『新・カムイ伝のすすめ――部落史の視点から』
中尾 健次 20090920 解放出版社,294p.
last update: 20190107
■中尾 健次 20090920 『新・カムイ伝のすすめ――部落史の視点から』,解放出版社,294p.ISBN-10: 4759251359 ISBN-13: 978-4759251357 1800+
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■内容
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『カムイ伝』が描く壮大な世界を読み解く!!/学生運動が高揚した1960年代、白土三平による『カムイ伝』の連載が始まった。『カムイ伝』は、武士や庄屋などの支配階級との闘いを通して、非人をはじめ下人、農民など社会の下層に置かれた人びとの、力強い生き様をリアルに描く。その1コマ1コマにはさまざまな意味があり、読めば読むほど味わい深い作品である。
本書は『カムイ伝』を特に部落史の視点から見つめ直したもの。作品中にあらわれる部落史と関連する点について、単にその批判をするのではない。視角に訴える貴重な資料としての価値、また作品全体を貫く思想を再評価する。
旧版である『カムイ伝のすゝめ』では語り尽くせなかった「部落史とカムイ伝」(本書、第三部)を全面改稿し、図版は旧版の10倍以上を掲載。
旧版発行から12年―この間の研究成果をふまえて、近世部落史研究の第一人者である筆者が『カムイ伝』を読み解く。
著者について
中尾 健次(なかお・けんじ)
一九五〇年、大阪生まれ。
大阪教育大学教職教育研究開発センター教授。
〈主な著書〉
『江戸社会と弾左衛門』一九九二年
『部落史をどう教えるか』(共著)一九九三年
『弾左衛門――大江戸もう一つの社会』一九九四年
『同和教育への招待』(共著)二〇〇〇年
『部落史50話』二〇〇三年
『映画で学ぶ被差別の歴史』二〇〇六年
『絵本 もうひとつの日本の歴史』(文)二〇〇七年 いずれも解放出版社
『江戸の弾左衛門』一九九六年
『江戸時代の差別観念』一九九七年
『江戸の大道芸人』一九九八年 いずれも三一書房
■目次
- 第一部『カムイ伝』概論
- 第一章『カムイ伝』はなにを描こうとしたか?
- 最初のプラン―シャクシャイン叛乱/非人の子カムイと白オオカミ/差別問題は?/連載の開始に当たっての長井と白土/やはり差別問題をモチーフに/白土の政治評論とその立場
- 第二章『カムイ伝』の舞台―日置藩はどこにある?
- 最初は東北だった日置藩?/海に面して京都所司代の管轄下/和泉と紀州の境にある小藩?
- 第三章『カムイ伝』の差別論
- 〈近世政治起源説〉に基づいた差別論/白いゆえの差別/オオカミの世界と人間の世界/〈差別〉の論理/差別・被差別を超えた真の連帯とは?
- 第四章 日置藩の秘密とは?
- 〈日置藩の秘密〉/幕府のかげ/その秘密はカメに?/カムイがつかむ〈日置藩の秘密〉/あきらかとなった〈日置藩の秘密〉/松平伊豆守の〈陰謀〉/「徳川家康賤民説」について
- 第二部『カムイ伝』の人物論
- 第一章「正助伝」
- 正助と一九六〇年代/〈民主的知識人〉としての正助/〈偏見は損をする〉/正助の〈個人主義的立身出世〉/ナナと正助/正助を支える百姓と非人/ついに決起する?正助/合理主義は差別を超える/非人による農業手伝い/ふたたびナナと正助/正助の自己変革とはじめての挫折/非人と百姓の身分をなくすために/非人に対する農耕の禁止/大規模な逃散計画
- 第二章「苔丸(スダレ)伝」
- 玉手騒動のリーダー・苔丸/スダレの被差別体験/竜之進と一角の場合/スダレの解放論/生きつづける苔丸(スダレ)
- 第三章 個人の解放と挫折、そして死
- 1 赤目―自己解放とその挫折
天才忍者・赤目/牢屋敷の民主化運動/金の亡者・七兵衛との出会い/赤目の〈死〉
- 2 水無月右近―挫折したニヒリズム
〈剣〉への疑問/かなわぬ恋・アテナへの思い
- 3 左卜伝の実存主義
海と人と船/生きる延長にある〈死〉
- 第三部 部落史と『カムイ伝』
- 第一章 近世の身分制度とかかわって
- 意図的に「エタ」の語を避けた?/「エタ」「非人」は近世でも差別的な語だった/『カムイ伝』に登場する「エタ」の語/「非人独自の社会」?
- 第二章 弾左衛門支配について
- 『カムイ伝』にあらわれた弾左衛門/〈頭支配〉と〈頭村支配〉/非人頭車善七/弾左衛門支配の拡大/弾左衛門の〈相当仕置き〉について/乞胸と願人/乞胸の由来と仁太夫のこと
- 第三章 被差別民の仕事について
- 「差別と貧困」の部落史/「生産の労働」の部落史へ/『カムイ伝』における「草場」/実際の皮革生産を見る/「才蔵市」と乞胸/乞胸の生業は「十二種」/香具師の稼業について/乞胸と香具師の争論/天才芸人・松川鶴市
- 第四章 被差別民の役負担
- 『カムイ伝』に描かれた「死罪」/「市中引き回し」と「三日ざらし」/刑罰の人足に見られる地域差/大坂の長吏組織/大坂町奉行と「垣外」/「風聞探索」について/黒田数馬脱獄の一件/情報探索の実際
- 第五章 『カムイ伝』と部落史学習
- 視覚教材としての『カムイ伝』/社会科教科書にあらわれた部落史像/『カムイ伝』に描かれた百姓一揆/元禄時代のあらたな動き/野鍛冶に対す
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:安田 智博 更新:岩ア 弘泰