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『心さえ負けなければ,大丈夫』

織田 友理子 20110930 鳳書院,208p.

last update:20120709

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■織田友理子 20110930 『心さえ負けなければ,大丈夫』,鳳書院,208p. ISBN-10:4871221644 ISBN-13:978-4871221641 \1200+税 [amazon][kinokuniya] ※ dm02

■内容

 著者は大学4年生で告知を受けて以来、全身の筋肉が消えていく難病(縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー)と闘う日々を送る。そんななか大学時代から付き合っていたボーイフレンドは、不治の病と知ったうえで結婚。25歳、寝たきりになってしまうことを覚悟して出産を決意する。2006年8月、男児出産。以後、車椅子の生活を余儀なくされる。やがて「遠位型ミオパチー患者会」の発足にかかわり、希少疾病の現状を目の当たりにしながら、世界でも初めての治療薬の開発へ向けて精力的な活動を展開する。紆余曲折をへて、2011年、医師主導による治験がスタート。病気を使命ととらえ、数々の試練を乗り越えながら自身のおかれた立場のなかで行政と向き合い、勇気を奮い起して挑戦を続けている。

◇出版社からのコメント
 いまだ治療法の見つからない不治の病(遠位型ミオパチー)と闘いながらも、心は決して負けることなく、障がい者であり難病の当事者として積極的に活動を展開している。それは患者会のみならず、福祉制度を学ぶためのデンマーク留学や講演活動など多岐にわたり、自身の体験をもとに希少疾病の現状や福祉のあり方などを鋭く見つめている。牙をむき出した難病とともに生き、「心さえ負けなれば、大丈夫」という著者の信念に貫かれた正真正銘の感動手記。

■目次

はじめに
第一章 難病・遠位型ミオパチー
 告知
 公認会計士をめざして
 別れの決意
 衰えゆく筋肉
 実らない努力
 進行性筋疾患の現実
 母の背中に誓ったこと
第二章 青春、プレイバック
 絶対音感で勝負
 覚悟は人並み以上
 通学路は玉川上水のほとり
 筝曲部、初出場で全国二位に
 一〇〇〇〇人目の卒業生
 恋のプロローグ
 友は人生の宝物
第三章 二人で選んだ試練の道
 スタートライン
 牙をむきだした難病
 力を合わせて生きていきたい
 たとえ寝たきりになっても
 早産の危機
 二世誕生!
 車椅子が恥ずかしい
 人の痛みのわかる子に
第四章 希少疾病の未来のために
 命の重さ
 善意の署名に支えられて
 元気百倍の電動車椅子
 製薬会社が見つからない
 新薬開発をのみ込む“死の谷”
 世界初の治験スタート!
 福祉国家デンマークへ留学
 人生を楽しむための福祉制度
 魅力的な北欧の福祉グッズ
 病気を使命に
織田さんへのエール「ともに頑張りましょう」 医師・西野一三
「ありがとう」の言葉を伝えたい――あとがきにかえて
「遠位型ミオパチー患者会」の流れ/オンライン署名
遠位型ミオパチー患者会よりお知らせ

■引用

「ところで、車椅子の生活になったとき、不思議なことに私はそれまでの束縛から解放されて、とても自由になった気がした。元気な頃はどこかで人と競っていた思いも、きれいさっぱり消え失せた。公認会計士の勉強をしていた頃のように、ある種の強迫観念で自分を追いつめることもない。
 それどころか車椅子となり病気を受け入れたことで、これが私の天命であり、なるべくしてなったのだと思えたのだ。そのとき初めて、私は障がい者である自分と目の前の現実を受け止めることができた。
 私の人生は、そこから再び動き出した。
 障がい者の自分でなければできない挑戦。弱者という立場でもなく、また感情的に行政を揺り動かすのでもなく、自らの体験をもとに、社会に必要なことを訴え、行動を起こしていく、遠位型ミオパチーという難病の私にしかできない使命、それが当事者としての私の闘いだった。<197<
 葛藤を繰り返しながらも自分にできることを模索し続けた。そこに私が私らしく生きる最高の人生があり、病気の意味もあった。
 運命を嘆いても何も解決はしない。人と自分を比べても人生が楽しくなるわけではない。希望がないのなら、自らの希望を生み出していく。光がなければ、自らが光となって輝いていく。未来は自分の心と行動で創りだしていくもの。そして幸せもまた、自らの心が生み出していくもの。試練を成長の糧として自身を鍛えていく、そこに幸福の引力が生まれるのだと思う。
 だから私は今いるこの場所で、病気を使命に変えて生きる。それが遠位型ミオパチーという難病を背負った、私の生きるべき道。運が悪くて病気になったのでなく、私がこの病気を選んで生まれてきたのだから――。
 心さえ負けなければ、大丈夫! 必ず未来への道は切り拓かれる。生命ある限り、私はどのような状況にあっても人生を価値あるものにするために闘い続ける」(196-197)

■書評・紹介

◇奇跡体験!アンビリバボー[外部リンク]「思いやり支え合う真実の愛」

■言及


*作成:櫻井 悟史
UP: 20120709 REV:
遠位型ミオパチー(distal myopathies)  ◇「難病」文献  ◇病者障害者運動史研究  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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