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『沖縄ラプソディ――〈地方自治の本旨〉を求めて』

宮城 康博 20081010 御茶の水書房,230p.

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last update:20151203

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■宮城 康博 20081010 『沖縄ラプソディ――〈地方自治の本旨〉を求めて』,御茶の水書房,230p.  ISBN-10: 4275005775 ISBN-13: 978-4275005779 1600+税  [amazon][kinokuniya]

■内容

■著者略歴

1959年沖縄県名護市に生まれる。80年代を東京で過ごし、冷戦崩壊後、Uターン。やんばる地方で行政の地域計画策定等に携わる。 97年、住民投票運動に関わり、98年以降名護市議会議員を三期八年つとめる。現在、沖縄県宜野湾市在住。

■目次

はじめに

第一部 こどもたちへ
1 青空――あのころ、名護市民が経験したこと
コラム 市民投票と市民自治
2 ニヌファブシ――沖縄の歴史と現在について
コラム 沖縄戦と米軍基地
3 ハーメルンの笛吹き――新基地建設計画の十年
4 なんかおかしい――憲法と沖縄と米軍基地について
沖縄返還協定が強行採決

第二部 沖縄から/沖縄へ
1 逆格差論は死なず――地域の礎が耐える時代の風
2 「汗水節」は歌えない――北部振興策とは何か
3 構造改革の聖域――防衛費をめぐる憂鬱
4 ラディカル・デモクラシー――自治を生きるために
コラム 台所から街頭へ――市民投票と選挙と女性

第三部 地球の万人(うまんちゅ)へ
1 地球は利害関係で満杯――開かれた合意形成システム=環境影響評価
2 名付けの政治――隠蔽と露見のレトリック
3 ゆで蛙のモノローグ――分断を超えて
4 われらはみな、アイヒマンの息子――悪をなすことへの平凡な道のりについて
5 日米軍事再編に抵抗する「地方自治の本旨」――沖縄・名護市・岩国市

資料編
1 炭鉱のカナリアの歌声――「島田懇談会」事業批判
2 名護市総合計画・基本構想の「視点」と「主旨」

あとがき
名護市役所の一番長い一日

■関連書籍

大野 光明 20140930 『沖縄闘争の時代1960/70――分断を乗り越える思想と実践』,人文書院,342p.  ISBN-10: 4409240986 ISBN-13: 978-4-409-24098-4 3800+ [amazon][kinokuniya] ※

岡田 憲治 20140530 『ええ、政治ですが、それが何か?』,明石書店,273p.  ISBN-10: 4750340170 ISBN-13: 978-4750340173 \1800+税  [amazon][kinokuniya]

土佐 弘之 20120830 『野生のデモクラシー――不正義に抗する政治について』,青土社,370p.  ISBN-10: 4791766652 ISBN-13: 978-4791766659 2600+ [amazon][kinokuniya] ※ s.

市村 弘正 19870200=19960615 『増補「名づけ」の精神史』,平凡社ライブラリー,185p.  ISBN-10: 4582761526 ISBN-13: 978-4582761528 854+税  [amazon][kinokuniya]

■引用

第一部 こどもたちへ
1 青空――あのころ、名護市民が経験したこと
正しい言葉
 基地建設予定地とされる辺野古沿岸域では、沖縄県内外から基地建設反対の意思を持った人々が地元の人々よりも多く集い行動を続ける。その信念と行動力には頭が下がる。 そして、その人々の「人殺しのための基地」という正しい言葉が耳目に触れるたびに、辺野古には足を運ばない名護市の生活者として複雑な思いでいる。 こんな小さな街が賛成反対で二分され、多くの普通の市民は、自身の正>015>直な言葉も願いも心に沈め生きている。 隣人との会話でも基地建設問題を迂回することが自然と身についた暮らしぶり。正しい言葉は、自身と隣人への悪罵と化し、傷つき傷つける。

 私たちは引き裂かれてある。

 そのことを、大人の醜い言い訳とせず、どのように、子どもたちに語ることができるか。私は言葉を探し続けている。(pp.014-015)
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第二部 沖縄から/沖縄へ
4 ラディカル・デモクラシー――自治を生きるために
統治者とはだれか
 憲法に刻まれた「地方自治の本旨」という言葉の意味は、憲法にも法律にも明記されていない。 一般的な学説では地方自治の本来の“建前”とされ、団体自治>110>と住民自治の二つの要素からなっているとされる (『新版 逐条地方自治法(第一次改訂版)』松本英昭著 学陽書房刊・五頁参照)。 私たちの生きる地域の役所は国の下請け機関ではないし、役所は私たちを支配する「お上」などではない。 その逆で、主権者である市民がおう役所をコントロールしなければならない。(pp.109-110)


 政治学者のダグラス・ラミスさんが『ラディカル・デモクラシー』という著書で、民主主義に関する断章として刺激的な言葉を紹介してくれている。 市民投票からずっと、ときおり私のなかで木霊している言葉。

  人民が統治者であるというなら、統治されるのは誰なのか。
  ―――――ジョセフ・コットン>111>

 市民投票とは何だったのか。
 それは主権者の自治そのものであり、この主権者の意思に反する行政権力の行為に正当性を付与することはできない。

 私は、私たちが政府を統治する統治者であるという原理を捨てたくない。(pp.110-111)
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第三部 地球の万人(うまんちゅ)へ
2 名付けの政治――隠蔽と露見のレトリック
 ものには名前がある。
 そのことが、驚きをもって感じられるときがある。
 人は名付ける生き物である。
 ものだけでなく、現象や関係や様々なもの・ことが名付けられる。
 例えば「海上ヘリポート」という言葉は、ビルの屋上にでもありそうなヘリ>129>ポートが海上にあるぐらいのイメージを喚起させる。 しかし、正文である英語では「海上基地施設」であった。

 名前には、名付ける人々の政治がある。
 私たちは、その発語の主体の政治をも読みながら、操作可能な対象、入れ替え可能な対象として利用され遺棄されることに注意深くなければならない。

 私たちが自らの自由の可能性を少しでも信じているなら。(pp.128-129)
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■書評・紹介

■言及



*作成:北村 健太郎
UP: 20151125 REV: 20151203
沖縄  ◇差別  ◇社会運動/社会運動史  ◇身体×世界:関連書籍  ◇BOOK
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