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『在宅人工呼吸器ケア実践ガイド――ALS生活支援のための技術・制度・倫理』
川口 有美子・小長谷 百絵 編 20160625 医歯薬出版,168p.
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■川口 有美子・小長谷 百絵 編 20160625 『在宅人工呼吸器ケア実践ガイド――ALS生活支援のための技術・制度・倫理』,医歯薬出版,168p. ISBN-10: 4263236777 ISBN-13: 978-4263236772
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※ als. v03.
◆
http://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=236770
◆
http://sakura-kai.net/pon/about_news/shinkan
◆立岩 真也 2016/06/25
「人工呼吸器の決定?」
■目次
Part 1 基本編
Chapter 1 人工呼吸器を使って生活する 川口 有美子 2
さまざまな人工呼吸器生活者 2
Chapter 2 呼吸のしくみと人工呼吸器のしくみ 4
1 生活の中の呼吸 小長谷 百絵 4
呼吸運動のしくみ 4/酸素の流れ 5/気道の清浄化 5
2 人工呼吸器のしくみ 大森 健 6
在宅で使用する人工呼吸器 6/加温加湿器 10/呼吸回路 11
その他の注意事項 14/人工呼吸器と上手く付き合うために 16
Chapter 3 非侵襲的呼吸管理 中山 優季 19
ALSをはじめとする神経筋疾患の呼吸障害 19
呼吸筋力低下による換気不全 19/咳をする力の不足による気道浄化困難 26
球麻痺症状による誤嚥・気道閉塞症状 29
Chapter 4 気管切開下人工呼吸(TPPV) 山本 真 33
1 ALS患者の在宅人工呼吸器管理の基本 33
非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)から気管切開下人工呼吸(TPPV)への移行期 33
気管切開下人工呼吸(TPPV)の開始 36
気管切開下人工呼吸(TPPV)での従量式換気への変更 37
2 合併症とリスクマネジメント 39
長期人工呼吸管理による合併症 39/リスクマネジメント 41
3 痰の自動持続吸引装置の使用の実際 44
痰の自動持続吸引装置の概要 44/使用上の注意 45
Chapter 5 コミュニケーションの方法 49
1 コミュニケーションの方法とテクノロジー 小林 貴代 49
QOLの軸をなすコミュニケーション 49
残存する能力を引き出し,効果的に活用するには? 49
コミュニケーション支援の実際 50
コミュニケーション機器の先にある課題 51
2 TLS(Totally Locked-in State)のコミュニケーション 小長谷 百絵 52
TLSとは 52
筋肉の動きに頼らない生体信号(眼伝,筋電,脳波)のスイッチ 52
療養者の意思をキャッチする方法 53
意思疎通の手がかりとしての生理的反応 55/療養者の存在 57/まとめ 57
Chapter 6 在宅における感染防止対策 岡田 忍 59
スタンダードプリコーションと感染経路別予防策 59
手洗い,防護用具の使用 61
日常生活での注意,日常生活における感染対策 64/病院と在宅の違い 66
Chapter 7 人工呼吸器装着者の吸引,栄養・口腔ケア 小長谷 百絵 69
喀痰吸引 69/経管栄養(胃瘻からの注入) 76/口腔ケア 76
Part 2 応用編
Chapter 8 在宅人工呼吸器生活者の生活実態とケア 川口 有美子 84
家族をあてにしない療養体制を 84/家族が人工呼吸器の装着を左右する? 85
重要な「見守り」 85/基本のケアとチェックポイント 86
制度の利用 94/この章のまとめとして 99
Chapter 9 在宅療養の受け皿 101
1 難病法に基づく療養生活への支援 原口 道子 101
診断・治療を受ける 101/医療費の自己負担を軽減する 102
相談の場所 103/療養生活の支援を受ける 104
2 退院支援部門による地域移行支援 鉾丸 俊一 105
医師・看護師から退院支援部門への調整依頼 106
療養者・家族とソーシャルワーカーへの相談(面接) 106
病院内外の退院支援チームの形成 108/退院前カンファレンス 108
退院時の調整 108/病院の機能分化 109/まとめ 109
3 レスパイト入院の実際 岩木 三保 109
レスパイト入院とは 110/レスパイト(入院)先はどのように確保するか 110
レスパイト入院の調整事例 110/レスパイト入院の秘訣 112
レスパイト入院の課題 112
4 公的介護保障
… 藤岡 毅,長岡 健太郎,野 亜紀,添田 庸子,國府 朋江 113
公的介護制度の概要 113/家族介護は法的義務なのか? 114
人工呼吸器装着に関する意思決定支援と公的介護保障 116
介護保障を考える弁護士と障害者の会 全国ネット 117
Chapter 10 当事者・介護者の思い … 119
1 心のケア 小長谷 百絵 119
告知後の当事者の思い 119
2 介護者からみた日常 水町 眞知子 122
人工呼吸器を着けて生きることを支援する 122
Chapter 11 「延命治療」と「尊厳死」をめぐる問題 安藤 泰至 129
1 「尊厳死」とはなにか? 129
「安楽死」と「尊厳死」は別のものか? 129
「尊厳死」という言葉の性質 130
「尊厳死」という言葉に隠されてしまいがちなこと 131
2 医療は人が生きるのを助け,支えられているのか? 132
「延命治療」という言葉を再考する 132/「治す医療」と「支える医療」 133
「治らない患者」への忌避とQOLの低評価 134
3「死の自己決定権」という言説について 135
死に関わる自己決定 135
どこまでが「自己決定」として正当化可能なのか? 135
「尊厳ある生」を支える医療や社会 136
Chapter 12 ALS等の進行によって生じる倫理的課題 139
1 ALS等の神経難病患者の幇助死をめぐる論争 伊藤 道哉 139
カナダ(医師幇助死の合法化の動き) 139
イギリス(医師幇助自殺法の否決) 140
ドイツ(自殺幇助法制化をめぐる問題) 140
まとめ 141
2 ALSと認知症やTLS(Totally Locked-in State)について 伊藤 道哉 142
ALSと認知症 142/ALSとTLS 143
3 遺伝性疾患の人に必要な配慮 柊中 智恵子 144
家族性ALSの遺伝形式 144
患者・家族にとっての遺伝学的情報・遺伝学的検査の意味 145
家族性ALS患者・家族が抱えている思いとは? 145
日本の遺伝医療の現状と遺伝カウンセリング 146
医療・福祉の専門職としてできること 147
Chapter 13
人工呼吸器の決定?
立岩 真也 151
答は決まっているのではないか? 151/特別なことか? 151
「終末期」ではない 152/どんな道具なのか? 153
選んで決めることか? 154/着けることとはずすこと 155
わからないのに決める? 156/抵抗ではなく迎合になってしまう 157
必要なものは必要と割り切ってみる 157/家族により大きな義務はない 158
意識的に他人を入れること 158/今よりは楽になるように制度は使える 159
巻末資料 164
索引 165
Column
人工呼吸器を着けて快適な暮らし 17
ある日の私のつぶやき 18
大災害への備えについて 32
主人,篠沢秀夫とともに 48
難病コミュニケーション支援講座 58
ヘルパーのつぶやき 67
母の寝顔 68
吸引でのカテーテルの回転について 73
「生活を支える看護」ボランティア経験で学んだこと 81
地域の支援者の連携 82
外出支援 100
患者のつぶやき 127
離島の患者 128
クリスマスに逝く人は 138
ALSの遺伝学的検査に必要な配慮 149
お金の話 150
難病治療に新たな時代の幕開け 162
■はじめに
編者の小長谷と川口がそれぞれ東京都内の在宅人工呼吸療法に関わり始めたのは1990年代後半.ALS患者の母親の介護に明け暮れていた川口は,大学教員で看護学生のボランティアを組織していた小長谷を紹介された.当初は家族介護者と支援者という立場で私たちは出会った.やがて私たちは看護学生や主婦をヘルパーに養成するための研修事業を開始し,2004年6月ALS当事者やボランティア仲間と共にNPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会を設立.地域のケア従事者を巻き込みながら活動の輪が広がり,ふと気がついたらすでに出会いから15年もの歳月が経とうとしている.
その間,医療保険による人工呼吸器のレンタル,訪問看護,介護制度の利用が定着し,人工呼吸療法による生活は全国に普及した.公的介護制度がある日本では,TPPV(気管切開による陽圧式人工呼吸器)により,10年以上の長期生存も標準になりつつある.これはNPPV(非侵襲的陽圧式人工呼吸器)までを人工呼吸器ケア,さらに言えば人間としての自律の限界とみなす欧米諸国の支援のあり方とは大きく異なっている.
『在宅人工呼吸器ポケットマニュアル』を上梓した2009年は,介護職員による喀痰吸引等の法制化にむけて,厚生労働省が情報収集を開始した時期にあたっていた.先鋭的な執筆陣による前著は,当時もっとも実践的かつ正直な内容であったため,介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会の資料として提供され,現在の『第三号研修』(特定の者のための研修)の内容に多くの示唆を与えた.そうして,2013年に喀痰吸引等は正式に介護職員の業務として認められ3年を経た今,実務者のステップアップ研修にも使えるテキストが求められるようになり,本書を企画した.
さて,本書の特徴は前著を引き継ぎ,当事者からエキスパートに至るまで,多彩な人々に執筆を依頼した点にある.
前半の基本編も前著と同様,卓越した医療技術を実践している方々に執筆していただいた.特にChapter 3,Chapter 4では,ALSにおいてNPPV(鼻マスク)からTPPV(気管切開下人工呼吸)へのスムーズな移行を願って,医師,看護師向けにまとめていただいている.というのも,ALSの長期療養に不可欠な,NPPVから気管切開,TPPVによる長期療養へという一連の治療のプロセスも,実際には在宅では対応できず,NPPVの適応がなくなった時点で,治療の継続を断念し亡くなる人が少なくないからである.
後半の応用編では,在宅人工呼吸療法の考え方について,長く地域医療に携わってきた実践家や研究者に執筆を依頼し,読み応えのある文章が続いている.
医療的ケアに関する法律上の解釈は,前著では時期尚早で,ほとんど解説することができなかったが,このたびは介護職員による医療的ケアが認められることとなっているため,家族に頼らない他人介護による在宅人工呼吸療法も視野に入れ,24時間介護保障に関する執筆を障害福祉行政に詳しい弁護士の方々に依頼した.
前著になかった内容としてもう一点,ALSにおけるコミュニケーション障害の重症化やFTD(前頭葉側頭葉萎縮による認知変異)について触れている.ALSの長期生存に伴いここ数年の間に介護負担感が増大する症状として表面化してきた.しかもケアの方法は未確立である.本書は十分に紙幅がないながらも,Capter 10〜13に指針となる考え方を示した.
「自宅で暮らしたい」という切なる願いに応えるために,支援者のネットワークや介護保障がある.それらが十分に機能すれば,家族のいない単身者でも長期にわたって在宅療養できることが,Capter 9からおわかりいただけるだろう.
療養者や介護者のコラムや写真からは,呼吸器ユーザーの日常のありのままをご覧になれる.在宅で人工呼吸器とともに生活する人々の暮らしを支えるとはいかなることか,診療所医師,訪問看護師や介護職,ボランティア,自治体職員,研究者など幅広い読者に本書を手にしていただき,常に身近に置き実践の際に参照していただきたい.もちろん,療養者にとってこそ,必要な技術と知恵のガイドとして本書は役立つはずである.
最後になりましたが,本書の企画執筆にあたり,医歯薬出版の編集担当者には大変お世話になりました.人工呼吸器療法のガイドブックとはいえ,医療,介護技術から倫理問題,果ては24時間介護保障まで,幅広い射程を持つ本書と,ユニークな執筆陣を束ねる作業は,並大抵の編集者ではできなかったことです.数年先のさらなる改訂版を期待して,執筆者を代表して,心より感謝,お礼を申し上げます.
2016年 初夏
川口 有美子
小長谷 百絵
…… 04 20190705 1000
UP:2016 REV:20160729
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