pp. 84, 86, 127
社会的企業が最初に生まれた英国では、社会的企業を定めた法律は特に存在せず(p.84)、社会的企業関係で法律が存在しているのは、フィンランド、リトアニア、イタリアそして韓国の4か国です。このうち、イタリア法では社会的企業について定義するのみで、政府に対して社会的企業の推進を義務付けてはいませんが、フィンランドとリトアニア、そして韓国では政策が充実しています(p.127)。また、厳密には社会的企業ではありませんが、スペインではこれに似た概念として、社会的包摂企業というものが存在します。これらは、・・・(p.86)。
p.
社会的連帯経済に直接関係した法律ですが、国レベルでは2011年にスペインで社会的経済法とエクアドルで民衆連帯経済法、2012年にメキシコで社会連帯経済法、2013年にポルトガルで社会連帯基本法が、そして2014年にフランスで社会連帯経済法が可決されています。このなかで最も短いのがスペイン法で、わずか9条から構成されています。この法律の意義としては、その実践的な公共政策の推進よりも社会的経済の枠組みの制定のほうに重心が置かれており、法律の施行から5年経過した現在も、スペイン政府側から具体的なアクションは執り行われていません。また独立国ではありませんが、カナダのケベック州では、2013年に社会的経済法が可決しています。
pp. 131-133
最後に国レベルではありませんが、韓国・ソウル市における社会的経済の支援政策は目を見張るものがある。ソウル市では、持続可能な社会的経済の生態系を作り上げることをビジョンとして掲げており、現在は同市内の総生産の2%にとどまっている社会的経済のシェアを、2020年までに8%へと増やす野心的な計画を定めています。まず、社会的経済の生態系造成に関しては、社会的経済支援センターがあげられます。協同組合都市ソウルという枠組みで、協同組合相談支援センターが、マウル都市ソウル(マウルとは村という意味の韓国語)では、マウル企業に対して最大5000万ウォンの設立支援金を出すことも決定しています。マウル企業とは日本のコミュニティビジネス同様、地域に根差した企業を指しますが、日本のコミュニティビジネスが社会問題の解決型であるのに対し、マウル企業の場合には雇用や安定した所得の創出に重点が置かれている違いがあります。
p. 191
自治体レベルで社会的連帯経済を推進するには、国内外にある社会的連帯経済の実践例を見つけて研究する必要がある(p.189)。自治体レベルで比較的実現しやすい方策の一つとして、社会的経済支援センターの設立が挙げられます。日本のどこかで韓国ソウル市の社会的経済支援センターのような先進事例が生まれ、プラスのインパクトを生み出すようになると、日本各地で後を追ってNPO支援センターから社会経済支援センターへの衣替えが行われることでしょう。