『病いと障害の語り――臨床現場からの語りの生成論』
中井 孝章・清水 由香 編 20080927 日本地域社会研究所,234p.
■中井 孝章・清水 由香 編 20080927 『病いと障害の語り――臨床現場からの語りの生成論』,日本地域社会研究所,234p. ISBN-10: 4890228861 ISBN-13: 978-4890228867 3045 [amazon]/[kinokuniya] ※ n07..
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病い・障害の当事者や家族の悩み・体験をどう語り合い、支え合っていくか。語り手と聴き手による物語が自分直し、社会直しへと広がっていく可能性を追求。大学や医療・福祉施設で活躍する臨床家たちのヴィヴィッドな研究成果!
内容(「BOOK」データベースより)
大学や医療・福祉施設で活躍する臨床家たちのヴィヴィッドな研究成果!当事者や家族の悩み・体験などをどう語り合い、分かち合い、支え合っていくか。語り手と聴き手による共同制作の「物語」が自分直しと社会直しへと広がっていく可能性を追求する。
■目次
T.病いの物語をめぐる語り手と聴き手の回路
――物語論的転回という知の潮流の中で 中井孝章
1.生物医学の疾病パラダイムと患者役割…10
(1)パーソンズの患者役割と医師役割――その批判的検討
(2)患者役割から病いの語り手へ
2.病いの語りと生物医学の物語
――A.クラインマンの医療人類学を中心に…16
(1)ナラティヴ的思考様式と三点測量モデル
(2)説明モデルの優劣化と構築される疾患
(3)説明モデルをめぐる医師と患者のミスマッチ――事例を通して
3.病いの語りの類型――A.フランクの医療社会学を中心に…23
(1)病いの脱近代的経験と寛解者の社会
(2)回復の語り
@定義とプロット
A修復可能な身体――規律化された身体と鏡像的身体
B外挿された自己物語
C回復の語りの力と限界
(3)混沌の語り
@定義とプロット
A身体化された混沌
B混沌の自己物語
C混沌の語りの力
(4)探求の語り
@定義とプロット
A伝達する身体
B自己物語としての探求と探求の語りの力
4.道徳的関係性としての証言と証人――「語り−聴く」の精神分析…45
(1)証言と証人の関係性
(2)トラウマをめぐる語り手と聴き手の相互性
5.環状島モデルにおける語り手と関係者のポジショナリティ…52
(1)環状島の空間的布置
(2)環状島の力学
付論 ナラティヴセラピーの効用と限界…58
(1)物語論的転回という知の潮流
(2)ナラティヴセラピーの概要
(3)語りの研究のために
U.精神障害のある人が病い・障害の体験を地域において語ることの意味 清水由香
1.はじめに…72
2.ナラティヴのもつ力…74
(1)ナラティヴのもつ2つの意味
(2)自己物語(セルフ・ナラティヴ)と自己形成
@自己の一貫性について
A自分の声を見出すこと
(3)自己物語と自己、他者、社会とつながるエンパワメントの視点
(4)ストーリー(物語)のもつ機能
(5)ストーリー(物語)の機能における他者との共有がもつ意味
@自己物語の確認作業としての共有
A共同生成の重要性
3.語りの効果を引き出すナラティヴ・コミュニティの特徴
――多様な語りに出会い、承認する環境…82
4.精神障害という経験を人に語るということ…84
(1)スティグマへの対処
(2)見えにくい障害
(3)語ることができるのは限られた人なのか
(4)パワレスな状況に陥りやすい精神障害者にこそ語りが意味をもつ
5.地域での病い・障害の経験を語る活動における他者との語りの共有…89
(1)地域で精神障害の経験を語る活動の対象について
(2)「聞く機会を与えられた他者」である聴衆の特徴
(3)地域で語るという活動上の特性
(4)地域で語る場と共にあるナラティヴ・コミュニティ
6.おわりに…95
V.〈多衝動性過食症〉症例報告のエスノメソドロジー
――心理学的解釈モードの解体と臨床社会学の可能性 河邊敦史
1.はじめに…104
2.病と症例…106
(1)「構築」される病
(2)症例報告の特質
3.〈多衝動性過食症〉症例の脱構築…110
(1)予備的な指示
(2)〈歴史物語〉の改変構造
(3)〈幼児期決定論〉的思考の解体
(4)病理性のレトリック
@〈留保→強調〉図式
A累積効果
B医学的モデル
C潜在規範の逸脱
(5)〈治療物語〉の語られ方
(6)解釈モードの転換
4.おわりに――臨床社会学の可能性…145
W.障害のある子どもをもつ親が紡ぐ自己物語(Self-Narrative)
――知的障害児の母親の語りから 小林優子
1.はじめに…152
2.インタビュー調査の方法…155
3.自己物語の概要――過去から現在への物語…156
(1)Aの自己物語の概要
(2)Bの自己物語の概要
4.体験の意味づけと自己物語――3つのキーワードから…158
(1)子どもの「障害」に対する意味づけと自己物語
@Aの語り――社会の「障害」の物語からの脱却と新たな自己のスタート
ABの語り――「強い自己」に基づく母親役割への自信
B両者の語りから見える、様々な障害受容の中身
(2)育児体験と自己概念の変化
@Aの語り――訴えていく自己と変化した自己
ABの語り――育児についての誇りと変化した自己
B自己概念の変化と肯定的な自己物語
(3)育児体験と「自分らしさ」
@Aの語り――無理のない自分と世界の広がり
ABの語り――人間らしさと母親役割の卒業
B「自分らしさ」の未来への広がり
5.自己物語の軸と豊かさ…168
6.障害児の親への支援のあり方…171
X.聴覚障害児を持つ母親のライフストーリーに関する質的研究
――インタビュー法を通して 仁木恵理
1.はじめに…174
2.なぜ聴覚障害児の母親か…177
(1)聴覚障害児の抱える問題と母親の役割
(2)「親−子」の関係の考察
(3)「親−社会」の関係の考察
3.セルフヘルプ・グループとしての親の会…181
(1)セルフヘルプ・グループとは
(2)親の会の役割
(3)親の会の位置づけ
4.聴覚障害児の母親の語りと質的研究…185
(1)ライフストーリー・インタビューについて
(2)母親へのライフストーリー・インタビュー
@心理的サポート
A親の教育方針
B聞こえない大人との関わり
C親の会の活動
5.おわりに…196
Y.当事者の家族からみた「脳死・臓器移植」問題
――医療人類学の射程 中井孝章
1.医療人類学の研究対象としての「脳死・臓器移植」問題…200
(1)スリランカの悪魔祓い
(2)象徴秩序の構造とその変様としての治療行為
2.脳死とは何か…207
(1)2つの脳死概念
(2)脳死のタイポロジー
(3)見える死と見えない死
3.脳死と臓器移植の回路…212
(1)ドナーカードの選択肢
(2)2つの「わたし」
4.自然秩序と社会秩序からみた臓器移植の問題点…216
(1)身体的自己の否定、カニバリズム・キメラ
(2)タブーとしての臓器移植
5.脳死・臓器移植をめぐる家族の語り――家族の迷いと選択…221
あとがき…230