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『嘘と絶望の生命科学』

榎木 英介 20140720 文藝春秋(文春新書986),255p.

last update:20150129

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榎木 英介 20140720 『嘘と絶望の生命科学』,文藝春秋(文春新書986),255p.  ISBN-10: 4166609866 ISBN-13: 978-4166609864 \800+税  [amazon][kinokuniya]

■内容

「小保方さんなんてかわいいほうですよ」 世紀の大発見が一転、論文不正や捏造に変わり、世間を驚かせたSTAP細胞の騒動。 しかし、バイオ研究者たちは「もっと真っ黒な人たちがいる」と冷静な反応だ。
iPS細胞の発見、再生医療や難病治療、食糧危機や絶滅種の復活まで様々な応用可能性が期待され、成長産業として巨額の予算投入されるバイオ。 生命現象の未知の可能性と崇高な目的が謳われる裏で、バイオ研究を取り巻く環境は過酷さを増す。若手研究者たちの奴隷のような労働、 未熟で自己流の研究者が多数生み出される大学院、絶対の存在である大学教授、続発する研究不正……。 STAP細胞騒動の背景とは?
一連の騒動からあぶりだされるバイオ研究の虚構を、かつて生命研究の一端に身を置いた病理医である著者があらゆる角度から 徹底検証し、厳しく問う。バイオの未来を取り戻す提言を多数盛り込んだ決定版の1冊。

■目次

はじめに いま、生命科学に何が起きているのか
STAP細胞をめぐる騒動
21世紀は「バイオの世紀」?
バイオの危機

第1章 「奴隷」が行うバイオ研究
殿様生物学の時代
生物学がバイオになった日
バイオとは何か
殿様から「奴隷」へ
ピペドを生み出した構造
若手教員も実はポスドク
使い捨てられるピペド
蟻地獄に落ちたピペドの運命
医者がピペドを使い捨てる
プライベートを蝕む研究
女性研究者たちの苦悩
アカハラの泥沼
追い詰められたピペドが犯人?――アジ化ナトリウム混入事件
研究補助者の悲哀
改正労働契約法の波紋
一発逆転を夢見るピペド

第2章 ブラック企業化する大学院
バイオの世界へようこそ
大学院がアブナイ
博士とは何か
増えすぎた大学院生
「放牧型」と「ブロイラー型」――研究者養成の二つの流儀
放牧ブロイラーの無残
二重国籍の学生たち
博士の乱造が留まらない理由
博士の価値は大暴落
それでも学生がほしい――バイオ特有の問題
最高権力者、教授

第3章 カネが歪めるバイオ研究
産業化する科学
整えられてきた体制
政策の重点となってきたバイオ研究
政権交代でも変わらないバイオ重視
素早かった iPS細胞研究への支援
激化する研究費獲得競争
「科学技術政の司令塔」は公平か
理研の構造
成果はあがっているのか
大御所の反発が意味するもの
バイオ産業の規模
ムラ化するバイオ

第4章 研究不正――底なしの泥沼
バイオ研究は砂上の楼閣
研究不正とは何か
研究不正とは「日常」なのか
再現できない論文
撤回される論文
なぜ不正が発生するのか
論文、論文、論文!
論文雑誌の罪
中心のない論文が生まれる
若い研究者に忍び寄る魔の手
業績の水増し
論文の著者の貸し借り――ギフト・オーサーシップ
STAP細胞論文はギフト・オーサーシップ
カネが歪む研究
統計学の知識不足が不正を誘発
製薬メーカーと不正
切り捨てられる若手
STAP細胞の事件はなぜ起こったのか
STAP細胞の行方
研究不正と大発見の間

第5章 バイオを取り戻せ
ピペットを置いた日
無責任な教授たち
研究者の「自律」は風前のともしび
日本版研究公正局は必須
構造を変えよう
政府を頼るな
科学政策に声をあげよう
科学研究のモード1とモード2
研究者よ、ピペットを捨てよ、町へ出よう
バイオの原点を思いだせ

あとがき

■引用

■書評・紹介

■言及



*作成:北村 健太郎
UP: 20150129 REV:
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