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『地球圏・生命圏・人間圏――持続的な生存基盤を求めて』

杉原 薫・川井 秀一・河野 泰之・田辺 明生 編著 20100331 京都大学学術出版会,427p.


last update:20100712
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■杉原 薫・川井 秀一・河野 泰之・田辺 明生 編著  20100331 『地球圏・生命圏・人間圏――持続的な生存基盤を求めて』,京都大学学術出版会,427p. ISBN-10:4876989400 ISBN-13:978-4876989409 \4305 [amazon] [kinokuniya] ※

■内容

産業革命以降,温帯地域の諸国は経済成長に力を注ぎ「先進国」となった.新興国・発展途上国はその恩恵に与れない一方,資源の枯渇や地球温暖化の悪影響を被ることになる.生物多様性や生態系の持続性に鑑み,人類の生存基盤をどう構築すべきか.アジア・アフリカ地域研究の偏った認識枠組を質し,新しい社会システムの指針を提示する.

■目次

序 章 持続型生存基盤パラダイムとは何か(杉原 薫)
1 問題の提起
2 地表から生存圏へ
3 生産から生存へ
4 温帯から熱帯へ

第1編 環境・技術・制度の長期ダイナミクス

第1章 グローバル・ヒストリーと複数発展径路(杉原 薫)
1 西洋中心史観の相対化
2 温帯の発展径路?二径路説
 2-1 発展径路とは
 2-2 グローバル・ヒストリーへの適用
 2-3 工業化の二類型
 2-4 二つの径路の融合
 2-5 人的資源集約型発展径路
3 熱帯の発展径路?複数発展径路説
 3-1 分析枠組の再検討
 3-2 環境の包括的把握
 3-3 生命資源の稀少化
 3-4 水と生存
 3-5 生存基盤確保型発展径路
4 生存基盤持続型発展径路

第2章 東アジアモンスーン地域の生存基盤としての持続的農業(田中耕司)
1 東アジアモンスーン地域と「草木深し」
2 東アジアモンスーン地域の農業を支えた自然基盤
 2-1 ユーラシア大陸東縁のグリーンベルト
 2-2 アルプス造山運動と沖積地
 2-3 豊かな一次生産力
3 東アジアモンスーン地域の農業と農法 ?水田農業と多毛作体系に注目して?
 3-1 東アジアの農業様式
 3-2 「水稲が優占する集約的自給的農業」
 3-3 水田の多毛作化?西欧とは異なる農法展開
 3-4 東アジアモンスーン地域の農法展開
4 熱帯における土地利用技術の特徴
 4-1 東アジアモンスーン熱帯の農業の特徴
 4-2 プランテーション農業と小農による樹木作物栽培
5 東アジアモンスーン地域の生存基盤
 5-1 生命圏と人間圏の統合場としての農業
 5-2 生存基盤の持続性のために
第3章 乾燥オアシス地帯における生存基盤とイスラーム・システムの展開(小杉 泰)
1 はじめに
2 イスラーム文明圏の眺望
3 イスラーム文明の「三項連関」論
4 三項連関に立脚して,何が生まれたか
5 生存基盤持続型のイスラーム的システム
6 現代におけるイスラーム復興
7 おわりに

第2編 地球圏・生命圏の中核としての熱帯

第4章 地球圏の駆動力としての熱帯(甲山 治)
1 地球圏の理解に向けて
 1-1 生存基盤としての地球圏
 1-2 地球圏における熱循環と水循環
 1-3 地球圏科学に向けた学融合
2 大気と水の循環のメカニズム
 2-1 南北方向の大気循環と水循環
 2-2 東西方向の大気循環と水循環
3 地球圏からみた熱帯と温帯の違い
 3-1 南北の温度差と偏西風が作り出す温帯の特徴
 3-2 豊富な日射と水蒸気がもたらす熱帯の特徴
 3-3 熱帯降雨観測衛星TRMM を用いた熱帯降水の特徴
4 生命圏および人間圏が水循環系に与える影響
 4-1 陸面が大気・水・熱循環に与える影響
 4-2 モンスーンアジアにおける森林伐採と水循環 4?3 灌漑と都市化
5 新たな「学融合」に向けて

第5章 生存基盤としての生物多様性(神崎 護・山田明徳)
1 生物多様性とは
2 多様性はいかにして形作られてきたのか
3 熱帯の生物多様性
 3-1 フタバガキ科の進化と多様性
 3-2 シロアリの進化と多様性
 3-3 多様性をめぐる二つの対極的な考え方
4 多様性と機能と安定性
 4-1 多様性と生産・分解過程
 4-2 多様性と安定性
5 生存基盤としての多様性
 5-1 資源としての多様性
 5-2 保全のパラダイム

第6章 水の利用からみた熱帯社会の多様性(河野泰之・孫 暁剛・星川圭介)
1 水問題へのアプローチ
2 水の多様性
 2-1 地球の水循環
 2-2 近代土木による水制御
 2-3 熱帯社会の水環境
3 生業の多様性と水利用
 3-1 水を探る
 3-2 水を貯める・使いまわす
 3-3 洪水と生きる
4 持続型生存基盤における水

第3編 森林からの発信 ?バイオマス社会の再構築?

第7章 熱帯林生命圏の創出(川井秀一)
1 人工林は何故必要か?森林再生の重要性
2 何故,熱帯地域か
3 天然林から産業造林の利用へ
4 炭素ストックの動的解析
5 大規模熱帯造林地の森林バイオマスの推定と評価
6 森林・木材の炭素貯蔵機能
7 持続性の検証と評価 ?森林バイオマス生産の持続性構築に向けて?

第8章 大規模プランテーションと生物多様性保全 ?ランドスケープ管理の可能性?(藤田素子)
1 なぜ,プランテーションか
2 熱帯の土地利用変化と生物多様性
3 温帯地域における生態系管理
4 スマトラ島アカシア植林地での鳥類多様性
5 植林地における生物多様性の保全にむけて

第9章 歴史のなかのバイオマス社会 ?熱帯流域社会の弾性と位相転移?(石川 登)
1 なぜ,バイオマス社会に着目するか
2 バイオマス社会の歴史的展開
3 バイオマス社会の弾性
4 バイオマス社会の位相転移

第10章 産業構造の大転換 ?バイオリファイナリーの衝撃?(渡辺隆司)
1 問題の所在とその背景
2 バイオリファイナリーが社会・経済・環境に及ぼす影響
 2-1 バイオマスのエネルギーポテンシャル
 2-2 バイオマスの温暖化ガス削減効果
 2-3 バイオリファイナリーによる新産業の創成
 2-4 バイオリファイナリーによる既存産業構造の改編
 2-5 バイオリファイナリーによる地域社会の活性化
 2-6 エネルギー安全保障への貢献
3 バイオリファイナリーに必要な技術革新
 3-1 バイオディーゼルの製造
 3-2 糖の発酵によるバイオエタノールやバイオ化学品の製造
 3-3 バイオリファイナリーのための微生物の改変と利用
 3-4 微生物変換と熱化学変換の統合バイオリファイナリー
4 バイオリファイナリーを基盤とした持続的社会の構築に向けて

第4 編 人間圏の再構築

第11章 グローバル化時代の地域ネットワークの再編 ?遠隔地環境主義の可能性?(清水 展)
1 地球と地域
2 有限の地球
 2-1 宇宙船地球号
 2-2 共有地の悲劇,あるいは成長の限界
 2-3 暗い未来に抗して
3 グローバル化と地域社会
 3-1 グローバル化の進展
 3-2 北部ルソン山奥村の変容
4 「グローカル」な生活世界
5 遠隔地環境主義

第12章 われわれの〈つながり〉 ?都市震災を通じた人間圏から生存基盤への再編成?(木村周平)
1 〈つながり〉としての生存基盤
 1-1 生存基盤とは
 1-2 生存基盤とそれを脅かすもの ?自然災害?
 1-3 イスタンブル?ローカルな生存基盤
2 ローカルとグローバルの往復運動
 2-1 地震の知識のネットワーク
 2-2 〈つながり〉の変容 ?科学・政策・社会?
 2-3 イスタンブルの脆弱性
3 コジャエリ地震
 3-1 被災と人びとのつながりの顕在化
 3-2 つながりの再編?暗い将来へ?
4 新たな〈つながり〉へ
 4-1 住民防災チーム
 4-2 イスタンブル,未来の地震と“われわれ”
 4-3 〈つながり〉の拡大
5 人間圏から生存基盤へ

第13章 生存基盤の思想 ?連鎖的生命と行為主体性?(田辺明生)
1 人間圏の再構築の必要性
2 歴史のなかの人間圏?その構造変動
 2-1 神話的世界から宗教的世界へ
 2-2 科学的世界から持続型生存基盤へ
3 生存基盤という思想?生の作法へ
 3-1 「生のかたち」を支える生存基盤
 3-2 自己と環境の相互作用としての生命
 3-3 政治と生態の融合?法的主体から生命的行為主体へ 3?4 合理主義と調和論の対立を超えて
4 人間の生を支えるもの ?いのちのつながり?
 4-1 いのちの営み
 4-2 個体的生命と連鎖的生命
 4-3 インドの宇宙観と人間観 ?連鎖するいのち?
 4-4 いのちの価値?生と死の場としての生存圏
5 地域の潜在力?生存の技法と技術
 5-1 多元的な発展径路
 5-2 インド型発展径路とカースト
 5-3 社会と自然のネットワーク
 5-4 生存学へ
6 持続型生存基盤の構築のために

終 章 生存基盤指数からみる世界(佐藤孝宏・和田泰三)
1 生存基盤指数の目指すもの
2 平均寿命指数から障害調整健康余命へ
3 教育関連指数の発展
4 経済活動を通じた人間と「環境」の関わり
 4-1 地球圏と生命圏
 4-2 生命圏の持つ潜在力と実際の生物生産力
 4-3 実際の生物生産力とエコロジカル・フットプリント ?再生可能資源の利用?
 4-4 望ましいエネルギー消費水準とは ?枯渇性資源の利用?
5 生存基盤指数のさらなる発展に向けて

あとがき
索引

■著者紹介(執筆順)
田中 耕司(たなか こうじ)第2章
 京都大学地域研究統合情報センター教授・センター長.農学博士.
 専攻:東南アジア地域研究(熱帯環境利用論).
小杉  泰(こすぎ やすし)第3章
 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授(イスラーム世界論担当・同附属イスラーム地域研究センター長).
 専攻:イスラーム学,中東地域研究,比較政治学,国際関係学.
甲山  治(こうざん おさむ)第4章
 京都大学東南アジア研究所准教授.博士(工学).
 専攻:水文学,大気陸面相互作用.
神崎  護(かんざき まもる)第5章
 京都大学大学院農学研究科准教授.理学博士.
 専攻:熱帯林生態学.
山田 明徳(やまだ あきのり)第5章
 京都大学大学院農学研究科日本学術振興会特別研究員,博士(理学).
 専攻:生態学.
孫  暁剛(SUN Xiaogang)第6章
 筑波大学生命環境科学研究科助教.修士(環境科学),博士(地域研究).
 専攻:生態人類学,アフリカ地域研究.
星川 圭介(ほしかわ けいすけ)第6章
 京都大学地域研究統合情報センター助教.博士(農学).
 専攻:地域情報学,農業土木学.
藤田 素子(ふじた もとこ)第8章
 京都大学東南アジア研究所特定研究員(グローバルCOE).
 専攻:鳥類生態学,景観生態学,物質循環.
石川  登(いしかわ のぼる)第9章
 京都大学東南アジア研究所准教授,ニューヨーク市立大学大学院 Ph.D.(Anthropology).
 専攻:文化人類学,東南アジア地域研究.
渡辺 隆司(わたなべ たかし)第10章
 京都大学生存園研究所教授.博士(農学).
 専攻:バイオマス変換,担子菌によるリグニン分解の分子機構の解析.
清水  展(しみず ひろむ)第11章
 京都大学東南アジア研究所教授.
 専攻:文化人類学・東南アジア研究.
木村 周平(きむら しゅうへい)第12章
 京都大学東南アジア研究所特定助教(グローバルCOE).
 専攻:文化人類学,科学技術社会論.
佐藤 孝宏(さとう たかひろ)終章
 京都大学東南アジア研究所特定助教(グローバルCOE).
 専攻:熱帯農業生態学.
和田 泰三(わだ たいぞう)終章
 京都大学東南アジア研究所特定研究員(グローバルCOE)


■書評・紹介

■言及



*作成:三野 宏治 
UP:20100712 REV:
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