『新たなる排除にどう立ち向かうか――ソーシャル・インクルージョンの可能性と課題』
森田 洋司 監編/矢島 正見・進藤 雄三・神原 文子 編 20090930 学文社,280p.
■森田 洋司 監編/矢島 正見・進藤 雄三 ・神原 文子 編 20090930 『新たなる排除にどう立ち向かうか――ソーシャル・インクルージョンの可能性と課題』,学文社,280p. ISBN-10: 4762016039 ISBN-13: 978-4762016035 \3150 [amazon]/[kinokuniya] ※
■内容
私たちが失ったものは何か。
今、そして、これから向き合うべき問題は何か。
社会の基層から噴出する構造の「ひずみ」と人びとの「叫び」、私たちは、このことにどう迫るのか。
今、求められるのは、現代社会の基底に横たわる社会問題の実相を抉り取り、新しいパラダイムの構築へと向かうこと。
生きるとは何か、豊かさとは何か。
時代をリードする研究者たちが社会問題の最前線に挑む。
■目次
第I部 理論編「社会的排除/ソーシャル・インクルージョン」とは何か
第1章 ソーシャル・インクルージョン概念の可能性
1 はじめに
2 社会的排除と社会的包括をめぐるEUの状況
3 「私事化」の動向とリスクヘッジの個人化
4 社会的排除という考え方
5 ソーシャル・インクルージョンという考え方
第2章 ソーシャル・エクスクルージョン/インクルージョンの有効性と課題
1 はじめに
2 背景――「二極化社会」と福祉国家の失敗
3 ソーシャル・エクスクルージョン/インクルージョン論の枠組み
4 ソーシャル・エクスクルージョン概念の特徴?貧困とはどう違うのか
5 SEの実証研究とその指標
6 SE/SI論への批判
7 おわりに――日本へのインパクト
第3章 「公共」から「交響」へ――生存の可能性に向けて
1 はじめに――問題意識
2 公共性をどうとらえるか
3 現代社会と公共性
4 公共から交響へ
第4章 若年層の貧困化と社会的排除
1 はじめに
2 グローバル化のなかの若者の二極化
1) 労働市場と家族の不安定化
2) リスクに直面する若者の増加
3 欧州連合 (EU) における社会的排除への取り組み
1) 成人期への移行に対する社会政策
2) 若年失業者に対する取り組み
3) 包括的支援サービスという手法
4) 社会的排除としての失業・不就労
5) 不安定な移行途上にある若者の把握
4 福祉国家 対 社会的包摂政策
1) 若者にとってのリスク構造
2) 若者の社会的排除と家族
3) 社会的包摂という戦略
4) 雇用を通した福祉
5 日本における若者自立心政策のタイプ
第II部 応用編 I 社会的排除の諸相
第5章 若年労働市場における二重の排除――〈現実〉と〈言説〉
1 日本的な「排除型社会」
2 若年労働市場における〈現実〉面での排除
3 若年労働市場における〈言説〉面での排除
4 二重の排除の背景
5 二重の排除を超えるために
第6章 ホームレス「問題」の過去と現在――「包摂-排除」論をこえて
1 はじめに排除があった
2 私たちの「幸福」のために
3 「亡霊登場」
4 寄せ場もまた「人の生きていく場所」であったのだが
5 寄せ場が都市の全域に広がった
6 排除の終わり
7 「現実の砂漠へようこそ」
第7章 ひとり親家族と社会的排除
1 はじめに
2 わが国のひとり親家族の実態
1) ひとり親家族の生活困窮化と福祉施策
2) ひとり親家族の親と子どもの生活実態と支援策
3 ひとり親家族の多くはなぜ貧困なのか? ――とりわけ、母子家族に焦点をあてて
1) ひとり親家族の貧困要因を探る
2) 母子家族母親の就業移動
4 社会的排除問題としてのひとり親家族をとらえるとは?
1) 社会的排除排除とは?
2) 社会的排除のモデル
5 ひとり親家族の社会的包摂に向けて
第8章 同性愛と排除
1 はじめに
2 セクシュアリティの重層的とセクシュアル・アイデンティティ
1) 性自任
2) 性欲望
3) 性指向と性嗜好
4) セクシュアリティの重層性とセクシュアル・アイデンティティ
3 同性愛者への排除と同性愛者の対応
1) 異常の自覚化と自己嫌悪
2) 隠す、籠る、打ち明ける
3) さまざまな誤解と排除
4) 同性愛コミュニティのなかでの排除と寛容性
5) パートナー関係
4 まとめ
1) まとめ
2) クイアから変態へ
第9章 医療における排除?後期高齢者医療制度を事例として
1 問題設定
2 社会的排除/包摂論と後期高齢者医療制度
1) 医療における排除:健康格差論と社会資本概念
2) 医療制度における高齢者の位置:社会的入院という歴史的経緯
3) 排除論と高齢者
3 後期高齢者医療制度の概要
1) 法的根拠と制度改革の骨子
2) 医療費適正化計画と病床削減
4 社会的排除論からみた後期高齢者医療制度
1) 独立保険という点について
2) 受け皿対策なき病床削減
3) 「適正化」理論の優先のケース
5 結語
第10章 障害児・者に対する社会的排除とソーシャル・インクルージョンをどうとらえるのか?
1 問題提起
2 障害者への隔離・分断による社会的排除から、ソーシャル・インクルージョンへの展開をどうとらえるのか?
1) セグリゲーション(分離)の段階からインテグレーション(統合)の段階
2) メインストリーミングからインテグレーションの段階へ
3) インクルージブ教育とは
4) インクルージブ教育からソーシャル・インクルージョンへ
第III部 応用編 II 地域の排除と再生
第11章 「社会的経済」の担い手による「社会的排除との闘い」の展開と課題――イタリアの社会的協同組合の歩みと岐路を題材に
1 はじめに
2 イタリアにおける排除の内実
3 「排除」との闘いをめぐる政策的対応の特徴と課題
1) EUにおける「社会的排除との闘い」の課題
2) イタリアにおける「排除との闘い」の特徴
3) 事例に見るイタリアの「社会的排除との闘い」の特徴
4 小括――イタリアにおける社会的協同組合の機能と課題
第12章 共に生きる地域社会をめざして――地域を耕す更生保護の諸活動
1 よりよく生活する上で重要なネットワークから零れ落ちてしまうしまう人びとついて
2 更生保護の概要
3 「更生保護のあり方を考える有識者会議」と更生保護法の成立
4 更生保護の新しい施策
5 社会内処遇としての更生保護
6 「更生保護ケアマネージメント」への提言
7 更生保護と福祉との連携――社会福祉士・精神保健福祉士として思うこと
第13章 バリアフリー・ツーリズムの手法による地域再生
1 はじめに
2 バリアフリー・ツーリズムの実践とソーシャルキャピタルの形成
1) バリアフリー・ツーリズムと地域社会の「生活論理」
2) NPO法人伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの活動
3) ソーシャル・キャピタルの形成
3 地域の相対化の論理
1) マイナー・サブシステンスと地域の主体性
2) おわりに――生活の論理の多元的重層性の解明に向けて
第14章 山村集落の過疎化と山村環境保全の試み――「棚田オーナー」制度を事例に、社会的排除論との接点を探りつつ
1 はじめに
2 「棚田オーナー」制度
3 集落過疎化
4 棚田オーナー制度を担う人びと (1) ――「Mいしがき棚田会」農家
5 棚田オーナー制度を担う人びと (2) ――棚田オーナー(都市住民)
6 「棚田オーナー」制度の意義と困難
7 都市農山村交流への期待と現実
8 社会的排除(包摂)研究と農山村問題研究の交差をめぐって
9 むすびにかえて
索引
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:三野 宏治