『「戦争体験」の戦後史――世代・教養・イデオロギー』
福間 良明 20090325 中央公論新社,286p.
last update:20111129
■福間 良明 20090325 『「戦争体験」の戦後史――世代・教養・イデオロギー』,中央公論新社,286p. ISBN-10:4121019903 ISBN-13:978-4121019905 \882 [amazon]/[kinokuniya] ※ o01 o01h
■内容
内容(「BOOK」データベースより)
アジア・太平洋戦争下、三〇〇万人以上犠牲者を出した日本。この「戦争体験」は、悲劇として語られ、現在では反戦・平和と結びつくことが多い。だが、戦後六〇年のなかでそれは、実は様々な形で語られてきていた。本書は、学徒兵たちへの評価を中心に、「戦争体験」が、世代・教養・イデオロギーの違いによって、どのように記憶され、語られ、利用されてきたかを辿り、あの戦争に対する日本人の複雑な思いの変遷をみる。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
福間 良明
1969(昭和44)年熊本県生まれ。92年同志社大学文学部卒業、出版社勤務ののち、2003年京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。香川大学経済学部准教授を経て、2008年より立命館大学産業社会学部准教授。専攻は歴史社会学・メディア史。著書『「反戦」のメディア史―戦後日本における世論と輿論の拮抗』(世界思想社、2006年、内川芳美記念マス・コミュニケーション学会賞受賞)、論文「ラフカディオ・ハーン研究言説における『西洋』『日本』『辺境』の表象とナショナリティ」(『社会学評論』210号、2002年、日本社会学会奨励賞受賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
■目次
はじめに
プロローグ
第1章 死者への共感と反感――一九四五〜五八年
T 遺稿集のベストセラー
『はるかなる山河に』
屍と悔恨
『きけわだつみのこえ』
戦争賛美への自省
遺稿集の映画化
冷戦激化と再軍備
平和問題談話会と講和問題
U 戦没学徒の国民化――教養への憧憬
ベストセラー化の逆説と順節
内省的教養主義
マルクス主義という教養
事変後の学生
退潮と復興
教養への憧憬と「反戦」
庶民的教養と人生雑誌
V 戦没学徒への反感
年長者からの批判
同世代からの批判
批判という共感
神話への違和感
『雲ながるる果てに』
W 反戦運動の隆盛
わだつみ会の設立
高校への拡がり
共産党の影響
柳田謙十郎
庶民的教養との接点
反戦運動への共感
記憶の操作
X 反戦とファシズムの類似性――学生運動批判
学生運動批判と教養主義
反戦学生と青年将校
教養の暴力
自由主義から保守主義へ
『世界』から『心』へ
転覆戦略
「わだつみ」の停滞
第2章 政治の喧噪、語りがたい記憶――一九五九〜六八年
T 六〇年安保と「戦争体験」の距離
政治主義への嫌悪感
反戦運動との距離
戦中派の誕生
戦争への「誠実さ」
戦前派と教養への不快感
語りがたさへの固執
「無意味な死」の直視
六〇年安保闘争
「臆病者に甘んずる勇気」
死の無意味さから怒りへ
U 農民兵士たちの心情
「わだつみ」の再刊
「カッパ」の庶民的教養主義
中間文化時代
再刊『きけわだつみのこえ』の意味
『戦没農民兵士の手紙』
懐疑の欠如
農民への共感
知識人の優越感
農民兵士の戦争責任
安田武の農民兵士批判
学徒兵への不当な寛容さ
V 「戦争体験」への拒否感――戦中派の孤立
コミュニケーションの断絶
執着と嫌悪
「教養」としての戦争体験
政治への流用
「被害者意識」への批判
「被害」と「加害」の架橋
「順法精神」と戦争責任
「被害者意識」の虚構
「難死」の思想
自己への問い
第3章 断絶と継承――一九六九年〜
T 大学紛争の激化――「わだつみ像」の破壊
わだつみ像破壊事件
大学紛争
像破壊の論理
「弱い者に対する強さ」
虚像としての「わだつみ像」
わだつみ会の混乱
機能不全と大量脱会
教養主義の没落
U 天皇をめぐる「忠誠」と「反逆」
第三次わだつみ会
渡辺清の情念
「忠節」から「反逆」へ
「欺かれた自己」への責任追及
天皇訪欧のインパクト
元農民兵と「わだつみ」の拡がり
「天皇問題」への特化
V 戦争責任論と教養の現代
岩波文庫版の誕生
八〇年代の『わだつみのこえ』
教科書問題
学徒兵の戦争責任
「わだつみ」の改訂
教養と責任追及
元学徒兵の抵抗感
遊就館特別展「学徒出陣五十周年」
「継承」という断絶
『きけ、わだつみの声』の再映画化
「わかりやすさ」と伝承の困難
エピローグ
あとがき
参考文献
関連年表
■引用
■書評・紹介
■言及
*作成:樋口 也寸志