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『いのちへの礼儀――国家・資本・家族の変容と動物たち』

生田武志 20190225 筑摩書房,466p.

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last update: 20210925
■生田武志 20190225 『いのちへの礼儀――国家・資本・家族の変容と動物たち』,筑摩書房,466p. ISBN-10:4480818510 ISBN-13:978-4480818515 [amazon][kinokuniya] ※

■この本の内容
 人間にとって動物とは何者なのか。なぜ私たちは意図的に動物を殺すのか。それを問うことは、人類の来し方を振り返り、肉食への態度を語るのに等しい。ホモ・サピエンスの誕生以来二〇万年続いた「狩猟」。一万年前からの「家畜」。そして二〇世紀後半の「畜産革命」によって、まさしく「いのち」が産業化され、生権力の対象となった。大阪・釜ヶ崎という極限状況で人間の生と死を洞察してきた著者が、動物たちの生と死に真っすぐに向き合い、人間と動物との共闘の道をしめす書き下ろし評論。

■目次

震災と動物たち(1)
 前篇
T「家族ペット」の時代
U「生体商品」としてのペット
V動物虐待―暴力の連鎖
W屠畜と肉食の歴史82-133
X畜産革命―工業畜産と動物工場 ほか)
 間奏
 後篇
T反「国家・資本・家族」の動物
U動物と人間の共闘
V動物の精神分析
W日本現代文学と猫
X戦争と動物たち
終章「野生生物の天国」チェルノブイリ

■引用

震災と動物たち(1)
 炎上する「子猫殺し」13
 ※「動物」という言葉・「屠殺」という言葉について
 前篇
T「家族震災と動物たち(1)
 炎上する「子猫殺し」13
 ※「動物」という言葉・「屠殺」という言葉について
 前篇
T「家族ペット」の時代
 ペットの名、こどもの名
 「愛玩動物ではなく、家族の一ついち員」
 「家族以上に家族らしい」動物
 二〇一〇年代――情報資本主義と「猫の時代」
 ……
U「生体商品」としてのペット
V動物虐待―暴力の連鎖
W屠畜と肉食の歴史
X畜産革命―工業畜産と動物工場 ほか)
Y動物の福祉・動物の解放

 間奏

 後篇
T反「国家・資本・家族」の動物
U動物と人間の共闘
V動物の精神分析
W日本現代文学と猫
X戦争と動物たち
終章「野生生物の天国」チェルノブイリ
」の時代

U「生体商品」としてのペット
V動物虐待―暴力の連鎖
W屠畜と肉食の歴史
X畜産革命―工業畜産と動物工場 ほか)
 間奏
 後篇
T反「国家・資本・家族」の動物
U動物と人間の共闘
V動物の精神分析
W日本現代文学と猫
X戦争と動物たち
終章「野生生物の天国」チェルノブイリ

シンガー事件(1989〜)→Singer, Peter

★ 「シンガーが言うように、もし障がい者の立場を悪化させず動物をより尊重するのなら、彼の哲学は現実には障がい者の立場から問題はないはずです。しかし、シンガーの議論には、おそらく障がい者を「健常者」や「感覚をもつ」動物に対して「劣る」存在と考えさせる面があり、それが「事件」を引き起こすことになったのです。
 シンガーの議論に対して、このような反論が考えられます。し,シンガーは(種としての)「人間」と(理性的で自己意識のある存在としての)「人格」を区別し、「人格」を持つチンパンジー死を殺すことは「人格」ではない人間を殺すより「悪い」としました。それは従来、考えるまでもなく自明とされていた「人間中心主義」を否定するほとんど革命的な転換でした。しかしそれは「人△179間中心主義」から「人格中心主義」へ、つまり「理性的で自己意識がある」ことを価値基準にした新たな差別体制でしかないとも考えられます。それは従来の「人間でなければ殺してもいい」を「人格でなければ殺していい」へ変えただけではないでしょうか。
 しかし「人格中心主義」が新たな「差別」だとしても、それに対するシンガーの回答は、「人間中心主義」に比べれば「人格中心主義」の方がはるかに妥当だ、ということかもしれません。現実に、動物解放運動によって障がい者が殺されることはなく、一方で多くの動物の扱いが改善されています。かりに「人格中心主義も差別だ」と批判するなら、わたしたちは、より差別の少ない(あるいは差別が全くない)別の提案をする必要があります。少なくとも、「どちらも差別だから「人間中心主義」のままでいい」と主張するのは不可能なのです。」(生田[179-180]

★ 「シンガーが旧西ドイツで言論弾圧の迫害を受けた一九八九年頃、わが国の倫理学者たちがシンガーの生命倫理説を批判したことがあった。当時シンガーには世界中の先進国から賛否両論、質問や支援、抗議の手紙が集まったという(筆者が直接シンガーに訊いたところ日本からは1通しかなかった。ところが奇妙なことに日本人の批判は訳者の一人にすぎない私のところにきた。私はシンガー説とは違う考えを持っていたが、対話・論争を愛する哲学者として、挑発にのってシンガー擁護を買って出た。ところがその結果、論争はおころず、私はシンガー攻撃者たちから黙殺されただけだった。」(『クローバリゼーションの倫理学』監訳者解説、生田[2019:181]に引用)

■言及

◆立岩 真也 2022/12/20 『人命の特別を言わず/言う』,筑摩書房
◆立岩 真也 2022/12/25- 『人命の特別を言わず/言う 補註』Kyoto Books


UP:20210923 REV:20221229
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