HOME > BOOK >

『女性の学びを拓く――日本女性学習財団70年のあゆみ』

日本女性学習財団 編 20110303 ドメス出版, 309p.

last update: 20110324
このHP経由で購入すると寄付されます

■日本女性学習財団 編 20110303 『女性の学びを拓く――日本女性学習財団70年のあゆみ』,ドメス出版, 309p. ISBN-10:4810707512 ISBN-13: 978-4810707519 \2500 [amazon][kinokuniya]

■内容


■目次


■引用

「わたし」を問う「女性の学習の歩み」レポート
(6) 「わたし」をみつめ、他者とかかわる――医療・福祉の論理への問い

「自分を語る」ことは「わたし」と他者とのかかわりをみつめなおすことにほかならない。レポートには介護や育児をめぐる経験も多くつづられているが、「わたし」を問う姿勢が強く生まれてくるのは、二〇〇〇(平成十二)年以降ではないかと思われる。
 ここでは二つのレポートを取り上げたい。一つは二〇〇七年度奨励作「障害のある子どもを授かって――染色体異常症『18トリソミーの会』患者会活動」(櫻井 浩子)である。筆者は「四日間で五〇%が亡くなる」といわれた難病の子を産み、「七五日間懸命に生きた」子を亡くした。ほとんど治療不能とされる病気であったが、親の声は医療担当者には伝わらなかった、と感じた筆者は、同じ難病の患者の親たちと出会い、ともに実態調査や交流、医療機関への要望などの活動を続けることになる。二〇〇七年には立命館大学大学院先端総合学術研究科生命領域の博士後期課程に入学、「障害新生児の治療停止と差し控え――『子どもの最善の利益』」をテーマに研究者としての道を歩き出した。
 ここには、子どもを亡くした母親の悲しみや医療不信などの感情をただ吐き出すだけではなく、現実を論理化しようとする姿勢がある。「いのちを産む性」としての女性がいわゆる「母役割」にとどまるのではなく、「専門家」である医療関係者に対し対等に発言できる力を獲得する可能性を示しているといえよう(pp195)。

 この二つのレポートは、「障害児」や「高齢者」とかかわる女性の体験を単に「苦労したけどよかった」といった自己充実の語りにとどめるのではなく、悪戦苦闘の末に学習を通じて体験を論理化し、その作業によって「わたし」を問い直す作業と結びついているところに特徴がある(pp196)。


■書評・紹介

■言及




*作成:片岡 稔,櫻井 浩子
UP: 20110315 REV:20110324
女性学身体×世界:関連書籍  ◇BOOK