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国立コロニーのぞみの園・他



支援費・ホームヘルプサービス上限問題


国立コロニーのぞみの園

◆2003/01/20 「<補助金打ち切り>天下り先施設には29億円継続 厚労省」
 『毎日新聞』2003/01/20 
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030120-00000115-mai-soci
◆2003/01/23 「障害者対策:厚労省、施設に50億円”補てん”ハコものに甘く」
 『毎日新聞』2003/01/23
◆2003/05/24 「<国立コロニー> 戻っておいで古里に 親の会などがメッセージ」
 須山勉『毎日新聞』2003/05/24
◆2003/08/18 「コロニー縮小―隔離の時代は終わった」
 『朝日新聞』2003/08/18朝刊・社説


◆2003/01/20 03:01 「<補助金打ち切り>天下り先施設には29億円継続 厚労省」
 『毎日新聞』2003/01/20 
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030120-00000115-mai-soci

 「地域で生活する障害者を支援する事業の補助金を打ち切ることを決めた厚生労働省が、役員に同省OBが天下っている知的障害者入所施設「国立コロニーのぞみの園」(群馬県高崎市)には、03年度予算案でほぼ例年並みの約29億円の補助金を計上していたことが分かった。国立コロニーは役職員の高給などが問題視されており、障害者団体は「障害者支援費制度ではホームヘルプサービスの利用時間に『上限』を設けようとしているのに、天下り先への補助金に手をつけないのは納得できない」と批判している。
 特殊法人の国立コロニーは国の整理合理化計画に基づき、今年10月に独立行政法人化される。同省はこれまで、各入所施設と同様に支給していた措置費(約16億円)に上乗せして、年約30億円の補助金を国立コロニーに出してきた。措置費が支援費に変わる03年度予算案にも、支援費に上乗せして補助金と独法化後の運営交付金分計28億5000万円を計上した。
 国立コロニーの理事長は歴代、旧厚生省OBが天下っており、現在の年収は1570万円、 2人いる理事(現在は 1人が同省OB)は1380万円。同省からの出向者もいる職員の給与も高く、同省が一般の社会福祉法人施設の財務状況(99年度)を比較した資料によると、1人当たりの人件費は1170万円で、社会福祉法人施設の 523万円の約2倍。       運営面も(1)全国の施設で入所者に地域で暮らしてもらう取り組みが行われている中で、国立コロニー入所者の地域移行率は低い(2)入所者の入浴は原則週 3回の日中に限るなど、サービスが画一化している――などが指摘されている。
 独法化に向けた検討委員会の中で、複数の委員が「民間の取り組みの方が進んでおり、国立コロニーに期待するところはない」との意見を出し、コロニー側も「取り組みが遅れているのは事実」と認めている。
 厚労省障害保健福祉部は「(予算計上は)施設運営に必要と判断した。コロニーの今後のあり方については、検討委員会の意見を聞いていきたい」と話している。
 同省は昨年末に「地域で生活する障害者支援の要」とされるコーディネーター事業などへの補助金打ち切りを決めたほか、4月スタートの障害者支援費制度でも、ホームヘルプサービスの利用時間をもとに補助金の交付基準を設けようとしており、障害者団体が「上限につながりかねない」と同省に抗議している。 【須山勉】

◇知的障害者の親などで組織する「全日本手をつなぐ育成会」の松友了常務理事の話
 腹が立つ話だ。街から離れた場所に知的障害者を集め、集団生活させるような施設の役割は終わっている。厚労省が国立コロニーを存続させ続けてきたのは、天下り先確保としか思えない。完全民営化するなどし、浮いた国費を地域福祉に回すべきだ。

◇厚労省の「国立コロニー独立行政法人化検討委員会」の座長を務める岡田喜篤・川崎医療福祉大学副学長の話                          
 国立コロニーなど国公立施設は、民間より職員の配置や給与が優遇されているが、入所している障害者へのサービスは必ずしも評価されていない。ただ、日本では13万〜14万人の知的障害者が入所施設にいる一方、地域で暮らすためのグループホームなどは 1万5000人分しかない。施設の外に行き場がないわけで、厚労省は知的障害者を地域でどう処遇すべきか、早急にビジョンを示さなければいけない時期に来ている。

◇ことば
 国立コロニーのぞみの園
 国の出資で作られた特殊法人「心身障害者福祉協会」が71年、群馬県高崎市に開設した。国が管理する唯一の重度知的障害者用施設。昨年10月時点の入所者数は 511人、役・職員数は 315人。コロニーとは大規模入所施設の意味。」

 

◆2003/01/23 14:57 「障害者対策:厚労省、施設に50億円”補てん”ハコものに甘く」
 『毎日新聞』2003/01/23

 「4月にスタートする障害者の支援費制度に伴い、厚生労働省は各種施設に「就労・地域生活支援」名目で、50億円の特別加算金を支給することが分かった。施設が加算金を申請する際には、支援費制度によってどのくらい減収となるかを調査票に記入することになっており、事実上の「損失補てん」との見方もある。障害があっても施設ではなく、地域で暮らすことを支援費制度の理念としながら、実際はコーディネーターやホームヘルパーなど地域生活を支える人に厳しく、ハコもの(施設)に甘い同省の姿勢が改めて鮮明になった。
 支給されるのは「就労・地域生活支援対策事業加算」で、知的・身体障害者の更生・授産施設などが対象。障害者の就労推進や支援費移行の運営体制整備など4項目の事業に対し、計50億円の特別加算金が支給される。
 障害者福祉サービスは4月に、市町村が利用者や内容を決める「措置制度」から、障害者自身がサービスを選び、国や地方自治体が必要額を支給する「支援費制度」になる。同省は9月にサービス単価を示したが、収入が減る施設が反発していた。
 特別加算金の交付に当たり、厚労省は各施設に対し、支援費の導入によって現在の措置費からどのくらい収入が減るのかを調査票に記入するよう指示。これを参考に交付額を決定する。02年度の補正予算案に盛り込まれ、各施設には3月分の措置費に加算して交付される。同省支援費制度施行準備室は「障害者の在宅復帰に向けた事業を推進してもらうための措置」と説明している。
 障害者からは「施設の『損失補てん』だ。小規模作業所など地域福祉を支える職員には、大学を卒業して何年もたつのに月給15万〜20万円という人も多い。厚労省は入所施設と地域福祉の格差を放置しているうえ、来年度予算でコーディネーター事業の補助金などを打ち切り、納得できない」との声が上がっている。

 ▽筑波大心身障害学系の名川勝講師(障害福祉)の話 厚労省は来年度の支援費制度関係予算の伸び率で「地域生活を重視した」と説明するが、グループホームなどは何年たったら必要としている障害者に行き渡るのか、見通しもつかないレベルだ。予算の伸び率の評価だけでなく、支援費制度の理念に基づいたサービスを吟味して行うべきだ。施設が記入した調査票の内容に基づいて特別加算金を出すやり方は、適当とは思えない。」
[毎日新聞1月23日] ( 2003-01-23-15:01 )

 
 

◆2003/05/24 「<国立コロニー> 戻っておいで古里に 親の会などがメッセージ」
 須山勉『毎日新聞』2003/05/24

 「30年以上前に古里から離され、群馬県高崎市の山中にある重度知的障害者施設「国立コロニーのぞみの園」で集団生活を続けてきた約500人の入所者に向け、知的障害者の親らで作る「全日本手をつなぐ育成会」(約29万人)と関係福祉施設で作る「日本知的障害者福祉協会」(約3400施設)が「戻っておいで」と呼びかけるメッセージを出した。育成会の室崎富恵副理事長は「30年以上にわたって施設で生活せざるを得なかった入所者に謝罪したい」と話している。
 国立コロニーは国が管理する唯一の重度知的障害者入所施設。1950〜60年代に知的障害者をめぐる殺人事件や母子心中が相次いだことを受け、67年に全国から重度の知的障害者を受け入れて開所した。現在の入所者は507人(4月1日現在)。開所時からの在籍者が多く、平均年齢は53歳に達している。
 10月に独立行政法人化されるが、厚生労働省の検討委員会は今月、どんな障害があっても街で暮らすというノーマライゼーションの理念に基づき、入所者を段階的に地域へ移行するよう提言。育成会と福祉協会はこの動きを支援するためのメッセージを作成した。
入所者が古里に戻れるような基盤作りに全力を挙げるとし、「ご両親やご家族とともに、行政官や専門職そして市民の皆さんとともに、私たちはあなたたちを待っています」と呼びかけている。
 かつて国立コロニー設立の運動に加わった室崎副理事長は「ユートピアのようなものができると期待していたが、障害者の意思は無視され、親の気持ちで入所させただけだった。地域移行によって家族に負担をかけてはいけないが、本人が生き方を選択できるような場所を与えてあげることが大切」と話している。
 国立コロニーは国が管理する唯一の重度知的障害者入所施設。1950〜60年代に知的障害者をめぐる殺人事件や母子心中が相次いだことを受け、67年に全国から重度の知的障害者を受け入れて開所した。現在の入所者は507人(4月1日現在)。開所時からの在籍者が多く、平均年齢は53歳に達している。
 厚労省の高原弘海・障害福祉課長は「検討委員会の提言を具体化するためには、さまざまな関係者の協力が不可欠だ。こうしたメッセージを出していただけるのは大変ありがたい」と歓迎している。」

 
 

◆2003/08/18 「コロニー縮小―隔離の時代は終わった」
 『朝日新聞』2003/08/18朝刊・社説

 「群馬県高崎市の山中に何棟もの建物が点在する。重い知的障害のある人たちの大規模入所施設、国立コロニー「のぞみの園」である。
 500人ほどが1棟に25人ずつ暮らしている。1部屋に3、4人。食事や入浴は決められた時間通りに進められる。
 作業場も趣味を楽しむセンターも診療所も運動場も広大な敷地に備わっている。人里離れたところで営まれる別世界だ。
 唯一の国立コロニー、のぞみの園のあり方を議論してきた厚生労働省の検討委員会が、知的障害者に対する施策の抜本的な転換を求める報告をまとめた。
 だれもが地域でその人らしく生きるという考え方に沿って、07年度までに3〜4割の人が施設を出て周辺地域や出身地のグループホームなどで暮らせるように、と提言したのである。
 30年も前から、大規模入所施設を反省し、「脱施設」に取り組み始めた欧米諸国とは対照的に、日本は施設を増やし続けてきた。遅すぎた感はあるが、数値目標を盛り込んだ報告が出たことは歓迎したい。
 地域での暮らしを確かなものにするには、多くの壁を乗り越える必要がある。
 71年に開園したのぞみの園に入っている人の平均年齢は53歳。入所期間は27年に及び、出身地も全国にまたがっている。国が施設に偏った予算の配分を変えることはもちろんだが、全国の自治体も入所者を迎えるための住まいやサービスなどの整備を急がなければなるまい。
 滋賀県は、知的障害者が県内どこに住んでも24時間、365日、在宅でサービスを受けられる仕組みを築いている。
 ある施設の職員たちが、地域で暮らす障害者のためにボランティアでホームヘルプサービスを始めたのが発端だった。
 職員たちが独立し、96年、甲賀郡に地域支援の拠点「れがーと」を設立した。ヘルパー派遣をはじめ日中預かり、夜間預かり、休日に映画や買い物に付きそうサービスなどを多様に提供してきた。
 県はこの試みに注目し、県内各地に同様の在宅サービス網をはりめぐらした。
 滋賀県の試みでとりわけ注目されるのは、グループホームの体験宿泊だ。
 重い知的障害がある26歳の男性は、2年前から体験用のグループホームに毎週通って2泊程度の宿泊を重ねている。50代の両親と暮らしているが、親はやがて老いる。将来のグループホームでの暮らしに備えた予行演習だ。この間、彼は自分でできることが格段に増えた。「先行き、施設という選択肢は消えた」と母親は語る。
 長野県や宮城県でも、コロニー縮小に向けた準備を独自に始めている。
 のぞみの園には、入居者や親たちにきめ細かく配慮しながら、自治体や民間施設のモデルになりうる「脱施設」を実行してもらいたい。」


REV:20030822
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