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『アベニモ負ケズ ハシモトニモ負ケズ――宮沢賢治 教育への贈りもの』

三上 満 20131220 フォーラム・A,137p.

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last update:20150822

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■三上 満 20131220 『アベニモ負ケズ ハシモトニモ負ケズ――宮沢賢治 教育への贈りもの』,フォーラム・A,137p.  ISBN-10: 4894288044 ISBN-13: 978-4894288041 1112+税  [amazon][kinokuniya]

■内容

村の小さな農学校の賢治先生がめざした、ほんとうの教育とアベ、ハシモトが引き込む競争教育のちがいをやさしく語る。 岩手日報文学賞・賢治賞を受賞した著者が賢治没後80周年に贈る。

■目次

はじめに

序章 喜びのある教育へ――宮沢賢治没後八〇年によせて

第一章 誰が教育を荒野にしたか
1 教え子が語ってくれたこと

教育の『三原色』
“啄木と五右衛門”の話
教え子からの手紙――誤字だらけでも宝物
五八年目のクラス会

2 広がる教育の荒野

「落ちこぼれ、だめなやつは落第させたらいい」?
政治が教育を左右する「大阪教育基本条例」
全国一斉学力テストの結果発表
ゼロ・トレランスとは何か

第二章 ほんとうの教育への道しるべ
1 宮沢賢治先生の教育

子どもの幸福度
ほんとうの教育への願い
教師になるまで……賢治の苦悩の四年間
賢治のゆかいな授業を映す三つの作品
教え子たちの回想……一緒になる先生

2 一九四七年教育基本法の精神

一九四七年教育基本法第二条の四つの方針
「学んでよかった」と言える勉強を
賢治先生のあだ名“実際問題”
先生と生徒が睦みあって
日露戦争、おかしくないか?
九州は吸収?
『洞熊学校を卒業した三人』……地獄行きのマラソン競争

3 ほんとうの勉強とは

「これからのほんとうの勉強はねえ」
学ぶ必要のある生活を
かけ算九九の授業
いつか人の役にたてる大人に

第三章 喜びのある教育へ力あわせて
1 だめな者はいない、いのちへのいつくしみ

みんなむかしからのきょうだい
虔十が植えた杉の木
『セロ弾きのゴーシュ』から学ぶ
待てない、されど待つ

2 賢治の道しるべをいまに生かして

成長の一里塚
賢治の願い、それを阻むものとたたかいながら
新しい自分に向かって――子どもの大好きな三点セット

補章 『風の又三郎』の子どもの世界
子どもは本来、仲間はずしやいじめをしない

『風の又三郎』を吹く風
六年生一郎の存在感
子ども群像の原風景

■引用

第二章 ほんとうの教育への道しるべ
2 一九四七年教育基本法の精神


日露戦争、おかしくないか?

 教育のなかに自由な雰囲気があることが、教育というものを非常に生き生きとさせるということは、おそらくみなさんもいつもお感じになっておられることだと思います。 子どもたちの自由な発想や発言をどんなふうに引き出したらいいのか、悩み、工夫され、日頃から心を砕いておられることだろうと思います。>071>
 じつは私にもいまでも思い出すたびに自分でもおかしくなるような、楽しくなってくるような、そんな授業風景の思い出がいくつかあります。
 たとえば歴史の授業で「日露戦争」を教えていたときのことです。東アジアの地図を書きまして、そして日本とロシアが、日本が朝鮮半島から満州に軍を進めて、 ロシアもまた北から南下してきて、そこで日本とロシアがぶつかって、たたかったのが日露戦争なんだよ、って話をしていたのですね。
 そうしたら、後ろのほうに座っていた、普段は授業なんか全然集中しない子で、私の学校のツッパリの総番長さんなんですが、この子が「先生」って手を挙げるんです。 「なあに? 何か聞きたいの?」って言ったら、「先生、この戦争、ちょっとおかしいんじゃねえか?」って言うのですね。「うーん、おかしい……かもしれないけど、 どういうところがおかしいと思うの?」って聞いたら、「だって、この戦争ってのは、日本とロシアがやってるんだろう? 日本とロシアがやっているんならよ、この戦争、 日本かロシアでやればいいじゃないか」って言うのです。
 たしかにそうですね。日本とロシアがたたかっているのに、この戦争、なぜか中国>072>でやってるよ? こういうふうに言うのですね。「なるほどなあ」と。 さすがツッパリさんで発想が自由ですよね。学校の規則なんかあまり守らないわけですから、発想が自由で豊かです。それでそんなことを聞いてきたのです。
「そうか。君、いいところに気がついたなあ」って言ったら、そのうちにその子、ずっとこだわっていましてね、「先生、せめて断ったのか」と言うのですね。 「なに?」って言ったら、「場所を使わせてくれ、って中国に断ったのか?」って聞くんですね。「いや、そんなことはない。勝手にどんどん入っていってやったんだ」 って言ったら、「そりゃあねえ話だろう。一組と三組の連中がよ、オレらのクラスに勝手に入って来て荒らしたら、そりゃ困るじゃない」って、こういうことを言うのですね。
 で、最後に、日露戦争は日本の勝利に終わった、という結末を告げて、授業を終わろうとしたら、「先生よ、ちょっと待ってよ」って言ってくるんですね。 「なに?」って聞いたら、「先生よ、せめて金は払ったんだろうな」って言ってくるのですね。「金ってなあに?」って聞いたら、 「いや、戦争をやらせてもらったショバ代(場所代)だよ」って言うのです。「うーん、金を払うどころか、かえってこの中国の領土を日本が取り>073>上げちゃったんだよね」と、 話をしたら、「先生、そんなの、ヤクザでもやらねえよ」って言うのですね。そんなヤクザでもやらないような戦争をじつはやったんだね、と。 そんな楽しい授業をした思い出があります。(pp.70-73)

■書評・紹介

■言及



*作成:北村 健太郎
UP: 20150822 REV:
教育/フリースクール  ◇障害者と教育  ◇国家/国境  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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