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『生活保障――排除しない社会へ』
宮本 太郎 20091120 岩波書店,xiii+228+6p.
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宮本 太郎
20091120 『生活保障――排除しない社会へ』,岩波書店,xiii+228+6p. ISBN-10: 4004312167 ISBN-13: 978-4004312161 ¥ 840
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■広告(「BOOK」データベースより)
不安定な雇用、機能不全に陥った社会保障。今、生活の不安を取り除くための「生活保障」の再構築が求められている。日本社会の状況を振り返るとともに、北欧の福祉国家の意義と限界を考察。ベーシックインカムなどの諸議論にも触れながら、雇用と社会保障の望ましい連携のあり方を示し、人々を包み込む新しい社会像を打ち出す。
■目次
はじめに―生活保障とは何か
生活不安と政権交代/生活保障とは何か/求められるビジョン/本書の構成
第一章 断層の拡がり、連帯の困難
1 分断社会の出現
社会的断層の拡がり/働いている世帯でも大きな貧困率/社会保障が排除を固定化する/「生きる場」の喪失/
2 連帯の困難
なぜ舵を切れないのか/日本とスウェーデンの社会的信頼/不信の構造/「引き下げデモクラシー」
3 ポスト新自由主義のビジョン
構造改革以後の政治/セーフティーネットから生活保護へ/「社会契約」としての生活保障/
第二章 日本型生活保障とその解体
1 日本型生活保障とは何だったか
日本型生活保障の特質/二〇世紀型福祉国家の仕組み/日本が変化にとくに弱かった理由/
2 日本型生活保障の解体
雇用と家族の変容/「新しい社会的リスク」/解体の進行/剥き出しでリスクに晒される非正規層/
3 「生きる場」の喪失
秋葉原事件再考/「濃い」時代から「薄い」時代へ/再分配・承認・社会的包摂/つながりを再構築する
第三章 スウェーデン型生活保障のゆくえ
1 生活保障をめぐる様々な経験
多様な福祉国家/社会保障のかたち/雇用保障のかたち/生活保障の類型/
2 スウェーデンの生活保障
三つのスウェーデン論/雇用保障の仕組み/スウェーデン型雇用保障への道/デンマークモデルとの相違/働きながら学ぶ支援/福祉国家と働くインセンティブ/福祉国家と家族の情/
3 転機のスウェーデン型生活保障
雇用なき成長へ/保守党の政策転換と政権交代/「スウェーデンモデルの再構築」/労働運動からの新しい提起
第四章 新しい生活保障とアクティベーション
1 雇用と社会保障
生活保障再生への四つの条件/雇用と社会保障――切り離しか連結強化か
2 ベーシックインカムの可能性
ベーシックインカムという考え方/定期給付か一括給付か/条件型のベーシックインカム((1)期間限定(2)所得制限(3)社会参加)/新自由主義者がベーシックインカムを掲げる時/ベーシックインカムの政治的困難
3 アクティベーションへ
雇用と社会保障の新しい連携/四つの政策領域の関連/I 参加支援/II 働く見返りの強化/賃金と所得による見返り強化/働く組織による見返り強化/III 持続的雇用の創出/ケインズ主義の復権?/雇用創出の新しい動向/IV 雇用労働の時間短縮と一時休職/社会的亀裂を超える生活保障へ
第五章 排除しない社会のかたち
1 「交差点型」社会
四本の橋による参加支援/@学ぶことと働くこと/A家族と雇用をどうつなぐか/B積極的労働市場政策/C身体とこころの弱まりへの対応
2 排除しない社会のガバナンス
誰が橋を架けるのか/「生き難さ」に取り組む社会的企業/新自由主義的民営化との違い/新しい役割分担と分権化/利用者民主主義へ
3 社会契約としての生活保障
参加支援のための生活保護/社会契約としての年金/負担をめぐるジレンマ/求められる信頼醸成
おわりに―排除しない社会へ
再び日本の現状について/日本社会という出発点
あとがき
参考文献
■引用
「「仕切られた生活保障」が形成され、人々の行政不信が抜きがたいまでに高まった背景には、日本の左派やリベラルの議論のあり方も影響していた。日本の左派やリベラルは、憲法二五条の理念を掲げ、人間らしく生きる権利を強く主張し続けてきた。そのこと自体はもちろん大事なことであった。だがその一方で、こうした権利を保障する政府のあり方、福祉国家の構想をほとんど示さなかったのである。
それどころか、広範な権利保障を主張する陣営にかぎって、国家権力の縮小を求める傾向が強かった。そして、福祉国家の理念すら、大きな権力の本質を覆い隠す方便として拒絶してきたのである。」(p34)
「マレイは、二一歳以上のすべてのアメリカ人に年に一万ドルのベーシックインカムを給付することを提案する。この場合も増税はせずに、既存の社会保障と福祉の制度を全廃することで財源を調達する。・・・。ただし公教育は廃止の対象とならない。 一万ドルの給付には、給付以外の自己所得(世帯収入ではなく)が二万五〇〇〇ドルを超えた段階から課税され、最高税率は自己収入五万ドルで五〇%となり、ここから給付額は五〇〇〇ドルとなる。マレイは人口動態などをふまえてこのベーシックインカム導入時と現行の社会保障のコストを比較計算し、二〇一一年以降はこのベーシックインカムのほうが財政コストを抑制できると予測するのである。
・・・>>139>>・・・>>140>>・・・
だが、よく考えてみれば自明であるが、それぞれの議論が妥当するかしないかは、ベーシックインカムがどれほどの水準で給付されるかによっている。自己所得を補完するパーシャルな、つまりごく低額のベーシックインカムであれば、確かに財源の確保は可能であろうし、就労意欲を損なうこともないかもしれない。そのことは、マレイのようなラディカルな新自由主義者(あるいは経済リバタリアン)がベーシックインカムを掲げていることからも明らかである。マレイの提案は、むしろアメリカの社会保障支出の抑制を狙ったものなのである。
・・・
また、低い水準で導入されたベーシックインカムに対しては、給付をさらに押し下げようとする圧力が生じかねない。税による最低所得保障に対しては、その保障に与ることのない中間層>>141>>の納税者がしばしば反発を強め、給付条件の厳格化や税負担の引き下げを求めるのである。これがアメリカで一九七〇年代の半ばから拡がった「納税者の反乱」であった。
アメリカで起きた福祉反動は、選別主義的な公的扶助に対するものであり、これに対してベーシックインカムは、中間層にも給付される。したがって納税者の反乱は起きないのではないかという見方もあろう。しかし中間層が、たとえば年額五〇〇〇ドルのベーシックインカムを、税負担に十分に見合ったものと考えるかどうかは疑問である。」(139-42)
■紹介・言及
◆立岩 真也・村上 潔 20111205
『家族性分業論前哨』
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生活書院,360p. ISBN-10: 4903690865 ISBN-13: 978-4903690865 2200+110
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※ w02,f04 *2割引でお送りいたします。
作成:
小林勇人
UP:20100128 REV:0204, 20120222
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宮本 太郎
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