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『路面電車を守った労働組合――私鉄広電支部・小原保行と労働者群像』

河西 宏祐 20090525 平原社,309p.

last update:20110520

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■河西 宏祐 20090525 『路面電車を守った労働組合――私鉄広電支部・小原保行と労働者群像』,平原社,309p. ISBN-10: 4938391465 ISBN-13: 978-4938391461 2000+税 [amazon][kinokuniya] ※ w0107 w0120

■内容

◆帯見出し
「職場を守り、雇用を確保する
 全契約社員の正社員化を実現」

◆内容(「BOOK」データベースより)
差別反対、労働条件の改善、路面電車の機能を高める運動、働き度を高める運動など、あたりまえの活動を地道につづけ、分裂少数派組合から多数派へと発展した労働組合の記録。

◆著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
河西 宏祐
1942年兵庫県に生まれる。現在、早稲田大学人間科学学術院教授。文学博士(名古屋大学)。専攻、社会学(経営・職業・労働)。著書、『電産の興亡 (1946年~1956年)』早稲田大学出版部2007年(第14回社会政策学会賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

■目次

第1章 比和町のゴンさん
第2章 広島電鉄に入社(バス車掌時代)
第3章 冷や飯食い(職場活動家時代)
第4章 ゼロの闘い(少数派組合の書記長時代)
第5章 争議屋(私鉄総連中央執行委員時代)
第6章 正規戦の先鋒(副委員長時代)
第7章 路面電車を守る闘い(委員長時代1)
第8章 多数派から統一へ(委員長時代2)
第9章 「組織者・小原保行」という組合運動家
第10章 新広電支部の混迷と再生

■引用


■書評・紹介

◆紹介文:村上 潔
 「広島はその歴史の古さ、走行範囲の広さからいって、わが国で最も路面電車の発達した街である。[……]だが、この路面電車をこんにちまで残した最大の功労者は労働組合だった、という事実を知る人は、それほど多くはなかろう」(p.303)。
 本書は、「約一〇〇〇人の組合員の雇用を守り、家族ぐるみの生活を守るために、そして市民の足を守るために」(p.304)路面電車を存続させてきた労働組合、私鉄中国地方労働組合広島電鉄支部(略称:広電支部)の模索の軌跡を、元委員長・小原保行氏に焦点を当てて描き出したものである。
 広電支部は、早くから契約社員の待遇改善に取り組み、「契約社員の発足と同時にユニオンショップ制によって全契約社員を組合員にしたうえで、毎年の春闘において正社員と同率の臨時給を獲得したり、採用後三年経てば希望者全員を正社員にしたりと」(p.304)いう、きわめて珍しい先鋭的な試みを実践してきた。そして、「二〇〇九年の春闘では、正社員と契約社員の賃金体系を一本化し、契約社員全員を正社員にすることに成功した」(pp.304-305)のである。
 こうして広く世間に知られることとなった広電支部だが、本書はそのキーマン、小原保行氏の人間味あふれる「生きざま」が本当にいきいきと描かれていて、ぐいぐい引き込まれる。彼個人の魅力に感歎するのはもちろんだが、なにより希望がもてるのは、そのリーダーが退いたあとも、「後継者たちの血のにじむような努力によって」(p.286)成果を出し続けていることである。2003年の支部大会での佐古正明委員長の言葉がすばらしい。「労働運動は今年だけ、あるいは来年だけで終わるのではない。労働者が存在するかぎり、未来永劫にわたってつづいていく。今年ひとつ失っても、来年またひとつを失っても、いつかは取り戻せる。未来永劫につづく労働運動のなかで、労働者は必ず取り戻してみせる」(p.286)。ほんとうに闘う労働組合が、日本にもある。そう気づかせてくれる一冊。

■言及



*作成:村上 潔
UP: 20100715 REV: 20110520
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