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『検証財務省の近現代史――政治との闘い150年を読む』

倉山 満 20120320 光文社(光文社新書),276p.

last update:20120413

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■倉山 満 20120320 『検証財務省の近現代史――政治との闘い150年を読む』,光文社(光文社新書),276p. ISBN-10: 4334036740 ISBN-13: 978-4334036744  \820+税 [amazon][kinokuniya]

■内容

財務省とは、国の歳入と歳出を管理する官庁、すなわち税金を集めて予算として配分する役所であり、前身の大蔵省以来、「戦後最強の官庁」として日本に君臨してきた。 しかし、明治以来、大蔵省ほど絶大な力を持ちながらも注目されてこなかった組織はない。そして今、財務省はデフレ不況下での増税を企んでいる。最強官庁は何を考え、 この国をどこに導こうとしているのか。「増税やむなし」の空気が流れる中、これは本当に正しい選択なのだろうか。気鋭の憲政史家が大蔵省・財務省の歴史にメスを入れ、 百五十年の伝統を検証しながら、知られざる政治との関係、「増税の空気」の形成過程を描き出し、日本再生への道を綴った本邦初の試みとなる意欲作。

■著者の言葉

これまで一部の研究を除いては、大蔵省が注目されることはあまりありませんでした。明治以来の通史、しかも大蔵省の立場で、 さらに政治というセンシティブな問題に着目してとなると、初めての試みだと思われます。これはまるで、未開の地を探検する冒険者のような心境です。

■著者略歴

1973年香川県生まれ。中央大学大学院文学研究科日本史学専攻博士後期課程単位取得満期退学。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤研究員。 現在、国士舘大学講師。社会人を対象にした「帝国憲法講義」が注目を集めている。専門は憲政史。著書に『誰が殺した? 日本国憲法!』(講談社)、 編著に『総図解よくわかる日本の近現代史』、共著に『総図解よくわかる第二次世界大戦』(以上、新人物往来社)がある。

■目次

はじめに

第1章 大蔵省の誕生――財政の専門家とキャリア官僚制の起源(1873-1923)
1-1 明治維新の本質
1-2 特権階級制度の確立
【第1章のポイント】

第2章 日本の最強官庁へ――守護神・井上準之助の登場(1924-1931)
2-1 大蔵省主計局時代の到来
2-2 大蔵省の浮上と政治家の自滅
【第2章のポイント】

第3章 パンドラの箱――大蔵省史観の「異物」(1932-1945)
3-1 高橋是清の闘い
3-2 「ご祭神」と日本の運命
【第3章のポイント】

第4章 占領と復興――知力を尽くした闘いの歴史(1945-1955)
4-1 占領と独立
4-2 米ソ冷戦の舞台
【第4章のポイント】

第5章 復興から高度経済成長へ――池田勇人のグランドデザイン(1955-1965)
5-1 真の政治家、池田勇人の登場
5-2 破綻の足音
【第5章のポイント】

第6章 三角大福、赤字国債、消費税――「無敵」大蔵省に忍び寄る悪夢(1965-1982)
6-1 知られざる大蔵省の敗北
6-2 三角大福の夢のあと
【第6章のポイント】

第7章 失われた十年――政治家にふりまわされる大蔵省(1982-1996)
7-1 支配を強める「増税の空気」
7-2 竹下登の支配と大蔵省暗黒時代
【第7章のポイント】

第8章 平成と未来の日本――財務省は「伝統」に目覚めるか(1997-2011)
8-1 ポスト竹下をめぐる抗争と小泉以降の混迷
8-2 日本銀行の独立という悪夢
【第8章のポイント】

おわりに

推奨参考文献

■引用

【第1章のポイント】
1 大蔵省は、税金を集める専門家集団として誕生した。
2 大蔵省の強さの秘密は、徴税権と予算編成権、影響力の源泉は情報と人事。
3 ただし、最終的な予算権限を握る衆議院には振り回されっぱなしだった。

【第2章のポイント】
1 「憲政の常道」で衆議院が予算に反対しなくなると、大蔵省主計局が花形官庁になった。
2 史上最強の大蔵大臣となった井上準之助の前に、陸海軍は戦々恐々としていた。
3 経済失政の見本のような濱口雄幸や井上準之助でさえ、増税だけは行わなかった。

【第3章のポイント】
1 高橋是清と大蔵省は、政治的発言力を増す陸軍の前に立ちふさがり、勝利した。
2 馬場^一と近衛文麿が策動し、国際情勢はソ連にだけ都合よく展開した。
3 恒久的増税の仕掛けにより、日本は負けるまで戦うハメになった。

【第4章のポイント】
1 占領前半期、大蔵省は社会主義の巣窟だったGHQを手玉に取った。
2 「健全財政」の目的は、「経済による国民統合」により日本を立ち直らせることだった。
3 戦後日本の権力とは、アメリカ・自民党・大蔵省主計局。

【第5章のポイント】
1 池田勇人は強い指導力で国民を結集し、日本を復興と高度経済成長に導いた。
2 高度経済成長により豊かになった日本に、ソ連は付け入る隙を見つけられなくなった。
3 高度成長の鬼っ子、田中角栄は徐々に大蔵省を侵食していった。

【第6章のポイント】
1 大蔵省も日本国憲法と内閣法制局の壁は越えられず、財政破綻の端緒を作ってしまった。
2 三角大福の政争に振り回された大蔵省は、万策が尽きて増税路線に追い詰められた。
3 無制限のバラマキを続ける田中角栄を尻目に大蔵省はひそかに増税を狙っていた。

【第7章のポイント】
1 大蔵省は田中角栄打倒と消費税導入で、竹下登に巨大な借りを作ってしまった。
2 国民福祉税は、バブル崩壊と北朝鮮危機という最悪のタイミングで打ち出された。
3 斎藤次郎が竹下登に負け、大蔵省は竹下派に徹底的に痛めつけられた。

【第8章のポイント】
1 日銀法改定の平成十年が日本の運命の年、日銀の独走が止まらなくなった。
2 日銀は小泉を裏切り、安倍を潰し、親中派政権を樹立した。
3 日本を救うには、財務省が目覚め、「日銀法再改正」と「財金再統合」をやるしかない。

■書評・紹介

■言及



*作成:北村 健太郎
UP: 20120413 REV:
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