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『不可能を可能にする視力再生の科学』

坪田 一男 20100607 PHP研究所,261p.

last update:20111105

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■坪田 一男 20100607 『不可能を可能にする視力再生の科学』,PHP研究所,261p. ISBN-10: 4569777856 ISBN-13: 978-4569777856 \945 [amazon][kinokuniya] sjs


■内容紹介


64歳の女性は、なんと一回の手術で、白内障、高度近視、乱視、老眼が治った。
アルカリ外傷で失明した32歳の男性は角膜再生医療により社会復帰した。
また、45歳の医師の高度近視は、なんと10分で治ってしまった。
目の中にコンタクトレンズを入れる「フェイキックIOL」、急速な広がりを見せている「レーシック」など眼科医療は黎明期を迎えている。
とくに最近、老眼に対する技術革新が起こっている。
白内障手術のための「遠近両用眼内レンズ」、角膜内にピンホールを作る「アキュフォーカス・リング」など、素晴らしい技術が目白押し。
まさに、「今や目もアンチエイジングの時代」というわけだ。
視界がクリアになれば、あなたの目に映る景色ばかりか、人生をも変えてしまうだろう。
竹内薫氏も推薦! 近視、遠視、乱視、老眼、さらには失明まで治す最先端技術を余すことなく紹介した一冊。
■内容(「BOOK」データベースより)
64歳の女性は、なんと一回の手術で、白内障、高度近視、乱視、老眼が治ったという。また、アルカリ外傷で失明した32歳の男性は角膜再生医療により社会復帰した。目の中にコンタクトレンズを入れる「フェイキックIOL」、角膜内にピンホールを作る「アキュフォーカス・リング」、さらに、急速な広がりを見せている「レーシック」など眼科医療は黎明期を迎えている。近視、遠視、乱視、老眼、さらには失明まで治す最す最先端技術。


■目次



 はじめに…011

第一章 老眼鏡がいらなくなる!?
 ついに来た! 老眼フリーの時代 022/体験談 025/ピンホール効果というアナログの原理 030/レンズが硬化してピント合わせができなくなる老眼 032/順応性のある目のシステム 035/ラジオ波を用いた老眼治療「CK」 036/体験談 039/老眼レーシックとモノビジョン・レーシック 042/老眼と遠視 044

第二章 乱視・遠視が十分で治る!
 見える喜び 047/目はビデオカメラ 050/革新的な眼科医療に起きた事件 052/レーシックはジャンボジェットのようなもの 054/体験談 059/レーシックの安全性 070/安全な技術も、それを扱う人次第 080/進化するレーシック 083/オーダーメイドレーシックの登場 085/トポリンクとウェーブフロント 087/レーザーでフラップをつくるフェムトセカンドレーザーの登場 090/高度近視にはさらに新しい技術「フェイキックIOL」 100/体験談 102/PRKにもメリットがある 105/近視手術は実は日本で始まった!? 108/近視手術のその後 110/画期的な視力治療 112/レーシックは贅沢か? 高いか? 114/価格競争のゆくえ 116/これから重要となる眼光学の分野 118

第三章 あなたの目、クリアに見えていますか?
 ちゃんと見えていない人が多い現実 121/そもそも視力とは? 122/ジオプターとは? 125/近視はわるいか? 127/過矯正は悪?い? 128/遠近両用メガネと遠近両用コンタクトレンズ 129/見えていても、見えづらい? 130/実用視力という新しい視力の概念 131/涙が大事!ドライアイと視力 135/乱視と円錐角膜 137/坪田式円錐角膜治療TGCKの開発 141/円錐角膜の患者さんの視力をよくする 144/視力情報社会における視力の価値 145/あらためて「老眼」について考えてみる 148

第四章 見ているのは「脳」である
 目と脳が連携して認識する視界 151/動くものに敏感 153/削除する機能 154/実は一点でしか見えない 156/高性能な感度システム 157/桿体・錐体シフト 159/夢を「見る」のはまさに脳 161/「見る」ことで育つ子どもの目と視力 162/五〇ジオプターのレンズ系 162/角膜の巧みな曲線 164/調節役の水晶体 165/遠→近システムの合理性 167

第五章 白内障治療最先端
 白内障のメカニズム 169/水晶体を変性させるものとは? 172/白内障と水銀 174/白内障の画期的治療 175/老眼鏡から、眼内レンズへ 177/アコモダティブIOLの行方 181/画期的! シンクロニーIOLへの期待 182/白内障予防と老眼予防 183/体験談 187

第六章 視力に大切な網膜と神経を守る
 増加する加齢黄斑変性 189/加齢黄斑変性の新しい治療 191/サプリメントの効能 192/体験談 194/酸化で老化することの証明 196/注目のマイクロ・カレント・テラピーとは? 197/国民的疾患ともいえる糖尿病性網膜症 198/糖尿病性網膜症にルテインの効果 200/日本での失明率第一位の緑内障 201/正常眼圧緑内?障と活性酸素 203

第七章 角膜移植最先端
 角膜移植は特別な医療ではない 207/全層移植からパーツ移植へ 213/裸眼視力の向上 216/フェムトセカンドレーザーで角膜移植 217/角膜上皮の再生移植 218/厚生労働省の指針に則った再生移植のスタート 221/臓器移植法の問題 222/体験談 225

第八章 iPSを用いた再生医療にかける夢
 iPS細胞で近づいた再生医療の未来 227/涙腺の再生 232/疾患の原因解明や、創薬への期待 235/期待される冷凍保存技術 236/医療に重要なトンネル理論 238

第九章 目の若さを保つ方法
 老眼は予防可能か? 240/血管を若く保つ 241/酸化ストレス仮説 243/サプリメントが予防医学に活用される時代 244/力ロリーリストリクション(メタボエイジング仮説) 245/腹八分目のサイエンス 247/アンチエイジングで治った!? 僕のドライアイ 249/血糖を上げない食事「低Gl食」 250/運動の絶大なる効果 253/アンチエイジング十か条 254

終わりに…257
謝辞…261


■著者紹介(「奥付」より)


坪田一男 (つぼた・かずお)
 慶應義塾大学医学部眼科教授。南青山アイクリニック手術顧問。医学博士。1955年、東京都生まれ。1980年、慶應義塾大学医学部卒業。国立栃木病院眼科医長、東京歯科大学教授を経て、2004年より現職。専門は角膜移植、屈折矯正手術およびドライアイ。著書に『理系のための人生設計ガイド』(講談社ブルーバックス)、『長寿遺伝子を鍛える』(新潮社)他多数。


■SJSに関連する部分の引用



(pp218-221)
角膜上皮の再生移植
 実は、再生医療は角膜移植の分野からスタートした。
 僕が前任地の東京歯科大学に在籍していたころ、一九九二年から九九年にかけて、角膜上皮のステムセル(幹細胞)の移植を試みた。その報告をまとめた論文が、九九年の『ニューイングランド ジャーナル オブ メディスン(NEJM)』の巻頭論文に採択され、世界に報じられた。このときはニューヨークタイムズなどの世界中のメディアから取材がきて、すごかった。
「東京歯科大学の研究チームが世界初の幹細胞移植に成功!」と報じられて、海外では、「日本では眼科は歯科の分野に属しているのか?」と聞かれることもあった(東京歯科大学は歯科が専門だが、眼科などの一般の科もあるのです)。
 角膜が三層であることはすでに書いた。その上皮細胞は、およそ一ヶ月の周期で生ま[p219>れ変わっている。新陳代謝しているのだ。ということは、新しい細胞を生み出す種がある。その種細胞が、幹細胞=ステムセルである。
 このステムセルは、角膜の輪部、ちょうど黒目と白目の境目あたりにあるらしいことが分かっていた。そこで僕たちは、この角膜上皮のステムセル移植を、ハーバード大学、マイアミ大学、台湾の大学などといっしょに研究を始めた。
 角膜の疾患で、とくに、化学外傷のように、目に薬品をあびてしまったりすると、目の表面がすべてやられてしまう。すると、大事な角膜上皮のステムセルも失なわれてしまう。するとどうなるか? 上皮の種がなくなり、上皮の新しい細胞が作り出せなくなるため、結膜の組織が角膜に侵入してきてしまう。結膜組織は透明ではない。しかも血管があるため、瞳は透明でなくなり、視覚を障害されてしまう。
 このような症例には、角膜移植は禁忌であった。角膜移植をしても、上皮の種、ステムセルがないから、上皮がきちんと作られないために、すぐに濁ってきてしまうのだ。
 そこで、僕たちは考えた。ドナー角膜のステムセルをまずは移植して、上皮がきちんと再生できるようにしよう。表面がちゃんときれいになったら、角膜移植をする、という二段階の治療にしたのだ。これを眼表面の再建という。表面をきちんと整えてから、[p220>全体の工事にとりかかる、というわけだ。
 最初は、ドナー角膜の輪部をリング状に切り取って、きれいに形を整えて、目に移植した。免疫抑制剤でしっかりとコントロールすると、そこから上皮がつくられて、瞳全体をおおっていった。
 中に、涙のない症例があった。スティーブンス・ジョンソン症候群などで、角膜が濁ってしまった例は、涙腺も障害されていて、涙が出ない。そうした症例には、自己血清点眼(患者本人の血液から血清をつくり涙のかわりに点眼する)をおこなうことで、上皮の再生を可能にした。
 また、種が育つのに、実は、その土壌となる基質も大事だということが分かったので、基質に羊膜を用いて、羊膜+ステムセル+血清という技術で、角膜上皮のステムセル移植を成功させた。
 NEJMにレポートを出したあと、思いついた。あらかじめ羊膜の上にステムセルを増やしておいてから移植したほうが、患者さんは楽なのではないか。輪部移植だと、上皮が角膜全体に張るまで時間がかかる。その間、入院していなくてはならないし、大変なのだ。[p221>
 そこで、シャーレに羊膜をひろげて、そこに輪部をのせて、保温器の中で培養した。すると、羊膜上にきれいに上皮が形成された。これを患者さんの目に移植することで、再生医療としての角膜上皮移植はさらに進歩を遂げた。


(pp225-226)体験談 藤迫雄行さん (会社員/二十八歳)

「再生医療の素晴らしさを身をもって感じました」

仕事で海外に滞在していたとき、右目がかすんで見えなくなりました。はじめは気がつかなかったのですが、道を渡ろうとしたときに、車の距離感がつかめず、あれ? と思って片目をつぶってみたら、右目が白く濁って見えないことに気づきました。すぐにドイツ人の眼科医に診察してもらったのですが原因がわからず、帰国して、実家の近くの眼科を受診。そこでも原因がわからず、慶應の坪田教授を紹介してもらいました。
 坪田教授からは、どうもスティーブンス・ジョンソン症候群のようだといわれ、ドライアイの治療を半年ほどしながら経過をみましたが、改善せず、角膜移植をすることになりました。
 角膜移植と聞いて、僕よりも、両親や友人が驚いていました。坪田教授からは、眼科で初めてとなる角膜の培養上皮シート移植であると聞きましたが、とにかく、見えるようになるのであればと手術を受けました。[p226>
 手術は意外とあっさり簡単に終わりました。歯医者さんと同じような感じで、痛みもなく、一時間もかからなかったと思います。
 翌日の検査で眼帯をはずしたときは、なんとなく水の中のような感じでしたが、一週間くらいでかなりクリアになり、一ヶ月経つ頃にはもとに戻ったように感じました。
 今までは、角膜移植には一人ひとりドナーの方の提供が必要だったものが、この培養上皮シートでは、たくさんの移植が可能であることを聞き、再生医療の素晴らしさを身をもって感じました。


(pp232-234)涙腺の再生

 角膜だけでなく、網膜や視神経の再生もできたら、失明患者さんをたくさん救うことができるようになる。慶應には神経の再生研究で世界的に有名な岡野栄之先生や、生物学の末松誠先生、再生医学の須田年生先生、福田恵一先生、細胞生物学の河上裕先生、佐谷秀行先生他、たくさんの素晴らしい研究者がいる。日々、貴重なご指導をいただいているが、再生医学研究が始まったことで、眼科以外の分野の研究者たちとの交流が以前よりも深まり、改めて仲間の先生たちの素晴らしさをひしひしと感じている。自分も頑張らなくっちゃ! と奮い立たせてくれる心強い存在である。大学の価値が問われている昨今だが、大学という場の存在価値は、そんなところにあるのではないかと思ったりもする。
 そんな中で、僕の長年の夢は、涙腺の再生だ。目に付随する器官として、涙を作って分泌する涙腺がある。上まぶたのちょっと外側のあたりにあって、泣いたときにどっと涙を分泌するだけでなく、ふだんも少しずつ涙を分泌していて、目の表面を守っている。[p233>
 自己免疫疾患では、この涙腺が破壊されてしまう。とくに、スティーブンス・ジョンソン症候群ではこの涙腺が完全に破壊されてしまい、全く涙が作れなくなってしまう。すると、目の表面は、それまでの透明な角膜や結膜組織を保てなくなり、完全に皮膚化してしまう。もちろん光を通さないから、失明してしまう。
 そうなると、角膜移植をしても治らない。移植後に角膜を透明に保つためには、涙が不可欠なのだ。だから、この涙腺を再生医療で治せるようにならないと、角膜移植の完成には到達できない。
 いまから十五年ほど前、僕の外来に八歳の男の子が来た。彼はスティーブンス・ジョンソン症候群に罹患して一命はとりとめたのだが、失明してしまった。血清点眼を用いるなどして角膜移植をおこない、一時は視力を取り戻したのだが、涙がないために透明な角膜を維持できずに、再度光を失ってしまった。
 彼は失明という辛い障害を抱えながらも、果敢に人生にチャレンジして、大学にも合格した。そんな彼は、意気消沈している僕に、
「坪田先生に治してもらえる日が来るまで頑張ります」と言ってくれた。
 なんとしても、彼の目を治したい。自分の人生の最期に「ああ、彼の目を治すことが[p234>できた」と思って眠りにつきたい。僕の眼科医としての最終目標である。しかし、本当にそんな日は来るのだろうか……と途方にくれる日もあったが、最近の再生医療研究の進歩をみると、その日もそう遠くないような気がしている。
 患者さんに、励まされ、道を照らしていただいている。その恩返しをぜひとも実現させたい。
 涙腺を破壊される病気として、スティーブンスジョンソン症候群のほかに、「シェーグレン症候群」がある。自己免疫疾患のひとつで、涙腺や唾液腺などの腺組織が破壊される病気だ。中年以降の女性に多いが、男性にも発症する。


*作成:植村 要
UP: 20110920 REV: 20111105
スティーブンス・ジョンソン症候群 (SJS)  ◇BOOK 
 
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