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『日時計の影』

中井 久夫 20081004 みすず書房,346p.

last update:20110210

■中井 久夫 20081004 『日時計の影』,みすず書房,346p. ISBN-10: 4622074370 ISBN-13: 978-4622074373 3150 [amazon][kinokuniya] ※ m.

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〈画を通じて私は痛感した。
医師が研究の眼差しであるか治療の眼差しであるかに患者は敏感である。
また、患者の症状を診るだけならよいが、
患者への眼差しの焦点はその人柄と生活に置かれねばならない。
でなければ、患者の自己規定は「精神科患者(入院患者、通院者)」になってしまう。
患者の価値観は世間と同じで、世間の偏見を取り込んで自己に向けている。
症状に対して膝を乗り出すと医者は患者を見失う。
患者は治療者の意を迎えることに汲々として、すぐに医者の興味がある言葉を用意するようになるのだ。
精神病理の陥穽である。
西欧の高名な精神病理学者の大論文のもとになった患者で
自死をとげている人の名を挙げることは実にやさしい。
治療者に多くを与えすぎた患者は危ない〉

統合失調症を中心に長年の臨床経験を語った「患者に告げること 患者に聞くこと」
「老年期認知症への対応と生活支援」などのちょっと専門的な文章から、
秀逸な河合隼雄論、「敗戦直後の山岳部北アルプス行き」
「伝記の読み方、愉しみ方」、自伝的書き下ろし「ヴァレリーと私」まで33篇。
第7エッセイ集。

内容(「BOOK」データベースより)
「患者に告げること患者に聞くこと」「老年期認知症への対応と生活支援」から、河合隼雄論、自伝的書き下ろし「ヴァレリーと私」まで33篇。第7エッセイ集。
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■目次

目次
患者に告げること患者に聞くこと―統合失調症を中心に
老年期認知症への対応と生活支援
トラウマについての断想
生活空間と精神健康
河合隼雄先生の対談集に寄せて
神田橋先生のいる風景
村瀬嘉代子さんの統合的アプローチに思う
東大分院神経科がある風景
神戸という町の隠れたデザイン―海外のゲストを念頭に置いて
最近の精神医学に思う
〔ほか〕

■引用


◆20070331 「東大分院神経科がある風景」,「東京大学精神医学教室120年」編集委員会 編[2007]→中井[20081004:108-129]
*「東京大学精神医学教室120年」編集委員会 編 20070331 『東京大学精神医学教室120年』,新興医学出版社,286p. ISBN-10: 4880026611 ISBN-13: 978-4880026619 \6825 [amazon][kinokuniya] ※ m

 「分院精神科占拠の風評下に、安永科長、河津医局長、そして私の病棟医長の非常時体制が発足した。翌日、私は占拠下の病棟で主張するべき第一は主治医権の不可侵であると安永先生に答申した。先生は「それで行きましょう」と言われ、そして占拠はなかった。名古屋市大への転勤の日、安永先生は、私をふっとやってきてふっと去ってゆく西部劇のガンマンに例えられた。その意味を尋ねたことはない。」(中井[2007b→2008:129])

■言及・紹介


◆立岩 真也 2013/12/10 『造反有理――精神医療現代史へ』,青土社,433p. ISBN-10: 4791767446 ISBN-13: 978-4791767441 2800+ [amazon][kinokuniya] ※ m.


UP:20110502 REV:
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