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『安心して落ちこめる本』

徳永 京子 20101019 サンマーク出版,205p.

last update:20131208

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■徳永 京子 20101019 『安心して落ちこめる本』,サンマーク出版,205p. ISBN-10:4763130846 ISBN-13:978-4763130846 欠品 [amazon][kinokuniya] ※ sjs

■内容紹介(「amazon」より)

落ちこむことは悪いことではありません。 心のピンチにしっかり、ゆっくり向き合うチャンスが「落ちこんだ時」なのです。 そう、落ちこんだ時こそ、成長するためのチャンスでもあるのです。 しかし、落ちこみが長くつづくと、うつになってしまう可能性があります。 この本で心のことや、自分の心のタイプ、回復方法を知っておくことで、安心して、ゆっくり落ちこめて、じょじょに回復することができるのです。

出版社からのコメント
悩んだり、へこんだりすること、ありませんか? 私はよくあるんです。そんなとき、励まされても、気分転換しようと思ってもなかなかできないんですよね。この本は、そんな落ちこんだ心にそっとよりそってくれる内容です。そして、具体的に自分の心を知っていくことで、いつのまにか落ちこみにくい心に自然に変えてくれます。
内容(「BOOK」データベースより)
さまざまなストレスによって落ちこみ、長く回復しないままうつ病になってしまう場合もあります。しかし、自分の心のことを少し理解して、対処法を知っておけば安心です。安心して、ゆっくり、落ちこんでください。そのために、この本では、私たちの心について、落ちこんでしまう仕組み、落ちこみから回復するための方法をお伝えします。

著者について
とくなが・きょうこ 保健師・精神保健福祉士、心理カウンセラー。 大阪府立大学看護学部卒業後、大阪府下の保健所で地域の保健師として公衆衛生行政に携わるが、うつ病になったのをきっかけに、より自分らしい生き方を求めて全国でもめずらしい開業保健師として起業。 現在、大手電機メーカー、障がい者通所施設、看護・福祉系の専門学校で心身の健康管理と教育に携わるかたわら、メンタルヘルスセミナー講師として企業研修の講師を務める。 ブランディングコミュニティ・キャリアShuka主催、「セミナー講師デビュー☆プロジェクト」のセミナーコンテスト初代グランプリ受賞、講師オーディション優勝の経歴をもつ実力派講師。学校、企業、自治体からの講師依頼は1000本を超える。 また、「踊る保健師」として、手話を取り入れたサインダンスで教室運営や舞台活動も展開中である。

■目次

プロローグ 少しずつ前向きになれればいい
 落ちこみは悪いことではありません……2
 「ゆっくり」「低く」「小さく」でいい……3
 傷ついた心の保健室……4

1章 私たちの心はどうなっているの?
 心はいつもあなたの中で輝くお月様……16
 落ちこむ人・落ちこまない人の違い……22
 やる気が出ない時の心の状態……30
 寂しい時の心の状態……36
 どんな状態でもかけがえのないあなた……44

2章 自分を知ればもう悩まない
 あなたのストレスをチェックしよう……50
 それは事実ですか?推論ですか?……56
 あなたを見つける心理テスト……61
 「5つの心のチャンネル」のどこに入っていますか?……67
 行動を起こして心のチャンネルを替える……75
 チャンネルを切り替えれば性格は変わる……81
 負のスパイラルを断ち切る行動パターンの修正……85

3章 自分を好きになれば未来が変わる
 自分を好きになると人生が変わる……92
 たった一行の日記であなたが変わる……98
 成功体験の積み重ねが自己肯定感を育てる……105
 成功体験を数値化し、達成度を確認する……113
 過去と他人は変えられない……117
 「私は」を主語に伝えてみよう…… 122

4章 ただ話を聞いてくれる人をもとう
 受け入れてもらえると人は心の扉を開く……128
 すべて話すだけで次の一歩が見えてくる……133
 話を聴いてもらう人の選び方……139
 話を聴いてほしい時の頼み方……143
 相手を安心させる話の聴き方……150
 気軽に専門家を利用しよう……156

5章 心のスイッチを切り替える10のヒント
 心のスイッチは自分で作れる……162
@ 鏡を見る……164
A 笑う……166
B お茶を飲む……169
C マイペースで進む……171
D 趣味を楽しむ……175
E 自分の役割をもつ……178
F 人の夢を聞く……182
G つながりをもつ……186
H 自分の居場所をもつ……190
I 欠点の中の宝物を探す……194

エピローグ やまない雨はない
 自分を生き直すチャンスをもらって……199
 雨の後にはきれいな虹が出る……203

■SJSに関連する部分の引用

(pp107-112)
 自己肯定感をもつためには、自分への信頼度を上げる必要があります。「自分への信頼度を上げる=自信をつける」ということです。
 そのためには、小さな成功体験を積み重ね、自信をつけることで、自己肯定感を育てることになるのです。
 ここで、失意の中でも小さな成功体験を積み重ね、自信をつけたある女性の例をお話ししましょう。[p108>

どん底から小さな成功体験を重ねたMさん

 22歳の時に、市販の薬を飲んで、スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)になり、失明したMさんという女性に話を伺いました。
 発病前は、バスケットボールと音楽が好きな元気で活発な女性だったといいます。OL時代を過ごしていたある日、風邪をひいたので市販の風邪薬を服用しました。誰もが同じ行動をとりますよね。
 ところが、熱はどんどん上がり、全身に水泡ができ、腫れあがるという症状が出てきました。特に粘膜そして目の症状はひどく、入院して治療はしたものの、じょじょに見えなくなり、失明してしまったそうです。
 Mさんは、突然目が見えなくなってしまったことを、なかなか受け入れることができませんでした。外に出ても、何も見えない――だから、外には出ないという生活を約9年間過ごしたそうです。[p109>
 31歳の時に角膜手術を受けるのですが、残念ながら術後感染を起こし、見えるようにはなりませんでした。当時のMさんは、死ぬことしか頭にはなかったそうです。
 そんな時に、一晩中話を聴いてくれた看護師がいました。自分には、やりたかったことがたくさんあったこと――「イタリアに行ってパティシエになりたかった」などを、夜を徹して話しました。やがて、小鳥が鳴きはじめ夜が明けた時、Mさんには、オレンジ色の美しい夜明けの光が見えたそうです。
 その日を境に、Mさんの中で何かが変わりはじめました。
 「病院の近くに美味しいケーキ屋さんがあるから、一緒に行こう!」と、友達に誘われました。Mさんは、ケーキが見えないと食べられないと思って、断っていたのに、外に出てみようと思いました。
 友達が一口大にして、スプーンの上に置いてくれたら、美味しいケーキが食べられたのです。「なんだ。できないことは手伝ってもらえばいいんだ」ということに気づき、家や病院から一歩も出ない生活から、第一歩を踏み出すことができました。
 退院後は、ライトハウスでの訓練がはじまりました。そこは、Mさんと同じように[p110>目が見えない人たちの生活訓練を行うところです。
 白杖を持って、前方に障害物がないか探るように歩くことや、指先の感覚を頼りに点字を読んだり、打ったり――。今まで経験したこともないことを練習していきます。少しずつでもできるようになると、面白くなってきます。音声読み上げソフトを使えば、パソコンでメールを送受信したり、インターネットで情報を取ったりすることができました。
 「こんなことなら、失明した時にさっさと訓練を受ければよかった」と思うこともあれば、やはり、失明したことで苦労することもあります。
 たとえば、見えている時は、汚れているところだけ簡単に片づければいい部屋の掃除に関しては、まったく手抜きができません。汚れているところが見えないから、くまなく掃除しなければいけません。
 それでも、ライトハウスでの訓練を受けながら、見えないことを受け入れ、見えないことを前提にした生き方を学びはじめました。「見えないから、何もできない」から、「○○をするために、どうすればいいか?」と工夫しながら、生活するようにな[p111>りました。
 失明した時は、自分を否定し、自分の人生を恨んでいた毎日。死にたいと本気で思っていたそうです。しかし、「見えなくてもこうすればできる」ということが増えていった時に、見えない自分でもいいと思えるようになったそうです。
 日常生活がほぼできるようになった頃、Mさんは友人とともに植林に参加しました。くわで耕し、土を掘り、苗を植える――ゆっくりペースに、みんなが合わせてくれました。
 苗を植える時も、友達みんなが「もうちょっと右」「そうそう」「足元、気をつけて」と声をかけてくれました。彼女が何かできるようになったら、みんなが、まるで自分のことのように喜んでくれます。
 Mさんは、誰かの力を借りれば、どんなことでも、そんなに苦労することなくできてしまえることに驚いたそうです。
 「目が見えないことにとらわれていた頃が一番苦しかったです。見えないことを受け入れてみれば、今まで感じたことがない人の優しさをたくさん感じ取れるようになり[p112>ました」
 そう自信をもって話すMさんは、今、たくさんの仲間に支えられてとてもアクティブな生活をしています。


*作成:植村 要
UP:20131208 REV:
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