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『エスノメソドロジーを学ぶ人のために』

串田 秀也・好井 裕明 編 20100420 世界思想社,315+vp.

last update: 20110330

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■串田 秀也・好井 裕明 編 20100420 『エスノメソドロジーを学ぶ人のために』,世界思想社,315+vp. ISBN-10: 4790714691 ISBN-13: 978-4790714699 \2520 [amazon][kinokuniya] ※ d04 s s01 sm

■内容

・同書の帯より
身近なリアリティから社会学的探求へ
エスノメソドロジーの考え方を,平易な言葉と身近な事例によって説き,その面白さを伝え,読者を社会学的探求へと誘う.初学者のために徹底してわかりやすく編まれた格好の入門書.

■目次

序 エスノメソドロジーへの招待(串田秀也・好井裕明) 1
  1 エスノメソドロジーとは何か 1
  2 エスノメソドロジーと社会学 7
  3 本書の構成 12

 第I部 身近な世界のエスのメソロドジ― 17
第1章 言葉を使うこと(串田秀也) 18
  1 隣接対と発話連鎖の組織化 19
  2 発話の投射と話し手の交替 27
  3 言葉の使い方を知っていること 33

第2章 道具を使うこと――身体・環境・相互行為(西坂仰) 36
  1 達成としての道具の使用 36
  2 道具の規範的構造 37
  3 身体の規範的構造 40
  4 相互行為空間と参加フレーム 44
  5 参加フレームの組織 48
  6 環境に連接する身体 55

第3章 子ども/大人であること(山田富秋) 58
  1 エスノメソドロジーによる子どもの発見 58
  2 質的心理学の挑戦 63
  3 子どもの遊びの意味 68

第4章 女/男であること(好井裕明) 76
  1 あるテレビCMから 76
  2 「女/男であること」を実践する 79
  3 微細なる権力行使として性差別を読み解くこと 83
  4 性別カテゴリー化実践を解読すること 87
  5 いま「女/男であること」を読み解き,考え直す意味 91

 第II部 制度的世界のエスノメソドロジー 95
第5章 メディアに接する(好井裕明) 96
  1 メディアのなかで生きる私たち 96
  2 メディアにおけるトークを解読する 98
  3 携帯電話のコミュニケーション 103
  4 メディアが行使する微細な権力を自覚する 107
  5 メディアのエスノメソドロジーの可能性 113

第6章 学校で過ごす(秋葉昌樹) 116
  1 学校で過ごす経験 116
  2 授業時間を過ごす 116
  3 休み時間を過ごす 122
  4 手がかりとしてのやりとりの分析 130

第7章 病院に行く――医療場面のコミュニケーション分析(樫田美雄) 133
  1 専門分化社会としての現代社会と医療――本章の構成について 133
  2 医療場面のコミュニケーション分析――救急車を呼ぶ 134
  3 医療場面のコミュニケーション分析――医療を受ける 145
  4 今後の学習のために 152

第8章 施設で暮らす(樫田美雄) 154
  1 施設で暮らすということ――ゴッフマンからエスノメソドロジーへ 155
  2 待たせることと待たされること――施設で暮らすことの一断面として 157
  3 今後の学習のために 152

第9章 法律に接する(菅野昌史) 171
  1 専門家の目/素人の目 171
  2 英会話学校へ入学する 172
  3 評議を行う 179
  4 法現象のエスノメソドロジーに向けて 184

 第III部 エスノメソドロジーの視座と方法 187
第10章 ガーフィンケルとエスノメソドロジーの発見(山田富秋) 188
  1 ガーフィンケルのエスノメソドロジーの構想 188
  2 ガーフィンケルのシュッツの改読 190
  3 ガーフィンケルの1948年論文「社会学的に見れば」から 192
  4 意識の学から理念化手続きの経験的研究へ 202

第11章 サックスと会話分析の展開(串田秀也) 205
  1 会話分析の誕生 205
  2 成員カテゴリー化装置 208
  3 相互行為の連鎖分析 213
  4 会話分析の広がり 221

第12章 社会問題とエスノメソドロジー研究(好井裕明) 225
  1 社会問題への感性から始める 225
  2 初期エスノメソドロジーの研究から 228
  3 社会問題研究への影響 237
  4 社会問題のエスノメソドロジーの可能性 240

第13章 社会調査とエスノメソドロジー(南保輔) 242
  1 社会調査とは 242
  2 実証主義と量的社会調査 245
  3 シクレルの測定批判 249
  4 サーヴェイインタヴゥーの批判的検討 253
  5 EMCA研究の示すもの 260

 文献案内 263
ガーフィンケル『エスノメソドロジー研究』(山田富秋) 264
サックス『会話についての講義』(全2巻)(西坂仰) 269
ウィーダー『言語と社会的現実:受刑者コードを語るという事例』(好井裕明) 275
ミーハン『授業を学ぶこと:教室における社会的組織化』(串田秀也) 280
リンチ『科学的実践と日常的行為:エスノメソドロジーと科学の社会的研究』(串田秀也) 284
シェグロフ『相互行為における連鎖組織:会話分析入門1』(串田秀也) 288

参考文献 293
索引 307
執筆者紹介 313

■引用

・科学における〈完全/正確な記述〉の不可能性(串田秀也「サックスと会話分析の展開」より)
科学であろうとするなら,厳密な科学的概念が必要である.たとえば,自殺の研究をするなら,「自殺」の科学的概念が必要である.それは,現実世界の数ある死のなかから,自殺の事例だけを誰がやっても確実に選び出すための教示として役に立つ概念である.この教示がはっきりして初めて,自殺を科学的に抽出し,その科学的研究を始められるはずだ.だが,実際〔中略〕はそういうふうにはしていない.検死官や医師が「自殺」だと記録したのに頼って,その統計をとったりして自殺の研究をしている.検死官や医師のほうはどうかというと,限られた時間のなかで実務上妥当な判定を下すために,その死者の個別事情(年齢は?仕事は?恋人は?等々)や自殺する人が普通やりそうなことについての常識的知識(遺書は?「死にたい」と言っていたか?等々)をそのつど総動員して,自殺判定をするだろう.そうしたなかで1つの死が「自殺」だと判定されるとき,その判定は科学的概念ではなく常識的概念に基づいてなされている.
科学にとって,常識的概念を用いた記述には,記述が決して完成しないという問題がある.たとえば,いまあなたの目の前にある世界でただ1つの物体は「本」と記述できるが,この記述を完全なものにしようと思えば無限につけ足さなくてはならないこと(大きさ,タイトル,ページの汚れ,等々)がある.記述が完全でないとき,その記述を読んで誰でも同じ対象を選び出せるかどうかは不確実である.このことは,社会のなかで生きる人々の実務においては,とくに問題ではない.だいたいの記述さえあれば,実務上の目的にとって困ることはないからだ.自殺判定という実務にとっては,自殺の常識的概念があれば十分である.他方〔中略〕科学にとっては,このことは大問題である.にもかかわらず〔中略〕実際にやっている研究を見ると,実務家とまったく同じく,だいたいの記述で済ませているのだ(205-6; 下線部は原著では傍点).

・科学における数えることの困難(南保輔「社会調査とエスノメソドロジー」より)
通貨という単位が存在する経済学を別とすると,対象とする「もの」そのものに数的な固有特性がある現象は社会科学にはほとんどない〔中略〕数は,文字どおりの測定ではなく「数える」こと,「集計する(aggregate)」ことによって生み出されている.人口調査がその古典的な事例である.ある集落に何人が暮らしているのか.そのうち,男性は何人で女性は何人か.成人は何人で未成年は何人か,などと数えることだ.ただし,この例で気づくように,数えるという「単純明快」な操作と見えるようなものにも,すぐに,意思決定の問題が入ってくる.ある人が「男性」か「女性」か,「成人」か「未成年」かを判断する必要がある.意思決定をして分類しているのだ.総人口を数えるときにはそんな意思決定の余地はないと思われるかもしれない.だが,数えている時点で脳死状態の人がいたとしたらどうだろう.脳死を「人の死」とするならこの人は数えないが,心臓死が「人の死」だとするならば数えることになる(251-2).

■書評・紹介

「串田秀也・好井裕明編 エスノメソドロジーを学ぶ人のために」
[外部リンク]エスノメソドロジー・会話分析研究会HPで全文閲覧可.HTMLファイル)

■言及



*作成:藤原 信行
UP: 20110330 REV:
差別  ◇社会学  ◇  ◇自殺  ◇医療社会学  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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