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『地方交通を救え!――再生請負人・小嶋光信の処方箋』

小嶋 光信・森 彰英 20140815 交通新聞社(交通新聞社新書070),222p.

last update:20140903

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■小嶋 光信・森 彰英 20140815 『地方交通を救え!――再生請負人・小嶋光信の処方箋』,交通新聞社(交通新聞社新書070),222p.  ISBN-10: 4330489147 ISBN-13: 978-4330489148 \800+税  [amazon][kinokuniya]

■内容

2013年12月に施行されたばかりの「交通政策基本法」。その成立に熱意を傾けていた両備グループ代表・CEOの小嶋光信。 和歌山電鐵の「たま駅長」や岡山電気軌道の「MOMO」といった話題づくりと、数々の交通事業者の経営再建でその名を知られた小嶋だが、 なぜ“再生請負人”と呼ばれるようになったのか。そして今、彼が目指しているものは何か…。地方交通の維持・再生にとどまらず、 市民生活やまちづくりにまで及ぶグランドデザインを描く小嶋の道半ばの闘いを、フリージャーナリストの森彰英がさまざまな地域・立場の人々への取材も交えて執筆。 地方交通の現状を通して、超高齢社会に突入した日本の課題と将来像が見えてくる。

■著者略歴

小嶋 光信
両備グループ代表・CEO。同グループのほとんどの会社で社長を務める。地方におけるバスや鉄道の再建を積極的に手がけ、「地方公共交通の再生請負人」とも呼ばれている。 2006年、南海電鉄から貴志川線の経営を引き継ぐために和歌山電鐵を設立。

森 彰英
フリージャーナリスト。都市、交通、メディアなどを中心に取材・執筆活動を続ける。(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

はじめに 小嶋 光信

第1章 地域公共交通再生の構図を現地に見る
14.3kmの単線に観光と生活が共存する
地域と一体で進めて来た再建・存続の取り組み
「たま」駅長の誕生と出世物語
年間あと4回乗ってもらい存続させよう
公設民営の構図が見えてくる
【インタビュー】鉄道再生の原則「知ってもらう・乗ってもらう・住んでもらう」
公設民営を実証した津エアポートライン
第三セクターではなく、公設民営で
松坂航路の再生にも協力する

第2章 “地方公共交通の再生請負人”と呼ばれるまで
創業114年、3つの事業コアを持つ両備グループ
【インタビュー】「経世済民」の事業家を目指して
小嶋光信氏の経営理念
【インタビュー】「忠恕」、そして津田永忠との出会い
両備グループのアイデンティティ
【インタビュー】信託経営とは何か

第3章 地方鉄道の光と影――取材メモをもとに
【三陸鉄道】東日本大震災からの再建の跡
復興のシンボルとして部分開通を積み重ねる
二次交通の確保が課題
BRTの乗車体験から駅の機能を考える
【島原鉄道】2008年度末に島原外港〜加津佐間を廃止
【熊本電気鉄道】市中心部への乗り入れが最大の経営課題
【銚子電気鉄道】副業で経営危機を回避
【津軽鉄道】イベント列車が風物詩として定着
公募社長が活躍する第三セクター鉄道
【いすみ鉄道】メディアの取材に積極的に協力
【ひたちなか海浜鉄道】マーケティングに裏打ちされた利用促進策
【山形鉄道】旅行会社の勤務経験を持つアイデア社長
並行在来線継承会社の奮闘
【青い森鉄道】2度目の開業で営業区間が拡大
【IGRいわて銀河鉄道】高齢化でニーズが高まる地域医療を支援
「明」と「暗」の両面をどう描くか。そして公設民営へ

第4章 公設民営とは何か
地方鉄道の8割が赤字という現実
地域の公共交通が成り立たないというビジネスモデル
補助金制度の副作用
101年の歴史ある会社がわずか19日で消えた
井笠鉄道の経営破綻から日本の公共交通の未来が見える
公共交通の4つの経営パターン
規制緩和が地域公共交通の衰退に拍車をかけた
費用対効果の概念が持ち込まれ過ぎた挙句
「交通権」という国民の権利

第5章 地域公共交通総合研究所の活動
再生の体験をもとに、地域公共交通を考える場を作る
研究者に何を期待するのか
【インタビュー】想像力を働かせることが地域交通再生の第一歩
家田 仁氏(東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻・政策研究大学院大学教授)
【インタビュー】何よりも「現場」起点の取り組みを進める
加藤 博和氏(名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻准教授)
【インタビュー】まちづくりの発想を起点に地域公共交通を考える
土井 勉氏(京都大学工学部大学院工学研究科・医学研究科安寧の都市ユニット特定教授)

第6章 地域公共交通の再生と「まちづくり」への挑戦
「エコ公共交通大国おかやま構想」の推進
マイカー時代の恐ろしさ、利用できなくなる日が想像できない
利用者目線の回復
オムニバスタウンの導入
「公共交通利用で、歩いて楽しいまちづくり」運動の提案
中国バス、再生からの出発
利用者の信頼を回復するまで
「エコ公共交通大国おかやま構想」を実現するためのアクションプラン

第7章 交通政策基本法が出発点
交通政策基本法とはどんなものか
法律の整備を訴え続けた長い歩み
国土交通委員会の参考人として思いのすべてを披瀝する
交通の高速化よりもネットワークを優先して考えたい
交通政策基本法によって日本が再生されるシナリオ

あとがきに代えて――都市遊牧民の複眼的取材メモ 森 彰英

■引用

  
マイカー時代の恐ろしさ、利用できなくなる日が想像できない
 一方、小島氏は、これから本格化する高齢化時代を視野に入れながら、マイカーの隆盛を眺めていた。いま働き盛りの20〜40代の人たちは、 移動のほとんどをマイカーに依存しており、公共交通の存在すら忘れようとしている。だが、この人たちも確実に年齢を重ねる。 精神的には元気だが、身体的に自動車の運転能力を失ったときの移動手段をどうするのか。当時はまだ想像の世界であった。 小嶋氏によれば「マイカー時代の恐ろしさは、働き盛りの社会人が公共交通の必要性を感じないところにある。 これは公共交通中心の生活が当たり前の大都会の人には理解できない重大な現実なのです。高齢化社会が本格化すれば、 誰でもいずれは公共交通に依存することになるのですが、地方では本当に公共交通を必要とする人たちの声が小さく、世論を形成しにくく>160>なっていまします。 これが公共交通衰退に歯止めがかからなかった一因ではないでしょうか」というのである。「あなたは、いまならマイカーで生活のすべての移動を充足できるでしょう。 しかし、お年を召して自分で運転できなくなったとき、外出はどうされますか」という小嶋氏が常に発する質問の原点はここにある。(pp.159-160)

■書評・紹介

■言及



*作成:北村 健太郎
UP: 20140903 REV:
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