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『ベジタリアン哲学者の動物倫理入門』

浅野 幸治 20210322 ナカニシヤ出版,220p.

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last update:20211213

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■浅野 幸治 20210322 『ベジタリアン哲学者の動物倫理入門』,ナカニシヤ出版,220p. ISBN-10:4779515521 ISBN-13:978-4779515521 [amazon][kinokuniya] ※


■著者

1961年 兵庫県に生まれる。
1984年 東北大学文学部卒業。
1989年 東北大学大学院文学研究科哲学専攻博士前期課程修了。
1997年 テキサス大学オースチン校大学院哲学科博士課程修了。
現在 豊田工業大学准教授。哲学博士(テキサス大学オースチン校)。専攻/哲学・倫理学
著書 『 因果・動物・所有──一ノ瀬哲学をめぐる対話』〔共著〕(武蔵野大学出版会,2020 年),『いまを生きるための倫理学』〔共著〕(丸善出版,2019 年),H・スタイナー『権利論──レフト・リバタリアニズム宣言』〔翻訳〕(新教出版社,2016 年),M・ヘルウィッグ『悩めるあなたのためのカトリック入門』〔翻訳〕(南窓社,2012 年),他。

■目次  *http://www.nakanishiya.co.jp/book/b559673.html

 はじめに

第1章 基本的人権から「基本的動物権」へ
 1 基本的人権って何?
 2 基本的人権はなぜあるのか
 3 ならば、動物にも基本権がある
 4 「生き物」について
 5 まとめ

第2章 動物権利論と飼育動物の問題 その一
     ――畜産動物、実験動物
 1 動物を解放しよう
 2 現代の畜産と動物権利論
 3 動物実験と動物権利論
 4 まとめ

第3章 動物権利論と飼育動物の問題 その二
     ――動物園/水族館、競馬、伴侶動物、介助動物
 1 動物園や水族館って、なんであるの?
 2 競馬って、そもそも必要か?
 3 伴侶動物は飼ってもよいのか?
 4 介助動物はどうなのか
 5 まとめ

第4章 動物権利論と飼育されていない動物の問題
 1 野生動物についてどう考えるか
 2 境界動物というのもいる
 3 外来種の問題は難しい
 4 まとめ

第5章 動物倫理と世界観
 1 キリスト教は動物に優しくないか
 2 仏教は動物の味方のはず
 3 非暴力は素晴らしい
 4 まとめ

   *

 参考文献一覧
 初学者のための文献案内
 あとがき

h2>■引用・言及 ◆立岩 真也 2022/12/20 『人命の特別を言わず/言う』,筑摩書房
◆立岩 真也 2022/12/25- 『人命の特別を言わず/言う 補註』Kyoto Books

第4章☆20 「その大仏空(おさらぎ・あきら)という人と茨城県にあった(今もある)その人の寺に住み、大空の話を聞いた人たちがやがて山を降りて「青い芝の会」の活動を新しくしていく。その経緯と、そして書かれたものと、真宗の教えとの関わりと差異が、頼尊恒信の『真宗学と障害学』に書かれている(頼尊[2015:103ff.])。
 動物倫理についての本で親鸞・悪人正機説にふれられているものとして見つけたのは『ベジタリアン哲学者の動物倫理入門』(浅野幸治[2021a])。
 「とにかく、殺生をする悪人は往生する、というのです。ということは、殺生をしてもかまわないということになりそうです。はたして、悪人正機説は、殺生を許可するのでしようか。悪人正機説の意義は、その社会的文脈の中で理解する必要があります。「下類」という言葉に注意してください。親鸞の当時、猟師は不殺生戒を犯して生き物を屠るということで差別されがちでした。悪人正機説は、そういう人に救いの手を差しのべるものと一般に解釈されます。ですから、反差別という点に、悪人大きな意義があるのです。
 これは、動物権利論の観点から、どう評価できるでしょうか。動物権利論によれば、人間の生命権と他の動物の生命権が両立しない場合、人間の生命権を優先することが容認されます。少し考えてみましよう。土地は有限です。土地は良い土地から占有されていさます。ということは、人口が十分に多い場合、一部の人は土地からあぶれます。良い土地から排除されるわけです。例えば、極寒の地です。そういう所では、植物が十分に育ちません。ですから、必要な栄養源として動物に頼らざるをえないでしよう。日本でも同様です、山間部に僅かな農地しかもっていなければ、そこで生産される米や野菜だけでは生きていくことができません。そういう場合、動物を殺して食料を補わざるをえないと思われます。ですから、農耕によって生計を立てることができない人が動物を殺して食べることを、権利論は許容します。
 このように考えられるので、動物権利論から見て、殺生が必ずしも往生の妨げにならないという親鸞の教えは適切なものと評価できます。では、殺生が往生の妨げにならないからといってドンドン殺生してよいということになるでしょうか。なりません。そういう勘違いを「本願ぼこり」と呼びます。」(浅野[2021a:171-172])


*頁作成:立岩 真也
UP: 20220121 REV:20220122. 1229
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