HOME > BOOK >

『慈悲の怒り――震災後を生きる心のマネジメント』

上田 紀行 20110630 朝日新聞出版,160p.

last update:20110625

このHP経由で購入すると寄付されます

上田 紀行 20110630 『慈悲の怒り――震災後を生きる心のマネジメント』,朝日新聞出版,160p. ISBN-10:4022508868 ISBN-13:978-4022508867 \1050 [amazon][kinokuniya] m ms

■内容

震災前のように復興していけるのか、原発問題はいつまで続くのか、これからの日本はどうなるのか――。そんなモヤモヤした思いを晴らす実践的なヒントが満載。「地震・津波=天災」と「原発事故=人災」をはっきり分けて、悲しむべきは悲しみ、感情をためこまず怒るべきは声に出して怒ろう。それは「慈悲の怒り」でもあるのだ。「がんばろう、日本!」の掛け声に物足りなさを感じるすべての人への書。

・「BOOK」データベースより
1歳児の双子と6歳の小学生の娘を持ち母を在宅看護する文化人類学者が提唱する、3・11後の私たちが今、やっておくべきこと。

■目次

1章 創造のきっかけを作る
 誰もが傷ついている
 まだ「震災後」にはなっていない
 内面化された自粛
 「9・11」を超える驚き
 大自然の脅威
 さまざまな感情が渦巻く
 大きな自我の不安
 「揺らぎ」の時期は創造へのステップ
 「がんばろう日本」と「一億総懺悔論」
2章 天災と人災をはっきり分ける
 二つの事象
 国破れて山河あり
 長期化する原発問題
 「直ちに影響はない」が意味するもの
 原因と責任は徹底的に追求
 共感と怒りが同居
 大事故を起こしたという自責
 情報隠匿システムが今も進行?
 救いのイメージ
 「人間は使い捨て」という感覚
3章 「空気」に自分を沿わせない
 初めに状況ありき
 日本人が不得意なこと
 昭和一六年の模擬演習
 東条英機と机上の空論
 「開戦ありき」という空気
 丸山眞男と「第三の敗戦」
 既成事実への屈服と役割への逃避
 スキームの中での責任
 原発をめぐる「空気」
 歴史から何を学ぶべきか
4章 生きる意味を見直す
 不安を見えるものにする
 「これは何かおかしい…」
 三月一五日に何が起こったか
 迅速だった東京都の対応
 危険性を前提とした合理的行動
 不安のマネジメント
 人々はなぜ買い占めに走ったか
 ゼロ歳児から見える世界
 闘病生活に降りかかったリスク
 東京で大地震が起きたなら
 自分の欲望を見極める
 生き方を問い直す
 かけがえのない時間
 本音を話せる相手
 「心の琴線」に触れる
5章 慈悲からの怒りを持つ
 正当な怒り・生産的な怒り
 ダライ・ラマの言葉
 不動明王の憤怒相
 悪の連鎖が止まらない
 貧しいテロリストの村に生まれたら
 「共感共苦」と怒りの両立
 未来への責任
 創り上げるための忍耐
 成熟した大人の意識へ
あとがき


■引用

・分ける
「私たちの心のモヤモヤの原因のひとつは、震災に対する根本的な状況の整理が甘いということにあります。…その第一は地震と津波、第二は原発事故です。この二つは同時に起こったことですが、しかし別々の事象です。私たちはそのことは当然事実としては分かっているのですが、同時期に起こったことであり、もちろんどちらも地震に関連していることですから、その二つをどこかで一緒にしてしまっているために、感情的にも認知的にも整理がつかなくなっているのです。」p.34
「私が「心のマネジメント」として明瞭にしておきたいのは、「共感すべき対象」と「怒るべき対象」をきちんと分けるということです。対象を整理しないことには怒りの表出もできず、心からの共感もできないからです。」p.46
「天災と人災を明確に分け、その二つの対象に対して、二つの対処法で臨んでいく。そのことによって、私たちの「心のモヤモヤ」はかなり解消していきます。私たちは自分のエネルギーを自分自身の中の無駄な葛藤に費やす必要がなくなり、その分ほんとうに必要な行動を起こしていくことができるのです。それは状況の構造をきっちり把握し、論理的に仕分けすることによる「心のマネジメント」だと言えるでしょう。」p.94

・不安
「ちょっとしたことで解消できるような「小さな不安」は解消したほうがいいと思います。しかし社会状況の中に重大な隠蔽があったり、社会全体の舵取りがおかしいといった、不安を生じさせるのが当然な重大な事件のときは、きちんと不安になったほうがいい。しかしパニックに陥ることなく、その不安が何によるものなのか見極め、単に自分の不安感の解消を目的にするのではなく、もっと大きな「不安の原因」を解消するように合理的な行動をとるべきなのです。操作された情報を鵜呑みにして不安を解消しようとしたり、「がんばろう」といった判断停止の言葉に逃げ込んで不安を忘れたりといった逃避行動ではなく、冷静かつまっとうな行動が要求されているのです。不安は無くすべきものではなく、生かすべきものなのです。」p.110


■書評・紹介

20110628 TBSラジオ「キラキラ」 コラム

■言及



*作成:山口 真紀
UP:20110625 REV:
精神障害/精神医療  ◇医療/病・障害 と 社会  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
 
TOP HOME (http://www.arsvi.com)