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『発達障害は治りますか?』

神田橋 條治・岩永 竜一郎・愛甲 修子・藤家 寛子 20100527 花風社,318p.

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神田橋 條治・岩永 竜一郎・愛甲 修子・藤家 寛子 20100527 『発達障害は治りますか?』,花風社,318p. ISBN-10: 4907725787 ISBN-13: 978-4907725785 [amazon][kinokuniya] ※ m.

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内容(「BOOK」データベースより)
「発達援助」という視点。「目の前にいる人をなんとか、少しでもラクにするのが医者の仕事」そう言い切るカリスマ精神科医が問いかける―「治らないという考え方は、治りませんか?」神田橋條治の発達障害論。

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著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

神田橋/條治
鹿児島県出身。1961年九州大学医学部卒業。1984年まで九州大学病院に勤務。現在は鹿児島市伊敷病院に非常勤で勤務

岩永/竜一郎
長崎県出身。作業療法士・医学博士。長崎大学大学院医歯薬学総合研究科准教授。現在は長崎大学医学部付属病院等で臨床に携わる。臨床家として、研究者として、そしてアスペルガーの息子を持つ父として、発達障害を持つ人の問題解決に尽力する日々を送っている。日本感覚統合学会理事。長崎県自閉症協会高機能部部長。認定作業療法士。感覚統合認定講師。特別支援教育士スーパーバイザー(LD学会認定)

愛甲/修子
千葉県出身。帝京平成大学専任講師。臨床心理士・言語聴覚士。スクールカウンセラー・県教育委員会特別支援教育専門家チーム委員。心理士として神田橋條治のスーパーヴァイズを受けている

藤家/寛子
佐賀県出身。20代でアスペルガー症候群と診断される。解離性障害やうつなどの重い二次障害と生来の虚弱体質により苦しみ、引きこもりとなっていた時期もあったが、自分の精進と周囲の支援により健康になり、現在は週に五日勤務に挑戦中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

第1章 発達障害者は発達する
第2章 せめて治そう!二次障害
第3章 問題行動への対処「未熟な自己流治療法」という視点
第4章 発達障害と教育・しつけ
第5章 治療に結びつけるための診断とは?
第6章 一次障害は治せるか?
第7章 養生のコツをつかむコツEBMと代替療法

■引用

「神田橋 僕は解離を統合する治療には反対なんです。
 解離というのとはね、もっとも苦しいときに、人間という特別な脳を持った生物が使える最高の方法です。天草で温泉で逆さづりにされたキリスト者たちはみんな解離を使って耐<0056<えたんでしょう。解離がなかったら耐えられなかったでしょう。だから解離はそういうときに使うんです。解離性人格障害は、治そうとしてはいけないんです。ただ、解離性人格障害が薄れてくれば、ああ、ずいぶん脳がラクになったんだな、という指標としては使えます。治療のターゲットにしてはいけません。」(p.56-57)

 「浅見 […]先生のお考えでは、本当はDSMって必要ないんですか? 神田橋 いや、必要です。いまや、DSMなしには精神科医の仕事は成り立ちません。マニュアルで診断をするやり方は、自身が軽度の発達障害を持っている精神科医にせめてもできる方法です。そういう診断法をいつまでも続けることができる能力とは、その精神科医が軽度の発達障害だからです。自分も生きにくさを感じている頭のいい学生が、DSMがあるから自分にもできるんじやないかと思って精神科医になる。そういう人が増えているのですから、DSMは今の医療現場に必要です。」(p.170)

「神田橋 もちろんSSTも必要です。SSTによってたとえば不適切な発言が滅れば、ネガティブなフイードバックが減るし、そうすると二次的な問題はずいぶん軽くなるでしょう。
 でもSSTっていっても、身近な人のなかでうまく振舞う方法と、社会全般でうまく振舞う方法の両方が必要でしよ。身近な人の中でうまく振舞うSSTは結構やっている人が多いけど、それだと社会全般には通じない。それと発達障害の人はリラクゼーションが苦手でしよ。つねにテンシヨンが上がっているというか。リラックスしなさい、というとリラックス頑張ります、みたいに。」(p.191)

「神田橋 だから僕は、代替療法を薦めるときには次の三つを大切にしているんです。
1 自分でできて
2 金がかからなくて
3 できたら身体の中に何かを入れない
藤家 なるほど。
浅見 代替医療を批判する人は、とにかくお金がかかって自分てできないことがいやみたいだけど。これを原則にしていたらあまり被害は大きくなりませんね。」(p.288)

■言及

◆立岩 真也 20140825 『自閉症連続体の時代』,みすず書房,352p. ISBN-10: 4622078457 ISBN-13: 978-4622078456 3700+ [amazon][kinokuniya] ※

◆立岩 真也 2013/12/10 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,433p. ISBN-10: 4791767446 ISBN-13: 978-4791767441 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

 第1章「☆20 私がインタビューした山田真中井久夫神田橋條治については肯定的だった(→50頁)。私は次のように応じている。
 […]
 神田橋・中井らについては、まっとうな医師による、以下のような批判がある。見出しは「おかしな治療法を提唱する大先生」。
 「有名な精神科医の中には、時々おかしなことをいい出す先生がいるものです。/心理療法の名土として有名な先生[…]は「発達障害を体操で治す」などという趣旨の本を出しておられます。発達障害[…]を体操で治すことができるということについては、エビデンスは何もありません。分類するならホメオパシーやアロマテラ<0366<ピーと同じ代替療法の一種なわけで、精神科医がそういうもので発達障害が治るなどと、もっともらしく一般向けの本に書いていいのか、疑問に思わざるをえません。
 それだけならまだしも、この先生は「Oリング(オー・リング)テスト」で薬が合うかどうかを決めるというのです。[…]左右の手の親指と人差し指でつくった輪をつなぎ合わせて引っ張り合い、その輪がどこで開くか、あるいは開くかどうかという簡単な方法で、身の回りのものが自分の身体に合うかどうかを調べる方法です。これで、身体のどこの部分が悪いか、とか、薬の合う合わないを決める、ということを学術的に論じている医師が結構大勢います。これはいわば、偽科学です。[…]私からすれば噴飯ものですが、大真面目にそれを行なっている有名な先生がいるのです。権威ある先生なので、彼を支持する医師たちは反対もせず真剣な面持ちで話を聞いているのです。
 この先生の信奉者のひとりに某国立大学の元教授(この人も多くの精神科医の「信仰」を集める大物中の大物教授です)がいますが、彼はエッセイで「薬の飲み心地で効くかどうかを決める」という発表をしています。/「官能的評価」といって、飲んだときに効く薬と効かない薬とでは「味が違う」というのです。ご自分も患者に出す前にひと通り飲んでみるといいます。
 さらにこれを受けてある先生が、「薬物の官能的評価」をテーマにした本を書いていて[…]本人が飲んでみて気に入ったのだけを飲めばいい、飲み心地が重要であり、それを自分の感性で見極めましょうというわけです。/これは申し訳ないが、寝言・たわごとの頬としか思えません。[…]苦かろうとまずかろうと効くものは効くのです。薬がおいしいとかまずいとかいう話は論外です。[…]/[…]精神科の薬は毎日飲んで、一定期間を経過してはじめて効いたかどうかを判断するものです。[…]それなのに官能的評価などとうそぶいているのは私にとってはもはやオカルトの世界です。そして誰もそれをたしなめようとしないのです。」(斉尾[2011:123-125])
 「薬の飲み心地」の話は中井[2004]等に出てくる。「官能的評価」については熊木[2007]神田橋・兼本・熊木編[2007]、『発達障害は治りますか?』という本は神田橋他[2010]。私には信心はない。Oリング(神田橋の本にたくさん出てくる)は信じがたい。ただ他は、実際にはさほど無理なことが言われているわけではない。」(立岩[2013:366-367])


UP:20130904 REV:
神田橋 條治  ◇自閉症 autism  ◇BOOK
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