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『老年者控除廃止と医療保険制度改革――国保料(税)「旧ただし書き方式」の検証』

牧 昌子 20120930 文理閣,193p.
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last update:20130226

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牧 昌子 20120930 『老年者控除廃止と医療保険制度改革――国保料(税)「旧ただし書き方式」の検証』 文理閣,193p ISBN-10: 4892596914 ISBN-13: 978-4892596919 \2000+税 [amazon][kinokuniya] ※

『老年者控除廃止と医療保険制度改革』表紙

   □概要
   □目次
   □正誤表
   □はしがき
   □あとがき
   □書評・紹介・引用

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■概要

老年者控除の廃止がもたらした連続性におけるさまざまな問題点を検証、国民健康保険料(税)の「旧ただし書き方式」による保険料(税)を分析し、今日の保険料(税)の根源を論じる。

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■目次


序章
 1 本書の背景・目的・意義
 2 本書の構成
第1章 租税の法体系および所得税の人的控除の意義
 本章の課題
 1 租税の法体系および租税原則の概要
 2 所得税の特色と人的控除の位置づけ
 3 人的控除の変遷とシャウプ勧告税制の意義
 4 老年者控除の概要
 5 課税最低限と人的控除の論点
 まとめ
第2章 公費縮小のための高齢者施策と税制の直間比率是正の1980年代
 本章の課題
 1 1970年代〜1980年代における社会構造の変化と高齢者施策
 2 老人医療費自己負担無料化の廃止から老人保健制度創設
 3 退職者医療制度創設と国民健康保険への国庫負担の縮小
 4 基礎年金制度創設をめぐるさまざまな論点の検証
 5 公的年金等控除創設と老年者控除の公平をめぐる論点
 6 直間比率の見直しと消費税の検証
 まとめ
第3章 税制改革と高齢者の医療制度改革の制度策定の1990年代
 本章の課題
 1 1990年代の社会構造の背景
 2 1980年代の消費税導入と1990年代の高齢者政策の検証
 3 高齢者の社会保障政策の根本的変容
 4 公的年金等控除創設と老年者控除の論点
 まとめ
第4章 2004年度の税制改正大綱における老年者控除廃止の検証
 本章の課題
 1 税制改正大綱における個人所得税改正の概要と老年者控除廃止の決定
 2 老年者控除廃止等の具体的な改正内容
 3 老年者控除廃止がもたらした可処分所得の実質的検証
 4 可処分所得の変化と生活保護世帯との整合性の分析
 まとめ
第5章 老人保健制度改正と「現役並み所得」概念の導入
 本章の課題
 1 2002年度の健康保険法等の一部改正と「現役並み所得」概念の登場
 2 老年者控除廃止と2006年度の「現役並み所得」判定基準の経過措置
 まとめ
第6章 あらたな高齢者の医療制度とその財政のしくみ
 本章の課題
 1 退職者医療制度廃止および前期高齢者財政調整制度の創設
 2 老人保健制度廃止および後期高齢者医療制度の創設
 3 後期高齢者医療制度における「現役並み所得」と課税所得の矛盾
 4 流動的な後期高齢者医療保険財政の仕組みの分析
 まとめ
第7章 所得税の人的控除廃止と国保料(税)の所得割の算定方式への連続性
 本章の課題
 1 市町村国保の誕生と国民皆保険の達成の歴史的経緯
 2 公的医療保険における国保の位置づけと保険料・保険税の相違点
 3 国民健康保険(税)の所得割の算定方式と採用状況
 4 市町村民税における「ただし書き」の呼称のルーツをめぐって
 5 市町村民税の「ただし書き方式」の廃止と国民健康保険税の「旧ただし書き方式」
 6 後期高齢者医療制度創設後の国保財政の仕組みと「住民税方式」と「旧ただし書き方式」の検証
 7 「旧ただし書き方式」の保険料(税)の問題点
 まとめ
終章

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■正誤表

※PDFによる正誤表は次のURLを参照:http://www.arsvi.com/b2010/1209mm-crct.pdf

目次 第7章
(誤)3  国民健康保険(税)
(正)3  国民健康保険料(税)
12ページ注5
(誤)課税の明確性・課税の明確性
(正)課税の明確性・課税の便宜性
25ページ16行目
(誤)1968年
(正)1974年
同上
(誤)表2
(正)表3
36ページ2行目
(誤)(勢 1985:88)
(正)(勢塒 1985:88)
114ページ注55
(誤)死分化
(正)死文化
119ページ見出し
(誤)国保料・国保税
(正)保険料・保険税
128ページ8行目
(誤)(住民税方式):(住民税方式)
(正):(住民税方式)
137ページ10行目
(誤)(1986:186-187)
(正)(泉1986:186-187)
146ページ表12
(誤)×2.10/100の位置
(正)右方に移す。これは、2008(平成20)年度後期高齢者支援分保険料の計算式。
159ページ注7
(誤)(医療分31,200+……=12.6%となり、推移表の13.6%とは異なる
(正)(医療分均等割、後期高齢者支援分均等割、介護分均等割は20%が軽減され、均等割合計148,800円+所得割合計85,173円=保険料合計額は233,973円、収入に対する比率約11 .7%となり、推移表の13.6%とは異なる
160ページ16行目
(誤)「旧ただし書き方式」の合計額は……12.6%となる
(正)「旧ただし書き方式」の合計額は233,973円、収入200万に対する比率は約11.7 %となる


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■はしがき


 所得税の負担を軽減する場合、税率の引き下げか所得控除の基礎控除、扶養控除等の基礎的な人的控除や老年者控除、障害者控除等の特別な人的控除等に力点を置くかが検討される。逆に所得税によって税収を上げようとする場合は、税率の引き上げか、人的控除の控除額の削減、廃止の方法が検討されるだろう。しかし、税の負担者の立場に着目すると、人的控除は、境界層(本書では生活保護受給対象者でない所得層をこう呼ぶ)の所得層により多くの負担を取り除くことができるという特徴がある。
 1980年代からの日本の税制の方向は、所得税の最高税率を引き下げて、消費税を基幹税化させるための直間比率の是正が指向されてきた。ところが、2002年の税制調査会の「あるべき税制の構築に向けての基本方針では、所得税に基幹税の役割を強化するために諸控除を見直すとし、2003年12月、2004年度の与党「税制改正大綱」では、年金課税の適正化として公的年金等控除の最低保障額の引き下げとともに老年者控除廃止が決定、2005年度から実施された。
 老年者控除が廃止されたことで、高齢者(65歳以上、所得1000万円以下)の課税最低限が引き下げられ、従来、所得税・住民税が非課税であった境界層の高齢者を課税対象者とさせ、国民健康保険料(税)や介護保険料等に連動して可処分所得を減少させた。その一方で、2002年から高齢者の医療制度改革が進められ、「現役並み所得」概念を設けて、この所得層の医療費は、すべての世代の保険料(拠出金)で賄われることとなった。その上で、老年者控除廃止や公的年金等控除の最低保障額引下げの控除額に対する「現役並み所得」の判定基準の見直しが実施された(2006年)。この財政構造を引き継いで後期高齢者医療制度が創設された。
 2009年10月からの民主党政権では、子ども手当との関係で扶養控除が部分的に廃止され、国民健康保険料(税)の所得割の算定方式が、2013年度から、所得から基礎控除のみが適用される「旧ただし書き方式」に統一されることとなった。
 このように老年者控除廃止は、芋ずる式に次々と高齢者の税負担や後期高齢者医療保険料、国民健康保険料(税)に連動している。
 本書は、これらの連続性におけるさまざまな問題点を検証し、国民健康保険料(税)の「旧ただし書き方式」による保険料(税)を分析し、今日の保険料(税)の根源を論じている。さらに、「旧ただし書き方式」は、所得税の基本形である「所得」、「課税所得」の概念が変質されつつあることを指摘するものである。
 その一方で、本年(2012年)、6月26日の衆院本会議では、消費税率の引き上げ(2014年4月から8%、2015年10月から10%)等を柱とした社会保障・税一体改革関連法案が民主・自民・公明・国民新党等の賛成多数で可決し、同日中に参院に送付された。可決した関連法案のうち、民主・自民・公明の3党合意を踏まえて提出された「社会保障制度改革推進法案」では、今後の高齢者医療制度などを議論する国民会議の設置、「年金機能強化法案」では、短時間労働者の社会保険適用を2016年10月から拡大することが盛り込まれた。だが、消費税率法案を可決するために民主・自民・公明の3党合意とされたため、政府案であった消費税増税を掲げた税制法案から税体系全体の再分配を回復するというくだりや、所得税の最高税率を40%から50%に引き上げるという条項等が削除された。また、社会保障分野での最低保障年金、給付つき税額控除、後期高齢者医療制度廃止等は棚上げされた。さらに、社会保障・税一体改革関連法案に「社会保障制度改革推進法案」が持ち込まれ、社会保障の基本を自助・共助とした上で、本人と家族の責任を基本に据え、公助はその実現を支援するという極めて抽象的なものと位置づけられた。また、社会保障の公費負担については、消費税を主要な財源とするもので、国民(住民)に社会保障の削減か消費税増税かの二者択一を強いるものであった。
 これらの方向性は、税の負担者にとって社会保障とも関連して、重要な改正であり、多くの矛盾が指摘されている。
 現在の社会保障と税の一体改革が検討される場合、本書での実証的検証が、役立つものであればと願っている。

2012年9月
牧 昌子


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■あとがき


 本書は、立命館大学大学院先端総合学術研究科に2011年3月に提出した博士論文「所得税における老年者控除の廃止と高齢者の医療制医療制度改革の検証」をもとに加筆修正したものである。
 本研究の始まりは、2003年12月に公開された与党税制改正大綱であった(『京都新聞』2003.12.18 朝刊)。その時から税制(老年者控除廃止)と社会保障(高齢者の医療保険制度・国民健康保険制度)を関連づけた研究に関わってきた。
 その後、所得税では、人的控除のうちの「年少扶養控除」が「子こども手当」に代わり、さらに「児童手当」に整理される等、流動的な改正が行なわれている。これらの人的控除の廃止・縮減に伴って、2012年12月には、国民健康保険料、国民健康保険税の所得割の算定方式が2013年度から「旧ただし書き方式」に統一されることが決定した。
 本書は、老年者控除の廃止が高齢者の可処分所得を減少させるにとどまらず、後期高齢者医療保険の財政構造や国民健康保険料(税)の所得割の算定方式を所得控除のうち、基礎控除のみ適用する「旧ただし書き方式」に統一するという改正までの連続性を実証的に検証し、このことによって所得税の課税所得の概念が変質されつつあることを指摘したものである。
 これらの改正の一方では、2012年6月26日、消費税率の引き上げ等を柱とした社会保障・税一体改革関連法案が衆院本会議で民主・公明・国民新党等の賛成多数で可決し、参院に送付されるという状況下での本書の刊行である。
 本書が出版されるにあたり多くの方々にお世話になった。ここに記して感謝したい。
 先ず、博士論文の主査で指導教員であった後藤玲子教授には、筆者の税制の追求の甘さや筆者の意図がぶれないようにご指導をいただいた。小論文や博士論文では、大きな力を与えていただき深く感謝したい。現在も教授のそばで研究生として学ばせていただいている。また、天田城介准教授からは、老い研の院生仲間と一緒に2008年6月の福祉社会学会で学会報告の場を与えていただいた。同士の田島明子さん、仲口路子さん、有吉玲子さん、他の院生、先輩の方々に支えられて初めて学会報告を経験した。つづいて、『老いを治める――老いをめぐる政策と歴史』では、共著に加えていただき、北村健太郎さん、堀田義太郎さんからのご指導によって、本を書くことの苦しみと完成の喜びを味わわせてもらった。このことが単著の刊行への布石となった。感謝している。
 また、立命館大学産業社会学部では、小川栄二教授のもとで卒論をまとめた。同大学院の修士課程では、芝田英昭教授にご指導をいただき修士論文をまとめた。博士論文の副査として審査にあたっていただき、何時も影になって支えて下さった想いを深く享受している。法学部の望月爾教授には、老年者控除の廃止が決定した時から税制について分からない時にはご指導を仰いだ。先端総合学術研究科の院生、先輩、事務室の方々、新山智基さん、村上慎司さん、櫻井悟史さんにもお世話になった。この場を借りてお礼を申し上げる。
 他にも、立命館大学のリサーチライブラリ―の職員の方、国民健康保険、住民税、介護保険、後期高齢者医療保険、生活保護制度では、左京区や北区の市町村の窓口に足しげく通って、職員の方から直接ご指導を賜った。
 はじめて学外への論文を『賃金と社会保障』に投稿した時は、編集者の浦松祥子さんにお世話になった。さらに、著者のつたない博士論文を刊行本にしたいという希望をお引き受け下さった文理閣の黒川美芙子さんに感謝を申し上げる。
 本書の出版にあたっては、2012年度立命館大学大学院先端総合学術研究科出版助成制度(立命館大学研究推進施策予算)の交付を受けた。記して感謝する。
 最後に、立命館大学に入学してから今回の刊行までに10年余月が経過した。その間、健康状態を気遣ってくれた家族に感謝したい。
 今後は、社会保障と税制の一体改革の動向をみながら、負担者の立場から税制と社会保障の接点の研究を進めていきたい。
 
2012年9月
比叡山を仰ぎ、宝が池公園を散策できる左京区の自宅にて
牧 昌子


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■書評・紹介・引用


◆2013年2月18日付『全国商工新聞』の書評コーナー「読書」
http://bunrikaku.jugem.jp/?eid=144


*作成:箱田 徹
UP: 20121018, 1102, 1218, 20130226
老い  ◇  ◇年表:医療・福祉制度の歴史   ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK

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