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『自立と福祉――制度・臨床への学際的アプローチ』

庄司 洋子・河東田 博・河野 哲也・菅沼 隆 編 20130310 現代書館,379p


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■庄司 洋子・河東田 博・河野 哲也・菅沼 隆 編 20130310 『自立と福祉――制度・臨床への学際的アプローチ』,現代書館,379p. ISBN-10: 4768435211 ISBN-13: 978-4768435212 2300+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

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◆立教大学社会福祉研究所のHP
 http://www.rikkyo.ac.jp/research/laboratory/ISW/jiritsu.html

内容(「BOOK」データベースより)
障害者、高齢者、ひとり親家庭等の福祉対象者が、パターナリズムの下に置かれ、自律性を奪われてきたことを規範・制度・臨床面から検証し、福祉がどう自立/自律支援に向き合うのかを展望する。

■編者

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
庄司/洋子
立教大学名誉教授。東京大学文学部社会学科卒業。ハーヴァード大学教育学大学院修士課程修了。東京都民生局退職後、日本社会事業大学教員、立教大学社会学部教員を経て、現職。福祉政策を家族・ジェンダーの視点から分析

菅沼/隆
立教大学経済学部教授、博士(経済学)。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。デンマーク・ロスキレ大学客員研究員(2003年度、2011年度)。戦後日本の社会保障制度、デンマーク社会政策を研究

河東田/博
立教大学コミュニティ福祉学部教授。ストックホルム教育大学教育学研究科修了。四国学院大学・徳島大学を経て現職。「人権」「ノーマライゼーション」を拠りどころに障害福祉課題に取り組んでいる

河野/哲也
立教大学文学部教授、博士(哲学)。立教大学社会福祉研究所所長。慶應義塾大学(1995年)、国立特殊教育総合研究所特別研究員(1995年4月〜97年3月)を経て、現職。専門は哲学、倫理学、教育哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

T.自立概念の再検討:
「自立をめぐる哲学」(河野哲也)
「自立とケアの社会学」(庄司洋子
U.障害と自立の制度的考察:
「デンマークにおけるハンディキャップを有する者への就労『支援』と就労能力評価方法」(菅沼隆)
「障害者の自立を支える所得保障」(百瀬優)
「パーソナルアシスタンス制度にみる自立」(河東田博
「日本の生活保護・障害年金と障害者」(田中聡一郎・百瀬優)
「日本の精神保健福祉施策と自立」(酒本知美)
V.障害と自立の臨床的考察:
「入院経験者の語りにみる精神科病院と自立」(松原玲子)
「障害者の自立生活と介助」(深田耕一郎
「組織運営への知的障害当事者の参画と自立」(河東田博
「リハビリテーションにおける自立」(佐川佳南枝)
W.自立をめぐる福祉社会学的考察:
「スウェーデンにおける家族政策と女性」(浅井亜希)
「妊娠・出産過程にみる女性の自立」(菅野摂子)
「女性の就労と自立の関係」(杉浦浩美)
「高齢期の自立と地域」(新田雅子)
「医療における患者の自立」(松繁卓哉)
「『地域貢献住宅』の可能性」(野呂芳明)
「貧困に晒される人々の健康問題から『自立支援』を問う」(湯澤直美)
X.考察とまとめ(河野哲也)

■引用

◆松原玲子  20130310 「入院経験者の語りにみる精神科病院と自立」,庄司他編[2013:152-172]

はじめに

 この数年間、筆者は生活支援センターのスタッフという立場から精神障音害者の退院支援にかかわりをもっている。しかし精神科病院から退院したいという声は実はそれほど地域には届いてこない。ある地域に暮らす長期入院の経験者は「地域生活は大変です。何もかも自分でやらなければならないんですよ。はっきり言って病院のほうが楽ですよ。とても退院したほうがいいですよとは言えません。けれど退院をして私は良かったです」と話された。長期にわたる入院生活から退院することは、生活が大きく変わる。そのことが大変なことだろうとは思っていたが、自分の生活を自分でつくっていくことが大変なのだとその人は言っているのである。退院したときに自分の生活をつくっていくことが大変となるような入院経験、それは一体どのようなものなのであろろうか。
 本章では精神科病院の入院者の退院を支援していくために入院経験について書かれた闘病討を用いて、精神科病院への入院をどのように受け止め、何を;を感じ、どのような日常を送っていたのかを整理する。そして精神科病院ーの入院経験と自立について考察を加える。

第1節 精神障害者の闘病記から

 (1)精神障害者の闘病記から学ぷこと

 近年、闘病記への関心が高まっている。数多くの本が出版、自費出版されている。闘病記のみを扱う古書店や闘病記文庫が設置されている図書館もある。闘病記を紹介した本も刊行されている。疾病別にみると、がん患者による問う病気がもっとも多い。精神障害者による闘病記は古くは『わが魂にあうまで』(1908年、邦訳1949年、絶版一再邦訳1980年)、『分裂病の少女の手記』(1950年、邦訳1955年)などがあげられる。わが国では本章で取り上げた『病める心の記録』(1968年)、『髪の花』(1971年)が初期の頃の精神障害者による闘病記であろう。近年では、作家、芸能人といった有名人がうつ病闘病記を著しているが、統合失調症闘病記はほとんどが無名の当事署によるものだと言えるだろう。
 本章で闘病記を取り上げる理由は以下のとおりである。闘病記は個人的なもの、主観的なものとして考えられているが、闘病記には自らの体験を仲問や周囲の人間に伝えることで、精神障害者が生きていくために何か役に立ちたいという思いが込められている。そうした著者たちの思いを大切にしたいと考える。
 精神障害者による闘病記を扱った研究としては精神科医である八木剛平による『手記から学ぶ統合失調症』がある。八木(2009)は「病の予兆に始まり、発病・入院・回復・退院を経た後に、世間の偏見・差別と病の双方に苦しみながらも、家族と仲間たちの支えのなかで、症状の苦痛を緩和する工夫を凝らし、あるいは自身の病とその医療に考えをめぐらしつつ、病との共生に至る、長い回復過程の物語として再構成」している。その上で診断をめぐる問題、統合失調症の告知の問題、統合失調症における精神と人格の問題の3点を考察している。医師として統合失調症の治療のための理解の仕方を探っているものである。
 本章では八木の方法を取り入れながら、入院生活に限定し当事者が精神科病院で何を経験していたのかに着目をする。

 (2)精神障害者の闘病記を読む

 ここでは入手できた以下の11冊、12名の入院経験を対象として整理し考察を加える。これらの闘病記は統合失調症であると診断されたこと、入院経験について述べられていることが共通している。しかし病名については診断基準や医寮技術の進歩があり、現在では統合失調症と診断されないケースも含まれていると考えられる。著者たちが入院経験をしたのはおおよそ1950年代後半から1990年代までのものとなっている。入院期間については、10年を超えるような長期入院の体験を取り扱った闘病記は少なかったため、やどかりの里で行われいる体験発表をもとに編集されたブックレットを用いることで、入院期問を数力月から34年と幅をもたせている。その他、小林美代子の『髪の花』(群像<0153<新人賞受賞作品)は小説として発表された著作であるが、あとがきに後述の記載があるため闘病記として扱っている。
 なおこれら闘病記の選択の段階で筆者の主観的な判断が含まれており、読み方、引用の責任は筆者にあると考えている。病院名については書かれているとおりに記述する。
 以下、出版の年代順に文献を紹介する。

 @西丸四方『病める心の記録 ある精神分裂病者の世界』
 本書の著者は西丸四方という精神科医となっている。西丸氏が15歳の少年佐藤宏の手記を紹介する第1編と、西丸による「その緑なす病んだ世界の消息を灰色の精神医学の目でみたもの」を記した第2編とからなっている。佐藤が入院をした時期は1960年代前半だろうと推測している。
 A小林美代子「髪の花」講談社
 本書は1971 (昭和46)年の第14回群像新人賞受賞作品である。小説ではあるがあとがきに以下のようにあるので収録作品のうち「幻境」のみを採用する。また本書の他に自伝的作品『繭となった女』があり、同様に病の体験が書かれている。

 「私は精神病院の生活と、狂気の状態を、私の半生を見守ってきてくれた兄弟に、書書き残しておくため日記をつけました。(中略)
 『精神病院』は、事件を狂気と見る医者と、正気を主張する患者の対主主題とし、これに加筆して『幻境』と改題しました。『髪の花』は、引き取り手がいないために、全快してもなお十幾年を病院に閉鎖されている方々が今なお多くいることと、その望みのない生を社会に訴え、何らかの救済措置が講ぜられることを祈って、書きました。」

 B松本真一『閉鎖病棟の憂鬱 「分裂病者」私の手記』
 著者である松本は1発症し、4力月近い入院生活を送る。
 著者である松本は1966 (昭和41)年に発症し、4力月近い入院生活活を送る。その後再発のために10年余りの間に合計5回の入院を経験している。1977(昭和52)年に退院してから1989(平成元)年に手記を出版するまでの間には再発<0154<はしていない。
 C澤光邦『ガラスの壁 分裂病になった俺』
 著者である澤は1988 (昭和63)年に東京都内に病院に4力月弱の入院経験がある。その後、13年間は「幻覚も幻聴もまったくおきていない。再入院もしていない」。本書は大学を卒業し、就職したものの3力月程で「職場放棄」、有り金を持って東京に出てくるところからはじまる。
 D古川奈都子『心を病むって どういうこと? [精神病の体験者から]』
 著者である古川は高校2年生のときに発症し、その後、4回の入院を経験。21歳のときに結婚、25歳のときに出産をしている。
 本書に続いて編著書『心が病むとき、心が癒えるとき〈仲間たちの体験から〉』(2004)と『心を病む人と生きる家族』(2006)を出版している。
 Eやどかリブックレット編集委員会編 香野英勇『僕のこころに聞いてみる・T マイ べスト フレンド 第2版』
 著者である香野は1986(昭和61)年に発症し、6力月の入院をする。出版までに2回の入院経験があり、2回とも3力月にわたる隔離室の経験がある。
 F森実恵『〈心の病〉をくぐりぬけて』
 本書は26回にわたって新聞に連載されたものをまとめたものである。著者である森は33歳で発症し、4力月の入院を経験している。なお森実恵はぺンネームである。なお森は本書出版前に『心を乗っ取られて』(潮文社)を2002(平成14)年に出版しており、こちらも参照している。
 Gやどかリプックレット編集委員会編 堀澄清『70歳を前にして今、新たな一歩を 精神障害者であることは変わりがない』
 著者である堀は1956 (昭和31)年に北海道北見にある精神科病院に第1回目の入院。3年半の入院を経て退院したが、1年後に別の病院(北海道)に2回目、3年の入院をする。そこでの体験により、医療によりかからない人間になる。50歳を目前にしたときに埼玉県にある全開放の精神科病院を知り、62歳までに通算10回の入退院を繰り返している。
 H辰村泰治「辰村泰治の七十年時代の波にほう[ママ]ろうされた一人の精神障害者』
本書はやどかり出版の本であるが他のブックレットとは異なり、著者である<0155<辰村が4年手余をかけて執筆したものである。大学3年時に発病、千葉県内内ぴ神科病院に5年問で3回入退院を繰り返した。1976 (昭和51)年に埼玉県内の精神科病院に4回目の入院をし、それが22年間の入院生活となった。1999(平成11)年2月1日退院し、地域で生活をしている。
 Iやどかリブックレット編集委員会編『今の自分でいいんだよ 反障害者自立支援法』
 このブックレットは1997年からやどかりの里で行われている体験発表会をもとに作られている。本章では本ブックレットに収められている加藤蔵行による「自由っていいな 長期入院を体験して」と島田トシ子による「今がいちば幸せ 長期入院を経験して」を取り扱う。
 加藤は数回の入院を経たのちに21歳で埼玉県内の病院に入院。34年間の入生活を経て退院をしている。
 島田は18歳の頃に発病。2力所の精神科病院にそれぞれに半年間、4年間の入院を経た後に、埼玉県内の病院での33年問入院生活を経て、1993年に退職となっている。
 Jやどかリブックレット編集委員会編 須藤守夫『退院してよかなったの仲間 くらし みらい』
 著者である須藤は27歳のときに最初の入院を経験する。以後、2回の入院があるが、3回目の入院は12年6力月である。」(松原[2013:152-156]])

■紹介・言及

◆立岩 真也 2013/10/01 「書評:庄司洋子・河東田博・河野哲也・菅沼隆編『自立と福祉――制度・臨床への学際的アプローチ』」,『リハビリテーション』557(2013-10):36-37

◆立岩 真也 2013/12/10 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,433p. ISBN-10: 4791767446 ISBN-13: 978-4791767441 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

 松原玲子[2013]について
 「本人による本はいろいろと出てはおり、それを集めて分析しようという試みもないではない(松原[2013])が、社会運動に関わる部分、とくにその過去がわかるものは多くない。「友の会」の本が二冊(友の会編[1974][1981])、吉田おさみの本は第5章で紹介する。他に例えば宇都宮病院に入院していた安井[1986]。聞き取りが可能ならそれを行なう必要があり、そうした記録も使い、私には記すことのできない病者側の生活・運動が記述・分析されるべきである。桐原[2013a][2013b][2013c]等、そろそろと始められている。」(立岩[2013:])


UP:20130816 REV:20130823, 1202
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