相模線の速度(遅さ)にも必然性
‐ 方角も含め移動の過程そのものがもつ意味
◇やさしくなくていい:余裕――自分の計算と行動で保つ
▼A
【移動手段】車(カブリオレ=オープンカー
【距離】都会→海に近い町(仮の想定:東京都心→湘南〔葉山/逗子……〕)
【速度】高速(早朝〔夜明けの前後〕のすいた道路)
【過程】(幌を上げているので)つねに強い風を受ける/途中で後方から朝陽が差してくる(=積んで走る)――光を背中で受ける(東京→湘南[東→西]であれば方角的に合致/横浜あたりで日の出か)
◇海に着くまでに朝の光と風を(ガラス越しでなく)“直接”受ける――海に着く前に自然の力を十分に吸収する
◇→よって――砂浜を歩くときに素足がまぶしい(=光を放つ):事前に朝の光を体内に充填(充電/蓄電)しているから
◇レース/ポールポジション:自ら操る車のスピード感を反映
◇速度の使い分け(コントロール):砂浜を歩く=遅い――じっくりと関係を深める
‐ あわてない心得:自覚的に緩急を駆使したアプローチ
◇さりげなさの演出:高速移動によって距離を苦にしていないがゆえに可能
◇身体的な充実→精神的な余裕をキープ(自分に自信)
◇男性性への積極的な(しかし軽やかな)侵犯
‐ オープンカーを自分で運転する(一般的には助手席が定位置)
‐ モータースポーツという男の世界の言葉・概念を借用する
‐ 乾杯はビール(シャンパンやスパークリングワインではない):男性的ふるまい
◇(先に男性性を横取りすることで)イニシアチブを握るのはつねにわたし
◇自然の力を吸収し→海で行使し→駆け引きの主導権をとる→ことで余裕のポジションを保つ:その過程を経るための距離・速度・時間・方角のマネジメント(逆算)は完璧――まるでモータースポーツのレースのように
▼B
【移動手段】古びた自転車(ペダルが錆びている/それを素足でこぐ)
【距離】近い(〔海の砂のある〕海岸近くの内陸部→水平線を一望できる海に面した場所まで:曲中では辿り着かない)
【速度】かなり遅い(思うようにこげない/進まない)
【過程】疲れて木陰で途中休憩/そこで波の音を聞く
◇砂の残る素足:すでに海の砂が肌に付着している――海の世界の範疇にいる
◇なぜわざわざこんなにきつい(息が切れる/汗をかく)行動をとるのか:なかなか目的地に着かない過程自体に意味があるから――それを経るために
‐ その間に自分の想いを整理して新しい人生へ向かう:結論を出すまでの時間が必要
◇身体性:砂の付着した身体をめいっぱい酷使したうえで(柔らかな)風を受ける
‐ 髪が流れて(輝いた)翼になる:鳥のように自由になりたいという願望に対応
‐ 身体レベルで海の青さを希求する
◇青さ:若さ・(子どものような)純粋さの象徴――そこ(かつての自分)に立ち戻る:いまの自分をリセット
◇女性性の充溢
モスリン:女性の衣料――ソフト・ナチュラル・繊細
‐ 流れる(輝く)黒髪
‐ 明るい光と柔らかな風をゆっくりした速度で全身に受ける:変身の条件
◇内省/思考
‐ 途中の木陰での休憩:一定時間とどまって沈思黙考
‐ 波のしぶきの音を聞きつつ内省→心境の変化
‐ 忘れる→思い出にする:恋愛感情の昇華/浄化
◇結論=着地点:一人でいることを選ぶ――失恋の結果ではなく自らの主体的選択
‐ 移動手段が自転車であることとの連関:自分一人の力だけで動かす乗り物
◇自転車:人間の身体にもっとも近い乗り物――ソフトランディングな自然な変化を促す
◇近くて遅い(身体を直接使う)移動によって海の世界の秩序に内包される:身体と精神の変化を自分で促す
◇最初から最後まで直接意識が向いているのはあなたではなく海――海のもつ力に対する絶対的信用

【共通点】
◇海までの距離・速度・移動手段とその過程を(目的から逆算して)主体的に設定している
◇身体的なアプローチ/コントロールによって精神・感情を(余裕を保てるよう/昇華して先に進めるよう)コントロールする:身体と精神の連動性――そこに絡む海の自然条件
◇男性性/女性性の意図的な横断/召喚――思い描く変化をもたらす糸口とする

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第9回:「あたしの/という海――流れ出る血のリアリティ/終わらない再生産」[2019/06/14]


【対象作品】
◆石川セリ“八月の濡れた砂”
作詞:吉岡オサム(吉岡治)
作曲:むつひろし
編曲:秋葉洋
1st Single「小さな日曜日」(1972/03/05)両A面
*映画『八月の濡れた砂』(監督:藤田敏八/日活/1971年8月25日公開)主題歌

◇映画に対する規定(作品の時代的・社会的象徴性):ステレオタイプなイメージ
‐ 「運動の季節」の終焉
‐ 「シラケ世代」
‐ 若者の無気力・無軌道・倦怠感
‐ 夏の湘南(1950年代の太陽族)の系譜:男性性(マチズモ)の充溢
◇この曲は映画に対する上記の規定・評価をはるかに超える(別の)ポテンシャルをもった作品:外因的なイメージを無効化させる内在的な力
◇「わたし」ではなく「あたし」
‐ ウーマンリブ:男性中心(家父長制的性格)の学生運動への幻滅
‐ 一般的な女性性の主体との差異化:従来の女性解放運動より先鋭化した自己規定
‐ 「女/おんな」:ニュートラルな・無色透明な・当たり障りのない「女性」ではなく
‐ 「あたし」:自らの女としての固有性・主体性・自律性・ありのままの生を強く主張する一人称
◇赤の連続強調
‐ まっ赤・夕日・血潮
‐ 一般的な海の物語のイメージ(青・白)を覆すインパクト
◇太陽と血/海とあたし
‐ [a]夕日が海(水平線)に沈んでいく→海面が赤く染まっていく(赤い範囲が広がっていく)
‐ [b]血が流れ出して周囲を赤く染めていく
‐ 血潮:あたしの血と海の水とのつながり(同義性)
‐ 「あたしの」海という定義:女の身体と海の直接的な接合
◇あたし=女が血を流す
‐ 女性身体における血の循環
‐ 女性身体からの血の排出
◇月経
‐ 生殖・生命(妊娠・出産)
‐ 周期(決まったサイクル)
‐ (日常的かつ特別な)再生産の営み
‐ 海との連関 cf.「初潮」/潮の満ち引き=潮汐(満潮・干潮/大潮・小潮)
‐ 海=月/太陽=女性身体:連動
◇夏の光と影
‐ 夏:太陽と海がもっとも強く光り輝く季節
‐ 光と影:(強い)コントラスト
‐ 生命力と感情(喜怒哀楽)のダイナミズム
◇喪失・剥奪・消滅
‐ どこへ行ってしまったの:喪失状態の持続
‐ 悲しみさえも焼きつくされた:感情の剥奪
‐ 想い出さえも残しはしない:記憶の消去・消滅
◇いつかは朽ちる愛
‐ 愛の限界・限定性
‐ ロマンティシズム(永遠の愛)への不信・諦念
‐ 恋愛ファンタジー(愛さえあれば幸せ)の拒否・放棄
◇明日も続くあたしの夏
‐ 終わらない再生産
‐ 日々繰り返される体内活動
‐ 女の身体がもつリアリティ
◇この曲が提示する姿勢
‐ 社会的な意味を剥ぎ取ったむき出しの身体の生命力
‐ 内面性(感情・感傷)の徹底的な排除
‐ 理想・理念・イデオロギーとの断絶
◇男性的ニヒリズムや敗者の美学とは異なる
‐ 社会的自己顕示・否定的自己規定・自己正当化・自己消去願望・破滅衝動――いずれでもない
◇男性性の位置づけ
‐ ヨット:近代物質文明/レジャー(中産階級文化)/男性性――男性の富と権力の象徴
‐ 浜に打ち上げられている:海の中心から外側に排出されている
‐ 朽ちるもの:有限性・儚さ
◇男性秩序(権力・生産・闘争・戦争)の虚しさ
‐ 男性秩序によってあらかじめ「(性・労働・感情を)奪われた」生を女たちは生きる
◇固有の身体性への依拠
‐ 現にいまある女の身体・生命そのものへの回帰
‐ 過去に存在した/未来に存在する無数の女の身体・生命との接続
‐ 女の再生産にのみ託される生の真実
◇「あたし」の/という「海」
‐ 生命の再生産の源である海と再生産する女の身体との関係性(リンク)
‐ 「の」=of:所有格+同格――内包(包摂)性と同質(同義)性
‐ つねに(有機的)液体を湛え・排出する構造 cf. 羊水
‐ 直接的に「産む」状況ではなく産む潜在力(が持続する状況とその価値)を強調
‐ 絶えることない無数の個体の生死を経た悠久のスパンにおける生命の循環構造
◇液体性
‐ 液体:流れる/カタチがない――が無力ではない(cf. 堤防を越える/壊す津波)
‐ [液体:生命力=女性身体]×[固体:モノ=物質文明=男性社会]
‐ 「濡れた」砂:乾いた物質が液体に浸された状態――生命が存在しうる条件(cf. 浜辺の生きもの)
‐ 境界をもたない:時代や地域を問わない(cf. 湘南と南米の接続*)
 *演奏:パラグアイ在住のルシア塩満[しおみつ]が演奏するアルバ(パラグアイの民族楽器:ハープ)
◇女の生/身体の(歴史的・地域的)普遍性
‐ 物質文明/支配・暴力/恋愛(ロマンティック・ラブ)イデオロギー――とは別の/切り離された/それらに収斂されない/それらに抗する身体:その共同性
‐ (家父長制・男性社会への)政治的・社会的抵抗の「基盤」となるもの:身体性
‐ 海・自然との必然的関係性

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第10回:「身ごもる身体――海と月の力による浄化・解放・再生」[2019/06/21]


【対象作品】
◆アン・ルイス“WOMAN”
作詞:石川あゆ子
作曲:中崎英也
編曲:佐藤準
30th Single「WOMAN」(1989/09/06)A-1

つわものどもが〜
‐ 男性社会の動態(争い・戦い・武力・支配・栄華)の虚しさ
 cf. 武士/近代産業/高度経済成長
‐ 雄大な自然(の力強さ)とちっぽけな人間世界との対比
‐ 遙かな時の流れ・蓄積する歴史:打ち寄せる静かな波に対応
‐ 無常観・(自分もまたその流れの一人にすぎないという)達観:きれいな気持ち(精神的な落ち着き)に対応
◇通り魔:急襲・強奪・逃亡・瞬間性:暴力性を象徴する強い表現
‐ 〜みたいなものとは……
[a]愛の記憶が染みついたドレスを流していく(さらっていく)波(潮)
 but ‐ 主人公はそれを目的(海に流すため)に来ている
   ‐ 波がドレスを引きずり込むのには時間がかかる
→[b]あなたの愛
‐ 愛の刹那性(+暴力性・支配性)――男性主体の愛
◇ドレスを流す
‐ あなたとの(愛の)思い出を消す――そのための儀式
‐ 冬の海+夜:誰もいない――海と一対一で向き合える
◇月と潮
‐ 満月(想定):光りの強さ(瞼に受ける――直視しない)
 ‐ ひとつのプロセスの終わりを象徴――区切りをつけるタイミングに適している
‐ 満ち潮(想定):浜辺からものを流すのに適当な環境
 cf. 新月・満月の頃:大潮/上弦の月・下弦の月の頃:小潮
◇月と海の力を摂取する
‐ 月の光を受ける:心を浄化
‐ 海水で濡れた裸足の足首を砂浜に投げ出す:身体を解放
◇愛の束縛
‐ 手を縛られた夜の鳥たち:被束縛状況
 ‐ 鳥なのに手:擬人化――愛という暴力的な力に絡めとられている人々
‐ 男性社会の恋愛秩序(愛という力による/名のもとの支配)から(女たちが)離れ/解き放たれ→別の次元で自律的な生をリスタートさせる必要性
‐ 海と月の力を借りて:ここでわたしが実演
◇自然の存在/力に気づく
‐ 砂も地球のかけらであること――を
 知識・教養・文学的表現として認識している/話す[男]
  ×
 実際に裸足で(濡れた足に砂を付けて)体感している[女]
‐ 身体感覚レベルで受け止める自然との一体感:月光・海水・砂
‐ 自分自身も自然の(歴史の)一部だと認識する
◇身ごもる+女なら耐えられる痛み:妊娠・出産/陣痛・分娩――再生産の過程
‐ とはいえ単純な母性礼賛や出産の美化(ファンタジー化)ではない
‐ 身ごもるのは悲しみ・さびしさ:被抑圧状況にある
‐ 身ごもった悲しみ・さびしさをやさしさに転化させる:母胎の中での育み=浄化
 ‐ 産み落とす前の段階:母子非分離
 ‐ 母胎:保護(防衛)機能
‐ 自身の感情を社会的な「愛」の力から防衛する/引き剥がす――セルフディフェンス/セルフケア
◇身ごもることで(私自身の)人生が始まる:自律的な生のリスタートに向けた動き【再生】
‐ 自らの再生産能力(の潜在性)の自覚化→自己の再生につながる
‐ 特定の個人に限定されない営み:潜在性をもつ人全般に可能性が
◇“My name is woman”:[個別性]+[匿名性・不特定性・遍在性:普遍性]――矛盾する両面をあわせもつ表現
 ‐ “I am a woman”ではない
 ‐ 実質的には“women”
‐ 「わたし」は(無数の)「あなた(たち)」であり「彼女(たち)」である
‐ 「わたし=女」の身体性・メンタリティは他の誰にもある/ありうる――女は誰もが解放され・再生しうる力と可能性をもっている
‐ シスターフッド[Sisterhood]・エンパワーメント[Empowerment]:呼びかけ・働きかけ(「あなたも/だってできる」というメッセージ)☆第2波フェミニズム(ウーマンリブ)
‐ →「女」にとどまらない範囲へ拡張していく志向性
◇「産む」こと自体の象徴性ではなくその潜在的可能性を強調
‐ ドラマティックな「出産」を示すのではなく(その前提となる)再生産の能力・営みそのものを重視・称揚
◇「母」とは言わない
‐ [女=母]図式への抵抗
‐ 「母」でなくとも内包している/分かち合える力
◇この先に想定されるもの:クィアネス[Queerness]――海の特性/力
‐ 恋愛秩序の無効化
‐ 単一的な生殖形態の相対化
‐ 限定された「女(Woman)」の枠を拡張
◇自己の内側(身体)・外側(自然・地球・宇宙)の関係性を認識・実感し再生していくことの意味と価値
‐ 自然との直接的なつながりを身体で確認
‐ 他者化(自らを自然の歴史の一部と捉え直すこと)による普遍化した自己の再獲得(アイデンティティとは異なるもの)
‐ 自分は自分だけど自分だけではない:「女」たちによる再生のプロセスの分かち合い

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第11回:「海水・気象・身体――台風を招く・つきあう・自ら生み出す」[2019/06/28]


【対象作品】
@堀川まゆみ“熱帯性低気圧”
作詞・作曲:松任谷由実
編曲:松任谷正隆
1st Album『楡(エルム)通りの少女』(1978/12/05)A-1
A小林麻美“Typhoon”
作詞・作曲:松任谷由実
編曲:武部聡志
4th Album『CRYPTOGRAPH〜愛の暗号〜』(1984/08/25)A-3

◇熱帯低気圧:“熱帯の主として海上で発生した低気圧の総称。海面からエネルギーを補給されつつ発達し、発生海域によって台風・ハリケーン・サイクロンなどと呼ばれる。日本では、最大風速が17.2メートル以上の熱帯低気圧を台風と呼んでいる。”(『大辞林』第三版
◇台風:“熱帯の海上で発生した熱帯低気圧が発達し、北西太平洋で最大風速が17メートル以上になったものが台風。”(朝日新聞掲載「キーワード」
◇熱帯低気圧の発生条件
‐ 熱帯(範囲;温度)
‐ 液体(海水)
‐ 気体(海水が蒸発→水蒸気の潜熱をエネルギー源に:暖気)
‐ 風(同心円状の低気圧→強い風速)
◇方角
‐ 北西→[転向]→北東
‐ 転向点:沖縄付近
◇台風の社会的な意味
‐ システム(交通機関/会社/学校……)をストップさせる
‐ 台風に名前をつける:社会現象としての象徴的な意味をもたせる
‐ 人間の生活に影響を与えるだけでなく感情や価値観の変化にもつながる
‐ リセットへの期待
‐ 非日常の力を発露させるタイミング
 cf. 『台風クラブ』(相米慎二監督/東宝・ATG/1985)

▼@
◇マニラが故郷という設定:堀川まゆみ:沖縄県出身/父がフィリピン人
◇あたたかな嵐=熱帯低気圧
‐ 豪雨:台風か(風速は不明)*以下便宜的に「台風」と扱う
◇状況:豪雨のなかを長時間歩いてずぶ濡れ
‐ おそらく意図的に
◇場所:東京(周辺)の街角
‐ 空港に向かう途中
◇故郷の存在
‐ マニラ自体は重要性は低い
‐ そもそもはどうでもよかった
‐ 結局最終的には行け/かない
◇ではなぜマニラを想うのか?
‐ 望郷の思いは台風が運んできた幻による
‐ 台風が運ぶ気体:海水の水蒸気
◇ふるさと
 ×:土地(都市)としてのマニラ
 ○:マニラの(東方)沖の海
‐ フィリピン東方沖:熱帯低気圧発生地域
 cf. 2019年6月20日の気象ニュース
◇この雨=私と同じ西南の生まれ→友だち
‐ 雨の起源は西南の海――の海水
‐ 海水→水蒸気→いまここに降っている雨
‐ それと同郷:行き着くのは(土地ではなく)海
‐ 西南に位置する生命を生み出す空間:海が故郷であることの必然性
‐ 台風が連れて来た雨だから起源がわかる
◇人の存在
‐ あいつ(男友だちか)の重要度は低い
‐ マニラには知る人もいない
◇土地・人 < 雨・海
‐ 自分がマニラという土地に行く必要はない
‐ いまいる場所(東京/周辺の街)でも台風の雨を受けることでフィリピン東方沖の海(の水)とつながることができるから
‐ 雨を受ける際は身体に直接コンタクト(ずぶ濡れ)
◇幻
[a]救いのナイト(騎士*女性含む)
[b]鳴り響くアンコールの拍手
‐ ポジティブな表象
‐ 自分を救済し励まし奮い立たせてくれるもの
‐ (セルフ・)エンパワメント
‐ 夢物語ではなく特定の雨のルーツという根拠がある
◇救いを必要とすること/幻を見られること
‐ 都市生活の孤独・不安・葛藤というリアルな状況への対応
‐ 周縁地域(アジア/沖縄……)から東京に(単身)出てきた者たちが置かれた状況を象徴
‐ but 東京の若者なら誰でも該当するわけではない:自らの身体性と自然現象とのつながりを意識していること(雨を友だちだと確信できる感覚)が必要条件
◇女性身体が(主体的に)台風の雨を受けることによって→幻を介して自身と雨のルーツを遡る感覚を発動し→西南の海(の水)と一体化する→現在の自身の状況をフォローしメンタルをケアする
[a]海水の力→女:雨で濡らす
[b]女→故郷の海:幻を介して帰還する
‐ 相関関係・双方向性
‐ 結果:女(私)をエンパワメント
◇台風は上空をやってくる:障害物・距離を問題にしない(遮られない/直結)

▼A
◇@との共通点
‐ 現実と幻の入り混じった状態
◇夜と朝の境界――夢と現実の間[あわい]
‐ 時間:夜明け
‐ 光:薄明かり
◇現象+幻想:混在
‐ 空:不思議な色
‐ 草:銀色(曇り空の光を受けて)
‐ 草・木:妖しく揺れる
◇台風の非日常性
‐ もうそこまで来ているという高揚感
‐ →感覚の変容
◇地域・気象条件の不特定性
‐ (1か所を除き)「台風」ではなく「Typhoon[タイフーン]」
‐ あの夏の島/ちっぽけな町:台風によって結ばれているという関係性しかわからない――そのことがもっとも重要なこと
◇脱境界性
‐ あの島の潮の香りは台風によってこの町に運ばれてくる――ことを女は強く認識している
‐ あの島:遠く離れている/ここよりも南に位置する(日本→東南アジア)
‐ 南の島/海でのひと夏の(恋愛)体験とそこ味わった感覚・感情が蘇ってくる:台風を介して蘇らせる
◇台風への要求
‐ あの島の潮の香りをここへ運んできてほしい
‐ ここ:他ならぬ私のもとへ(ピンポイントで)
‐ 女と台風の親密な関係性:つながりの深さ
◇台風(の風)が運んでくるもの
‐ あの海の海水の成分(水蒸気として)
◇台風が来て起こること/女が期待すること
[a]足止め:あなたをこの部屋に閉じ込める――二人の親密な愛の時間を継続させる
[b]自分の胸の奥に台風を生み出す
‐ 台風の再生産:女の体内で
‐ これは女「ひとり」にしかできないこと
‐ 南の海の海水成分を吸収することで(養分として)→体内に「子」を宿す
◇私の台風はどう働くか
‐ シーツの海の上を移動
‐ ベッドの上という空間で力を発揮する:愛の世界に必要な力を増幅させる
◇単純な幸福感ではなく
‐ 経験:苦しさを内包
‐ 現在:哀しさ・怖さを感じている
‐ それも含めて自らの(生命)力に
◇台風の入れ子構造
‐ 外の(自然現象としての)「Typhoon」/私の内の(個人的な力としての)「台風」
◇あなた<台風
‐ あなたは眠っている/いつかは出て行く
‐ 絶対的な愛を信じられる関係ではない
‐ 自らの内に生み出した台風の力は信じられる――それがあればあなたがいなくなっても生きていける
‐ また「Typhoon」が来れば私は自分の中に台風を生み出すことができる:再生産の力への信頼

▼@+A
◇台風と身体の対応関係
‐ 潜熱(熱帯低気圧のエネルギー源)=体温
‐ 水蒸気の元となる水:海水=女性身体に内包される液体と対応
‐ 接触:雨でずぶ濡れになる/潮の香りの空気を吸収する
◇夏の海から生じる気象現象と女の身体・精神とのシンクロ:オーヴァーラップ/相互作用
◇「女」の身体・精神のみで完結するもの(男を必要としない)
◇現実と幻想の両面を併せもつ/両面が混在する/両面は切り離せない:客観的・論理的に捉えられない感覚を伴う――女性身体/クィアな身体の特徴
◇台風:グローバルな自然循環現象として(人間の思惑・文明を超え)必然的なもの
‐ 社会/恋愛の秩序を超える力
‐ 社会的関係性/停滞した恋愛をリセットできる力:だからこそ台風の力を借りる
◇「南」側(第三世界)から来るもの:近代西洋文明とは別の/を脅かすもの
‐ [北/南:中心/周縁:男/女]区分との対応
◇植民地主義的感覚はない
‐ 土地・人の征服・収奪ではなく気象条件によってもたらされる環境を享受する/それに適合する
◇自然の力・流れに身を任せると同時に主体的に流れを読み/適応し/自らの身体・精神に反映させる
◇最終的には「台風という力」を自らの体内に生み出し・育む可能性(潜在力)
‐ 南の海の力+/=女性身体:液体性で共振
‐ 再生産の力(サイクル):(外−内の)再生産の連関構造
◇台風を媒介とした海水と身体の反応がもたらすもの:精神のケア/状況を動かす契機

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第12回:「なぜ女は液体を“纏う”か――身体の内外に海の環境をつくる」[2019/07/05]


【対象作品】
◆野崎沙穂“灼けたセミヌード”
作詞:小林和子
作曲・編曲:小林信吾
2nd Album『Sympathy』(1988/10/21)A-5

◇さまざまなかたちで身体に液体を摂取させる営み:その意味と重要性
◇肌(外)と内臓(内)に作用する多様な液体――とのつきあいかた
◇温度と音
◇気怠さ:ニュートラルな生の状況

◇“Lazy Blue”
‐ Lazy:“怠惰な/◎気怠い/のんびりとした/眠気を誘う……”*辞書的意味
‐ Blue:“憂鬱な/青/空/◎海……”*辞書的意味
‐ 「気怠い海」:“Moon”と対になりえる
◇海辺で灼いた肌:色よりも灼ける過程で吸収した熱の温度(の高さ)が問題となる
◇他者(男)の身体性
‐ 接触は部分的(指→紐)・一時的(すぐ離れる)
‐ 接触の重要度は高くない
◇ソルティー:“塩気のある/塩辛い/辛辣な/海の(においのする)……”*辞書的意味
‐ 潮水(海水)
‐ キス:“くちづけ/接吻/(微風などが)軽く触れること”*辞書的意味
‐ @彼と愛/幸福感のない口づけをする
‐ A海水を口(唇)につける/海水に触れる
◇ピロートーク[Pillow Talk]:“(夫婦・恋人の)寝室の会話/睦言(むつごと)”*辞書的意味
‐ (物理的に)距離が近い関係
◇Silent Talk:無音
‐ (心理的に)距離のある関係性
‐ このまま:Silent状態の継続を望む
◇抱き合っても意味がない:身体的接触の必要性を感じない
◇サーフィンになぞらえて(身体的・精神的)関係性の断絶状況を示す
‐ サーフィンの波の状態:サーファーの意思ではどうにもならない/海次第
‐ 海の意思が私の身体・心を決定している
◇セミヌード:身体のすべてをさらけ出してはいない
‐ 相手との距離感
◇灼けた←冷ます
‐ 冷えた液体を飲む――身体のなかに取り込む
‐ ワインを飲む:酔う→夢
 ――ワインは「(身体を)冷ます」が(とはいえのちに酔って体温が上がるが)「(酔いを)醒ます」ことはない(逆に酔う):身体は冷やしつつ夢の世界にに入っていくために必要なもの
◇もっと自由に……
‐ @愛の束縛から解放されたい:彼に対しての願望
‐ A“泳がせて”(not 生きさせて):海に対しての願望
 ――遠い島へ:自由に海を泳いで移動したい
 ――息が苦しい:うまく海面で息ができない
◇泳ぐ
‐ 必要なもの:水(液体)
‐ 水の状態によって息の質が変わる
‐ 理想的な液体とのつきあいかた:自由に泳げる
◇ゼリー
‐ 固体だがもとは液体
‐ 溶け出す:液体に戻る
‐ ぬるい:泳ぐ環境としては良い――人間の身体条件に適合
◇温度調節
‐ 灼けた肌(高温)に冷えたワイン(低温)→ぬるい海(適温)
‐ 自らの身体(内の液体)の温度=海水の温度:調和/快適
◇音を閉じ込める
‐ →Silentの世界に
‐ 海の中=Silent:だが実際は無数の生命活動が行なわれている
‐ 海を固体にした状態→溶け出す→液体に:閉じ込められていた成分が表出する――生命活動の展開
‐ 身体性との対応:液体のコントロール(摂取・排出)――生命活動/コンディション調整
◇生命/呼吸
‐ 海が溶け出す→液体が満ちてくる→泳げる
‐ └→生命活動の展開→きちんと息ができる
◇味/におい
‐ 海のゼリー:塩(潮)味=ソルティー
‐ ソルティーなキス:彼とのキスではなく海水を(肌/全身で)摂取する
‐ ココナツオイルのにおいを最大限強く吸い込む
 ――ココナツオイル:液体(←ココナツ:固体)
 ――液体の蒸発した成分を風を通して吸う:間接的に液体を摂取
 ――ココナツ:南の島/海の象徴的植物
◇Lazy=快適さ
‐ 温かな液体に同化していく身体:けだるく=Lazy
‐ 夢と現実の混合
◇人(男)の愛よりも……
‐ 腕を引かれても彼を見ずにその向こうの夕陽を見る
‐ 愛<風
 ――風:ココナツオイルのにおいを運んでくる+波(海面)のコンディションを整える
◇満ち足りたら悲しい
‐ 愛についてだけでなく……
‐ 満ちる/満ちない:液体性
‐ 適度な液体の状態・分量:呼吸の条件
‐ つねに満ちない状態の維持:循環
‐ 液体の循環構造:海・女性身体(胎内)
‐ 恋愛はすぐに終わる×液体の循環構造は終わらない
◇誰も縛れない
‐ @愛の束縛を拒否する
‐ A液体の秩序を生きる:区切れない
◇シャワー「に」着替える
‐ たんなるリフレッシュではない
‐ 液体(水)を本来身に「纏う」ものとして認識している
‐ 本来彼女の身体を維持するためには内と外で液体に浸しておく必要がある
‐ 自由に泳げる/正しく息ができる条件
◇液体に包まれる
‐ [a]ワイン(冷たい):飲む
‐ [b]ココナツオイル(におい):吸う
‐ [c]シャワー(熱い):浴びる=直接肌に当てて水に包まれる
‐ 自らの身体条件を維持するために彼女がやってきたこと
‐ 身体の内外の液体状況を主体的に管理(コントロール)する→Lazyな状況が保たれる
◇海の外にいながら自身の身体の内外に海の中の環境を設定する
‐ 女が生きていくために必要なこと
‐ それを整える強い主体性
◇愛(束縛)×自由
‐ 自由は身体の液体性を重視しマネジメントすることにより得られる
‐ 愛の優先度合いは相対的に低くなる
‐ 自由=Lazyな状況(を維持すること)

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第13回:「半分のわたしを支える声――空と海にひしめく無数の多様で不特定な存在」[2019/07/12]


【対象作品】
◆太田裕美“恋のハーフムーン”
作詞:松本隆
作曲・編曲:大瀧詠一
ストリングス&ホーンアレンジ:松任谷正隆
20th Single(1981/03/21)A面

◇状況・環境
‐ 位置:茅ヶ崎の海(に面した場所)
‐ 空間:駐車中の車のなか
‐ 人:2人(わたし・あなた)
‐ 時間:夜
‐ 天体:月(半月)+星(“降る”→流星群)
‐ 気温:肌寒い――春か秋
‐ 音:ラジオ(FEN=英語)
◇半月
‐ 弦月[げんげつ](英語:half moon/half-moon):上弦または下弦の月。輝いている半円部分が弦を張った弓のように見えることから。弓張り月ともいう。秋の季語。*辞書的意味
‐ 上弦:夕方に南の空に正中→深夜に西の空に沈む
‐ 下弦:深夜に東の空から昇り→明け方に南の空に正中
◇秋の流星群
‐ ジャコビニ流星群/オリオン座流星群/おうし座流星群/しし座流星群/いっかくじゅう座α流星群
‐ 流星を見るには周りが暗い必要がある――深夜
◇月と海
‐ 弦月:弓を張る/引く
‐ 渚に糸を引く――と対応
‐ 月→海面にベクトルが伸びる
‐ 上弦・下弦どちらでもありえるが、深夜の時間に月自体が海面に向かって沈んでいくのは上弦。
‐ 月と海との一体性(糸で結ばれている――ベクトルが可視化されている)/相互連動
‐ cf. 小潮[こしお]:月が上弦と下弦にあるとき、月と太陽との潮汐力が弱め合って、満潮と干潮のときの海面の高さの差が小さくなる現象。(「月」『日本大百科全書(ニッポニカ)』
◇月と女
‐ 糸を引く―(手仕事/生業)→機織り(女性の仕事)
‐ 月の中の影を機織り女[はたおりめ]と見なす伝承:インドネシアからポリネシアにかけて広く分布(「月」『日本大百科全書(ニッポニカ)』
◇月=海=女
‐ +取り巻く流星群――が彩りを添える(関係を補強する)
‐ 直接的関係/連動システム――が作動している
◇半月
‐ 新月と満月(ピークの両極)のあいだ(中間)
‐ (人間的な関係性:)どっちつかず/中途半端
‐ 変化の途上/過程/変態の準備
‐ 上弦:吸収/下弦:放出――(体内)循環
‐ 女性身体+精神のコンディションとの連動
 ――気持ちも途切れ途切れ/不思議に泣けない
◇中途半端な意思表示
‐ リクライニングは少し
‐ あなた(男性)に対する受け入れと拒絶――吸収(上弦)と放出(下弦)に対応
‐ 待って×3/or no/たぶん好き
◇主人公の女性性を体現/補完する要素
‐ @複数性(無数性――上限がない)
‐ A多様性(差異――一つとして同じものがない)
‐ B不特定性
◇それらを担保するもの
‐ [A]反復・共鳴
‐ [B]多言語の混在(日+英)
◇複数性(無数性)と反復
‐ 心半分:もう半分がどこかに存在する――ふつうに考えると隣のあなた(1/2+1/2=1)だが……おそらく1/2を期待されているのはあなたではない
‐ ひとりひとり:[a]一人(独り)=1人/[b]一人+一人=2人/[c]“ひとりひとり”=(特定の2人にとどまらない)複数の/無数の存在
‐ 星降る=流星群(+空に輝く星):(肉眼で見えないもの含め)無数
‐ 海の環境:見える+見えない無数の生命――の再生産
‐ 波のまにまに:「間に間に」とあてれば波の複数性・無数性(波自体は反復的に打ち寄せ波音は共鳴して耳に届く――が一つとして同じ波/波音はない)
‐ 天体・海には無数の(生命/物体/現象の)存在がある:それらがわたしを取り巻いている→それらの総合がわたしの欠落を埋める?
◇共鳴が生み出す多様性
‐ 音は必然的につねに変化しながら(人には聞こえない領域まで)広がり・延伸し続ける
‐ 同じ音として聞こえることはない
 ――時差/音量/周波数/ノイズ
 ――本作でも声の波形的変化が表現されている
‐ 不変ではなく瞬間単位で変化する:人間の感情・感覚とリンク――必ずしも合理的な判断や決定はできない:揺らぎ・曖昧さの必然性
◇反復・共鳴の声と不特定性
‐ 特定の人間のものではない
‐ 二言目以降の発話はわたし(発話者)のもとから離れる
‐ 本人の感知しないところで変質し→それが言葉全体の意味を確定していく
◇意味の多義性・不特定性
‐ FEN:インターナショナリティ/ハイブリッド
‐ 日本語でのわたしの思考に英語の(歌/言葉の)フレーズが(無作為に)混じり込んでくる:それらが自然と結合する
‐ 随所に差し込まれる英語フレーズ:わたしの思考回路をずらし(攪乱し)ながらある展開へと導く:思考が自己相対化される→それを組み込んだうえで意思が(まさになんとなく)決定されてくる
‐ 自らの意思と無関係の音声を意図的に招き入れて引き受ける:自らの意思を自らの責任から離す
‐ 自分でもよくわからない・決められない(恋愛の)要素を自然環境とラジオの声に委ねる:わたしとあなたという(密閉された空間にある)固定的な関係性を崩す+自らの精神や感情を凝り固まった状態から解き放っていく
◇右手に重なるもの
‐ 右手(手の半分)を重ねる:半月を示唆(月全体のうち向かって右側が見える状態は上弦)
‐ 右手を重ねる相手は隣にいるあなたではない:左右に並んだ車のシートの両側から中央に向かって手を出す(→・←)と右手×左手でないとおかしい
‐ 手は外せない:強く重い力が折り重なっている+重ねている存在とわたしは不可分(切り離せない)関係性にある
‐ 人間同士の単一の組み合わせではなく不特定・多数(無数)の接触・重なりを示している:重なっているのは星・波・海の生き物たち
◇反復・共鳴の主体は誰でどこに位置するのか
‐ 星・波・海の生き物たち
‐ それらはわたしの残り半分を埋めるのではなく、つねに半分の状態であるわたしに折り重なってくるかたちでわたしを補完する。
‐ 半分(1/2)を埋めて全部(1)にするという(男女の)対幻想を否定する
◇対象を特定しない
‐ 相手が誰でも好きだと言える“の?”:太田裕美の歌唱におけるイントネーションは“?”(問いかけ)ではなく“!”(断言)に近い
‐ 誰でも:人間という枠にとどまらない、複数性(無数性)・多様性・不特定性を湛えた存在(――クィア性につながる)。
‐ なぜ?:それらはつねにわたしの身体・精神を組み換え再生産していく(クィア化していく)力をもった存在だから
◇女性身体と通ずる月と海の再生産機能
‐ 月:満ちる/欠ける(周期)
‐ つねに移動しつねに違った見えかたをする
‐ 月を取り巻く天体の状況(その関係性)もつねに変化している
‐ 海:潮が満ちる/引く(周期)
‐ 波の反復性
‐ 生命は絶えず再生産され、海の中はつねに変化している。
‐ どこにでもつながっていて単一の秩序がない(統括不可能性)
◇繰り返す/つねに同じでない再生産に身を委ねる
‐ 波のまにまに:「随に」――“〜の動きに任せる”
‐ 海の意志・秩序・流れに従う姿勢
‐ あなた(男)の真の愛は想定しない:つれなさの嘘でも/少しだけ/それとなく――でいい
◇まとめ:ここで示されているもの
‐ (半)月と同一化したわたし(女)が自然に生きていくための条件・環境――わたしを取り囲む星・波・海の生き物たち
‐ それら無数の・多様な・不特定の外部によって女の身体・精神はつねに(クィア的に)補完・再編されていく
‐ 人間(近代的個人)の対幻想(単一的な恋愛関係の規範)とは相克する

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第14回:「風を追って故郷の海へ――現代の人魚が見せるトランスフォーメーション」[2019/07/19]


【対象作品】
◆松田聖子“小麦色のマーメイド”
作詞:松本隆
作曲:呉田軽穂(松任谷由実)
編曲:松任谷正隆
10th Single「小麦色のマーメイド」(1982/07/21)A-1|第24回日本レコード大賞金賞

◇マーメイド(若い女性の人魚)でありながら……
‐ 裸足・小麦色(灼けた肌)――人間的な身体性
‐ プールにいる――近代的な物質性・世俗性(レジャー/裕福さ/ステイタス)
◇アンデルセン童話『人魚姫』との連関性
‐ 足がある:人魚→人間の少女へ変態[トランスフォーム]した
‐ 恋愛は成就しない――がたんなる悲劇(悲恋の物語)でもない
‐ 現在的な世俗性(デッキチェア/林檎酒)とその刹那性が強調されている
‐ そうしたズレ/ギャップが彼女のもつ両義性と重なる
◇複合的な両義性
‐ 身体の両義性(人魚×=人間)=感情の両義性
‐ 嘘×=本気/好き×=嫌い:どちらにも変われる・どちらでもありえる・どちらでもよい・そもそもそういう(いずれかという)問題ではない
‐ 敷衍すると:恋愛が成就するか破局するか/幸福になるか不幸になるか――といった両極性も同様
‐ 身体:変態[トランスフォーメーション/クィア性]の潜在性――固定的・一義的な存在ではない
‐ 寓話とリアル(現在性・世俗性)の両義性
◇身体性
‐ 行為描写の不均衡(非対称):あなたの行為>わたしの行為
‐ 自らの身体性はミステリアス(寓話性):だが肌+水の状況に関してはリアル――特別な意味
‐ ウィンク×3連続×2度=6回:行為としては不自然――実際の歌唱パフォーマンスでウィンクするのは一度だけ(6回目の直前):実際に6回やっているとは想定できない
◇音楽的展開
‐ 穏やか・緩やかな反復の世界――平坦に・淡々と・メロウに:わたしの静的な内面を象徴
‐ 永遠に続くかのような夏の午後の気怠さ(心地よいまどろみをもたらすLazyさ)を表現:環境に対する普遍的な感受性
‐ ラスト手前で一気に“静→動”:それまでの状況を打ち破り変動させる衝動性(→そしてまた“静”に戻って終わる)
◇没コミュニケーション
‐ あなたからのあの手この手の積極的(動的)なアピール/アプローチ:わたしはスルー/はぐらかす/少し怒る
‐ あなたとわたしの噛み合わなさ:目の前のあなたの動きを観察はするがまともに向き合い(・応答)はしない
‐ あなたをつかまえて泳ぐ“の”と予告するが実際は泳いで(プールに入って)いない:水しぶきがかかる時点まで肌は濡れていないから
‐ まじめ顔でつぶやいたのを最後にあなたは出てこない:なぜか?
‐ ウィンク×6回(実際には1回しかしていない)の不可解さ:あなたへの好意的意思表示でない――あなたとは関係のない何らかの符号/合図/呪文的なものではないか
◇二人のベクトル(追い求める目標)の違い
‐ あなた→わたし
‐ わたし→X(あなたではない)
◇わたしが追うのは――常夏色の夢と風
[常夏の意味a]:つねに夏のような気候であること
‐ 終わらない永遠の夏(の反復)を望む
‐ 南の世界(南国)への憧憬――だが単なる憧憬ではない
‐ 肌が小麦色である必然性:その環境(つねに夏である気象条件)が本来自分がいるべき世界
‐ 人魚であること:もとは海に生きていた――南の海が故郷(最後に自分が小麦色であることを〔やや不自然に〕念押し的に強調するのは自らの出自を確認するため)
‐ 風を追って故郷の海へと戻る――回帰願望
[常夏の意味b]:ナデシコ(撫子)の花(ナデシコ科ナデシコ属の植物/北半球の温帯域を中心に約300種が分布/秋の七草の一つ〔旧暦の秋は現在の7月〜9月〕/色:ピンク・赤・白)
‐ ピンク――林檎酒の色と同じ
◇気体化とその意味
‐ 林檎酒=シードル:発泡(気体化)
‐ 灼けた素肌に冷たい水しぶきがかかる:水分が蒸発する(気体化)
[気体化A]飲んだシードルの泡:“身体の内側で”気体化
[気体化B]肌の水しぶきが蒸発:“身体の外側で”気体化
‐ A+Bの蒸発=気体化がわたしの身体・精神に影響
‐ Bのあと静→動(受動→能動)にシフト
‐ 6度目の直前のリアルなウィンク:変態[トランスフォーメーション]の合図――その前の5回はその準備過程を示す符号(呪文的なもの)
‐ アンデルセン『人魚姫』:(人魚→人間→)海の泡→風の精(空気の精霊)――最後は気体化
‐ 気体化により→風に乗って空間を越え移動することが可能になる:南の海の風を追いかける条件が整う
 cf. プールという箱庭的空間性とのスケールのギャップ:一気に大きな展開を見せる
◇あなたをつかまえて生きる
‐ 穏やかな流れから一転して→キーが上がり最高潮の(鬼気迫るような)気力で発する言葉(叫び):“生きるの”――自らが生きる(=サヴァイヴする)ことを主張(強調)
‐ あなたをつかまえて――は“生きる”ための条件という位置づけ
‐ 捕食的摂取のイメージ:南の海に帰る(長旅の)ために必要な行為・過程――あなたはその資源
‐ 海を離れたマーメイドの再生産資源:人間(の男)の生命力
◇残る感傷・葛藤
‐ 人間としての恋愛感情との折り合い――しかし一貫して好きor嫌い/嘘or本気の答えは出さない
‐ 束の間の世俗的世界との決別:名残惜しさ
‐ 最終的には人魚としての運命を引き受ける――その運命をわかっているから恋愛の答えを出さずにいた
‐ 最後に斜め下を向く:プールとあなたを空から見下ろす(アンデルセン『人魚姫』でも風の精になった人魚姫が地上にいる王子の妃に接吻する)
‐ あなたを地上に残して飛び立つ→風に乗って→南の海に戻る(→そこでまた人魚へとトランスフォーム)
◇本作のポイント
【1】変態(トランスフォーメーション/クィア性)
‐ 女だけがもつ(潜在的)能力
‐ 海(人魚)+陸(人間)+空(気体)への適応
【2】回帰
‐ 南の海の世界からの風を感知しそれを追いかける本能
‐ 空間の越境
【3】再生産
‐ 生存(サヴァイヴ)を最重視
‐ 生存条件――Lazyな永遠の夏を求める
‐ 終わらない夏:生命が再生産を謳歌する世界
【4】脱恋愛
‐ (近代)人間社会の恋愛至上主義を相対化する
‐ オルタナティヴな使命感・幸せ――を追求することの意味(アンデルセン『人魚姫』では風の精の仕事=役割の意義が説かれている)

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第15回:「海という生命体、海の時間、海のもつ記憶――セクシュアリティの無効化とその先に求められるもの」[2019/07/26]


【対象作品】
@太田裕美“海が泣いている”
作詞:松本隆
作曲:筒美京平
編曲:萩田光雄
9th Album『海が泣いている』(1978/12/05)B-1
A谷山浩子“海の時間”
作詞・作曲:谷山浩子
編曲:斎藤ネコ
18th Album『ボクハ・キミガ・スキ』(1991/05/21): 10
B石川セリ“遠い海の記憶”
作詞:井上真介
作曲・編曲:樋口康雄
4th Single(1974/08/25)A-1
*NHKテレビ少年ドラマシリーズ『つぶやき岩の秘密』(1973/07/09〜07/19〔全6回〕)主題歌

▼@
◇海=生物
‐ 海そのもの・全体を一つの生命体とみなす:たんなる擬人法を超えた意味づけ
‐ 主体性・能動性――泣く(感情・衝動)/走る(躍動感・身体)/黙りこくる(not 黙る:明確な意思をともなった沈黙行為)
 cf. 浜辺=海の周縁の空間性も行為主体に
◇風との対比
‐ 油絵:人によって描かれるもの(受動的)/生命がない(物質:キャンバス)/固定された存在(絵具が固まる/額に入れられて飾られる)
‐ 非主体的・非能動的
◇海の描写/風・雲・鳥の描写の間の差異(対照)――に対応する人との関係性
[1]海:言葉が聞こえる
‐ あなたの代わりに海が媒介して(別の言語体系で――黙っていても伝わる言葉で)代弁
‐ 主人公=女と(のみ)のつながり/コミュニケーションの成立
[2]風・雲・鳥:そっぽ向いた/わざと残酷に/知らん顔
‐ コミュニケーションの断絶(ディスコミュニケーション)
‐ 疎外された状況:男性的プライド
‐ 変化の必要性――を女(だけ)は感じる
‐ 海の力を借りる――海の機能を自らが果たすことで
◇海と人(女)との共振・連動
‐ あなた(男):ステレオタイプな男性ジェンダー秩序(ダンディズム)を内面化――それに縛られて苦しむ
‐ わたし(女):(そんな男を)ケア・包摂(受け止める/精神的な抱擁)――表面的には女性ジェンダーの体現/だがそれは同時に海が内包する生物に対して果たしているのと同じ役割
‐ 人間の身体性=海の有機性:(もし)肩を抱きしめられたら→心は身体に溶ける――身体性が精神を癒す:言葉や概念や秩序ではなく――海は意志ではなく機能として生き物を育んでいる
‐ 女の精神の平穏→荒れていた海が静まる
‐ 人(女)と海との身体的な共振関係
◇硬→軟
‐ “黒”:ハードボイルド/威圧感/無機的/強い/硬い――男性ジェンダー
‐ 女+海のケア/包摂で溶けて緩む
◇時の航海
‐ 海が静まることで二人は帰る:どこへ?――短期的にはおそらく都会の居住地へ/長期的には(いつの日か)海へ:特に後者のほうが重要
‐ 自然の流れに小舟を浮かべて:海に漕ぎ出す/主体は二人(小舟ゆえ)/流れに身を委ねる航海(小舟ゆえ)
‐ 自然の流れ=[a]海+[b]時(cf. 浜辺を横切る“時”の存在)
‐ 海の時間に入っていく:海の世界(全体性)への回帰
‐ 訪れる平穏:人間社会の/恋愛関係の苦しみから解き放たれた時間――だから女は男に安心せよと説く
◇生物/生命体としての海
‐ 複合的・包括的な生命体系
‐ 多様な存在を受け入れ/と共振し/と共同性を構築する力をもつ――多面的・複合的なセクシュアリティをもつ存在も受け入れる
‐ 主人公(女)はそれを知っている気づいている(クィアな存在もそれに気づける潜在性を有する)
‐ 女はジェンダー秩序に縛られた男を諭して海の世界に誘[いざな]う
◇ジェンダー/セクシュアリティの無効化
‐ 男女二人が海の世界に入っていく:ジェンダー/セクシュアリティは海の秩序に飲み込まれ・溶解していく
‐ ジェンダー/セクシュアリティという枠組みの無効化→平穏な時間の訪れ
‐ そうした未来のイメージを女が示す
▼A
◇主体(人)
‐ ぼくときみ:男女?――ジェンダー的にはフラット/ニュートラル
‐ 身体的に密着している
‐ 純粋で真っすぐな愛のアプローチ
‐ 子どもでもおとなでもない微妙な存在(幼さ・純粋さ/豊かな教養)
◇旅に出る
‐ 寒い雨の夜:人気[ひとけ]がない状況
‐ 二人だけの親密性を最大限にまで高めて
‐ 移動手段:ベッドの船――二人が密着していながらにして
◇時間旅行
‐ 過程:大森林・遠い昔の植物たち・水の岸辺――を通過して
‐ 太古から多様な・膨大な植物・生命体(胞子を含む)が再生産され続けてきた(生命の)体系を確認
◇時間旅行のゴールは海の底
‐ 海の底=遡れる時間の極限
‐ 海の深さ=時間の深さ(長さ)
‐ 地球の生命の起源(海百合・三葉虫)
◇無限の現在[いま]
‐ 遡った時間の極限=無限の現在(つながる/ループ)
‐ 現在と太古を結びつけるもの=海:絶えざる再生産の装置――地球に生物が生まれたときから現在まで連続して存在し+生命を育んできた
‐ 時間旅行の行く先が海である必然性
◇ジェンダー/セクシュアリティの消失
‐ 太古の海ではぼくときみの境目がなくなる:ジェンダー/セクシュアリティが消失・無効化される
‐ 太古の海では生物のセクシュアリティは明瞭でない(cf. 無性生殖):始原的な再生産の体系
‐ そうした海の生命秩序が(現在の)二人の身体・関係に反映・還元される
◇“恋”の変容
‐ 時間旅行を経て起こった変化
‐ 水が命を〜/森が息を〜/星が生まれ〜……るようにぼくたちは恋をする
‐ 人間の恋愛とは違う次元での“恋”=関係性の構築
‐ 歌詞の文言は最後も同じ(冒頭にループ)だがその内実は変化している
◇セクシュアリティの消失→“恋”の変容を経験する意味/目的
‐ 近代的自我/(ジェンダー・)セクシュアリティに規定されてしまいそうな自分たちの存在・関係を、本来生物がそうあったはずの始原の生命・共同性・結合・再生産のスタイルへと変換する。
‐ 近代的人間社会の秩序を脱出・相対化したいという願望――どんな言葉もない環境(文明・「社会」の外側)へ
‐ セクシュアリティを無効にする海の時間性・生命体系:人間にとっては超越的で混沌としていながら壮大な・豊潤な秩序を有している――そのなかに組み込まれること
‐ 海の時間を経験した後に獲得される要素:恋愛を超えたケア/包摂の意識・関係
◇海の時間へのアプローチ:二人ペアで
‐ @の[わたし+あなた]と同じ構図
‐ 特定のセクシュアリティ(単体)でのアプローチではない:海の生命体系が内包する複数の・複合的セクシュアリティに対応
‐ セクシュアリティを飲み込み・溶かす海の機能を事前に認知している――その効果を期待してアクセスする
▼B
◇海の記憶/記憶としての海
・[a]海を記憶する:いま見える風景
・[b]海の(=海がもつ)記憶を(人が)記憶する
‐ [a]:表層的な記憶(絵葉書のような/見かけの美しさに特化された)も含む(往々にして表層的/表象的な記憶にとどまる)/ピンポイントな対象設定となる(三浦海岸・○○海岸・××海岸……)
‐ [b]:海の“本当の姿”――深層的・全体的な記憶
‐ 最終的に要請されているのは[b]
◇海(の記憶)を記憶する意味
‐ 海は君を育み見つめてくれた存在:応答(見つめ返す)の必要性
‐ 海が教えてくれたものを後になって振り返る可能性を担保する
‐ “ふるさと”=海そのもの(全体性):生命のふるさと――○○海岸・××海岸という特定の場所ではない
◇君という不特定の存在の意味
‐ 記憶することを要請(命令)されるのは不特定・無数の少年少女(=“君”)
‐ 少年少女:海との交感能力をもつ――見つめるのが“今”であることの意味
‐ その能力はおとなになる過程で失われてしまう:近代的自我の確立(「個人」になる)/社会化されることによって
‐ おとなになってからでは海の本当の姿にはアクセスできない
‐ 風景の記憶もはおとなになる過程で溶けてしまう:溶けるのは[a]の記憶/[b]の記憶を保ち続けることが重要――だが[b]の記憶は表象/言語化できない→ゆえにそれが“何だったのか”(その内容)は明確にできない(だがたしかに“ある/あった”ことは忘れない)
◇セクシュアリティの揺らぎ
‐ アイデンティティ・ジェンダー・セクシュアリティが不確定な存在(少年少女)であるがゆえに海の記憶を受け止め・身体化することができる
‐ おとなになって近代的秩序が自分のなかで臨界した際に海の記憶が“ふと”(実は必然的に)浮上する:記憶の記憶がよみがえる――自らを抑圧・疎外するアイデンティティ・ジェンダー・セクシュアリティを無効化・相対化するための原動力として
‐ 海の記憶は現代社会の矛盾に蝕まれた人間を救済する潜在力をもつもの:それを活用できるかどうかは子ども時代の取り組み次第

【まとめ】
◇海とセクシュアリティ:海の生命体系・時間・記憶にストレートにアプローチできる存在
‐ セクシュアリティが不確定な状態の人間(少年少女)
‐ セクシュアリティを越える意思(勇気)をもった人間
‐ 海がセクシュアリティを飲み込み・溶かすことを認知している人間(女)
‐ プラトニック/ピュア/イノセントな存在
‐ クィアな存在
◇海の生命秩序=生物多様性(Biodiversity)=クィア性
‐ 単一の体系では括れない生命秩序とその空間
‐ セクシュアリティ確定以前の生命の姿
‐ 人間が把握できない生命の総体(本来人間もその一部):その始原の状態を取り戻したいという人間の(必然的な回帰)欲求
◇時間・記憶
‐ 海がもつ超越的な時間体系 × 人間の小さすぎる記憶(・認識):対照的
‐ アプローチの不可能性を知りつつアプローチする人間の存在
‐ 不可能性を埋めるための手段としてある主体的な記憶の獲得
◇近代社会を超える
‐ 明確なアイデンティティ(近代的自我)・ジェンダー・セクシュアリティとは別の秩序において構成され・把握され・補完される世界――近代的な社会性・価値観・基準で評価する/位置づける/推し測ることはできない
‐ 海は人間の「社会」を破壊するほどの茫漠たる豊饒さ(内包する存在/時間/記憶)を有している――ことに一部の人間は(身体レベルで)気づいている
‐ だからこそ人は海を畏れると同時に魅了される
‐ 本源的な世界への回帰欲求:始源の生命体へと人間を差し戻す可能性をもつ海――そこに賭けようとする人間の欲望

【付論】「女と海/クィアな海」が歌われた背景――その時代的な必然性
‐ 高度経済成長の終焉
‐ 生産・消費・経済発展至上主義の限界が露呈
‐ 公害問題:「開発」のひずみ・犠牲(人間のみならず自然も)の可視化
‐ 自然との関わりかたを再考:自然という存在に改めて向き合う
‐ 男性中心/男性的企業社会が切り捨ててきたものに目を向ける
‐ 再生産(女性の身体/生命を育むこと/産むこと/ケアすること/「母性」)に改めて向き合う――「生産性」の裏側
‐ 性役割への違和感/批判的視角:ウーマンリブ/主婦の「自立」志向
‐ 脱近代社会の動き:コミューン(commune)志向・実践(cf. ヒッピー)
‐ 反近代的表現:アンダーグラウンド・カルチャー(「アングラ」)/アヴァンギャルド(前衛)/サイケデリック(「サイケ」)/ノイズ/インプロヴィゼーション(フリージャズ)……――予測不能/禍々しさ/クィア性

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■参考[References]

対象候補とした(が取り上げられなかった)もの[Alternative Candidates]


◆広谷順子“Day Dreamin'”
作詞:竜真知子
作曲:広谷順子
編曲:佐藤健
2nd Album『Blendy』(1980/02)A-4
◆八神純子“黄昏のBAY CITY”
作詞・作曲:八神純子
編曲:瀬尾一三
18th Single「黄昏のBAY CITY」(1983/11/21)A-1→7th Album『Full Moon』(1983/12/05)A-3
◆二名敦子“堤防”
作詞・作曲:二名敦子
編曲:船山基紀
6th Album『Fluorescent Lamp』(1987)A-2

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関連する情報[Related Information]

◆中村佑子 20180106− 「[連載]私たちはここにいる――現代の母なる場所」『すばる』40-2(2018-02): 218-232[第1回] *以降隔月連載
◆村上潔 20181001− 「中村佑子「私たちはここにいる――現代の母なる場所」を読んで【集約】」
◆村上潔 20130315 「女の領地戦――始原の資源を取り戻す」立命館大学生存学研究センター編『生存学 Vol.6』生活書院,379-393(特集2=都市)

フェミニズム (feminism)/家族/性…
性 (gender/sex)
環境倫理/公害/環境思想|Environmental Ethics

◆エコフェミニズム[Ecofeminism]
 ◇サブシステンス[Subsistence]
 ◇再生産[Reproduction]
 ◇母性[Motherhood]
◆第三世界フェミニズム[Third World Feminism]
◆ポストコロニアル・フェミニズム[Postcolonial Feminism]

◆エレーヌ・シクスー[Hélène Cixous]
◆ジュリア・クリステヴァ[Julia Kristeva]
◆マルグリット・デュラス[Marguerite Duras]
◆ショシャナ・フェルマン[Shoshana Felman]

ガヤトリ・C・スピヴァク[Gayatri C. Spivak]
◆トリン・T・ミンハ[Trinh T. Minh-ha] 【cf.】

ダナ・ハラウェイ[Donna Jeanne Haraway]
◆シルヴィア・フェデリーチ[Silvia Federici]
◆レベッカ・ソルニット[Rebecca Solnit]

石牟礼道子
森崎和江
◆梨木香歩 【cf.】



*作成:村上 潔MURAKAMI Kiyoshi
UP: 20190412 REV: 20190413, 20, 27, 0516, 24, 25, 31, 0613, 17, 22, 0706, 12, 17, 20, 27, 0805
事項
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