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『「共倒れ」社会を超えて――生の無条件の肯定へ!』

野崎 泰伸 20150315 筑摩書房,240p.

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last update:20151215

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「共倒れ」社会を超えて――生の無条件の肯定へ!


野崎 泰伸 20150315 『「共倒れ」社会を超えて――生の無条件の肯定へ!』,筑摩書房(筑摩選書),240p.  ISBN-10: 448001618X ISBN-13: 978-4480016188 1500+ [amazon][kinokuniya] ※ ds.


■内容

労働力として有用か否かで人を選別する現代社会。障害者とその支援をする人々は「犠牲」を強いられ、「共倒れ」の連鎖が生じている。その超克を図る思想の書!(出版社より)

〈生きづらさ〉は、あなたのせい? 私たちの生を選別し、序列化し、犠牲を強いるこの社会。障害をもつ人が抱える問題に照準し、「犠牲の構造」に抗う倫理を提示する希望の書。

この社会は、私たちの生を「望ましい生命」か否かで選別し、序列化している。こうした中で障害者や難病患者、その支援をする人びとは「犠牲」を強いられ、追い詰められ、「共倒れ」が引き起こされていく。「何を言っても、この社会は変わらない」という諦念が、私たちを思考停止に導き、異質な存在を排除するよう促されていく。私たちを「犠牲の構造」に巻き込むこの社会に抗するには何が必要か?「生の無条件の肯定」という「正義の構想」を提示し、倫理学の再構築を図った渾身の書である。

私たちはいま、ひどく息苦しい時代を生きています。小さな不正を糾すことも大切ですが、それによって、より大きな不正が見過ごされているのです。「どうせ」という思考が蔓延するなかで、私たちは「何を言おうが変わらない……」という諦念を抱かされ、「犠牲の構造」へと追い込まれているのではないでしょうか。―――― 本文より


■著者紹介・編集担当者より

1973年兵庫県生まれ。大阪府立大学大学院人間文化学研究科博士後期課程修了・学術博士号取得。哲学・倫理学を専攻。2008年4月より立命館大学にて非常勤講師を務める。社会学者の立岩真也氏をして「これが本道」と言わしめた『生を肯定する倫理へ――障害学の視点から』(白澤社)のほか、『はじめて出会う生命倫理』(共著、有斐閣)などの著作がある。


■目次

はじめに 011

  ■ 犠牲と倫理
  ■ 障害者問題と犠牲
  ■ 本書の構成

第1章 生の無条件の肯定という企て 017

 1 生の無条件の肯定とは何か 018
  ■ 存在そのものを肯定する倫理学へ
  ■ 存在を肯定するのに条件はいらない
  ■ 私自身の「現実」
  ■ 生存に条件を付す「犠牲」の思想

 2 功利主義の問題点 028
  ■ 少数者の犠牲を容認する功利主義という思想
  ■ 現実のジレンマを解決する?
  ■ 背負うべき負い目を取り除く功利主義
  ■ 根源的な自由を奪っていく倫理的ルール化
  ■ 現実と倫理の混同

第2章 倫理とは何か 047

 1 倫理学とはどういう学問か 048
  ■ 倫理学のイメージ
  ■ 倫理学は処世術ではない
  ■「他者とともに、豊かに生きるにはどうすればいいか」を問うのが倫理学

 2 ともに豊かに生きる他者とは誰のことか? 055
  ■ ともに豊かに生きるべき他者とは誰のことか?
  ■ 社会の一員として受け容れるか否かという問題
  ■ 社会から捨て置かれた存在が告発しなければならないのか?
  ■ 他者からの〈呼びかけ〉への〈応答〉
  ■ 論理的であることの重要性

 3 「共に」生きるということ 070
  ■「共倒れ」を助長するこの社会
  ■ 共依存による「共倒れ」を引き起こすこの社会
  ■「現場」に直接かかわることについて
  ■ 誰もが支援にかかわれる社会へ

 4 「豊かさ」とは何か 084
  ■「豊かに生きる」ということ
  ■ 経済学と功利主義
  ■ 経済成長至上主義を拒否する「豊かさ」
  ■ 犠牲と「豊かさ」

第3章 犠牲の問題として障害者問題を考える 099

 1 障害者の問題はなぜ犠牲の問題なのか 100
  ■ 各人に我慢を強いるこの社会
  ■ 問題の本質は犠牲の問題である
  ■「合理的配慮」の「合理性」とは何か?

 2 生まれてくる生命を選別するということ 108
  ■ 出生前診断で何がわかるのか
  ■ 出生前診断の何が問題か
  ■ 医療者側の障害観を問う
  ■ 社会的なサポートの不備
  ■ 生命を選別する優生思想
  ■ 新型出生前診断と優生思想
  ■ 産科医療保障制度の何が問題か
  ■ 出生前診断の真の問題とは?

 3 尊厳死と犠牲 122
  ■ 安楽死・尊厳死とは何か?
  ■ 日本における安楽死・尊厳死
  ■ 諸外国における安楽死・尊厳死
  ■ 日本尊厳死協会の主張
  ■ 尊厳死の主張への反論
  ■ 尊厳死を犠牲の問題として考える

 4 いのちを選別するこの国の教育 138
  ■「発達保障論」と「共生教育」
  ■ 「反発達」論とは異なる道へ
  ■「私と異なる存在との出会い」としての発達
  ■ 教育の本来的な目的とは何か?

第4章 倫理学の再構築 155

 1 トリアージ問題 156
  ■ トリアージとはなにか
  ■「トリアージは倫理的に容認し得るか」という問い
  ■ 一つの対応の仕方」として容認するのは欺瞞か?
  ■ 真に問うべきは非被災者の行為である

 2 人を追い込むこの社会と追い込まれている人たち 165
  ■ 支援を得ながら自分で決めるということ
  ■「追い込まれた人」の犯罪をどう考えるか
  ■ 追い込まれた人は何でもする、としか言いようがない
  ■ 分断をもたらすこの社会をこそ批判する

 3 自由な主体、そして責任 177
  ■「この私」を可能にする他者の存在
  ■「選択と行動の自由」と「根源的な自由」
  ■ 他者への応答によって知る「自由」の生起
  ■ 他者への責任と自由な〈主体〉
  ■〈主体化〉には終わりがない
  ■〈主体化〉を拒むこの社会に抗うということ

 4 権力に対峙する倫理学 189
  ■ 生命の「尊厳」と「生そのもの」
  ■ 障害者の「生そのもの」を選別する権力
  ■「どうせ」という思考
  ■ 本当に「私には関係がない」問題なのか
  ■「生そのもの」の犠牲に抗する

 5 「どうせ」を押しつけてくる現実にいかに抗するか 202
  ■ 異論を封殺する「総無責任社会」
  ■ 権力への抗い方――自らの経験から
  ■ それは「大衆蔑視」ではない
  ■ 障害者による交通アクセス権獲得運動
  ■「好きで社会運動にかかわる」の意味

終わりに 障害者を犠牲にするこの社会に抗する倫理学 219

あとがき 225

■正誤表
  p.80 微収 → 徴収


■引用


■書評・紹介・言及

◇新聞記事
◆2015/04/26 「生命に優劣つけていませんか」,武田徹による書評『「共倒れ」社会を超えて――生の無条件の肯定へ!』,朝日新聞
◆2015/05/11 「命の選別に疑問を投げかける」,結城康博による書評『「共倒れ」社会を超えて――生の無条件の肯定へ!』,公明新聞
◆2015/06/17 「「弱者」が訴える 犠牲なき社会」,テーブルトーク,朝日新聞夕刊
◆2015/10/16 「多数の幸福のために犠牲生むな――障害者から見た倫理学 新著「『共倒れ』社会を超えて」」,京都新聞夕刊文化欄



*作成:野崎 泰伸
UP:201503 REV:20151211, 1215
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