『みな、やっとの思いで坂をのぼる――水俣病患者相談のいま』
永野 三智 20180912 ころから,252p.
last update: 20190910
■永野三智 20180912 『みな、やっとの思いで坂をのぼる――水俣病患者相談のいま』,ころから,252p. ISBN-10: 4907239289 ISBN-13: 978-4907239282 1800+
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■内容
「不知火海を見下ろす丘の上に水俣病センター相思社はある。
2004年の水俣病関西訴訟の勝訴にともない、「自分も水俣病ではないか」との不安を抱える数千の人たちが、いまも患者相談に訪れる。
著者は、相思社での患者相談などを担当する日常のなかで、自分の生まれ故郷でいまもタブーとされる水俣病事件の当事者たちと接するようになり、機関紙で「水俣病のいま」を伝えるための連載「患者相談雑感」を開始した。
本書は、本連載をもとに大幅に加筆して一冊にまとめた記録だ。
「やっと思いで語り出した人びとの声」がここにある。」
→ http://korocolor.com/book/minasaka.html
◆特装版
「『みな、やっとの思いで坂をのぼる』の上製・特装版。
カバーは水俣のアーティスト「HUNKA」によるシルクスクリーン印刷。」
→ http://korocolor.com/book/tokusou-minasaka.html
永野三智:プロフィール
「1983年熊本県水俣市生まれ。2008年一般財団法人水俣病センター相思社職員になり、水俣病患者相談の窓口、水俣茶やりんごの販売を担当。同法人の機関紙『ごんずい』に「患者相談雑感」を連載する。2014年から相思社理事、翌年から常務理事。2017年から水俣病患者連合事務局長を兼任。本書は初の単著。」
◆水俣病センター 相思社 http://www.soshisha.org/jp/
■目次
第1章 「私も水俣病だと、娘には言わないでください」
第2章 なぜ患者相談か
第3章 差別してきた人たちもまた患者となる
第4章 悶え加勢する
第5章 「息子に蹴られた背中が痛くて」
第6章 “私”が当事者だ
「あとがき」にかえて 問われて語り始めるとき
附章 水俣病センター相思社の紹介
■引用
■書評・紹介
◇水俣病“閉ざした思い”一冊に 相思社の永野さん、40人から聞き取り
2018/09/11付 『西日本新聞』朝刊
◇前山光則 20180929 「水俣病の人と悶え、加勢する――『みな、やっとの思いで坂をのぼる』永野三智著」『西日本新聞』朝刊書評面《読書館》
◇野矢茂樹 20181006 「(書評)『みな、やっとの思いで坂をのぼる 水俣病患者相談のいま』 永野三智〈著〉」『朝日新聞』東京版朝刊30面(読書2)
◇石原真樹 20181109 「永野三智 水俣病センター相思社職員――タブーの扉開き 水俣の苦悩聞く」『中日新聞』**面《あの人に迫る》→20181110 『東京新聞』21面《あの人に迫る》
◇寺尾紗穂 20181206 「読書日録」『すばる』41-1(2019-01): 408-409
‐ 「読み始めて、事実この本は本当に簡単には読み進められなかった。まさに「やっとの思いで」というテンポでしか読み進められないのだった。一人の人の人生や思いを知り、胸が一杯になってページを閉じてしまう。その繰り返しだった。それでも、その重さは永野さんというフィルターを通すことで不思議な明るさをまとっていた。私より二つ年下の水俣出身の女性だ。子どもを生んだとき、故郷に帰るという選択肢について「子どもを水俣出身にしたくない」という思いを抱いた、そういう複雑なリアリティーを抱えるところから、自ら水俣で生きることを決め、学び、考え、患者たちの今を伝え続けることを選んだ女性だった。患者の話を聞き続けて何もできない苦しさもあると吐露する永野さんに、生前の
石牟礼道子さんがかけたという「悶え加勢すればよかとです」という言葉は、人を一人にしないことが大事、というシンプルなメッセージなのだと思う。」(p.408)
‐ 「ふりかえれば、永野さんの本の中に水俣病患者に向き合った医師
原田正純さんの言葉があった。「中立とは何か。多数派と少数派の中間に立って、強いものと弱いものの中間に立って、何が中立か。本当の中立とは少数者の側に立って初めて実現する」。」(p.409)
◇[ひと]永野三智さん 水俣病と認められていない人たちの言葉を本にした
2018年12月22日『朝日新聞』東京朝刊2面(総合)
◇渡部朝香(出版社社員) 20181229 「《三省堂書店×WEBRONZA 神保町の匠》[書評]2018年 わがベスト3(4)」WEBRONZA
“今年、石牟礼道子さんが亡くなられた。多くの人と同じく、私も『苦海浄土』に水俣病を教えられた……つもりでいた。永野三智さんの『みな、やっとの思いで坂をのぼる――水俣病患者相談のいま』(ころから)を読み、自分の無知に打ちのめされた。私よりだいぶ年下の永野さんは、水俣病の患者さんや家族の相談を受ける仕事をしている。家族にも病を言えぬ人。申請をためらう人。40代の患者もいる。症状は年々悪化する。2010年代の今現在のことだ。永野さんは無力を痛感しながら、石牟礼さんの「悶え加勢する」という言葉を励みに、彼らとともにあろうとする。交感を記録する永野さんの言葉は、ゆらぎも含め、確かな感触をもって届く。誰しもが水俣病と、近く遠く接している。”
◇成人の日を前に 足元で振動を起こそう
2019年1月13日『信濃毎日新聞』社説
“熊本県水俣市。不知火海を望む高台に「相思社」はある。|水俣病の被害者たちのよりどころとして設立されたこの施設で、職員の永野三智さんは訪れる人と向き合い、語る言葉に耳を傾けてきた。昨秋、出版された本「みな、やっとの思いで坂をのぼる」は、その記録である。|あすは成人の日。大人として社会と自分に向き合っていく皆さんに、ぜひ知ってほしい人だ。”
■本書を引用/に言及した文献
◇中村佑子 20190906 「私たちはここにいる――現代の母なる場所[第10回]」『すばる』41-10(2019-10): 304-323
■永野三智によるメディアでの発信
◇永野三智 201809 「[自著を語る]水俣病――何をもって終わりとするのか 「悶え加勢する」相思社でありたい(永野三智『みな、やっとの思いで坂をのぼる』)」『総合文化誌 KUMAMOTO』24: 168-174
◇荻上チキ Session-22 20181102 「【音声配信】特集「水俣病公害認定から50年。相談窓口となってきた相思社の永野三智さんに聞く、被害者たちのいま」永野三智×荻上チキ 2018年11月1日(木)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」22時〜)」TBSラジオ
*永野三智によるレポート(Facebook/20181101)
◇旗野秀人×永野三智 20181207 「[連載:「佐藤真の不在」との対話 第3回]水俣病発生から【遅く来た若者】だからできること(後編)」里山社
◇旗野秀人×永野三智 20181214 「[連載:「佐藤真の不在」との対話 第4回]水俣病発生から【遅く来た若者】だからできること(後編)」里山社
◇久米宏 ラジオなんですけど 20181215 「あなたは魚(いを)の骨になりなさい 水俣病センター相思社・永野三智さん」TBSラジオ
*永野三智によるレポート(Facebook/20181217)
■企画
◇『みな、やっとの思いで坂をのぼる』刊行記念トークイベント:
「私たちの日常は近く、あるいは遠く水俣病と接している」
日時:2018年10月20日(土)14:00〜16:30(13:45開場)
話し手:永野三智(水俣病センター相思社職員)
聞き手:崎山敏也(TBSラジオ記者)
入場料:1500円(税込/ワンドリンク付き)
会場:エディトリ神保町(東京都千代田区神田神保町2-12-3 安富ビル2F)
◇【同志社大学公開授業】「グローバル地域文化専門セミナーU」(担当:小野文生)
日時:2018年12月21日(金)16時40分−18時10分(延長の可能性あり)
場所:同志社大学烏丸キャンパス志高館SK119
内容:公開授業
参加費:無料
◇第43回カライモ学校:『みな、やっとの思いで坂をのぼる――水俣病患者相談のいま』刊行記念トーク
日時:2018年12月22日(土)15:00〜17:00(14:30開場)
話し手:永野三智さん(水俣病センター相思社)
聞き手:奥田直美・奥田順平(カライモブックス)
場所:カライモブックス(京都市上京区社横町301 http://www.karaimobooks.com/)
定員:30名
入場料:1000円
ご予約ください karaimobooks@gmail.com / 075-203-1845 (カライモブックス)
◇大阪版『みな、やっとの思いで坂をのぼる』刊行記念トーク
日時:2018年12月23日(日)15:00〜17:00(14:30開場)
話し手:永野三智さん(水俣病センター相思社)
聞き手:牧口誠司さん
参加費:1,500円(1ドリンク付)*前売り・当日とも
会場:天劇キネマトロン朱雀ホール(地下鉄中崎町駅下車4番出口を北へ徒歩3分 セブンイレブンを通り過ぎて次の角を右へ http://amanto.jp/groups/tengeki)
主 催:永野三智トークショー大阪実行委員会
協 賛:サロン・ド・アマント天人
連絡先:maganoyatto@yahoo.co.jp
*永野三智によるレポート[12/21・22・23の企画について](Facebook/20190114)
“一日目の同志社大学では、水俣に通い続ける小野文生さんが授業に招いてくれました。最初の90分は「みな、やっとの思いで坂をのぼる」を読んでさまざまな感想をもった学生さんたちとのセッション。[…]|二日目のカライモブックスは、同世代の奥田夫婦が店主をしています。相思社に入った10年前からの付き合いです。水俣病の本ばかりを扱っている古書店には素敵な人たちが集います。奥田さん夫婦のもつ水俣への愛や畏れに、私も刺激を受けてきました。[…]|三日目の牧口誠司さんは、永野が本を出すからお祝いしようと最初に言ってくれました。それでこの出張が成立したようなものです。”
■言及/関連情報
◆立命館大学産業社会学部2018年度後期科目《質的調査論(SB)》「石牟礼道子と社会調査」(担当:村上潔)
◇ころから(@korocolor)
10/20 TBSラジオ「荻上チキSession-22」での荻上チキさんOPトーク
http://ow.ly/IbdE30n5zuJ
今までの歴史について伝える本と一線を画す素晴らしい本。このような語り方の本がもっと色々な領域から出てこなくてはならない
永野三智『みな、やっとの思いで坂をのぼる 水俣病患者相談のいま』
#ss954
[2018年12月24日15:15 https://twitter.com/korocolor/status/1077085232547938304]
◇ころから(@korocolor)
京都カライモブックスでの永野三智さんトークイベント始まりました!
満席です。
#みなやっとの思いで坂をのぼる #水俣病センター相思社
【画像】
[2018年12月22日15:07 https://twitter.com/korocolor/status/1076358433853456386]
◇藤田一樹(@ship_fujita)
カライモブックスさんにて『みな、やっとの思いで坂をのぼる』著者の永野三智さんのトークを聞きました。水俣病という重いテーマながら、永野さんの率直かつユーモアある語りで笑いの絶えない2時間。「悶え」を言葉にして聞かせてくださいました。【画像】
[2018年12月22日19:30 https://twitter.com/ship_fujita/status/1076424686018355200]
◇北野 隆一(@R_KitanoR)
1)熊本県水俣市で水俣病患者を支援する一般財団法人「水俣病センター相思社」の常務理事・永野三智さんが、患者らの相談に応じてきた日々をつづった本『みな、やっとの思いで坂をのぼる 水俣病患者相談のいま』(ころから刊)を出版しました。神田神保町で記念イベントがあり、思いを語りました。【画像】
[2018年10月21日15:51 https://twitter.com/R_KitanoR/status/1053901607002234880]
◇北野 隆一(@R_KitanoR)
@R_KitanoR @korocolor @MDC_Soshisha 2)永野三智さんは水俣市生まれ。中学時代に「水俣病がうつる」と言われ、出身地を隠し各地を転々としました。書道の恩師だった溝口秋生さんが母親の患者認定を求める裁判で、支援に加わり、帰郷して相思社の職員に。差別を恐れ、感覚障害などの症状があっても語れない人が多い実態を知ったそうです。【画像】
[2018年10月21日15:56 https://twitter.com/R_KitanoR/status/1053902808309620738]
◇北野 隆一(@R_KitanoR)
@R_KitanoR @korocolor @MDC_Soshisha 3完)永野三智さんは迷いながら坂を上り相談に来る人たちの気持ちを本の題名に込めました。「病気の話を聞いても力になれず無力感が募る。それでも『話を聞いてほしい』と来る人たちの声を伝えたい」/書評)『みな、やっとの思いで坂をのぼる』永野三智著:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/DA3S13711598.html
[2018年10月21日15:58 https://twitter.com/R_KitanoR/status/1053903452571455488]
◇Y.Akiyama ・・・−−−・・・(@akiyamabonbon)
「みな、やっとの思いで坂をのぼる」刊行記念トークイベントでの話。著者の永野三智氏はかつて故
石牟礼道子氏に「あなたは魚の骨になりなさい。国が飲み込もうとしても喉にトゲのように刺さって、飲み込めない骨に」と言われた。
[2018年10月22日3:49 https://twitter.com/akiyamabonbon/status/1054082284549066752]
◇Y.Akiyama ・・・−−−・・・(@akiyamabonbon)
釣り上げられた魚はまな板で切り刻まれて、煮たり焼いたり好きなように調理されて食べられてしまう。ところが骨がその人の喉に刺さることで「魚を食べること」の容易ならざることを思い知らせることになる。
この記録を読んで心底思い知ることは何だろう?
[2018年10月22日4:18 https://twitter.com/akiyamabonbon/status/1054089466183213056]
*作成:村上 潔
UP: 20181010 REV: 20181022, 1112, 21, 1216, 20, 22, 24, 20190103, 13, 14, 0910
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水俣病
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水俣病 2018
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石牟礼道子
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身体×世界:関連書籍
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BOOK