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『災害と日本人――1998-2002』(中井久夫集7)

中井 久夫 20180710 みすず書房,322p.

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last update:20180914

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中井 久夫 20180710 『災害と日本人――1998-2002』(中井久夫集7),みすず書房,322p. ISBN-10:4622085771 ISBN-13:9784622085775 3600+ [amazon][kinokuniya] ※ w/nh05

■内容

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内容紹介

被害者の側に立つこと、被害者との同一視は、私たちの荷を軽くしてくれ、私たちの加害者的側面を一時忘れさせ、私たちを正義の側に立たせてくれる。それは、たとえば、過去の戦争における加害者としての日本の人間であるという事実の忘却である。私たちの心の奥底には、浮上すれば病的症状となるような漠然とした被害者意識が潜在しているかもしれない。その昇華ということもありうる。

社会的にも、現在、わが国におけるほとんど唯一の国民的一致点は「被害者の尊重」である。これに反対するものはいない。ではなぜ、たとえば犯罪被害者が無視されてきたのか。司法からすれば、犯罪とは国家共同体に対してなされるものであり、被害者は極言すれば、反国家的行為の単なる舞台であり、せいぜい証言者にすぎなかった。その一面性を問題にするのでなければ、表面的な、利用されやすい庶民的正義感のはけ口に終わるおそれがある。(「トラウマとその治療経験」2000)

災害によるトラウマをたどり、そこから他者の心の傷への共感が生まれる可能性を説いた表題作他「トラウマとその治療経験」等31編。

解説・最相葉月

精神科医・中井久夫が半世紀にわたり世に届けつづけたことばの数々を年代順に 編む好評のシリーズ『中井久夫集』(全11巻)。

内容(「BOOK」データベースより)

災害によるトラウマをたどり、そこから他者の心の傷への共感が生まれる可能性を説いた表題作ほか「トラウマとその治療経験」「高学歴初犯の二例」等31編。

著者について

中井久夫
なかい・ひさお
1934年奈良県生まれ。京都大学医学部卒業。神戸大学名誉教授。精神科医。文化功労者(2013年度)。
著書『中井久夫著作集――精神医学の経験』全6巻別巻2(岩崎学術出版社1984-91)『分裂病と人類』(東京大学出版会1982、2013)『精神科治療の覚書』(日本評論社1982、2014)『治療文化論』(岩波書店1990)『こんなとき私はどうしてきたか』(医学書院2007)『私の日本語雑記』(岩波書店2010)『日本の医者』(日本評論社2010)ほか。みすず書房からは『記憶の肖像』(1992)『家族の深淵』(1995、第50回毎日出版文化賞受賞)『アリアドネからの糸』(1997)『最終講義――分裂病私見』(1998)『西欧精神医学背景史』(1999、2015)『清陰星雨』(2002)『徴候・記憶・外傷』(2004)『時のしずく』(2005)『関与と観察』(2005)『樹をみつめて』(2006)『日時計の影』(2008)『臨床瑣談』(2008)『臨床瑣談・続』(2009)『災害がほんとうに襲った時』(2011)『復興の道なかばで』(2011)『サリヴァン、アメリカの精神科医』(2012)『「昭和」を送る』(2013)『統合失調症の有為転変』(2013)の著書のほか、共編著『1995年1月・神戸』(1995)『昨日のごとく』(1996)があり、訳書として、サリヴァン『現代精神医学の概念』『精神医学の臨床研究』『精神医学的面接』『精神医学は対人関係論である』『分裂病は人間的過程である』『サリヴァンの精神科セミナー』、ハーマン『心的外傷と回復』、バリント『一次愛と精神分析技法』(共訳)、ヤング『PTSDの医療人類学』(共訳)、『エランベルジェ著作集』(全3巻)、パトナム『解離』、カーディナー『戦争ストレスと神経症』(共訳)、クッファー他編『DSM-V研究行動計画』(共訳)、さらに『現代ギリシャ詩選』『カヴァフィス全詩集』『リッツォス詩集 括弧』、リデル『カヴァフィス 詩と生涯』(共訳)、ヴァレリー『若きパルク/魅惑』『コロナ/コロニラ』などが刊行されている。

■目次

本棚一つの詩集たち
岐阜病院の思い出
須賀敦子さんの思い出
気骨ある明治人の人生――父方祖父のこと
もう一人の祖父のこと
私の人生の中の本
「祈り」を込めない処方は効かない(?)――アンケートへの答え
文化変容の波頭――米国で続発する大量殺人の背景
いろいろずきん考
宮本忠雄先生追悼
災害と日本人
親密性と安全性と家計の共有性と
神戸の含み資産
『分裂病と人類』について
災害被害者が差別されるとき
トラウマとその治療経験――外傷性障害私見
「起承転結」と「起承“承"結」――日米文化の深い溝
校正について
阪神間の文化と須賀敦子
犯罪の減少と少年事件
霜山先生のお弟子さんたち
秘密結社員みたいに、こっそり
安克昌先生を悼む
二十世紀を送る
一精神科医の回顧
ある回顧
精神科医の精神健康の治療的意義
高学歴初犯の二例
多田智満子訳『サン=ジョン・ペルス詩集』との出会い
ある家裁調査官と一精神科医――藤川洋子『「非行」は語る――家裁調査官の事例ファイル』
医学・精神医学・精神療法は科学か

解説7 最相葉月
掲載文・書誌一覧

■引用


■書評・紹介


■言及



*作成:岩ア 弘泰
UP:20180914 REV:
中井 久夫 身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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