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『自閉症論再考』

小澤 勲 20100425 『自閉症論再考』,批評社,177p.

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小澤 勲 20100425 『自閉症論再考』,批評社,サイコ・クリティーク,177p. ISBN-10: 4826505213 ISBN-13: 978-4826505215 [amazon][kinokuniya] 1700+ ※ a07. m.

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内容(「BOOK」データベースより)
自閉症研究に心血を注いだ小澤勲が独自に切り開いた実践的自閉症論の講演記録「自閉症論批判」と、「わが国における自閉症研究史」を収録し、児童青年精神医学の臨床医・高岡健と児童文化研究者・村瀬学によるユニークな解説を付して、「自閉症とは何か」の本質に迫る。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

■著者

■著者 奥付(小澤[2010:178])

小澤勲[おざわ・いさお] 1938年生まれ。京都大学医学部卒業。京都府立洛南病院勤務、同病院副院長、老人保健施設桃源の郷施設長、種智院大学教授、種智院大学客員教授を歴任し、2008年死去。
著書に、『痴呆老人からみた世界』(岩崎学術出版社)、『痴呆を生きるということ』『認知症とは何か』(洋泉社)など多数。

梅田和子[うめだ・かずこ] 1930年生まれ。京都大学工学部大学院修了。「高槻自閉症児親の会」を1968年に結成し"街角でさりげなく…"を標榜してきた(2006年解散)。現在T.J.Oケアネット主宰。1983年より店舗のない書店「うめだよういちほんのみせ」を息子・梅田洋ーと共に営む。

高岡健[たかおか・けん] 1953年生まれ。糟神科医。岐阜大学医学部卒。岐阜赤十字病院精神科部長などを経て、岐阜大学医学部准教授。日本児童青年精神医学会評議員。雑誌「精神医療」の編集委員をつとめる。 著書に、『別れの精神哲学』『人格障害論の虚像』他(雲母書房)、『やさしい発達障害論』『やさしいうつ病論』他(批評社)、『少年事件心は裁判でどう扱われるか』『発達障害は少年事件を引き起こさない』(明石書店)など多数。

村瀬学[むらせ・まなよ] 1949年生まれ。日本の児童文化研究者。同志社大学文学部(哲学)卒。大阪府交野市の心身障害児通所施設職員を経て、同志社女子大学教授。 著書に、『子どもの笑いは変わったのか』『10代の真ん中で』(以上、岩波書店)、『13歳論』『初期心的現象の世界』『「食べる」思想』(以上、洋泉社)、『なぜ「丘」をうたう歌謡曲がたくさんつくられてきたのか』(春秋社)、『宮崎駿の「深み」へ』(平凡社)、『自閉症これまでの見解に異議あり』(筑摩書房)、『「あなた」の哲学』講談社)など多数。

岸本篤子[きしもと・あっこ] 1952年生まれ。大阪大学工学部中退、和光大学人文学部卒業。板倉聖宣氏のもとで仮説実験授業研究会の事務局を担当した後、小・中・高の教員を経験。現在、大津市内で文庫・ストーリーテリングの活動をしている。

■目次

自閉症論批判 小澤 勲
 今、なぜ自閉症を問題にするのか
 自閉症論の変遷―分裂病説から脳障害説へ
 現代自閉症論をめぐる諸問題―脳障害説=言語・認知障害説の批判的検討
 自閉症とはそもそも何なのか
 質疑・討論
 「自閉症論批判」解題 自閉症概念の成立と消滅 高岡 健
わが国における自閉症研究史
 1960年代の自閉症論
 1970年代以降の自閉症論
 処遇と「責任」の所在
 自閉とカテゴリーとしての自閉症
 「わが国における自閉症研究史」解題 こだわりのスペクトラム、「こだわりの美学」へ―小澤勲の「自閉症研究史」から見えてくるもの 村瀬 学

◆詳細目次

はしがき(梅田和子)

自閉症論批判
序章 今、なぜ自閉症を問題にするのか
1.はじめに/ 2.精神医学の中の生物学主義と心理主義/3.社会情勢の変化と精神医療
第1章 自閉症論の変遷――分裂病説から脳障害説へ
1.日本で最初の症例報告(1952年)をめぐって/2.自閉症論の「コペルニクス的転回」とは何だったのか/3.自閉症児がけいれん発作をおこしては困る?/4.けいれん発作をおこしても自閉症である/5.自閉症=非器質性神話の崩壊/6.自閉症と分裂病/7.それで、何がわかったのか?
第2章 現代自閉症論をめぐる諸問題――脳障害説=言語・認知障害説の批判的検討
1.〈学習障害=LD〉をめぐる状況/2.心的な現象を脳の問題に還元することはできない/3.精神医学上の「症状」とはどういうものか/4. “天才”から精神遅滞への転落――予後論をめぐって/5.言語・認知障害はいかなる意味で「基礎的」なのか/6.医者の都合と行政の都合――処遇論
第3章 自閉症とはそもそも何なのか
1.「自閉症」概念の構造/2.「自閉」をぬきにして自閉症の診断はできない/3.ことばがなければ、人と人とはつきあえないのか/4.自閉症児はけっして自閉的ではない/5.自閉症概念のゆくえは……?
質疑・討論
1.自閉症児とともに生きてきて(澄川智)/2.社会規範のワクをはずして、ひとの心をとらえたい(村瀬学)/3.規範からの「はずれ」として存在する自閉症の問題/4.ひとの顔がひとの顔として見えるということ/5.障害者の生き方の選択とは(澄川智)/6.規範を越えることのむずかしさ/7.闘うことがわが子を否定することになる?(梅田和子・鶴島緋沙子)/8.外敵を撃つということの意味/9.「脳障害があるから自閉症になる」のではない/10.自閉症は“自然な”状態か?(中崎久二男・村瀬学)/11.人間は、自閉症になる能力をもった動物である/12.次回に期待を

「自閉症論批判」解題◇自閉症概念の成立と消滅(高岡 健)
1.「自閉症論批判」以前/2.「自閉症論批判」の内容(1)――学説史/3.「自閉症論批判」の内容(2)――処遇論と本質論/4.自閉症概念が不要になる時代へ

わが国における自閉症研究史
1.はじめに
2.1960年代の自閉症論/1 大まかな見取図/2 ?Kannerによる自閉症の〈発見〉/3 自閉症概念のわが国への導入/4 牧田?平井論争/5 論争過程の基盤にある分裂病観
3.1970年代以降の自閉症論/1 大まかな見取図/2 予後研究――言語・認知障害説への思路/(1)自閉症=非気質性神話の崩壊・(2)予後の悪さ・(3)予後を規定する因子としてのIQ・(4)特殊治療の効果の否定・(5)自閉と言語・認知障害の関連の逆転/3 言語・認知障害説の行方/4 言語・認知障害説に対する二、三の疑問
4.処遇と〈責任〉の所在
5.自閉とカテゴリーとしての自閉症
6.おわりに

「わが国における自閉症研究史」解題◇こだわりのスペクトラム、「こだわりの美学」へ――小澤勲の「自閉症研究史」から見えてくるもの(村瀬 学)
1.小澤勲と自閉症研究/2.自閉へのこだわり/3.「おたく」という言葉の時代背景/4.情報化社会と高機能の意味/5.こだわりの身体/6.「自閉症の発見」という現象/7.多様性を生きる社会へ・172

あとがき(岸本篤子)

■引用

◆自閉症概念の成立と消滅――「自閉症論批判」解題 高岡健

1.「自閉症論批判」以前
2.「自閉症論批判」の内容(1)ー学説史
3.「自閉症論批判」の内容(2)ー処遇論ご本質諭

 だが、コペルニクス的転回は、学説史の中で単独に生じたものではなく、処遇の変化と重なり合って起こったものである。それも小澤の指摘するところだった。精神科医に自閉症児を任せても、良く声金ばかりがかかった。1960年代後半から自閉症施設ができはじめたが、それははじめから障害福祉課でとりあっかっていた。そして、結局Uは養護学校に入れ、精神薄弱施設に入れるという体5が根幹になっていった。そうすると、自閉症が精神分裂病であっては困る。発達障害として精神薄弱に近づいてもらわないといけない。このように、自閉症処遇の動向と学説上の変化は、ぴったりと重なり合っていたのである。
この部分に相当する説明を、「自閉症とは何か亅から、以下に童キしてお"う

書きしておニう。

(国は自閉症児施設のく挫折ンを予想していたかのように、当初から自閉症対策を医療問題とは考えなかった。また幼児自閉症=精神分裂病説の消滅と言語・認知障害説の横行を予見してい、かのように、国は自閉症学説転回の定着を待たずに自閉症処遇体系をっくりあげていった。だが、何も不思議がることはない。事実は、国家の障害児処遇の原則にしたがって、労働力として再生産不能と断じた自閉症児の大部分に対して、しもかるヨ処遇体系を着々と形成していき、御用学者がド医学的研升究と称して、国家的処遇方針の科学的裏付けを後避追い的的にしてみせたにすぎないのだ。)

ただし、輸入された言語一認知障害説のすべてが、御用学者によって国家の処遇方針に拝跪する役割を担わされたわけでは,以中しもなかった。それらの中には、「いいこともいっていhる」」論文があっ

それでは、自閉症をどのようにして診断しているのか。それは一自閉的である」という点によってだ。「自閉的でない自閉胡症児はいない」と、小澤はいう。「自閉症とは何か」に記された表現によなるな、「自閉症範疇化のり中核症状は自閉である」ということだ。一見、禅問答のようにもも映るこの指摘を、村瀬は「コロンブスの卵」と評した(第3次「精神医療」1984年)。

しかし、本講演で小澤は、「自閉症の子どもは、けっして自閉的ではない」しいう考えに対しても、賛意を表明している。なぜだろか。その答えは、もはや明らかだろう。一人の子どもが自閉的ととらえられるかどうかは、その子どもを見つめるまなざしによるからだ。つまり、見つめる人と見つめられる人との関係の中で、自閉いう事態が生じるということだ。ここに自閉症という範疇が成けずる根拠があり、また将来、自閉症という概念が消滅するなら、やはりここに根拠があるたろう」。

4.自閉症概念が不要になる時代へ

■言及

◆立岩 真也 20140825 『自閉症連続体の時代』,みすず書房,352p. ISBN-10: 4622078457 ISBN-13: 978-4622078456 3700+ [amazon][kinokuniya] ※

◆立岩 真也 2013/12/10 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,433p. ISBN-10: 4791767446 ISBN-13: 978-4791767441 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

◆立岩 真也 2013 『私的所有論 第2版』,生活書院・文庫版


UP:20130713 REV:20140824
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