『燃えるジンバブウェ −南部アフリカにおける「コロニアル」・「ポストコロニアル」経験−』
吉國 恒雄 20080910 晃洋書房 140p
■吉國 恒雄 20080910 『燃えるジンバブウェ −南部アフリカにおける「コロニアル」・「ポストコロニアル」経験−』,晃洋書房, 140p. ISBN-10: 4771019991 ISBN-13: 978-4771019997 [amazon]/[kinokuniya]
■著者略歴(本書より:著者は故人です。)
1947年、鹿児島県生まれ。サンフランシスコ州立大学文学部史学科B.A.課程修了。
ジンバブウェ大学大学院史学研究科D.Phil.課程修了。現在、専修大学商学部教授。
■目次
・燃えるジンバブウェ
−反英農地改革と「第二の民主化」を考える−
・アフリカ資本主義への一つの道
−新興アフリカ人大農民についての試論−
・九五年総選挙
−繰り返された与党対政治離れ層の構図−
・九四年のジンバブウェ
−見えてきた社会変化の動態−
・小農の躍進とアフリカ人農村の変化
・独立十年と「小農の奇跡」について思うこと
初出一覧
■引用
◆第二章 アフリカ資本主義への一つの道 −新興アフリカ人大農民についての試論−
「確認されるべきことは、ジンバブウェにおける入植者植民地主義・資本主義の発展は、強烈な差別制度を生み出したが、しかし、それによって、アフリカ人資本主義の芽がことごとく摘み取られたわけではないということである。むしろ、それは、あくまで差別的制度の枠内においてであるが、アフリカ人農民の間で蓄積者、起業家が「誕生」する環境を作り出した。」<49p>
「ただ、現時点で言えそうなのは、彼らの内部で、生産と寄生、堅実と投機、技術と話術、倹約と浪費の峻別がなされるほど、ジンバブウェ現代史に脈々と流れる小農的民主主義の伝統と離反するのではなく、手を取り合って進みうる余地が増すであろうということである。」 <74p>
◆第三章 九五年総選挙 −繰り返された与党対政治離れ層の構図−
「政府・党の中枢には、民族解放を勝ち取った道義的優位にあぐらをかき、長期一党支配のぬるま湯にひたる風潮が根強くある。これでは、今後、政治離れ層の奪還どころか、現在与党を支持している国民の気持ちをも離反させかねないだろう。指導者の保守主義−その危険は権力腐敗、事大主義である−と厳しい経済情勢に挟撃された場合、民衆が、為政者は自分たちの生活を向上させる能力はもとより、意欲すらも持ち合わせていないと観じない保証はどこにもない。」<93p>
◆第五章 小農の躍進とアフリカ人農村の変化
「南部アフリカ問題の多くの論客は、アフリカ人農村の現代史を資本主義的産業化の前に現地人農業が次々と後退を重ね、ついには黒人農村が低賃金労働力プールとなるという筋書きで捉えてきた。この考え方からすれば、社会・経済構造の根本的変革がないかぎり、黒人農業が前進することはありえない。だからジンバブウェの現象は、せいぜい抑圧がはねのけられた瞬間の、クリフの言葉を借り入れば、「一度限りの生産スパート」ではないか、というシニカルな見方がなされるわけである。だが、われわれの議論は、一つの社会集団としてのアフリカ人農民はこの見方で想定されているよりももう少しダイナミックであり、資本主義部門と小農部門の<接合>関係も同じようにもう少し複雑なものとして捉える必要があるのではないか、ということである。」<117p>
■言及
*作成:有賀 優