■書評・紹介21世紀の文化人類学は、前世紀までの人類学から大きく変容しつつある。ヒト、モノ、カネ、それに情報は、国境や文化を自在に超えて大量に移動するようになり、世界が標準化され均質化されてきたからだ。こうしたグローバル化の時代において、文化人類学は、世界の均質化と複雑化を現場からとらえ、新しい社会秩序を創造するための導き手としての役割を果たすことになる。今日ほど、私たちの日常世界に「異文化」が満ちあふれている時代はない。こうした時代において、「異なるもの」や「他者」の解明を目的とする『文化人類学』の意義はきわめて大きい。
本事典は、このようなグローバル化時代の文化人類学の全体像を示すことを目指して編集された。今日の動的な世界をわかりやすく日常の視点からとらえるために、各章の基本コンセプトを「やまと言葉」の動詞においた。18個のやまと言葉の動詞のもとに、現代世界の変化を説明するための用語を厳選した。インターネット上で流通する用語情報とは一線を画し、本事典では、現場(フィールド)から発想する文化人類学者らしく、執筆者自身の調査と経験にもとづいた興味深い読み物として読める「中項目主義」を採用している。現代社会に生きる人々が文化人類学的発想と視点を生活のなかで活かすために、ぜひ役立ててほしい(本事典のねらい)。