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若年非正規労働者による労働組合のニュースなど  2004年

2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 200701-06 200707-12

製作:橋口昌治* 2007.07-



■1121
□沼津と富士できょう非正規雇用者の相談会 静岡青年ユニオン開催=静岡(読売新聞)
 静岡青年ユニオンは二十一日、沼津市大手町の県東部地域交流プラザ「パレット」と富士市蓼原町のロゼシアターで、「仕事・バイトの何でも相談」を開き、 フリーターや派遣・契約社員など、非正規雇用の若者の労働相談に無料で応じる。電話(0545・57・1815)でも随時受け付けている。

■1115
□失業率「改善」のまやかし 非正社員を切り捨てる(アエラ)

 企業の業績回復を受けて雇用情勢は好転している、という。
 が、セーフティーネットからこぼれ落ちる人たちは増えている。
 働き方の多様化に保護の仕組みが追いつけないのだ。
 (編集部・井原圭子 CG・高井正彦)
 
 ○失業を認められない
 派遣社員の一瀬暢子さん(39)は今年6月、2年続けた貿易事務の仕事を突然失った。社長の親族が入社するのでポストを明け渡せという。
 「君の能力の問題じゃないから」
 社長にはそう言われたが、悔しくて涙がこぼれた。
 月収は生活費と子どもの教育費にあてていたので、失業は家計を直撃する。すぐに失業給付の手続きをするため、派遣会社に離職票の発行を求めた。
 ところが派遣会社は離職票をなかなか出さない。問いただすと、職業安定所の指導で、派遣社員は契約が切れた後1カ月間は様子を見るのだという。その1カ 月の間に、一瀬さんは一度だけ別の仕事を紹介され、断った。自分のスキルに合わないと感じたからだ。8月にようやく届いた離職票には、離職理由として、 「自己都合」の欄にチェックがされていた。
 派遣先の勝手で失業したのに、なぜ?
 失業給付は退職理由によって受け取れる時期が変わる。会社都合だと7日後だが、自己都合は3カ月後だ。仕事が見つからなければ、待機期間を含めて4カ月 以上、派遣社員は無収入になる。だから、退職理由がどうなるかは死活問題なのだが、派遣社員は次に紹介された仕事を一度でも断れば、「自己都合」と判断さ れるのだ。
 「派遣社員は派遣会社から仕事の紹介があるので、離職が即失業、とはいえない」
 というのが、厚労省の考え方だ。雇用保険財政が破綻寸前で、失業認定を厳しくして受給者を抑制し、早期の再就職を促すねらいもある。
 だが、関係者は以前から「派遣社員に不公平だ」と指摘してきた。派遣社員の増加とともに問題は深刻化している。
 「派遣社員は雇用保険に入れても、そう簡単に保険を使わせるなということですか」
 一瀬さんは怒りが収まらない。
 
 ●大学もパート教員頼り
 5%台で高止まりしていた完全失業率が、今年に入って3年ぶりに4%台に回復している=35ページのグラフ。
 しかし、失業給付など正社員を前提とする保護の仕組みは派遣社員や契約社員らに対して十分に機能しているとはいえず、セーフティーネットからこぼれ落ち る非正社員たちが増えている。
 「『完全失業』は正社員の特権ですよ。かけもちパートは常に不完全失業の状態に置かれている」
 首都圏大学非常勤講師組合の志田昇委員長はそう話す。
 松村比奈子さん(42)は、東京理科大など3都県7大学で法律学を教えている。週9コマの講義で年収300万円弱。移動だけで6時間かかる日もあり、講 義の準備の時間も入れればフル回転だ。
 非常勤講師の3人に1人は、その仕事を生計の柱としている。1年契約で1コマ当たりの年収は30万円が相場だから、複数の大学をかけもちする人が多い。 典型的な「こま切れかけもちパート」労働者だ。1カ所あたりの勤務日数が少ないため、雇用保険や社会保険に加入できない。健康診断も受けられない。
 雇用の保障もない。少子化で大学も冬の時代。組合の03年の調査によれば、非常勤講師の48%が講座の廃止などで仕事を失った経験があるのに、授業の6 割を非常勤講師でまかなう私立大がある。同世代の教授や助教授は年収1000万円超。使い勝手のよい労働力への依存が、大学でも進んでいるのだ。
 「研究者のプライドもあり、労働者だと主張することをためらう人もいます。でも最近は、他業種のパートと連携して公平な処遇を求める動きも活発になりま した」
 そう、松村さんは言う。
 かけもちパートの正式な統計はないが、02年の総務省就業構造基本調査によれば、副業を持つパート労働者は全国で36万人にのぼる。
 
 ●残業代求めたら「クビ」
 フリーターの間にも、派遣労働が広まっている。臨時や日雇いの形で、数日から数週間で「失業」と「就職」を繰り返す。
 東京都三鷹市に住む男性(30)は、28歳で国際基督教大を中退後、一度も定職につくことができずに、10種以上の仕事を経験した。レンズ付きフィルム の店頭販売、スーパーで総菜のパック詰め、花火大会でのビール販売、ホテルの警備、建設作業員、都内の売れ残りマンションの内装補修、携帯電話の基板検 査……。
 アルバイト情報誌で見つけた派遣会社に登録すると、電話で次々と仕事を紹介してくれる。面接を受けなくてもすむ気楽さの半面、夕方の電話で「明日来て」 と言われることもある。勤務地は日替わりで、会社によっては、自宅から片道2時間かかっても交通費が出ない。
 雇用保険も社会保険も入ったことがない。月収は10万円前後と不安定だ。気がついたら、家賃の滞納とカードローンを合わせた借金は100万円近くになっ ていた。
 生活を立て直そうとIT関連の派遣会社に登録したのは昨年8月。今年9月、ようやく派遣先が見つかった。しかし、残業代を請求したら、「ミスが多い」と 文句を言われ、1カ月足らずで契約を切られてしまった。
 「まだ仕事も覚えていないのに生意気だと思われたのかも」
 職歴もスキルもない30歳を雇う企業はなかなかみつからず、男性は途方にくれている。
 
 ○正社員だと思ったのに
 有効求人倍率は、失業率より早く、02年には改善に転じた。求人広告で厚待遇を提示する企業もある。しかし、「正社員だと思ったら、実は派遣や有期契約 だった」という悪質な求人も横行している。
 基本給25万円、都心の繁盛店ならインセンティブと合わせて月収40万円は稼げる……。埼玉県に住む男性(30)は、02年、知人の紹介で訪ねた外資系 の大手パソコンメーカーの本社で、こんなふうに勤務時間や給料の説明を受けた。量販店の売り場で販売スタッフとして働くことを、その場で決めた。
 前の職場より手取りも増え、やりがいを感じた。店内で売り上げトップになったこともあった。
 休日出勤と残業が続いた。1年半後、残業手当と有給休暇を請求した。
 「あなたは派遣社員だから、派遣会社に言ってほしい」
 会社からの返答に男性は耳を疑った。自分は正社員じゃなかったのか?
 会社側の主張は、
 「販売スタッフはすべて派遣社員で、この男性も派遣会社に登録済みだ」
 男性には確かに登録の手続きをした覚えがある。だが、「給与振り込みを代行する業者だ」と説明されただけで、派遣に関する話は一切なかったという。給与 の振り込みが別会社でも、「外資系だからか」と気にとめなかった。
 双方の言い分はかみ合わず、男性は首都圏青年ユニオンに加入し、会社と交渉を続けている。その間、郊外店に勤務先を移され、勤務時間も半日に減らされ た。月収は3分の1に激減した。
 
 ●法律違反の「見本市」か
 労働基準法の就労条件明示義務違反、社会保険への非加入、労働者派遣法の事前面接禁止など、男性は調べれば調べるほど、この会社が法律違反の見本市のよ うに思えてきたという。
 「正社員と認めて謝罪してほしい」と迫る男性に対し、会社側は、「誤解を与えたかもしれないが、正社員は簡単には増やせない」と譲らない。
 職業安定所の紹介と、実際の条件がくい違っていたケースもある。
 都内に住む男性(41)は、東京のハローワークの求人票を見て、ビル管理会社の面接を受けた。勤務地は東京都心の有名ホテル。それまで働いていた別のビ ル管理会社よりもスキルアップできると考え、転職を決めた。
 求人票には「常用雇用」「月収28万円」とあった。雇用契約書は「有期雇用」で、3カ月後に給与を見直すとあった。
 男性は、この3カ月を試用期間だと理解した。ところが、3カ月後に提示された給与は7万円も少ない月収21万円。抗議したら、「28万円は残業代込みの 金額。いやなら本採用はしない」と言われた。しかも、「3カ月の有期契約なので解雇予告手当も出せない」という。
 「前の会社は円満退社しており、いまさら戻れない」
 男性は下町ユニオンに相談し、正社員としての雇用を求めて会社と交渉している。
 
 ●「個人事業主」のはずが
 都内の労働基準監督署でも、企業が従業員を形式上、派遣社員や有期契約にすることによるトラブルが急増している。こうした会社側の雇用方針の変化が全労 働者に占める非正社員の率を押し上げ、失業率「改善」に寄与している。
 個人事業主として契約したのに、実態は被雇用者として働かせるケースも多い。
 30代のシステムエンジニア(SE)の男性は、求人誌の広告を見て訪ねた派遣会社で、手取りが多いと勧められ、「個人事業主」の契約を結んだ。
 IT業界は個人事業主の形で働く人が多い。スキルの高いSEはさまざまな企業に引っ張りだこで、腕一本で年収1千万円以上も稼ぐといわれる。
 この男性が示された月収は70万円。退職金も社会保険も雇用保険もないが、納得の上だった。
 しかし、仕事の実態は派遣社員だった。派遣先と雇用主との間には三段階の委託関係があり、これらの会社に数十万円単位で報酬からピンハネされる形だった という。
 さらに、別会社から派遣された同僚が無断欠席や遅刻を繰り返し、職場環境にも問題があった。派遣会社に訴えたら、人間関係がこじれ、逆に彼自身が契約を 解除されてしまった。
 
 ●労働者とは「誰」なのか
 02年8月、男性は訴訟を起こした。職場復帰はできなかったが、「実態は労働者である」という主張が認められた形で、未払い賃金相当の210万円を支払 わせ、03年10月に和解した。
 「個人事業主という働き方は、雇い主に雇用者としての負担がない分、働く側の手取りも増え、一見、双方にメリットがある。しかし、将来の計画が立てにく い不安定な働き方です。今回の事件のようにトラブルになっても、会社は雇用者ではないといって責任を逃れようとする」
 この男性の訴訟代理人の笹山尚人弁護士はいう。
 働き方の多様化とともに、労働者とはなにかという「労働者性」は、産業界と労働界の間で世界的にも論争となっている。工場労働を前提につくられた労働時 間や休暇の管理、解雇規制といった労働者保護法制を今後も維持すべきかどうかは、正社員でない働き方を選んだ人の処遇とも深くかかわる問題だ。
 
 ■1人で入れる労働組合、労働相談窓口
 連合ユニオン東京
 <組合員数>2000
 <電話番号>03−5444−0538
 <特徴・得意分野>連合東京が運営、非正社員の組織化に力を入れている
 
 全国一般労組
 <組合員数>36000
 <電話番号>03−3230−4071
 <特徴・得意分野>全国にネットワークを持つ。中小企業、サービス業の労働者が多い
 
 全日本建設交運一般労働組合
 <組合員数>3500
 <電話番号>03−3820−8644
 <特徴・得意分野>建設、運輸、鉄道、高齢者の問題に取り組む
 
 全労連全国一般東京地方本部
 <組合員数>1000
 <電話番号>03−3668−5542
 <特徴・得意分野>「大企業正社員からコンビニ店員まで」門戸を開いている
 
 全国一般労組東京南部
 <組合員数>2700
 <電話番号>03−3434−0669
 <特徴・得意分野>欧米系外国人労働者の労働問題で実績
 
 全統一労組
 <組合員数>3000
 <電話番号>03−3836−9061
 <特徴・得意分野>倒産後の自主再建、外国人研修生の問題に取り組む
 
 全労協全国一般東京労組
 <組合員数>4000
 <電話番号>03−5215−3044
 <特徴・得意分野>労働紛争の件数が多い
 
 女性ユニオン東京
 <組合員数>250
 <電話番号>03−5352−6630
 <特徴・得意分野>セクハラ、妊娠出産による解雇や賃金差別など女性問題に強い
 
 東京東部労組
 <組合員数>750
 <電話番号>03−3604−5983
 <特徴・得意分野>中小企業労働者、非正社員が多い
 
 ジャパンユニオン
 <組合員数>250
 <電話番号>03−3604−1294
 <特徴・得意分野>ネットで国内外からの相談に対応、海外駐在員のリストラ問題も扱う
 
 労働組合東京ユニオン
 <組合員数>900
 <電話番号>03−5338−1266
 <特徴・得意分野>派遣、パート、介護ヘルパーの権利向上に実績
 
 下町ユニオン
 <組合員数>350
 <電話番号>03−3638−3369
 <特徴・得意分野>介護労働者、ビル管理労働者の問題に力を入れる
 
 東京管理職ユニオン
 <組合員数>650
 <電話番号>03−5371−5170
 <特徴・得意分野>正社員の職場のいじめ、メンタルヘルス、成果主義問題に取り組む
 
 名古屋ふれあいユニオン
 <組合員数>85
 <電話番号>052−679−3079
 <特徴・得意分野>相談者の7割が派遣社員
 
 管理職ユニオン・関西
 <組合員数>350
 <電話番号>06−6881−0781
 <特徴・得意分野>会社のいやがらせやいじめの問題に力を入れる
 
 はけん・パート関西
 <組合員数>30
 <電話番号>06−6881−0110
 <特徴・得意分野>フリーター、派遣、パートの権利保護をめざし04年に発足
 
 連合福岡ユニオン
 <組合員数>350
 <電話番号>092−781−5100
 <特徴・得意分野>福岡県内の未組織労働者の問題解決に取り組む
 
 日本労働弁護団
 <組合員数>−−
 <電話番号>03−3251−5363
 <特徴・得意分野>労働相談、法律相談とアドバイス
 
 NPO法人東京労働安全衛生センター
 <組合員数>−−
 <電話番号>03−3683−9765
 <特徴・得意分野>過労死、メンタルヘルスなど労災や職業病の相談に専門スタッフが対応
 
 過労死弁護団
 <組合員数>−−
 <電話番号>03−3813−6999
 <特徴・得意分野>過労死、過労自殺の相談に対応
    *
 連合、全労連、全労協、全国コミュニティ・ユニオン連合会、自治体の労働相談窓口の情報をもとに作成
 
 【写真説明】
 セーフティーネットの目が粗すぎないか。正社員でない働き方をしている人の間に、そんな不満がうずまく(モデル 西辻恵美、山下健太郎)


■1018
□フリーター、もう甘やかさない? 狙い撃ち課税の波(アエラ)

 フリーター急増による住民税の取りこぼしをなくそうと、総務省が地方税法改正を検討している。納税は当然の義務だが、一方でフリーターに対するセーフ ティーネットの整備は後回し。結局払うのは?
 
 417万人――。03年の国民生活白書が示す、派遣社員、パート、アルバイトなどを総じた「フリーター」の数だ。15〜34歳の若年人口の9人に1人の 割合に上る。
 いよいよこの数が無視できなくなったのだろう。総務省は、フリーターに対する住民税の課税を強化するために、地方税法の改正を検討し始めた。なぜなら、 終身雇用を前提とした現行の住民税徴収方法には、一部フリーターなどへの課税が漏れてしまうという欠点があったからだ。
 
 ●税収効果、実は不明
 現行の徴収方法はこうだ。企業が1月1日時点で勤務している人の、前年分の所得を市町村に報告。市町村が課税額を算定し、給与から天引きしたり、本人に 直接通知して納付してもらったりしている。市町村によって異なるが、モデルケースでは独身者で年収100万円以上が課税対象となり、「均等割分」年4千円 に加え、所得から社会保険料などを控除した課税所得の最低5%が「所得割分」として徴収される。
 しかし、フリーターの増加で就労期間が短くなったり、職業を転々と変えるケースが多くなったりしたため、1月1日時点には勤務していないが、前年に勤務 歴があるというケースも目立つようになった。そういう場合は、個人が各市町村に申告することになっているが、課税されるためにわざわざ申告する人は常識的 に考えてもそうはいないだろう。
 そこで、企業側に1月1日時点に勤務していなくても前年に勤務した人についてはすべて所得を報告してもらうように改める、というのが今回検討中の改正内 容で、07年度から始める予定だという。
 今回の改正は、現場の市町村からも対策の要望があったからだというが、実際にどの程度の課税漏れがあるのか、などは総務省もわからないという。そもそも 短期雇用の場合は所得が低いケースも多く、法改正したからと言って税収アップ効果はさほど期待できないのではという見方もある。
 それでも総務省が改正を急ぐのは、税収減を少しでも挽回するために、フリーターは決して無視していい少数派ではなくなったからのようだ。実際、10年前 には11兆円を超えた個人住民税は、03年度には8兆7千億円に落ち込んでいる。総務省市町村税課の須藤明裕課長補佐は説明する。
 「今回の改正の目的は、雇用形態の変化に対応し、時代にあった制度にするための当然の措置です」
 
 ●背景には「悪玉」論?
 フリーター問題に詳しい東大社会科学研究所の玄田有史助教授も、課税徹底の動きについては、
 「長期的に見れば望ましい動き。就業形態にかかわらず一定の収入を得ている人が、ルールに従った納税義務を果たすのは、結果的にフリーターに対する差別 感覚の解消につながる」
 と評価する。ただ同時に、法改正の背景に「フリーター悪玉論」がある可能性が大きいことも懸念する。フリーターを気楽な税金逃れととらえているのでは、 というのだ。労組「首都圏青年ユニオン」の名取学委員長も、
 「フリーターになるのは個人が怠けているのが原因、と切り捨ててしまう。だから、社会的に支えようという仕組みが不十分。課税強化の一方で、会社の健康 保険や雇用保険に加入させてもらえないなど、セーフティーネットが整えられていないのです」
 会社に必要でなければ都合よく首を切られ、育休や産休も認められない。会社の外でも、公立保育園に入園するにも正社員より入りにくい……。これらがフ リーターの直面する現状だという。
 税収減にはすぐに対策に乗りだしても、困難な生活には反応してくれない行政――。「納税は当然」と理解しながらも反論してしまう根拠がここにあるのだ と、名取さんは言う。
 フリーターや働く意欲のない若者などの相談にのってきたNPO法人「『育て上げ』ネット」の石山義典理事は別の懸念も持つ。
 「こういう若者たちは親と同居しているケースが多い。働かなくても十分に収入がなくても、昔のように食うに困る状況じゃない。生活の苦しさをそこまで感 じることもなかなかないのです」
 今回の課税強化策。もしかしたら払い手は親たちになるのかもしれない。
 (編集部 木村恵子)
 <illustration 土井ラブ平>


■0907
□国民の文化守るため 先輩労組、評価いろいろ プロ野球の土日スト(朝日新聞)

 スタジアムから球音が消える日、ファンは何を思うのか。プロ野球選手会は6日、初めてのストライキに向けて一歩を踏み出した。各界の労働組合幹部らは、 この決断の重みを知っている。(1面参照)
 
 「妥当な選択だと思います」。フリーターや派遣社員など、「労働弱者」でつくる「首都圏青年ユニオン」の書記次長、阿久津光さんは、プロ野球選手会のス トライキ決断をそう受け止めた。
 高額を稼ぐスターと、アルバイトでは天地ほどの差があるとはいえ、プロ野球選手は、フリーターと同じ「個人事業主」だ。プロ野球選手会によると、年収 500万円未満の選手が、全体の5%を超す。
 「一方的な都合でクビを切られかねない、という立場が重なる」と阿久津さんは同情を示す。最近、派遣社員本人の同意がないまま契約主を変えられていたと いうケースが目立っている。「まるでプロ野球の合併劇のようですよね」
 音楽家が加盟する日本音楽家ユニオンは、技能を持った個人事業主の集まりという点で近い立場だ。選手会設立の際にも相談を受けたという。三原啓史・代表 運営委員は「音楽と同様、野球は国民のものだし、交響楽団もプロ球団も一つひとつに文化がある。それを企業の論理から守るための決断を尊重したい」とエー ルを送る。
 同ユニオンは毎年、大会でスト権を確立している。所属する交響楽団でスト直前まで争った経験のある三原さんは「ファンと一緒になって野球文化を作ってい るかどうか、ストになると普段の努力が問われる。結果は自分たちで責任を取らねばいけない」と付け加えた。
 
 ○お客を人質に
 争議の経験が豊富な運輸系労組は、選手会を応援する立場ながらも、スト実行については厳しい見方をしている。
 春闘で2年連続のストライキをした東京の関東バス労働組合(組合員715人)。陸川知威書記長は「ストは客を人質にして自分たちの主張を通そうとするこ と。振り上げた拳をおろす方法も考えなければいけない」と話す。
 組合員の平均基本給は約29万円。ストを行うと、電話の100本中80本は、早く運行しろという苦情だという。朝日新聞が先月末行った世論調査では、ス トを支持すると答えた人は63%だった。
 同書記長は「ストを実行すると泥沼化することもあり得る。年俸数億円の人たちの行動を世論がどう判断するか」と懸念する。
 
 ○うらやましい
 スト経験豊かな労組幹部から見ると、戦術面にも疑問がある。鉄道、バス系労組では、決行日を高校野球の開会式などから外すのが暗黙の了解だが、選手会は 要求を貫徹するため一番影響のある土日を選んでいる。
 「メジャーリーグのように『ファン無視』と言われはしないか。ストの直前まで妥協点を探ることが大事だ」
 約100万人の組合員を抱える日本最大の労組自治労。人見一夫委員長(57)は言う。「選手会の決定には賛成だ。我々はスト権を行使したくてもできない ことに歯がゆさも感じてきたので、今回の決定は当然の権利とはいえ、ある意味でうらやましさも感じる」
 
 ◇注視するテレビ局 「穴埋め」特番準備
 プロ野球のストの可能性が出てきたことを受けて、テレビ、ラジオ各局は今後の状況を注視している。
 巨人戦の東京ドームでの中継が9月中に12日など土日に3試合ある日本テレビは中止の場合、特別番組を放送するなどの対応が必要とみて、準備に入る。 「ストについてコメントする立場にないが、視聴者のことを考えると、野球を放送できないのは残念」と担当者。
 19日に名古屋ドームでの中日−巨人戦の放送を予定しているTBSは横浜ベイスターズのオーナー会社でもあり、「コメントするのは難しい」(宣伝部)と 複雑な表情だ。中止の場合はレギュラーの番組など別の番組を放送するという。
 11日と18日に放送予定のあるNHKは「代替番組を検討しているが、実際に中止が決まったわけではないのでまだなんとも言えない」という。
 フジテレビ、テレビ朝日は対象になっている今月中の土、日は野球中継の予定がない。
 
 ◆連合や全労連「ストを支持」
 プロ野球選手会のスト権行使の決定を受け、連合(笹森清会長)は6日、「労使が職場の発展のため話し合うことは非常に重要で当然。オーナー会議が一方的 な決定を行い、選手会がストをした場合、支持する」とのコメントを発表した。
 全労連(熊谷金道議長)も同日、「1年間の合併凍結などは多くの国民に支持される要求だ。ストを支持し、連帯してたたかう」との談話を出した。
 
 ●大リーグの方が面白くなるよね 小泉首相が苦言
 「こうなると、ますます大リーグの方が面白くなっちゃうよねえ」。小泉首相は6日、オリックスと近鉄の合併問題を巡って揺れるプロ野球界に苦言を呈し た。首相官邸で記者団に語った。
 
 ■機構揺さぶりに有効
 労働法を専門とする弁護士、井上幸夫さんの話 裁判所も労働組合として団体交渉ができる地位を認めたと解釈でき、機構側が交渉を拒む中、スト権行使の決 断はやむをえない。アメリカ流の無期限ではなく、日にちを限った部分ストライキだが、「毎週末」とすることで効果を狙ったのだろう。ストを宣言するだけで も、機構側を揺さぶる戦術として有効だろう。
 
 ■戦略あったのか疑問
 プロスポーツ経営に詳しい大坪正則ニッポンスポーツマネジメント代表取締役の話 戦略を持ってスト権行使を決めたのか疑問だ。現状では経営が成り立たな いのだから、新しいサービスや(報酬の減額など)具体的な提案がないと説得力がない。合併は選手の職場が減るということだが、社会にはリストラされた人は 大勢いる。ファン離れが起きないとは限らない。
 
 【写真説明】
 球団の合併反対を訴えるファン=6日、神戸市須磨区のヤフーBBスタジアムで


■0821
□フリーター全般労働組合結成趣意書
 http://a.sanpal.co.jp/paff/resource/aim.html
 われわれフリーターは、元来「気ままな自由人」という意味合いで語られてきましたが、バブル崩壊とともにそのようなボヘミアンなイメージは一気に吹き飛 び、今やその存在は、「ノンフューチャーな低賃金労働者」「個々バラバラに分断された無権利使い捨てマンパワー」以外のなにものでもなくなりました。そし て、そんなフリーター稼業に嫌気を起こし、働かず、蟄居もしくはブラブラしていればいるで、「自立しろ」「将来のことを考えろ」「夢を持て」等々、これま た極めて鬱陶しい視線と圧力にさらされるのですからたまりません。
 何をやっても割に合わない、働いても働かなくても底意地の悪い世間の風にさらされざるをえないフリーターですが、その数は公の統計で417万人、35歳 以上のフリーターおよび失業者、主婦フリーターや学生フリーター、外国籍フリーターなどを含めれば全労働力人口の三分の一は優に超えると見られています。
 そして、今や膨大な労働者層を形成するに至ったフリーター(非正規雇用)の低賃金は、正社員(正規雇用)の労働条件をも脅かしています。正社員がやって いた仕事を、その半値以下のフリーターにやらせれば企業はより儲かるからです。これがリストラの実態です。このようなリストラ攻勢を食い止めるためには、 究極的には正社員をフリーターで代替するウマ味をなくすほかはありませんが、そのためには現時点におけるフリーターの半人前の賃金を一人前のものにしてい く大運動が展開されなくてはなりません。
 しかしここで大きな問題に突き当たります。フリーターはどこへ行っても似たり寄ったりの低賃金で、かつ企業の福利厚生制度や労働組合からも排除されてい るケースが圧倒的多数であることから、全般的に職場や企業に対する帰属意識が低いため、職場単位での組織化が極めて困難であるという事情がそれです。「フ リーターの組織化」の困難な所以ですが、言い方をかえれば、企業に対する帰属意識に縛られていないぶん自由に闘いを組織できる可能性があるということでも あります。
 その可能性の一つを、われわれは新たな学生運動に見出します。2007年には大学全入時代が到来するといわれていますが、旧来の学生運動と旧来の大卒並 の働き口は、大学進学率の上昇に反比例してともに減少の一途を辿っています。学生フリーターが学歴に見合った就職からアブレれば、その多くはたんなるフ リーターへと横滑りするしかありません。大学はもはやフリーターの「寄せ場」であるといっても過言ではなく、そこから真に「卒業」できるのはごく一部の果 報者でしかありません。有名大企業中心の企業内労働運動の衰退に呼応するかのように、今や有名大学中心の学内マイノリティ運動と化した観のある学生運動の 新規蒔き直しが急務です。そのためには、旧来の「大学生運動」から脱却して大学院、短大、専門学校生とともに高校生と手を携え、「フリーターでも安心して 暮せる賃金」を求めて、フリーターと正規労働者、ひいては全世界の労働者の均等待遇を実現する運動の旗振り役として自らを鍛え直すべきでしょう。「学生」 が未だに「青年層の知的前衛」であるかのような幻想に捕われない限り、このような「自らが現にそれである」ところの階級的基盤に立脚してこそ、学生運動は 新たな大衆運動として再起することができるのです。とはいえ、学校にも職場にも「定着」もしくは「アイデンティファイ」しているとはいえず、しかも同時に 学生でも労働者でもある「フリーター」という存在に食い込むのは容易なことではありません。しかしこの困難さはそのまま現在の労働運動および学生運動の困 難さに連なるものでもあるので、これに積極的に取り組まないわけにはいかないのです。
 また、たえずコブシを振り上げているような「運動」だけでは満たされない社会的欲求を、NPO等を通して部分的にせよ着実に実現していくことも重要で す。目下政府は、文部科学省と厚生労働省を推進役とした「若者自立支援プロジェクト」の一環として、各地の大学を拠点とした「ジョブ・カフェ構想」なるも のを打ち出していますが、このテのお仕着せの企てとは一線を画した、相互扶助の精神にもとづく「もう一つの働き方」を提案していく情報・実践活動も大いに やりたいところです。さらにわれわれフリーターは、貧乏ゆえについ自らの健康を省みることを怠り、とかく低栄養高カロリーのジャンク・フードに依存しがち ですが、それらは得てして地球を食い物にすることで世界の食い物を支配・独占している「餓死の素」たる巨大食糧企業の「毒まんじゅう」でもあります。われ われフリーターは今こそ、「マトモな物を食い、食わせられる賃金と社会保障」を求めるとともに、商品ボイコットと反戦運動を含むグローバルな視点に立った 生活権拡張運動を推進し得るような「消費・生活・納税者運動としての労働運動」の創出にも着手するのでなければなりません。
 その一方で、「人はパンのみにて生くるに非ず」でもあるので、文化芸術の送り手・受け手としての創造的活動もドシドシやっていきましょう。
 大略以上のような志をもって、「とりあえずは数人でも、全フリーターを視野に入れた労働組合を作ろうではないか!」と奮起し、このたび結成の運びとなり ました。われわれはフリーターの置かれているさまざまな困難な状況を、個人的な事柄から政治的な事柄に至るまで配慮しつつ、改善していくことを通して、そ の地位と権利の向上を図るべく活動します。
 だからフリーターは全員加入しよう。
 全ての職場・学園に分会を組織しよう。
 少なくとも百万人くらいの組織にしよう。
 フリーターを資本や企業のいいなりにならない手強い労働者群として全世界にアピールしよう。
 団結がんばろう。

2004年8月21日
フリーター全般労働組合

■0529
□バイト青年に労働組合 県労連、6日に結成大会=広島(読売新聞)
県労連は二十八日、アルバイトや派遣社員など正社員ではない若年労働者のための労働組合「広島青年ユニオン」を結成すると発表した。県労連の労働相談セン ターに寄せられる労働相談の二割が若者からで、青年向けの労働組合が必要と判断した。東京都、山梨、愛媛県に次いで四番目。六月六日午後一時半から、広島 市中区大手町五の市女性教育センターで、結成大会を開く。
 正社員でないため、労働組合に入れないなどの二十―三十歳代が対象。県労連の「地域労組ひろしま」の青年支部(広島市東区光町二)として発足し、職場相 談に応じたり、法律や制度の勉強会なども開く。
 開設準備会の玉谷由美委員長は「アルバイトなのにサービス残業や責任の重い仕事を任される若者も多く、そんな若者らを保護できる地域労組となりたい」と 話している。問い合わせは県労連青年部(082・262・1550)へ。

■0312
□[揺れるフリーター](3)「試し雇用」でトラブル(連載)(読売新聞)
◆「正社員」エサに不利な労働条件
 東京都内でパソコン専門学校のアルバイト講師をしていた千葉県の男性(28)は、先月、仕事を辞めた。「会社への不信が募り、もうこりごりという気持 ち」と憤る。
 大学を卒業後、フリーター生活を続けてきたが、「そろそろ時給八百円の不安定な生活をやめたい」と、昨年夏、この学校で三か月間の「若年者トライアル (試し)雇用」に挑んだ。
 この制度は、原則として三か月間、試験的に雇ってみてその人が仕事に適しているか見極める国の事業。仕事が合わないとすぐ離職してフリーターになること を防ぐため、二〇〇一年十二月から始まった。
 最終的に正社員に採用しなくても、試用期間中は一人につき一か月五万円が会社側に支払われる。昨年末までに約四万七千人がトライアルを終え、約三万七千 人が正社員になった。国は若年層にこの事業を積極的に活用するよう、今年一月全国の労働局に指示した。
 パソコンが得意なこの男性は、「あこがれの正社員」になるため、一生懸命働き、周りからもそれなりに評価されたと自信があった。しかし、結果は、身分の 不安定な契約社員としての雇用だった。「話が違う」と思った。
 フリーターらで作る労働組合「首都圏青年ユニオン」(東京)には、「残業代が払われないのも我慢して頑張ったのに正社員にしてくれなかった」など、トラ イアル雇用絡みの相談が最近寄せられるようになった。委員長の名取学さん(30)は「ほかにも正社員採用を前提にした試験的な雇用についてのトラブルが増 えている」と話す。
 例えば、派遣社員としてしばらく働いた後、派遣先企業と合意すれば正社員などに切り替わる「紹介予定派遣」などでも、「内定していた正社員採用を直前で 覆された」との相談が増えている。
 日本人材派遣協会(東京)の昨年の調査でも、紹介予定派遣された約三千八百人のうち本採用は約半数、新卒に限っては三割に過ぎなかった。このため、正社 員採用がいつまでも引き延ばされないように、今月施行された改正労働者派遣法で、紹介予定派遣の期間が最長六か月に制限された。
 「正社員というニンジンを目の前にぶら下げられたまま走らされる馬のような例が少なくない」と、東京ユニオン書記長の関根秀一郎さん。
 せっかく正規の雇用につなげるようにと始まった事業が、「フリーターに不利な労働条件を押しつけていると感じさせ、若者が働く意欲をなくすようになった としたら逆効果」と懸念する。

■0310
□[揺れるフリーター](1)40代…正社員になりたい(連載)
◆進む高齢化、就職難しく(読売新聞)
 「二十も年下の正社員に罵声(ばせい)を浴びせられるのに疲れた」。今年七月で四十二歳になる首都圏在住のその男性はぼそりと言った。細身のジーパン 姿。頭に白いものが交じる。「同世代の友人のように、子どもも欲しい」
 二十年前、大学の工学部を卒業して地質調査会社に就職したが、約一年で退職した。「人付き合いが得意な方ではなく、自然の中なら息苦しくない」と、林業 のアルバイトを始めた。友人や知人に「現実逃避している」と言われても、一、二年ごとに工場のパートなどを転々とした。「当時はバブル景気のころで将来へ の不安はなかった」
 しかし、フリーター生活が人生の半分近くなった今、正社員として働きたい気持ちが強まったという。
 きっかけは、昨年九月までパートとして勤めていたスーパーの二十代前半の社員との人間関係。商品を並べている時など、「おめえ何やってんだ。早くしろ よ」といつもどなられた。愚痴を言い合えるはずの同僚は年下の主婦ばかりで孤立した。体力的にもきつくなり、退職。
 いまは母親と二人暮らし。月収約十万円のフリーターでは独立も家庭を持つこともできないと、ハローワーク(公共職業安定所)に通い、正社員として働ける 仕事を探している。しかし、未経験者で採用対象になるのはせいぜい三十五歳まで。「あと十歳若ければ」
 フリーターの高齢化は進んでいる。国民生活白書によると、二〇〇一年のフリーターの総数は四百十七万人。うち三十代前半の人は八十万人で、一九八九年の 二・七倍となっている。三十四歳までという白書の定義からは外れるが三十代後半も四十六万人。四十代フリーターは増える勢いだ。一方、フリーター全体で収 入が年収百万円未満の人は56・2%にのぼる。年齢が高くなっても収入が増えるわけではない。
 さらに、年齢が高くなると「組織になじみにくい」「体力が落ちてくる」などの理由でアルバイトの職を失うこともある。フリーターで作る労働組合「首都圏 青年ユニオン」(東京)が行う「バイト・仕事の何でも相談」でも、三十代の人から「時給が下がった」「配置転換を強いられた」と、暗に解雇を迫られた悩み が増えている。
     ◇
 フリーターという言葉が生まれたのは十数年前のバブル期。自分の夢実現のために組織に縛られない働き方が注目された。その存在なしに今の日本経済は成り 立たなくなっている。しかし、フリーターが増え続けるひずみも表れ始め、行政などもフリーターの就職支援に力を入れ始めた。次回(十一日)からその試みを 紹介する。

■0501
□5・1新宿フリーターメーデー「フリーターに一人前の賃金を!」
 http://www.mkimpo.com/diary/2004/may_day_2004_bis.html

■0204
□お試し雇用で適性を見極め 仕事のミスマッチ防ぐ(朝日新聞)

 派遣やアルバイトなどで働き、適性を見極めたのち、正社員採用につなげる「お試し雇用」が広がっています。雇用のミスマッチの予防策として、会社と働き 手の双方から注目されています。一方で、採用を引き延ばされるなど、不安定な身分ゆえの問題も生じています。3月施行の改正労働者派遣法では、正社員採用 を見込んだ「紹介予定派遣」の期間が最長6カ月に制限されます。"試用期間"の乱用に歯止めがかかることが期待されています。
 (足立朋子、山根由起子)
 
 ○期待 正社員への門戸多様化
 「30歳過ぎると、派遣の仕事がなかなかまわってこなくなる。正社員登用に道を開くこの制度に期待している」
 紹介予定派遣で、1月から都内の財団法人で働き始めた女性(35)は、そう言う。
 大手の情報通信機器メーカーで3年間、派遣で働いたが、業務縮小で契約更新を打ち切られた。今の仕事は前職と同じ経理事務。「職場の人間関係や雰囲気、 自分のスキルが仕事で伸ばせるかを見極めた後、入社を決められるのがいい」
 フリーターや若者の失業者対策として、厚生労働省が実施する若年者トライアル雇用事業も「お試し雇用」の一つだ。
 山形県寒河江市のコイルなどのメーカー「後藤電子」。新開発の電線事業の工場で働く菊地誠さん(22)は、一昨年秋、「トライアル雇用」を経て正社員に 採用された。
 前の会社では、自宅待機に追い込まれ、退職を余儀なくされた。ハローワークで同社の求人票を見つけた。
 「なかなか就職先がなく、困っていた。トライアル雇用は研修程度にしか思わなかったが、入り口が一つでも増えるのならいい制度だと思う」
 同社は菊地さんのほかにも、10人近くトライアル雇用で採用、全員が正社員になっている。後藤優子専務は「若い人を採用して、仕事が合わなくて難しさを 感じたことがあった。全員正社員にするつもりだが、制度があることで若い人を雇いやすくなった」と話す。
 「お試し雇用」は、採用直結型のインターンシップや、正社員採用を前提にパートやアルバイト、契約社員で試行的に働く形など、様々な形態で広まってい る。
 
 ◇企業が慎重に
 若年雇用問題に詳しいリクルートワークス研究所(東京都中央区)の大久保幸夫所長は「厳しい経済状況で、少ない正社員の採用に、企業がより慎重になって いるため」と分析する。
 総務省の就業構造基本調査では、役員を除く雇用者のうち、正社員の比率は82年の83・1%が02年には68・0%まで下落した。雇用のミスマッチなど で早期離職を繰り返す人も多い。厚労省の今年度調査では、入社3年以内に辞めた若者は、高卒で50・3%、大卒で36・5%にも上る。
 
 ○不安 立場弱く本採用に壁も
 「お試し雇用」の立場は不安定だ。働く側の期待感とは裏腹に、採用に結びつく率は低い。日本人材派遣協会(東京都千代田区)が派遣会社約440社を対象 に昨年実施した、紹介予定派遣についての調査では、派遣された3795人のうち、本採用に至った人は53・8%、新卒に限ると30・2%だった。
 弱い立場の働き手の足元を見て、会社側が労働条件や待遇で無理を強いるケースも少なくない。
 大学卒業後、都内の信用金庫で紹介予定派遣として2年間働いた女性(26)は、2年目から残業代を削られ、毎月の手取りが23万円から18万円に下がっ た。仕事は窓口や融資事務など正社員並みにこなした。毎朝8時に出社、忙しいときは夜11時まで残業し、昼食をとる暇もないほどだった。
 「何とか正社員にしてほしいと、我慢して頑張った」と振り返る。
 NPO法人(特定非営利活動法人)派遣労働ネットワーク(新宿区)には「正社員になれるならと派遣期間を3カ月延長した。しかし、派遣先から正社員とし て採用する予算がないので、再度派遣で更新したいと言われた。正社員というエサを鼻先にぶら下げられ夢中で走る馬のようだ」との相談も寄せられている。
 フリーターら若者でつくる労組「首都圏青年ユニオン」の名取学委員長は、「最初は働く意欲に満ちているのに、お試し雇用で不利な労働条件を押しつけられ ているうちに『仕事なんてこりごりだ』とトラウマになる」と、若者の就労意識に与える影響を心配する。
 3月に施行される改正労働者派遣法では、紹介予定派遣の期間を最長6カ月に制限、不採用の場合は、派遣先に書面で理由説明を求めることができるようにな る。
 労働法に詳しい早稲田大学法学部の島田陽一教授は「無制限な試用期間的に乱用されることに一定の歯止めをかける効果が期待できる」と話す。
 
 ◇「基準開示を」
 しかし、派遣労働ネットワーク理事長の中野麻美弁護士は「最長6カ月でもまだ長いと思う。受け入れ側の悪用を防ぐため、事前に採用に関する基準を開示さ せるようなルールも必要」と指摘している。
 また、無事に「お試し期間」から採用に至った後の問題もある。
 紹介予定派遣では、雇用保険の加入や有給休暇・ボーナスの算定期間は、派遣を開始した日まで、さかのぼって認める必要はない。派遣期間中は、派遣会社と の間に雇用関係があるからだ。
 厚労省は「法律で義務づけることは難しいが、労働者の要求に応じて各事業主が任意で、派遣の開始日から算定しても構わない」と話している。
 
 ◆キーワード
 <若年者トライアル雇用> 30歳未満の若者を最長で3カ月間、試行的に雇い、能力や適性を見極めて、本採用か否かを決める制度。雇い主には、若者1人 につき月5万円の奨励金が支給される。01年12月の開始から昨年8月までに約5万2千人が利用、約2万9千人が本採用された。
 
 <紹介予定派遣> 一定期間、派遣で働いたのち、受け入れ側と働く側が合意すれば、正社員など直接雇用で採用される。入社後のミスマッチが解消できると して、規制緩和の流れの中、00年12月から解禁された。3月に施行される改正労働者派遣法では、期間を6カ月に制限するほか、派遣先が事前に面接や履歴 書の確認を行えるようになる。


UP:20070710
◇労働 http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/d/w001.htm
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