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『介護の倫理――贈与・身体・時間――』

藤本 一司 20090220 北樹出版,167p.

last update:20110829

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■藤本 一司 20090220 『介護の倫理――贈与・身体・時間――』,北樹出版,167p. ISBN-10:4779301637 ISBN-13:978-4779301636 \1680 [amazon][kinokuniya] ※ a02 d08 b02

■内容

(本書「まえがき」より引用)
 「介護は愉しい」です(えっ、でもこれは「倫理」の本でしょ? 少しお待ちください)。「愉しい」と書くと、「何をノーテンキなことを言っている。動作も鈍くて、物忘れの老人の世話をして、いったいどこが愉しいのだ」と怒られてしまうかもしれません。「トイレの世話までさせられて、私の貴重な時間をどうしてくれる」と。
 でも、やはり私は愉しいです。愉しいというのは、介護を「してあげる」という「贈与」の経験を通して、人間として「生まれてきたことの意味」を「身に滲みて」感じることができるようになってきたからです。介護の経験は、「人間であるとはどういうことか」を私に教えてくれているように思います。
 「介護の倫理」と名づけたのは、介護して「あげる」という「贈与」の意味を、「人間の条件」として掘り下げてみようとしたからです。介護の経験は、今まで知らなかった「未知の世界」へと、私を「否応なく」押し出してくれました。「未知の世界」と申し上げたのは、たんに「知識」として知らなかったということだけではなく、「身体」を通してのよろこびやかなしみを、生まれてはじめてひとつひとつ鮮やかに感受させて頂いているという意味です。
 目次をご覧になればおわかりのように、本書は、介護の倫理条項を網羅した「倫理」の本では全くありません。そうではなくて、介護して「あげる」という「贈与」は、「身体」に基づく「生きる力」と「よろこび」を授けてくれるということを照準とした本です。「倫理」というものは、そうした「生きる力」と「よろこび」を到来させる「贈与」へと「私」を導くものに他ならない、と私は思うのです。
 介護は、「厄介で、できれば避けたい」と思っておられる方々、あるいは、「なかなか苦労が報われない」と不満をお持ちの方々に向けて、ほんとうに生意気ですけれども(というのも、私の現在進行形の失敗から学んだことばかりですので)、それでも励ましのエールをほんの少しでも送らせて頂ければしあわせです。
 介護は愉しいです! 生まれてきたなら、ぜひぜひ一度は体験してみる意味はあると思います。世界が変わります。

■目次

まえがき

序章  「有ることのかけがえなさ」を感受する

第一章 介護して「あげて」、育てて「もらっていた」を知る
     「もらってばかり」だと、うぬぼれる(自分の位置を見失う)
     「あげて」みると、「もらっていた」が蘇る
     「支えてくれた人たち」に気づく
     「もらっていた」の感受は、「生きる力」をつくる

第二章 介護して「あげる」という「私の位置」とは?
     介護して「あげる」とは、「私の独善性」が問われ続けること
     介護して「あげる」とは、「私の責任」を譲らないこと
     わかって「もらう」のではなく、わかって「あげる」
     「事実」ではなく、お年寄りの「思い」に降り立つ
     「攻撃性」への対処ではなく、不安にさせないこと

第三章 介護して「あげる」と、よろこびが到来する
     わかって「あげる」とは、「私を動かす」こと
     「私を動かす」と、「善い循環」(関係性)が立ち上がる
     「未知の世界」に踏み出すと、「無限」に向上する
     「私の物差し」を「撤回する」たびに、「未知の世界」が訪れる

第四章 介護して「あげる」とは、「身体に聴く」こと
     介護して「あげる」とは、「脳」に勝たせないこと
     「身体」は「自律」している
     「身体」こそが「脳」を支える
     「身体」の「未知性」に寄り添う

第五章 「身体」は、「あげる」「もらう」の交換を欲している
     「笑顔」は、「あげる」「もらう」の往復運動から成立している
     「身体」が欲する「交換」は、「内容」に目を奪われてはならない
     身体は、動物的な身の安全を求めているのではない
     「あげ方」「もらい方」に照準を合わせる

第六章 「他者の身体の死」は、「時間」を生成させる
     介護してあげるとは、「他者の身体の死」に押し返されること
     「他者の身体の死」は「脳の不死性」を暴露する
     「他者の身体の死」は「当たり前」を崩壊させる
     「時間」とは、「いまここで不在の他者」の覚醒のこと

終章  「身体」は、「時間」の伝搬者である

あとがき

■引用

■書評・紹介

■言及



*作成:鈴木 耕太郎
UP: 20110829 REV:
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