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『精神症状の把握と理解』

原田 憲一 20081225 『精神症状の把握と理解』,中山書店,296p.


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■原田 憲一 20081225 『精神症状の把握と理解』,中山書店,296p. ISBN-10: 4521730760 ISBN-13: 978-4521730769 3200+ [amazon][kinokuniya] ※ m.

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さまざまな精神症状を正しく把握し、理解することは、心を病む人々と接するうえで最も重要といえます。本書は、精神医学・臨床心理学・精神看護学・リハビリテーション医学・社会福祉学等の実践を始めた読者に向けて、治療・看護・援助を行ううえで必要な考え方、姿勢、患者との接し方を、初学者にわかりやすい平易な表現で解説すると同時に、精神医学における最先端の問題も取り上げ、今後の課題を提供します。

著者について

1929年群馬県前橋市生まれ.信州大学医学部精神科教授,東京大学医学部精神科教授などを経て,現在,慶神会武田病院勤務(非常勤).

■目次

第一部 精神症状の診断
序章 精神症状学緒論
「精神症状」とは何か
症状把握の方法
精神症状の概観
精神状態像
妄想
妄想の概念
妄想の形成過程による分類―妄想の記述現象学
妄想主題のいろいろ
妄想の属性(本質的な特徴)をめぐって
妄想診断の留意点
幻覚
概要
幻覚の特徴
幻覚のいろいろ
幻覚と妄想をめぐる症状学的論議
統合失調症(精神分裂病)の幻覚
器質性精神障害の幻覚
うつ
うつの概念
うつ気分―その自己表現
うつ状態(うつ症候群)
「うつ病」概念の今日の混乱
臨床上重要なうつ状態について
不安
序節 人間と不安
不安の概念
不安の診断
不安の分類
妄想気分
思路の障害
概観
滅裂思考
思考奔逸
迂遠思考
昏迷―精神運動性障害について
昏迷の臨床像
昏迷の概念
「精神運動性」概念とその障害
ふたたび昏迷について
離人と作為体験
離人
第二節 作為体験
せん妄
用語の歴史
意識障害とせん妄
身近にみるせん妄の例
軽度せん妄の臨床的把握
心因性錯乱状態をめぐって
認知障害(痴呆)
概念、用語の歴史
認知症(痴呆症)の症状
認知障害(痴呆)の臨床類型
認知障害(痴呆)の鑑別診断
第五節 心因性の認知障害(痴呆)

第二部 精神医学特論
感情の科学
序節
感情の神経科学
感情の心理学
感情の精神病理学(異常心理学)
統合失調症症状の理解
序節 理解するということ
第一節 自我意識とその発達
統合失調症と自我機能
付節 統合失調症の行動特徴とその精神生理学的理解
ストレスと精神健康
第一節 ストレス理論の概観
第二節 ストレスと精神生活
ストレス-脆弱性仮説
ICD-10「重度ストレスへの対処」
ストレスとストレス対処
新しい記憶理論と記憶障害の臨床
序節 生体の記憶
伝統的な記憶学説
新しい記憶理論
複数長期記憶システムの発達論
記憶障害の臨床
面接における会話―とくに質問の形をめぐって
序節 ラターたちの論文
面接者の態度、動作
面接における質問
終節 いくつかの付言

■書評

シリーズ第一巻は圧巻の嚆矢
こころの科学 No.145(2009年5月号) ほんとの対話より
評者・神田橋條治(伊敷病院)

 「時を越えて読み継がれ導きの役をなす書籍を「古典」と呼ぶ。初版の時点ですでにその位置を約束される著作が稀にある。
 待望久しい、原田憲一先生による「症候学」を手にした。嬉しい。症候学は精神医学という文化の始原であり基盤である。症候学がなければ精神医学はなく、症候学が揺らげば精神医学も不安定になる。昨今の様相の一因である。
 症候学の作業は精神現象を「認識」して「記述」することであるが、両者は互いに影響しあうので、作業は錯綜する。言葉が参与するからである。あらかじめ輪郭定かに存在する事物を拾い集めて命名する作業ではなく、連続と流動とを本質とする現象界を、言葉で切り分けて取り出す作業だからである。
 その作業は古人により営々と続けられてきている。それをまず押さえておかねばならない。文化の継承である。
 そのうえで、現在の精神医学の暗黙の要請を読み取り、さらには、自身の体験との整合性に照らしながら、新たな認識と記述とを組み立てねばならない。当然そこには、未来への視点も必要である。
 加えて、原田先生の論述には、論を組み立て視点を選択してゆく自己の作業それ自体への客観視がある。その姿勢に馴染む言葉は「真理への愛」である。探求の熱情と自己抑制である。評者が先生に「症候学」を懇願した理由である。
 びっくりした。三五頁に「まわりの人のことが気になりますか?」「どんな風に?」が愛用の質問としてあげられていたからである。桜井図南男先生愛用の質問とまったく同じだ。で、気がついた。評者の原田先生への敬愛には、桜井先生への追慕の転移が含まれていると。恩師も、探求の熱情と自己抑制の人であったし、自己省察の人であった。だが、自己の技術を客体化する作業をなさらなかった。それゆえ、名人の位置に留まられた。先生が本を書いてくださらなかったわけも、評者の原田先生への懇願の執拗さの謎も解けた。
 原田先生は自身の作業を客体化して読者に提示してくださっている。おそらく、先生の誠実さの現れであり「真理への愛」の延長なのだろうが。この姿勢のせいで、「記述現象学」と自覚される先生の世界が「フッサール現象学」へも開かれている。さらに、先生の誠実さは語られる言葉の一つひとつに重みと背景とを含ませる、あるいは匂わせる。
 本書は、中山書店の「精神医学の知と技」というシリーズの第一巻である。圧巻の嚆矢であり、続く人々の苦労が思いやられる。 」
(後略)

■言及

◆立岩 真也 2013/11/** 『造反有理――身体の現代・1:精神医療改革/批判』(仮),青土社


UP: 20130925 REV:
精神障害/精神医療  ◇原田 憲一  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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