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『いてほしい――眼で書かれた詩歌集』

岡本 美代子,朝西 真沙 編 20091128 綜合印刷出版,125p.

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last update:20170124

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■岡本 美代子,朝西 真沙 編 20091128 『いてほしい――眼で書かれた詩歌集』,綜合印刷出版,125p. ISBN-10: 499032353X ISBN-13: 978-4990323530 [amazon][kinokuniya] ※ als, n02, hsm

■内容

著者略歴

1928年鳥取生まれ。鳥取高等女学校卒業後、定年まで県庁勤務。20代より詩作を始め、以降俳句、随筆とその世界を広げる。2008年ALS(筋萎縮性側索硬化症)の過程で他界。短歌を始めたのはその1年前である。
著書に詩集『ナオちゃん葵が咲いたよ』『美奈と花の詩手帖』、随筆集『べんべん蟹』がある。「鳥取文芸」受賞多数。

■目次

■引用

 「平成十九年七月、母は鳥取から娘の住む滋賀の病院へ移った。骨髄性とみられる体の麻痩の進行を手術によって少しでも食い止められないかと期待を寄せた転院だったが、そこで下された診断が、ALS(筋委縮性側索硬化症)、原因も不明ならば治療法もない、十万人に一人という難病だった。体中の筋肉が動かなくなる、手も足も、更に喋るカも食べるカも、そしてついには呼吸する筋力さえも失われて死に至る、そんな病気である。・「急速な進行です。早くて一力月。ニ、三力月の余命と覚悟して頂いてよろしいかと」死の宣告に等しかった。」(p.127、朝西「あとがき」)

「『よく年を越したと息子挨拶し』
 平成二十年元旦の母の句である。「いよいよ正岡子規の境地だな」私は笑った。子規が母の言菓をそのまま句にしたといわれる『毎年よ彼岸の入に寒いのは』を思い出したのである
 この年、十一月二十八日を迎えるまで、母の病状は比較的安定していた。その分周囲の環境は悪化していった。三力月ごとに迫られる転院勧告、受け入れ病院の及び腰、妹の心身ともの疲労、現代医療制度の歪みは催是に我々家族を襲っていた。解決したいと思う問題のひとつひとつが、その度に、眼の前でひとつひとつ潰されていった。看護介護に集中したいと思っても、その度に立ち塞がるのが制度、組織の壁であった。
午前一時の突然の電話、早朝一番の新幹線、田舎道のタクシー、病院の強すぎる冷房、異郷の葬儀、様々な書類、手続き、感情を表す間もない時間が、あわただしく過ぎた。翌年三月彼岸、遅ればせの納骨、鳥取の知人達とのささやかな偲ぶ会。その前後日を山陰地方特有の荒天に挟まれた、不思議なほど穏やかな一日であった。母は逝った。」
*2016/11立岩、口分田氏(びわこ学園)からいただく

■書評・紹介

■言及



*作成:岩ア 弘泰
UP:20170124 REV:
筋萎縮性側索硬化症(ALS)  ◇「難病 Nambyo」  ◇病者障害者運動史研究 身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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