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『日本における作業療法の現代史
――対象者の「存在を肯定する」作業療法学の構築に向けて』

田島 明子 20130329 生活書院,272p
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last update: 20131217
『日本における作業療法の現代史』

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田島 明子 20130329 『日本における作業療法の現代史――対象者の「存在を肯定する」作業療法学の構築に向けて』,生活書院,272p. ISBN-10: 4865000097 ISBN-13: 9784865000092 \3000+tax [amazon][kinokuniya] ※ r02, ds/ds

■内容紹介

 著者による紹介 → 研究の現場「作業療法(学)の現代史を描く」 http://www.ritsumei-arsvi.org/news/read/id/515

 *生活書院のHPでの案内:http://www.seikatsushoin.com/bk/109%20sagyoryoho.html

 作業療法学は何を目指し、何処へ向かえばよいのか。矛盾した言葉・概念として臨床現場に存在する「障害受容」を手掛かりに、日本における作業療法の現代史を丁寧に追い、「存在の肯定」という規範・倫理的視座から、過去から連なる作業療法の「良い」未来図を提示する。

■目次

序論
i 問題の視座と研究目的
ii 本論文の構成と各章の要旨
iii 本研究の意義
iiii 本研究の限界

第1章 ひとの価値と作業療法――障害者の就労の3つの位相をめぐる一考察
1 問題意識の所在
2 作業療法における内在価値
3 障害者の就労の3つの位相
4 ひとの価値と作業療法

第2章 日本における作業療法(学)の現代史
1 1965年〜1975年――医療職化と独自性のはざまで
2 1976年〜1991年――「作業療法の核を問う」までの道筋とその着地点
3 作業療法(学)における理論化の動向――特に1992年以降に着目して

第3章 「寝たきり老人」をめぐるリハビリテーション言説――特に1990年以降について
1 はじめに
2 制度・政策
3 リハビリテーションの医療経済
4 リハビリテーションにおける言説
5 全体考察
6 おわりに

第4章 「認知症高齢者」をめぐるリハビリテーション言説
1 認知症高齢者の作業療法における言説・研究の変容・編制過程
      ――1980・1990年代のリハビリテーション雑誌の検討
2 認知症高齢者の「QOL」の概念化・尺度化・援助設定をめぐる論点の整理

第5章 日本のリハビリテーション学における「QOL」の検討
――主観/客観を超えたリハビリテーション学の足場を求めて
1 はじめに――なぜ「QOL」を問題とするのか
2 対象と方法
3 結果――三期に分けて俯瞰した「QOL」の言説・研究の特徴と変化
4 考察――主観/客観の裂け目と存在を下支えする規範的支援概念の必要性

第6章 存在価値と能力価値の倒置のない作業療法学のあり様を目指して
――「作業の意味性」と「治療/非治療のフィールド」の探究
1 第1章から第5章までのまとめ
2 作業療法学とリハビリテーション学の理論や思想間の比較検討
3 存在価値と能力価値の倒置のない作業療法学のあり様を目指して

あとがき


■言及

○読書メーター、ふにゃさま
http://book.akahoshitakuya.com/b/4865000097

・作業療法の理論社会学をゼロから作り上げようとする力作。「存在価値と能力価値の倒置のない作業療法学のあり様を目指す」(p262)。こういう方向性好きです。/「作業」とは、物との関係から関係性を立ち上げること、過去と未来を現在とつなげること、その中に存在を見出すこと、といったことを可能にする行為である。/医師や理学療法士との相違をどのように見出すのかが作業療法学の課題だったらしい。筆者は「作業」という概念を間接的に検討することで、最終的には作業療法学の独自性を打ち立てることに成功している。
・「主観/客観の裂け目の中心部にいるのが他ならぬ『本人の思い』であり……」(p249)。印象的な部分。

○なーさんのブログ「作業療法の現代史を読んで」(20130301付)
http://ameblo.jp/otizm/entry-11481367479.html

[・・・]
続いて、田島明子先生の「作業療法の現代史3・1981〜1991,Core Ethics,2011」を読んでいる。
先生の分析能力の高さから、非常に理解しやすい内容になっており改めて思うのは、これまた30年以上前から僕が今危惧している未来を昔から同様に大勢の方が想っており、盛んに議論された過去があったのだと知った。
一部引用で「1965年以来、これまでの作業療法の独自性を巡る動向をまとめながら(中略)実は初期の作業療法学の歩みの中でも、ADL・心理・職能領域など治療的領域とは異なる領域が作業療法の分野であると認識されており、そうした領域をいかに医療職の独自性として表現していくかが課題とされていた(続く)」とあり(この論文はフリーで落とす事ができます。ぜひ熟考する時にご活用を)やはり今の作業療法教育のあり方(医学モデルが主流であること)に大きな問題があるため、10年以上経った今現在でも対して変化が無い(場合によっては医学モデルの風潮が強くなっている?)のではないかと実感してしまった。

もちろん医学モデルが悪いわけではない。

作業療法の教育の中に幅がさほど無い事と、世界はドンドン変化しているにも関わらずその流れに完全に置いてけぼりをくっている事が問題で、鈴木明子先生も「第8章 将来に向かって作業療法士の果たすべき役割」の章で『国際的感覚への目覚め』と称しページを多く割いて世界の作業療法士にも意識を向ける事の必要性を説いている。

○Facebook IAMAS libraryさま (20130620付)
https://www.facebook.com/IamasLibrary

わが国はこのジャンルにおいては「実践あるのみ」といった傾向が強く、行政の側からの接近は薄く、社会科学的な分析も脆い状態です。
つまりは、「歴史的検討と未来展望」といった側面がとてつもなく不毛な領域なのです。

著者は社会学を専攻した作業療法士(作業療法士でありながら社会学の学位を修めた方)なので、その不毛な場所に鋭く斬りこんでゆく力が十分に感じられる。

第1章 ひとの価値と作業療法―障害者の就労の3つの位相をめぐる一考察
第2章 日本における作業療法(学)の現代史
第3章 「寝たきり老人」をめぐるリハビリテーション言説―特に1990年以降について
第4章 「認知症高齢者」をめぐるリハビリテーション言説
第5章 日本のリハビリテーション学における「QOL」の検討―主観/客観を超えたリハビリテーション学の足場を求めて
第6章 存在価値と能力価値の倒置のない作業療法学のあり様を目指して―「作業の意味性」と「治療/非治療のフィールド」の探究


■関連した研究会

○障害学研究会中部部会 第10回研究会 
日時:2012年6月30日(土)  13:30〜16:00
http://m.webry.info/at/aidaibungakubu/201206/article_2.htm?i=&p=&c=m&guid=on

○表現としての身体研究会 第 2回研究会 
日時:2012年12月8日(土) 場所:藍野大学中会議室 時間:17:00-19:00
http://www.hi-net.zaq.ne.jp/bucvv407/index.html
http://www.hi-net.zaq.ne.jp/bucvv407/pg67.html

○田島 明子 20131020 「日本における作業療法の現代史−対象者の「存在を肯定する」作業療法学の構築に向けて」於:東京大学駒場Iキャンパス18号館4階コラボ1 主催:東京大学大学院総合文化研究所・教養学部付属「共生のための国際哲学研究センター」(UTCP)上廣共生哲学寄付研究部門L2「共生のための障害の哲学」プロジェクト
紹介頁:http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/events/2013/10/the_12th_meeting_of_the_study/
報告頁:http://utcp.c.u-tokyo.ac.jp/blog/2013/11/l2-9/
景山洋平氏の当日の報告レジュメ:存在価値と能力価値のバランスに関する現象学的問題 [PDF]


UP:20130601 REV:20130613, 0630, 0811, 1217
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