『空也上人がいた』
山田 太一 20110407 朝日新聞出版,160p. =20140430 朝日文庫,167p.
last update:20150509
■山田 太一 20110407 『空也上人がいた』,朝日新聞出版,160p.
ISBN-10: 4022508507 ISBN-13: 978-4022508508 \1200+税
[amazon]
/[kinokuniya]
=20140430 『空也上人がいた』,朝日新聞出版(朝日文庫),167p.
ISBN-10: 4022647418 ISBN-13: 978-4022647412 \500+税
[amazon]
/[kinokuniya]
■内容
妻を亡くしたひとり暮らしの81歳の男、ずっと独身を通してきた46歳の女性ケアマネジャー、老人介護の仕事をやめたばかりの27歳の僕……。
ぬぐいきれない痛みを抱える人々と一緒に歩く空也上人とは? 都会の隅で起きた、重くて爽やかな出来事。
■著者略歴
昭和9年、浅草生まれ。昭和33年松竹大船撮影所に入社し、助監督として木下恵介に師事。40年に同社退社後、シナリオライターとして独立し、主としてテレビドラマの脚本を執筆。
当時、大家族的なホームドラマが多かった中で、核家族の諸問題を多元的に見た作品で注目された。52年TBS系列で放送された「岸辺のアルバム」で脚本家としての地位を確立した。
その後「ふぞろいの林檎たち」「日本の面影」など話題作を手がける。58年向田邦子賞、60年菊池寛賞を受賞。
■引用
「もう介護の仕事はやる気がないってこと?」
「いまはそうです」
「なにやるの?」>012>
「からっぽですよ、まだ」
「二年余り打ち込んだ仕事だものね」
「入居者ほうり出したんだから、終りですよ」
「個人でね、頼みたいっていう人がいるの」
「在宅ってことですか」
「介護保険とは関係なく、八十一歳の男性で、持ち家で独り住まい。車椅子だけど、認知症はなし、トイレは自分で出来て、
お風呂は浴槽の出入りに介助があればあとは自分で出来る。洗濯機は全自動。通いでいい。月二十五万」
「食事や買い物は」
「して貰う。一緒に食べてもいいし、若い人向きに別につくってもいい。うるさいことはいわないって」
「掃除や病院通いとか――」
「して貰う」
「車はあるんですか」>013>
「ないからタクシー呼ぶの」
「つき添う?」
「そう。でも、いまは週一のリハビリだけ」
「まだなんかありそうだけど――」
「でも四十人を二人でみる夜勤はない。オムツもない。食べさせる手間もない。徘徊もない。怒り狂って叫び続けるおばあさんもいない」(pp.11-13)
■書評・紹介
■言及
*作成:北村 健太郎