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『社会学を問う――規範・理論・実証の緊張関係』

米村 千代・数土 直紀 編 20120215 勁草書房,236+xp.

last update: 20130216

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■米村 千代・数土 直紀 編 20120215 『社会学を問う――規範・理論・実証の緊張関係』,勁草書房,236+xp. ISBN-10: 4326602392 ISBN-13: 978-4326602391  \2800+税 [amazon][kinokuniya] ※ s

■内容

・同書の帯より
〈社会学〉を積極的に解体し,そして批判的に構築する.
盛山和夫門下の13人が,各々の専門を通じて,社会学のあるべき姿を問う.

■目次

 まえがき(数土直紀・米村千代) i-iii

 第I部 規範と理論の緊張関係 1-92

 第1章 現代社会へのナラティヴ・アプローチ(野口裕二) 3-18
1 社会的現実とナラティヴ 3-5
2 個人化社会のナラティヴ 6-8
3 リスク社会のナラティヴ 8-11
4 当事者性のナラティヴ 12-14
5 現代社会のナラティヴ 14-18

 第2章 グローバル化社会における共同性の探究(樽本英樹) 19-34
1 グローバル化という謎 19-20
2 近代化と意味という視点の設定 20-22
 2.1 近代化への着目 20-21
 2.2 意味への着目 21-22
3 近代化とグローバル化 22-25
 3.1 経済資本の論理 22-24
 3.2 社会関係資本の論理 24-25
4 帰属と共同性の追求 25-31
 4.1 近代化における「解」 25-26
 4.2 「国民国家」の含意 26-27
 4.3 グローバル化による市民権の変化 27-29
 4.4 市民権のグローバル的変容の意味 29-31
5 共同性の再構築へ向けて 32-33
注 33-34

 第3章 トランスナショナルな公共圏の成立条件(伊藤賢一) 35-50
1 グローバル化と公共圏モデル 35-36
2 公共圏モデルは時代遅れか 36-39
3 正当性と効果 39-45
4 ネーション概念が果たす役割 45-48
5 新たな政治の空間を求めて 48-49
注 49-50

 第4章 開かれた共同性と政治的リベラリズム――政治的代表における性別の意味(金野美奈子) 51-65
1 開かれた共同性の探究 51-52
2 政治的リベラリズムと性別の意味 53-56
3 存在の政治とその困難 56-60
4 記述的代表から「創出的代表」へ 60-64
注 64-65

 第5章 取り決めとしての責任と社会学(常松淳) 66-79
1 はじめに 66-67
2 “取り決め”としての責任 67-69
3 責任帰属と道徳的判断 69-72
4 道徳的直感を経験的に探求する 72-77
注 78-79

 第6章 ハーバーマスにおける市民社会と宗教(飯島祐介) 80-92
1 世俗化された社会の宗教問題 80-82
2 ハーバーマスのパーソンズ批判 82-84
3 宗教的市民の政治参加の認容 84-87
4 宗教的寛容の民主化と文化的権利の保障 87-89
5 宗教の理性的不一致と公共性要求の媒介 89-91
注 91-92

 第II部 規範・理論と実証の緊張関係 93-211

 第7章 構築主義を再構築する――構築の存在論と正義論をこえて(赤川学) 95-109
1 構築主義の存在論と認識論 95-97
2 構築主義は「日常世界の外部に立つ」視点を確保するための戦略か? 97-99
3 社会問題の構築主義における経験的研究のプログラム 99-105
4 正義論をこえて――制度のプロセス論へ 106-108
注 108-109

 第8章 近代日本の「家」と家族――家族研究における理論と現実(米村千代) 110-124
1 「家」と家族の区別 110-114
2 家族としての「家」 114-118
 2.1 「家」の二重性 114-115
 2.2 直系性家族としての「家」 115-118
3 近代家族論のインプリケーション 118-121
 3.1 「家」と近代家族 118-120
 3.2 「家」と「家族」における情緒性 120-121
4 「家」と家族をめぐる理論と現実――家族制度(家族に関する了解)の変化をどう捉えるか 121-123
注 123-124

 第9章 「量」と「質」の共通の準拠問題(杉野勇) 125-147
1 「量的/質的」のダイコトミィ 125-130
 1.1 便宜的分類の結晶化 125-127
 1.2 コード化.現実の複雑性の縮減 127-128
 1.3 対象と研究の距離 128-129
 1.4 不可逆性と研究のコンテクスト 129-130
2 混合,併存,連結 130-134
 2.1 「データの質」 130-132
 2.2 計量的モノグラフ 132-133
 2.3 Mixed Method 133-134
3 二項図式化的統合の失調 134-138
 3.1 排除された第三項 135-136
 3.2 計量分析「右派」――科学の専門性と存在意義 136-138
4 推論・伝達・評価という準拠問題 138-143
 4.1 伝達可能性,共有可能性 138-140
 4.2 厚い記述,濃密な語り 140-142
 4.3 不可視のものへの推論 142-143
5 個別事例を語ることと一般化 143-147
 5.1 個性記述の意義 143-145
 5.2 物語はいかに説明をおこなうのか 145-147

 第10章 食べ物に貴賤はあるか――社会規範と社会調査(小林盾) 148-159
1 威信スコアとは 148-150
2 データと質問 150-151
3 食料威信スコアの測定結果 151-153
4 食料威信スコアの構造 153-155
 4.1 下位グループ間での異同 153-154
 4.2 高級食,中間食,大衆食 154-155
5 個人の食料威信スコア 155-157
6 社会規範と社会調査 157-159
 6.1 食生活の評価の構造 157
 6.2 心の中の引き出し 157-159
 6.3 社会規範の構築 159

 第11章 分権化/広域化のなかの介護保険制度の再構築――保険と扶助,2つの「提携」の組み替え(神山英紀) 160-182
1 介護保険制度は分権化/広域化のゆらぎのなかで再構築が求められる 160-163
2 介護保険は「保険」・「扶助」の2種の“提携”の組とみなすことができる 164-169
 2.1 協力ゲーム理論における提携の概念 164-165
 2.2 「保険」がなぜ「提携」か・および提携がもたらす便益とその規模との関係 165-167
 2.3 「扶助」がなぜ「提携」か・および提携がもたらす損失とその規模との関係 167-169
3 介護保険制度の「分権/広域」は提携がもたらす効用にどう影響するか 169-179
 3.1 現実の制度のなかで「保険」はどのように働いているか 169-172
 3.2 現実の制度のなかで「扶助」はどのように働いているか 172-179
4 分権化/広域化のなかで「保険」と「扶助」は誰が担うべきか 179-181
注 181-182

 第12章 「自己決定」と「生存」のジレンマ――立岩真也『ALS』に読む秩序構想と実証的研究との関係(伊藤智樹) 183-195
1 現代社会における新しい倫理問題としてのALS 183-184
2 ALSに関する基礎的説明――こんにちの医療的状況 184-186
3 立岩『ALS』の概要 186-187
4 人工呼吸器装着に関する立岩『ALS』の主張・立場 187-188
5 自己決定に関わる論理構成 188-192
6 立岩真也『ALS』を規範論として読む意義――秩序構想と実証的研究との関係 192-194
注 194-195

 第13章 階層意識と権力(数土直紀) 196-211
1 権力の(非)実在性 196-199
2 権力をめぐる規範的な判断について 199-203
3 不平等はどこに存在するのか? 203-207
4 相対主義と規範科学は両立できるか? 207-211

 文献 213-225
 あとがき(米村千代・数土直紀) 227-228
 索引 229-233
 執筆者紹介 235-236

■引用

・社会問題の構築主義アプローチとは?
赤川学「構築主義を再構築する――構築の存在論と正義論をこえて」より)
 どのような〔問題/制度の〕構築が望ましいかを問うのが正義論だとすれば,その(望ましいはずの)構築でさえ,現実世界において実現されたり,されなかったりするのはなぜか,いかにしてかを問うのが社会問題の構築主義なのである〔中略〕正義論が形而上学だとすれば,構築主義は形而下学,あるいは下世話な経験科学といえるかもしれない〔中略〕構築主義は構築主義のできることに,地道に取り組んでいけばよいだけのことである(108; 〔〕内および太字はコンテンツ作成者による).
 →cf. 構築/構築主義

・およそ研究である限りにおいて必ず顧慮すべきこと
(杉野勇「『量』と『質』の共通の準拠問題」より)
 対象のおもしろさは研究のおもしろさではないし,対象が価値を持っていることはその対象の研究もまたすべて価値を持っていることを保障しない(129; 太字はコンテンツ作成者による).

 調査研究は,自分が調べて見出したものを,事実として・発見として,他者に提示し,説得しようとする営みである.「あなたはそう言いますが,私はそうは思いません.」で話が終わってしまうのは,(実際に学会などでそういう場面をしばしば目にするとしても)決して望ましい事態ではない.分かる人だけ分かればいい,同意してくれる人がいればそれでいい,というものでもない.趣味的な営みであればそれで十分だろう.しかしそれが科学的・学術的営みである限り,意見の不一致は対処を要する問題となる(139; 太字はコンテンツ作成者による).

・ALSの〈実証的な〉社会学的研究の方向性
伊藤智樹「『自己決定』と『生存』のジレンマ――立岩真也『ALS』に読む秩序構想と実証的研究との関係」より)
 社会学がALSを研究する際にとるべき基本的スタンスは,次の二つになると考えられる.第一に,実際に行われている人びとの選択が,頼るべき価値基準を欠いた状態で場当たり的なものにならざるをえないことを,まさにそのようなものとして記述し描き出すこと.第二に,そうした状態を,社会的には緊張関係にある諸価値間の葛藤と結びついた秩序の不完全さ(もっと言えば「欠如」)として示すことである(193-4).
 →cf. ALS=筋萎縮性側索硬化症

■書評・紹介


■言及




*作成:藤原 信行
UP: 20130216 REV:
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